第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 (1)経営方針

当社グループは「優れた製品を供給して社会に貢献する」ことを社是とし、「会社と社員の永遠の繁栄をはかる」ことを行動の基本方針としています。このような考え方を大切にし、主に産業用切削工具の分野で地道な努力を続けてまいりました。今日では、プリント配線板用超硬ドリル(PCBドリル)分野において世界のリーディングカンパニーとなっています。

今後とも「モノ造り」に専心し、高品質、高レベルな製品・サービスを柔軟に適時に提供することで、グローバルな市場の中、価値ある企業であり続けたいと願っております。

 

 (2)目標とする経営指標

当社グループは、売上高や営業利益などの絶対額と売上高営業利益率を重要な経営指標としており、各項目の着実な向上を目標としております。

 

 (3)経営環境

当社グループは前述のとおり、産業用切削工具、とりわけPCBドリルを主力製品としておりますが、これらは電子機器業界および自動車業界の影響を受けています。両分野とも今後の技術革新により更なる拡大が期待される業界であり、当社グループ製品に対する需要も増加するものと思っております。技術革新は、より高付加価値な産業用切削工具を求め、切削性・耐久性のレベルアップはもとより、それらのバランスも必要としています。当社グループは切削工具を製造する設備自体を自社で開発・製造しており、60年以上のノウハウをこの自社設備に集約させ、お客様の望む各種の品質要求を満たしてまいりました。この「技術に技術を上乗せ」していくノウハウの蓄積が、競合他社に対しての優位性を確固たるものとし、今後とも時代要請である技術向上の下支えに貢献していけるものと思っております。

金融政策の転換、中国の内需停滞、米国新政権による保護主義的な政策動向、急激な為替変動、地政学的リスクといった不透明な状況が懸念されますが、当社グループが関連する半導体市場では、高品質・高技術志向の高まりが感じられます。このような付加価値の高い需要を取り込むべく、企業体質の更なる強化を図ってまいりました。今後とも当社グループの成長を確固たるものにするとともに、企業を取り巻く社会からの要請事項に応えてまいります。

 

 (4)対処すべき課題

1.当社グループ製品の付加価値向上と生産設備内製化技術の深化による生産能力の増強

生成AIの普及に関連する半導体需要が市場の伸びを牽引しており、今後も当社グループの主力製品であるコーティング製品の増産が課題となることが予想されます。増産には次世代加工機の増設と安定的な稼働が必須となり、今まで培ってきた技術開発と生産設備内製化の強みを活かした高効率な生産体制を引続き展開していきたいと思っております。

 

2.海外拠点での生産・物流面での強固な連携とグローバルな視点に立った営業戦略確立および遂行

当社グループのコーティング製品への需要が拡大しており、そちらへの供給能力確保が課題となることが予想されます。コーティング製品以外の製品の海外子会社での生産対応や、戦略的なグローバルレベルでの顧客割当を行う必要性が高まっております。今後も引き続きグループ全体の調和を確保するための統制をより強化してまいりたいと思っております。

 

3.産業用切削工具分野で培ったノウハウとブランド力の更なる向上と次世代製品の投入強化

当連結会計年度においてもPCBドリルおよびエンドミルの全売上高に占める割合が高くなっております。産業用切削工具は常に最先端技術を必要とする分野となりますので、これまで培ったノウハウを更に向上させ、次世代製品の投入強化につなげていきたいと考えております。

 

4.社会的要請事項への対応推進による企業価値の持続的向上

企業を取巻く社会からの要請事項にお応えしていくことが、当社が掲げる「会社と社員の永遠の繁栄」達成のために必要だと考えております。この考えを広く社内外で共有し、これからも弊社が必要とされ続けるための推進体制をしっかりと活用し、社会的要請事項への対応強化を図ってまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

  当社は、サステナビリティ基本方針を定め、その具体化に向けた動きをサステナビリティ委員会で推進しています。この委員会は、委員長を代表取締役社長が務め、委員をサステナビリティ推進のために主要な役割を果たす各部門の状況を理解し、十分に把握している取締役、執行役員を中心に構成しており、取締役会での諮問機関の位置付けをとっております。また、委員会のもと環境、社会、企業統治の主要3テーマごとに部会を設置して、専門的で効率的な推進が図れるようにしております。

 

(2)戦略

①気候変動

  当社は、2023年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明し、気候変動が当社の事業経営に与える影響を「シナリオ分析」を用いて評価いたしました。「国際エネルギー機関(IEA)」や「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」等の外部機関が公表している気候関連シナリオを参考に、2050年頃までに想定されるリスクと機会を抽出し、これらにおける対応策をまとめております。

