第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、社是である「愛 仕事に愛情と誇りを持とう」「知 常に研鑽し知識を広げよう」「和 互いの人格を尊重し融和を図ろう」の精神を基本に、「情報通信分野において常に最先端技術に挑戦し、高度な機器の提供とネットワークシステムの構築を通じて社会に貢献するとともに、会社の発展と社員の幸せを図る」ことを経営理念に置いております。企業として利益を追求するのは当然と考えておりますが、この経営理念にもあるように、社会に貢献し社会とともに成長していくことが、存在理由の原点であると考えております。

ケーブルテレビ関連機器の専業メーカーとして発展し、インターネットの興隆、光ファイバーを加入者宅まで届けるFTTHの普及といった時代の変化に適応し、センター設備、光伝送路、放送通信用端末等を総合的に取り扱うシステムインテグレーターとして実績を積み重ねてまいりました。

絶えず変化するユーザーニーズを的確に捉え、これまで培ってきたインテグレーション能力を最大限に活かし、システムや機器の開発を進め、タイムリーにソリューションを提供することで、社会に貢献してまいります。

引き続き経営の合理化・効率化にも取り組み、安定かつ継続的に利益を生み出す企業であり続けることを基本方針としております。

 

(2) 経営戦略等

当社グループは、「つなぐネットワーク、つくるミライ」というパーパスのもと、情報インフラの構築を通じて人々の暮らしと社会の持続的な発展を支え、デジタル技術が生み出す新たな価値を最大化し、笑顔あふれる未来の創造を目指して事業活動を推進しております。
 これらの実現に向けた具体的な取り組みとして、2024年度から2026年度までの3ヵ年を対象とする中期経営計画「PLAN2026 未来を切り拓く ~継続的成長のための3つの柱~」を推し進めております。

『中期経営計画 概要』
■テーマ
未来を切り拓く ~継続的成長のための3つの柱~
■基本方針
1. 既存分野技術、既存顧客のさらなる深耕
2. 持続的な成長に向けた新領域の探索
3. 組織・人事の改革、デジタル活用

 

(3) 経営環境

国内市場においては、人口減少や少子高齢化が進む一方で、AIをはじめとするデジタル技術の発展が新たな成長の可能性を生み出しています。これらの技術を最大限に活用し、日本市場がさらなる発展を遂げるためには、それを支える堅牢な情報インフラの整備が不可欠です。また、ケーブルテレビ事業者を始めとする放送通信事業者は従来のTV、ネット、電話、モバイルに加え、情報インフラの保有、地域密着性等の特色を活用した高付加価値化や地域課題解決に注力するものと見込まれます。

 

 

(4) 目標とする経営指標

2024年3月15日に公表した3年間計画に基づき、2025年12月期及び2026年12月期の売上高、営業利益、経常利
益及び自己資本当期純利益率を以下のとおり計画しております。

 

 

 

 

 

(連結・単位:百万円)

 

2024年12月期

2025年12月期

2026年12月期

 

実績

計画比

計画

計画

売上高

11,711

100.1%

12,500

13,300

営業利益

653

103.7%

750

870

経常利益

741

115.9%

760

880

自己資本
当期純利益率

9.2%

+1.0pt

8.6%

9.0%

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

上記(4)の目標とする経営指標を達成するための、現状の課題は以下のとおりであります。

1.既存分野技術、既存顧客のさらなる深耕

放送通信業界におけるシェア拡大を目指すため、技術開発と保守サポートの体制を強化します。また、新拠点「SYNC Labo」を活用し、開発力及び提案力を向上します。

(取組事項)

・既設集合住宅向け高速ネットワーク機器の開発

・地方エリア向けソリューションの研究開発

・新拠点「SYNC Labo」内プレゼンテーションルームを活用した提案営業の展開

2.持続的な成長に向けた新領域の探索

放送設備に対する投資需要の成長鈍化に対する懸念等の外部環境の変化に対応するため、新しい成長領域を探索することは当社にとって重要課題であると捉えています。

(取組事項)

