文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月28日)現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、経営理念「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」を掲げ、人々の健康と快適な生活の実現に真摯に向き合い、高品質な商品を提供し続けることで、社会と共に着実な成長を遂げております。また、経営理念の実現に向け、以下の行動様式(アースポリシー)及び価値観(アースバリュー)を定めております。
(アースポリシー)
・ お客様目線による市場創造
・ 熱意・創意・誠意
・ すぐやる・必ずやる・最後までやる
(アースバリュー)
・ 全員参画
・ コミュニケーション
・ 人がすべて
当社グループを取り巻く経営環境を以下のように認識しております。
国内においては、物価の上昇が続く中、賃上げの継続傾向により、消費者物価指数は上昇しています。しかしながら、生活において身近な商品の価格上昇が続いており、消費者の節約マインドが強くなることによって個人消費を下押しするリスクを含んでいます。また、中国においても長引く不動産市況の低迷により個人消費・内需の停滞が懸念されています。加えて、タイでは、コロナ禍からの経済回復が遅れており、消費の弱さが見られます。こうした状況に関する当社グループへの影響を注視する必要があります。
一方、東南アジアにおけるベトナム、マレーシア、フィリピンにおいては底堅い内需を下支えに経済成長が継続するものと考えており、当社グループの取り組みがマッチし、高い成長が期待されると推察しています。
主要な顧客層である食品関連業界をはじめ、医薬品関連業界、包材関連業界において異物混入対策などの衛生管理対策ニーズは高水準であり、全体的な事業環境は好調を持続すると考えています。しかし、労働人口の低下や物流の「2024年問題」、ウクライナの情勢不安の長期化などに起因するコストの高騰に伴い、これまで締結している契約内容の縮小もしくは解約を要望する顧客側の動きなど、事業成長を一時的に抑圧する要因も抱えています。
当社グループは経営理念「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」のもと、2024年~2026年(3ヵ年)の中期経営計画「Act For SMILE COMPASS 2026」をスタートしています。本中期経営計画では、前中期経営計画の課題を認識した上でグループ再編を中心とした抜本的な構造改革を行う期間と位置づけ、変化が早い事業環境の中でも持続的な成長を続けていくための変革を確実に実行してまいります。
2026年12月期の定量目標を以下のとおりに定め、取り組みを進めています。
なお、当該定量目標の各数値については、有価証券報告書提出日現在において予測できる事情等を基礎とした合理的な判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。
(注)海外売上高は、当社管理会計ベースの数値であり、内部相殺取引などの連結調整は含みません。
成長ポテンシャルの高い海外での展開を成長ドライバーと位置づけ、本中期経営計画では、「現地法人を軸にした成長戦略の遂行」「各エリアの中長期計画と連動したサプライチェーンの整備」「成長を支える人財の拡充」といった強化策を掲げ、取り組みを進めています。
具体的には、海外事業は現地法人による展開と輸出の2軸で展開しています。ASEANにおいては、タイ、ベトナムは海外展開における収益の中核を担うべく、市場シェアの向上と売上拡大の両立を推進し、また、マレーシア、フィリピンでは販路拡大と事業基盤の構築を推進しています。とりわけタイでは、確固たるブランド地位を築いており、特に虫ケア用品は、近い将来のタイ国内の市場シェアNo.1の獲得を見据え、積極的な拡大を進めています。
中国では、急速な市場環境の変化を受け、オンラインチャネルを重視する戦略からリアル店舗を展開する小売業への製品導入を重点的に行う戦略への転換を進めています。
輸出では、現在の主要展開国・エリアである中東や台湾、北米等をはじめとした、世界約50カ国・地域に製品を輸出しています。既存展開国での取り組みを進めるとともに、各エリアにおける成功事例の横展開を行い、売上の拡大を加速させています。
こうした海外事業の拡大に伴い、生産供給能力の拡大が必要となっています。円滑な商品供給体制の確立と利益拡大に向けて、グループ間・エリア間でのリソースを活用しながら、各エリアの中長期計画と連動した全体最適の視点でのサプライチェーン体制の整備を行います。また、このような積極的な事業拡大のためにはグローバルシフトに向けた人財の強化が欠かせません。グローバル人財の育成と現地採用を含めた人財確保を積極的に推進していきます。
当社はコロナ禍を背景にした急激な消費者の行動変容に対応すべく、日用品カテゴリを中心に積極的なカテゴリ拡大を進めてまいりました。一方で、原材料価格高騰の影響による原価上昇、金融政策の見直しによる不安定な為替、物価上昇による消費マインドの冷え込みなどにより、外部環境は大きく変化しました。また、展開カテゴリを拡大した余波で、ブランド投資が分散し、入浴剤や洗口液カテゴリへの資源配分が不十分となり、市場シェアの低下を招くことにつながりました。こうした状況の変化に対して、「ブランド・品目の“選択と集中”」「ブランド価値の向上」といった施策に取り組んでいます。
ブランド・品目の選択と集中に当たり、当期は目標として掲げていた品目数30%の削減を実施しましたが、更なる効率化を目指すべく、今後も上市品目の見直しを進めてまいります。これに加えて、低下傾向にある入浴剤、洗口液の市場シェアに歯止めをかけるべく、マーケティング投資の配分を見直し、市場シェアの奪還とブランド強化を目指してまいります。
一方、収益性の確保の観点から虫ケア用品を中心に価格改定を実施しており、今後も市場環境を踏まえながら、ブランド強化と並行して進めてまいります。
また、これまでも課題となっていた虫ケア用品の返品について、廃棄ロスの低減施策を営業部門・SCM部門を中心に積極的に推進しています。前中期経営計画期間中に構築した基幹システムを活用し、生産管理から販売管理まで一元的に管理し、需給調整機能を進化させたことで在庫の圧縮、効率化が進み、キャッシュ・フローの大幅な改善につながっています。需要予測の精度を向上させ、在庫の適正化を図り、機会ロスの未然防止に努めてまいります。さらに、今後も気候変動に起因して、虫ケア用品の販売期間の長期化が予想され、シーズン晩期の需要が増えるものと見込まれます。こうした状況を受け、虫ケア用品の年間定番商品化に向け、業界全体と協力し取り組んでまいります。このような取り組みにより環境負荷低減はもちろん、廃棄費用の削減による利益率の改善を見込んでいます。
以上の取り組みを踏まえ、カテゴリポートフォリオ管理の実施を進め、収益構造の改善を目指してまいります。