詳細は当社ホームページにてご確認ください。

 https://www.uniontool.co.jp/sustainability/tcfd.html

 

②人的資本

開示制度の充実が進むなかで、以下の人的資本に係わる方針のもと、定量情報の整理・算定・公開を行っております。

<人材育成方針>

  私たちユニオンツールは、企業倫理の安定的、継続的な実現のために専門性と創造性に富み、
誠実さと挑戦心を兼ね備えた人財の育成と登用を図ります。

<社内環境整備方針>

  私たちユニオンツールは、健康で明朗、活気に満ちた職場づくりのために組織風土を醸成し、
個々の人格と個性を尊重した人事制度や労働環境の維持向上を推進します。

 

(3)リスク管理

  各部門所管業務に付随するリスク管理は担当部門が行いますが、組織横断的なリスク管理またはリスク管理のための重要な基礎的事項については、取締役会が決定・実施しております。取締役会は、この決定・実施の実効性を高めるため「リスク管理規程」を制定し、諮問機関として、「リスク管理委員会」を設置しております。

  気候変動に関するリスクについては、毎年、環境部会が「リスクと機会」の分析・評価および見直しを行っております。分析・評価の内容はサステナビリティ委員会に報告するとともに、関連部門と連携し環境課題への取り組みに活かしております。

 

(4)指標及び目標

①気候変動

  当社では、環境への影響を評価・管理するための指標として、生産活動で排出する二酸化炭素量や製品の寿命を用いています。

  また、事業活動に伴って発生する環境負荷をインプットからアウトプットにわたって把握・監視しており、省エネルギー化、リサイクル化、省資源化などを推進して、効果的な環境負荷低減活動が行えるよう努めています。

  二酸化炭素排出量削減については、重点課題である省エネルギー化の取り組みとして、単位生産二酸化炭素排出量を2019年比で5%削減(5か年計画)する目標を設定し、最終年度である2024年において達成しました。

詳細は当社ホームページにてご確認ください。

 https://www.uniontool.co.jp/sustainability/tcfd.html

 

②人的資本

当社は、上記「(2)戦略」において記載した人材育成方針と社内環境整備方針について、4つの視点により指標を定め、実績を確認することで現状把握に努めております。下記が指標と実績の一例となります。

 

区分

指標

2022年度

2023年度

2024年度

ダイバーシティ(多様性)

正社員中途採用率

34.8%

33.3%

61.8%

人材育成・成長環境

社員一人あたりの
教育訓練費

37,895円

35,840円

54,672

働きやすさ

平均残業時間(月)

21時間36分

14時間42分

21時間6分

健康・安全

休業を伴う
労災発生件数

2件

1件

0

 

  (注)1 当該指標に関する実績は、提出会社である当社のみを対象としたものであります。

    2 女性管理職比率、男性育児休業等取得率、男女間賃金格差については、「従業員の状況」に記載
  しております。

 

 

 

2024年度は、PCBドリルの需要拡大で残業時間が増加しました。新卒以外に中途採用も積極的に行うと共に生産の効率化を進め残業時間の低減に取り組んでまいります。

また、当社は、製造職や技術職の人員が多く在籍している工場を有しており、会社全体の女性比率が低いことから、女性の登用を重要課題として取り組んでおります。2027年3月までに、採用者に占める女性比率を30%以上とし、次世代管理職候補者の女性比率を会社全体の女性割合率までに引き上げ、さらに会社全体の女性管理職(当社管理値)比率を15%とすることを目標に掲げております。性差による無意識の偏見をなくす取り組みなど、職場環境の改善を図るための施策も行っております。なお、女性の登用以外の指標に関しましても、今後具体的な目標値を検討し、誰もが平等に活躍し、意欲的に長く働ける職場づくりに取り組んでまいります。

 

   上記以外の指標も含め、人的資本に関する指標の実績は、当社ホームページで情報を開示しております。

   https://www.uniontool.co.jp/sustainability/employee.html

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応を迅速かつ効果的に実施する所存であります。なお、本文中における将来に関する事項は有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

①製造業の生産動向

当社グループの主な製品は、プリント配線板用超硬ドリル(PCBドリル)や超硬エンドミルなどの産業用切削工具とその他製品である転造ダイス・測定機器などであります。このため、経営成績等は、製造業全般の生産動向や工場稼働率の動向により影響を受けています。

