第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、特徴ある製品・技術・サービスを開発・提供し、持続的な成長を通じて豊かな未来の創造に貢献することを経営理念に掲げ、今日まで蓄積してきた製品・技術・サービスをもって合金鉄事業・機能材料事業・焼却灰資源化事業・アクアソリューション事業・電力事業における各種製品を改良・開発し、鉄鋼・電子部品材料・電池材料などの業界を始め、各方面の需要にお応えしてまいりました。

 

 2023年11月に策定した中長期経営計画においては、2030年の「あるべき姿~素材と環境で人々の暮らしを支え、より良い未来に向かって挑戦し続ける会社」の実現に向け「“事業活動を通じた社会課題の解決”と“持続的な成長を通じた企業価値向上”の両立」という基本方針を掲げました。

 

 高品質な製品の安定供給と新技術の開発、新製品の提供を目指し、経営諸課題に着実に取り組んでおります。

 

 連結売上高 1,100億円以上、連結経常利益 130億円以上、ROE10%以上を2030年の業績目標としています。

 

 また、2024年から2027年を対象とした第9次中期経営計画では、2027年の業績目標を連結売上高950億円、連結経常利益100億円、ROE10%以上としています。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、2030年「あるべき姿」に向け、以下4つをターゲットとして取り組んでおります。

 

・「成長戦略」「収益性の向上と安定化」では、

事業環境変化を中長期の成長分野と捉え、当社事業の強みを活かしつつ事業規模・領域の拡大を図ってまいります。さらに、成長分野への積極的な戦略投資を進めることで、合金鉄市況の影響を受けにくいポートフォリオを構築し、収益力の向上と安定化を目指してまいります。また、社会課題の解決に貢献する新たな製品・事業の創出に向け、新製品の研究開発、外部との連携を通じて、事業機会の探索を進めてまいります。

 

・「財務戦略」では、

成長分野への積極的な戦略投資による固定資産の増強と、安定的で高水準の株主還元を両立させるため、適正な範囲内での財務レバレッジを活用し、企業価値の向上に寄与する財務体質への変革を行ってまいります。さらにDX等も活用して棚卸資産の効率化を進め、在庫影響の軽減を図ってまいります。

 

・「サステナビリティ関連施策」では、

“社会課題の解決”と“企業価値向上”の両立を図るため、地球温暖化対策では、2030年までにCO2排出量45%以上削減(2015年比)するため、50億円規模のGX投資を計画し、インターナルカーボンプライシング制度を導入して、積極的にカーボンニュートラルを推進してまいります。DXでは、IT人材育成、基幹システム刷新などの基盤強化を行いつつ、生産性や業務効率の飛躍的向上を図り、操業の省人化やオペレーションの最適化を進めます。更には人的資本経営の基盤強化を図るため、中長期事業戦略とリンケージした人材戦略を可視化し、取り組んでまいります。

 

(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは「あるべき姿」を実現するため、2027年までの第9次中期経営計画を策定し、当該期間で実行すべき具体的な施策をまとめました。

 

 合金鉄事業では、国内合金鉄の生産性向上と棚卸資産の圧縮を追求し、より強固な収益・財務体質を確立します。海外事業では安定生産を継続し、水力発電によるグリーン電源の優位性を活かし市場開拓を進めてまいります。

 

 機能材料事業では、地政学リスク回避に貢献するオンリーワン商品の拡販を進めるとともに、今後の電子部品の需要増加に対応して酸化ジルコニウムの生産能力の増強を検討します。また、次世代電池材料分野における研究開発の成果を具体化することで、収益の拡大を図ります。

 

 焼却灰資源化事業では、電気料金などのコスト上昇分を着実に処理価格へ反映させ、自治体や地域社会との連携を更に強化し焼却灰の収集量を増加させることで、2030年までに焼却灰溶融炉を現状の4基から7基体制とすることを目指します。加えて、100%連結子会社である中央電気工業株式会社を2024年7月1日付けで吸収合併しました。この合併により同社が展開していた焼却灰資源化事業への取り組みを新日本電工株式会社として強化し、事業成長を加速させてまいります。

 

 アクアソリューション事業では、長年培ってきた水処理に関わるノウハウを活用して社会のニーズに応えてまいります。また、製品ラインナップを強化し、新しい事業領域の開拓に注力します。

 

 電力事業では、FITによる長期的な安定収益の確保に加え、水力発電の環境価値を活かした非化石証明の発行により当社のカーボンニュートラル実現に貢献してまいります。

 

 また、足下の国内外の政治・経済状況による事業環境の変化にも柔軟に対応し、各事業の変革に取り組むとともに、事業部門・製造部門における基盤整備・体質強化を推進します。

 

 研究開発については、需要家、大学、研究機関、ベンチャー企業等と連携し、研究テーマの取捨選択を行いながら、当社の強みを生かした商品探索と研究開発を進めてまいります。

 

 DXの分野では、当社のDXビジョン「デジタルの活用により自らが変革することで最適なモノづくりとあらたな価値創出を実現する」ために策定した DXロードマップにおける生産DX、業務DX、事業DXのそれぞれの活動テーマを着実に実行するとともにDX基盤・環境整備を推進してまいります。

 

