第2 【事業の状況】

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループは「自動車用コンプレッサーと統合熱マネジメントシステムのグローバルリーダーになる」というビジョンに基づき、コンポーネントサプライヤーから 「フルソリューション・システム・サプライヤー」への変化を遂げ、統合熱マネジメントシステムのリーディングカンパニーとして持続的成長を実現するため、2024年2月に発表した中期経営計画に引き続き取り組んでまいります。

 

1.中期経営目標(2028年度連結ベース)

①計画名称:SHIFT2028 (シフト2028)

②計画期間:2024年1月1日~2028年12月31日

③連結経営指標:売上高 3,000億円、経常利益 90億円

 

2.基本方針

NEV(新エネルギー車)市場に焦点を当て、常にカスタマーファーストの視点で、電動コンプレッサーの製品力を軸に、競争力と柔軟性を兼ね備えた統合熱マネジメントシステムソリューションを提供する

 

3.重点戦略

本中期経営目標を達成するために、6つの重点施策に取り組みます。

(1)欧州グローバルOEMへの熱マネジメントシステムの販売強化による市場シェア拡大

(2)グループシナジーを最大活用した中国の統合熱マネジメントシステム市場の成長取り込み

(3)北米市場への投資強化によるNEV向け製品の北米事業の拡大

(4)製品プラットフォーム化の推進と独立系の強みを活かした幅広い顧客ニーズへの柔軟な対応

(5)グローバル生産レイアウト・サプライチェーンの最適化及びサステナビリティ実現

(6)人材開発の強化及び標準化とデジタル化の推進による組織運営の効率化

 

当連結会計年度における取り組みとしては、以下を行いました。

・エリア戦略による新規商権の獲得

・統合熱マネジメントシステムソリューションサプライヤへの転換に向けた技術開発

・グローバル生産レイアウト・サプライチェーンの最適化

・サステナビリティ活動の推進

・人材開発強化・組織運営の効率化の推進

 

現在の自動車市場は、世界情勢の変化も相まって不確実な状況にありますが、安定した成長を果たすため基盤となる競争力の向上と柔軟な対応を継続してまいります。

なお、上記の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

①ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ全般における課題について、業務執行取締役で構成する経営会議等において実現可能性や投資効果の分析を基に多面的に協議し、審議された内容で事業に重要な影響を及ぼすと判断されたテーマは、経営会議で検討され、取締役会へ報告しております。

当社がグローバル社会で直面する重要な社会課題の一つとして考える、気候変動に関わる取り組み・検討を行うグローバル環境委員会は、グローバル安全衛生環境委員会の一環として四半期に一度開催され、方針展開、進捗確認を行っており、全社方針展開、実績評価、施策進捗の確認を行う事で、気候変動を含む環境課題の担当範囲を明確化し解決に取り組んでおります。

また、サステナビリティ活動を統括管理するサステナビリティ委員会を立ち上げ、サステナビリティ活動を「安全衛生」「環境」「労働・人権」「社会・倫理」の4つの分野に区分し、それぞれの領域の活動を推進いたします。

 

②リスク管理

当社グループのサステナビリティ全般におけるリスク及び機会の管理は、自社のみならずバリューチェーン全体を理解した上で、経営に与える重要な影響(インパクトマテリアリティ)と、リスク及び機会(財務マテリアリティ)の両面から分析することで、重要なサステナビリティ課題を特定し、サステナビリティ方針とその取り組みとなる行動・目標を明確にし、取締役会にて審議され決定しております。

また、サステナビリティ委員会はリスク及び機会の識別・評価や優先順位付けを審議する役割を持ち、そのなかで経営に重大な影響を及ぼすと認識された事項については経営会議にて随時審議し、取締役会へ迅速に報告してまいります。当社グループの事業とその他に関するリスクの詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(2) 気候変動

①戦略

当社は2023年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同表明し、気温上昇を1.5℃以下に抑制するために貢献することは重要であると考え、シナリオ分析を実施しました。

また、世界的にサステナビリティ意識が高まり、GHG排出量や環境規制強化による発電の再エネシフトを前提として、主要な地域での新車市場における電動化がほぼ完了することを見込み、当社主力製品の電動コンプレッサーの製造を進めるとともに、再エネ使用比率の向上によるGHG排出量削減や、ITMSなどの技術革新にも積極的に取り組んでまいります。

 

②指標及び目標

脱炭素社会への移行を進める中で、気候変動に伴う燃費・排ガス規制や電動化への社会的要求を踏まえた環境負荷低減目標を掲げ、取り組みを進めております。

当社の環境負荷低減目標は「2030年までにCO2排出量をScope1+2を80%以上、Scope3を27.5%削減(2019年度比)、及び2039年までにカーボンニュートラル達成」に向けて、再生可能エネルギーの活用、製品の軽量化、及びサプライヤーとのコミュニケーションを強化しCO2削減に向けた活動協力などに取り組んでまいります。2023年度の実績は計画通りとなり、引き続き活動を推進してまいります。