・AR(各超現実)サービスのメニュー化及び積極的な提案

・Wi-Fiセンシング技術を利用した見守りサービスの提供

3.組織・人事の改革、デジタル活用

上記の既存領域の探耕と新領域の探索を両立するため、組織の生産性を高めることを課題として捉えております。人事制度の見直しとデジタル活用により、やりがいと高いパフォーマンスを実現できる働く環境の構築を目指します。

(取組事項)

・外部環境の変化に対応するべく人事制度見直しを実施

・デジタル投資資金を利用した基幹システムリプレイス

 

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティに関する取り組みを重要な課題と認識しており、取締役会を中心として、営業・工事・開発・製造・管理部門の連携により、組織横断的にサステナビリティに関する経営課題に取り組んでおります。また重要な事項については、取締役会、監査等委員会等に適宜報告・協議する体制を整備しております。

 

(2) 戦略

当社グループは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、SDGs方針を策定し、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。また、代表取締役社長を委員長とするSDGs推進委員会を設置し、サステナビリティ活動の推進を行っております。

①SDGs方針

 シンクレイヤは、当社グループのパーパスである「つなぐネットワーク、つくるミライ」に基づき、情報ネットワークを通して人々のくらしと地球環境がシンクロナイズする社会を実現し、笑顔あふれる未来づくりに向けた企業活動を行います。この取り組みを通じ、持続可能な社会への貢献と当社の持続的成長を目指します。

②特定した重要課題(マテリアリティ)

  a. 顧客の信頼と期待に応えます

   社会のニーズを的確に捉え先進的技術をもって提供します

   顧客エンゲージメントの向上で、潜在的課題を捉え解決を共に図ります

   充実したサポート体制で、安定した技術フォローと品質を提供します

  b. ネットワーク環境の創造により新たな人々のつながりを生みだします

   地域密着性の高いケーブルテレビ事業者と連携し、情報拠点として地域の発展に貢献します

   いつでも・どこでも・だれとでもつながる新たなネットワークソリューションを提供します

  c. 循環型社会づくりに向けた事業活動を行います

   バリューチェーンのパートナーシップを深めます

   原材料の選定から生産、廃棄まで3R可能な製品を供給します

   バリューチェーン全体で温室効果ガスを削減します

   顧客との協働で3Rの仕組みを構築します

  d. 働きやすく、働きがいのある会社をつくります

   多様な人材が互いに尊重し合い、活躍できる環境をつくります

   全ての人が健やかに生き生きと働ける職場をつくります

   自ら学び高め合い、成長を実感できる人材育成を行います

   社員エンゲージメントを高める制度を設計します

  e. レジリエンスな地域社会をつくります

   地域社会や顧客、パートナー企業と連携し災害に強く信頼性の高いネットワークを提供します

   ネットワークを活かして地域のつながりを強め、コミュニティの活性化に貢献します

③サステナビリティの推進

 SDGs推進委員会は、代表取締役社長を委員長、常務取締役を副委員長とし、各部門より選任された社員にて構成されます。SDGs推進委員会は特定した重要課題に基づき、指標と目標の素案を策定し適宜取締役会に諮ります。決定された指標と目標はSDGs推進委員会にてモニタリングし、原則年1回取締役会へ報告いたします。またSDGs推進委員会は社内への啓蒙活動も行い、目標の達成に向けて自走する組織運営を支援します。

④人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 働きやすく魅力ある職場の実現に向けて、多様な働き方が可能となるよう「就業規則」、「育児休業その他育児のための措置」などの見直しを進め、年次有給休暇の時間単位での取得、育児短時間勤務の期間拡大など制度変更を決定し2024年1月1日より施行しております。安心して働ける労働環境の充実に向け、今後も継続的に取り組んでまいります。

 

(3) リスク管理

内部監査部門である監査法務部の活動の充実をはかり、あらゆる角度からリスクの未然防止やミニマイズに心がけております。特に内部牽制が当社グループ全体にわたって機能するよう、社内横断的な組織「内部統制委員会」を組成し社内規定によるルール化を図っております。また、実際にそれらのルールが守られているか常にチェックするため、監査法務部による内部監査を行い、業務に関するリスクを管理するなど、健全な経営基盤の確立に努めております。