 これらの課題を着実にクリアしていくことにより将来に向けた基礎体力を養い、「あるべき姿」の目標達成のために当社グループ一致団結して尽力してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組の状況は、以下のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

① ガバナンス

 当社グループは、「特徴ある製品・技術・サービスを開発・提供し、持続的な成長を通じて、豊かな未来の創造に貢献する。」という経営理念を掲げており、この理念の下、サステナビリティを重要な経営戦略と位置づけ、「事業活動を通じた社会課題の解決への貢献」と「持続的な成長を通じた企業価値向上」の両立を目指しています。特に、サステナビリティへの取り組みを推進するためにサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を設置しています。

 

<サステナビリティ体制概略図>

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 サステナビリティ委員会は、代表取締役社長の下に設置されており、代表取締役社長を委員長として各課題解決に向けたタスクフォースで構成されています。本委員会は、当社グループの経営戦略の一環としたサステナビリティ経営方針の策定、必要な戦略の立案・評価を行うだけでなく取り組み状況の確認や審議も行い、その内容を半年に1回以上の頻度で取締役会に報告しており、サステナビリティ施策を推進する役割を担っています。取締役会は本委員会から報告を受け、活動への提言を行うなどサステナビリティへの取り組みを監督・指導しています。

 

 また、サステナビリティ委員会は2022年1月の発足後、マテリアリティの特定、6つのタスクフォースにて各課題抽出と具体的な取り組み内容の検討、加えて当社グループ内におけるサステナビリティに対する意識の定着を進めてきました。また、各課題解決に向けた取り組みをさらに機能的に推進させるため、2025年1月に各タスクフォースの構成をマテリアリティへの取り組みに沿った体制に変更するなど、委員会の推進体制の変更を行いました。

 主な変更点は以下の通りです。

・「TCFDタスクフォース」と「情報開示タスクフォース」を統合し、「情報開示タスクフォース」とし、今後のサステナビリティ開示に対応するとともに、各タスクフォースの進捗状況を開示に連携させる。

・「DXタスクフォース」をサステナビリティ委員会とは独立した委員会として推進する。

 

<重要課題策定プロセス>

 当社グループは、下記策定プロセスを通じて、経営における長期的な方向性や企業価値に影響を及ぼし得る重要課題を抽出し、さらにマテリアリティとして明確化を行っています。

 

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<重要課題>

1.持続可能な地球環境の維持と脱炭素社会の実現に向けた2050年カーボンニュートラルへの挑戦

2.脱炭素化・サーキュラーエコノミーに貢献する製品・技術・サービスの提供と共に、持続可能な社会の実現に貢献するあらたな事業機会の創出

3.DE&I、人材開発などの人的資本を重視した経営による価値創造

4.取引先の人権尊重・環境対応なども勘案した公平かつ公正な購買の実行

5.ステークホルダーとの建設的なコミュニケーションを通じた中長期的な企業価値向上

 

<マテリアリティ>

 「特徴ある製品・技術・サービス」により「豊かな未来の創造に貢献する」という経営理念を実現するためには、自社の活動における環境負荷低減のみならず、脱炭素化やサーキュラーエコノミーに貢献する事業により、持続可能な社会に寄与することが重要であると認識しています。

 また、そのような貢献は多様なステークホルダーの皆様に支えられており、各方面において良好な関係を維持することが当社グループの持続可能性に必要不可欠であることを認識しています。競争力の源泉である人的資本への積極的な投資と多様性の包摂、お取引先様との関係強化に加え、投資家・地域社会といった様々なステークホルダーとの建設的なコミュニケーションにより、中長期的な企業価値の向上を図ってまいります。

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②リスク管理

 当社グループでは、上記サステナビリティ推進体制の下、下記リスク管理プロセスを通じて、各マテリアリティに関するリスク及び機会の抽出・評価を行っています。なお、本委員会の活動内容につきましては、定期的に取締役会で監督・報告を行なっています。

 

<リスク管理プロセス>

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(2)重要なサステナビリティ項目

① 気候変動に関する取組

a.ガバナンス

 当社グループは、気候変動への対応をはじめとしたサステナビリティへの取り組みの推進、中長期的な企業価値の一層の向上を目指すために取締役会直下の組織としてサステナビリティ委員会を設置しています。本委員会は四半期に一度開催され、代表取締役社長が委員長を務めています。サステナビリティ委員会は、全社的な対応策を検討し、取り組み(KPIとしてのGHG排出量の削減など)をモニタリングしています。また、当委員会で議論された内容は、委員長から取締役会へ半年に1回以上の頻度で報告され、取締役会は委員会で検討した気候変動に関する課題についてサステナビリティ委員会に提言を行います。

 

b.戦略

<分析のプロセス>

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 当社グループは、サステナビリティ経営を実現するために気候変動が事業に与える影響をリスクと機会に基づいて分析し、適切な対応を企業経営に反映させることが重要であると考えています。

 この考えに基づき、気候変動問題が当社グループの事業に及ぼすリスク・機会に関して、以下のステップで検討しました。また、1.5℃~2℃シナリオと、4℃シナリオの二つの気候変動シナリオを用いて、政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と、災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施しました。