当社は積極的なM&Aを進めて、事業及び製品領域を拡大させてまいりました。一方で、グループ、国内外を跨いだコスト改革、シナジー創出についてはこれまでも取り組んでまいりましたが、十分な成果を生み出すに至りませんでした。こうした課題を受け、「組織再編によるコストシナジーの創出」「戦略的M&A」「投資採算性の向上」を掲げて取り組んでいます。
当社と株式会社バスクリンは2026年の経営統合に向けて両社のシステム統合、経営資源の再配分などの検討を進めており、グループでのコストシナジーを生み出すことを目指しています。
M&Aについては、アースグループにおける課題解決手段の一つとして位置付けており、推進体制の構築に加え、M&Aのロング/ショートリストの再整備やM&A成就後の統合推進体制の刷新を行ってまいります。
こうした取り組みに併せて、在庫の最適化を通したキャッシュ・フロー改善など資産効率の向上を推進します。また、投資機会の拡大に対して借入金を有効活用し、バランス・シートのコントロールを行ってまいります。今後は収益性の改善に向けた取り組みの他、資本効率にも重点を置き、資本コストを意識した経営を実践してまいります。
総合環境衛生事業におきましては、主要な顧客層である食品関連業界や医薬品関連業界、包材関連業界における食中毒予防対策や異物混入対策などの衛生管理対策が必須となっており、当社グループが専門的な知識や技術、ノウハウをもって提供する高品質の衛生管理サービスへのニーズは依然として高い状況です。また、サステナブル調達への取り組みは、大手企業を中心に強化されています。このような状況の中、人、専門性、技術力、教育、労働安全、事業基盤、事業創出という7つのテーマに注力し、引き続き、私たちの使命である衛生管理に関する最先端の知見とハイレベルな技術力でお客様の高い品質環境を実現し、長期的な企業価値の向上を目指すとともに、かけがえのない地球環境を維持・保全し、社会の健全な発展に持続的に貢献します。具体的には、引き続き、彩都総合研究所を拠点に研究・技術開発や人財教育を進めるとともに、IoT・AIなどのデジタル技術を活用したサービスの提供、食品安全に関する監査業務の拡大、ライフサイエンス分野での展開の強化を図り、年間契約の金額の増加による安定した収益拡大を目指します。
家庭用品事業及び総合環境衛生事業の取り組みを進めることにより、新中期経営計画の最終年度である2026年は構造改革の成果の一部が顕在化し始めるものの、あくまで通過点であると認識しています。2024年~2026年の3ヵ年は準備期間と捉え、2027年以降の飛躍的な成長を目指してまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当社は、2021年にサステナビリティ基本方針を策定しました。
策定にあたっては、事業を推進する各部署の代表メンバーが集まり、サステナビリティを浸透させるために必要な要素や、言葉、当社グループらしさを尊重しながら議論を重ねました。この方針をもとに、持続可能な事業の実現に向けた取り組みを推進していくことを社内外に示していきます。
当社は、サステナビリティ基本方針のもと、ESGの3分野を俯瞰し、サステナビリティ活動を効果的かつ円滑に推進していくため、経営戦略本部内に「CSRサステナビリティ推進部」を設置しています。社長を委員長として、CSRサステナビリティ推進部が事務局、各部門長が委員となりサステナビリティ経営の執行責任を持つ会議体「CSRサステナビリティ推進委員会」、及び、上席執行役員を委員長とし業務でサステナビリティ活動を推進する「CSRサステナビリティ推進部会」が、定期的に開催されています。審議された内容は、取締役会に報告します。
また、サステナビリティに関する活動計画や、目標・KPIの全社的共有、目標達成に向けた取り組みの推進、進捗状況のモニタリング、活動内容は各種開示報告書にて適切に情報発信を行っています。
当社グループが長期にわたり発展し続けるためには、様々な社会課題の企業活動への影響を認識、評価し、経営上の重要課題を明確にする必要があると考え、重要課題とそれらに対する目標・KPIを定めました。各課題に対して重点テーマを定め、当社グループの事業特性や経営資源を活かした取り組みを進めてまいります。
アース製薬のマテリアリティ(重要課題)
サステナビリティ経営において、ESGの視点で事業を取り巻く様々なリスクを認識しています。リスクに対する未然防止やクライシス発生に対する適切な対応、リスクから見いだされる事業機会の創出の観点からリスクマネジメントの必要性を認識し、さらなる経営基盤の強化を図ります。
上記のガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社における重要なサステナビリティ項目は以下のとおりであります。
・気候変動
・人的資本
それぞれの項目に係る当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
気候変動は、当社にとってリスクであると同時に新たな収益機会につながる重要な経営課題であると認識するとともに、気候変動関連の財務情報開示の重要性を認識し、TCFD提言への賛同を表明しています。気候変動の取り組みを積極的にまた能動的に行うことは、中長期的な当社の企業価値向上に繋がるものであると考え、ステークホルダーと適切に協働し、当社のみならず、社会全体に利益をもたらすことを目指します。また、こうした取り組みを通して、当社は SDGs やパリ協定で掲げられた目標達成への貢献を目指します。
取締役会は、当社の戦略・事業計画やリスクマネジメント方針等の見直し・指示にあたり、コーポレートガバナンス推進委員会への諮問を経て、気候変動関連事項を考慮しています。また、気候変動関連事項に対処するための指標と目標に対する進捗状況については、代表取締役社長CEOが、取締役会へ報告することで、取締役会による適切な監督が行えるよう体制を整えています。
代表取締役社長CEOは、気候変動関連事項における当社の経営責任を負っています。この責任には、気候変動関連事項の評価やマネジメントが含まれています。
CSRサステナビリティ推進部が、気候変動関連に関する事項のとりまとめを所管し、社内関係部署と協働しながらリスクと機会の状況を把握します。重要リスク・機会は、取締役会に報告され、特定した気候変動関連リスク・機会への対応方法及び優先順位の策定は、CSRサステナビリティ推進部を中心に各種委員会、関係部署と協働しながら、対応を検討します。
当社は、脱炭素社会への移行に伴い、不確実性の高い将来を見据えどのような気候変動関連リスクと機会が顕在化しうるかについて、TCFD提言に基づき、脱炭素への取り組みが進んだ1.5℃のシナリオと現状のまま社会が進んだ場合の現行(4℃)のシナリオをそれぞれ分析し、2030年における事業インパクト評価を行いました。
(当社事業に与える影響度が「大」となる主な要因と対応)
〈シナリオ分析の前提条件〉
分析対象:アース製薬単体
分析範囲:原料調達を含めたサプライチェーン全体
時間軸:短期=1年(単年度計画と同期間)中期=3年(中期経営計画と同一期間)
長期=2030年(日本のNDCにおける中期目標と同期間)
・当社(アース製薬単体)のGHG排出量は以下のとおりです。
(単位:t-Co2)
・当社は、以上の排出量実績をもとに指標と目標を次のとおりに設定いたしました。
