第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

ミッション   :働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。

サービスポリシー:「寄り添うように」 お客さまのこころの声を感じ、そのご要望に丁寧に応えるサービス

「慈しむように」 愛情と敬意に満ち、優しく包み込むようなサービス

「信頼に足るように」 他に換えることのできない確かなサービス

「妥協しないように」 果てしなき質の向上に挑み続けるサービス

 

 当社グループは上記のミッションの下、創業以来、35年以上前から働く女性の支援を続けてまいりました。

昨今、国連が定める「持続可能な開発目標(SDGs)」に代表されるように、社会課題の解決が企業にも求められる時代となり、当社グループの経営方針及び提供するサービスが社会において重要な価値をもたらすものである事を改めて認識しております。

 そこで、当社グループでは、2020年11月に株式会社日本総合研究所からセカンドパーティ・オピニオンを取得し、当社グループの社会課題解決に向けた対応状況を第三者の目から客観的に評価いただくとともに、今後の(経済的価値のみならず社会的価値を含めた)企業価値向上の契機としております。

 

 また、SDGsは当社のミッションにも通ずる目標であると考えており、当社グループの提供するサービスにより、以下のそれぞれの目標達成に貢献してまいります。

目標

ターゲット

左記ターゲットに貢献する

当社グループのサービス・施策

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 5.5「政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する」

・働く女性を支援することにより、女性の社会参画を増大

・子育て経験をキャリアとして評価し、女性とシニアをナニー及びベビーシッターやケアスタッフとして活用。その他、年齢・性別・国籍・ハンディキャップにかかわらず多様な就業の場を提供

・当社グループにおいても、2024年12月末時点で全社員の86.5%、管理職の75.1%、本書提出日現在で取締役(子会社取締役を含む。)の32.4%を女性が占めるなど、女性活躍を自ら実践

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 4.2「すべての女児及び男児が、質の高い乳幼児の発達支援、ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする」

・「保育」から「エデュケア」へ保育理論、非認知能力の向上ノウハウを深化・体系化

・将来グローバル社会で生きる子どもたちのために「0歳からのエデュケア」を実践

・「最高水準」のサービス提供に向け、乳幼児教育において、ハーバード大学、スタンフォード大学、ノーランドカレッジ、東京大学、お茶の水女子大学など国内外の教育機関やその研究者との共同研究や研修を実施し、世界最先端の教育科学を保育に取り入れる

・国や自治体からの委託を受け、保育士再就職支援事業(厚生労働省)や、サービス産業生産性向上調査事業(経済産業省)、子育て支援方策に関する調査研究(文部科学省)等の調査やコンサルティング、研修事業(年間122,000人以上参加(2024年度))を実施

 

 

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 8.1「各国の状況に応じて、一人当たり経済成長率を持続させる」

 

 8.5「2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、並びに同一労働同一賃金を達成する」

 

・保育/学童施設338ヵ所(2024年12月31日時点)の運営、ナニー及びベビーシッターサービス提供を通じ女性の社会参画を支援

・お茶の水女子大学大学院に「ポピンズ保育マネジメント講座」を開設(2021年4月開講)し、保育士の地位向上を図る

・地方採用も積極化し、地方から三大都市圏(東京都・大阪・名古屋)に転居して働く人に向けて借上げ社宅などのサポート施策を準備(2024年12月末現在317件)

・保育士の処遇改善(大卒保育士の初任給業界最高水準)や福利厚生(自社サービスの割引利用他)の充実

・残業時間の軽減(目標月平均7時間、2024年度実績5.6時間)

・人材育成を重要な経営課題と捉え様々な教育機会を提供(海外研修に自社社員派遣含めのべ580名以上参加(英ノーランドカレッジ海外研修(1994年~)、米スタンフォード海外研修(2006年~)、米ハーバード海外研修(2007年~)の累計参加者数)、オンライン開催となった2020年度~2022年度分を除く。)

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは、事業の収益性を評価し、グループ全体の経済価値向上に寄与することから、経営指標として売上高と営業利益率を重視して経営しております。

 

(3)経営環境

 日本では、少子高齢化に伴い労働者不足の加速化が予想されるとともに、産業構造の変化により多様な人材を活用していくことが必要不可欠となったことから、女性の活躍促進が一層求められております。

 安倍政権が「女性が輝く社会」政策を打ち出した2013年時点で2,411万人だった女性の雇用者数は、以降拡大を続け、2024年には2,830万人まで419万人も増加しております。(注1)

 こうしたなか、我が国は成長戦略の1つとして女性が輝く日本を念頭に「待機児童の解消」「職場復帰・再就職の支援」「介護離職ゼロ」に向けた対策が進められていることもあり、当社グループの展開する事業領域の各市場は以下のように拡大していくものと認識しております。

 

①子育て支援

ⅰ)チャイルドケアサービス(ナニーサービス・ベビーシッターサービス)

 欧米等の海外では、ナニーやベビーシッターは一般的なサービスであります。日本においても、待機児童対策として保育施設の整備が急ピッチで進められる一方、女性の社会進出やベビーシッター利用への社会的認知度の向上を追い風として、個別保育の長所を活かした様々なサービスとともに、保育所や学童施設では対応できない、送迎や病児・病後児保育、産前・産後ケアなどの個別支援ニーズへの対応が可能であることから、子育て市場の成長とともにベビーシッター市場は急速に伸長しております。

 ベビーシッター市場の年間売上高は、当社独自の推計(注2)によれば、2020年の320億円から2030年には1,000億円規模に到達するものと推定しております。

 当社グループのベビーシッターサービスの2024年12月期の年間売上高が、前期比1.4倍に増加するなど、利用拡大が急速に進んでおりますが、海外事情の浸透やベビーシッターの認知度の向上、マッチングサービスの発展等による使い勝手の向上等により、今後も日本におけるベビーシッター市場のさらなる拡大が期待されると考えております。

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ⅱ)エデュケア事業(保育所)

 待機児童対策のための保育所の新規開設はピークアウトしており、保育所定員が前年2023年時点の305万人から、2024年時点で304万人と前年比0.6万人の減少に転じました。新型コロナウイルス感染症の影響も含めた少子化・出生数減少の影響を受け、保育所利用者数は前年2023年時点の272万人から、2024年時点で271万人と前年比1.2万人減と、2年連続で減少しております(注3)。また、2024年時点の待機児童数も2,567人(前年比113人減)と、前年に引き続きやや減少しました。こども家庭庁によれば、保育の受け皿拡大が引き続き進んだ一方で、就学前人口が減少したことなどの要因により、待機児童数が前年から減少した地域がある一方で、申込者数の想定以上の増加による利用定員の不足や、保育士を確保できなかったことによる利用定員の減、などにより待機児童が増加した地域や、数年にわたり一定数の待機児童が生じている地域もあるとされております。今後については、女性の就労率の上昇や、非正規雇用者の正規雇用化、共働き世帯割合の増加(2022年:73.7%から、2023年:75.6%へと比率上昇)が、引き続き進むことが想定されるため、保育所の整備が進んでも潜在的な待機児童数の高止まりは継続すると、当社グループとして見込んでおります。

 待機児童解消と職場復帰支援に向けては、政府は2020年12月21日に「新子育て安心プラン」により、2021年度から2024年度末までの4年間で約14万人分の保育の受け皿を整備することを発表しました。

 矢野経済研究所によれば、保育施設等の市場規模は2016年の3.0兆円から2023年の3.7兆円台半ばまで拡大しており、2024年も3.8兆円弱の微増となることが見込まれております(注4)。「新子育て安心プラン」に沿って、政府が掲げる25歳~44歳の女性就業率の目標値が82%(2025年)まで引き上げられていることも踏まえ、当面の間、同市場は緩やかな拡大が継続するものと考えております。

 保育の受け皿不足が解消した後もしばらくは保育需要が同程度続くとの意見はありますが、少子化の影響を受け、また、コロナ禍の影響にも加速され、その減少が顕在化しております。既に保育需要の拡大はピークアウトしており、競合間での競争・淘汰の時代に突入しておりますが、保護者向けのアンケートでも、保育所を選ぶ際に最も重視する点は保育の質という結果が出ており、当社の最大の差別化ポイントである質の高さが一層の強みになっております。当社グループはミッションに掲げるように、創業からサービスのクオリティを常に意識し、研修・教育により日々研鑽を重ねてきたことやフルラインナップで働く女性を支えるサービスを提供している事業安定性から、保育所が選ばれる時代の到来は、当社グループにとって好機であると捉えております。

 

②シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)

 国内介護市場規模は、2014年の8.6兆円から2025年には18.7兆円程度まで拡大すると見込まれております(注5)。また、公的保険外の介護市場規模は2020年の6.4兆円から2050年には16.9兆円程度まで拡大すると見込まれており(注6)、財政問題を背景に社会保障費を少しでも抑えるため、在宅サービスの充実が求められていることから、介護保険と介護保険外を含む在宅介護も大きく伸びると予測されております。

 また、経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」によれば、今後、生産年齢人口の減少に伴い、更なる人材不足が加速する中、仕事と介護を両立する従業員は増加していくことが見込まれ、2030年には家族を介護する833万人(2020年:678万人、2025年:795万人)、のうち、約4割の318万人(2020年:262万人、2025年:307万人)が仕事をしながら家族等の介護に従事する者(ビジネスケアラー)となると予測されています。加えて、介護者が家族介護にかける時間は男女ともに1日2時間余りであり、現役世代の可処分時間を大きく減少させています。(注7)。一方、厚生労働省「雇用動向調査」によれば、介護・看護を理由に離職している人は年間約10万人とされております。2025年には総人口に65歳以上が占める割合である高齢化率は30%を超え、現役世代の介護問題がさらに深刻化することで、経営パフォーマンスに大きな影響が出ると予想されております。また、日本総合研究所の試算によれば、ビジネスケアラーの増加に伴い、2030年には9.1兆円程度の経済損失が見込まれると推計されております(仕事と介護の両立困難による労働生産性の低下: 7.9兆円、介護離職による労働損失額: 1.0兆円、介護離職による育成費用損失: 0.1兆円、介護離職による代替人員採用コスト: 0.1兆円)(注8)。介護サービスの拡充は日本経済においても喫緊の課題であると言えます。なかでも社会保障費の伸びを抑制する潮流のなかで、当社グループが行う介護保険外の在宅介護や介護予防となるアクティブシニア向けの生活支援への期待は一層高まっていくものと考えられます(注9)。

 

 さらに、年間250万人が生まれた団塊の世代の全員が75歳以上となったことから、シルバーケアサービス市場の一層の拡大を見込んでおります。

 

(注)1 総務省「労働力調査(2025年1月31日)」

   2 国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、厚生労働省「2021年国民生活基礎調査」、全国保育サービス協会「ベビーシッターNOW2022」、リンナイ「世界5カ国の「ワーキングママの育児事情」に関する意識調査(2019年)」、ほかに基づき当社独自推計

   3 こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(2024年8月30日)」

   4 矢野経済研究所「2024 年版 ベビー関連市場マーケティング年鑑(2023年12月28日)」

   5 デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー「ライフサイエンス・ヘルスケア 第5回 国内介護市場の動向について(2017年1月25日)」