 その結果、GHG排出量規制・炭素税の導入等や原材料の調達コスト上昇などがリスクになりうる一方、環境性に優れた製品を拡大する機会にも繋がると認識しています。

 

<抽出したリスクと機会>

主なリスク:2℃未満シナリオにおいては、規制の強化による再生可能エネルギーへの転換及び低炭素素材への切り替えのための費用増加、4℃シナリオでは自然災害の激甚化による費用の増加リスクが予想されます。

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主な機会:環境配慮型事業の拡大が予想されます。

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c.リスク管理

<気候関連リスクを識別・評価するプロセス>

 当社グループでは、気候変動に伴うリスクを情報開示タスクフォースが特定したのち、サステナビリティ委員会へ報告します。サステナビリティ委員会は、年に1回の頻度でリスクについて審議します。特に重要と判断されたリスクに関しては年に1回取締役会へ報告する体制となっています。

 

<気候関連リスクを管理するプロセス>

 特定された気候変動リスクについては、サステナビリティ委員会がモニタリングし対応策を審議します。また、対応策を検討した上で、関係各部へ展開・対応を行い、リスクの軽減に努めます。

 

<全社のリスク管理への統合プロセス>

 各部およびグループ会社から抽出された気候関連以外の全社的なリスクを一括で管理するために内部統制委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は内部統制委員会へ移行リスク・物理リスクおよび対応策について報告し、内部統制委員会は取締役会へ報告を行います。

 

<リスク検討プロセス>

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d.指標と目標

 当社グループは、CO2排出量を2030年に2015年対比45%以上削減する目標を掲げています。今後も、再生可能エネルギー活用による自家発電導入や省エネルギー対策、エネルギー効率の向上を図り、CO2排出量削減に取り組んでまいります。さらに、カーボンフリー合金鉄の革新的脱炭素製造プロセスの基礎研究に着手し、使用燃料のグリーンエネルギー転換を進めるなど、最新設備・技術を積極的に導入し飛躍的な生産性向上を目指しています。

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<カーボンニュートラルの実現に向けて>

 当社グループは、地球規模での気候変動が人類の存続に影響を与える大きな課題であるとの認識のもと、「継続可能な地球環境の維持と脱炭素の実現に向けた2050年カーボンニュートラルへの挑戦」をサステナビリティ経営の重要課題と捉え推進しています。

 2022年には2050年カーボンニュートラル実現に向けたロードマップを策定し、CO排出量の削減を目指して事業・研究開発に取り組んでいます。

 

<CO2排出量削減シナリオ>

 当社グループは、これまでも積極的な省エネ活動やエネルギーの高効率化などCO2排出量の削減に取り組んでまいりましたが、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2030年には2015年対比45%以上削減するという目標も掲げ、全社をあげた取り組みを開始しています。

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<CO2排出量削減の取組>

 当社グループ主力製品のひとつである合金鉄(フェロマンガン)は自然界に存在するマンガン鉱石から酸素を除去する還元反応により製造されています。この還元反応には石炭コークスの使用が最適ですが、この反応によりCOが不可避的に発生します。当社グループでは、電力やガスといったエネルギーの高効率化やグリーンエネルギーへの転換を進めると共に、合金鉄の製造過程で発生するCO排出量を削減する革新的な製造プロセスの開発実用化にもチャレンジします。

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② 人的資本への取組

 当社グループでは、労働人口が減少し続ける環境下において、中長期事業戦略を支えるための人材の確保と従業員一人ひとりの価値の伸長をはかることを最重要経営課題の一つととらえています。多様な働き方を可能にする制度を調え、DE&Iを推進することでエンゲージメントを高めると共に、採用活動を活性化していきます。

 2030年「あるべき姿」の実現に向け、持続的な成長を通じた企業価値向上の中核となる人的資本経営の基盤強化への取り組みを進めてまいります。

 

a.戦略

1)人材戦略

 当社グループは、中長期事業戦略および事業継続に対応した人材を確保することと、付加価値創造を可能にする人材の育成をターゲットとしています。そのためにDE&I、人権尊重、多様な働き方、ウェルビーイングといったサステナビリティを重視した労働環境を整備しながら、従業員のエンゲージメント向上を図ります。この戦略を企業文化として定着させることにより、中長期事業戦略の達成を目指します。

 

<人材戦略の概念図>

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<人材戦略のターゲットと施策>

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2)人材確保

 急速に進む労働人口減少の中で、当社グループの成長戦略を実現するために有為な人材を確保することは最重要課題の一つです。知名度を上げる施策を通じた採用力の向上と採用手段の拡充、人事制度の見直しなどを進めながら、積極的な採用活動を展開し優秀な人材の確保・定着を図っています。

 

<エリア総合職制度>

 総合職従業員のそれぞれの志向にあった働き方を促進し、働きやすさを向上させる目的で2024年3月にエリア総合職制度を新たに制定しました。転勤を伴わない働き方を望み、かつこれまでの総合職と同様に広範でより高度な職務を行いたい従業員が、地域を限定して働くことを可能にすることで、将来、高い専門性を持った管理職となることを期待しています。

 