また、2030年までの中期目標設定は「パリ協定」の目指す、世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べ 1.5℃に抑える軌道に沿った科学的な根拠に基づくScience Based Targets(SBT)initiativeのシナリオに準じており、当社は2023年10月にSBT認定を取得致しました。

 


 

上記目標に関する指標及び実績は次の通りです。

項目

目標年度

目標

2023年度実績

気候変動

CO2排出量)

Scope1

2030

Scope1+2排出量80%以上削減

17,495 t-CO2

△21.5%

Scope2

2030

68,872 t-CO2

△22.9%

Scope3

2030

27.5%以上削減

18,205,463 t-CO2

△13.9%

 

(注)1.削減実績は、2019年度を基準年(100)とした場合の削減割合

2.2024年度のCO2排出量は提出日時点の概算値として、(Scope1)17,800t-CO2、(Scope2)67,584t-CO2、

(Scope3)17,673千t-CO2となっております。確定値につきましては、第三者検証を経て2025年7月以

降に当社ホームページにて開示を予定しております。

 

また、開示した当社の2023年度CO2排出量データは、第三者の株式会社環境認証機構(JACO)による検証を受診しISO14064-3:2019に準じた限定的保証を受けております。

 

(3) 人的資本

①戦略

(人財育成方針及び社内環境整備方針)

当社は、「人づくり」こそ会社の将来を左右する最大の経営課題と認識し、「人間力」を原点に「技術力」を兼ね備えた人財を育成するという基本精神を基盤に社員教育を実施しております。

「人間力」:会社の発展を推し進める力

⇒リーダーシップ、強い精神、情熱など

「技術力」:効率的に仕事を進める手法

⇒TQC、マーケティング、戦略など

社内環境については社員の視点から安心して活躍できる環境づくりを目指しており、社員満足度を重要視したエンゲージメントアンケートを毎年実施しております。またグローバルで変化するビジネス環境の中では、ダイバーシティを推進し、「多様な価値観を尊重して受け入れ、違いを積極的に活かす」ことが重要であるという考えをもっております。

また近年、経済活動のグローバル化の進展に伴い、企業活動が地球環境や私たちの生活に及ぼす影響はより一層拡大しています。そのような状況を背景に、企業を取り巻くステークホルダー(消費者、労働者、顧客、取引先、地域社会、株主等の利害関係者)から、人権尊重などに企業が真剣に取り組むことが求められています。そこで当社は2023年に新たな人権方針を策定しております。方針は今後の企業における人権活動全般における方向性を示すものであり、全てのステークホルダーの潜在的、また実態としてのリスクの把握ならびに回避・低減と予防に努め、この方向性の実現に向けて必要な改善に取り組んでまいります。

 

(人財育成及び社内環境整備に関する取り組み)

a.キャリアマネジメント

当社は、キャリアマネジメントへの方針としてキャリア開発と成長のための平等な機会を提供し、雇用においては、公正で偏りのない対応をするように努めております。

また、採用や業績評価のプロセスにおける透明性を高め、社員の能力開発をサポートするために定期的なフィードバックとトレーニングを提供し、当社のキャリアを通じてすべての従業員の権利と尊厳を尊重するよう努めております。

 

b.人財育成の仕組み

各教育研修は、「リーダーシップ教育」を軸に、「企業理念」や「ビジネススキル」「マネジメントスキル」等のプログラムで構成し、若年層から一貫して実施しております。

また、研修間では高い学習効果を得られるよう、各階層・役職毎に求められる「役割・責任」や「知識・スキル」を可視化し、社員に提示しております。 

「階層別研修」:各階層で必要な知識・スキルの修得

「選抜研修」:将来の幹部育成、選抜対象の研修

「専門教育」:各部門で実施する専門的な技術教育

「自己啓発」:社員の自己啓発を支援する取り組み


 

c.外国人の積極的な登用

グローバル事業の展開をさらに加速させるため、人財の育成と確保をグローバルに行うことを重要な施策の一つに位置付け、毎年多国籍の人財をキャリア採用や新卒採用にて継続的に採用することを進めております。日本では94名の外国籍人財が勤務しており、うち役員や管理職として52名が活躍しております。(2024年12月末日現在)

 

d.エンゲージメント調査実施

当社をよりよい会社にしていくため、従業員から現在の職場の環境について率直な意見を収集し、組織課題発掘のための基礎データとしております。従業員の生産性を共に向上させるための課題を把握し、組織や職場の活性化、人財育成、働きやすい職場環境への諸施策に活かすことを目的にエンゲージメント調査を継続的に実施しております。