なお、2023年12月時点で概ね達成し、2030年に向けて計画どおりに進捗しています。
(目標と目標に対する指標)
(注)1.2025年2月上旬現在。電力の排出係数は2023年の環境省の算定用数値を用いて算出しています。
2.2024年の数値は算出完了次第、
https://corp.earth.jp/jp/sustainability/esg-databook/index.html
当社グループは、従業員を会社発展の原動力となる価値あるかけがえのない人財と考え、経営理念や経営目標を実現するための人財に対する施策を明文化するために、人権方針・労働慣行方針のもと、「アース人財理念」及び「アース人財マネジメント方針」を定めています。人的資本経営の実現に向けて、長期取り組みの方向性として、『アースポリシー・バリューに共感する多様な人財の活躍を支える職場環境の整備』を目指すと共に、短中期取り組みの方向性として、『中期経営計画に基づく人財課題の解決』に資する取り組みを行います。これらの方向性に基づき、人財マネジメント戦略を策定し、戦略実行のため、人事制度(採用・教育研修、人事異動、給与・評価制度、働き方改革、ダイバーシティ、健康管理等)の各種人事施策の整備、多様な人財が力を発揮できるよう、社員それぞれの能力の強化に取り組んでいきます。グループ全体での取り組みを推進するため、定期的にグループ人事責任者会議を開催し、人財開発の方針や活動状況について共有、議論しています。
当社では、従業員一人ひとりがもつ独自の強みを十分に発揮し、活躍するためには、心身ともに健康であることが重要であると認識し、エンゲージメント高くwell-beingを実感しながら活躍できる職場環境の整備に積極的に取り組みます。
当社では、持続的な事業成長を実現するためには個々の継続した成長が不可欠と捉え、国籍や年齢などに関わらず、すべての従業員が、当社グループのアースポリシー・バリューに共感しながら自律的にキャリア形成する事を支援し、変化する事業環境下での挑戦を可能とする育成機会の提供に努めます。
[人財マネジメント戦略]
~人がすべて~
・働く環境とともに“働きがい”を感じられる会社へ。
・目標に向かってチャレンジを促進する仕組みづくり。
長期・短中期の2つの視点から、人財マテリアリティは以下の4つと捉えています。
[人財マテリアリティと取り組みテーマ]
a.グループ経営強化によるコストシナジーの創出
<取り組みテーマ>
アースらしさの深化、グループシナジー発揮
<取り組みの方向性と進捗状況>
グループ全体の最適化を目指し、組織の再編や機能の統廃合を推進しています。これによりコストシナジーを生み出すために、全員参画とコミュニケーションを大切にし、お客様目線を持った市場創造を継続する組織を目指しています。「人がすべて」という考えを中心に、個々の成長と挑戦を支援し続け、グループシナジーの創出に向けたパーパス・バリューの浸透と体現を支援していきます。
b.Well-beingを実感できる職場環境の整備・社内文化醸成
<取り組みテーマ>
社内文化醸成、職場環境の整備
<取り組みの方向性と進捗状況>
エンゲージメント高くwell-beingを実感しながら活躍することができる職場環境の整備を実践するために、「従業員が健康でなければ企業に未来はない」という考え方のもと、従業員の健康管理を重要な経営課題と捉えています。2019年にトップメッセージとして「アース健康宣言」を制定、責任者に上席執行役員を置く部門横断チーム「従業員と家族の健康を推進する委員会」を組織しました。また、専任の産業保健師を採用し、2022年には人財マネジメント部内に「ウェルビーイング推進課」を設置しました。定期健康診断有所見率とプレゼンティーイズムによる生産性損失割合について健康経営全体のKPIとして設定し、2030年までに達成したい目標値を掲げてPDCAを回しております。具体的な活動としては、健康保険組合やグループ企業とも連携体制をとりながら、従業員と家族の健康管理のフォローやヘルスリテラシー向上施策の実施をしています。さらに、女性活躍推進に向けた取り組みや、育児・介護・傷病との両立支援、安心して働けるオフィスの整備、柔軟な働き方ができる制度の導入、福利厚生の充実や各種コミュニケーション活性化施策などにも取り組み、経済産業省と日本健康会議が共同で選ぶ「健康経営優良法人(ホワイト500)」に2021年から4年連続で認定されています。
2024年からは、優先的に取り組むべき課題を明確化することを目的として期待度と満足度の2つの観点から回答するエンゲージメントサーベイを導入し、職場環境向上や社内文化醸成に役立てていきます。
c.経営・事業戦略に必要な人財の確保・育成
<取り組みテーマ>
計画的な採用と育成、リスキリング(自発的機会提供)、要員計画の精緻化、リーダー育成
<取り組みの方向性と進捗状況>
自律した人財育成を目的として、従業員のモチベーションやキャリアアップ、知識と能力の向上を目指して、計画的に階層別研修や目的別研修を実施します。2024年には階層別研修の見直しや、オンライン学習の機会提供を行い、人財育成の基盤整備を進めています。また、今後はグローバル人財の受け入れや育成も積極的に行い、事業貢献だけではなく、働く個々の継続成長への寄与、働く場として、選ばれる企業を目指していきます。
2024年度からスタートしている中期経営計画では、「海外の売上拡大」を重点方針の1つに掲げています。展開国ごとの取り組みの推進に加え、事業展開を加速するための体制整備が急務となっています。そのため、計画的な人財の採用と育成、要員計画の精緻化などを行い、海外事業の拡大に向けた人財のプール化も進めていきます。
d.多様な人財の自律したキャリア形成支援と仕組みの整備
<取り組みテーマ>
目標設定制度改定(OKR導入)、人事制度改定(等級・報酬・評価)、キャリア支援の仕組みの確立と活用、スキル管理(スキルの可視化)
<取り組みの方向性と進捗状況>
多様性こそ当社グループの成長の力であると認識し、すべての従業員が、当社グループのアースポリシー・バリューに共感しながら自律的にキャリア形成する事を支援します。評価は雇用管理区分に応じて実施し、人財マネジメントにおける役割や給与等の処遇の決定と、チャレンジできる自律した人財育成に活かしています。
従業員の役割に応じて、目標管理に基づく業績評価、成果創出の過程となる行動、担当職務を遂行する上での職務遂行能力、チームの一員としての情意など、さまざまな視点で評価を行っています。さらに、チームの目標達成や人財育成の観点から、上司とメンバーのコミュニケーションを重視し、定期的な面談と評価結果のフィードバックを必須としています。これにより、評価の透明性を確保し、上司の説明責任を明確化することで、納得して働ける環境づくりと従業員の成長をサポートしています。
2024年には社内公募制度の継続実施や、OKRの導入、人財管理データベースでのスキル管理拡大などの施策を実施し、キャリア形成支援のための仕組みの整備を進めています。
※人財マネジメント戦略の取り組み詳細についてはウェブサイトをご覧ください。
② リスク管理
人財に関するリスクと対応策については
③ 指標と目標