   6 経済産業省 健康・医療新産業協議会 第4回新事業創出WG資料「今後の政策の方向性について(2024年3月22日)」

   7 経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン(2024年3月)」

   8 経済産業省 第13回経済産業政策新機軸部会資料「新しい健康社会の実現」(2023年3月)

   9 厚生労働省「雇用動向調査(2021年)」

 

(4)経営戦略の基本方針

 当社グループでは、ミッションの貫徹、および今後の成長を目指して以下の3点を経営戦略の基本方針として事業を進めております。

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①働く女性のサポート(ライフステージに応じた切れ目のないサービスラインナップ)

 当社グループは、ナニーサービスにより事業を開始して以降、ミッションである『働く女性の支援』を具体的なサービスに落とし込み、ワンオペ育児・お受験・小1の壁、親の介護など、働く女性のライフイベントにおいて直面する離職の危機に対して、子育て・介護・家事支援・不妊予防(妊活)・ペットケアまで、一貫して女性の生涯をサポートするソリューションを提供しております。

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②クオリティ(最高水準のエデュケアと介護サービスの品質維持向上)

 当社グループは、ミッションとして「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」を掲げており、常に最高水準のサービスをお客様に提供することを意識し、これまで様々な施策を実行してまいりました。その結果として、あらゆる場面で評価を頂いてまいりました。

 当社グループの具体的な品質維持向上施策は以下のとおりであります。

・1999年に育児・介護サービス業界では全国初となる国際品質規格ISO9001(品質マネジメントシステム)の認証を取得いたしました。その過程で品質目標設定・実行・評価・改善というPDCAサイクルによる品質マネジメント体制が整備され、顧客満足度の視点からサービス品質の向上を実現する事に繋がりました。その結果、2024年度に実施した当社グループの保育施設のご利用者による満足度アンケートでは、全施設平均で98.2%の方から満足との評価をいただき、また6割の方から大変満足との評価をいただきました。

 

・当社グループでは、お客様の緊急性・利便性・安心感にお応えするナニーサービスを提供するため以下4点の実現を心掛けております。

A) ICT(PC/スマホ)を活用した24時間365日対応の実現

B) 当日オーダー100%に応える最適なナニーとのマッチング

C) コーディネーターによる入会訪問

D) お子様が病気の時でも対応

・運営施設数が増加する状況でも、優秀な人材の採用や育成の強化、および、諸施策を通じた長期雇用の促進により、保育士、ナニー及びベビーシッター、介護スタッフ、家事支援スタッフの質の維持・向上を図っております。具体的な施策としては、ジョブディスクリプションによる各職位における職務内容や人事評価制度の精緻化、処遇改善等を行っております。

 

 上記諸施策の結果、2016年6月には、約30年、働く女性の支援のために高品質のナニーサービスを提供し続けてきた功績が認められ、第一回日本サービス大賞(注10)厚生労働大臣賞を受賞いたしました。

 また、スマートシッター株式会社(現 株式会社ポピンズシッター)は、2017年12月、日経DUAL「マッチング型ベビーシッターサービス」ランキングにおいて「質・信頼性」や「料金」等が評価され、1位に選ばれました。2018年にはキッズデザイン賞(子ども達を産み育てやすいデザイン部門)を受賞しました。

 子どもたちにとっての創造的な空間づくり(環境設定の質)等が評価され、2020年にはポピンズナーサリースクール恵比寿南、2021年にはポピンズナーサリースクール代々木上原がキッズデザイン賞(子どもたちの創造性と未来を拓くデザイン部門)を受賞、2022年にはポピンズナーサリースクール阿佐ヶ谷が、キッズデザイン賞(同部門)及びグッドデザイン賞をダブル受賞いたしました。さらに、2023年にはポピンズナーサリースクール上大崎及びポピンズナーサリースクール軽井沢風越の2園がグッドデザイン賞を同時受賞しております。

 2021年4月からは、お茶の水女子大学の大学院に国内初の産学連携による保育マネジメント講座を開設し、主に現場で働く保育士が経営学を含む専門的な理論や知識なども学べるようにして、女性の社会進出に伴い、需要が高まるとともに保護者からの求めが多様化している保育サービスの質を底上げしてまいります。

 

 国も資格や一定の研修受講などの基準をつくり、受講状況などを確認できるシステムを開発するとしておりましたが、当社グループとしても30年間の経験を活かし、ナニー及びベビーシッターに必要な知識や技能の見える化を実現するため「ポピンズナニースクール(教育ベビーシッター養成講座)」と、その修了者を認定する「ポピンズナニー検定」を2019年4月よりスタートしております。

 また、2021年8月には、東京都より、当社グループのナニー/ベビーシッター向け自社研修が、民間企業として初めて国認定研修(注11)として認定を受けました。さらに、2022年9月には、東京都ベビーシッター利用支援事業の指定研修としても追加認定されたことにより、当社グループの自社研修がナニー・ベビーシッター関連の二大助成金事業の指定研修として国及び東京都に認められました。

 これにより、当社グループの自社研修を受講すれば、いち早く「認定ナニー/ベビーシッター」として活躍いただけるようになりました。さらに、当該自社研修の、当社グループ外のベビーシッターへの外販も進めることで、ベビーシッター業界全体のクオリティの向上にも貢献してまいります。

 これからも、当社グループの最高水準のサービス品質をさらに向上させてまいります。

 

(注)10 日本サービス大賞とは、日本生産性本部が主催し、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省が後援する「革新的な優れたサービス」を表彰する日本初の制度です。最優秀賞である内閣総理大臣賞をはじめ、サービスを管轄する各省の大臣賞、地方創生大臣賞などの各賞により、日本国内の”きらり”と光る優れたサービスを幅広く表彰します。ナニーサービスの授賞理由としては、「30年近く、働く女性の支援のため高品質のシッターサービスを提供し続けており、女性の活躍に大きく貢献するサービス。ナニー(教育ベビーシッター)の採用、教育、動機づけ、顧客との関係づくりなど、高品質サービスをつくりとどける工夫に加え、ICTを利活用した24時間365日の受付、最適なシッターとのマッチングなど利用者の利便性向上を追求している。顧客の状況に応じてサービスを提案するなど、個別ニーズにも応える高信頼のサービスである。」とされています。

   11 こども家庭庁ベビーシッター割引券などの国の助成に対応するベビーシッターは、保育士または看護師の資格を保有しているか、またはこども家庭庁が指定する研修を修了することが必須とされています。

 

③利益成長

ⅰ)事業シナジーを活かしたポートフォリオ経営

 当社グループは、子育て支援と介護支援という働く女性にとり必要不可欠なサービスを提供してきたことにより、創業から継続して売上高成長を実現し、直近5年間においてCAGR(年平均成長率)8.3%成長(新型コロナウイルスの影響を強く受けた2020年12月期を除く直近4年間においてはCAGR6.4%成長)を果たしてまいりました。

 

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 当社グループの事業は、下図に示すような事業ポートフォリオで構成されており、安定的な成長が見込めるエデュケア事業を「事業基盤」として、社会的ニーズが高いファミリーケア事業を「成長ドライバー」、グループ内の知見を集め、実践的な教育研修を行うプロフェッショナル事業を「育成事業」とし、新規事業であるペットケア事業、不妊予防事業などを展開することで、事業シナジーを生かしたポートフォリオ経営を実践し、当社グループ全体で高い利益成長を目指してまいります。

 

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 新規事業への取り組みは、当社グループにとって継続的に重要な取り組みであり、これまで働く女性をフルラインでサポートするため、スマートシッター株式会社(現 株式会社ポピンズシッター)の買収によるベビーシッターとお客様との直接オンラインマッチングサービスの導入や、株式会社ウィッシュの買収による学童事業・人材派遣業への進出等、事業領域の拡大とポストマージャ―インテグレーション(PMI:買収後の事業統合)により、収益性向上と利益拡大を図ってまいりました。

 加えて、2020年7月には、より付加価値の高いプログラム「ポピンズプラス」の提供を開始致しました。具体的には、オンラインも活用した元オリンピック選手やダンサー等のアスリートによる運動・ダンスプログラムやネイティブによる英語レッスン、そして、当社保育施設等で行っている多文化教育をヒントにオンラインで世界各国を訪ねるワールドツアーズ等を有償の付加的サービスとして提供しております。

 さらに、2021年6月には不妊予防に関するポータルサイトと企業研修サービスを提供する不妊予防事業を、2022年9月には、ペットケアサービスを、新規事業として開始しております。

 これら取り組みによりライフステージに応じて変化する、働く・働きたい女性の課題に切れ目なく対応する当社グループの事業形態の一層の充実について、オーガニック成長(自社内に蓄積された商品やサービス、人材、技術など、既存事業の内部資源をいかした収益拡大)に加えて、M&Aの活用を図り、他社のサービススコープには見られないユニークなビジネスモデルを追及してまいります。

 

ⅱ)デジタルトランスフォーメーション(注12)(ICT、AIの活用による生産性向上とビジネスの拡大)

 当社グループではQRコードによる入退室管理、園と保護者をつなぐ連絡帳の電子化といったICTによる保育現場の生産性向上の取り組みも2015年からスタートしております。

 2019年3月には、ベビーシッターをWebから予約できるオンライン型派遣サービス「ポピンズシステム」のアプリ対応版「ポピンズアプリ」を自社開発いたしました。「ポピンズアプリ」は当社グループが提供するサービス全体の窓口となる機能を有しており、保育・育児・介護サービスをワンストップサービスでご利用いただけます。さらに、豊富な顧客データベースを活用することにより、育児や介護をしながら働く女性のために、ライフステージにより変化するご利用ニーズに応じたご提案やマーケティングを行うことでシナジー効果を創出しております。

 将来的には自社システムを拡張していくほか、さまざまな情報を集約し、データ分析による予測サービスなどを提供していくなど、デジタルトランスフォーメーションによる生産性向上に取り組む方針であり、この活動を全社的かつ戦略的に推進し、ビジネス拡大に繋げる目的で2020年1月にはデジタルトランスフォーメーション部(DX部)を新設致しました。

 同部の推進により、以前から準備を進めていたオンライン保育のスタートが、新型コロナウイルスの影響で休園や登園自粛となった施設の利用者からのニーズにより早まり、2020年3月よりオンラインによる読み聞かせやダンス等の通常の保育サービスだけでなく、英会話や運動クラス等の有料プログラムも随時提供を開始しており、オンライン保育とリアルな保育の組み合わせによるハイブリッド型保育をいち早く導入し、いつでもどこでもポピンズのエデュケアを提供することが可能です。これらに加えて、今後、新技術にも積極的に投資してまいります。まずIoTの活用策として、保育施設において午睡チェックシステムや検温システムを導入して業務効率化を推進しております。

 また、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みとして、自動マッチングAIの開発により、ナニー・ベビーシッターのマッチング精度を向上させるとともに、音声自動予約による生産性向上を目指します。その次のステップとしては、情報共有AIの導入により、AIが情報解析のうえコーディネーターや保育士に当社のエデュケアノウハウに基づく推薦案を提示することで専門的かつ臨機応変な対応を可能とし、近い将来には、お客様とコンシェルジュの双方向のコミュニケーションを支援するAIコンシェルジェの開発を目指すことで、お客様の期待を超えるサービスを提供してまいります。

 

(注)12 “デジタルトランスフォーメーション”は2018年経済産業省で以下のように定義されております。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

 