生産動向の強弱を決める要因は、消費者の嗜好変化、政治経済動向、燃料価格の上昇や部材不足などの生産側の問題、大規模自然災害等多岐にわたります。当社グループは、どんな緊急時でも完全にストップする可能性が少ない消耗工具での事業展開に注力することで一定の業績を確保してまいりました。また、需要の急激な変化が常態であるとの認識を共有し、製販一体となった需要動向の精査と予測精度の向上を果たしつつ、見込生産を実施しております。その他、流通分を含めた在庫把握体制の強化やリードタイムの短縮に注力しております。

 

②PCBドリルへの依存体質

当社グループの売上高の約7割がPCBドリルになっており、今後しばらくはこうした状況が続くものと予測されます。このため、同製品の主要市場であるプリント配線板市場の生産動向に、当社グループの経営成績等は影響を受けています。近年、プリント配線板は高品質・高密度傾向が強く、その用途も拡大している分野で、お客様の要求もめまぐるしく変化し、多岐にわたっています。

当社グループは、PCBドリル分野で唯一世界展開を果たしている企業グループであり、生産設備の内製化(製造業の自由度を圧倒的に高めることができると考えております。)という特色を持っています。世界からの情報と内製技術の蓄積により高付加価値製品の一早い開発・製造が可能になっており、このような体制を強化することで競合他社に対する競争優位性を保てるものと思っております。

また、プリント配線板には、近年、技術革新が起こっています。このため予測し難いことではありますが、プリント配線板の技術開発動向も経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

技術革新要求は一定の地域で起きており、また、その要求を満たすための新技術・新製品はこれまでの技術の積重ねによって生み出されるものであることから、現在トップメーカーの地位にある当社が突然厳しい立場になることはないと考えておりますが、業績の更なる安定のために対象市場が異なる超硬エンドミルや転造ダイス製品の拡大にも注力しています。

 

③日本を含むアジア向け売上高が高いこと

連結売上高の約9割が、日本を含むアジア向けとなっています。世界的にこの地区への製造業シフトが見られ、このような傾向は止むをえないものと考えております。このような状況から、この地区での政治的・経済的・社会的変化や法規制等の変更および天変地異の発生などにより、当社グループの経営成績等に影響が及ぶ可能性があります。

当連結会計年度においては、西側諸国と中国・ロシアの対立など複数の地政学リスクが顕在化し、特に当社グループに関連深い東アジアでの動きがめまぐるしく変化していました。この変化の後も不透明感が高い状況にありますが、短期的な業績のブレは懸念されるものの、中期的にはアジア地区からの需要の拡大が期待されています。

 

④製品価格の下落傾向があること

プリント配線板は電子部品の電気的導通のベースとなるものであり、電子機器製品に必ず搭載されています。電子機器製品の本体価格は恒常的に低下する傾向にあり、搭載の各種部品・半導体等も同様の傾向にあります。このような状況下、主力のPCBドリルに対しても厳しい値下げ圧力がかかっています。当社グループは、品質・技術・サポート体制・供給力の強化を図り、少しでも価格競争による影響を回避すべく努力しておりますが、製品価格の下落が当社経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、上記②において当社グループ製品の高付加価値新製品に対する期待の高まりがあることを記載していますが、業界全般の価格推移に対する抵抗力が発揮できる地合いが出てきているものと思っています。今後とも価格下落圧力に対応できる新製品の開発・投入を進めてまいりたいと思っています。

 

 

⑤原材料価格動向

当社グループ製品の主要原材料は超硬合金「タングステンカーバイド」であり、タングステン鉱石の市場価格変動の影響を受け調達価格が変動します。当社グループは、高まる製品供給責任を重く受けとめ、安定した材料調達努力を続けておりますが、急激な需要増、供給量の低下など原材料価格の高騰があった場合には、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、原材料の一括購入、リサイクル材の活用および新材料の採用の試みなどを引続き強化してまいります。

 

⑥製造ノウハウ等が一つの拠点に集中していること

自社製機械設備製造の大部分および技術開発の大部分が、新潟県長岡市の長岡工場に集中しています。製造・技術一体となった効率高い生産設備の開発、最先端技術製品の市場に先んじての投入など、集中させているメリットは十分にあると考えていますが、同地区の地理的環境や物流網への変化・支障が生じた場合、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

近年、異常気象の発生や記録的大雪などが各所で問題になっていますが、新潟県長岡市は、同市独自の「消雪パイプ」道路網の整備が完了しているなど自然災害への備えが進んでいる地区であります。当社長岡工場でも大雨による水害対策の整備に乗り出しており、備えを厚くしています。