・実施状況

調査対象:日本国内勤務の当社従業員

社員・準社員・期間社員・再雇用・嘱託(常勤)・プロパー組合員・受入出向・派遣社員含む

 

e.女性の活躍推進

女性がさらに活躍するために社内の課題を以下と捉え、目標と行動計画を策定しており、詳しい情報については厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」において公表しております。

・課題

1.女性管理職候補者の増大

2.女性社員比率の向上

3.リーダー人財の育成強化

4.生産性を高める働き方の整備

 

②指標及び目標

当社グループは、人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の目標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は次の通りです。

取り組み

指標

2023年度

実績

2024年度実績

2025年度

目標

対象

人財育成

階級別研修

新任管理職セクション
リーダー研修受講率

91%

96%

前年度以上

サンデン

株式会社

Newリーダー研修受講率

82%

89%

前年度以上

選抜研修

ヤングタレント研修受講率

91%

82%

前年度以上

ダイバーシティ推進

外国人の積極的登用

雇用総人数

(うち、管理職)

85(51)

94(52)

前年度並み

女性社員採用の強化

新卒・キャリアの
女性採用数

17

18

前年度並み

総合

エンゲージメント調査

満足度平均スコア

3.39

3.42

前年度以上

 

(注)当社においては、関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業とその他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は次のとおりであります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を充分認識したうえで、リスクの回避及び発生した場合に最小限にすべく対処しております。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 自然災害

当社グループでは、グローバル22か国・地域、46拠点で事業展開しており、不測の大規模地震・大雨・洪水・大雪等の自然災害や感染症の蔓延等による社員や事務所・生産設備に対する被害、製品輸送・外部倉庫保管中の事故や従業員出社率の大幅低下による操業停止等、不測の事態が発生するリスクが考えられます。

これらの事象は、工場の操業や顧客への供給に支障が生じることで当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあり、さらには顧客への製品供給に対する支障となり、当社グループの社会的評価の低下を招く可能性があります。

当社では、発災時の初動対応計画やサプライチェーン事業継続管理標準策定、社員安否確認システムの構築、耐震対策、防災訓練などの対策を講じております。加えて感染症等の感染拡大に対しては、感染予防策の徹底を図ると共に、定期的な予防接種など実施し、グローバルで迅速に対応できる体制を構築し、すべてのステークホルダーの健康や安全、感染拡大の防止に努めることを最優先とし、その上で事業活動を継続して行っております。加えて、グローバル全社員に対して労働安全衛生教育を通じ、災害発生時のレポートラインなどの周知徹底をさせております。ただし、想定を超えた自然災害・感染症蔓延等による被害を完全に排除できるものではなく、当社グループの経営成績と社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 気候(変動)関連リスク

当社グループは、グローバル22か国・地域、46拠点で事業展開しており、気候変動は、グローバル社会が直面している最も重要な社会課題の一つです。

世界では気候変動をはじめとする環境課題が深刻化し、日本国内でも異常気象による大規模な自然災害が発生するなど大きな影響を与えております。気候変動による世界的な平均気温の4℃上昇が社会に及ぼす影響は甚大であると認識し、気温上昇を1.5℃以下に抑制するために貢献することは重要であると考えております。気候変動によるリスクについては、当社グループの連結業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。脱炭素社会への移行を進める中で、気候変動対策に関連する燃費・排ガス規制や車両電動化への対応の遅れは、販売機会の損失、商権失注の可能性があります。

新たな燃費規制や車両電動化に応えるための研究開発の加速と、物理的なリスクである気象災害対策として、複数社からの部品調達などのサプライチェーンに対するリスクマネジメント強化を進めます。また、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)が推奨する4つの開示項目(「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」)について、気候関連情報を開示してまいります。

CO2排出量削減においては、グリーン電力の生産や調達を積極的に進め、2019年比で2030年にScope2排出量ゼロを達成し、2039年にカーボンニュートラル達成を目指します。

 

(3) 経済状況

当社グループは、全世界に主要製品であるカーエアコンシステム及びカーエアコン用コンプレッサーを販売しておりますが、その需要は、製品を販売している国や地域のさまざまな市場における経済状況の影響を受けます。特に、経済成長率の変動、為替相場の変動、金利の変動、貿易政策の変更などが、当社の製品需要に直接的または間接的に影響を与える可能性があります。

当社グループは、生産性の向上を図るとともに、固定費・変動費の削減を推進し、事業環境の変化に影響されにくい安定的な収益体質づくりを目指しておりますが、当社の自動車機器事業は主として北米、欧州、アジア、中国に事業展開しており、それぞれの地域における自動車市場の動向が、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 為替相場の変動

