第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業以来、社是である「開拓の精神で顧客に奉仕する」をモットーに事業を展開しております。また、顧客第一主義を経営の基本方針として掲げ、お客さまの求めに対して果敢に応じ、お客さまの満足を得ることを追究いたします。その実現のため、技術と品質でナンバーワンとなることを目指すとともに、活気ある職場づくりと企業体質の強化に努めてまいります。

 

(2) 経営環境

我が国経済は、1年を通じて消費者物価が上昇し続けたことに加え、倒産件数が11年ぶりに1万件を超えるなど一部に足踏みがみられたものの、円安基調の為替相場やインバウンド需要の増加などを背景に、企業収益、雇用・所得環境の改善が進み、生産や設備投資に持ち直しの動きがみられるなど、全体として景気は緩やかに回復しました。

一方世界経済は、欧州では一部に足踏みがみられるもののインフレの収束、利下げの開始によって持ち直しの動きがみられ、中国では政策効果により供給の増加がみられるものの足踏み状態が続き、米国では、個人消費、雇用者数、設備投資の増加により景気の拡大が続くなど、全体として景気の持ち直しが続きました。

当社グループを取り巻く環境におきましては、巻線機事業の主要顧客である自動車産業において、自動車販売の増勢が鈍化し、「車の電動化」の潮流の中で、BEVからHEVやPHEVへの揺り戻しや、新型車の開発計画の変更などにより設備投資計画の見直しや遅れがみられました。また、ウクライナや中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動、原材料価格の高止まりなどの下振れリスクもみられるなど、全体として不安定な状況が続きました。

今後の見通しにつきましては、世界経済は持ち直しの動きが続くことが期待されるものの、米国の今後の政策動向による影響、欧米における金融引き締めの継続や中国における不動産市場の停滞の継続に伴う影響、ウクライナや中東地域をめぐる情勢など、様々な下振れリスクが顕在化しております。我が国経済は、デフレ脱却を確かなものとするため、「賃上げと投資が牽引する成長型経済」を目指して政府と日本銀行が機動的な政策運営を行う下で、雇用・所得環境の改善を背景に、景気は緩やかな回復が続くことが期待されている一方で、海外景気の下振れリスク、物価上昇、金融資本市場の変動の影響に引き続き留意する必要があります。

巻線機事業の主要顧客である自動車産業においては、「車の電動化」という潮流は変わらない中でモーター巻線機の需要は引き続き拡大することが期待されるものの、後ろ倒しとなっている自動車メーカーの新型車開発をはじめとした「車の電動化」に伴う設備ニーズを捉えた製品開発が求められております。

送風機・住設関連事業は、送風機事業において工作機械や産業用ロボット向け軸流ファンの需要は一部主要顧客で回復の兆しがあるものの、送風機全体としては需要が低調に推移することが予測され、住設関連事業においては、浴室用照明器具は堅調な需要が見込める一方で、全館空調システムを含む住宅換気装置については、原材料価格高騰の影響を受けて、販売価格が高い換気装置の需要が低下し、新規案件の需要も低調に推移することが予測され、引き続き全体として厳しい状況が予測されます。

 

(3) 中期経営戦略

当社グループは2024年2月14日付で2024年12月度から2026年12月度を対象とする中期経営計画を策定し、最終年度である2026年12月期において、売上高180億円、営業利益18億円を連結財務目標として設定しております。

セグメント別の重点施策は以下のとおりであります。

①巻線機事業

a.事業競争力の強化

巻線機市場の拡大に伴い、より一層の競争激化に打ち勝つため、マーケティングの強化、市場・お客さま・競合の先を行く競争力ある製品と要素技術の開発力を強化し、受注拡大を目指す。特に市場の拡大していくxEVの駆動モーター・発電機用巻線システムとブラシレスモーター用巻線システムの競争力強化に向けての技術開発に注力する。

・技  術:お客さま・市場が求めるニーズをより高いレベルで達成するための製品・技術開発力の強化

・スピード:製品の高速化

      市場環境やお客さまのニーズの変化への対応、短納期対応など様々な面でスピード重視の経営を

      推進

・品  質:モーターやコイルの高次元での品質均一化ができる製品の開発と品質管理体制の構築

・コ ス ト:製品の市場競争力ある売価に向けて、コストダウンだけでなく、高生産性・高稼働率等を含めた

      コスト・パフォーマンスの向上を図る

b.地域別戦略の設定

巻線機市場の急拡大と競合メーカーとの競争が激化しているマーケットにおいて、各地域の市場特性を踏まえた地域別戦略で、当社の優位性が生きる分野・市場に重点を置きつつ、グローバル市場に合わせた地域戦略で市場拡大をフォロー。