<キャリア採用>

 社会の変化のスピードが速くなり、個々の業務の専門性が高まっています。加えて必要人材の確保に対応するため、積極的にキャリア採用を行い、特に「あるべき姿」の実現に向けた事業拡大を担う即戦力人材の確保については、キャリア採用で対応しています。2024年は各々専門性を持った9名(2022年8名・2023年13名)を採用、それぞれのキャリアを活かし、各部門で活躍しています。

 

3)人的付加価値創出

 当社グループは、人材を競争力の源泉としてとらえ、OJTによる育成を主体として、教育研修、成長機会の提供により付加価値の創出に取り組んでいます。

 2030年「あるべき姿」の実現に向けて社内で共通の認識を持つため、2024年春と秋の2回に渡り社長と全管理職との対話を実施しました。管理職は事前に「『あるべき姿』の実現のため会社はどう変わるべきか!自分をどう変えて行くか!」をテーマとして事前レポートを作成した上で社長との対話に臨み、そのために何をすべきかについてグループでそれぞれの意見を交わしました。また、4月には社長と全役員の対話を行い、課題の確認と今後の対応を話し合いました。こうした取り組みと並行し、当社では各職場・各階層において対話を通じた情報の共有とコミュニケーションの活性化を進めています。

 

4)人的資本経営基盤強化(ウェルビーイング経営・ダイバーシティ推進)

 当社グループは、人的資本経営の基盤強化のため、DE&I、働き方改革、エンゲージメント向上を通じてウェルビーイング経営、ダイバーシティ推進に取り組み、多様な人材が安心して働くことができる職場づくりに向けて、それぞれが活躍できる制度や環境の整備を行っています。

 

<女性活躍>

 女性活躍推進については2016年に女性活躍推進委員会を発足、社内制度の充実や研修、社内広報による意識改革などの活動を続けてきました。現在は、多様な意見をより経営に反映させるため、女性管理職を2027年に2%とすることを目標に定め、女性リーダー育成研修を実施するなどキャリア形成の支援にも積極的に取り組んでいます。

 

<柔軟な働き方の実現>

 デジタル技術を活用することで働く場所にとらわれることなく従業員の能力が発揮できる環境を整備し、従業員が利用しやすいテレワーク制度を採用しています。また、フレックスタイム制度を設けており、時間と場所に制限のない柔軟な働き方が可能となっています。

 また、出産・育児、介護、配偶者転勤のために退職した従業員について再入社を認めるキャリアリターン制度を定めています。

 

<柔軟な休み方の実現>

 従業員が個々の事情やライフステージに応じた休み方ができる制度設計を行っています。有給休暇の取得促進のため、半日単位での取得も可能とすると共に、法定取得義務を超える年間6日の取得を義務化し、従業員全員が休みやすい環境を整えています。また、育児休業制度と介護休業制度は法定を上回るものとなっています。育児休業制度の運用では女性はもちろんのこと、男性の育児休業取得も推進し、男性が育休を取得しやすい職場環境の醸成に努め、取得率も2023年度(2023年4月~2024年3月)は73%となりました。その他にも、子育てと仕事の両立をサポートする制度として、育児のための短時間勤務(小学校3年生終了まで)、勤務制限(時間外、深夜など)、ベビーシッター料金の補助などを設けており、子の看護のための特別休暇は有給とし、最大10日を付与しています。介護休業制度については、要介護状態にある家族を有する従業員を対象に、介護休業の取得期間は1年間、介護休暇(有給)の取得期間は最大10日を設定しています。

 これらの取り組みにより、2019年に1回目、2021年に2回目の「くるみん」認定を取得しています。今後も仕事と子育てや介護がより両立しやすくなるよう環境整備を進めていきます。

 

<障がい者の活躍>

 重要な社会的課題であるとの認識のもと、雇用の促進と働きやすい職場環境の整備に努めています。2024年5月に本テーマについての社内セミナーを行い、障がい者雇用への意識を深めました。これからも採用や雇用維持を継続し、障がい者が活躍できる環境づくりを進めていきます。

 

<65歳定年制度>

 労働力人口の減少や公的年金支給開始年齢の引き上げなどの外部環境への対応と、現場力の維持・強化や60歳以降の雇用と生活の安定の確立を目的に2022年より定年年齢を60歳から65歳に引き上げました。定年延長にあたっては60歳以降についても従来と同じ業務を同様に遂行していくことを前提に、65歳まで一貫した雇用形態のもと、連続性のある給与・賞与制度としています。

 

<健康経営>

 従業員が、心身共に健康に働き、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう健康診断や健診結果のフォローに取り組んでいます。通常の健康診断に加え、人間ドック費用を補助することで、疾病の予防、早期発見を目指しています。また、女性特有のがんなど疾患の早期治療に繋がる特定の検診に対して全額補助し、積極的な受診と健康促進に努めています。その他、予防接種費用などを補助しています。

 メンタルケア対策としてストレスチェックの実施や過重労働による健康被害の防止に努めています。メンタルヘルスはその結果を分析しフィードバックにより対策を行っています。過重労働と判断した際には、速やかに産業医面談を実施する体制を確立しています。その他、ストレス軽減措置として外部に専門家集団からなる相談窓口を設け、必要に応じ従業員が活用しています。

 

