第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営の基本方針

当社グループでは、社員一人ひとりが大切にする企業理念として「Pigeon Group DNA・Pigeon Way」を設定しております。「Pigeon Group DNA」は経営理念と社是で構成され、ピジョングループの核であり、この先も貫いていくものです。「Pigeon Way」は、存在意義とSpiritで構成されており、当社グループが社会において存在する意味と全ての活動における“心”と“行動”の拠り所として定義しております。

当社グループはこの考えに基づき、Pigeon Wayの軸である存在意義(赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします)の実現に向けて事業を展開しており、その達成に向けた5つの重要課題(マテリアリティ)を設定しております。また、事業活動を行う全ての国・地域において、環境負荷を減らし、赤ちゃんとご家族を取り巻く社会課題の解決をすること、さらに新しいビジネスにも挑戦することで、社会になくてはならない存在として持続的な成長と企業価値の向上を目指しております。

 

(2)経営環境及び対処すべき課題

当社グループの主な事業領域である「育児用品及び女性向け用品」を取り巻く事業環境は、主力市場である日本・中国をはじめ世界的に出生数が減少する中、原材料及びエネルギー価格等の高騰による物価高や、コロナ禍を経たお客様の価値観、消費行動、育児スタイルの変化、地場ブランドの台頭による市場競争激化等の影響を受けております。これらの事業環境の変化は目まぐるしく、さらに世界経済の先行きに対する不透明感の増加や、国家間の緊張や紛争の発生といった地政学的リスクの高まり等もあり、将来の予測も非常に困難な状況にあります。

一方、当社グループの主力市場である中国では少子化が進行しているものの、年間900万人規模の出生数や、中間層の拡大ペースを見ても依然として巨大市場であることには変わりなく、また、アジア各国やその他新興国等においても出生数の大きな市場が複数存在し、中長期的にはEコマースの浸透・発達や経済成長に伴う消費の拡大等が見込まれております。さらに、成熟市場である日本においても、お客様の育児スタイルや消費行動の変化をとらえた新たな成長機会の創出や、これまでは限定的であった欧米市場における育児用品の本格展開に加えて、世界全体では当社グループが未参入の市場も多く、これら既存及び新規市場における事業活動の強化・深耕によって、今後の成長が十分期待できるものと考えております。

このような環境の中、当社グループは、「存在意義」を実現し、社会になくてはならない存在として中長期的に成長するために取り組むべき重要課題(マテリアリティ)として、以下5つの要素を設定しております。

1. 事業競争力向上とビジネス強靭化

2. 環境負荷軽減

3. 社会課題への貢献

4. 存在意義実現のための人材・組織風土

5. 強固な経営基盤の構築

 

「第8次中期経営計画(2023年12月期~2025年12月期)」においては、これら重要課題(マテリアリティ)を念頭に、グローバルで急速に変化し続ける事業環境に柔軟に対応し、サステナブルな成長を確かなものとするため、次に示す3つの基本戦略を着実に実行してまいります。加えて、既存事業領域での持続的な成長はもとより、自社の知見が活用できる新たな成長領域の探索・育成にも注力し、事業構造の再構築を積極的に行ってまいります。

1. ブランド戦略:

存在意義を企業活動の軸とし、商品を通じたブランド力向上に注力する。

2. 商品戦略:

ものづくりを強化し、自社の優位性を活かせる哺乳器・乳首、ベビースキンケアへの集中と新規領域の探索を行う。

3. 地域戦略:

各事業での自己完結体制を強化し、市場特性に合わせた生産・販売体制の革新による効率化や収益性改善、サプラ イチェーンの安定化、新規市場への拡大準備を積極的に行う。

 

 

 

既存事業領域においては、自社の優位性・競争力を活かせる基幹商品として、特に哺乳器・乳首、ベビースキンケアカテゴリを更に強化すべく、新たな育児スタイル提案、新素材の検討、環境やローカルニーズへの対応など、ポストコロナの社会変化に沿った製品・サービスの充実を図ってまいります。あわせて、各事業における各種商品・販売戦略の抜本的な見直しやサプライチェーン改善等の構造改革の実行により、持続的な成長を目指してまいります。一方、当社グループが未参入かつ自社優位性の応用が期待できる領域として、顧客ターゲットの拡張につながる高月齢の赤ちゃん・キッズ向けの商品(エイジアップ)や、顧客親和性の高い女性ケア商品などをはじめとする新規商品カテゴリの創出・育成、またアフリカ地域をはじめとした新規市場への参入なども積極的に検討及び実施することで、次世代の成長を担う新規領域の探索・育成にも注力してまいります。

加えて、当社グループ全体を統括するグローバルヘッドオフィス(GHO)の機能は引き続き強化するとともに、事業の運営と成長を担う4つの事業部門(日本事業、中国事業、シンガポール事業及びランシノ事業)の役割と責任を明確にし、相互に連携することにより、事業の永続的な成長及びコーポレート・ガバナンス等の経営基盤の強化を図ってまいります。なお、当社グループにおける事業継続計画につきましては、既に構築されておりますグローバルリスクマネジメント体制をより一層充実させてまいります。また、重要課題(マテリアリティ)への取組みを着実に行い、環境(E)、社会(S)及びガバナンス(G)の観点から持続可能なオペレーションを追求することによって、事業活動を行う全ての国・地域において、環境負荷を減らし、赤ちゃんとご家族を取り巻く社会課題を解決することに加え、新しいビジネスにも挑戦することで、当社グループは社会になくてはならない存在として持続的な成長と企業価値の向上、そして存在意義の実現を目指してまいります。

また、2024年8月14日に公表いたしました当社グループ子会社元従業員による架空発注や転売等の不正行為の発生につきましては、株主・投資家、お取引先等の皆様をはじめ、全てのステークホルダーの皆様に多大なるご迷惑とご心配をお掛けする事態となりましたことを深くお詫び申し上げます。当社は、社内及び外部有識者による調査委員会の調査結果を真摯に受け止め、2024年12月10日に公表のとおり、「発注及び支払にかかる業務フローの見直し」をはじめとした全4項目の再発防止策を策定し、引き続き迅速な実施と徹底を図ってまいります。また今後もグループ一丸となってコンプライアンス経営の推進に一層注力し、皆様の信頼回復に全力で取り組んでまいります。

 

(3)経営戦略等

「第8次中期経営計画(2023年12月期~2025年12月期)」においては、既存事業領域での持続的な成長に加え、自社の知見が活用できる新たな成長領域の探索・育成にも注力することで、事業構造の再構築を積極的に行いながら、グループの事業拡大と経営品質向上を目指してまいります。

 

なお、本中期経営計画期間における各事業戦略の概要は、下記のとおりであります。

「日本事業」

・価格改定や商品ポートフォリオ見直しによる収益力改善

・新規カテゴリ創出(エイジアップや女性ケアなど)

・自社ECサイトの強化

「中国事業」

・哺乳器・乳首、ベビースキンケアの更なる強化

・新規カテゴリ創出(エイジアップや女性ケアなど)

・サプライチェーンの見直しなどによる事業再編(韓国での自社直販体制への移行など)

「シンガポール事業」

・哺乳器・乳首、スキンケアを核とした事業成長の加速

・上位中間層~プレミアム層向けのものづくり強化

・サプライチェーンの見直しなどによる事業再編

「ランシノ事業」

・さく乳器、産前・産後ケアカテゴリの強化及び育成

・バイオデザインを活用した新商品、新カテゴリの開発

・販売体制の見直しなども含めた欧州事業の効率化

 

 

(4)目標とする経営指標

2023年12月期を初年度とする第8次中期経営計画に沿った取組みを着実に実行していくことで、最終年度である2025年12月期の到達目標水準を、売上高113,800百万円、営業利益16,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益10,400百万円とし、また収益性、資本効率の一層の改善を図るために、ROE、ROICやPVA(Pigeon Value Added)などを経営指標として重視し、更なる向上を目指してまいりました。しかしながら、2023年に発生した中国でのALPS処理水の影響など、想定外の課題にも直面し、最終年度である2025年度の当初目標達成は難しい状況です。

2025年12月期の業績見通しにつきましては、当連結会計年度の業績を踏まえ、売上高109,700百万円(前期比5.3%増)、営業利益12,900百万円(同6.3%増)、経常利益12,900百万円(同2.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,400百万円(同0.3%増)と予想しております。第8次中期経営計画期間の最終年として、各事業において取組みの成果を最大限創出するとともに、本中期経営計画期間に新たに顕在化した課題に対処し、次期中期経営計画も視野に入れた成長への布石を打ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループでは、「社会価値」と「経済価値」の向上、その総和である「企業価値」の向上を図り、『社会の中でなくてはならない存在として存続し続けること』、これが当社のサステナビリティに関する基本的な考え方です。そして、当社はPigeon Sustainable Actionを掲げ、環境負荷を減らし、社会課題の解決を通じて、企業として持続的な成長を目指し取組みを進めております。

Pigeon Sustainable Action

 私たちは、赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にするために存在します。私たちは、赤ちゃんにやさしい未来をつくるため、事業活動を行うすべての国・地域において環境負荷を減らし、赤ちゃんとお母さんを取り巻く社会課題の解決をすること、新しいビジネスにも挑戦することで社会になくてはならない存在として持続的な成長を目指します。

 

 当社グループでは、中長期的に取り組むべき課題として、5つの重要課題(マテリアリティ)を設定しております。重要課題のうち、気候変動への対応をはじめとする環境負荷軽減については、長期的に取り組む必要があることから、Pigeon Green Action Planとして中長期の定量目標を定め、第8次中期経営計画に組み込んでおります。