・自動車・家電製品等の最大市場でもあり、生産拠点でもある中国市場の販売・サービス体制強化

・xEVの駆動モーター・発電機をはじめとした車載用モーター生産の拡大が見込まれる北米市場は、子会社

 を通じたサービスを含めた、きめ細やかなアプローチの強化

②送風機・住設関連事業
a.送風機事業

・軸流ファンは、耐油、耐水、耐振動を強化した製品開発による差別化を図り、付加価値向上

・クロスファンは、生産機種、生産設備を見直し、コンパクトながら利益の出る体制へ移行

・マーケティングの強化、送風技術の応用商品の開発と市場投入の早期化

b.住設関連事業

・マーケティングの強化、新市場に向けての製品開発力の強化

・照明は浴室用に特化しているが、浴室照明技術の応用できる商品をリサーチし、製品化に向けて検討を開始

・今後伸びが期待される住宅用空調装置との組み合わせ製品の拡販に向けて製品開発と新規営業、宣伝、販売

 強化

・換気技術と送風技術を組み合わせた空気循環、清浄装置の市場ニーズをリサーチし、商品開発

 

また、競合メーカーとの競争激化が進むマーケットにおいて、事業競争力強化「スピードと品質」を高めるため、設備投資、研究開発投資、DX投資、人的資本投資を中心として、資本コストを意識した投資戦略により資本収益性を高め、持続的成長可能な組織を目指します。

 

 

(4) 会社の優先的に対処すべき課題

巻線機事業では、従来は当社がモーター巻線機市場、吸収合併した株式会社多賀製作所がボビンコイル巻線機市場を担ってまいりましたが、今後は一体となって両市場に対してマーケティングの強化を行い、設備ニーズを捉え、市場・顧客・競合の先を行く競争力ある製品と要素技術の開発を進めるとともに、製品の共通化・標準化を進めることで、技術、品質、コスト、スピード・納期・供給能力における競争力を強化してまいります。

送風機・住設関連事業では、予測される需要の低迷や受注減少に対応すべく、引き続きマーケティングの強化を行い、送風機応用製品や換気改良製品を戦略アイテムとして拡販を目指すとともに、新商品の早期開発、販売促進を進めてまいります。

当社グループは、社是である「開拓の精神で顧客に奉仕する」を常に念頭に置き、他社に差別化した製品を通して顧客満足度を向上させるとともに、常に新しい市場を開拓していくことにより当社グループの優位性を更に高める経営に邁進してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、経営理念、行動規範に基づき、お客さま、取引先、株主、投資家、地域社会、従業員など全てのステークホルダーとの対話を尊重し、世界中の人々の生活が豊かになること、地球環境保護に貢献するなど、持続可能な社会の構築及び発展に貢献することを基本方針としております。

 

1.サステナビリティ全般に関する事項

(1)ガバナンス

当社グループは、活気ある職場づくりと企業体質の強化を経営の基本方針に盛り込み、従業員の多様性・創造性を尊重し、良き社会人・企業人としての従業員を育成するとともに、次世代への永続的な発展のために、激変する事業環境に対して柔軟に対応できる、強靭かつ健全な企業体質を追求しております。また、社会貢献活動の実践及び環境保全の取り組みを行動規範に掲げ、良識ある社会人として、社会や地域との良好な関係に心掛け、積極的に社会貢献活動を行うとともに、社会の一員として環境問題の改善に積極的に取り組み、環境保全に努めております。

サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンス組織は、当社のリスク管理委員会を中心に位置づけております。当社のリスク管理委員会は代表取締役社長を委員長とし、リスク及び機会について検討を進め、付議・報告を行っております。また、当社のリスク管理委員会は、サステナビリティに関するリスク及び機会について、当社の各業務部門及び連結子会社に対して指示・助言を行い、必要に応じて報告を求めております。

 

(2)戦略及びリスク管理

当社グループの持続的成長と中長期的な企業価値向上を図るうえで、重要課題(マテリアリティ)として以下のとおり特定するとともに、事業活動を通じた社会的課題の解決に取り組んでおります。