<エンゲージメント向上>

 当社の全従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを実施し、会社への貢献意欲・愛着心など組織力について可視化を図りました。一昨年実施したエンゲージメントサーベイについてはその結果を受け、大規模拠点である徳島工場および鹿島工場の30代従業員に対し、仕事を通じたやりがいや働きやすい職場環境について人事部門からヒアリングを行いました。サーベイ結果の考察、従業員との対話を通じた課題の検証とエンゲージメント向上に資する人事施策や事業所における改善策への反映というサイクルの繰り返しにより組織活性化に取り組んでいます。

 

<処遇改善>

 近年の人手不足による採用競争の激化や高まる労働市場の流動性などの変化の中で、従業員の処遇を改善することは人材の確保、人的資本への投資、事業成長という好循環を実現する上で重要であると考えています。2024年の春闘では組合要求に対して満額となる21,000円のベースアップを実施しました。加えて、2025年の春闘では2024年に引き続き組合要求に対して満額となる18,000円のベースアップを実施しました。今後も従業員の成長と事業成長の好循環の実現を図ります。

 

5)人権の尊重

 当社グループは、経営理念を実現する上で、法令遵守および人権の尊重は企業が果たすべき社会的責務であると同時に、欠くことのできない倫理規範であると認識しています。2022年10月には、国際人権章典や国連「ビジネスと人権に関する指導原則」などの人権に関する規範に基づき新日本電工グループの人権基本方針を定め、人権尊重の取り組みを推進しています。

 

b.指標と目標

 当社における当連結会計年度末現在における女性管理職はおりませんでしたが、2025年3月21日付で女性2名を管理職に登用しており、本有価証券報告書提出日現在の女性管理職比率は1.7%となっております。

指標

目標

実績

女性管理職比率

2027年 2

2024年12月末現在 

有給取得率

2027年 70以上

2023年度(4月~3月) 76.0

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績及び財政状態に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項は、次のとおりであります。

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)国内外の主要市場の経済状況及び需要の変動等

 合金鉄製品の販売価格は国際市況を基準としていることから、国際的な製品需給により市況が変動した場合には、業績に影響を与える可能性があります。当社グループの売上高はほとんどが国内向けであり、業績は我が国の経済情勢、とりわけ国内粗鋼生産量の変動により多大な影響を受けます。また、中国、インド、米国等の経済情勢や関税等の政策により自動車をはじめとした我が国の輸出動向を経て粗鋼生産や合金鉄の需要に影響を与え、当社の業績が変動する可能性があります。加えて、地政学的リスクが顕在化することで、経済活動が停滞し当社製品の需要が落ち込むことにより、業績が影響を受ける可能性があります。当社は、国際市況、経済動向を十分に見据えながら適切に対応すべく、機動的な生産計画の見直しに加え生産体制の見直し等当該リスクの低減に努めてまいります。

(2)国内外の競合各社との競争状況及び主要需要家の購買方針の変更等

 当社グループは、各事業において、国内外の競合各社と厳しい競争状態にあることから、当社グループの事業競争力が相対的に減退した場合には、業績が悪化する可能性があります。また、各事業分野における主要な需要家の購買方針に変更等が生じた場合には、業績が変動する可能性があります。当社は、需要家との密接な関係強化の継続に努めているとともに、安価原料の使用や原料ソース分散等による製造コスト低減や一般管理費の削減等により原価低減を推し進め、競争力の維持・向上に努めております。

(3)原燃料調達における価格・数量等の変動

 マンガン鉱石、コークス、レアアース、原油等の原燃料価格は国際市況に連動しており、国際的な資源需給の変動、資源輸出国における経済・社会情勢等の変化、天災地変等に起因する市況変動等が業績に影響を与える可能性があります。当社グループの製造原価では電力が相応の割合を占めている為、原燃料価格に起因する電力価格の変動が業績に影響を与える可能性があります。また、自然災害等による仕入先の操業・出荷の停止、さらには物流の寸断等により、電力を含む原燃料等の調達に支障が生じた場合、生産活動の制約を受け、業績に影響を与える可能性があります。当社は、継続的な原料サプライヤーとの関係性により柔軟な契約形態を採用するとともに、安価原料使用や原料ソース分散等安定したサプライチェーンの構築、また製造コスト低減や一般管理費の削減等により収益への影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。

(4)海外での事業活動

 当社グループは、海外諸国において事業投資活動を行なっております。これらの国の法令、税制、社会的インフラの変動、及びテロ等の情勢不安等に加え、現地特有のマネジメント上のリスクもあり、投資先事業における経営環境の変化、業況、及び操業不調等が、業績、及び投資の回収等に影響を与える可能性があります。また、国際的な製品需給により市況が変動した場合には、業績、及び投資の回収等に影響を与える可能性があります。当社は、他の出資会社と共に、現地の事業環境の情報収集に努め、投資先事業への指導を徹底し、また、適切な支援に取り組むことで、当該リスクの低減に努めております。

 

(5)財務リスク

①為替レートの変動

 合金鉄事業を始めとして、当社グループは主として、外貨建の国際市況を基準として取引していることから、為替動向が売上高及び業績に影響を与える可能性があります。また、為替動向は外貨建で取引されている原料の購入価格にも影響を与える可能性があります。さらに、外貨建の資産・負債を保有していることから、為替相場の変動が業績に影響を与える可能性があります。