 以下、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

①ガバナンス

 当社グループでは代表取締役社長の下に、グローバルヘッドオフィス(GHO)責任者である取締役専務執行役員を委員長とし、各事業セグメント(日本事業、中国事業、シンガポール事業、ランシノ事業)の本部長、経営戦略本部長で構成するサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、事業活動を通して持続可能な社会の発展に貢献し、企業価値の向上を実現するために当社グループが解決しなければならない重要課題(マテリアリティ)を特定し、重要課題(マテリアリティ)に基づく個別課題の設定、中長期の全社環境目標の設定、取組み進捗のレビューを行っております。

 サステナビリティ関連リスクのうち、気候変動により頻発化と激甚化が予想される水害のように短期~中期的に顕在化する可能性が高く、かつ事業継続に直結する可能性のあるリスクに対しては、当社グループのリスクマネジメント対応を体系的に定めるリスクマネジメント方針、及びリスクマネジメント規程に基づき、代表取締役社長の下に設置した、グローバルヘッドオフィス(GHO)責任者を委員長とするGHOリスクマネジメント委員会が所管しております。GHOリスクマネジメント委員会は、当社グループ各社のリスクの特定・評価(全社リスクアセスメント)を通して当社グループの短期~中期的なリスク情報を網羅的に収集、分析・評価し、対応策を検討・実施・モニタリングしております。

 サステナビリティ委員会(年2回以上開催)及びGHOリスクマネジメント委員会(年2回以上開催)における審議の結果と当社グループ全体の取組み進捗状況を毎年取締役会に報告しており、取締役会はサステナビリティ委員会及びGHOリスクマネジメント委員会からの報告に基づき、当社グループのサステナビリティに関するリスク・機会を監督しております。

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SBU:Strategic Business Unit

 

②戦略

 当社グループは、赤ちゃんにやさしい未来をつくるため、事業活動を行うすべての国・地域において、環境負荷を減らし、赤ちゃんとご家族を取り巻く社会課題を解決するとともに、事業競争力の弛まぬ強化に努めることで、社会になくてはならない存在として持続的な成長を目指しております。

 

(a)Pigeon ESG/SDGs基本方針

 当社グループでは、社員一人ひとりが大切にする企業理念として「Pigeon Group DNA・Pigeon Way」を設定しております。「Pigeon Group DNA」は「経営理念」「社是」で構成されており、ピジョンの核であり、この先も貫いていくものです。「Pigeon Way」は「存在意義」「Spirit」で構成されており、私たちが社会において存在する意味と全ての活動における“心”と“行動”の拠り所です。

 「Pigeon Group DNA・Pigeon Way」を体現し、持続可能な社会の発展に貢献する方針として「Pigeon ESG/SDGs基本方針」を設定しております。当社グループが解決しなければならない重要課題(マテリアリティ)や環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の観点から持続可能なオペレーションを追求するとともに、商品やサービスの提供による新たな価値の創造により、SDGsに代表される社会課題の解決に貢献すべく事業活動を展開します。事業活動を通してステークホルダーとの信頼関係の構築に努め、総じて企業価値を向上させることで、持続可能な社会の発展に貢献していくことを企図しております。

「Pigeon ESG/SDGs基本方針」に基づく持続可能な社会の実現ストーリー

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https://www.pigeon.co.jp/sustainability/policy/

 

(b)事業環境と当社グループの重要課題(マテリアリティ)

 当社グループにおいて大きな売上を占める日本や中国では、出生数の減少が続いており、昨今そのスピードが加速しました。その一方で、出生数の増加傾向がみられるアフリカ地域をはじめ、当社グループが進出していない市場は依然として多く、事業成長の余地があります。

 また、地球温暖化が進行する中で、各国政府が脱炭素社会の実現に向けてカーボンニュートラルを表明し、企業も脱炭素に向けた取組みを進めることが要求されております。プラスチックの使用に関しても、各国で使い捨てに対する規制が強化され、サーキュラーエコノミーへの移行に向けた動きが加速しております。

 こうした地球環境課題への対応に加え、企業が持続的成長を果たしていく上では、人的資本に対する取組みも不可欠な要素となっております。さらに、リスクマネジメントの観点からも、自社の社員のみならず、サプライチェーン全体に関わる全ての人々の人権に配慮した取組みが期待されております。

 このような事業環境の中で、持続可能な社会の発展に貢献し、企業価値の向上を実現するために、当社が解決しなければならない重要課題として、「事業競争力とビジネス強靭化」、「環境負荷軽減」、「社会課題への貢献」、「存在意義実現のための人材・組織風土」、「強固な経営基盤の構築」を特定しております。そして、これら重要課題ごとに目指すべき姿を明確にするとともに、その姿を実現するための課題を個別課題として具体化しております。そして、各事業ユニット及びグローバルヘッドオフィス(GHO)の各部門は、個別課題への取組み計画を第8次中期経営計画(2023年~2025年)に組み込み、実行しております。

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(c)環境負荷軽減に向けた長期目標「Pigeon Green Action Plan」

 温室効果ガスの累積、森林減少、土壌劣化、生物多様性の損失、水害・渇水、プラスチック汚染、地球の復元・浄化能力の劣化等、地球環境の悪化は進行しております。地球環境の悪化は社会と経済の不安定さを増大させるリスクがあります。当社グループは、明日生まれる赤ちゃんの未来にも豊かな地球を残すために長期的に環境問題に取り組むべく、「Pigeon Green Action Plan」を2022年に策定し、2024年に取締役会の承認を受け、SBT認定取得に向け、Scope1~3 GHG排出量の2030年目標を上方修正しました。

 環境問題は多々ありますが、当社グループの事業活動に相対的に関連性が高い気候変動問題、プラスチック問題、生物多様性毀損にフォーカスし、「脱炭素社会」「循環型社会」そして「自然共生社会」の実現を目指した中長期の環境目標を設定しております。

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B&C(ブックアンドクレーム)方式:RSPOにより認証された生産者が認証パーム(核)油の生産量に基づいて発行した認証クレジットを、最終利用者が購入することで、認証された持続可能なパーム(核)油の生産を支持する仕組み

 

(d)気候変動関連のリスク及び機会

 昨今、気候変動の影響が世界中で顕在化し、様々な自然災害によって人的被害や物理的損害をもたらしており、今後も自然災害の頻発化や激甚化が継続すると予想されております。こうした気候問題に対処するため、将来において、世界各国で政策変更や新規規制の導入、市場シフト・消費者の意識変化などの社会的変化が生じることが予想されます。このような変化の中でも当社グループが「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」という存在意義を実現し、社会になくてはならない存在として将来にわたって存続するためには、気候変動に関する問題を経営戦略や財務計画に影響を与える可能性があるリスクや機会として捉え、対応していくことが必要であると認識しております。このため、当社グループの主力商品である哺乳器・乳首、スキンケアビジネスを対象として気候関連リスク及び機会の財務影響分析を行いました。

Ⅰ 気候シナリオ分析

 当社グループは、様々な商品・サービスを世界90か国以上のお客様にお届けしております。気候シナリオを用いたリスク及び機会の分析を行うに当たり、まずは、中核ビジネスである日本事業及び中国事業における哺乳器・乳首、スキンケアの製造・販売ビジネスを分析対象としました。

 分析に用いたシナリオは、世界平均気温の上昇を工業化前と比べて1.5℃に抑えるため脱炭素化へ向けて進む世界(1.5℃シナリオ)と、炭素排出量が多く世界平均気温が工業化前よりも4℃上昇する世界(4℃シナリオ)の2つとし、2030年時点(物理的影響は2050年)の世界を以下のように想定しました。

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Ⅱ 哺乳器・乳首、スキンケアビジネスにとってのリスク及び機会

[消費者市場の変化]

 当社の基幹商品である哺乳器・乳首は、これらを必要とする赤ちゃんにとっては気候状況や政策にかかわらず必須の育児用品ですが、4℃シナリオでは、気候環境の大きな変化(自然災害の頻発化と激甚化等)が予測されるため、赤ちゃんの未来に対する不安感などが出生数の減少要因の一つとなり、哺乳器・乳首の売上に影響する可能性があると考えております。

 1.5℃シナリオでは、消費者の倫理的選択嗜好が高くなることから、バリューチェーン全体で環境に配慮された商品、消費者への訴求といった商品戦略が重要になると考えております。

 1.5℃シナリオ及び4℃シナリオのいずれにおいても、気候が変化し、自然災害が現状よりも多発化することが予想されます。このため、高温化、多湿化、乾燥化に対応するための商品や、渇水時や水害による断水時に、従来商品よりも節水型であるもしくは水を使用せずに使用できる商品の需要が高まることが予想されます。

 当社グループは、第8次中期経営計画(2023年~2025年)の下、未進出地域の開拓並びに既進出市場における高収益商品の哺乳器(広口哺乳器)・乳首の販売拡大等の戦略を実行することにより、哺乳器・乳首の売上高・利益の伸長を目指してまいります。スキンケア商品に関しては、第8次中期経営計画においてスキンケアカテゴリの更なる成長に注力し、様々な商品機能に対する消費者のニーズを取り込んでまいります。そして、商品の環境配慮については、Pigeon Green Action Planの実行を通じて、当社グループの拠点とサプライチェーンを含むバリューチェーン全体での低炭素化、商品パッケージにおける植物由来素材や再生素材の使用率向上に取り組んでおります。これらの取組みにより、消費者の環境配慮意識の高まりに応えてまいります。