 

(4) 指標及び目標

当社グループは、特定したサステナビリティに関する重要課題の解決に向け、SDGs推進委員会を中心に指標及び目標の検討を進めておりますが、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下が挙げられます。

なお、本記載は本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。将来に関する事項につきましては、不確実性やリスクが内在しており、そのため実際の結果と大きく異なる可能性がありますのでご留意ください。

 

(1) 市場環境について

放送通信分野では、大手通信事業者とケーブルテレビ事業者の相互参入や、インターネット動画配信事業者によるサービスの拡大に伴い競争が激化しており、各事業者は加入者確保のために新たなサービスを模索しています。また、FTTH関連の製品需要は継続しており、さらにインターネット回線を利用した放送の技術基準や法整備、携帯電話事業者によって商用サービスが開始された5Gサービスとは別に、地域の企業や自治体等の様々な主体が自らの建物や敷地内でネットワークを構築し利用可能とする「ローカル5G」など、技術革新に伴うビジネスモデルの変化が起こりつつあります。そういった時流の要請に応えて費用便益的にも優れた製品やシステムを継続的に開発し、提供できるかが当社グループの業績の鍵となります。

こういった製品・システム開発の遅れ等により市場へタイムリーに提供できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループでは、この春、プレゼンテーションルームを備えた新たな技術開発拠点「SYNC Labo」がオープンしました。「技術力・ソリューション提供力の向上」「市場開拓・拡大、新規サービス展開への活用」「お客様訴求力・満足度の向上」などへの取組みにより、新たなネットワーク時代に向けて当社グループの存在価値を高め、高度な社会サービスが実現できるネットワーク製品・システム・サービスの提供を行ってまいりますが、民間投資や公共投資の鈍化・縮小による市場環境の悪化、製商品の需給に関する急激な変動、競争激化に伴う製商品の大幅な価格下落などがあった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 生産体制について

当社グループの生産拠点は、国内生産工場(可児工場)と中国生産工場(愛知電子(中山)有限公司)であり、これまでに生産能力や品質等について重大な問題が発生したことはありません。国内のFTTH関連機器、光端末器等の需要は継続しており、また、BCP対策の観点からも当面は国内生産工場と中国生産工場の二拠点による生産体制を維持しますが、経営環境等の変化により体制を見直す可能性があります。この場合、工場規模の拡大による設備投資や経費増あるいは移転や閉鎖による一時的な経費増等が発生する可能性があります。

また、2025年度における中国の経済情勢の不確実性や、関連法令・制度の変更が進行する中で、当社を取り巻く経営環境が大きく変化する可能性があり、これらの変化に対応できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 技術開発等について

当社グループが製造するFTTH関連機器、通信関連機器および端末機器等は、急速に進化する技術革新に対応し、個々の製品の特徴や適性を活かした組み合せ等、専業メーカーとしての強みを生かしたトータルシステムとしての開発に努めています。

新製品の開発についてはその性質から複雑かつ不確実なものであり、以下のような様々なリスクが含まれます。

・新製品または新技術への投資を適切な時期に必要なだけ充当できる保証がないこと

・研究開発テーマのすべてが新製品または新技術の創造に繋がるとは限らないこと

・市場のニーズを的確に捉えた新製品または新技術を正確に予想できるとは限らないこと

・新製品または新技術が経営成績の向上に即貢献できるとは限らないこと

・新製品または新技術が独自の知的財産として保護される保証がないこと

・技術の急速な進歩や市場の変化により、研究開発テーマが影響を受けること

・新製品または新技術の開発期間の長期化が販売機会損失になり得ること

上記のリスクをはじめとして、業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品または新技術を開発できない場合、将来の成長と収益性を低下させ、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 海外における事業活動について