当社グループは、全世界で事業を展開しており、多通貨取引が発生します。このため、為替相場の変動は当社の財務状況に直接的な影響を与える可能性があります。特に、在外連結子会社及び持分法適用会社の財務諸表は、当社の連結財務諸表として円換算しておりますが、換算時の為替レートによっては、財務諸表を構成する資産の価値に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、短期的な為替レートの変動に対応するためヘッジ取引等の対策を講じ、リスクの軽減に努めておりますが、主要取引通貨である米ドル及びユーロの為替変動やアジア及び中国地域等における通貨変動が起きた場合には、これらの対策だけでは十分にリスクを回避できない可能性があります。その結果、当社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 原材料・部品の市況変化

当社グループは、製品、システムの製造・販売等を行っております。調達部品、材料の複数購買化を推進し、コスト上昇の抑制及び顧客への価格適正転嫁、供給逼迫の回避を進めておりますが、アルミ、銅、樹脂、電子部品等の原材料及び部品や物流費の市況の上昇が製造コストを引き上げ、供給逼迫の場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 価格競争

当社グループを取り巻く事業環境の価格競争は大変厳しくなっております。自動車向け熱マネジメントシステムや空調用電動コンプレッサーへの新規参入企業の増加、自動車メーカーにおける電動化車両や自動運転技術への莫大な投資があり、自動車メーカーから価格引下げ要請がより一層強くなってきております。

また、地域によっては現地競合メーカーの品質競争力も年々上がってきており、それに伴いコスト競争もより一層厳しくなってきております。

当社グループの商品は、品質・コスト・技術等において競争優位に立つものと考えておりますが、新規競合の市場参入に伴う競争の激化、特に電気自動車の走行効率を向上させる統合熱マネジメントシステム(ITMS:Integrated Thermal Management System)市場への参入競争激化、他業界からの競争参入等により、常に競争優位に立てるという保証はなく、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、今後のブロック経済化による関税強化など当社の管理が及ばない理由により、最終製品の価格にも影響を与える可能性があります。

 

(7) 販売先の業績依存

当社グループは、世界中の自動車メーカーに販売しており、特定販売先依存によるリスクの低減が図れていると考えております。

しかしながら、昨今発生している地政学面のリスク(ロシア・ウクライナ紛争、イスラエル・パレスチナ紛争、米中貿易摩擦等)や天災による特定顧客の車両生産への影響、自動車市場が電動車へとシフトしていく中での、従来の自動車メーカーに加え新たな企業との取引の発生など、当社の管理が及ばない理由により、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 国際的活動及び海外進出に潜在するリスク

当社グループは、北米、欧州、アジア、中国の22か国・地域、46拠点に進出し、開発、生産及び販売拠点を有し、事業活動を実施しております。このような国際的な事業活動には、各国の法規制の改正や変更、政治情勢及び経済状況の変化、戦争その他の不安要因による社会的混乱、労働争議、物流の混乱など、様々なリスクが内在しています。これらのリスクが顕在化した場合、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、リスク管理規定を制定し、カントリーリスクを伴う取引に対しては、リスク管理項目の一つとしてモニタリングしておりますが、各国、各地域での事業活動において上記のリスクが内在しており、事象として発生した場合、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 新製品開発

当社グループは、自動車が急速にガソリン車から電気自動車(EV)を含む新エネルギー車へ移行する自動車業界の動向を踏まえ、環境製品分野へ資源を集中するとともに、積極的な他社及び大学との連携を進めており、次世代環境車対応の統合熱マネジメントシステム(ITMS)、電動コンプレッサー等の新製品の研究開発と、それらの基盤となる要素技術の研究開発を行っております。

一方、グローバル世界各国の急激な市場変化や顧客ニーズの変化に対応が追いつかず、新製品開発と市場投入が円滑に進まない場合には、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

このリスクを回避するため、グローバルで多様に変化する市場やお客さまの求める価値の変化を随時注視し分析する活動を続けており、これらの分析結果を効率的に安定して確実に製品に落とし込むために、日本にて先行研究開発、要素技術開発、及びベースモデル開発活動を主導し、その成果をお客様の近くにある世界の各開発拠点で製品開発を行なうようにグローバルで連携した体制と仕組みを構築しております。

 

(10) 知的財産保護の限界

当社グループは、創業以来独自に技術を開発し、知的財産権やノウハウとして蓄積すると共に、開発活動と密に連携した知財保証制度に基づき第三者の有する知的財産権への対策を行ってまいりました。これら蓄積された知的財産権やノウハウは、事業展開する国、地域で、知的財産制度の適用を受けておりますが、特定の国、地域において、法的制限等により完全には保護できない可能性があります。これにより第三者が、当社の開発した技術を使用した類似製品の製造や販売に対して、完全には抑制できない可能性があります。また、各国の知的財産権公開制度に基づき公表された知財情報を利用した第三者の有する知的財産権への対策を実施しておりますが、特定の国、地域において、環境面の制約により第三者の有する知的財産権を完全には把握できない可能性があります。これにより第三者の知的財産権への抵触有無に対して、完全には判断できない可能性があります。