 

⑦為替レートの変動について

外貨建売上高と海外子会社の現地通貨建決算書類の連結において、為替レートによる円換算を行います。急激な為替レート変動などがあった場合、当社グループの経営成績等に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

(経営成績)

当連結会計年度における事業環境は、経済活動の緩やかな回復が感じられながらも、欧州経済の伸び悩み、中国の長引く経済不振、中東での紛争、またそれらが及ぼす影響は各国の金融政策や為替変動など顕著に現れました。今後も米国の政権交代による政策変更も懸念され、依然として先行き不透明な状況が続くと予想されます。

当社グループに関連深い電子機器業界においては、スマートフォンやパソコンを中心とした最終需要の回復が鈍く、ロジック半導体向け、メモリー向け需要が低調な一方で、データセンターのサーバー向けパッケージ基板および高多層基板など生成AIの普及に関連する半導体需要が市場の伸びを牽引しました。

このような市場環境のもと、当社グループの高付加価値工具への需要増加の状況が続き、生産能力の増強と拠点間の連携強化により供給能力の確保に努めてまいりました。高収益品である高付加価値工具の増販と販売比率上昇、生産拠点での稼働率向上による原価低減効果により、収益力の拡大につながり、前年同期と比べ、大幅な増収増益となりました。

このようなことから、当連結会計年度の売上高は32,606百万円(前期比28.7%増)と過去最高額を更新し、営業利益は6,878百万円(同82.1%増)、経常利益は7,132百万円(同75.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は5,283百万円(同71.7%増)となっております。

次にセグメント別の状況ですが、日本では、生成AI市場の拡大により好調な業績をあげることができました。売上高(セグメント間取引消去額を含む。以下同じ。)は22,434百万円(前期比27.1%増)となり、セグメント利益(営業利益)は4,989百万円(前期比79.3%増)となっております。

日本を除くアジア地区では、生成AI関連市場の拡大による当社グループの高付加価値工具への需要の高まりと現地工場の稼働率上昇により、売上高は18,244百万円(同49.6%増)となり、セグメント利益は1,516百万円(前期279百万円)となっております。

その他、北米地区の売上高は2,019百万円(同18.3%増)、セグメント利益は172百万円(同12.3%増)となり、欧州地区の売上高は2,239百万円(同5.4%増)、セグメント利益は193百万円(前期31百万円)となっております。

 

(財政状態)

 a. 資産の部

当連結会計年度末の資産合計は、78,863百万円(前連結会計年度末比8,258百万円増)となりました。

流動資産合計は41,205百万円(同1,665百万円増)となりました。主な変動要因は、現金及び預金(同1,400百万円減)、受取手形及び売掛金(同2,999百万円増)であります。

固定資産合計は37,658百万円(同6,593百万円増)となっております。このうち、有形固定資産合計は26,258百万円(同1,796百万円増)となり、投資有価証券(同4,683百万円増)を含む投資その他の資産合計は11,324百万円(同4,806百万円増)となっております。

 b. 負債の部

当連結会計年度末の負債合計は5,726百万円(前連結会計年度末比2,401百万円増)となりました。
  流動負債合計は5,032百万円(同2,330百万円増)となり、固定負債合計は694百万円(同70百万円増)となっております。

 c. 純資産の部

当連結会計年度末の純資産合計は73,136百万円(前連結会計年度末比5,857百万円増)となりました。株主資本合計が64,834百万円(同3,778百万円増)、その他の包括利益累計額合計が8,301百万円(同2,078百万円増)となっております。主な変動項目は利益剰余金(同3,780百万円増)と為替換算調整勘定(同1,512百万円増)であります。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,292百万円減少し、当連結会計年度末現在17,966百万円となっております。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動の安定と利益向上を主因として、7,283百万円の収入(前年同期比2,595百万円の収入の増加)となっております。主なキャッシュ・イン項目は、税金等調整前当期純利益6,904百万円、減価償却費2,906百万円であり、主なキャッシュ・アウト項目は、売上債権の増加額2,498百万円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、7,269百万円の支出(同2,258百万円の支出の増加)となりました。有形固定資産の取得による支出4,102百万円および投資有価証券の取得による支出3,875百万円が主な変動要因となっております。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,678百万円の支出(同64百万円の支出の増加)となりました。配当金の支払額1,503百万円が主な変動要因となっております。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

  a. 生産実績

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

日本

21,239

+29.6

アジア

9,383

+42.8

北米

 欧州

合計

30,622

+33.4

 