<巻線機事業>

地球環境保護に向けての内燃機関自動車から、xEVへの移行や車の電動化に伴う産業構造の大変革や省エネ家電、産業機器等の性能向上等による脱炭素社会実現への社会的な流れに応えるため、当社グループの中核事業である巻線機事業の技術革新推進と供給能力の強化を進め、持続可能な社会の実現を目指す。

<送風機・住設関連事業>

環境保全・エネルギー効率化という社会の要請に応えるため、送風冷却・換気コントロール技術や浴室照明器具のLED化により社会の省エネルギー化、クリーン化を目指し、企業と社会のサステナビリティに貢献する。

 

なお、当社グループ事業に大きな影響を及ぼしかねない気候変動リスクとして、大規模災害(大地震、富士山噴火等)による生産活動への影響が大きな脅威と認識しており、策定済みである事業継続計画(BCP)をもとに訓練等を重ねることで、更なるリスクの軽減を図ってまいります。

また、具体的な環境保全の取り組みとして、当社は世界に先駆けてハイブリッドカー用モーターの巻線ラインシステムを開発するなど、優れた製品の開発・提供を通して地球の環境保全に取り組んでおり、積極的な廃棄物の3R(Reduce、Reuse、Recycle)、神奈川県が発行するグリーンボンドへの投資、当社本社工場への太陽光発電システム導入などにも取り組んでおります。その他、環境保全に資する取り組みについて随時検討を進め、機動的に効果的な取り組みを行っております。

 

 

2.人的資本に関する事項

(1)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループの人材育成に関しましては、経営人材の計画的育成のため、取締役スキル・マトリックス及び任用方針の整備運用、中長期の経営人材育成教育体系を整備していくとともに、組織拡大を踏まえたリーダー育成を図るための教育体系整備を行い、人材評価制度のアップデートとして評価基準をより明確化し、更なる自律的な成長を促進させる取り組みを行っております。

人的資本投資につきましては、技術向上や資格習得のための研修や教育などのほか、働きやすい環境づくり、従業員エンゲージメントの向上、従業員の能力を最大化できる制度の構築や新卒・中途の人材採用強化のための投資等を積極的に行っております。当社における具体的な取り組み例は以下のとおりであります。

 

①研修・教育

新入社員研修をはじめ、年次や経験、役職に応じて、各従業員のスキルアップ、技術向上、資格取得などを目的とした研修や教育機会を提供しており、当事業年度においては延べ124名が資格を習得しております。知見を広げる・深めるために、海外も含めた業界に関する展示会等への見学派遣も行っております。

②社内環境整備

フレキシブルタイム勤務制度、リモートワーク制度、育児や介護に関する休業・短時間勤務制度など、各従業員のライフステージに応じた働き方を支援する制度を運用しております。また、当事業年度中に一部の部門の業務フロアにおいてリニューアル工事を実施するなど、快適な職場環境の維持に努めております。

③採用活動

新卒採用・中途採用において優秀な人材を採用するために、採用広告掲出・スカウト型採用媒体の利用・エージェントの活用・インターンシップの受け入れ・学校訪問など様々な施策を積極的に行っております。また、通勤圏外から入社する新入社員を対象とした新卒住宅補助制度を設け、採用活動における魅力とする一方で、定着を図る施策として運用しております。

④健康支援

カフェテリアの設置・運営を行うとともに、当社従業員で構成されるクラブ活動への援助、トレーニングルームやフットサル兼テニスコートの設置等により、従業員の健康増進を支援しております。

⑤資産形成支援

賃金水準の引き上げを目的としたベースアップを実施する他、従業員持株会の奨励金制度、確定給付企業年金・確定拠出型年金制度などを整備しております。

 

(2)指標及び目標

当社は女性活躍推進法・次世代育成支援対策推進法に基づき、女性が活躍できる環境の整備、並びに仕事と家庭の両立ができるよう支援することですべての従業員が安心して継続的に働くことができるようにするため、一般事業主行動計画(計画期間:2022年4月1日~2026年3月31日)において、以下2点を目標として掲げています。なお、当該指標及び目標については連結グループに属する全ての会社では行われておらず、連結グループの記載が困難であります。このため、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

・年次有給休暇取得率を 65%以上とする。

 <取組内容>会社から従業員へ年次有給休暇取得推進を行う。

 <取組結果>当事業年度における年次有給休暇取得率は76.5%でした。

・全従業員への教育機会を増加させる。

 <取組内容>e-learningや書籍等を活用し、時間や場所に縛られない教育環境を従業員へ提供する。

 <取組結果>当事業年度においては、在宅勤務時や出張時においても適切な教育を行えるよう、e-learning

       及びその実施に必要な端末の導入を行うなど、教育機会を増加させました。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した当社グループの事業状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、以下のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月28日)現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営戦略・事業に関するリスク