これら第三者の類似製品の製造や販売の影響により当該地域での売上高の減少や、第三者の有する知的財産権への侵害疑義による係争の発生により、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。そのようなリスクを最小化するため、各国の法律、特許事務所との連携を強化し、独自の強み技術の知的財産ポートフォリオを形成すると共に、弊社における第三者が保有する知的財産情報収集能力の更なる拡充を行なってまいります。

 

(11) 品質に係るリスク

当社グループ独自の品質方針を定め、お客様第一、品質第一に基づいた製品品質の向上活動を実施し、さらに自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム要求の品質管理基準に従い製品を開発、製造しております。

また、製品の予期できない欠陥等による製造物責任賠償が発生した場合の対応として、保険に加入しております。しかしながら、全ての製品欠陥に対する賠償額が保険でカバー出来る保証はなく、大規模なリコールや製造物責任賠償が発生した場合には、多額の費用発生や当社製品の信頼低下による売上減少の影響から、当社の業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) 法的規制等

当社グループは、事業展開する国、地域で、事業や投資に関する許認可、輸出制限、租税、環境規制、独占禁止法・競争法・下請法等をはじめとする各種の法規制の適用を受けております。当社グループの事業活動に適用される新たな法規制が導入された場合、または当社グループの事業活動がこれらの法規制に抵触した場合には、事業活動に制約が課せられる、刑事罰・行政罰を課せられる、社会的信頼を失うなどにより、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、グローバルに展開する事業活動において、当社グループに関係する法規制や法令の改正等を的確に把握し、社内規程の整備や従業員教育の実施など必要な対応を行うことにより、当社グループの事業活動があらゆる法令を遵守して行われるよう努めております。

当期は、下請代金支払遅延等防止法に基づく公正取引委員会からの勧告を受け、役員及び全従業員を対象とした下請法研修を実施するなど、再発防止に向けた具体的な取り組みを強化しました。これにより、法令遵守の意識向上を図り、今後の再発防止に努めていまいります。

また、現在、2026年に予定されている欧州の規制であるCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)に対応するため、社内にサステナビリティ委員会を設立し社内体制の強化を進めております。

 

(13) 訴訟等

当社グループでは、事業活動に関連して、当社グループが当事者となっている、または今後当事者となる可能性のある訴訟及び法的手続によって当社にとって不利な結果が生じた場合、当社の業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、契約締結前の契約審査、契約内容の適正化などを通じて、紛争の発生可能性の低減を図るとともに、紛争が発生した際の、当社にとって不利な結果が生じる可能性の低減を図っております。紛争の兆候につきグループ各社から当社への報告を求めるなどにより紛争拡大の可能性の低減を図っております。

また、平素より国内外の弁護士事務所と連携し、訴訟事件等において当社の利益を適切に確保するための体制を整備しております。

 

(14) 従業員のコンプライアンス

当社グループは、コンプライアンスを経営の最重要課題と位置づけ、その徹底を図っています。具体的には、各拠点にコンプライアンスに関する責任者と推進担当者の配置をはじめとしたコンプライアンス体制の確立、適切な職務権限の付与や相互牽制を可能にする職務分離を含んだ社内規程の整備、階層別研修など従業員に対するコンプライアンス教育制度、内部通報制度、内部監査体制等を内容とする内部統制システムを整備・運用しています。加えて、公正で納得感の高い業績評価・人事評価制度、厳正な懲戒制度の適切な整備・運用等により、不正のトライアングル(3つの要因)といわれる動機・機会・正当化の除去を図り、従業員不正の発生可能性の排除に努めております。

当社グループは多くの国、地域に展開しておりますが、従業員が各国や地域の法令に抵触する行為を行う可能性は皆無ではなく、これらの事態が生じた場合には、刑事罰・行政罰を課せられる、従業員の不正の結果としての損害の発生等により直接的に、あるいは、当社の社会的信用の失墜等を通じて間接的に、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 人財確保に関するリスク

当社グループは、グローバルでの事業目標達成のために多様で優秀な人財の確保に努めるとともに、当社グループ経営を推進する人財の育成と後継者確保の為、グローバル事業を担う人財やエンジニアの育成に取り組んでおります。また、社員コミュニケーションを実施し、全員が生産性高く活躍できる職場づくりに取り組んでいます。しかしながら、優秀な人財の確保における競争は激化しており、採用に関して更に強化すると共に、当社グループの人財の流出の防止に努めなければなりません。一方、デジタル革命や少子高齢化、ESG推進といった潮流の中で、雇用情勢の変化、働き方の価値観等が変わりつつあります。