[政策・規制の変化]

 1.5℃シナリオでは脱炭素化へ向けた強い政策・規制が導入され、当社にとっては温室効果ガス排出量に炭素税が課されるもしくは排出量取引制度が適用されることにより、炭素税の支払いもしくは排出枠の購入コストが発生するリスクがあります。

 また、脱炭素政策の世界的強化が、購入電力、輸送運賃、パーム由来成分含有原材料、化石燃料由来プラスチック原料のそれぞれの価格の上昇、化石燃料由来プラスチックの使用を制限する規制をもたらすことが予想されます。これらは製造コストや開発コスト・設備投資の増加要因となる可能性があります。

 Pigeon Green Action Planに沿って温室効果ガス排出量を削減することは、カーボンプライシング制度が導入された場合の炭素税の支払額もしくは排出枠の購入費用の軽減につながります。プラスチックの使用に関連するリスクについては、Pigeon Green Action Planの中で掲げている「2030年までにパッケージ材の50%(重量比)を植物由来又は再生素材にする」という目標及び「2030年までに全てのパッケージをリユース、リサイクル又はコンポスト可能な設計にする」という目標へ向けた取組みを進めることによって、化石燃料由来バージンプラスチックへの課税や使用の禁止、プラスチック製パッケージの回収・リサイクル義務による財務影響を軽減してまいります。

 他方、移行リスクがもたらす潜在的な財務影響の全てをPigeon Green Action Planの達成によって回避・軽減できるわけではないため、気候関連に起因した事業コストの増加に備える必要があると認識しております。他のコスト削減や高収益商品の比率拡大によって、増加したコストを事業全体で吸収することが第一であると考えておりますが、一部のコストは商品価格への転嫁によって消費者にも負担していただく可能性もあると考えております。そのためには、消費者とのコミュニケーションの中で、脱炭素の取組みの意義と価値を消費者に伝え、脱炭素のためのコストを消費者が受容しやすくなる土壌づくりを能動的に行っていくことが必要だと考えております。

[自然災害の多発化]

 1.5℃シナリオ及び4℃シナリオのいずれにおいても、世界平均気温が現在よりも更に上昇することから、異常気象の発生頻度が高まり、水害、渇水、感染症拡大によるサプライチェーンや物流網の混乱と操業中断が予想されます。また、タイのバンコク近郊にある生産拠点は土地の海抜が低いため、将来的に海面上昇により慢性的に浸水する可能性があります。

 生産を安定的に行えるよう、原材料と生産品の在庫確保のほか、当社グループ内での生産拠点の一時的切り替えや主要原材料の2社購買などの対策をとっております。

 なお、気候関連リスク及び機会に関するガバナンス、潜在的な財務影響額、リスクマネジメント並びに指標・目標の詳細を「ピジョングループ TCFD Report 2023」において開示しておりますので、ご参照ください。https://www.pigeon.co.jp/sustainability/files/pdf/PigeonTCFDReport202311.pdf

 

③リスク管理

 サプライチェーンの寸断・混乱や水害による操業中断など、短期~中期的な時間軸での対応を必要とする事業上のサステナビリティリスクに関しては、リスクマネジメント活動の中でリスクの特定・分析評価(全社リスクアセスメント)を行い、重点リスクに対するアクションプランの検討と実施を行っております。各事業セグメント(日本事業、中国事業、シンガポール事業、ランシノ事業)は、リスクアセスメントとして、各事業セグメントにおいて発生する可能性があるリスク事象(事業リスク、財務リスク、ハザードリスク、コンプライアンスリスク)を洗い出し、各リスク事象の発生頻度と発生した場合に想定される損害の大きさに基づいてリスクの大きさを評価しております。事業セグメントの責任者及び各拠点の責任者は評価したリスクへの対応の要否と具体的な対応策、その実行計画を策定し、実行しております。当社グループ全体にとって重大なリスクであり、グループ全体として対応する必要があるサステナビリティリスクは、GHOリスクマネジメント委員会を中心としたマネジメントを行っております。

 当社グループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項」において開示している「リスク管理体制の整備の状況」もご参照ください。

 一方、気候関連のリスクや機会は長期的に発現することから、長期的な時間軸及び事業セグメントを横断した視点からの検討も必要となります。このため、当社では、リスクマネジメント活動とは別に、気候関連の長期的なリスク・機会の特定とシナリオ分析を行うプロセスを設け、社外のコンサルタントを交えて、関係部署と連携しながら、当社ビジネスに関わる長期的な気候関連のリスクと機会の特定及び財務影響の分析を行いました。分析に基づいて特定されたリスク及び機会のうち、短期・中期的にはリスクが顕在化する可能性が低いものの、長期的には顕在化する可能性が高く、かつ、当社グループの業績にネガティブな影響を与えうると判断した気候関連リスクについては、サステナビリティ委員会にて対応方針(軽減、移転、受容、コントロール)を審議しております。各事業セグメントは対応方針に基づいた具体的対応策を検討し、実行しております。

 

④指標及び目標

(a)温室効果ガス排出量の削減目標

 当社グループは、重要課題「環境負荷軽減」のうち脱炭素社会の実現に係るパフォーマンス指標として温室効果ガス排出量を設定し、排出量総量(絶対値)を削減する目標を掲げております。温室効果ガス排出量削減の2030年目標をSBT申請に向けて上方修正し、2024年11月の取締役会で承認を受けました。

 

温室効果ガスのスコープ

基準年度

2030年目標(変更前)

2030年目標(変更後)

2050年目標

Scope1&2

2018年度

50%削減

70%削減

ネットゼロ

Scope3

(Category1&12)

2021年度

SBT基準に準拠した

目標設定

25%削減

-

 

(b)温室効果ガス排出量の実績

 当社グループの温室効果ガス排出量は次のとおりです。再生可能エネルギーの使用によるScope2温室効果ガス排出量の削減やサプライヤーとの協働によるScope3温室効果ガス排出量の削減などに今後も取り組んでまいります。

 

温室効果ガスのスコープ

実績年度

実績値(万t- CO2e)

Scope1&2

2024年度

1

Scope3

2023年度

22

実績値の千t- CO2e以下を四捨五入し、記載しております。

Scope2はマーケットベースで排出量を算定しております。

 

温室効果ガス排出量削減以外の個別課題に対する取組みの進捗は下記ウェブサイトをご覧ください。

https://www.pigeon.co.jp/sustainability/materiality/

Scope3温室効果ガス排出量のカテゴリ別排出量及び算定方法は下記ウェブサイトをご覧ください。2024年度実績値も同ウェブサイトで開示します。

https://www.pigeon.co.jp/sustainability/environment_top/co2/

 

 

(2)人的資本

 当社グループは、「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」という存在意義の下、事業活動を通して持続可能な社会の発展に貢献し、企業価値の向上に取り組んでおります。企業価値創造の最大の源泉は社員です。当社グループでは、社員を「人的資本」と位置づけ、当社グループに集う多様な社員一人ひとりが成長し、専門性を高められるよう支援し、自分らしく活躍できる環境を整えることで、社員と会社がともに成長する環境と風土をつくります。

 

① 人材ガバナンス

 当社グループは、人的資本戦略を取締役会のアジェンダの1つとして、人的資本戦略に関する議論、戦略の実行状況に関する監督とモニタリングを実施しております。これまでは日本を中心とした戦略が中心でしたが、2024年に人事部を日本事業からグローバルヘッドオフィス(GHO)に組織を移管し、グローバルで戦略実行とガバナンスができる体制を構築しました。グローバルで社員と組織の状態と課題を把握するとともに、事業ユニットごとのガバナンスを実施していくため、ファーストステップとして各事業ユニットに人事部門の代表者をアサインしました。今後、人事部門の代表者達が参加する会議体として「People Strategy Leaders Meeting」を定期的に開催し、状況の共有、グローバル共通の人事課題への対策検討と実行を行ってまいります。

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② 戦略

 当社グループは、Pigeon Group DNA、Pigeon Way、そしてその先にある赤ちゃんにやさしい未来像の実現に向け、中長期で取り組むべき5つの重要課題(マテリアリティ)を設定しております。その1つが「存在意義実現のための人材・組織風土醸成」であり、『「Pigeon Way」や「存在意義」に共感し、会社、組織、仕事に対して「誇り」と「自発的な貢献意欲」を持ち、多様な人材が自分らしく挑戦し、成長できる組織風土醸成』を実現するための取組みを行っております。

 当社グループの存在意義は「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」です。2024年のエンゲージメントサーベイでは、この存在意義に高く共感している社員(5段階スコアで4又は5を選択した社員)は88%という高い結果となりました。存在意義に共感している社員一人ひとりが、当社グループの中で自分らしく挑戦し、活躍し、希望するキャリアを実現することでエンゲージメントが向上します。社員一人ひとりのエンゲージメントが向上することで事業戦略の達成確率が高まり、企業の経済価値と社会価値双方の向上並びにその先にある「赤ちゃんにやさしい未来」の実現につながります。

 価値創造の源泉の1つである人的資本をどのように活かし経済価値向上と社会価値向上につなげていくか明示するため、価値創造ストーリー(人材版)を策定しました。重要課題(マテリアリティ)の解決のため「自己実現と成長できる働き甲斐のある会社」「人材への投資拡大」「DE&I推進」及び「自分らしく挑戦し、活躍できる環境の整備」を戦略の柱とし、8つの施策を実行しております。