① 巻線機事業について
a.需要予測について

当社グループが扱う巻線設備のお客さまは、家電製品分野、自動車分野、産業・医療機器分野、OA/AV機器分野、通信分野等の製造会社であり、当社グループは巻線設備の総合メーカーとしての地位を確固たるものとすべく経営努力しております。しかしながら、当社グループの受注・生産活動は、各分野の技術革新動向や設備投資動向等に左右されるため、当社グループ独自での将来予測が困難であります。このため、想定していた技術革新動向や設備投資動向等の前提条件と実際の結果が異なる場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

b.新製品・新技術の研究開発について

当社グループは、巻線技術を応用してお客さまのニーズにマッチした新製品・新技術を開発し、家電製品分野、自動車分野、産業・医療機器分野、OA/AV機器分野、通信分野等へ製品・サービスを供給しております。これらの開発において、近年、技術革新のスピードもますます速まり、ニーズの多様化、グローバル化も急激に進んでおります。今後、開発競争はますます激化すると思われ、予想を上回る新技術の出現や各分野の動向の激変によっては、当社の研究開発費の負担も大きくなり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

送風機・住設関連事業について
a.需要予測について

送風機・住設関連事業では、産業・工作機械や住宅設備関連メーカーへのユニット及び最終製品の供給を行っているため、需要予測については、景気動向はもとより各企業の設備投資動向、新設住宅着工件数及びリフォーム工事件数の動向に大きく影響されます。このため想定していた景気動向や設備投資動向、新設住宅着工件数やリフォーム工事件数などの前提条件と実際の結果が異なる場合は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

b.中国展開について

送風機・住設関連事業では、価格競争力の維持・向上を図ることを主眼に、連結子会社の楽揚電機(香港)有限公司の子会社として製造会社・販売会社を中国で設立し、中国工場への生産移管及び販路拡大を推進するべく進めておりますが、急激かつ大幅な人民元の切り上げが行なわれた場合、製品の価格競争力が低下し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業全般について
a.知的財産権等について

当社グループでは、製品開発において蓄積してきた技術を知的財産権等として保有し、権利保護の徹底及び経営資源として活用しておりますが、特定の国及び地域においては知的財産権等の保護が十分でないことにより、当社グループの知的財産権等を侵害する可能性があります。また、当社グループは、第三者の知的財産権等を侵害することのないよう最善の注意を払っておりますが、不測の事態などにより第三者から知的財産権等の侵害を主張された場合には、その補償あるいは訴訟費用負担等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

b.セキュリティについて

当社グループは、業務を通じて入手した機密情報を多数保有しております。当社グループでは、物理的なセキュリティ及び情報セキュリティシステムの構築、管理体制の整備や教育等の対策を実施しておりますが、コンピューターウイルスの感染、不正アクセス、盗難等、不測の事態が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 外部環境に関するリスク

① 世界各国の法規・税制等について

当社グループはグローバルな事業展開を行っており、日本を含む世界各国の法規、税制等の適用を受けております。当社グループでは、「企業倫理と法令遵守」を行動規範に掲げ、社内教育等を通じたコンプライアンス意識の向上に努めておりますが、世界各国の法規や税制等の動向、または重大な法令違反等により、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 自然災害・事故・テロ・疾病等について

当社グループの事業拠点は、地震、台風、噴火等の自然災害、火災等の事故、テロ攻撃、疾病発生及び蔓延等により、物的・人的被害が生じる可能性があります。当社グループでは、大規模災害による生産活動への影響が大きな脅威と認識しており、その対応として事業継続計画(BCP)を策定するとともに、リスク管理委員会を中心としたリスク管理体制を構築し、リスクの軽減を図る対策を実施しておりますが、生産及び出荷に大きな遅延が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 部材調達・外注等について

当社グループの部材調達先、外注先の事業拠点は、地震・台風・噴火等の自然災害、火災等の事故、テロ攻撃、疾病発生及び蔓延等により、物的・人的被害が生じた場合、当社グループの生産及び出荷に支障を来す可能性があります。また、原材料や部材、外注費の高騰が急激であった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ ウクライナ情勢について