(注)1 当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照願います。

 

  b. 受注実績

当社グループは一部の受注に見込み分を上乗せした見込み生産が主体であります。従いまして、当該事項の記載は省略しております。

 

  c. 販売実績

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

日本

11,028

+10.8

アジア

17,318

+49.9

北米

2,019

+18.3

欧州

2,238

+5.4

合計

32,606

+28.7

 

(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 当連結会計年度において、販売実績に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状況」4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照願います。

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。

 

① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度は、売上高が前期比28.7%増となる32,606百万円となり、営業利益が前期比82.1%増6,878百万円という実績になっております。

世界経済の緩やかな正常化が見られたものの、中国の経済不振、欧州や中東での紛争、また各国の政治情勢は金融政策や急激な為替変動等に波及しました。米国新政権に対する懸念もあり、先行きは依然として不透明な状況となりました。当連結会計年度における当社グループをとりまく事業環境は、スマートフォンやパソコンを中心としたデジタルモバイル機器の最終需要の回復が鈍く、ロジック半導体向けやメモリー向け需要も伸び悩みました。その一方で生成AIの普及に伴い、データセンターのサーバー向けパッケージ基板および高多層基板などの需要が大きく伸びました。この生成AI関連市場への半導体需要が力強く、市場の伸びを牽引しました。

当社グループは、顧客からの高付加価値工具への高まる需要に対して、生産設備を内製化している強みを活かしたスピード感ある設備投入とグローバルな生産体制構築によって対応いたしました。特に当社グループの戦略製品である高付加価値のコーティングドリルの需要は、当連結会計年度を通じて伸び続け、大幅な増収増益に寄与しております。この動きは想定を上回るもので、四半期業績報告の度に開示予想値を修正させていただくことになりました。年度末の為替レートが想定より円安となった効果もあり、確定した実績は第3四半期末時点での修正開示予想値を売上高予想で8.3%、営業利益予想で10.9%上回るものとなりました。

今後も期待される生成AI関連の需要動向を的確に見極め、半導体パッケージなどの高度な電子部品向けの高付加価値工具の需要増加に備えた準備を進めてまいります。当社グループの得意とする品質・技術での差別化戦略を継続的に推進するとともに、最新の生産設備の増設と更新を計画的に行っていきます。最新鋭の生産設備導入により省人化を実現して生産性向上を図り、生産数量の拡大を図ってまいりたいと思っております。


② 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要の主なものは超硬合金などの原材料の購入費用であり、その他は製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資のための資金需要の多くは、内製している生産設備向けとなっております。当連結会計年度は、内製生産設備向けの投資に加え、新潟県見附市に2,933百万円を投じて見附第三工場を竣工いたしました。当社グループは、非常に激しい需要変動にさらされており、資金に対しては十分な流動性と自由で迅速な意思決定を可能にする柔軟性の確保を重視しており、主に自己資金による財源確保を進めております。また経費節減やスリム化の努力も重ね、当連結会計年度末現在の現金及び現金同等物の残高は前期末比1,292百万円減となる17,966百万円となっております。

 

③ 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積が行われている部分があり、資産・負債や収益・費用に数値は反映されております。これらの見積もりについては、継続的に評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積もりには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

イ 固定資産の減損

固定資産の減損の兆候がある資産又は資産グループについて、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。過年度の損益実績や事業計画に基づき検討しておりますが、市場環境の変化等により、事業計画の前提条件に変更が生じた場合には、減損損失の計上が必要となる可能性があります。

ロ 繰延税金資産の回収可能性

今年度の課税所得の実績や事業計画に基づく課税所得の見積りに基づき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異について繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積りの前提条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産を取り崩し税金費用の計上が必要となる可能性があります。

 

ハ 棚卸資産の評価

棚卸資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とし、期末における正味売却価額が取得原価よりも下落している場合には、当該正味売却価額をもって貸借対照表価額としております。また、一定期間を超えて保有する棚卸資産については、収益性の低下の事実を反映するために、過去の販売・使用実績及び製品群ごとのライフサイクル等に基づき決定した方針により規則的に帳簿価額を切り下げております。しかし、当初想定できなかった生産需要や経済情勢等により、前提となるライフサイクルに変更が生じる場合、更なる帳簿価額の切り下げが必要となる可能性があります。