当社グループは、国内生産工場の他、中国に設立した現地法人(愛知電子(中山)有限公司)において機器生産を行っており、当該現地法人に対する投資に加え、人材派遣あるいは技術支援を通じて経営指導を行っております。中国での事業活動では、現地における予期しない法律や制度・規制の変更、経済的要因による部材の高騰や人件費の上昇、為替の変動のほか取引先の信用不安、社会的混乱等のリスクがあり、これらによって当社グループの価格競争力の低下を招いたり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、各国が抱える諸問題、いわゆる地政学的リスクにより当社の海外事業活動に影響を与える可能性があります。

 

(5) 特許について

当社グループでは、技術部門において新製品および新技術の研究開発を行っており、社員が成した発明に対する特許の帰属は社内規程に基づいて対応しております。他社との共同開発等の共同行為では、その着手当初から研究開発の範囲・費用の分担、権利の帰属および第三者への譲渡等にいたるまで契約書で取り決めを行い、共同出願についても同様に取り決めを行っております。しかしながら、社会では特許の帰属や報酬等について係争に至る例もあり、判例の中には多額な報酬や賠償が認められたものもあること等から、開発型メーカーである当社においては、これらに対して費用負担が発生する可能性は否定できません。

なお、当社は前述の部門以外の、例えばSE部門、営業部門および製造部門でも技術者が在籍していることから、発明が行われる可能性があります。

 

(6) 製品について

当社グループでは、製品の安定供給を目指すために部品材料等を一定量在庫しておく必要があります。これらが長期滞留となった場合には、社内規定に基づき評価減を行う必要があり四半期毎、相当額の棚卸資産評価損が発生します。さらに技術革新が加速する中で、製品が市場ニーズに合わず陳腐化した場合、これらの評価損が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループでは品質マネジメントシステム(ISO9001)に則って製造を行っており、製品品質向上に努めておりますが、全ての製品について欠陥がないという保証はありません。そのため、PL保険とリコール保険にも加入しておりますが、これらの保険が賠償や損失の金額を十分にカバーできるという保証はありません。

なお、当社の製品に使用している半導体部品等一部の部品においては、自動車やスマートフォン、ゲーム機にも世界中で多く使用されている為、これらの業界で需要が急拡大した場合、入手性に影響が出ることが予想され、製品原価の増加に繋がり当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(7) 商品について

国内におけるインターネット市場の発展に伴い、インフラを構成する情報通信機器の分野においては米国、中国、韓国、台湾などの国外通信機器メーカーの製品が広く利用されるようになっています。そのような情勢の中、国家間の経済的な利害対立や貿易政策の変動、さらに地政学的リスクにより、国内においても国外通信機器メーカーの製品の採用を見送る可能性があります。

また、国外通信機器メーカーの製品が性能、価格面で市場優位性が得られない場合、受注減となり当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、国外通信機器メーカーからの購入品に品質異常や性能に欠陥があった場合、事前に締結した契約書等があったとしても是正や解決ができない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(8) 為替レートの変動リスクについて

外国通貨建て取引につきましては、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じておりますが、予測を超える為替変動があった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

 

(9) 人材の確保や育成について

当社グループが属する業界は技術革新が急速に進行し、人材の流動性が高いこと、高度な技術力や施工技術が求められることが特徴です。当社グループでは各種技術者の確保と育成を最重要課題と位置付け、優秀な人材の確保を図るとともに、社内教育の充実や人材育成に積極的に取り組んでおりますが、デジタルトランスフォーメーションやAI技術の導入が進む中で、優秀な人材の確保や育成が困難となった場合、当社グループの将来の成長や業績に影響を与える可能性があります。

また、高水準の技術革新と進歩を維持するため、最新技術の経験を持つ優秀なエンジニア等の積極的な採用や継続的な社内教育は、採用コストと人件費を押し上げ、これらのコストの増加は当社グループの業績と財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10) 環境問題について

当社可児工場は環境マネジメントシステム(ISO14001)の認証を取得しており、また、その他の拠点においても関係法令等の遵守に努めておりますが、万が一、事業活動を行う過程において環境事故等により関係法令等の違反が生じた場合、あるいは、今後新たに制定される法令等に対応するため多額の費用が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