(5)中期経営計画

 当社グループは、2023年2月14日に、2027年12月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画(オーガニック成長で2027年12月期の業績目標を売上高350億円・営業利益率10%・配当性向40%・ROE15%)を公表し、その達成に向けて取り組んでまいりました。しかしながら、わが国における少子高齢化の進展や、働き方・子育て・介護に関するあり方などの外部環境変化は、年間出生数の記録的な減少を筆頭に、中期経営計画公表時の当社想定を上回るスピードで急激に進み、各事業においても、以下のような事業課題への対処が求められております。

ファミリーケア事業においては、ベビーシッターサービスを中心に中期経営計画公表時の想定を上回る旺盛な需要拡大が続く一方で、数年後の業容拡大を見越した、サービス品質管理やリスク管理の体制構築が急務となっております。

エデュケア事業においても、保育所の待機児童解消がさらに進む一方、学童保育の待機児童顕在化が想定を超える速さで進展していることを踏まえ、2025年12月期以降の新規開発案件の獲得方針については、設備投資を伴わない学童児童館等の委託型施設に戦略の軸足を移しております。また、こども家庭庁による、人事院勧告に伴う公定価格の人勧改定率が、令和5年度は+5.2%、令和6年度は前述のとおり+10.7%と、過去に例のない高水準で示されたことは、エデュケア事業の売上高及び売上原価を共に押し上げる要因であり、結果的に当社の売上高営業利益率の押し下げ圧力となります。

また、全事業に共通する要因として、日本社会全体にわたる賃上げの流れ及び働き手不足の深刻化を踏まえ、中長期的な成長戦略の実現を支えることができる評価・報酬制度や待遇等の抜本的な見直しが、喫緊の経営課題であると認識しております。

こうした背景を踏まえ、また、売上高営業利益率に替わる、当社グループの経営効率性を示す指標(事業別の投下資本利益率(ROIC)などを含む)を提示する必要があると判断したことなどから、中期経営計画を見直すこととしております。

今後も当社グループは、引き続き旺盛な需要拡大が続くファミリーケア事業を成長ドライバーとしつつ、安定的にキャッシュ・フローを創出するエデュケア事業を事業基盤として、急速に進行する少子高齢化を含む市場環境及び政策などの外部環境変化に機動的に対応することにより、引き続き利益拡大を通じた企業価値向上を図ってまいります。新たな中期経営計画につきましては、事業環境等を総合的に勘案し、改めて見直したうえで2025年8月中を目途に公表することを予定しております。

 

なお、配当性向については引き続き連結配当性向40%前後を基本とし、中長期的にROE15%以上を目指す方針については、変更はありません。

 

(6)気候変動への取り組みとTCFDへの対応

 当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース:Task force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に賛同するとともに、気候変動関連リスク及び機会が当社グループの事業に及ぼす影響の把握、および分析を行い、気候関連の適切な情報開示を行ってまいります。

 当社グループは未来を創り、グローバルに羽ばたくお子様や、日本の礎を築き走り抜けた方々、そして、働く女性の皆様が健やかに生活できる世界を維持するために、気候変動に対しても何が出来るのかを考え、その抑制に寄与してまいります。

 

(TCFDの提言に基づく4項目についての情報開示)

①ガバナンス

 当社グループでは、気候変動を含むサステナビリティ課題について、全社横断的な対応を推進するため、CHROを委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。サステナビリティ委員会は原則年に2回開催され、サステナビリティ課題に対する基本方針や重要事項について審議・検討を行います。

 また、審議された内容は、原則年に1回取締役会へ報告し、事業活動や財務に重大な影響を与えると判断された事項については、取締役会にて、その対応方針や施策を審議・決議いたします。

 なお、サステナビリティ委員会では、様々な属性の社員の力が発揮できるよう、社内制度における課題の把握や対策、風土醸成のための取り組みについての全社横断的な対応も併せて推進しております。『働く女性の支援』という社会課題の解決をリードする企業を目指し、誰もが自分らしく活躍できる組織の実現に取り組んでおり、気候変動に対する取り組みと連携しながら、社会の変化に対応した持続的な企業価値の向上を実現してまいります。

 

②戦略

 TCFD提言では、気候変動に起因する事業への影響を考察するため、複数の気候関連シナリオに基づき検討を行う「シナリオ分析」を行うことが推奨されており、当社グループでも不確実な将来に対応した戦略立案・検討を行うために分析を実施いたしました。

 また、自社への影響のみならず、ターゲットとする「働く女性」にどのような影響が起こるのかまで包括的に考察を行うことで、気候変動によって起こる「働く女性」への影響に対して、当社グループがどのように対応・寄与していくべきかを考え、下記のようにシナリオ分析を実施しております。

 今回のシナリオ分析では、脱炭素に向けてより野心的な気候変動対策の実施が想定される「1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)」と、現状を上回る気候変動対策が行われず、異常気象の激甚化が想定される「4℃シナリオ」を参考に、定性・定量の両面から考察を行いました。なお、当社のカーボンニュートラルの目標達成年度である2050年に加え、SDGsの目標である2030年時点における影響を分析しております。

 

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(シナリオ分析)

 シナリオ分析の結果、1.5℃シナリオと4℃シナリオの両シナリオにおいて、異常気象の激甚化による自社事業活動拠点への被害が大きなリスクであると想定されました。ただし、当社グループでは、従来よりハザードマップを参考にし、物理的な被害が抑えられるような事業所作りを進めていたため、想定される被害についても最小限に留められており、自社の経営に大きな影響を与えるものではないと判断いたしました。今後もBCPを意識した事業所設営を進めるとともに、環境に配慮した設備や部材を用いた環境にやさしい事業所作りを行ってまいります。

 また、脱炭素社会への移行に伴い、「働く女性」の働き方や就業形態に変化が起こることが想定されました。

 当社グループは「働く女性」の活躍を支援するためのサービスを手厚く展開しており、社会貢献性の向上とともに収益機会の増加が見込めました。

 今後も当社グループは事業活動を通じて気候変動抑制に寄与するとともに、『働く女性の支援』という社会課題の解決をリードする企業を目指してまいります。

 

(特定した主なリスク・機会とその対応)

区分

項目

発生時期

考察

自社への影響度

当社対応方針

1.5℃

4℃

自社
グループ

への影響

カーボンプライシングの導入

中期~長期

炭素税や排出権取引などのカーボンプライシング導入により、操業コストが増加する。

↓↓

■再生可能エネルギーの使用

例:再エネ使用施設への事業所展開など

 

■換気設備に換気によって失われる空調エネルギーの全熱を交換回収する省エネルギー装置(全熱交換器)の採用

エネルギー
コストの変化

中期~長期

エネルギー費用の上昇が取引先の事業運営費用(原材料費・物流など)の上昇を招き、当社の操業コストを上昇させる。

■オフィス含む事業所の省エネ化

■環境に配慮した事業所作り(内外装・設備)

人口の変化

中期~長期

少子高齢化や人口の減少により、育児・保育サービスの需要が低下する。一方、シルバーケア事業や家事支援サービスについては需要が増加する。

↓↑

↓↓

■サービスを通した「働く女性への支援」

異常気象の
激甚化

短期~長期

台風や高潮などの異常気象の発生頻度や強度が強まることで、オフィスや物理的損害による操業不能や従業員に対する人的被害が発生し、業績悪化のリスクが発生する。

※一方で、気候変動リスクへの備え(開設立地、施設堅牢性、備蓄)、BCPによる被災園・事業の早期復旧により、社会的信頼・評価が向上し、入園者が増加する。

↓↓

↓↓↓

■「子どものためのSDGs」教育の推進

■災害発生時を想定した従業員向けの訓練・研修の実施

■物理的リスクに対して脆弱な資産(事業所など)の把握と災害対策対応

■ネット上で需給をマッチングし、お客様の自宅でサービスを提供するナニー・シッター事業、シルバーケア事業を伸ばし、物理的な事業拠点やエネルギー消費量を増やさずに事業規模を拡大

社会
(働く女性)

への影響

低炭素技術
の進展

中期~長期

環境技術分野における女性参画が増加。

働き方・就労形態が変化するに伴い、育児・保育サービスへの期待・需要がこれまでとは異なる方向へ変化。

↑↑

■サービスを通した働く女性への活躍支援

■在宅や近隣シェアオフィスで働く労働者が増える就労形態の変化に適応した、サービスの展開やサービス提供方法を開発

人口の変化

中期~長期

異常気象の激甚化や気象パターンの変化により、健やかな生活が危ぶまれ、少子高齢化の進行とともに人口が減少する。

↓↓

↓↓↓

■サービスを通した「働く女性への支援」

 

評価基準 - 想定される発生時期 -

 

評価基準 - 財務影響評価 –

 

 

 

:機会 :リスク ↑↓:リスク機会の両面

記載項目

項目の定義

 

記載項目

項目の定義

長期

11年~30年後に発生が想定されるもの

 

↑↑↑

1億円超の影響が想定されるもの

中期

4年~10年後に発生が想定されるもの

 

↑↑

1,000万円以上~1億円未満の影響が想定されるもの

短期

0年~3年後に発生が想定されるもの

 

1,000万円未満の影響が想定されるもの

 

(主なリスクにより想定される当社への財務的インパクト(2050年時点))

 

 0102010_011.png 0102010_012.png

 

③リスク管理

(リスクに対する管理と対応)

 当社グループでは、気候変動関連リスクについて「サステナビリティ委員会」にて管理を行います。

 サステナビリティ委員会では、各グループ会社から気候変動関連リスクを抽出し、発生可能性や財務的影響の大小から定性・定量の両面で評価を行います。また、当社では新たな取り組みに伴い発生するリスクや重大な外部環境の変化などのリスクを、「重要リスク」として設定しています。「重要リスク」であると判別されたものについては、取締役会にてその対応方針や施策を審議・決定することといたします。

 また、その他リスクもしくは、短期的かつ緊急対応を要する事項(気候変動関連リスクを含む。)もしくはその他リスクに関しては、「リスク管理委員会」にてその対応を審議し、関連会社・部署への指示を行います。

 気候変動関連リスクに関して緊急対応を要するため、リスク管理委員会で指示された対応については、その対応の進捗や、当社方針に沿った指示が適切に行われたのか等、サステナビリティ委員会で定期的なモニタリングを行います。

 サステナビリティ委員会及びリスク管理委員会にて、識別・評価されたリスクについては、原則年に1回、取締役会に報告を行うことで全社的なリスクマネジメントとしております。

 

④指標と目標

 当社グループは、気候変動対応への進捗を管理するための指標として、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標を採用しております。

 持続可能な社会の実現のために、パリ協定で掲げられた1.5℃目標に沿って、2050年カーボンニュートラルを目指し、中長期的な戦略及び施策の検討を行ってまいります。

 

<当社事業活動におけるGHG排出量と削減目標>

区分

2019年

2020年

2021年

2022年

0102010_013.png

Scope 1,2合計 (t-co2)

1534.25

1548.82

1715.17

1739.52

内訳 Scope 1 (t-co2)

390.86

425.51

474.01

503.17

   Scope 2 (t-co2)

1143.39

1123.31

1241.16

1236.35

延べ床面積あたり(t-co2/㎡)

0.060

0.056

0.059

0.056

 

※算定対象:グループ会社含むオフィス及び事業所 ※テナント入居している拠点を除く

Scope1 : 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)