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(a)人材戦略の柱

a. 「自己実現と成長できる働き甲斐のある会社」、「人材への投資拡大」

 当社グループは、長期人材ビジョンとして「自律したプロフェッショナル集団」の実現を掲げ、実力主義の人事制度、自律的な成長と活躍を促す人材育成の仕組み、自律意識の高い社員に対するキャリア形成支援を行っております。

 

b. 「DE&I推進」

 当社グループは、多様な社員がお互いに価値観や考え方の違いを尊重しあい、その違いを活かすことが新製品アイデアを富ませ、イノベーション創出につながると考えております。当社グループは、DE&Iの推進のため、国籍、人種、性別、年齢、障がいの有無、性自認や性的指向などを問わず、意欲と能力のある多様な人材を社員として迎えるとともに、育児や介護、疾病など様々な事情を抱えても十分に能力が発揮できるよう、両立支援や働き方改革によって働きやすい環境を整えております。

 女性活躍推進に関しても積極的な取組みを行っております。海外と比較すると日本の女性管理職比率が劣後していることから、2016年以降、日本において「両立支援制度の拡充」「職場の意識改革」「女性の気持ちとスキルをバックアップ」といったハード面での整備を行うとともに、男性社員を含む職場全体の意識改革を目的とした取組みを積極的に実施してきました。その結果、2024年12月末時点における、当社グループ全体の女性管理職比率(部下を持つ部長・課長)は38.7%、当社は26.4%となりました。当社は、2025年12月末のKPIである女性管理職比率30%を達成するため、引き続き女性活躍推進のための諸施策を実行してまいります。

 また、中途採用に関しても積極的に実施してきており、2024年12月末時点における当社の管理職の52.8%が中途採用により入社した社員となりました。

 

c. 「自分らしく挑戦し、活躍できる環境整備」

 当社グループは、多様な人材が自分らしく挑戦し、活躍できる環境を実現することを社内環境整備方針として掲げております。社員が挑戦し活躍するための土台を社員の健康と安全とし、社員の健康リテラシー向上と健康増進のための施策を実施しております。また、社員の挑戦を促すため、属性の影響を完全に排除し、実力で昇進していく人事制度や、業務とは別に新しいアイデアの実現に挑戦できるプログラムを設けております。

 

(b)戦略を実行するための8つの施策

Ⅰ 人材育成

 当社グループは、「バリューチェーンの随所に知識と経験を有する高度な専門性を持った社員が存在し、その社員が社会の変化に目を凝らし、未来を考え、自らが能動的にアップデイトし続ける多様な専門家集団を目指す」を人材育成方針として掲げております。当社では、会社が主催するビジネススキル向上に資する研修は全て手上げ式とし、社員の自主性を重視した人材育成に取り組んでおります。

 

a. 次世代経営選抜研修

 当社は、2004年から6年ごとに「次世代経営人材育成選抜研修」を実施し、将来の経営層を担う人材の育成を継続的に行っております。本研修は発掘、育成、活用、登用のプログラムから構成され、各々のプログラムの過程で受講生の育成と選抜をしております。これまでの研修修了者の多くが部門で中核的な役割を担い、活躍しております。現在在籍している活用プログラム以上の修了者30名のうち、2名が取締役、1名が監査役、8名が執行役員、3名が国内外グループ会社の取締役に就任しております。

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b. 選抜!リーダー塾

 2023年より開始した本研修は、当社グループの未来を担う人材プール形成のため、自律・変革型リーダーの早期発掘と育成を目的として、3年ごとに実施しております。概ね40歳以下の若手から中堅の社員を対象とし、上司からの推薦と自薦で応募してきた社員の中から16名を選抜しました。変化の激しいビジネス環境の中で新たな価値を創造できるよう、ビジネストレンドテーマと掛け合わせたチームプロジェクト活動を通じて、新規事業の検討、提案及び成果物(アウトプット)を作る経験を付与しております。

 

c. 海外の事業ユニットでの取組み

 海外の各事業ユニットでも積極的な人材育成への投資を実施しております。PIGEON SINGAPORE PTE.LTD.では、新たに入社した社員へのオンボーディング研修を強化しております。その研修の中で、Pigeon Wayの理解と共感を高めるメニューを組み込み、Pigeon Group DNA、Pigeon Wayの浸透に努めております。また、社外研修への個別派遣を積極的に実施するとともに、研修に参加した社員が研修内容の共有会を実施することにより、学びを部門全体に広げております。

 

Ⅱ キャリア

a. AMC(Accelerate My Career)プログラム

 当社は、社員一人ひとりが自律的にキャリア形成し、また経験を積んでケイパビリティを上げていくことは、当社の持続的な成長に不可欠です。社員一人ひとりの自律的なキャリア開発を支援するため、2020年よりAccelerate My Career(AMC)プログラムを導入しております。

 AMCプログラムは、社員が社内外で多様な経験を積むことで、キャリアを自律的に考え、開発できるよう支援する制度です。社員の参加へのハードルを下げるため、多様なメニューを設けております。社内に関しては、社内公募、社内プロボノ(単発型の他部署への業務支援)等、社外におけるキャリア開発の機会としては、社外留職、ボランティア・プロボノ休暇、社外副業があります。社員が多様なメニューの中から選択し、自業務以外の経験を積むことで、キャリア意識の向上や経験の幅だしにつながっております。

 

b.キャリア面談(1on1)

 当社は、上司による部下のキャリア形成支援を強化するため、部長格以下の全正社員に対して1on1面談を定期的(年4回以上)に実施することといたしました。

 社員一人ひとりのキャリアビジョンを明確にし、その実現に向けて、必要な経験や知識を得つつキャリア実現していく具体的な計画を策定するほか、社員が抱えている悩みについても上司がメンターとしてサポートできるようにしてまいります。

 

Ⅲ 人事制度

 当社は、中長期的に熾烈な競争環境において海外企業と渡り合っていける人材を育成・登用していくため、2021年、年齢や勤続年数、性別等の属性を一切排除し、実力で登用していく人事制度に大幅改定し、運用を行ってきております。

 「一人ひとりが個性を活かしながらPigeon Wayを体現し、卓越した手腕を発揮するプロフェッショナル集団」を人事制度の設計思想とし、業務上におけるPigeon Wayの体現と併せて主体的な専門性向上への取組みも評価軸に加えました。また、社員が実際に担う役割と行動に連動した報酬体系とし、優秀な人材の獲得とリテンションのため、市場競争力を保てる報酬水準に設定しております。制度導入から数年が経過した現在、毎年続けて上の役割に昇格する優秀な社員も複数存在しております。自身の持つ力を余すところなく発揮し、それに見合った報酬を得ることは、エンゲージメントの向上にも寄与すると考えております。

 

Ⅳ 両立支援

 当社は、仕事をしながら本人が望めば妊娠・出産・育児をすることが性別を問わず当たり前の職場環境の実現を目指しております。男性の育児参加はもとより、次のような様々な取組みを実施しております。

 

a.ライフ・デザイン休暇/休職制度

 不妊治療や里親・養子縁組のために休暇取得や休職をすることができる制度です。ライフ・デザイン休暇は、失効した年次有給休暇の積立制度を活用することができ、ライフ・デザイン休職制度は、1か月単位で1人の社員につき在籍中に通算24か月を限度として利用することが可能です。

 社員がそれぞれの人生において少しでも豊かなものになるよう、会社としてできるサポートを形にしたものであり過去の利用者は復職し、その後それぞれの職場で活躍しております。

 

b.男性の育児休業取得率100%

 男性の育児参加と育児を語れる社員の育成を目的として2006年に男女ともに1か月間の休業を有給で取得することが可能とする育児休業制度(ひとつきいっしょコース)を制度化いたしました。導入以降、男性社員の育児休業取得率は30%程度で推移していたものの、2016年、当時の社長の強い想いのこもった声がけにより、男性の1か月の育児休業取得率は一気に100%になりました。そして、2016年から現在に至るまで100%を継続している状況です。当社では、配偶者が出産した際に男性社員が1か月以上の育児休業を取得することは当たり前の文化として根付いております。今後は、100%の取得率を維持しながら、平均育児休業取得日数のKPI達成(40日以上)に向けて制度を拡充し、男性の育児参加と、男女を問わず仕事とプライベートとの両立を可能とする社会の実現を目指して自社のみならず社会に対しても発信し続けてまいります。

 

c.復職ママ会・パパ会の実施

 子の月齢が近い社員同士のつながりを創るとともに、先輩社員からのアドバイスを共有することで育児と仕事の両立に対する心理的不安を取り除くことを目的に実施しております。

 

 このように社員のライフイベントに応じた様々な取組みを継続実施していくことで、社員の妊娠、出産、育児を含めたプライベートと仕事の両立に対する負のバイアスを排除し、ライフイベントはキャリアロスではなくキャリアアップにつながる新たな学びの機会として捉えてもらえるよう、意識変革につなげていきたいと考えております。そして、赤ちゃんにやさしい世界の実現を目指している当社だからこそ、育児と仕事の両立のための先駆的な取組みを積極的に行い、当社独自の両立支援制度の内容を広く社会に発信することで、日本の少子化の課題に対しても貢献してまいります。

 