ニ 賞与引当金

当社の賞与引当金は翌期上期賞与に対する引当金でありますが、当社の営業利益見込み(業績予想)を用いて算定しております。業績予想については経営者の最善の見積もりと判断により行われますが、将来の不確実な経済情勢の変動の結果によって影響を受ける可能性があり、見直しが必要となる可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動は、主力である切削工具については、多様化する市場ニーズに対して競争力ある製品を投入すべく、あらゆる面での強化を図りました。切削工具以外の製品については、品質・技術による差別化を基本戦略とし、引き続き新製品の開拓を目指して注力を続けております。

 

(1) 切削工具関係

プリント配線板用ドリルにおきましては、AIサーバーやデータセンター向けのFC-BGAパッケージ基板、ならびに高多層マザーボード基板に使用されるULFコートドリルの性能向上に注力しました。FC-BGAパッケージ市場においては、加工難易度が高い新しい基板材料の採用が増加することで、加工効率の向上がより一層求められるようになりました。これに対応するため、ユーザーと緊密に連携してドリル開発を進め、加工条件の最適化を図る技術サポートを強化しました。高多層マザーボード市場では、銅箔層数の増加とともに厚板化が進み、さらにドリルの小径化が求められたことから、ULFコートドリルの有効性が改めて評価され、採用が増加しました。またルーターでは、直径φ1.0mm未満の小径ルーターのニーズが増し、小径領域で高い性能を発揮する設計手法を確立しました。今後も、難易度の高い加工ニーズに対応できる工具開発に努めてまいります。

超硬エンドミルにおきましては、長寿命と高品質を追求した製品開発に加え、お客様からのコストダウン要求に応えるための研究開発を推進してまいりました。長寿命かつ高品質を達成する製品として2023年に発売したCWLBシリーズでは小径サイズのラインナップを拡張しました。CWLBは、生材から40HRCのプリハードン鋼に対応する2枚刃ボールロングネックタイプであり、新たなサイズ追加により一連のサイズにおいて高い加工面品位を得ることができ、小径の金型加工や精密部品加工のユーザーから好評を得ています。また、高硬度材料の金型加工の仕上げ工程で使用されるCBNシリーズには、4枚刃ボールCBN-LBF4000を新たに追加しました。

コストダウン要求に対しては、従来品と同等の精度と機能性を保ちつつも価格を半額としたφ3シャンクの『Vシリーズ』に、ボール形状4シリーズ、ラジアス形状1シリーズを追加しました。また、部品加工向けにスクエア形状のCEHSを開発しました。独自の溝形状により高い切りくず排出性と工具剛性を両立させ、従来品に比べて高能率かつ高品質な加工を可能にし、更なる効率的な作業が可能となりました。

これらの開発を通じてお客様の要求に応えるための品質向上とコストダウンを推進し、更なる製品の開発に取り組んでまいります。

 

(2)その他の製品関係

 転造ダイスは、市場ニーズに対応し、ダイスの耐久性と精度の向上を目指し、継続的な改善を行っています。これにより、自動車部品産業において、特にパワーウインドウやパワーシートに使用されるウォームギア用ダイスの市場において、お客様からの信頼と高評価を得ています。

 衝突被害軽減ブレーキや電動パワーステアリングに使われるボールねじ用ダイスに関しても、その需要は近年増加しています。ここでも、特に精密な形状精度がお客様から高く評価されています。

 さらに、当社のスプライン・セレーション用ダイスは、中空ワークの転造加工に対する優位性を備え、特許を取得しています。従来の標準的なダイスと比較すると、内径の変形や楕円形成が少なく、累積ピッチ誤差の改善効果もあり、優れた特性を持ち合わせています。これからも自動車用シャフト部品の軽量化を求めるニーズに応じた、最適なダイスを提案します。

測定器関連では2つの製品開発を進めています。一つ目の製品は社内設備向け測定器で、イメージセンサの使用や照明設計の最適化により、測定精度と効率の両方を向上させることを目標としています。二つ目の製品は、プリント配線板用穴明機向け測定器で、ユーザーからの貴重なフィードバックを反映して新たに開発しました。この測定器は小型化と高速化を実現するとともに、軽量化も達成し、使用者にとってより効率的で扱いやすい測定環境を提供します。これらの取り組みを通じて、より高品質でユーザーニーズに対応した製品提供を推進してまいります。

 

当連結会計年度における研究開発費は1,968百万円であります。当社グループは、研究開発活動のほとんどを日本で行なっておりますので、セグメント情報に関連付けての金額記載は省略いたします。