Scope2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出

 

(7)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループとして、上記のほか、保育・学童施設運営やナニーサービス・ベビーシッターサービス等の子育て支援事業や介護事業に対する国や社会の関心が高まる中で、さらなる事業拡大に向けた重要課題として以下の点に取り組んでまいります。

 

①人材の確保

i)子育て支援事業(ファミリーケア事業(チャイルドケアサービス)・エデュケア事業)

 日本社会全体にわたる賃上げの流れ及び働き手不足の深刻化を踏まえ、子育て支援業界でも、人材獲得競争の激化が続いております。しかしながら、子育て支援業界のパイオニアを自負する当社グループとしては、高品質なサービスを維持し、子育て支援事業を引き続き拡大させるために優秀な人材の確保が必要であります。

 チャイルドケアサービス(ナニーサービス・ベビーシッターサービス)においては、子育て経験をキャリアとして評価し、女性とシニアの活用に積極的に取り組んでおり、当社グループが株式会社として唯一、こども家庭庁ベビーシッター割引券及び東京都ベビーシッター利用支援事業という二大助成金の適用を受けるための指定研修として認定を受けたベビーシッター自社研修を通して、新たなナニー・ベビーシッターを養成しております。

 エデュケア事業においては運営する保育施設数の増加に伴い、保育士やスタッフの確保が急務となるため、新卒採用及び中途採用の強化に取り組んでおります。

 2024年度は年間を通して約500人の保育スタッフ(約300人の保育士を含む。)を採用いたしました。保育士確保は依然厳しい状況が続いておりますが、就職フェアの出展などを通じて就職希望者との接点を増やしているほか、地方採用も積極的に行っており、地方から首都圏に上京して働く人に向けて借上げ社宅などのサポート施策を準備する等、様々な方法を駆使し、保育施設運営上の必要数の充足に努めております。

 保育士の処遇改善については、2013年度の「安心こども基金」を活用した「保育士等処遇改善」以降、国からの補助金は年々増えており、2017年度には「保育士等処遇改善Ⅱ」によりキャリアアップによる給与改善の財源が確保されてきております。また、保育士の給与については、岸田政権が、2022年2月から教育・保育の現場で働く方々の収入の引上げを目的として開始した「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業(現在の処遇改善等加算III)」等も活用して、改善に取り組んでおります。

 上記に加え、中長期的な成長戦略の実現を支えることができる評価・報酬制度や待遇等の抜本的な見直しが、喫緊の経営課題であると認識し、各種制度や報酬水準の見直しに取り組んでおります。

 

ⅱ)ファミリーケア事業(シルバーケアサービス)

 介護業界ではホームヘルパー2級保有者など有資格者に対する需要が高く、今後高齢者在宅ケアサービスを拡張するうえで、人材の確保が何よりも重要になります。なかでも当社グループのVIPケアサービスはオーダーメイドの在宅ケアサービスであるため、介護だけではなく家事支援、調理、茶道・華道等、幅広いサービスを提供していくため、そのサービスを提供するにふさわしい、素養のある人材の確保に力を入れております。

 子育て支援業界と同様に、日本社会全体にわたる賃上げの流れ及び働き手不足の深刻化を踏まえた人材獲得競争の激化が続いておりますが、当社グループの提供サービスは介護保険適用外のサービスが中心であり、介護保険適用の訪問介護事業で働く介護士の報酬に比べて自由度が高いこと、働き方も一軒のお宅でじっくりお世話を行うため移動の時間が少ないこと、また、研修も充実していることなどの特色を踏まえて、人材獲得を強化しております。さらに、中長期的な成長戦略の実現を支えることができる評価・報酬制度や待遇等の抜本的な見直しにも取り組んでまいります。

 

②人材の育成

 人材サービス業である当社グループは、人材こそが宝であり、お客様に最高水準のサービスを約束するオンリーワン企業となる事を目指して、人材育成が重要な経営課題であると捉えております。そのため、下記のような様々な人材育成システムを通じて教育の機会を提供しております。

 社員には、社内講師や専門家による階層別研修、専門研修、任意研修、eラーニング研修のほか、ポピンズ蓼科研修センターでの合宿研修や海外研修を通じ、常に質の高いサービスを提供するために、人材への継続的な教育投資を実施しております。また、ナニー及びベビーシッターやケアスタッフ向けには採用時及び更新時の研修を定期的に実施しております。

 さらに、ナニー及びベビーシッター向けにナニー検定やナニースクールによるキャリア開発支援を行うとともに、ケアスタッフ向けに高齢者の健康に配慮しつつも満足していただける食事のレシピについての講習会を開催するなど、その人材の養成とサービスレベルの強化に努めております。

 

③コーポレート・ガバナンスの強化

 当社は、経営の効率化及び透明性の向上、並びに企業価値の向上のためには、コーポレート・ガバナンスの確立が不可欠であると認識しております。

 そのため、東京証券取引所が公表しているコーポレートガバナンス・コードへの対応を含め、社外取締役を中心とした任意の指名・報酬諮問委員会の設置や、内部統制システムの十分性及びリスク管理体制の評価など、社外取締役による監督・牽制機能の強化、「ポピンズグループ人権方針」に基づく人権尊重の企業体質確立などの取り組みを推進してまいります。

 その一環として、当事業年度においては、人権尊重に対する当社取締役の意識強化及びハラスメント研修の強化を進めました。加えて、当社グループの業務に従事するすべての者(役員、正社員、契約社員、アルバイト、ナニー・ケアスタッフ・ベビーシッター等の業務受託者、派遣社員等を含む)にとってより利用しやすい内部通報(公益通報)窓口として、当社グループから独立した法律事務所に運営を委託する社外窓口「ポピンズほっとライン」を設置しております。

 

④コンプライアンスへの取り組み

 児童福祉法や介護保険法及び労働者派遣法や職業安定法をはじめとする各種関連法令の遵守を厳格に実施しております。また、お客様の個人情報についても、法律に則った取扱いを徹底しております。そのために、内部監査、法務、財務経理、人事等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社内規程の拡充整備に取り組んでおります。加えて、社員研修等により日常的にコンプライアンスへの意識を高めることで、さらなる内部管理体制の強化を図るとともに、コンプライアンスの徹底に努めてまいります。

 

⑤安定的な資金調達の確保と財務基盤の強化

 引き続き保育施設の開設を進めるとともに、DX(デジタル・トランスフォーメーション)への投資や新規事業及びM&Aによる事業拡大を図っていくためには、必要な資金を安定的に調達することが重要となります。当社グループでは、複数の金融機関と緊密な取引関係を維持し、資金調達の安定性と財務基盤の安全性を高めるよう努めております。

 

⑥グローバル対応力の強化

 アジアには日本の企業が数多く進出しており、そこに事業所内保育所のニーズがあると考えております。

 現在、ハワイで託児施設を運営しておりますが、今後は海外の事業者との戦略的提携によるグローバル展開や、海外での保育施設運営を目指してまいります。

 

⑦多様な人材の活用(外国人材、アクティブシニア等)

 少子高齢化による人材不足の解消は、女性とシニア、そして外国人材にいかに活躍いただくかにかかっております。

 当社グループには、2024年12月現在、65歳を越えて働く人材が保育・学童施設等で400名以上、ナニーでは300名以上、活躍しております。当社グループの事業分野においては、年齢、性別、国籍を問わず多様な人材が持てる技能・経験・語学を活かして貢献いただけると考えております。

 

⑧新規事業への取り組み

 当社グループでは、2021年6月に不妊予防事業をスタートしております。これまで当社グループは、出産後の女性のライフステージに寄り添ってまいりました。しかし日本では、不妊治療とキャリアを両立できず悩んでいる女性が数多くいるという現実があります。この現実を踏まえ、出産前の女性が抱える「不妊」という問題に向き合い、働く女性が切れ目なく活躍できるように、支援の領域を広げ、当社グループ独自の不妊予防ポータルサイトの機能拡充や、企業研修の提供等を通じて、不妊予防におけるプラットフォームサービスを提供してまいります。また、実用化されると簡単な質問項目に答えるだけで、月経異常症や卵巣機能不全のリスクを知ることができる『不妊予防のための早期診断セルフチェックシート』の開発に向けて順天堂大学との間で臨床研究が最終段階に進んでおり、福利厚生として導入していただけるよう、行政・企業への働きかけを進めてまいります。

 2022年9月には、ペットケアサービスをスタートしております。当社グループが展開するファミリーケア領域(ナニー・ベビーシッター、家事代行、介護)において、安心のポピンズブランドで「家族の一員」であるペットの健康と幸せをサポートするペットシッターを派遣し、ペットもご家族の一員としたワンストップのサービス提供を目指します。ペットケアサービスの立ち上げにより、さらに切れ目のないサポートで働く女性やご家族を支援してまいります。

 

⑨SDGsの当社グループ経営へのさらなる取り入れ

 2020年12月21日に東京証券取引所市場第一部に上場した際に、調達資金の使途に関し、当社グループのこれまでの取り組みによるSDGsへの貢献についてセカンドパーティ・オピニオンによる第三者評価を取得いたしました。当社グループがおかれている経営環境や当社グループの経営戦略を踏まえ、社会課題対応に向けた取り組み状況の開示や、当社グループの経営目標への組入れ等により、引き続きSDGsを当社グループの経営の中核に位置付けてまいります。

 具体的には、保育所での付加的サービス提供を含めた保育の質向上、待機児童のさらなる解消、保育所との両輪となるベビーシッターサービスの子育て社会インフラとしての確立、介護離職回避やアクティブシニアの活用、DXの活用による保育士等の労働環境のさらなる改善等、経営戦略として達成すべき事項をSDGsの観点を交えて設定してまいります。

 

⑩事業成長戦略とDX戦略の推進

 「規模及び範囲」の拡大、つまり当社グループの事業成長戦略としては、1つめに既存事業であるファミリーケア事業、エデュケア事業、プロフェッショナル事業の拡大、2つめに新規事業である、ペットケアサービス、不妊予防などの育成に、引き続き取り組んでまいります。そのいずれについてもM&A及び戦略的提携を掛け算することにより、更なる成長を目指します。

 そして当社グループが一番の強みとする「クオリティ」を向上させる事業戦略としては、これまで35年以上にわたり当社グループが培ってきた有形無形の資産を活用した、人材確保・育成、R&D、SDGsの推進に取り組んでまいります。

 そのうえで「生産性」を向上させるため業務改革、働き方改革、ICTやIoTの活用により業務効率化及び付加価値向上に注力してまいります。

 それら全てに対して、常に、当社グループの「DX戦略」が掛け算となります。「顧客DB」「人財DB」の活用に加え、今後はAIの活用やプラットフォーム化を通じ、「人のぬくもりや優しさに価値を置くDX戦略」を実現してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループでは、サステナビリティに関する課題への対処を、重要な経営課題と位置づけ、以下のようなガバナンス、戦略、リスク管理並びに指標及び目標のもとに、取組みを進めております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社グループでは、「ポピンズグループ人権方針」に基づく人権尊重の企業体質確立などの取り組みや気候変動を含むサステナビリティ課題についての全社横断的な対応の推進、並びに、様々な属性の社員の力が発揮できるよう、社内制度における課題の把握や対策、風土醸成のための取り組みについての全社横断的な検討を行うため、CHROを委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。サステナビリティ委員会は原則年2回開催され、サステナビリティ課題に対する基本方針や重要事項について審議・検討を行います。