Ⅴ 働き方

a. Smart & Smile!Work

 当社は、働き方改革スローガンとして「Smart & Smile!Work ~決まった時間の中でSmartに働き、プライベートをSmileでいっぱいにする~」を掲げ、社員の人生は仕事が全てではなく、仕事もプライベートも重要と考え、仕事を効率的に進めて自分自身の時間を十分に取ることができる環境整備を進めております。限りある時間を効果的・効率的に使うことで時間当たりの生産性を高めるとともに、ONとOFFの切り替えのマインドを高め、社員の心のリフレッシュも推進しております。

 ・17時15分以降の会議・打合せは行わない

 ・19時~翌7時30分の間・休日にメールは送らない

 ・コアタイムなしのフレックスタイム制度の積極活用

 ・19時退出ルール

 これらの取組みより月平均残業時間の過去4年間実績は「月平均:10時間以内」を下回り、2024年度は、5.5時間となっております。

 

b. 有給取得率の向上

 仕事の効率を上げるための施策として有給取得率の向上も推進しております。全社員に対して、有給取得計画を事前に提出してもらい、計画的かつ自主的に有給休暇を取得することの啓蒙活動を数年間にわたって実施してまいりました。直近数年の平均取得率は80%前後の高い取得実績となり、休暇が取りやすい風土が醸成されております。

 

Ⅵ 風土・環境

 当社は、「働いていて楽しい時間を増やし、社員が未来にむけて、失敗を恐れず挑戦していくことを応援・表彰する」をコンセプトとし、社員が提案する取組みを応援し、最終的に事業化まで発展させることを想定したPigeon Frontier Awards(PFA)という取組みを行っております。これまでの提案案件のうち、累計19件が社長直下のプロジェクトとして活動し、複数の提案が形になっております。この取組みは、失敗を恐れず挑戦する風土を醸成するだけでなく、普段の仕事では経験できない他部門との連携や開発現場の体験、多様なバックグラウンドのメンバーのリード等、社員にとって貴重な成長機会にもなっております。

 

参考:PFAから生まれたアイデア

 初乳採取サポートデバイス『Precious Drop』

 https://www.pigeon.co.jp/news/files/pdf/20220712.pdf

 書籍『ピジョンの子育て』

 https://www.pigeon.co.jp/news/files/pdf/20221129.pdf

 「母乳実感®パーツストロー」「母乳実感®パーツ ふた」

 https://push.pigeon.info/article-63.html

 

Ⅶ 健康

 当社は、「健康でいきいきと働くことができる会社」を目指し、社員の健康維持・増進をサポートし、活力に満ちた職場環境の実現に努めております。

 2021年に「健康経営宣言」を制定し、健康経営の取組みをスタートしました。社長をトップとする健康推進体制を構築し、産業医や健康保険組合とも連携の上、禁煙、メンタルヘルス対策だけでなく、カジュアルに自身の健康を考える機会として、年2回のウォーキング大会、産業医や保健師による社内講演会を実施しております。保健師講話は、社員一人ひとりにとって身近なテーマ(※)でオンライン開催し、本社外で勤務する社員も含めて気軽に参加できるようにしております。また、社員の運動習慣定着・健康リテラシー向上にもつながるよう、年齢や性別を問わず気軽に参加できるスポーツイベントも実施しております。

 ※保健師講話テーマ

 5月「女性の更年期とがん」

 7月「睡眠の質向上」

 9月「健康のプロが教える!健診結果を読み解くコツ」

 11月「忘年会前に知っておきたい!お酒の飲み方&禁煙のコツ」

参考リンク:健康経営宣言、健康経営推進体制、健康経営戦略マップ

https://www.pigeon.co.jp/sustainability/social_top/health_management_policy/

 

 このような取組みと成果が認められ、経済産業省と日本健康会議主催の「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」の内々定通知を受けており、正式に認定されれば4年連続の認定となります。認定法人として取引先企業に当社の取組みを紹介する等、健康推進に向けた施策の共同実施等にも積極的に取り組んでまいります。

 これまでは、取組みと実績を定期的に経営会議に報告してまいりましたが、今後は、健康経営戦略の進捗を、取締役会のアジェンダにも加えていく予定です。

 

Ⅷ 安全・衛生

 労働における安全衛生管理は、日本はもちろんのこと海外においても、各国の法規制を踏まえ、当社労働安全基準に則った非常に厳格な管理がなされております。生産拠点においては、労働災害の防止を見据え特に徹底した労働安全管理が必要であることから、国際的に広く採用されている労働安全衛生に対するマネジメントシステム規格「ISO45001(OHSAS18001)」を導入し、全拠点の取得率は100%となっております。

 また、前述のPeople Strategy Leaders Meetingにおいて、労働災害リスクの低減を目的とした「健康の保持増進のための措置」として健康経営による施策や、「快適な職場環境の形成のための措置」として安全で快適な職場環境を実現するための施策をアジェンダとして加え、グローバル全体で社員(職場)の安全・衛生のより一層の確保に努めてまいります。

 

③ 社員のエンゲージメント

 当社グループは、それぞれ異なる価値観や考え方を持ち、高い専門性を持った多様な社員がエンゲージメント高くイキイキと働くことが、経済価値及び社会価値の向上につながるものと考えております。社員エンゲージメントの状態を測定するため、2023年度からグローバルでエンゲージメントサーベイを実施※1しております。Pigeon Wayへの共感と会社の存在意義とのつながりが、社員エンゲージメントと相関性が高いことから、Gallup社が提供するサーベイに当社の独自設問を追加※2しております。2024年はエンゲージメントスコアが前年対比向上しました。人材戦略を更に実行し、社員エンゲージメントの更なる向上を図ってまいります。

 

※1 エンゲージメントサーベイはランシノ事業本部を除く各事業ユニットの核となるピジョン株式会社、PIGEON(SHANGHAI)CO.,LTD.、PIGEON SINGAPORE PTE.LTD.の3社の正社員を対象に実施

※2 3つの追加の設問項目

 ・私は会社が掲げているPigeon Wayに共感している

 ・私のチームの仕事は、Pigeonの存在意義実現につながっていると感じる

 ・私は、職場で自分らしくいられる

 

 

④ リスク管理

 当社グループの人的資本に関するリスク管理に関しては、サステナビリティリスクと同様に、GHOリスクマネジメント委員会を中心としたマネジメントを行っております。2024年に実施したリスクマネジメント委員会においてリスク項目として新たに「人権」を設定いたしました。これを受け、各事業ユニットに新たに人権担当をアサインしております。今後、当社グループの全従業員に対し、人権方針の周知、及び社員に対する人権教育、人権課題の有無と人権への負の影響を特定し、防止し、軽減し、対処してまいります。日本事業においては、2024年に当社グループ人権方針の周知及び人権教育を実施し、従業員の人権課題に対する実態調査を行いました。今後、グループ会社ごとに調査結果を分析し、課題の有無を特定するとともに、ハラスメント等の人権侵害が発生しない企業風土醸成の取組みを継続的に行ってまいります。なお、当社グループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項」において開示している「リスク管理体制の整備の状況」もご参照ください。

 

⑤ 指標及び目標

 当社は、人材戦略の実行と結果を測定するため、以下の項目をKPIとして設定しております。2025年度の目標達成に向けて、特にギャップが大きい当社における女性管理職比率に関しては、KPI達成に向けて2025年に新たにメンター制度の早期の導入検討とともに、積極的な機会提供を行うことで実効性のある人材登用の実現に向けて取組みを強化いたします。

 

[人材 KPI]

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*エンゲージメントの調査対象拠点は「ピジョン株式会社、PIGEON(SHANGHAI)CO.,LTD.、PIGEON SINGAPORE PTE.LTD.」

*上記記載の目標値は、エンゲージメントスコアを除き、全てピジョン株式会社

*男性の育休取得率は、厚生労働省が公表する「①育児休業等の取得割合」の算出方法より算出

*男性育休平均取得日数は、期中に子が1歳6か月を迎える男性社員の平均育児休業取得日数

 

[モニタリング指標]

 

≪グローバル≫

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*エンゲージメントの調査対象拠点は「ピジョン株式会社、PIGEON(SHANGHAI)CO.,LTD.、PIGEON SINGAPORE PTE.LTD.」

 

≪当社単体≫

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3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)出生数の減少

当社グループの主力事業である育児用品の製造及び販売事業は、国内及び海外での出生数の減少により総需要量(数)が変動し、売上高の減少を生じる可能性が考えられます。

 

(2)経済動向・社会・制度等の変化に関するリスク

現在、当社グループは日本をはじめ、タイ、中国、トルコ、インドネシア、インドで商品を製造し、さらに日本、アジア、オセアニア、中近東、北米、ヨーロッパを中心に国内外で事業を展開しております。日本事業・中国事業・シンガポール事業・ランシノ事業が持つリスクとしては以下のものが考えられます。当社グループも各事業におけるリスクに対しては可能な限りのリスクヘッジを講じてはおりますが、予期できない様々な要因によって当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

・当社グループにとって影響を及ぼす法律の改正、規制の強化

・テロ・戦争の勃発、既知及び未知の感染症・伝染病の流行による社会的・経済的混乱

・地震等の自然災害の発生

・予測を超える為替の変動

 

(3)天候・自然災害

当社グループの主力商品である育児及び女性向け用品、介護用品は天候からの影響は比較的軽微と考えられますが、突発的に発生する災害や天災、不慮の事故の影響で、製造、物流設備等が損害を被り、資産の喪失、商品の滞留等による損失計上により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