当社の人的資本に関する主な指標と目標は以下のとおりです。
(注) 男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、
当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のある主なリスクについては以下のとおりであります。
なお、以下の記載における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月28日)現在において当社グループが判断したものであります。
家庭用品事業の主力である虫ケア用品の需要期は主として毎年4月~8月の約5ヵ月であり、例年、年間の市場販売額のおよそ8割がこの期間に集中するため、家庭用品事業の売上高もこの期間に占める割合が高くなります。虫ケア用品は、需要期を控えた3月から製品の出荷が始まり7月頃にはそのピークを迎え、その後12月にかけて取引先からの返品が生じます。このため、当社グループの業績については、第3四半期(1月~9月)までに収益が集中する一方、第4四半期(10月~12月)の収益は低下します。また、虫ケア用品は季節性が高く、当該期の天候等の影響で市場規模が収縮した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(連結) (単位:百万円)
当社グループは、海外展開の強化を最優先課題に掲げ、タイ・ベトナム・マレーシア・フィリピン・中国の現地法人を中心にアジア地域での積極的な展開を進めておりますが、外国政府による規制や海外情勢、経済環境の変化など、想定しなかった事態が起きた場合、計画に対しての進捗が遅れる可能性があります。また、在外子会社の売上高、費用、資産及び負債を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表作成のために円換算しますが、換算時の為替レートにより円換算後の数値が大幅に変動し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) グループ組織再編に関するリスク
当社は現在取り組んでいる中期経営計画「Act for SMILE COMPASS 2026」に基づき、株式会社バスクリンとの経営統合に向けて準備を進めております。2026年1月の統合を目指し、両社のシステム統合や経営資源の再配分などの検討を進め、グループでのシナジー創出を目指しております。しかしながら、想定外の問題の発生や経営資源の再配分が計画通りに進まないこと等によって、経営統合の遅延、延期などの事態に至り、想定した成果が得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) M&A等の実施による影響
当社グループは、将来に向けて持続的な成長を図るため、M&A等を通じた事業領域及び展開エリアの拡大を推進しております。これらについて、事後に発生した想定外の事象や環境変化によって、想定した成果が得られない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
これらリスクへの対応として、当社グループはグループ各社の経営状況の的確な把握に加えて、重要案件の進捗や課題の共有等を行っています。
(5) 原材料価格の変動
当社グループは、複数の国・地域から原材料を購入しております。気候変動、為替変動、国際的な需要拡大等による需給動向の変化、また地政学的リスクなどに伴い、原材料の購入価格が高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、当社グループの取り扱う製品の原材料は石油化学製品の占める比率が高く、原油価格の動向には注視が必要です。
このようなリスクを認識した上で、当社グループでは処方の変更、複数社購買、グローバル調達などによる継続的なコストダウンに取り組むなど、リスク回避に努めています。
虫ケア用品は殺虫原体という化学品を主成分とし、多くの虫ケア用品もこれを基幹原料として生産されております。殺虫原体は主要なユーザーが限定されており、毎年の需要と供給並びに市場価格は安定して推移しております。
殺虫原体の多くは国内外のメーカーから購入しておりますが、一部についてメーカーが限定されており、当該メーカーとの取引が継続困難となった場合や、仕入価格に大きな変動が起こった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが中長期的に成長していくためには、多様な価値観や専門性を持ち、自立した人財が必要不可欠です。しかしながら、少子高齢化による労働人口の減少や雇用情勢の変化等により、事業活動に必要な専門性を持った人財を計画通りに確保できなかった場合、もしくは育成・定着が進まなかった場合には、中長期的な成長を達成できなくなる可能性があります。また、価値観の多様性を尊重し、組織での関係性が向上する風土が醸成できない場合には、事業における機会損失だけでなく、人財の流出が起こり、事業活動が停滞する可能性があります。
そこで当社は4つの人財マテリアリティを掲げ、「事業が求める人財育成・活躍できる仕組み作り」実現のための組織・機能の構造改革を進めてまいります。
(8) 事業に関する法的規制
家庭用品事業では、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療機器に該当する製品を取り扱っており「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)の規制を受けております。また、農薬に該当する製品については農薬取締法の規制、肥料に該当する製品については肥料取締法の規制をそれぞれ受けております。事業を行うにあたっては、薬事品目に係わる製造販売業許可、各工場での製造業許可、各支店での医薬品卸売販売業許可の取得の他、各支店での農薬販売届を行っております。また、製品毎に製造販売承認や農薬登録を受けております。
総合環境衛生事業では、防虫・防鼠施工業務や建築物清掃業務などについては建築物における衛生的環境の確保に関する法律の適用を、また医薬品や劇物等の取り扱いについては薬機法及び毒物及び劇物取締法などの適用を受けます。こうした法規制により建築物ねずみ昆虫等防除業、建築物清掃業及び毒物劇物一般販売業などの許可を取得して事業を行っております。
これらの法的規制については、現在のところ問題なく対応しておりますが、今後改正や規制強化が行われた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、特に家庭用品事業において許可の取り消しや業務停止等の処分を受けた場合は、当社グループの事業展開に支障をきたすとともに業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(9) 品質に関するリスク