 また、審議された内容は、原則年に1回取締役会へ報告し、事業活動や財務に重大な影響を与えると判断された事項については、取締役会にて、その対応方針や施策を審議・決議いたします。

 特に気候変動への対応についての詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (6) 気候変動への取り組みとTCFDへの対応」に記載の通りであります。

 

(2)戦略

 人材サービス業である当社グループは、人材こそが宝であり、成長の原動力です。マルチステークホルダーの一角である「社員」のやりがいや成長を、お客さまや株主の利益と同じように、より一層大事にしていくことにより、お客様に最高水準のサービスを約束するオンリーワン企業となることを目指しております。今後も社員のやりがいや成長を後押しする、様々な人材育成システムを通じて、持続的成長及び企業価値向上を実現してまいります。

 また、当社グループでは気候変動への対応について、TCFD提言に基づき、気候変動に起因する事業への影響を考察するため、複数の気候関連シナリオに基づき検討を行う「シナリオ分析」を行っており、不確実な将来に対応した戦略立案・検討を行うために分析を実施しております。

 自社への影響のみならず、ターゲットとする「働く女性」にどのような影響が及ぶのかまで包括的に考察を行うことで、気候変動による「働く女性」への影響に対して、当社グループがどのように対応・寄与していくべきかを考え、脱炭素に向けてより野心的な気候変動対策の実施が想定される「1.5℃シナリオ(一部2℃シナリオも併用)」と、現状を上回る気候変動対策が行われず、異常気象の激甚化が想定される「4℃シナリオ」を参考に、定性・定量の両面から考察を行いました。なお、当社のカーボンニュートラルの目標達成年度である2050年に加え、SDGsの目標である2030年時点における影響を分析しております。詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (6) 気候変動への取り組みとTCFDへの対応」に記載しております。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、気候変動関連リスクや人権侵害の懸念等を含むサステナビリティ関連リスクについて「サステナビリティ委員会」にて管理を行います。

 サステナビリティ委員会では、各グループ会社から気候変動関連リスクや人権侵害の懸念等のリスクを抽出し、発生可能性や財務的影響の大小から定性・定量の両面で評価を行います。また、当社では新たな取り組みに伴い発生するリスクや重大な外部環境の変化などのリスクを、「重要リスク」として設定しています。「重要リスク」であると判別されたものについては、取締役会にてその対応方針や施策を審議・決定することといたします。

 また、その他リスクもしくは、短期的かつ緊急対応を要する事項(気候変動関連リスクや人権侵害の懸念等を含む。)もしくはその他リスクに関しては、代表取締役社長グループCEOを委員長とする「リスク管理委員会」にてその対応を審議し、関連会社・部署への指示を行います。

 気候変動関連リスクや人権侵害の懸念等に関して緊急対応を要するため、リスク管理委員会で指示された対応については、その対応の進捗や、当社方針に沿った指示が適切に行われたのか等、サステナビリティ委員会で定期的なモニタリングを行います。

 サステナビリティ委員会及びリスク管理委員会にて、識別・評価されたリスクについては、原則年に1回、取締役会に報告を行うことで全社的なリスクマネジメントとしております。

 特に気候変動への対応についての詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (6) 気候変動への取り組みとTCFDへの対応」に記載しております。

 

(4)指標及び目標

 当社グループは「(2)戦略」における人材育成に関する方針について、本報告書提出日現在において、当該方針についての具体的な指標及び目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータ収集及び分析を進め、開示項目を検討してまいります。具体的には、社員一人ひとりのやりがいや成長を通じた幸福度の向上が、最高水準のサービスや高い生産性を実現する原動力になると捉え、エンゲージメントをはじめとした各種指標及び目標を設定します。これらをモニタリングすることで、グループ全体ならびに各事業の取組みの進捗確認及び改善に活用していくことを検討してまいります。

 また、当社グループは、気候変動対応への進捗を管理するための指標として、GHG(温室効果ガス)排出量の削減目標を採用しております。

 指標及び目標の詳細は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 目標とする経営指標」に記載しております。

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績及び財政状態等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 

(1)事業に関するリスク

①少子化や待機児童減少について

 チャイルドケアサービス(ナニーサービス、ベビーシッターサービス)においては、少子化の進行により、将来、児童数がさらに減少した場合には、ナニー・ベビーシッターのニーズも減少する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 一方で、女性の社会進出やベビーシッター利用への社会的認知度の増大により、ベビーシッター市場は、当社独自の推計(※)によれば、2020年の320億円から2030年には1,000億円規模に到達するものと推定しております。

 当社グループでは、顧客ニーズの多様化や個別化に対応したチャイルドケアサービス事業の展開を行っており、少子化の進行ペースを上回る、さらなる事業拡大に努めてまいります。

※ 国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、厚生労働省「2021年国民生活基礎調査」、全国保育サービス協会「ベビーシッターNOW 2022」、リンナイ「世界5カ国の「ワーキングママの育児事情」に関する意識調査(2019年)」、ほかに基づき当社独自推計

 

 エデュケア事業においては、待機児童対策のための保育所の新規開設はピークアウトしており、保育所定員が前年2023年時点の305万人から、2024年時点で304万人と前年比0.6万人の減少に転じました。新型コロナウイルス感染症の影響も含めた少子化・出生数減少の影響を受け、保育所利用者数は前年2023年時点の272万人から、2024年時点で271万人と前年比1.2万人減と、2年連続で減少しております。今後については、女性の就労率の上昇や、非正規雇用者の正規雇用化、共働き世帯割合の増加が、引き続き進むことが想定されるため、保育所の整備が進んでも潜在的な待機児童数の高止まりは継続すると、当社グループとして見込んでおります。一方で、少子化の進行はコロナ禍以降、さらに加速しており、将来的には想定した園児数の獲得が困難となる可能性があります。エデュケア事業の収益は主に園児や児童の人数に応じて増減するため、想定した園児数等の獲得ができない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 人材派遣・紹介事業においては、将来児童数がさらに減少した場合、保育士等の紹介や派遣需要が減少する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループの対応策としては、保育士等の紹介事業には派遣事業と一体となった効率的な営業・オペレーション体制と共に、保育・学童施設の利用者の動向や事業環境の変化に対応した「働く女性の支援」に資する事業の在り方を継続して検討してまいります。

 

②国や自治体による方針の改訂について

 当社グループは、2024年12月現在8つの自治体から居宅訪問型保育事業(※)の認可を受け、ナニーサービスを提供しております。今後ベビーシッター事業に関連する国や自治体の方針が変わり、居宅訪問型保育事業が縮小された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

※ 子ども・子育て支援法における地域型保育事業の一つとして位置づけられており、主に医療的ケアが必要な幼児の居宅において、保育者による1対1の保育を行うものであり、待機児童の多い都市部の保育では、この仕組みを利用した、待機児童対策が行われております。

 

 当社グループのシルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)事業のうち介護保険の対象となる訪問介護については、「介護保険法」の規制の対象となります。将来、介護保険法が改正され、介護保険適用対象になるサービス受給者ないし受給額が減少した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループのエデュケア事業のうち認可保育所及び認証保育所については、国あるいは地方自治体の許認可が必要であり、待機児童の動向等を考慮して、自治体ごとに年度の新設保育所の数が決定されます。また、既存の認可保育所及び認証保育所についても、将来、補助金の減額が行われることも考えられます。したがって、かかる政策変更が行われた場合には、当社グループにおける子育て支援事業の成長が止まり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 研修事業において現在、保育士の待遇向上と専門性の強化に向けてこども家庭庁が定めた保育士等キャリアアップ研修や子育て支援員研修の国や自治体の研修委託を多数受けておりますが、今後待機児童問題が解消し、保育士不足の問題が一巡して国や自治体の方針が転換された場合、研修受託が減少し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループの対応策としては、各事業に関連する政策動向を緊密にモニタリングすることで、かかる事業の顕在化リスクの早期把握に努めており、国や自治体の方針改訂に対応した「働く女性の支援」に資する事業の在り方を継続して検討してまいります。

 

③既存保育施設の賃貸借契約について

 保育施設に適した物件の確保は、立地条件、環境、物件の質、広さ等の条件を満たすものでなければならず、物件の選定が他の業種と比較して困難であることから、絶対的な物件数が少ない状況にあります。

 当社グループにおいては、保育施設の環境とともに採算性を重視しており、保証金、賃借料等の開設条件に見合う物件を確保してきておりますが、賃貸物件の契約が更新できない場合、又は契約更新時に賃借料が上昇した場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策としては、情報網の整備、デベロッパーとの緊密な事業提携や、施設運営のさらなる効率化や付加的サービス提供に向けた取り組み強化により、採算性の維持・向上に努めてまいります。

 

④食の安全について

 当社グループのエデュケア事業では、食育を重視しており、本社の栄養士チーム監修による献立に基づき、各施設にて素材にこだわった給食やおやつを手作りで提供しております。そのため、新鮮さ、栄養価、安全性など食材の品質に留意しております。また、「食品衛生法」に沿った厳正な食材管理及び衛生管理と食品アレルギー対策の徹底により、食中毒やアレルギー等の事故の防止に努めております。また、ナニー、ケアスタッフ、家事支援スタッフがご家庭で調理を行う場合も同様の衛生管理の徹底を行っております。

 しかしながら、何らかの原因により食の安全性に重大な問題が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、マニュアルを作成し、研修を実施するなど食の安全を確保するための取り組みを行うとともに、重大な問題が生じた場合、品質管理会議(月1回)において報告と改善状況を監視するとともに、本支社役職員及び各施設の施設長が参加する全体会議において、通達事項の共有及びISO9001QMSのトラブルを共有し、原因究明と再発防止に努めております。

 

(2)組織体制に関するリスク

①人材の確保、育成について

 2025年1月の保育士の有効求人倍率は3.78倍と、前年同月(2024年1月:3.54倍)をさらに上回る水準となり、他業界を含めた人材の獲得競争が激化しております。当社グループでは、処遇改善のほか、働き方改革による残業削減や、働き甲斐のある職場づくりに努めてまいりますが、万一、予定した人材の確保に遅れ等が生じた場合、既存施設の運営計画や新規施設の開園計画に遅延等を及ぼす可能性があるため、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループでの対応策としては、保育士に「副業・兼業制度」を導入するとともに、保育士たちが保育施設で働きながら副業としてベビーシッターとしても活躍できる「ベビーシッター付ナーサリー」を推進しております。

 また、当社グループでは、ナニー及びベビーシッターやケアスタッフ、家事支援スタッフ等各事業サービスを運営する人材を確保することは重要な経営課題であります。人手不足が深刻化する中で、各種人材の採用も年々難しくなる中、共働き世帯の増加による働く女性の拡大に伴い、当社グループが提供する各種サービスの利用ニーズは増える一方となっております。採用活動の強化やナニー検定、ナニースクール等に基づく人材育成を図っておりますが、万一、欠員補充や新規人材の確保が計画どおり進まず、サービス提供体制の維持や人員基準を満たせなくなった場合や、ナニーやケアスタッフなどの稼働状況が想定を下回った場合には、サービス提供に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの対応策としては、急激な需要の拡大にも対処できるよう、採用活動の強化やナニー検定、ナニースクール等に基づく人材育成プログラムの充実を図るとともに、集合・対面研修だけでなく、動画配信や双方向型のオンライン研修を組み合わせたハイブリッド型の教育研修の仕組みを拡充することで、質の高い人材の確保、育成に努めてまいります。