環境変化への対応と各分野で必要とする専門性を持つ人財や、リーダーの維持・確保・育成・配置が計画的に推進できない場合には、事業活動の停滞等により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) 情報セキュリティに関する事項

当社グループは、事業活動及び当社製品において様々な情報システムやネットワークを利用しております。これらの情報資産を守るため、ITセキュリティ基本方針のもと、ネットワーク、ハードウェア、ソフトウェア、各種データ等のセキュリティに関する継続的な強化を図っております。また、全社で情報セキュリティの推進体制を構築しており、職場における情報セキュリティ意識の向上、ルールの周知・徹底のため、毎年全てのIT利用者に対しITセキュリティ教育を実施するとともにITセキュリティに関する定期的な点検を行い、ITガバナンスの強化に努めております。

しかしながら、近年ますます巧妙化するサイバー攻撃のリスクは高まっており、標的型攻撃、ビジネスメール詐欺、不正アクセス、ランサムウェアによる情報システムへの攻撃を受けた場合、情報漏洩やシステム停止・重要な業務の停止等の影響が生じる可能性があります。このような事象が発生した場合、当社イメージや社会的信用の低下、当社グループの事業、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当社グループは「自動車用コンプレッサーと統合熱マネジメントシステムのグローバルリーダーになる」というビジョンに基づき、2024年2月に発表した中期経営計画にて、コンポーネントサプライヤーから 「フルソリューション・システム・サプライヤー」への変化を遂げ、統合熱マネジメントシステムのリーディングカンパニーとして持続的成長の実現と定めました。大転換期を迎えている自動車業界において、NEV(新エネルギー車)市場に焦点を当て、常にカスタマーファーストの視点で、電動コンプレッサーの製品力を軸に、競争力と柔軟性を兼ね備えた統合熱マネジメントシステムソリューションの提供を進めております。

当連結会計年度の世界経済は、ウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化による地政学的リスクなど、先行きは依然として不透明な状況が続いていますが、各国におけるインフレーションが落ち着き始め、金融引き締めが緩和されつつある中、緩やかな回復基調を示しました。

当社グループにおいては、世界の自動車生産台数が前年同期と同水準で推移したこと、及び為替相場は不安定さがあるものの、円安基調となった影響により、当連結会計年度の売上高は、183,848百万円(前年同期比2.5%増)となりました。営業損失は、円安による為替影響及び原価低減等の諸施策により収益性は改善に向かっているものの、原材料価格の高騰に加え、中長期的な成長に向けた新規商権の獲得による研究開発費用の増加(前年同期比14.4%増)等があり、6,446百万円(前年同期は営業損失11,018百万円)となりました。経常損失は持分法による投資利益、外貨建債権の評価益等により、176百万円(前年同期は経常損失8,382百万円)となりました。税金等調整前当期純利益は損害賠償損失引当金戻入等により、494百万円(前年同期は税金等調整前当期純損失4,093百万円)となりました。上記の結果、親会社株主に帰属する当期純損失は、777百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純損失3,359百万円)となりました。

なお、当社グループの報告セグメントは「自動車機器事業」のみであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

当連結会計年度末における総資産は、海上輸送のリードタイム拡大や為替影響もあり棚卸資産が増加したことに加え、設備投資による有形固定資産の増加を主因に、前連結会計年度末に比べて12,920百万円増加し、175,459百万円となりました。

負債については、短期借入金の増加を主因に、前連結会計年度末に比べて10,173百万円増加し、151,877百万円となりました。

純資産については、円安を背景とした為替換算調整勘定の増加により、前連結会計年度末に比べて2,746百万円増加し、23,582百万円となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ6,691百万円減少し、14,929百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加等により△4,465百万円(前年同期比13,837百万円の収入減)となりました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出9,538百万円等により、△12,790百万円(前年同期比1,187百万円の支出増)となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及び長期借入金の増加等により9,484百万円(前年同期比3,689百万円の収入増)となりました。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

A. 生産実績

当連結会計年度における生産実績は、次のとおりであります。

 

セグメントの内容

当連結会計年度

(自  2024年1月1日

至  2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

自動車機器事業

171,567

98.8

その他

591

87.0

合計

172,159

98.8

 

(注) 1.金額は販売価格によっております。

 

B. 商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績は、次のとおりであります。

 

セグメントの内容

当連結会計年度

(自  2024年1月1日

至  2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

自動車機器事業

1,969

147.6

その他

291

122.8

合計

2,261

143.9

 