当社の製品には、医薬品、医薬部外品等があり、品質管理の高い水準を確保することが求められます。しかし、製造工程に起因する製品不良や想定外の製品事故等によりお客様に被害を与えるようなことが発生した場合には、被害の状況によっては当社グループのブランドイメージや社会的信用の低下につながり、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社のモノづくりにとって、お客様目線に立った高品質で安心・安全な製品・サービスを提供し続けることが最も重要な社会的責任です。研究開発、品質保証、お客様とのコミュニケーションにおいて基本方針を定め、安心で快適な暮らしに貢献する製品・サービスを提供するために、「お客様の満足と信頼を損ねる品質重大事故をゼロにするため、自社工場、製造委託先工場の定期品質監査実施率を向上」、「関連法令を遵守し、違反につながる重大事故をゼロにするため、教育訓練年間計画の実施率を向上」させてまいります。
当社グループは、地震等の自然災害に対してBCP(事業継続計画)のもと、BCM体制を構築しております。しかしながら、万が一大きな災害が発生した場合、生産設備の損壊、原材料調達や物流の停滞などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、感染症につきまして、当社グループでは時差勤務やテレワークの推奨、ウェブ会議等を利用した社内外のコミュニケーションの実施、事務所での消毒液の設置など対策を実施し、社員の健康管理を徹底した上で事業を継続しております。しかしながら、収束までの期間が長期化した場合、社員・取引先への感染やサプライチェーンの混乱などにより、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 気候変動によるリスク
世界的に最も深刻な環境問題である気候変動及びこれらの緩和とその適応は、中長期的に当社の事業の継続や拡大に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動による平均気温の上昇、降水パターンの変化をはじめとした異常気象の激甚化などが、当社事業のバリューチェーン全般に影響を与える可能性もあります。こうした気候変動への対応は、中長期的な企業価値に関わる経営課題であると認識しています。全ての事業において課題解決に向け、脱炭素社会への移行に貢献するために、「CO2排出量の削減」、「電力の再生可能エネルギー化の推進」に取り組んでまいります。また、当社は気候変動関連の財務情報開示の重要性を認識し、TCFD提言への賛同を表明しており、提言に即した情報開示を行ってまいります。
(12) レピュテーションによるリスク
スマートフォンの普及が進んだことやソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下、SNS)を活用する人の増加により、時間と場所を選ばず、誰でもが情報を受発信できる環境になっています。SNSは、生活者同士又は生活者と企業との相互コミュニケーションを可能としています。SNS等を通じた情報発信の中には企業に対する批判的な評価や評判も含まれており、それらが拡散することにより、ブランド価値や企業の信用の低下につながる可能性があります。当社においても、SNSを活用した様々な情報発信やブランドのマーケティング活動が年々増加しています。それらの活動で使用された不適切、又は不用意な表現に対する批判的な評価等がSNSを通じて拡散された場合、当社グループのブランド価値や企業の信用を著しく低下させる可能性があります。
当連結会計年度の当社グループに関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 事業全体及びセグメント情報に記載された区分ごとの状況
a. 事業全体の状況
当連結会計年度におけるわが国の経済について、物価の上昇や不安定な為替、金融政策の見直しなどにより依然として経済の先行きは不透明な状況が続いています。
当社グループが展開に注力するアジア地域においては、中国では、不動産市況の停滞などを背景に個人消費の低迷、内需の停滞などがあり、経済回復に弱さが見られました。一方、ASEANでは対米輸出の拡大などから経済成長を維持し、旺盛な内需により、好調な推移となりました。
このような経済状況の中、当社グループは「グループの総力、アースの明日へ」をスローガンに掲げ、2026年度までの中期経営計画「Act For SMILE COMPASS 2026」に沿って経営を進めています。本計画では、利益、キャッシュ・フローの創出(収益力の向上)を最優先課題として国内の構造改革及び日用品のブランド力向上により収益力の強化を図るとともに、海外現地法人を通じたアジア市場での展開や中東などへの輸出を併せた海外事業を成長ドライバーと捉え、海外売上高の拡大を目指してまいります。
当連結会計年度における当社グループの業績については、家庭用品事業では競争環境の激化による入浴剤の売上減があった一方、虫ケア用品において販売最盛期である夏の高温に加え、残暑による販売期間の長期化が寄与し、売上が増加しました。また、ASEANや輸出での売上が伸長した他、衛生管理サービスへのニーズの高まりを背景とした年間契約数の増加による総合環境衛生事業の売上成長もあり、売上高は1,692億78百万円(前期比6.9%増)となりました。利益については、原材料価格高騰の影響の長期化や販売費及び一般管理費の増加などがありましたが、増収に伴う売上総利益の増加により、営業利益64億25百万円(前期比0.9%増)、経常利益73億64百万円(前期比8.4%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、連結子会社であるEARTH HOMECARE PRODUCTS(PHILIPPINES),INC.及び掛川工場について減損損失を計上することとなり、34億75百万円(前期比15.3%減)となりました。
b. セグメント情報に記載された区分ごとの状況 ※セグメント利益は、連結損益計算書の営業利益ベース
(家庭用品事業)
家庭用品事業におきましては、中期経営計画に基づいた収益構造改革を行うべく、収益性と将来性を軸にしたブランド・品目の選択と集中など、ブランド強化と市場拡大を目指した施策を進めました。また、海外においては、ASEAN・中国での積極展開と輸出の拡大に取り組みました。加えて、原材料価格高騰に対応すべく販売価格の改定などにも努めました。
当連結会計年度における当事業の業績については、日用品部門において入浴剤の売上減があった一方で、価格改定施策の効果の顕在化や、残暑が長引いたことに伴う虫ケア用品の需要の長期化、タイ、ベトナムを中心とした現地法人や輸出の売上が好調に推移したことなどが寄与し、売上高は1,489億13百万円(前期比7.1%増)となりました。利益面では、長引く原材料価格高騰の影響や人件費、広告宣伝費の増加などがありましたが、増収に伴う売上総利益の増加が寄与し、セグメント利益(営業利益)は49億68百万円(前期比12.4%増)となりました。
(注) 売上高にはセグメント間及びセグメント内の内部売上高又は振替高が含まれており、金額は前連結会計年度では9,577百万円、当連結会計年度では11,333百万円です。
部門別の主な売上高の状況は次のとおりであります。
虫ケア用品部門