 上記に加え、日本社会全体にわたる賃上げの流れ及び働き手不足の深刻化を踏まえ、中長期的な成長戦略の実現を支えることができる評価・報酬制度や待遇等の抜本的な見直しが、事業共通の喫緊の経営課題であると認識し、各種制度や報酬水準の見直しに取り組んでまいります。

 

②内部管理態勢について

 当社グループでは、業務上の人為的ミスや社員による不正行為等が発生することのないよう、教育研修強化及び内部牽制機能の強化に努めております。しかしながら、将来的に内部管理上の問題が発生した場合、ステークホルダーからの信頼性が低下し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの対応策として、法務コンプライアンス部が中心となり、マニュアルの作成や研修の実施、内部通報制度の運用など、予防対策の徹底、当社グループ内の遵守に努めると共に、リスク管理委員会への報告及びリスク管理委員会の運営を通した、取締役会よるリスク管理体制の評価・改善指導に取り組んでまいります。

 

③個人情報の流出について

 当社グループでは、園児や児童から高齢者まで様々な年代のお客様及びその保護者・家族の氏名や住所に加えて人材派遣・紹介サービス登録者など多くの個人情報を保持しているため、個人情報を厳重に管理のうえ、慎重に取り扱う体制を整えております。万が一漏洩するようなことがあった場合には、利用者を含め広く社会的な信用を失うこととなります。その結果、ナニーサービス及びベビーシッターサービスやシルバーケアサービス利用者の退会、園児の退園、人材派遣・紹介登録者の減少、保育施設等の新規開設等に影響が出ることにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、2017年に情報セキュリティマネジメントに関する国際品質規格ISO27001(品質マネジメントシステム)の認証を取得いたしました。事業の全ての領域において、積極的に情報セキュリティに取り組み、お客様の情報資産を安全に管理することが経営課題であると自覚し、情報セキュリティを確保することで安全・信頼・最高水準のサービスという創業以来、当社グループが積み重ねてきたブランドイメージをさらに高め、顧客満足度を向上させてまいります。

 また、具体的な対応策として、本支社担当役職員、ISO内部監査員が参加する品質管理会議(月1回)において、ISO27001ISMSによる情報インシデントについて報告と改善状況を監視しており、原因究明と再発防止に努めております。

 

④多様な人材の活用(外国人材、アクティブシニア等)について

 当社グループでは、女性とシニア、そして外国人材の活用に取り組んでおります。しかしながら、これらの多様な人材が十分確保できなかった場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(3)外部環境に関するリスク

①法的規制等について

 エデュケア事業では、各保育所の多くが認可保育所、東京都認証保育所、事業所内保育所など運営上、様々な法的規制のもとで運営されております。また、高齢者在宅ケア事業では介護保険対象外のVIPケアを主力としているものの、介護保険法等諸制度に基づいたサービスの提供も行っております。したがって、今後、法的規制が何らかの形で強化あるいは変更された場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの対応策としては、このような制度変更リスクから受ける影響をできる限り緩和するべく、保育所の運営形態を多様化するとともに、制度上の影響を受けないチャイルドケアサービス事業の強化育成など、事業ポートフォリオのバランスをとるべく努力しております。

 なお、当社グループの事業に関連する主な法的規制等は以下のとおりであります。当社グループにとって主要な関連法令である児童福祉法においては、万一、関係法令の規定水準に達しない場合や、給付費の請求に関し不正があったとき、また、改善命令や事業の停止命令に従わず違反したときには、許認可が取り消される場合があり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

ⅰ)チャイルドケアサービス事業

 児童福祉法

ⅱ)シルバーケアサービス事業

 介護保険法、食品衛生法

ⅲ)エデュケア事業

 児童福祉法、児童福祉施設最低基準、食品衛生法

 

ⅳ)人材派遣・紹介事業

 職業安定法

 有料職業紹介事業の許可要件労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)

 

②雇用情勢の変化等について

 人材派遣・紹介業界は、産業構造の変化、社会情勢、景気変動、法改正に伴う雇用情勢の変化等に影響を受けます。現状の需要は堅調に推移しておりますが、今後、様々な要因により雇用情勢もしくは市場環境が悪化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。景気後退に伴う新規人材需要の減少や既存の顧客企業における業務縮小・経費削減等により人材需要が大きく減退した場合、人材派遣における労働者派遣契約数の急激な減少、転職市場における求人需要の大幅減少に伴う人材紹介事業の事業規模縮小など、当社グループの事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他のリスク

①感染症について

 当社グループでは、施設や居宅において子育てや介護支援のサービスを提供しており、顧客や従業員が新型コロナウイルスをはじめとする感染症に罹患する可能性があります。当社グループでは、安全・安心なサービス環境を確保するため、感染症対策を徹底しております。

 しかしながら、新型インフルエンザやコロナウイルス等、人類が免疫を持たない未知の感染症が流行した場合、従事する保育士や指導員、ベビーシッター、ケアスタッフ等が多数欠勤することで施設の運営が困難となりうる他、感染症蔓延地域におけるベビーシッターのキャンセルなど、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、新型コロナウイルス感染症等に対するリスク管理に万全を期すため、危機管理委員会を開催し、感染症の流行に対する予防対策の徹底、予兆の発見と対処、感染者発生時の対処と原因究明、再発防止策の指示を行っており、引き続き対応を図ってまいります。

 

②事故・安全管理について

 当社グループのチャイルドケアサービス事業やエデュケア事業では0歳から学童までを対象としております。そのため、サービス提供の際に不測の事故等が発生する可能性を完全に排除することは困難であると考えております。また、昨今、小学校等において外部侵入者に対する危機管理の徹底が行われつつあります。保育施設でも同様な管理体制が不可欠ですが、保育事業は学童よりさらに低年齢の園児が対象であり、かつスタッフもまだまだ男性が少ないことからも、さらに徹底した対策が必要になります。万一これらの事故が発生して当社グループの責任が問われるような事態が発生した場合には、当社グループへの信頼の低下、ブランド価値の毀損及び訴訟等の費用により、当社グループの今後の事業展開及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、定期的に行う全体会議や施設長ミーティング等で、起こりうる事故や起きてしまった事故の情報共有や対策検討を徹底しており、ISO9001による従業員への定期的教育及び業務マニュアルの遵守、また保険への加入等対応には万全を期しております。さらに、保育施設では、施錠の徹底や外部セキュリティ管理機関との契約等により、施設入出管理には徹底した配慮を行っており、当社グループは、施設の運営において園児や児童の安全に配慮し、万全の体制で臨んでおり、これまでに経営成績に大きな影響を与えるような事故等は発生しておりません。

 シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)事業では、介護保険適用サービス対象の顧客は主に要介護認定を受けた高齢者を対象としていることから、サービス提供時には身体に負担を与えることも考えられ、その結果、顧客の体調悪化等が生じる可能性があるほか、介護サービス提供時における事故の可能性も否定できないと考えております。万一これらの事故が発生して当社グループの責任が問われるような事態が発生した場合には、当社グループへの信頼の低下、ブランド価値の毀損及び訴訟等の費用により、当社グループの今後の事業展開及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、定期的に行う全体会議等で、起こりうる事故や起きてしまった事故の情報共有や対策検討を徹底しており、ISO9001による従業員への定期的教育及び業務マニュアルの遵守、また保険への加入等対応には万全を期しております。

 

 さらに、当社グループでは、本支社担当役職員、ISO内部監査員が参加する品質管理会議(月1回)において、ISO9001QMSの品質管理目標の進捗とケガ・事故・クレームなどのトラブルについて報告と改善状況を監視するとともに、前述のとおり、本支社役職員及び各施設の施設長が参加する全体会議において、通達事項の共有及びISO9001QMSのトラブルを共有し、原因究明と再発防止に努めております。

 

③自然災害について

 当社グループでは、全国において保育施設、学童施設等運営のサービスを展開しております。地震や津波等の大規模な自然災害が発生した場合、当該エリアにおいて、スタッフ等の安全への懸念及び当社グループの事業所が稼動できない状況になると考えられます。当社グループでは、事業所機能の早期復旧や支援スタッフの派遣等、サービス提供体制の維持に努めてまいりますが、サービス提供ができなくなる場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 本社・各支社・事業所において、緊急時における事業継続に係るリスク対策を総点検し、顧客の安全を最優先とした危機管理体制の強化を図ってまいります。

 当社グループでは、危機管理委員会において、災害発生時に備えた備蓄や訓練、想定される被害を最小限に抑制するための対策の徹底、災害発生時の対処と事後復旧策の指示を行っており、引き続き対応を強化してまいります。

 

④競合他社の参入について

 保育所への入所を希望する児童数(待機児童)は、首都圏においても減少傾向にあります。このような状況下、エデュケア事業における保育所の受託競争は激化しており、一部の地域では価格競争になるケースもあります。また、既存の保育所においても、待機児童解消のため近隣に新たな認可保育所が開設された結果、園児の獲得競争になるケースも発生しております。当社グループでは、価格競争の受託案件には参加せず、自治体や委託法人から「高品質の保育」の維持に対する理解を得ることにより、高付加価値サービスの提供に努めておりますが、今後多様な業種からの参入が相次ぎ、競合他社との競争がさらに激化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 チャイルドケアサービス事業のナニーサービスにおいては、当社グループの自社開発システムであるポピンズシステムを活用した顧客情報の管理とスタッフによる適切な登録ナニーのマッチング体制を整えております。当社グループは、ベビーシッター事業者最大手として長年蓄積してきた実績とブランド力に加えて、顧客に最高水準のサービスを提供できるナニーを育成する充実した教育体制を備えており、これは一朝一夕でできるものではないため、高付加価値を求める顧客層向けのナニーサービスにおける参入障壁は高いと考えております。また、ベビーシッターサービスについても、お客様がオンライン上で自らベビーシッターを選ぶことができるサービスの利便性・自由度に加えて、ナニーサービスで培ったノウハウや、それらを基盤とした基礎研修や事故・お怪我・クレーム対応の共通化を掛け合わせることや、ポピンズブランドへの厚い信頼等により、他社が提供するオンラインマッチング型のサービスとは、高いレベルで差別化がなされていると考えております。一方で、他業界から大手企業が新規参入した場合もしくは価格競争が激化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)事業においては、当社グループは介護保険適用外のVIPケアサービスを事業の主力としており、現状では同様のニーズを満たしたサービスを提供する事業者には限りがありますが、今後同様のサービスを提供する競合他社が参入し、競合他社との競争がさらに激化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当社グループの対応策としては、競合他社の動向や新規参入などを緊密にモニタリングすることで、かかる事業の顕在化リスクの早期把握に努めており、競争環境の変化に対応した「働く女性の支援」に資する事業の在り方を継続して検討してまいります。

 

⑤減損会計が適用されるリスクについて

 当社グループの保育施設は、土地及び建物を賃借しておりますが、一部の保育施設については内装設備等を資産計上しております。今後、固定資産を保有する保育施設の収益性が低下する等、固定資産の減損に係る会計基準及び固定資産の減損に係る会計基準の適用指針により減損損失を認識する事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策としては、各業態単位で施設の収益管理PDCA(人員配置、定員管理、コスト管理)を徹底し、必要に応じて施設ごとの改善対策を明確化することで、損失処理の発生を未然に予防するとともに、発生した場合の最小化に努めてまいります。