とりわけ、気候変動は世界共通の取り組むべき課題と認識し、2021年12月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、「ピジョングループTCFD Report 2024」及び当社のコーポレートサイトにおいてTCFD提言の枠組みに則った情報開示をしております。

 

TCFDレポート:https://www.pigeon.co.jp/sustainability/environment_top/warming/

 

(4)原材料価格の変動

当社グループの使用する主要な原材料には、原油価格やパルプ価格等の市場状況により変動するものがあります。それら主要原材料の価格が高騰することにより、製造コストが高騰し、また、市場の状況によって販売価格に転嫁することができない場合があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)製造委託先での事故

当社グループの主力商品である育児及び女性向け用品、介護用品の一部は外部に製造委託を行っております。品質には万全を期しておりますが、事前の予想を超えた品質事故が起った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)子育て支援に関するリスク

当社グループは、働きながら子育てをするご家族のため、保育、託児、幼児教育事業を展開し、多くの乳児、幼児をお預かりしております。そのため、安全には万全の配慮をしておりますが、乳児、幼児は予期しないケガをする可能性を秘めております。これまで当社グループの事業運営に影響を与えるような事故や補償問題は発生しておりませんが、将来にわたってそのような事態が発生しないとは言い切れず、そのような事態に陥った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)製造物責任に関するリスク

生活者向け商品のメーカーとして、商品の品質や安全性、商品の原料に関する評価は非常に重要であります。当社グループは商品の設計段階から量産に至るまで、品質、安全性の確保に万全を期しておりますが、商品に欠陥が発生した場合、もしくは予期せぬ事故が発生した場合には、商品回収等に伴う損失の計上や、顧客の流出による売上の減少など、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)訴訟に関するリスク

当社グループは、会社設立以来、多額の補償金問題など大きなクレーム又は訴訟等を提起されたことはございません。しかし、国内海外を問わず事業を遂行していく上では、訴訟提起されるリスクは常に内包しております。

万一当社グループが提訴された場合、また、その結果によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)情報システムのリスク

当社グループは、販売促進キャンペーンや赤ちゃん誕生記念育樹キャンペーン等多数のお客様の個人情報をはじめ、研究活動の成果や商品開発上の機密事項など、様々な重要情報を保有しております。当社グループは、これらの重要な情報の紛失、誤用、改ざん等を防止するため、システムを含めて情報管理に対して適切なセキュリティ対策を実施しております。しかしながら、停電、災害、ソフトウエアや機器の欠陥、コンピュータウイルスの感染、不正アクセス等予測の範囲を超えた出来事により、情報システムの崩壊、停止又は一時的な混乱、顧客情報を含めた内部情報の消失、漏洩、改ざん等のリスクがあります。このような事態が発生した場合、営業活動に支障をきたし、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)個人情報漏洩のリスク

当社グループは、生活者向け商品とサービスの提供を行っており、多くの個人情報を保有しております。日頃より全社員には個人情報保護の重要性の認識を徹底させ、社内教育受講の義務付け、顧客情報の管理の強化に努めておりますが、何らかの原因にて個人情報が外部に漏洩する可能性があります。個人情報が外部に漏洩するような事態に陥った場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)信用リスク

当社グループは、国内外の取引先と商取引を展開しており、取引先の経営破綻又は信用状況の悪化により当社グループが保有する債権が回収不能になるリスクがあります。このような事態が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における我が国の経済は、個人消費の一部に足踏みが見られるものの、緩やかに回復しております。世界経済においては、一部の地域では持ち直しが見られた一方、その先行きについては、欧米における高い金利水準の継続や中国経済の動向、アメリカの今後の政策動向の影響など、依然として不透明な状況は継続しております。

このような状況の中、当社グループは、2023年より「第8次中期経営計画(2023年12月期~2025年12月期)」を推進し、グローバルで急速に変化し続ける事業環境に柔軟に対応し、サステナブルな成長を確かなものとするため、3つの基本戦略(ブランド戦略、基幹商品戦略、地域戦略)の着実な実行による既存事業領域での持続的な成長に加え、自社の知見が活用できる新たな成長領域の探索・育成にも注力することで、事業構造の再構築を積極的に行っております。そして、事業の成長はもとより、私たちの存在意義である「赤ちゃんをいつも真に見つめ続け、この世界をもっと赤ちゃんにやさしい場所にします」を実現させるため、各施策の実行に取り組んでおります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ78億68百万円増加し、1,083億8百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ43億48百万円増加し、237億1百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ35億20百万円増加し、846億7百万円となりました。

b.経営成績

当連結会計年度においては、売上高は円安の影響を含め海外事業が牽引したことで1,041億71百万円(前期比10.3%増)となりました。利益面においては、増収による売上総利益の増加に加え、売上総利益率が前期比で1.2ポイント改善したことで販管費の増加を吸収し、営業利益は121億39百万円(同13.2%増)、経常利益は132億82百万円(同15.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は83億71百万円(同12.8%増)となりました。

また、ピジョンホームプロダクツ株式会社の新工場竣工に関連した自治体からの補助金の交付に伴い、当連結会計年度に、補助金収入6億98百万円を特別利益に計上するとともに、この補助金収入に係る固定資産圧縮損6億98百万円を特別損失に計上しました。

なお、2024年4月1日付で、当社が保有していたピジョン真中株式会社の全株式(議決権所有割合:67.0%)を丸光産業株式会社へ譲渡しました。本株式譲渡に伴い、中間連結会計期間より、当該会社は当社の連結範囲から除外しております。

なお、当連結会計年度の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替換算レートは次のとおりです。

・米ドル:151.48円(140.58円)

・中国元: 21.04円( 19.83円)

注:( )内は前年同期の為替換算レート

 

当社グループの報告セグメントは「日本事業」、「中国事業」、「シンガポール事業」及び「ランシノ事業」の計4セグメントとなっております。各セグメントにおける概況は以下のとおりです。

 

<日本事業>

当事業は、「ベビーケア」、「子育て支援」、「ヘルスケア・介護」等で構成されております。当事業全体の売上高は365億円(前期比1.0%減)、セグメント利益は19億98百万円(同0.4%減)となり減収減益で終了しました。

ベビーケア(育児及び女性向け用品)の売上高は前期を上回りました。ALPS処理水の影響が継続し、ベビースキンケアは主に越境ECなどの海外需要が低調となった一方、基幹商品である哺乳器・乳首の需要等は堅調に推移しました。ベビーケアの新規領域である育児家電カテゴリについては、販売が好調な「電動鼻吸い器 SHUPOT(シュポット)」に加え、8月より発売した、赤ちゃんの小さく柔らかい爪をやさしくケアできる「ベビー電動つめやすり」もご好評をいただいております。また12月には、日本国内市場シェアNo.1(自社調べ)の哺乳器シリーズ「母乳実感®」から、高級洋食器メーカーである鳴海製陶株式会社(NARUMI)と共同開発した日本で唯一(自社調べ)のボーンチャイナ素材(日本製)採用の「母乳実感ボーンチャイナ」を300本限定で発売するなど、お客様の価値観の多様化に応じた新たな製品づくりに継続的に取り組んでおります。

また、コミュニケーション施策の一環として、「インスタライブ」などの自社SNSを活用した商品紹介や販売促進に加え、小売店との共同開催によるプレママ・パパ向けセミナーや、医療従事者向けのオンラインセミナーを複数回開催するなど、継続的なブランド強化に取り組んでおります。

子育て支援においては、事業所内保育施設等53箇所にてサービスを展開しており、今後もサービス内容の質的向上を図りながら、事業を展開してまいります。

ヘルスケア・介護については、4月1日付で、当社が保有していたピジョン真中株式会社(在宅介護支援サービス)の全株式を丸光産業株式会社へ譲渡したことを受け減収となりました。介護用品販売においては、引き続きハビナースブランドを中心に排泄サポート、清潔サポート、食事サポート関連商品等の販売を推進し、今後も更なる小売店及び介護施設等への営業活動強化などの施策実行を徹底してまいります。

日本事業の中に含まれている海外向け輸出に関しては、引き続き主に中国向けにおいてALPS処理水による影響を受け売上高が減少しました。

当事業の利益については、主にベビーケアにおいて期初から続いた急激な円安の進行による調達コスト上昇の影響等により前期を下回りました。

 

<中国事業>

当事業の売上高は390億27百万円(前期比18.1%増)、セグメント利益は100億66百万円(同13.6%増)となり増収増益で終了しました。

主要市場である中国本土においては、前期のALPS処理水影響による売上高急減からの着実な回復に向け、継続的なブランド露出及び販売促進活動の強化を実施したことで、現地通貨の売上高は前期を上回りました。基幹商品である哺乳器・乳首、スキンケアの販売については、主力のベビー向け商品の強化に加え、出生数減少への対応策の一環である高月齢向け商品(エイジアップ)の強化も奏功し、前期を上回りました。また、消費者コミュニケーションでは、動画プラットフォームTikTokの中国本土版「Douyin(抖音)」や「RED(小紅書)」等のSNS上でのブランド露出の更なる拡大のほか、ライブコマース等のデジタルマーケティングの強化などを実施し、中国最大のECイベントである11月のダブルイレブン商戦では当社EC旗艦店を中心に販売が好調に推移しました。

なお、当事業が管轄する韓国及び北米市場においては、現地販売子会社を起点としたブランド強化及び販売・マーケティング活動に取り組みました。

当事業の利益については、中国本土での売上高回復を達成したことに加え、円安影響もあり前期を大幅に上回りました。

 

