第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)企業理念

 当社グループの企業理念は、「わたしたちの目的 / Our Purpose」、「わたしたちの価値観 / Our Values」、「わたしたちのDNA / Who We Are」から構成されています。

 「わたしたちの目的 / Our Purpose」、「わたしたちの価値観 / Our Values」はサントリーグループ企業理念と共通であり、事業を営む目的や企業として目指す方向性と、目的を実現するために全ての従業員が大切にすべき価値観を定義しています。

 また、真のグローバル飲料企業として“質の高い成長”を実現するために、普遍的な当社グループらしさを「わたしたちのDNA / Who We Are」と定義しています。

 

<わたしたちの目的 / Our Purpose>

 人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、「人間の生命(いのち)の輝き」をめざす。

<わたしたちの価値観 / Our Values>

 Growing for Good / やってみなはれ / 利益三分主義

<わたしたちのDNA / Who We Are>

 Always Together with Seikatsusha

 We connect with your feelings to enrich every moment of life

 生活者の喜怒哀楽に寄り添い、潤い豊かな人生を提供します。

 

(2)中期経営戦略

 真のグローバル飲料企業として、“質の高い成長”を実現していく中で、「既存事業で市場を上回る成長」に加え、「新規成長投資による増分獲得」により、2030年売上2.5兆円を目指します。

 また、売上成長を上回る利益成長の実現を目指します。

 この目標を達成するために、以下の重点項目を中心に積極的に事業展開していきます。

<ブランド戦略>

 ・コアブランドイノベーション強化

 ・戦略ブランドでクロスセル展開エリア拡大

 ・グローバルなサントリーブランドの育成

<構造改革>

 ・日本 収益力強化に向けた構造改革の加速

 ・海外 事業成長加速と更なる収益力強化

 ・事業ポートフォリオの更なる拡充、強化(RTD展開等)

<DEI>

 ・異なる考え、価値観の融合による企業競争力の向上

<サステナビリティ>

 ・環境、社会課題への取組み強化

 

(3)中期経営計画(2024-2026)

 中期経営戦略に基づく2026年までの目標は以下のとおりです。

オーガニック成長

(2023年を起点、為替中立)

 売上収益

  平均年率1桁台半ばの成長

 営業利益

  平均年率1桁台後半の成長

 営業利益率

  2026年までに 10%超

 

 

 フリーキャッシュフロー

  2026年に1,400億円強創出

  ※フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー - 投資キャッシュフロー

成長投資

・3,000~6,000億円の投資枠を設定

・M&A、戦略的な設備投資(サステナビリティ投資含む)、戦略ブランドのグローバル展開に注力

配当方針

・2024年度以降、目標配当性向40%以上

※親会社の所有者に帰属する当期利益に対する連結配当性向の目安

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題

 2025年は、為替変動・原材料高や厳しい競争環境が続くとの想定のもと、コアブランドを中心とした積極的なマーケティング投資・販促活動を徹底することに加え、RGM(レベニューグロースマネジメント)活動を強化し、更なる売上収益成長を目指します。コストマネジメントの徹底も継続し、増益を目指します。

 加えて、持続的な成長に向けて、引き続きM&A等の投資機会の探索や生産設備の増強に取り組みます。また、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)への取組として、多様な従業員が「やってみなはれ」を発揮できるよう、従業員の属性の多様化を推進し、違いを受け入れ、活かす組織づくりを更に進めます。更に、サステナビリティの取組として、「人と自然と響きあう」という使命のもと、「環境目標2030」達成に向けた「水」と「温室効果ガス」に関する活動、及び「プラスチック基本方針」に掲げた活動を強化するとともに、サステナビリティ投資を引き続き、強化していきます。

 

[日本事業]

 「コアブランドイノベーション」、「自販機事業の構造改革」、「サプライチェーン構造革新」を事業戦略の重点領域とし、売上収益と利益を成長させていきます。マーケティング活動においては、引き続き「サントリー天然水」、「BOSS」、「伊右衛門」、「GREEN DA・KA・RA」及び「特茶」への活動を更に強化していきます。