 

⑥季節変動について

 当社グループにおける保育施設等は4月に新規開設されるものが多くなります。また自治体より受託している保育士研修事業等は6月以降に開始され翌年2月頃まで実施されることが多い傾向があります。そのため、第2四半期連結会計期間(4月~6月)において、備品等の新規開設費用が計上されることや一部事業で売上が減少することにより利益が一時的に低下する傾向にあります。

 

⑦グローバル展開について

 今後は海外の事業者との戦略的提携によるグローバル展開や、海外での保育施設運営を目指してまいりたいと考えておりますが、海外特有の法的規制やカントリーリスク、為替リスクなど様々なリスクがあり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

⑧新規事業への取組みについて

 当社グループでは、新規事業として、不妊予防事業、ペットケアサービス等を展開しております。しかしながら、新規事業の取組みには不確実な要素が多く、市場環境の大きな変化や競合他社の動向など様々な要因により、計画通り新規事業を拡大することが困難な可能性があります。

 当社グループの対応策としては、新規事業の成長性と収益性について、経営会議においてフォローアップと検証を行ってまいります。

 

⑨案件を厳選したM&Aの推進について

 当社グループでは案件を厳選したM&Aにより事業の拡大を図る場合がありますが、それに見合った収益が得られない場合や、資金の回収が滞る可能性があります。

 

⑩デジタルトランスフォーメーション(ICT、AIの活用による生産性向上とビジネスの拡大)について

 当社グループでは、デジタルトランスフォーメーション部(DX部)を設置し、情報のデジタル化とデータの有効活用に取り組んでおりますが、ICTやAIを活用したビジネス拡大や生産性向上が計画通り進展しない場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策としては、DX部が中心となり、検討と推進を行ってまいります。

 

⑪資金調達について

 当社グループにおきましては、保育施設の新規開設に関する設備資金、新規事業もしくはM&Aに関する投資資金は、金融機関からの借入等により調達しております。総資産に対する有利子負債合計の割合は、2022年12月期11.7%、2023年12月期18.2%、2024年12月期23.8%と推移しておりますが、今後、新規開設やM&A等に伴い借入が増加する可能性があり、金利の急激な変動や金融情勢の変化によって計画どおり資金調達ができなかった場合には、設備投資や新規事業が制約されるなど当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑫レピュテーションリスクについて

 従業員による不正・不祥事や、個人情報等の業務上の機密情報の不適切な取り扱い・流出により、当社グループの信頼性・企業イメージが低下し、経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策として、法務コンプライアンス部が中心となり、予防対策の検討、当社グループ内の実施徹底を図るとともに、本支社担当役職員、ISO内部監査員が参加する品質管理会議(月1回)において、ISO27001ISMSによる情報インシデントについて報告と改善状況を監視しており、原因究明と再発防止に努めております。

 

⑬大株主について

 当社の代表取締役社長である轟麻衣子は、轟氏、その親族、および株式会社スピネカ(轟氏及びその親族の資産管理会社)の所有株式数を含めると、本書提出日現在で発行済株式総数(自己株式を除く。)の61.0%を所有しております。

 轟氏は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。当社といたしましても、轟氏は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により、大株主である轟氏の持分比率が低下した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度において、わが国の経済は緩やかに回復し、個人消費は賃金の改善に支えられて持ち直しました。しかしながら、年後半には企業収益の回復ペースが鈍化し、政府が企業収益の見通しを引き下げるなど、一部の分野では停滞の兆しが見られました。また、米国及び欧州の金融政策の影響を受けて円安が進行したことに加えて、ロシア・ウクライナ情勢の継続や中東地域の不安定化により、エネルギー供給への懸念が引き続き存在し、輸入物価やエネルギー価格の上昇が家計や企業のコスト負担を増加させております。

 また、2024年の年間出生数(注1)は前年比5.5%減の68万人台となる見通しです。コロナ禍を機に少子化トレンドの加速が続いており、出生数の減少ペースが明らかに加速した2016年から2023年までの年平均減少率4.0%と比較しても、直近の減少傾向はさらに強まっております。

 政府は強い危機感を背景に、2023年12月、こども家庭庁から、こども基本法に基づく幅広いこども施策を推進する基本方針や重要事項を一元的に定めた「こども大綱」、その実現に向けて具体的な取り組みを明記した「こども未来戦略」などを発表し、2030年代に入るまでが状況を反転させることができるかどうかの重要な分岐点であると強調しております。そして、児童手当を高校生年代まで支給するよう延長し、第3子以降への給付金を大幅に増やすなどの子育て世代への支援を戦略の柱に据えております。また、3歳から就学までの子を持つ従業員が柔軟な働き方ができるよう、企業に始業時間の変更やテレワーク導入などを求める改正育児・介護休業法が、2025年4月から段階的に施行される予定であります。

 当社は、このような子育て・教育、働き方等を取り巻く外部環境がめまぐるしく変化する状況のもと、「働く女性を 最高水準のエデュケアと介護サービスで支援します。」というミッションの下、引き続きナニーサービス及びベビーシッターサービスを起点に、認可・認証・事業所内保育所や学童保育などエデュケア施設の運営や、高齢者在宅ケアを行うシルバーケアサービス等を展開し、フルラインでの働く女性を支援する事業を推進いたしました。

(注1)日本人のみの国内の出生数。なお、2024年の外国人を含む国内の出生数も過去最少の約72万人となりました。

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比

実績

構成比(%)

実績

構成比(%)

増減

増減率(%)

売上高

28,893

100.0

31,690

100.0

2,797

+9.7

売上原価

22,957

79.5

25,106

79.2

2,149

+9.4

売上総利益

5,935

20.5

6,583

20.8

647

+10.9

販売費及び一般管理費

4,773

16.5

5,009

15.8

235

+4.9

営業利益

1,162

4.0

1,574

5.0

411

+35.5

経常利益

1,301

4.5

1,594

5.0

293

+22.5

親会社株主に帰属する当期純利益

677

2.3

776

2.5

98

+14.5

 

 当連結会計年度においては、営業利益は過去最高益となりました。

 

 売上高につきましては、31,690百万円(前期比9.7%増)となりました。その主な要因は、ファミリーケア事業において、引き続きベビーシッターサービスの業績拡大がけん引したこと、またナニーサービス、シルバーケアサービスの業績も堅調に推移したこと、およびエデュケア事業において当連結会計年度に、保育所・学童児童館等9施設を閉園する一方、園児定員数100名超の大規模認可保育所2施設を含む11施設を開設したこと等により順調に拡大したことに加え、令和5年度(2023年4月~2024年3月)人事院勧告に伴う公定価格改定により助成金収入が増加したことによるものです。

 

(特記事項)令和5年度人事院勧告に伴う公定価格改定及び処遇改善の影響

(単位:百万円)

 

 

公定価格改定

(売上高増:注2)

処遇改善

(費用増)

利益影響

 

 

 

当連結会計年度

当連結会計年度

当連結会計年度

備考

 

 

 

第3

四半期累計

第4

四半期

 

第3

四半期累計

第4

四半期

 

第3

四半期累計

第4

四半期

 

令和5年度分

(注3)

329

329

432

432

△103

△103

 

令和6年度分

(注4)

383

243

140

453

453

△70

243

△313

2025年第1四半期分を一部前倒し支給

 

合 計

712

572

140

885

432

453

△173

140

△313

 

 

内、
当社独自改善

103

103

△103

△103

 

(注2) 助成金の受給による売上高増加を指す。

(注3) 令和5年度分:2023年4月~2024年3月

(注4) 令和6年度分:2024年4月~2024年12月(2025年3月まで継続して受給予定。一部前倒しで処遇改善を実施)

 

 売上総利益につきましては、高利益率のファミリーケア事業の構成比が上昇したこと、ならびに主にエデュケア事業における以下の要因により、売上高増加率を上回る前期比10.9%増の6,583百万円となりました。

(プラス要因)

・保育士等の採用チャネル多様化に伴う効率化により、採用費が前期比で約1.4億円減少したこと

・前連結会計年度の4月開園施設が黒字化したこと

・当連結会計年度に開設した学童等の委託型施設等が利益貢献したこと

・認可保育所における園児充足率が、前期比で改善したこと

・非常勤職員配置等合理化の取り組みが順調に進捗し、粗利率の改善に寄与したこと

(マイナス要因)

・当連結会計年度に完成した認可保育所等直営施設の開園準備費用が前期比で増加したこと

・前連結会計年度と比較して9園が閉園となったこと

(その他 特殊要因)(注5)

・令和5年度人事院勧告に伴う公定価格改定等の影響について、令和5年度分(2023年4月~2024年3月分)の助成金収入増加329百万円を踏まえた保育職員等の人件費増額(処遇改善)について、当社独自改善分103百万円を含む432百万円を、当連結会計年度において費用計上したこと

・令和5年度人事院勧告に伴う公定価格改定等の影響について、令和6年度分(2024年4月~2024年12月分)の助成金収入増加383百万円を踏まえた保育職員等の人件費増額(処遇改善)について、2025年第1四半期分の一部前倒し支給を含む453百万円を、当連結会計年度において費用計上したこと

(注5)詳細は「(特記事項)令和5年度人事院勧告に伴う公定価格改定及び処遇改善の影響」参照。

 

 また、販売費及び一般管理費につきましては、当連結会計年度に完成した認可保育所等直営施設の新規開設投資額が前期比で増加したことによる租税公課(控除対象外消費税等)の増加や、主にベビーシッターサービスの業績拡大に伴うコールセンター費用、システム保守費用等の事業成長に伴う準変動費の増加や、執行体制強化に伴う人件費及び採用費等の増加があったものの、役員報酬総額の減少等により、売上高増加率を下回る、前期比4.9%増の5,009百万円に留まりました。

 以上の結果、営業利益は1,574百万円(前期比35.5%増)となりました。なお、経常利益は前連結会計年度において営業外収入として法人保険解約返戻金138百万円を計上したことが前年比較に影響していることにより、営業利益増加率を下回る、前期比22.5%増の1,594百万円となりました。

 間接共通費を配賦した後に営業収支が赤字となる保育所の設備について減損損失371百万円を計上いたしました(内、363百万円は第3四半期に計上)。その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、経常利益増加率を下回る、前期比14.5%増の776百万円となりました。

 

 セグメント別の経営成績は次のとおりです。なお、各セグメントの金額は、セグメント間取引を相殺消去する前の金額であります。

(単位:百万円)

 

セグメントの名称

前連結会計年度

当連結会計年度

前期比

実績

構成比(%)

実績

構成比(%)

増減

増減率(%)

売上高

ファミリーケア事業

5,559

19.2

6,776

21.3

1,216

+21.9

エデュケア事業

22,333

76.9

24,004

75.4

1,670

+7.5

プロフェッショナル事業

654

2.3

582

1.8

△72

△11.1

その他

484

1.7

474

1.5

△9

△2.1

調整額(注)

△138

△146

△7

 合計

28,893

31,690

2,797

+9.7

 

 

 

 

 

 

 

 