一方、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に取り組むため、社内プロジェクト体制を立ち上げ、全社展開を進めておりますが、この取り組みに遅れがあったりKPIの達成ができなかった場合、当社グループの将来の業績と財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(11) 工事事故について

当社グループでは、安全な工事の遂行を最優先事項としており、各種工事の施工をしておりますが、全ての工事において事故が発生しないという保証はありません。不可抗力を含めた事故による顧客からの信用低下は、受注環境に多大な影響を与え、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(12) 災害等について

大規模な自然災害や事故等、新たな感染症等が発生した際には、公共インフラ停止、設備被害および人的被害、さらにはサプライチェーンの寸断等により当社グループの事業活動と業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループの社内ネットワークにつきましては、安定した運用を行うための体制を構築しておりますが、災害やサイバー攻撃(特にランサムウェアなど)等により、「機密性」「完全性」「可用性」が確保できず稼働不能となった時は、企業としての信用低下や加入しているサイバー保険で賄えない損害賠償が発生した場合、当社グループの業績と財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(13) 社内監視体制について

当社グループでは、監査等委員会設置会社の体制を採用しており、監査等委員による業務執行取締役に対する監査機能を強化することがコーポレート・ガバナンスの強化に繋がり、経営の健全性と効率性が一層高まると考えております。

また、内部統制委員会の設置により事業活動に係る法令遵守を徹底し、監査法人との契約により企業の会計における信頼性・正確性を担保し株主その他ステークホルダーを保護することで、企業の社会的価値の維持や向上に貢献するものと考えておりますが、経営監視の仕組みが不十分となる場合や、内部統制の不備・不足により社内の監視体制が整わず業務の適正が保たれなくなった際には、不祥事や企業スキャンダルを起こす恐れがあり、結果として株主その他ステークホルダーの利益を害する可能性があります。

 

(14) IR活動について

当社グループでは、2022年度より四半期毎の決算説明資料の開示及び半期毎の決算説明動画の配信に加え、当社ウェブサイトにおける製品情報やシステム導入事例などコンテンツの充実と新着情報の積極的な発信などにより、IR活動の強化に努めておりますが、市場が求める水準に対して不十分であった場合、株価の低迷や株主その他ステークホルダーからの評価が下がる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の我が国経済は、雇用・所得環境の改善や個人消費、インバウンド需要の回復を背景に緩やかな回復基調を維持しました。一方で、原材料・エネルギー価格の高騰や物価上昇の継続、米国の政策動向や中東地域を巡る情勢等に起因し景気の先行きは依然不透明な状況にあります。

当社グループが属する固定ブロードバンド回線業界では、株式会社MM総研の「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」(2024年9月末時点)によると、FTTH(光回線サービス)の契約数は4,073.7万件(2024年4月~9月で37.7万件増加)となりました。市場の緩やかな成長は、CATVアクセスのFTTH化、集合住宅向け(全戸一括型)の安定した需要、各通信事業者の10Gbpsサービス提供エリア拡大等によるものと考えられます。

こうした市場環境のもと、当社はFTTHエリアの拡大に伴う光ファイバー網の敷設及び設備構築工事の受注を積極的に推進してまいりました。また、新規需要が見込める既設集合住宅向けには棟内通信環境の老朽化対策として、既存の棟内ネットワークを最大限活用する通信機器や光配線部材などのソリューションを提供しています。端末開発から大規模工事まで手掛ける総合ベンダーとして、顧客のニーズに寄り添ったサービス提供と製品開発を進め、さらなる事業成長を目指してまいります。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ666百万円増加し、11,352百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ204百万円増加し、5,206百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ462百万円増加し、6,146百万円となりました。

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高は11,711百万円(前年同期比12.2%増)となりました。特に大型工事案件の順調な進捗が売上増加の主要因となりました。利益面では、原材料費の高騰による圧迫があったものの、増収効果がこれを上回り、営業利益は653百万円(同19.5%増)、経常利益741百万円(同25.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益547百万円(同26.2%増)となりました。