<シンガポール事業>

当事業の売上高は142億77百万円(前期比9.1%増)、セグメント利益は16億68百万円(同35.0%増)となり増収増益で終了しました。

当事業が管轄するASEAN地域及びインドでは、主要市場において前年から続いていた出荷調整が終了したほか、円安による為替効果もあり売上高は前期を上回りました。当事業が注力している基幹商品カテゴリにおいては、主要市場で哺乳器・乳首の「SofTouch™」シリーズ(日本における商品名:母乳実感®)のブランドリニューアルを引き続き推し進めたほか、7月よりオンラインを中心にシンガポールなどで発売を開始した「SofTouch™ Drinking Straw Set」及び「SofTouch™ Training Straw Set」(中国における商品名:自然離乳シリーズ)のプロモーション強化に取り組みました。また、スキンケアでは、当事業が注力する「ナチュラル・ボタニカル・ベビー」シリーズの販売強化に加え、新商品であるママ向けのスキンケア「ナチュラル・ボタニカル・マタニティ」シリーズの各国での露出増と販売促進に注力しました。引き続き、上位中間層以上のお客様をターゲットとし、基幹商品である哺乳器・乳首及びスキンケアを中心に積極的な販売・マーケティング活動を展開してまいります。

当事業の利益については、増収による売上総利益の増加に加え、円安影響もあり前期を上回りました。

 

<ランシノ事業>

当事業の売上高は214億30百万円(前期比16.0%増)、セグメント利益は17億31百万円(同19.1%増)となり増収増益で終了しました。

主力市場である北米においては、前期に発生した粉ミルク供給不足の解消に伴う反動減の影響が見られた一方で、さく乳器の新モデル及び産前・産後ケア商品等の販売が好調に推移したこともあり、現地通貨の売上高は前期を上回りました。また、ドイツ、英国を含む欧州においても、乳首クリームや産前・産後ケア商品の販売が好調に推移し、現地通貨の売上高は前期を上回りました。

北米においては、10月よりマタニティ・授乳用アパレルブランドであるKindred Bravelyとの協働により、ランシノのウェアラブルさく乳器と併用してハンズフリーでのさく乳が可能な上、普段の授乳ブラジャーとしても使える利便性を両立した画期的なさく乳ブラジャー「Kindred Bravely for Lansinoh Nursing & Wearable Pumping Bra」の発売を開始しました。引き続きランシノブランドの製品ラインアップを強化し、妊娠中及び産後の女性をより包括的にサポートすることを目指してまいります。

当事業の利益については、増収による売上総利益の増加に加え、円安影響もあり前期を上回りました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ48億43百万円増加し、392億1百万円となりました。

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は、142億81百万円(前年同期は145億3百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益128億72百万円、減価償却費46億71百万円等の増加要因に対し、法人税等の支払額34億27百万円等の減少要因によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出した資金は、11億37百万円(前年同期は54億48百万円の支出)となりました。これは主に補助金の受取額6億98百万円、有形固定資産の売却による収入4億65百万円等の増加要因に対し、有形固定資産の取得による支出20億66百万円等の減少要因によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出した資金は、106億39百万円(前年同期は102億56百万円の支出)となりました。これは主に配当金の支払額90億98百万円によるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

(生産実績)

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

 前年同期比(%)

日本事業(百万円)

9,284

90.0

中国事業(百万円)

12,582

124.3

シンガポール事業(百万円)

7,337

112.2

ランシノ事業(百万円)

2,455

124.7

合計(百万円)

31,659

109.3

(注)金額は製造原価によっております。

 

(受注実績)

当社グループは、主として見込みにより生産及び商品仕入を行っており、一部受注による商品仕入れを行っておりますが、受注残高は僅少であります。

(販売実績)

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 セグメントの名称

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

 前年同期比(%)

日本事業(百万円)

36,500

99.0

中国事業(百万円)

39,027

118.1

シンガポール事業(百万円)

14,277

109.1

ランシノ事業(百万円)

21,430

116.0

内部売上高消去(百万円)

△7,064

100.7

合計(百万円)

104,171

110.3

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 相手先

 前連結会計年度

(自 2023年1月1日

  至 2023年12月31日)

 当連結会計年度

(自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

ピップ株式会社

16,448

17.4

16,803

16.1

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容等

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は下記のとおりであり、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

1)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産の残高は、前連結会計年度末と比べ78億68百万円増加し、1,083億8百万円となりました。流動資産は86億61百万円増加し734億62百万円、固定資産は7億93百万円減少し348億46百万円となりました。

流動資産の増加の主な要因は、現金及び預金が48億43百万円、受取手形及び売掛金が39億79百万円それぞれ増加したことによるものです。

固定資産の減少の主な要因は、建物及び構築物が7億18百万円減少したことによるものです。

(負債)

当連結会計年度末における負債の残高は、前連結会計年度末と比べ43億48百万円増加し、237億1百万円となりました。流動負債は38億50百万円増加し173億83百万円、固定負債は4億98百万円増加し63億18百万円となりました。

流動負債の増加の主な要因は、支払手形及び買掛金が15億52百万円、未払金が14億18百万円、その他流動負債が9億2百万円それぞれ増加したことによるものです。

固定負債の増加の主な要因は、繰延税金負債が4億21百万円増加したことによるものです。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末と比べ35億20百万円増加し、846億7百万円となりました。

純資産の増加の主な要因は、利益剰余金が7億29百万円減少したものの、為替換算調整勘定が42億97百万円増加したことによるものです。

2)経営成績

(売上高及び売上原価)

当連結会計年度における売上高は、1,041億71百万円となりました。

セグメントごとに分析しますと、当社グループの主力セグメントである日本事業は、海外向け輸出(主に中国向け)におけるALPS処理水の影響継続による需要の弱含みや、在宅介護支援サービスを展開するピジョン真中株式会社の連結除外による減収もあり365億円、中国事業は、中国本土において前期のALPS処理水影響による売上高急減からの着実な回復に向け、継続的なブランド露出及び販売促進活動の強化を実施したことが奏功し390億27百万円となりました。

当連結会計年度における売上原価は、527億99百万円となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、392億33百万円となりました。

主に中国事業においてマーケティング活動の強化に伴う費用の積極的な使用等により、売上高比率は0.9ポイント増加し、営業利益は121億39百万円となりました。

(営業外損益、特別損益、経常利益及び税金等調整前当期純利益)

当連結会計年度の営業外損益は、助成金収入を7億15百万円、受取利息を3億55百万円計上したことにより、11億43百万円の利益となりました。

特別損益は、固定資産除却損を5億61百万円計上したことにより、4億10百万円の損失となりました。

これらの結果、経常利益は132億82百万円、税金等調整前当期純利益は128億72百万円となりました。

(法人税等、非支配株主に帰属する当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の法人税等は43億16百万円、非支配株主に帰属する当期純利益は1億84百万円となり、これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は83億71百万円となりました。

 

各セグメントの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

1)財政状態

(日本事業)

セグメント資産は、建物及び構築物の減少707百万円、未収入金の減少653百万円、土地の減少419百万円等により、前連結会計年度末に比べ1,856百万円減少の25,692百万円となりました。

(中国事業)

セグメント資産は、工具、器具及び備品が222百万円、商品及び製品が178百万円それぞれ減少したものの、受取手形及び売掛金の増加3,236百万円等により、前連結会計年度末に比べ2,942百万円増加の19,596百万円となりました。

(シンガポール事業)

セグメント資産は、受取手形及び売掛金の増加405百万円等により、前連結会計年度末に比べ402百万円増加の10,002百万円となりました。

(ランシノ事業)

セグメント資産は、商品及び製品の増加1,084百万円、受取手形及び売掛金の増加446百万円等により、前連結会計年度末に比べ1,604百万円増加の12,869百万円となりました。

 

2)経営成績

当連結会計年度におけるセグメントごとの経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b. 経営成績」に記載のとおりであります。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

1)資金需要

当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備資金需要の2つがあります。

運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための原材料の仕入のほか、製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用に係るものであります。また、設備資金需要としましては、主に生産設備の取得に伴う建物や機械装置等固定資産購入に係るものであります。

 

 

2)財務政策

当社グループは、堅固なバランスシートの維持、事業活動のための適切な流動性資産の維持を財務方針とし、主たる資金需要である運転資金及び設備資金につきましては、主として営業活動から得られるキャッシュ・フローを源泉とする内部資金によっておりますが、日本におけるグループ会社の資金不足は当社からの貸付けで、海外グループ会社の資金需要につきましても主に当社からの外貨建て貸付けにて対応しております。また、当社における手元資金は事業投資の待機資金であることを前提に流動性・安全性の確保を最優先に運用しております。

当社グループは、健全な財務体質、営業活動によるキャッシュ・フロー創出能力により、今後も海外事業を中心とする成長性を確保するために現在の手元流動性を超える投資資金需要が発生した場合でも、必要資金を調達することが可能であると考えております。

なお、2025年12月期の設備投資資金等の長期資金需要につきましては、内部資金をもって充当する予定であります。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、連結財務諸表作成に際しては経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告に影響を与える見積りが必要ですが、この判断及び見積りは、過去の実績を勘案するなど、可能な限り合理的な根拠を有した仮定や基準を設定した上で実施しております。しかしながら、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点の見積りと異なる場合も考えられます。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