セグメント利益

ファミリーケア事業

1,214

44.2

1,389

45.7

175

+14.4

エデュケア事業

1,363

49.6

1,567

51.5

203

+15.0

プロフェッショナル事業

189

6.9

83

2.7

△105

△55.9

その他

△20

△0.7

2

0.1

22

調整額(注)

△1,584

△1,468

116

 合計

1,162

1,574

411

+35.5

(注)調整額は、各報告セグメント間の内部売上高又は振替高、報告セグメントに配分していない全社費用です。全社費用は、主に経営管理に係る一般管理費及び事業セグメントに帰属しない販売費及び一般管理費です。

 

(ファミリーケア事業 : ナニーサービス、ベビーシッターサービス、シルバーケアサービス)

 ナニーサービスにつきましては、ナニープレミアムを中心とした底堅い需要が継続し、売上高は前期比で4.4%増加しております。

 ベビーシッターサービスにつきましては、東京都ベビーシッター利用支援事業を採用する自治体がさらに増加しており、その旺盛な需要を取り込むべく、3つの施策を推進しております。

・既存ベビーシッターの稼働促進

・採用広告への投資継続(応募数の増加)

・採用拠点の常設化投資(面接数の増加及び対面面接による質の担保)

その結果、売上拡大傾向は継続しており、当連結会計年度においては前期比で44.3%増と大きく成長しております。

 シルバーケアサービス(高齢者在宅ケアサービス)につきましては、前期を通じて推進してきた営業強化策が奏功し、新規入会者数の増加、家事支援や高付加価値サービスのナースケアの貢献などにより、売上高は前期比で7.6%増加しております。

 以上の結果、売上高は6,776百万円(前期比21.9%増)、セグメント利益は1,389百万円(同14.4%増)となりました。

 

(エデュケア事業 : 保育施設、学童児童館等の運営)

 当事業については、当連結会計年度において、認証保育所等の直営型施設4箇所、学童児童館等の委託型施設等5箇所(計9箇所)を閉園する一方、大規模認可保育所を含む直営型施設5箇所、委託型施設等6箇所(計11箇所)を開設しました。その結果、当連結会計年度末における総施設数は前期比で2箇所増加、預り園児数も認可認証保育所合計で3.3%増加し、公定価格改定による助成金収入増加の影響(注5)等と併せて、エデュケア事業の売上高は24,004百万円(前期比7.5%増)となりました。

 セグメント利益の成長率については、売上高成長率を上回りました。その理由としては、大規模保育所の開設により前期を上回る設備投資に伴う租税公課(控除対象外消費税等)の増加や、前期閉園の影響などのマイナス要因があったものの、保育士等の採用チャネル多様化に伴う効率化により採用費が前期比で減少したこと、前期開園直営施設及び当期開設委託型施設等が利益貢献したこと、園児集客強化の取り組みが奏功し、当連結会計年度を通して認可保育所で前期の充足率を1.6%pt上回る水準で園児数が推移したことや、非常勤職員配置等の合理化の取り組みが進捗したこと、などプラス要因が上回り、粗利率の改善に寄与しました。

 以上の結果、セグメント利益は、令和5年度人事院勧告に伴う公定価格改定による売上高増及び処遇改善によるマイナス影響173百万円(注6)があったものの、1,567百万円(前期比15.0%増)となり、業績改善が着実に進捗しております。

(注6)詳細は「(特記事項)令和5年度人事院勧告に伴う公定価格改定及び処遇改善の影響」参照。

 

(プロフェッショナル事業 : 国内・海外研修)

 当事業については、国内の自治体が実施する保育士キャリアアップ研修や子育て支援研修等の保育研修の受託事業が売上の大きな割合を占めております。自治体が実施するこれらの保育研修は、主に第1四半期の後半から第3四半期の前半にかけて受注後、第3四半期から翌第1四半期の前半にかけて研修を実施し、実際の研修実施の進捗に応じて売上を計上しております。したがって、当事業の売上高及び利益の大部分は、下半期に計上されます。

 当連結会計年度においては、長期に亘り提供してきた大型研修2案件が受注に至らず、中・小型案件で受注挽回を進めた結果、受注高は年度計画比で9割程度まで進捗したものの、収益性の高い大型案件が減少したことにより営業利益率の低下要因となりました。

 以上の結果、売上高は582百万円(前期比11.1%減)、セグメント利益は83百万円(同55.9%減)と、減収減益となりました。

 

(その他 : 人材派遣・紹介、新規事業等)

 売上高につきましては、保育士派遣先における需要は安定して推移したものの、人材紹介事業の実績が前期比で弱含んだことにより、474百万円(前期比2.1%減)となりました。

 一方で、新規事業立ち上げ費用等の影響が徐々に軽減していることから、セグメント利益は2百万円(前連結会計年度は20百万円のセグメント損失)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は16,714百万円(前連結会計年度末比2,092百万円増)となりました。

 流動資産につきましては、12,515百万円(前連結会計年度末比3,209百万円増)となりました。その主な要因は、借入金の返済及び配当金の支払いなどの減少要因があったものの、新規借入及び保育所の開設等に関する助成金の受取りにより現金及び預金が増加したためであります。

 固定資産につきましては、4,199百万円(前連結会計年度末比1,117百万円減)となりました。その主な要因は、建設仮勘定、および建物及び構築物の減少によるものであります。建設仮勘定は、保育所の開設に伴い建設仮勘定を建物及び構築物等へ振替えたことにより減少しております。建物及び構築物は、保育所の開設などの増加要因があったものの、保育所の開設等に関する助成金の受入れに伴い圧縮記帳を行ったこと、および減損損失の計上により減少しております。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債は8,208百万円(前連結会計年度末比1,701百万円増)となりました。

 流動負債につきましては、5,467百万円(前連結会計年度末比1,245百万円増)となりました。その主な要因は、賞与引当金が減少したものの、短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、未払金、未払法人税等及び前受金が増加したためであります。

 固定負債につきましては、2,740百万円(前連結会計年度末比456百万円増)となりました。その主な要因は、新規借入による長期借入金の増加によるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産は8,506百万円(前連結会計年度末比390百万円増)となりました。その主な要因は、剰余金の配当388百万円があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益776百万円を計上したことにより利益剰余金が増加したためであります。

 この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、50.9%(前連結会計年度末比4.6ポイント減)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、8,373百万円(前期比3,372百万円の増加)となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は、1,840百万円(前期比1,069百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益1,222百万円、減価償却費266百万円、減損損失371百万円、未払金の増加額181百万円、前受金の増加額111百万円、法人税等の還付額83百万円等の増加要因があったものの、賞与引当金の減少額77百万円、売上債権の増加額63百万円、法人税等の支払額410百万円等の減少要因があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果得られた資金は、598百万円(前期は827百万円の使用)となりました。これは主に、助成金の受取額1,317百万円、敷金及び保証金の返還による収入52百万円及び保険積立金の解約による収入61百万円等の増加要因があったものの、認可保育所等の新規開設に関する有形固定資産の取得による支出660百万円、資産除去債務の履行による支出63百万円並びに敷金及び保証金の差し入れによる支出56百万円等の減少要因があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は、933百万円(前期比117百万円の増加)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出875百万円及び配当金の支払額389百万円等の減少要因があったものの、短期借入金の純増減額600百万円及び長期借入れによる収入1,600百万円等の増加要因があったことによるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは、生産活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

b.受注実績

 当社グループは、受注活動を行っていないため、該当事項はありません。

 

c.販売実績

  当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2024年1月1日

至  2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

ファミリーケア事業

6,673

122.6

エデュケア事業

24,004

107.5

プロフェッショナル事業

558

86.5

報告セグメント計

31,235

109.9

その他

454

96.7

合計

31,690

109.7

  (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、100分の10以上を占める相手先がないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績等の分析

 経営成績等の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

c.資本の財源及び資金の流動性について

(キャッシュ・フローの状況の分析)

 当社グループのキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(財政政策)

 当社グループは、運転資金、設備資金及びシステム開発資金につきましては、内部資金(新株発行による増資を含む。)又は借入により資金調達することとしております。このうち借入による資金調達に関しましては、短期運転資金については金融機関からの短期借入金によって、長期運転資金及び保育所の新規開設に伴う設備投資、システム開発資金については、新株発行による増資及び長期借入金によって調達しております。

 

d.経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループは、2023年2月14日に、2027年12月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画(オーガニック成長で2027年12月期の業績目標を売上高350億円・営業利益率10%・配当性向40%・ROE15%)を公表し、その達成に向けて取り組んでまいりました。しかしながら、わが国における少子高齢化の進展や、働き方・子育て・介護に関するあり方などの外部環境変化は、年間出生数の記録的な減少を筆頭に、中期経営計画公表時の当社想定を上回るスピードで急激に進み、各事業においても、以下のような事業課題への対処が求められております。

 ファミリーケア事業においては、ベビーシッターサービスを中心に中期経営計画公表時の想定を上回る旺盛な需要拡大が続く一方で、数年後の業容拡大を見越した、サービス品質管理やリスク管理の体制構築が急務となっております。

 エデュケア事業においても、保育所の待機児童解消がさらに進む一方、学童保育の待機児童顕在化が想定を超える速さで進展していることを踏まえ、2025年12月期以降の新規開発案件の獲得方針については、設備投資を伴わない学童児童館等の委託型施設に戦略の軸足を移しております。また、こども家庭庁による、人事院勧告に伴う公定価格の人勧改定率が、令和5年度は+5.2%、令和6年度は前述のとおり+10.7%と、過去に例のない高水準で示されたことは、エデュケア事業の売上高及び売上原価を共に押し上げる要因であり、結果的に当社の売上高営業利益率の押し下げ圧力となります。

 また、全事業に共通する要因として、日本社会全体にわたる賃上げの流れ及び働き手不足の深刻化を踏まえ、中長期的な成長戦略の実現を支えることができる評価・報酬制度や待遇等の抜本的な見直しが、喫緊の経営課題であると認識しております。

 

e.経営戦略の現状と見通し

 当社グループは、上記のような問題認識を踏まえ、また、売上高営業利益率に替わる、当社グループの経営効率性を示す指標(事業別の投下資本利益率(ROIC)などを含む)を提示する必要があると判断したことなどから、中期経営計画を見直すことといたしました。

 当社グループは、引き続き旺盛な需要拡大が続くファミリーケア事業を成長ドライバーとしつつ、安定的にキャッシュ・フローを創出するエデュケア事業を事業基盤として、急速に進行する少子高齢化を含む市場環境及び政策などの外部環境変化に機動的に対応することにより、引き続き利益拡大を通じた企業価値向上を図ってまいります。

 新たな中期経営計画につきましては、事業環境等を総合的に勘案し、改めて見直したうえで2025年8月中を目途に公表することを予定しております。なお、配当性向については引き続き連結配当性向40%前後を基本とし、中長期的にROE15%以上を目指す方針については、変更はありません。

 当社グループは、日本初のSDGs-IPO企業として、利益成長の実現と同時に社会課題の解決に資することで、引き続き、当社グループのさらなる発展と企業価値の向上を目指してまいります。

 さらに将来、保育所が淘汰される時代の到来に向けて、収益性とシナジー効果を考慮し、案件を厳選したM&Aや戦略的提携を推進するとともに、新規事業開発に取り組むことで日本のSDGsをリードする企業として一層の発展を遂げる方針であります。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。