なお、第4四半期会計期間の売上高、営業利益、経常利益、及び親会社株主に帰属する四半期純利益は、それぞれ過去最高額を更新いたしました。
 また、第3四半期末日時点にて計上いたしましたデリバティブ評価損173百万円につきましては、為替相場の状況により2024年12月期末日時点での評価損は19百万円に減少しました。当該デリバティブ取引につきましては、2025年第2四半期(中間期)までに消滅する見込みです。

 

当連結会計年度における各部門の業績は、次のとおりであります。

(a) トータル・インテグレーション部門

複数の大型工事案件が順調に進捗・完工し当部門の連結売上高は6,414百万円(前期比32.2%増)となりました。

(b) 機器インテグレーション部門

10Gbps対応の光通信端末や集合住宅向け通信設備を新たに発売し、主力製品の放送用光端末V-ONUの最新モデル「SORC-100シリーズ」がグッドデザイン賞を受賞しましたが、これらの新製品の当期売上貢献は未だ限定的となり、当部門の連結売上高は5,297百万円(同5.3%減)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、948百万円と、前連結会計年度末と比べ231百万円の減少となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果使用した資金は1,320百万円(前年同期は2,162百万円の獲得)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益734百万円、売上債権の増加額1,105百万円及び仕入債務の減少額1,122百万円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は640百万円(前年同期比134.2%増)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出550百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果獲得した資金は1,727百万円(前年同期は2,301百万円の使用)となりました。これは主に、短期借入金の増加額1,900百万円等によるものであります。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

当社グループの事業は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

 

事業部門

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

生産実績(百万円)

前年同期比(%)

トータル・インテグレーション部門

6,402

132.4

機器インテグレーション部門

1,464

88.0

合計

7,867

121.0

 

 

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

 

事業部門

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

トータル・インテグレーション部門

5,414

102.2

2,165

68.4

機器インテグレーション部門

5,018

96.4

1,862

87.0

合計

10,432

99.3

4,028

75.9

 

 

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

 

事業部門

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

販売実績(百万円)

前年同期比(%)

トータル・インテグレーション部門

6,414

132.2

機器インテグレーション部門

5,297

94.7

合計

11,711

112.2

 

(注)  前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

中部テレコミュニケーション株式会社

760

7.3

1,210

10.3

 

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 財政状態の分析

(資産の部)

当連結会計年度末における資産の額は11,352百万円と、前連結会計年度末に比べ666百万円の増加となりました。資産の増加の主な原因は、完成工事未収入金が1,102百万円増加、現金及び預金が231百万円及び商品及び製品が247百万円減少したことによるものであります。

(負債の部)

当連結会計年度末における負債の額は5,206百万円と、前連結会計年度末に比べ204百万円の増加となりました。負債の増加の主な原因は、短期借入金が1,900百万円の増加、支払手形及び買掛金が999百万円及び未成工事受入金が211百万円減少したことによるものであります。

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産の額は6,146百万円と、前連結会計年度末に比べ462百万円の増加となりました。純資産の増加の主な原因は、利益剰余金が421百万円増加したことによるものであります。

(自己資本比率)

上記の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の53.2%から54.1%となりました。

 

② 経営成績の分析

当連結会計年度における売上高は11,711百万円(前期比12.2%増)、営業利益は653百万円(同19.5%増)、経常利益は741百万円(同25.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は547百万円(同26.2%増)となりました。主な原因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要 (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

③ キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。また、投資を目的とした資金需要は設備投資等によるものです。

これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入により調達しております。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループを取り巻く経営環境は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであり、また、「3 事業等のリスク」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 (1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」に記載している各要因が、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、ケーブルテレビを中心とした放送と通信の各分野にわたって、その通信インフラの高度化に対応していくため研究開発に取組んでおります。研究開発は当社の技術部で行っており、当連結会計年度における研究開発費の総額は135百万円となっております。

FTTH関連では、屋外型光増幅器の基礎検討等を行いました。告知放送関連では、Web管理システムの外部連携機能の強化を行いました。また、光ファイバーセンシングや、既存製品のリプレイスに関する調査及び技術検討を行いました。

なお、事業は単一セグメントでありセグメント情報を記載していないため、研究開発費の総額と内容を記載しております。