なお、当社グループの経営に影響を与える大きな要因として、当社グループの主力事業の1つである国内育児用品の販売事業は、出生数の減少により総需要量(数)が変動し、売上高の減少を生じる可能性が考えられます。このような市場環境の下、これまで約70年にわたる育児研究から生まれた競争優位性を発揮できる新商品の開発及び発売、カテゴリ拡大による事業の安定的な成長に努めてまいります。

また海外市場におきましては、海外各国における経済、社会情勢の変化、為替変動、新興国の経済成長に伴う原材料需給状況の変化等により売上高、利益額の減少が生じる可能性が考えられます。当社グループの事業成長継続のため、各市場に合わせた商品の開発と供給体制の整備・充実、及び、ブランド力強化と販売活動の一層の拡大が重要と考えております。

また、当社グループは、保育、託児、幼児教育事業などを展開し、多くの乳幼児等をお預かりしておりますが、このような事業は予期せぬ事故が発生する可能性があります。これまでには、震災などの自然災害によるものを含め、業績に影響を与えるような事故等は発生しておりませんが、将来にわたってそのような事態が発生しないとは言い切れず、そのような事態に陥った場合、当社グループの経営成績に与える可能性があります。

 

(経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

 当連結会計年度(2024年12月期)は引き続き、本中期経営計画のテーマである既存領域の強化、新規領域の拡大にグローバルに取り組んだほか、中国事業の売上高の回復を最重要テーマに成長投資を徹底的に投下したことにより、売上高は104,171百万円、営業利益は12,139百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は8,371百万円、PVAは4,353百万円、EPSは70.00円、ROE10.5%、ROICは10.3%となりました。

 

 

2024年12月期

計画

2024年12月期

実績

2024年12月期

計画比

売上高(百万円)

101,000

104,171

3.1%増

営業利益(百万円)

11,400

12,139

6.5%増

親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

7,600

8,371

10.1%増

PVA(百万円)

(Pigeon Value Added)

3,938

4,353

10.5%増

EPS(円)

63.54

70.00

6.46円増

ROE(%)

10.0

10.5

0.5ポイント増

ROIC(%)

10.0

10.3

0.3ポイント増

(注) ROICの算定に使用する法人税率は30%としております。

 なお、2023年12月期を初年度とし、2025年12月期を最終年度とする第8次中期経営計画にて掲げた主な経営指標は次のとおりですが、2023年に発生したALPS処理水放出に起因する中国での風評被害影響など、想定外の課題にも直面し、最終年度である2025年度の当初目標達成は難しい状況です。

 

当初目標

2023年12月期

2024年12月期

中期経営計画目標

2025年12月期

売上高(百万円)

100,000

106,500

113,800

営業利益(百万円)

12,400

14,000

16,000

親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)

8,100

9,100

10,400

PVA(百万円)

(Pigeon Value Added)

4,816

6,070

7,437

EPS(円)

67.70

76.05

86.92

ROE(%)

11.0

12.8

14.5

ROIC(%)

11.8

13.3

15.1

(注) ROICの算定に使用する法人税率は30%としております。

 2025年12月期の業績見通しにつきましては、当連結会計年度の業績を踏まえ、売上高109,700百万円(前期比5.3%増)、営業利益12,900百万円(同6.3%増)、経常利益12,900百万円(同2.9%減)、親会社株主に帰属する当期純利益8,400百万円(同0.3%増)と予想しております。第8次中期経営計画期間の最終年として、各事業において取組みの成果を最大限創出するとともに、本中期経営計画期間に新たに顕在化した課題に対処し、次期中期経営計画も視野に入れた成長への布石を打ってまいります。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発の基本姿勢は、妊娠、出産から子育て、そして高齢者、介護などの生活シーンにおいて生活者の研究を核に新たなニーズを掘り起こし、技術シーズの裏付けを持った新しい商品及びサービスを生み出すことにあります。

中央研究所を拠点とする開発本部では、グループの各開発部門と連携しながら、効率的かつ迅速な商品開発の実現を図ることでグローバル市場での競争優位性の実現を目指しております。特に、当社の商品開発の核となる赤ちゃんの哺乳・授乳に関する基礎研究については専任の開発組織を設置しており、そこで得たナレッジをグローバルに展開することで、永続的に開発可能な体制の強化を図っております。

また、当社では開発本部とともにSCM(サプライチェーンマネジメント)本部において、新商品開発時における商品評価及び量産化後の品質管理を担っております。研究開発から量産化に至る一貫した商品開発体制を備えることにより、各拠点の現地開発体制も含めたグループ全体の商品開発機能の中枢を担っております。

さらに、当連結会計年度よりグローバルヘッドオフィス(GHO)に新たにブランドデザイン部を設置し、ブランド戦略と事業戦略の一体化を推進し、「商品を買ってもらう」から「ビジネスに共感し、選んでもらう」ブランドへの更なる進化に寄与すべく、各事業の商品戦略とは異なるアプローチで、商品開発等に取り組んでおります。

日本事業、中国事業、シンガポール事業、ランシノ事業及びグローバルヘッドオフィス(GHO)それぞれの役割と責任を明確にすることで、商品企画、商品開発、品質管理も各地で完遂する仕組みを構築しながら、市場の変化を先取りするべくスピードアップを目指すと同時に、研究開発活動において異なる強みを持つ各事業・部門が連携し、更なるシナジーの創出を可能にしてまいります。

今後も、グローバルに安心・安全な商品の提供を目指し、グループ全体の研究開発体制を更に強化してまいります。

なお、研究開発に携わる人員の総数はグループ全体で263名となっており、当連結会計年度における研究開発費の総額は3,415百万円となっております。事業セグメント別の研究開発活動状況は以下のとおりです。

 

(日本事業)

日本市場では、基幹商品である哺乳器・乳首カテゴリより、日本国内市場シェアNo.1(自社調べ)の哺乳器シリーズ「母乳実感®」から、高級洋食器メーカーである鳴海製陶株式会社(NARUMI)と共同開発した日本で唯一(自社調べ)のボーンチャイナ素材(日本製)採用の「母乳実感ボーンチャイナ」の発売など、新たな素材・形状の哺乳器開発に挑み続けております。日本市場で注力している新規領域の育児家電カテゴリにおいては、赤ちゃんの小さく柔らかい爪をやさしくケアできる「ベビー電動つめやすり」の発売に向けた活動など、業界のリーディングブランドとして、お客様の価値観の多様化に応じた新たな製品づくりに継続的に取り組みました。また、介護用品ブランド「ハビナース」より、加齢による歯周病などの口腔トラブルを予防する「薬用口腔ケアジェルプラス」などの口腔ケア用品や、起床後の洗顔ケアを手軽に行える高齢者向け顔拭きシート「朝用お顔すっきりシート」を新たに発売するなど、引き続き消費者・介護者のニーズに寄り添った新商品開発及び商品ラインアップの拡充に向けた活動を行いました。

この結果、当連結会計年度の研究開発費は1,764百万円となりました。

 

(中国事業)

中国市場では、基幹商品である哺乳器・乳首カテゴリより、ディズニーデザインの哺乳器などの発売に向けた活動を行いました。スキンケアカテゴリでは、中国本土で人気の「桃の葉シリーズ」において新商品を発売したほか、寒い季節の赤ちゃんのデリケートな肌の乾燥や赤みなどのケアができる「ベビーウルトラフェイシャルクリーム」の発売に向けた活動を行いました。また、ベビー向け商品に加え、出生数減少への対応策の一環であるエイジアップ商品の充実も継続的に強化し、キッズ向けのスポーツストローマグや保温マグなどを発売しました。

この結果、当連結会計年度の研究開発費は1,006百万円となりました。

 

(シンガポール事業)

シンガポール事業では、ASEAN地域及びインド市場などにおいて、基幹商品である哺乳器カテゴリのフラッグシップモデルである「SofTouch」(日本における商品名:母乳実感®)シリーズのブランド刷新に関する活動を行いました。製品ラインアップやパッケージを一新したほか、ボトル素材にはバイオマスプラスチックを20%使用するなど、哺乳器のリーディングブランドとしてサステナビリティを体現した商品の開発にも取り組んでおります。また、スキンケアカテゴリにおいては、自然由来で赤ちゃんの肌にやさしく、地球環境にもやさしいスキンケアシリーズ「ナチュラル・ボタニカル・ベビー」に加え、新たにママ向けの「ナチュラル・ボタニカル・マタニティ」シリーズの展開を開始するなど、各市場に向けて積極的な研究開発を実施しました。

この結果、当連結会計年度の研究開発費は315百万円となりました。

 

(ランシノ事業)

ランシノ事業では、電動さく乳器の新モデル「Discreet Duo」や、純銀製の乳首保護カップ「Silverette Nursing Cups」を主要市場で発売するなど、母乳関連カテゴリの開発強化に取り組みました。また、北米においては、女性のためのウェルネスティーブランドとして有名な英国のHotTea Mamaブランドと協働し、マタニティ・ママ向けのオーガニックハーブティー「Morning Rescue Pregnancy Tea」など全3商品の発売を新たに開始しました。妊娠中及び産後の女性をより総合的にサポートすることを目指し、更なる新規商品カテゴリ探索に向けた活動や、多様なニーズのある市場に向けて積極的な研究開発活動を行いました。

この結果、当連結会計年度の研究開発費は270百万円となりました。

 

(全社)

当社グループの基幹商品である哺乳器のグローバル商品開発を行ったほか、日本市場の育児家電カテゴリの拡大のために、電動爪やすりなどの開発サポートも積極的に行いました。

この結果、当連結会計年度の研究開発費は59百万円となりました。