(注) 1.金額は実際購入価格によっております。

 

C. 受注実績

当社グループ(当社及び連結子会社)は、国内外での受注状況、最近の販売実績及び販売見込等の情報を基礎として、見込生産を行っております。

 

D. 販売実績

当連結会計年度における販売実績は、次のとおりであります。

 

セグメントの内容

当連結会計年度

(自  2024年1月1日

至  2024年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

自動車機器事業

182,578

102.6

その他

1,270

93.6

合計

183,848

102.5

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

  (自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

当連結会計年度

 (自  2024年1月1日

至  2024年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

Volkswagen Group

25,482

14.2

28,629

15.6

華域三電汽車空調有限公司

27,770

15.5

20,317

11.1

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しておりますが、特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表の作成において使用される見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えております。

 

A.貸倒引当金

当社グループは、金銭債権の貸倒による損失に備えるため、当社は一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し、回収不能見積額を計上しております。また在外連結子会社は主として特定の債権について回収不能見込額を計上しております。

したがって、顧客の財政状態が悪化し、その支払能力が低下した場合には当該引当金の追加処理が必要となる可能性があります。

 

B.製品保証引当金

当社グループは、製品の販売後の無償サービス費用に充てるため、売上高に対する過年度の発生率による金額の他、個別に発生額を見積もることができる費用について製品保証引当金を計上しております。

当社グループの製品不良率や保証コストの見積りが実際と異なる場合は、製品保証費用の見積りについて修正が必要となる可能性があります。

 

C.投資の減損

当社グループは、保有株式について将来の市況悪化や投資先の業績不振等を勘案して、投資価値の著しい下落が一時的ではないと判断される場合、評価損の計上が必要となる可能性があります。

 

D.固定資産の減損

当社グループは、固定資産を保有しており、固定資産の回収可能価額について、将来キャッシュ・フロー、割引率、正味売却価額等の前提条件に基づき算出しております。従って、当初見込んでいた収益が得られなかった場合や、将来キャッシュ・フロー等の前提条件に変更があった場合、固定資産の減損を実施する可能性があります。

 

E.繰延税金資産

当社グループは、将来の課税所得及び実現可能性の高い継続的なタックスプランニングを分析、検討して繰延税金資産を計上しております。

繰延税金資産の全部又は一部を将来にわたり回収できないと判断した場合、当該判断を決定した期間において、繰延税金資産の減額を実施します。一方、今後新たに繰延税金資産を回収できると判断した場合には、法人税等調整額により繰延税金資産の増額を実施します。

 

F.退職給付に係る会計処理の方法

当社グループは、従業員の退職給付に備えるため、連結会計年度末における退職給付債務及び年金資産の見積額に基づき、退職給付に係る負債を計上しております。

当社グループの退職給付債務の計算における割引率、退職率、昇給率、運用付加金利等の前提条件が将来において変化した場合には、将来期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があります。

・退職給付見込額の期間帰属方法

退職給付債務の算定にあたり、退職給付見込額を当連結会計年度末までの期間に帰属させる方法については、給付算定式基準によっております。

・数理計算上の差異及び過去勤務費用の費用処理方法

過去勤務費用は、その発生時の従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により費用処理しております。

数理計算上の差異は、各連結会計年度の発生時における従業員の平均残存勤務期間以内の一定の年数による定額法により費用処理することとしております。なお、当社については発生年度に一括処理しております。

 

G.環境費用引当金

米国における連結子会社THE VENDO COMPANYが、その旧工場の所在地や近隣地区の土壌及び水質汚染の浄化に係る費用に充てるため、将来の発生見積額から環境浄化費用に利用できる基金の残高を控除した額を当該引当金として計上しておりますが、浄化作業の進捗状況の如何によっては追加引当もしくは引当の減額が必要となる可能性があります。

 

H.構造改革引当金

事業構造改革に伴い将来発生する費用に備えるため、その発生見込額を計上しております。なお、事業戦略の見直しや外部環境の変化等により、当社及び連結子会社における見積り及び仮定と異なった場合、構造改革引当金の見積りについて修正が必要になる可能性があります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

売上高の主な増減要因


自動車機器事業においては、売上高は1,823億円で前年同期に対し、43億円の増収ですが、為替影響110億円を除くと実質的に66億円の減収となりました。

欧州地区は、トラック市場の低迷や既存車両のモデル終息がありましたが、為替影響により、前年同期に対し増収となりました。

中国地区は、顧客側のEV車両生産調整により大きく減収となりました。

アジア地区は、堅調に市場拡大しているインドにおいて、ローカルメーカー向けが伸長したことに加え、為替影響もあり、前年同期で大きく増収となりました。

米州地区は、獲得済み新規商権に対する電動コンプレッサーの納入が開始され、為替影響もあり、前年同期に対し大きく増収となりました。

日本地区は、主に特殊車両向けの売上が増加し、わずかに増収となりました。

地域別では海外向けの売上高が93%を占め、欧州・中国の売上が約6割を占めている状況となっております。

 