国内においては、販売最盛期である夏の高温に加え、残暑による販売期間の長期化などにより、市場が拡大しました。市場の拡大に伴い、当社の主力カテゴリのゴキブリ用や不快害虫用に加え、虫よけ製品の売上が伸長した他、当期の新製品『ゴキッシュ スッ、スゴい!』、『ゼロノナイト ゴキブリ・トコジラミ用1プッシュ式スプレー』の販売も順調に推移し、売上に貢献しました。また、価格改定効果の顕在化などもあり、市場シェアは57.3%(自社推計、2023年比0.4ポイント増)となりました。さらには、経営課題である返品削減施策に継続して取り組んだ結果、返品額が減少し、業績に寄与しました。
海外においては、ASEANや輸出の伸長の他、中国でのオフラインチャネル強化の戦略転換による効果の発現により、売上成長が継続しました。
以上の結果、当部門の売上高は697億44百万円(前期比12.4%増)となりました。
日用品部門
口腔衛生用品分野においては、競合他社の積極的な製品展開によって、市場での競争が激しさを増しており、主力の洗口液『モンダミン プレミアムケア』の売上が前年を下回りましたが、若年層をターゲットにした新製品『ダモン』の売上が寄与し、売上高は85億12百万円(前期比1.8%増)となりました。
入浴剤分野においては、消費者ニーズが多様化している中、新製品『温泡 デカまる』の投入により錠剤タイプの売上は伸長しました。また、『BARTH』ブランドの中性重炭酸入浴剤の売上は順調に推移しました。一方で、粉末タイプ『バスロマン』・『バスクリン』、粒剤タイプ『きき湯』等は高いシェアを維持するものの、売上は低調な状況が続き、売上高は251億4百万円(前期比3.6%減)となりました。
その他日用品分野においては、消臭芳香剤の価格改定効果は想定を下回りましたが、猛暑対策を目的とした冷却剤や保冷剤、女性用マスク、エアコン洗浄剤の売上が伸長したことに加え、ベトナムで取り扱う住居用洗剤の売上が拡大し、売上高は340億35百万円(前期比3.8%増)となりました。
以上の結果、当部門の売上高は676億53百万円(前期比0.7%増)となりました。
ペット用品・その他部門
ペット用品分野においては、飼い主のペットに対する健康意識の高まりやペットの住環境の充実等を受け、一頭あたりにかける費用は増加傾向にあり、ペット関連市場は好調を維持しています。こうした状況下、ペット用虫ケア用品、猫砂等のケア用品や機能性フードの売上が好調に推移したことにより、当部門の売上高は115億16百万円(前期比17.8%増)となりました。
(総合環境衛生事業)
総合環境衛生事業におきましては、食品や医薬品、医療についての安全基準に対する国際調和の流れや、国内における法改正、異物混入事故の発生などを背景に、食品関連工場や医薬品関連工場、包材関連工場における当社グループの専門的な知識や技術、ノウハウをもって提供する高品質な衛生管理サービスへのニーズは依然として高くありました。外部環境では、製造業における設備投資の増大が追い風となった一方、世界情勢の悪化により人件費の上昇や資機材の価格高騰が加速しました。
こうした中、差別化された衛生管理サービスを提供するために、専門性や技術開発力の強化に向けた投資を積極化し、契約の維持・拡大と適正な利益の確保に努めました。特に、食品工場における製造ラインの清掃業務においては、安全に十分に配慮しながらも適正な利益確保を図りました。また、JFS規格適合証明では監査件数が増大、新規格JFS-B Plusにおける初の監査会社に登録されました。研究開発分野においては、分析センター東日本ラボを千葉県千葉市に移転・集約し、ライフサイエンス分野向けの検査設備を拡充しました。新規商材ではAIを活用した監視システム『Pescle』のシリーズとして、虫を対象とした『Pescle Insects』を新たに上市しました。
当連結会計年度における当事業の業績については、原価率の上昇や人財への積極投資に伴う人件費の増加などがあったものの、年間契約件数が伸長した結果、売上高は318億88百万円(前期比9.7%増)、セグメント利益(営業利益)は15億円(前期比3.4%増)となりました。
(注) 売上高にはセグメント間及びセグメント内の内部売上高又は振替高が含まれており、金額は前連結会計年度では158百万円、当連結会計年度では191百万円です。
c. 目標とする経営指標の達成状況等
当社グループは、中期経営計画「Act For SMILE COMPASS 2026」を2024年2月に公表しております。当該中期経営計画の最終年度である2026年度には、売上高1,700億円、営業利益70億円、営業利益率4.1%、当期純利益70億円、ROE7.2%、ROIC5.4%、DOE4%台維持の達成を目指しております。
初年度となる当連結会計年度は、中期経営計画に掲げる収益構造改革に取り組みながらも、虫ケア用品の価格改定の実施、海外事業や総合環境衛生事業が好調だったことにより、売上高は1,692億78百万円となりました。加えて、営業利益も中期経営計画に基づく施策の実行等に伴う売上総利益の増加や販売費及び一般管理費の増加などにより64億25百万円となり、当初計画を大きく上回る結果となりました。一方、親会社株主に帰属する当期純利益及びROE、ROICは、連結子会社であるEARTH HOMECARE PRODUCTS(PHILIPPINES),INC.及び掛川工場について減損損失を計上したため、34億75百万円及び5.1%、5.5%となりました。
2026年度の売上目標に対しては近しい水準にまで成長していますが、稼ぐ力や資本効率については課題が残る状況となり、今後は更なる収益力の改善を目指してまいります。
② 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. 金額は、販売実績に基づいた価格によっております。
2. 総合環境衛生事業はサービス事業であるため、生産実績はありません。
b. 商品仕入実績
当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1. セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 金額は、仕入実績に基づいた価格によっております。
c. 受注状況
当社グループは、見込生産を行っているため、該当事項はありません。
d. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2. 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
3. 当連結会計年度におけるアルフレッサ ヘルスケア㈱への販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため、記載を省略しております。
(2) 財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末より32億29百万円増加し1,356億36百万円となりました。
流動資産の残高は、前連結会計年度末より9億3百万円増加し750億73百万円となりました。これは主に、現金及び預金が4億97百万円減少した一方、棚卸資産が16億19百万円増加したことなどによるものです。