②金利変動

 当社グループは、相応の有利子負債を保有しているため、金利情勢、その他金融市場の変動が業績に影響を与える可能性があります。当社グループは、長期借入金の一部について金利スワップ取引により金利を固定化し当該リスクの低減を図っております。

③資金調達

 当社グループは、資金調達にあたり資金繰り計画に基づき流動性リスクを管理し、更に金融機関との間にコミットメントライン契約を結び不測の事態に備えておりますが、当該契約には財務制限条項が付されているため、当社グループの業績が大きく悪化した場合は当該コミットメントラインに基づく資金調達が影響を受ける可能性があります。なお、財務制限条項の詳細は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結貸借対照表関係)8財務制限条項」に記載のとおりです。当社グループは、中長期経営計画の着実な実行により安定的な収益確保に努めるとともに財務体質の改善強化に努めてまいります。

(6)固定資産減損リスク

 当社グループが保有している固定資産について、時価が著しく低下した場合や事業の収益性低下により投資回収が見込めなくなった場合、固定資産の減損損失が発生し、業績に影響を与える場合があります。当社グループは中長期経営計画の着実な実行により収益性の向上と安定化に努めてまいります。

(7)棚卸資産の収益性低下

 製品価格や製品原価の変動により棚卸資産の収益性が低下し、それにより簿価切り下げが発生した場合には、業績に影響を与える可能性があります。当社は、需要に見合った生産に努めるとともに生産に見合った原料等の最適調達に努めております。また、年度予算で適正在庫水準目標を定めて在庫管理を行い、当該リスクの低減に努めております。

(8)繰延税金資産の回収可能性

 当社グループでは繰延税金資産について、将来の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断して計上しております。しかしながら今後、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合は、繰延税金資産の取崩しが発生し、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

(9)法令その他の規則及び環境規制の変更

 当社グループの事業活動に適用される法令その他の規則の変更があった場合には、業績に影響を与える可能性があります。特にCO2排出量に関連した規制は影響が大きいことから、当社は経済産業省公表のGXリーグに参画し、2050年カーボンニュートラル実現に向け取り組みを進めております。また、当社グループの事業活動に伴い発生する廃棄物では、国内外の法規制を遵守し、的確な対応を行っているものの、今後の法規制強化によっては業績に影響を与える可能性があります。当社グループは法規制の改正等、必要な情報を適時・適切に収集するとともに、社員教育を実施し厳格に法令遵守を図っております。

 

(10)自然災害及び事故

 大規模な台風、地震、津波等の自然災害に見舞われた場合、当社グループ従業員及び主要設備に被害が発生するおそれがあり、操業、出荷に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。また、重大な労働災害、設備事故等が発生した場合には事業活動の停止や制約等により、業績に影響を与える可能性があります。さらに、新型インフルエンザ等の感染症が流行した場合には、当社グループの事業活動が制約を受け、業績に影響を与える可能性があります。当社は、設備の耐震補強による地震対策や嵩上による津波対策の実施、老朽化設備の更新等に加え、事業継続計画(BCP)を策定し、その実地訓練を実施する等有事に備えております。また、日頃の設備メンテナンス、老朽化設備の更新、定期的な安全活動(リスクアセスメント、危険予知活動等)の計画と実施等により、リスク低減を図っております。

(11)知的財産

 当社グループは当社技術に関わる知的財産権の取得・活用及び他社知的財産権の侵害防止に努めておりますが、技術の進歩が高度かつ複雑になる中、知的財産に関する訴訟が生じた場合には、当社グループの経営成績が影響を受ける可能性があります。当社は、他社との特許係争が生じないよう、特許連絡会を設置し、問題特許や競合他社の特許出願の有無を常時モニターし適切な対応に努めております。

(12)人材確保及び育成

 当社グループでは、事業の成長に必要な人材の確保及び育成に努めており、その際には多様性の確保(ダイバーシティ)と一人ひとりの人格を尊重し受け入れる企業風土の醸成によるエンゲージメントの向上が不可欠です。今後、少子高齢化に伴う国内労働人口の減少や企業風土醸成が不十分なことによる人材定着率の低下等、人材確保や育成が計画どおりに進まなかった場合、持続的な成長に向けた事業活動に影響を与える可能性があります。このような事態を回避するため、採用活動の強化、育成体系や職場環境整備や多様な働き方等の人的資本への積極的な投資、さらには、DXを活用した生産・業務・事業の革新を進め、魅力ある企業としての体制づくりを進めております。

(13)気候変動リスク

 当社グループは、気候変動に関して生じる変化を重要なリスク要因として認識しています。移行リスクとしては、炭素税・排出権取引制度等の温室効果ガスの排出規制が導入された場合、原材料価格や電力価格が上昇し、製造コストが増加することで収益の低下をもたらす可能性があります。また、物理的リスクとしては、台風・洪水等の極端な気象現象が深刻化した場合、操業停止や物流の寸断、被害コストの増加等が収益の低下をもたらす可能性があります。一方で、当社グループは、気候変動への対応をリスクとしてだけでなく機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題の解決を目指してまいります。また、2022年2月にTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同し、気候変動の影響評価及びその情報開示に取り組んでいます。