 

営業利益の主な増減要因


当期の営業損失は64億円であり前年同期に比べ46億円の損失減少となりました。

その内訳は、中国地域でのEV車両減産や米州地域での電動コンプレッサーの新規立ち上げによる生産性悪化に加え、紅海問題により輸送ルート変更や航空便の利用による物流費が増加しました。

また、新しいビジネスの開拓、獲得や新商権のための成長投資を拡大しております。

これらの悪化要因を、顧客との価格交渉による転嫁や、メカニックコンプレッサーの販売が増加したこと、原価低減活動や品質費用の削減などに加え、為替差益影響も含めた良化影響により挽回し全体として体質的にも改善を達成しました。

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金は、製品製造のための材料及び部品購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用の支出です。

また、設備投資の主なものは、グローバル生産体制強化に伴う、現地生産化・内製化、及び開発用設備の他、合理化等に伴う設備の維持更新と生産用金型の取得であります。なお、当連結会計年度の主な設備投資は、国内外の自動車機器事業に係わるものであります。

これらの必要資金につきましては、通常、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、親会社や金融機関からの借入による資金調達にて対応しておりますが、流動負債が流動資産を超過している状況となっております。

 

資金調達

当社グループは、資金使途及び資金の必要な時期、期間、地域(通貨)に応じ資金調達を決定しております。

運転資金については、期限を1年以内とし、グループ各社に対して状況に応じ当社からの貸付を行っておりますが、ハイセンスグループの信用補完により、現地法人で借入が可能な場合は、これを優先しております。

当連結会計年度末における短期借入金残高65,514百万円の主な通貨は円、ドル、ユーロ及び人民元であります。一方、生産設備投資等に必要な長期資金を長期借入金で調達することを基本としております。

当連結会計年度末における長期借入金残高4,331百万円の主たる部分は、ハイセンスグループと金融機関からの変動金利及び、固定金利による借入金であります。

長期資金の調達手段の判断は、金利条件や市場環境に加え、直接、間接調達の比率、金融機関との取引状況等を総合的に判断し決定することとしております。

 

当連結会計年度末における借入金の合計金額は69,845百万円であり、手元流動資金14,929百万円に比して増加傾向にありますので、棚卸資産の適正化等によりキャッシュ・コンバージョン・サイクルを改善し、自己資金調達を増やすことで、短期借入金の抑制、削減をいたします。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、自動車が急速にガソリン車から電気自動車(EV)を含む新エネルギー車へ移行する自動車業界の動向を踏まえ、環境製品分野へ資源を集中するとともに、積極的な他社及び大学との連携を進めており、次世代環境車対応の統合熱マネジメントシステム(ITMS)、電動コンプレッサー等の新製品の研究開発と、それらの基盤となる要素技術の研究開発を行っております。

一方、グローバルで多様に変化する市場やお客さまの求める価値の変化を随時注視し分析する活動を続けており、これらの分析結果を効率的に安定して確実に製品に落とし込むために、日本本部にて先行研究開発、要素技術開発、及びベースモデル開発活動を主導し、その成果をお客様の近くにある世界の各開発拠点で製品開発を行なうようにグローバルで連携した体制と仕組みを構築しております。

併せて、材料技術、信頼性技術及び生産技術等、グローバルでの技術支援を幅広く展開するグローバル一体開発により、更なるお客さま価値の向上に努めております。

 

当連結会計年度の研究開発費用の総額は7,759百万円であり、概要と成果は下記のとおりです。

当社は、電気自動車(EV)向け空調システム及びコンポーネントの開発を加速させるため、日本、中国、米国、及びドイツに所在するサンデンテクニカルセンター及びフランスの開発部門との連携を強化・継続し、グローバルに展開する開発体制を強固なものとしております

当社グループは、「統合熱マネジメントシステム」を軸に、環境自動車に不可欠なシステムパートナーとなるべく、今まで培ってきた技術を活用した小型・軽量・高効率コンプレッサー、電動コンプレッサー、水加熱ヒーター、自動車用小型・軽量のHVACシステム、ヒートポンプシステムなどの最先端の環境製品開発を進めております

 

上記に加えて、ハイセンスグループから画像技術、センシング技術及び車両のインターネット接続や人工知能を活用した空調制御などに関連する技術のノウハウ、対応リソース等といったサポートを受けながら、個人の特性やシーンに合わせて快適な状態を自動で創造する空調システムの実現を目指しております。