固定資産の残高は、前連結会計年度末より23億25百万円増加し605億62百万円となりました。これは主に、その他の無形固定資産が17億97百万円、商標権が6億37百万円、顧客関連資産が7億38百万円減少したものの、ソフトウエアが20億74百万円、退職給付に係る資産が35億42百万円増加したことなどによるものです。なお、その他の無形固定資産とソフトウエアの増減要因は、刷新した基幹システムの稼働開始に伴い、その他の無形固定資産としていたソフトウエア仮勘定からソフトウエアに振り替えたことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末より5億77百万円増加し、609億83百万円となりました。
流動負債の残高は、前連結会計年度末より3億84百万円増加し578億77百万円となりました。これは主に、短期借入金が50億円減少した一方、仕入債務が26億62百万円、未払金が8億9百万円、未払消費税等が3億57百万円、その他流動負債が13億29百万円増加したことなどによるものです。
固定負債の残高は、前連結会計年度末より1億93百万円増加し31億5百万円となりました。これは主に、繰延税金負債が3億55百万円増加したことなどによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末より26億51百万円増加し746億52百万円となりました。これは主に、自己株式の取得により20億円減少した一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより利益剰余金が8億51百万円、為替換算調整勘定が11億42百万円、退職給付に係る調整累計額が18億27百万円増加したことなどによるものです。
(3) キャッシュ・フローの状況
① 現金及び現金同等物
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末に比べて7億29百万円減少し、167億75百万円となりました。
② 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果、増加した資金は139億64百万円(前期は75億24百万円の増加)となりました。この主な内容は、税金等調整前当期純利益59億46百万円(前期は65億63百万円)、減価償却費44億24百万円(前期は41億18百万円)、減損損失13億8百万円(前期は該当なし)、仕入債務の増加24億90百万円(前期は56億36百万円の減少)、その他の負債の増加28億18百万円(前期は2百万円の増加)、法人税等の支払額25億6百万円(前期は11億8百万円)であります。
③ 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果、減少した資金は52億80百万円(前期は101億35百万円の減少)となりました。この主な内容は、有形固定資産の取得による支出38億91百万円(前期は44億39百万円)、無形固定資産の取得による支出8億75百万円(前期は16億4百万円)であります。
④ 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果、減少した資金は99億1百万円(前期は48億93百万円の増加)となりました。この主な内容は、短期借入金の純減少額50億円(前期は90億円の純増)、自己株式の取得による支出20億円(前期は0百万円)、配当金の支払額26億10百万円(前期は26億3百万円)であります。
⑤ キャッシュ・フロー関連指標の推移
⑥ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、営業活動から得られる自己資金、金融機関からの借入などを資金の源泉としております。また、当社及び国内連結子会社間でキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入しており、各社の余剰資金を当社へ集中して一元管理を行うことで、資金の流動性の確保と資金効率の最適化に努めております。
設備投資やM&Aなどに伴う長期的な資金需要については、資金需要が見込まれる時点で、内部留保に加え、金融機関からの長期借入及びエクイティ・ファイナンスなどを活用して対応しております。また、運転資金など短期の資金需要については、自己資金及び短期借入を充当しております。
今後に向けては、構造改革を断行する資金を投じつつ、中長期に持続的な成長を図るための投資として、IT・DX投資を含む設備投資を積極的に推進するとともに、国内外を問わず事業規模・領域の拡大、適切な収益の確保及びキャッシュ・フローの創出に貢献するM&Aの実施を検討します。これら投資の際には、資本コストや投資採算性を十分に考慮するものといたします。
⑦ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって重要となる会計方針及び会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」に記載しております。
なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いられた仮定が特に重要な影響を及ぼすと考えられる、固定資産の減損会計や繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りは、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき合理的に判断し実施しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。
該当事項はありません。
当社グループは「生命と暮らしに寄り添い、地球との共生を実現する。」を経営理念に、めまぐるしく変わる国内外の市場環境や消費者志向に対応すべく、常に「お客様目線」に立ってニーズを発掘する姿勢、提供のタイミングを逃さない開発スピードを念頭におき、クオリティの高い安全な高付加価値製品を創造しております。
当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
報告セグメント別の研究開発活動は以下のとおりであります。
当事業では、お客様の生活空間の質向上を目的に、基礎的な研究を充実させ、お客様目線を第一に、独創的で高品質な製品を他社に先駆けて、提供することを目指しております。
この方針のもと、お客様や小売店様からの要望、国内外の市場動向、技術動向などに関する情報の入手・調査・分析を行い、スピーディに、新製品開発及び既存製品の改良に取り組んでおります。
ハエ・蚊・ゴキブリ・ダニ・ノミ・マダニ・シラミなど健康被害を及ぼす衛生害虫や、アリ・ハチ・ムカデなどの不快害虫の駆除あるいは忌避を目的とした虫ケア用品の研究開発を行っております。近年の傾向として、特定害虫専用の駆除剤、忌避・予防製品、殺虫成分を含まない製品、さらには使用時の不快感を取り除くため、香りを重視した製品の需要が高まっており、これら特定製品のニーズの高まりにも応えるべく取り組んでおります。