(14)情報システムの障害、情報漏洩等

 当社グループの情報システムは、ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃、大規模停電、予期せぬトラブル等により停止する場合が考えられます。その場合、生産や業務の停止、機密情報の外部漏洩、決算業務の遅延、訴訟や社会的信用の低下等の被害が拡大し、当社グループの業績等に悪影響が生じる可能性があります。当社グループは、データセンター・クラウドの活用、セキュリティ対策ソフトの導入、社員教育、DX推進、多層防御等の対策を講じています。さらに、外部機関によるセキュリティチェックやセキュリティ監査を実施し、万全を期しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2024年1月1日から2024年12月31日)における世界経済は、米国の景気が堅調に推移した一方で、同国金利高止まりによる円安の継続、ロシアによるウクライナ侵攻の継続や中東情勢の混乱等による国際社会の分断、欧州・中国の景気減速等、景気の先行き不透明な状況が継続しました。わが国経済は、雇用・所得環境が改善したことに加えて、インバウンド需要が支えとなり景気の緩やかな回復が見られた一方で、円安の継続や労働力不足によりエネルギー及び原材料価格、人件費が高騰する等、国内製造業においては製造コストが上昇する厳しい環境が継続しました。

 このような事業環境の中、当社は製品の安定生産、大手需要家との価格フォーミュラ契約の継続、コスト削減、販売価格改善等、積極的に収益改善のための取り組みに努めました。その結果、売上高は78,235百万円(前年同期比0.2%減)、経常利益は4,859百万円(同100.8%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度は投資有価証券の売却益の計上及び繰延税金資産の見直しにより税金費用が減少した一方、当連結会計年度は利益に応じた税金費用を計上した結果、3,144百万円(同27.4%減)となりました。

 

 各事業の経営成績は、次のとおりです。

 

 なお、当連結会計年度より事業セグメントの改編を行い、これまでの「環境事業」を分割し、電気炉による焼却灰溶融固化処理事業を「焼却灰資源化事業」に、環境システム事業を「アクアソリューション事業」へそれぞれ改称しました。

 

(合金鉄事業)

 当連結会計年度は、3月に発生した豪州でのサイクロン被害によるマンガン鉱石出荷停止の影響で原料のマンガン鉱石市況が一時的に上昇した一方、製品市況の上昇は世界的な鉄鋼需要低迷を背景として限定的となりました。

 こうした状況のなか、国内合金鉄事業においては、粗鋼生産の低迷の影響により売上高は若干減少したものの、コスト改善や前年度マイナスだった在庫影響がプラスに転じたことで増益となりました。持分法適用会社の2社から成る海外合金鉄事業においては、マージンは悪化したものの、設備改修による安定生産や安価原料調達等の収益改善策を実施したことにより損失が縮小しました。

 以上の結果、売上高は51,756百万円(前年同期比2.1%減)、経常利益は1,085百万円(前年同期は914百万円の損失)と減収増益となりました。

 一方、実力ベース経常利益は、コスト上昇を上回る収益改善や価格改善に努めたものの、マージン悪化の影響により11億円(前年同期23億円)と前年同期を下回りました。

 

(機能材料事業)

 当連結会計年度は、電子部品材料の酸化ジルコニウムと酸化ほう素は主要顧客での在庫調整の長期化により販売数量は前年同期比で減少しました。車載用電池材料のリチウムイオン電池正極材の販売数量は能登半島地震の影響による減少が大きく、能力増強効果によるカバーはあったもののほぼ前年並みにとどまりました。その他の製品については、堅調に推移しました。

 以上の結果、売上高は13,979百万円(前年同期比1.0%増)、経常利益は1,656百万円(同17.0%減)と増収減益となりました。

 また、コスト改善やマンガン化成品等の付加価値に見合った価格改定を進めたことなどにより、震災影響等の一過性要因を除く実力ベース経常利益は20億円(前年同期18億円)と前年同期を上回りました。

 

(焼却灰資源化事業)

 当連結会計年度は、電力料金、人件費等のコスト上昇の価格転嫁による焼却灰処理価格の適正化が進んだことに加え、溶融メタルに関連する市況の高位安定が継続しました。

 以上の結果、売上高は7,744百万円(前年同期比12.5%増)、経常利益は1,412百万円(同97.9%増)と増収増益となりました。

 また、実力ベース経常利益は14億円(前年同期8億円)と前年同期を上回りました。

 

(アクアソリューション事業)

 当連結会計年度は、排水処理装置の販売数量が自動車生産量減少の影響等により前年同期比で減少しました。純水製造装置の販売は堅調に推移しました。

 以上の結果、売上高は1,570百万円(前年同期比5.5%減)、経常利益は115百万円(前年同期比8.5%減)となりました。

 

(電力事業)

 当連結会計年度は、気象条件に恵まれ、売上高は1,409百万円(前年同期比1.3%増)、経常利益は394百万円(前年同期比3.7%増)となりました。

 

 当連結会計年度における事業の売上高及び経常利益は次のとおりです。

(単位:百万円、%)

区分

 

第124期(前連結会計年度)

 

(2023.1.1~2023.12.31)

 

 

第125期(当連結会計年度)

 

(2024.1.1~2024.12.31)

 

増減率

 