2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略は長期化し、エネルギー価格の高止まりや原材料価格の高騰などが続いており、現時点では収束の見通しが立っておりません。今後、事態が激化し、原材料や部材の調達が困難になるなど、軍事対立による影響が深刻化した場合、当社グループの生産及び出荷に支障を来す可能性があります。

また、原材料や、外注費の高騰が急激であった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績

巻線機事業においては、中期経営計画(FY2024~FY2026)の初年度として計画達成に向けた重点施策に沿って、事業競争力の強化と中国・北米を中心とする重点地域でのアプローチの強化を実施いたしました。2024年10月には、グループガバナンスの重点施策として掲げているシナジー強化を推し進めるため、完全子会社である株式会社多賀製作所を吸収合併し、新たな小田原グループとして供給力・営業力の強化を推し進めました。生産活動においては、xEV用モーター巻線システムを中心に製品の出荷は好調に推移したものの、売上を予定していたいくつかの案件が顧客工場での引き渡しが完了せず、売上が翌期にずれ込みました。

送風機事業においては、工作機械や産業用ロボット等向けの軸流ファンが下期に一部回復基調となったものの、顧客の在庫調整が継続していることもあって、前年を大きく下回りました。住設関連事業においては、集合住宅向け浴室照明器具が堅調に推移し前年を上回った一方で、住宅換気装置は、新規顧客獲得に向けた営業活動を行ったものの昨年並みに留まりました。

これらの結果、当連結会計年度における当社グループの営業成績といたしましては、連結売上高は13,175百万円(前年同期比10.4%減)となりました。利益面につきましては、営業利益は1,163百万円(前年同期比42.1%減)、経常利益は1,294百万円(前年同期比39.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は865百万円(前年同期比43.4%減)となりました。

 

当連結会計年度のセグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

① 巻線機事業

 巻線機事業に関しては、予定していた一部の案件の売上が翌期にずれ込んだことにより、売上高は9,093百万円(前年同期比7.2%減)、前期に引き続き消耗品、予備品は円安もあり、海外顧客向けを中心に好調に推移したもののいくつかの案件の売上が翌期にずれ込んだ減少分をカバーするには至らず、また、今後に向けた開発要素のある案件が多かったことに加え原材料価格高騰の影響を受けて原価率が高くなったこと等により、セグメント利益は1,535百万円(前年同期比31.7%減)となりました。また、受注高は自動車関連を中心とした顧客の設備投資が自動車販売台数の鈍化やxEV市場のニーズや動向の変化を受けた見直しによって後ろ倒しになっていること等により7,194百万円(前年同期比49.8%減)、受注残高は前期末17,352百万円から15,452百万円と減少しました。

 なお、当社グループの巻線機事業は、完全受注生産で、案件ごとに仕様やボリューム、納期等が大きく異なるため、受注高や売上高は、四半期並びに通期単位で大きく変動することがあります。

 

② 送風機・住設関連事業

 送風機・住設関連事業に関しては、工作機械や産業用ロボット・半導体関連向けの軸流ファンの需要が、市場の鈍化や一部顧客の在庫調整継続の影響で低迷したため、浴室照明器具や住宅換気装置は堅調に推移したものの、売上高は4,082百万円(前年同期比16.8%減)、セグメント利益は2百万円(前年同期比95.7%減)となりました。

 

 

生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

巻線機事業(千円)

13,456,144

10.0

送風機・住設関連事業(千円)

2,432,786

△22.6

合計(千円)

15,888,931

3.3

 

(注) 1 金額は販売価格によるものであります。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

巻線機事業

7,194,512

△49.8

15,452,878

△10.9

送風機・住設関連事業

3,956,953

△1.5

1,173,498

△9.6

合計

11,151,466

△39.2

16,626,376

△10.9

 

(注) 1 金額は販売価格によるものであります。

2 受注高には、受注取消・変更、為替レートの変動による調整額を含んでおります。

3 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

巻線機事業(千円)

9,093,642

△7.2

送風機・住設関連事業(千円)

4,082,040

△16.8

合計(千円)

13,175,682

△10.4

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

  至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

日立Astemo動力系統(南京)有限公司

3,615,683

27.4

Ford Motor Company

2,321,313

15.8

日立Astemo株式会社

1,691,493

11.5

 

3 前連結会計年度における日立Astemo動力系統(南京)有限公司の販売実績及び当該総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

4 当連結会計年度におけるFord Motor Companyの販売実績及び当該販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