当連結会計年度の主な研究成果は以下のとおりであります。
近年、虫を見たくないという消費者意識の高まりを受け、「予防」商品の需要が増加しております。この需要に応えるべく、ゴキブリ用商品として、空間やすき間に1プッシュするだけで家中のゴキブリを丸ごと退治、さらにゴキブリの発生を防ぐことのできる『アース ゴキッシュ スッ、スゴい!』を発売し、新たなユーザーの獲得に成功しました。
また、新たな虫ケアユーザー、特に若年層のユーザー獲得を目的に、長時間使用できる蚊取り線香のジャンボタイプとして従来のパッケージを一新し、さらに若年層のお客様が求める予防効果を付加した『アース長持香』を発売しました。これにより、若年層を中心とした新たな市場の開拓を進めております。
コバエ用商品においては、発生予防だけでなく、コバエに対して当社史上最速の効果を実現した『アース コバエ1プッシュ式スプレー スピードスター』を発売しました。この商品は、予防と速効性の両立を果たし、ユーザーの高い評価を得ております。
アース・ペット㈱は、家族の一員であるペットとのお出かけ時にペットに着けることで虫から身を守ることができる『虫よけバンダナ』を発売しました。この商品は、虫ケアのみならず、ペットのおしゃれを楽しむことができる商品となっております。
お客様の健康や、居間・浴室・トイレ・キッチンなどの居住空間の質向上に役立つ製品の提供を目指し、口腔衛生用品、入浴剤、消臭芳香剤、防虫剤、住居関連用品、ネズミ用駆除剤、脱臭・消臭剤、育毛剤、ペット用品などの研究開発を行っております。
当連結会計年度の主な研究成果は以下のとおりであります。
当社は、2015年から多くの支持をいただいている発泡入浴剤「温泡」シリーズから、強力発泡でたまった疲れをガツンと回復することができる『温泡 デカまる』を発売しました。見た目のインパクトに加え、しっかりとした使用実感をお客様に提供しております。
㈱バスクリンは、おやすみ前のリラックス習慣として親子の入浴後にゆったり過ごしてもらえるような入浴剤『バスクリン もう夜ですよ おだやかオレンジミルクの香り』を発売しました。
白元アース㈱は、「アイスノン」ブランドのラインナップ拡充に努めてきました。今回、冷感が物足りないお客様の声に応える形で、肌に直接スプレーするだけで冷感が得られる『アイスノン ICE KING 極冷えボディミスト』を発売しました。
虫ケア用品で培ってきた技術やノウハウを活かし、“安全”、“優れた効果”、“使いやすい”、“わかりやすい”を基本理念に、園芸愛好家の方から初心者の方まで幅広くご使用いただける園芸用品の研究開発を行っております。
当連結会計年度の主な研究成果は以下のとおりであります。
当社はイベントやSNSプロモーションなどを駆使し様々なSDGs活動に取り組んでおります。家庭園芸用品の開発においてもその考えを貫いており、食品成分生まれの除草剤「おうちの草コロリ」シリーズ等を展開し、多くのご支持をいただいております。除草剤は、広い面積を処理したいというお客様が多く、リピート購入や大容量の購入比率が高い商品です。このため、何度も購入する手間や保管場所の問題がお客様の悩みとなっています。そこで、『アースガーデン おうちの草コロリ水で薄めるタイプ500 mℓ』を発売しました。
また、幅広い作物の様々な病害虫対策に使用することができる『アースガーデン 花いとし』及び『アースガーデン 野菜うまし』にエコパックを追加し、プラスチックの使用量を削減しました。これらの商品開発を通じて、我々は消費者の家庭園芸における快適さと環境への配慮を両立し、持続可能な社会づくりに貢献することを目指しています。
当社は一般消費者向けの商品開発に加え、宿泊施設や飲食店等の業務用市場を対象に商品を展開しております。
新型コロナウイルスの影響が緩和し、海外からの渡航者が急増する中、海外から持ち込まれた、従来の薬剤が効きにくい抵抗性トコジラミによる被害が宿泊施設を中心に大きな問題となっています。通常、トコジラミに対しては、専門業者による大掛かりな駆除作業が必要です。そこで我々は、宿泊施設のスタッフが自分たちで対策できるよう、事前準備や片付けの必要もなく、手軽に使用できる新商品『プロネーターZ』を発売しました。
当連結会計年度における家庭用品事業の研究開発費は
① 検査・検定にかかる研究
当事業では、契約先からの各種検査・同定や異物検査要請に正確かつ迅速に対処するために、彩都総合研究所内の分析センター西日本ラボ(大阪府茨木市)と分析センター東日本ラボ(千葉県千葉市)を設置しております。
それぞれの分析センターでは、「迅速・正確・お客様第一」という基本方針のもと、食品、医薬品、医療、容器・包材、物流・倉庫をはじめとした様々な業種業態のお客様を対象に、微生物検査、異物検査、遺伝子同定などを実施しております。検査・同定においては、ISO/IEC17025試験所認定を受けるなど信頼性の向上に努めています。微生物検査においては、製品、原材料、製造環境や工程に存在する微生物の検査や菌種の同定を行っており、迅速測定法も積極的に導入しております。異物検査では、形態観察による確認、FT-IRや蛍光X線分析装置による化学的分析を実施し、製品混入異物などの分類や同定を行っております。遺伝子同定では、微生物や、異物の生物種を判定しております。また、受託試験や検査員研修も実施しております。
分析センター東日本ラボにおいては千葉県千葉市に移転、晴海分室を統合し、ライフサイエンス分野向けの検査体制を強化するべく、遺伝子同定の新たなシステムの導入や医薬品関連の検査の専用エリアを設けるなど施設・設備を拡充しております。
② 調査・施工等にかかる研究
高い品質環境を実現するために、防虫防鼠に関連する商品や薬剤の開発、除菌・消毒技術の確立等、虫・ネズミ・微生物等による異物混入や汚染の防止、維持管理のための技術改良や、新たな技術、サービスの研究や開発を行っております。産学官との連携や共同研究、実験や検証を通じたエビデンスデータの蓄積、科学的根拠に基づくガイドライン作成への参画や衛生管理システムの確立等も積極的に取り組んでおります。
③ 今後の方針
各企業では衛生管理への積極的な取り組みが行われているものの、依然として製品への異物混入や微生物による汚染は起こっており、検査や同定の依頼や対策のニーズも高い状態にあります。契約先の顧客満足度を向上させるためには、検査における精度と迅速性の向上及び危害物質による汚染や異物混入を防止するための技術開発が重要と考え、ISO17025(試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項を規定した国際標準規格)の維持、産官学での連携の強化及び分析機器や社内システムのレベルアップについて更なる推進を図ってまいります。
また、彩都総合研究所では既存技術の改良やニュービジネス及び新技術の確立、科学的根拠に繋がる基礎データの蓄積と解析評価の実現に加え、時代に合わせた教育支援のニーズにも応えられるよう、医薬品製造模擬施設や教育訓練用細胞培養加工施設といった施設を活用した独自性の高い研修サービスを拡充してまいります。
当連結会計年度における総合環境衛生事業の研究開発費は