売上高

経常利益

売上高

経常利益

売上高

経常利益

 

金 額

 

構成比

 

金 額

 

構成比

 

金 額

 

構成比

 

金 額

 

構成比

合金鉄事業

52,876

67.5

△914

△37.8

51,756

66.2

1,085

22.3

△2.1

機能材料事業

13,844

17.7

1,995

82.4

13,979

17.9

1,656

34.1

1.0

△17.0

焼却灰資源化事業

6,882

8.8

713

29.5

7,744

9.9

1,412

29.1

12.5

97.9

アクアソリューション事業

1,660

2.1

125

5.2

1,570

2.0

115

2.4

△5.5

△8.5

電力事業

1,391

1.8

380

15.7

1,409

1.8

394

8.1

1.3

3.7

その他

1,735

2.2

119

4.9

1,775

2.3

195

4.0

2.3

63.1

合計

78,390

100.0

2,420

100.0

78,235

100.0

4,859

100.0

△0.2

100.8

(注) 1.当連結会計年度より事業区分を変更したため、各事業の売上高及び経常利益の金額及び構成比並びに売上高及び経常利益の増減率については、前連結会計年度の数値を変更後の事業区分に組み替えて比較しております。

2.「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおり、当連結会計年度より、当社連結子会社であった中央電気工業㈱の焼却灰資源化過程で回収する有価金属の売却収入の会計処理方法を、売上高及び対応する売上原価、商品及び製品を計上する方法に変更しております。これに伴い、第124期に係る主要な経営指標等については、当該会計方針の変更を反映した数値を記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、5,958百万円の収入となりました(前連結会計年度

は8,776百万円の収入)。

主な増加要因は、税金等調整前当期純利益4,747百万円、減価償却費3,245百万円です。

主な減少要因は、棚卸資産の増加3,360百万円です。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、4,848百万円の支出となりました(前連結会計年度

は4,666百万円の支出)。

主な要因は、有形及び無形固定資産の取得による支出4,299百万円です。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、3,058百万円の支出となりました(前連結会計年度は

5,242百万円の支出)。

主な増加要因は、短期借入金の増加による収入2,000百万円です。

主な減少要因は、長期借入金の返済による支出3,528百万円です。

 以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ1,919百万円減少し5,931百万円となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 

事業の名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

合金鉄事業

47,990

103.1

機能材料事業

13,752

90.3

焼却灰資源化事業

7,505

113.7

アクアソリューション事業

1,570

95.4

電力事業

1,409

101.3

その他

1,516

107.2

合計

73,744

101.2

 

 

b.受注実績

 受注生産は行っておりません。

 

c.販売実績

 

事業の名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

合金鉄事業

51,756

97.9

機能材料事業

13,979

101.0

焼却灰資源化事業

7,744

112.5

アクアソリューション事業

1,570

94.5

電力事業

1,409

101.3

その他

1,775

102.3

合計

78,235

99.8

(注)  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相 手 先

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

日本製鉄㈱

49,148

62.7

48,117

61.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況の分析・検討内容

 経営者等の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。詳細につきましては、本報告書「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末と比べ1,450百万円増加し102,200百万円となりました。流動資産は、棚卸資産などの増加により、前連結会計年度末と比べ2,384百万円増加し53,971百万円となりました。固定資産は繰延税金資産、投資有価証券などの減少により、前連結会計年度末と比べ933百万円減少し48,228百万円となりました。

 当連結会計年度末の負債合計は、短期借入金、支払手形及び買掛金などが増加しましたが、長期借入金などの減少により、前連結会計年度末と比べ790百万円減少し28,522百万円となりました。なお、有利子負債(短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、リース債務(流動負債)、長期借入金、リース債務(固定負債))は1,478百万円減少し17,076百万円となりました。

 当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ2,241百万円増加し73,677百万円となりました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。

b.経営成績

当社グループの当連結会計年度の経営成績につきましては、「第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。

③経営成績に重要な影響を与える要因

 「3事業等のリスク」に記載しております。

④資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料及び貯蔵品の仕入や製造費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。

 投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 短期運転資金は、自己資金、売掛債権のファクタリング及び金融機関からの短期借入などによる調達を基本としております。

 設備投資につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入などによる調達を基本としております。

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2024年3月27日開催の取締役会において、2024年7月1日を効力発生日として、当社を吸収合併存続会社、当社の完全子会社であった中央電気工業株式会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併の決議を行い、同日付で合併契約を締結し、2024年7月1日付で吸収合併を行いました。

 詳細は、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当連結会計年度の研究開発活動は、積極的に研究開発投資を進めました。研究・営業・製造との連携を強化するとともに、外部機関を積極的に活用した研究開発投資を進めております。

 当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は588百万円であり、主要な研究開発活動は次のとおりです。

 合金鉄事業におきましては、カーボンニュートラルのための環境対応技術の強化に関わる研究開発を行いました。

 機能材料事業におきましては、電池材料、電子材料など顧客からの多様な要求に対応する研究開発を行いました。

 アクアソリューション事業におきましては、水処理・純水製造分野、新たな吸着システムの開発を行いました。

 研究開発テーマにつきましては、テーマの取捨選択を行いながら、当社の強みを生かした商品探索と研究開発を進めております。