5 当連結会計年度における日立Astemo株式会社の販売実績及び当該販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(2) 財政状態

(資産)

流動資産は、前連結会計年度末に比べて3.4%増加し、21,654百万円となりました。これは主に、現金及び預金が2,221百万円、商品及び製品が1,532百万円それぞれ増加し、受取手形及び売掛金が508百万円、電子記録債権が649百万円、仕掛品が1,615百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べて8.1%増加し、6,254百万円となりました。これは主に、建設仮勘定が567百万円増加したこと等によるものであります。

この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べて4.4%増加し、27,909百万円となりました。

 

(負債)

流動負債は、前連結会計年度末に比べて3.8%増加し、11,203百万円となりました。これは主に、契約負債が3,344百万円増加し、支払手形及び買掛金が2,305百万円、未払法人税等が569百万円それぞれ減少したこと等によるものであります。

この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて3.8%増加し、11,467百万円となりました。

 

(純資産)

純資産合計は、前連結会計年度末に比べて4.9%増加し、16,441百万円となりました。これは主に、利益剰余金が580百万円増加したこと等によるものであります。

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,321百万円(28.9%)増加し、10,364百万円となりました。

当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は前年同期に比べ521百万円(13.7%)減少し、3,288百万円となりました。収入の主な内訳は、売上債権の減少額1,238百万円、契約負債の増加額3,298百万円等であります。また、支出の主な内訳は仕入債務の減少額2,324百万円、法人税等の支払額1,043百万円等であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は前年同期に比べ503百万円(207.9%)増加し、745百万円となりました。支出の主な内訳は、有形固定資産の取得による支出811百万円等であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は前年同期に比べ2,859百万円(90.9%)減少し、284百万円となりました。支出の主な内訳は、配当金の支払額283百万円等であります。

 

 

資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要の主なものは、生産活動に必要な材料費、外注費及び労務費等の製造費用や、試験研究費を含む販売費及び一般管理費等の営業費用並びに設備新設、改修等にかかる投資であります。

当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保することを基本方針とし、原則として自己資金で賄うこととしております。なお、必要に応じて金融機関からの借入等による資金調達にて対応していくこととしております。

 

なお、キャッシュ・フロー指標等のトレンドは以下のとおりであります。

 

2022年12月

2023年12月

2024年12月

自己資本比率(%)

59.0

58.7

58.9

時価ベースの自己資本比率(%)

33.8

43.0

34.0

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

150.6

0.2

0.2

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

461.8

1,371.8

6,851.8

 

(注)自己資本比率             :自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率      :株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ :営業キャッシュ・フロー/利払い

1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

2 株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3 有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

(4) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

特記すべき該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、多様化、高度化、複雑化するお客さまのニーズに応えるとともに、他社製品との差別化、製品のオリジナリティー化をモットーに研究開発活動を行っており、製品の高付加価値化及び画期的なソフト技術・システム技術の開発による非価格競争の強化に積極的に取り組んでおります。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は253百万円であります。

 

(1) 巻線機事業

巻線機事業の研究開発につきましては、従来は当社がモーター用巻線設備の研究開発全般を担当し、株式会社多賀製作所がボビンコイル用巻線設備の研究開発全般を担当し、積極的に技術交流を行ってまいりましたが、2024年10月に当社が株式会社多賀製作所を吸収合併した以降は、一体となって研究開発を行っております。

巻線機事業の研究開発活動としましては、マーケットのニーズをとらえて独自に研究開発するものと、完全受注生産方式を採用しているため、各お客さまより要望されて個別に研究開発しながら製品にするものとがあります。

代表的なものといたしまして、市場ニーズの高いxEVのトラクションモーター・発電機用生産システムの品質・生産性向上や、車載・家電製品に使用されるブラシレスモーター用巻線機の高速化、従来製品の品質・生産性向上、コスト低減等を中心に研究開発をいたしました。

当連結会計年度における巻線機事業の研究開発費の金額は238百万円であります。

 

(2) 送風機・住設関連事業

送風機・住設関連事業の新製品の開発及びその関連業務につきましては、ローヤル電機株式会社を中心に担当しております。

送風機・住設関連事業におきましては、工作機械や産業機械に使用される耐油・耐水性に優れた金属羽根を使用したDCファン・ラジアルファンやメンテナンス性を向上させた住宅換気装置等を中心に研究開発をいたしました。

当連結会計年度における送風機・住設関連事業の研究開発費の金額は14百万円であります。