 「サントリー天然水」は、独自のブランド価値を引き続き訴求していくことに加え、フレーバーウォーターの活動も強化していきます。「BOSS」は、“コーヒーシリーズ”と“紅茶シリーズ”2本柱の「クラフトボス」で更に活動を強化していきます。缶コーヒーも、ヘビーユーザーの活性化に向けてマーケティング活動を強化していきます。「伊右衛門」は、更なるブランド成長に向けて、「伊右衛門」、「伊右衛門 濃い味(機能性表示食品)」、「伊右衛門 京都ブレンド」の活動を強化していきます。「特茶」は飲用習慣化の実現に向けて、一層マーケティング活動を強化するとともに、「特茶」独自の機能を訴求していきます。

 

[アジアパシフィック事業]

 アジアパシフィックでは、各主要市場において堅調な需要が続くとの想定のもと、フルバリューチェーンの総合力を発揮し、コアブランドの更なる成長を目指します。売上収益の伸長及び生産設備の増強等のコスト削減活動を徹底していきます。

 清涼飲料事業では、ベトナムは、エナジードリンク「Sting」や茶飲料「TEA+」等の主力ブランドの更なる成長を図るとともに、営業活動強化にも継続して取り組みます。タイは、ペプシブランドの強化や生産効率の更なる向上に加えて、高まる健康志向への需要の取込みに向け、引き続き低糖商品の強化にも取り組みます。オセアニアでは、引き続き主力ブランドであるエナジードリンク「V」に注力するとともに、「BOSS」の更なる成長や、ポートフォリオの拡充として、RTDの製造・販売を強化していきます。健康食品事業では、主力の「BRAND'S Essence of Chicken」の販売トレンド維持に向けて、マーケティング活動を強化していきます。

 

[欧州事業]

 欧州では、主要国の需要回復に時間がかかるとの想定のもと、コアブランドイノベーションの継続及び販促活動強化や、ポートフォリオの拡充により、売上収益の成長を目指します。売上収益の増加やコスト削減活動及び事業構造改革を継続させることで、収益性を維持していきます。

 フランスでは、「Oasis」、「Schweppes」のマーケティング強化に取り組みます。英国では、「Lucozade」への集中投資により、市場でのシェア拡大を目指します。スペインでは、「Schweppes」の家庭用市場及び業務用市場での活動を強化していくとともに、業務用ビジネスの構造改革を更に推進していきます。

 

[米州事業]

主力である炭酸カテゴリーの強化を進めるとともに、伸長する非炭酸カテゴリーの更なる拡大に取り組みます。また、価格政策やサプライチェーンの更なる強化を進め、売上収益と利益の成長を加速していきます。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

 当社グループでは、サステナビリティ委員会が、当社グループ全体のサステナビリティ経営を推進する役割を担い、社会と事業の持続的な発展に向けて、サステナビリティ戦略の立案・推進を行っています。

 また、リスクマネジメントコミッティが、当社グループ全体のリスクマネジメント活動を推進する役割を担い、サステナビリティに関する種々の課題を含むリスクの抽出、対応策の立案及び対応状況の進捗確認を行っています。

 サステナビリティ委員会とリスクマネジメントコミッティは、常に連携をとっており、重要な意思決定事項については、取締役会で更なる議論を行い、審議・決議を行います。サステナビリティ戦略の進捗や事業のリスクと成長機会は、適宜取締役会に報告を行っています。また、取締役会では、外部の専門家を講師とした研修、生産研究開発施設等における取締役会の開催や意見交換等を実施することで、サステナビリティに関する知見を深める機会を設けています。

 また、役員報酬の決定に用いる目標には「サステナビリティ」の項目が設定されています。

 

②戦略

 当社グループでは、中長期的なマクロ環境の変化を踏まえたサステナビリティ経営を推進していくため、当社グループにとっての重要課題(マテリアリティ)を特定し、サステナビリティ戦略へと反映しています。

 当社グループは、2017年に実施したマテリアリティ分析の結果を、2023年に見直しました。当該マテリアリティ分析では、ダブルマテリアリティの概念のもと、当社グループの財務へのインパクト及び環境・社会への外部インパクトを特定し、評価を実施しました。また、マテリアリティ分析の結果を踏まえ、同年、「サントリー食品インターナショナルグループ サステナビリティビジョン」を制定しました。

 「サントリー食品インターナショナルグループ サステナビリティビジョン」に掲げる7つの重要テーマは、“NATURE”(水、容器・包装、気候変動、原料)と“PEOPLE”(健康、人権、生活文化)から構成されており、当社グループは、“NATURE”と“PEOPLE”は、相互依存関係があることを意識し、双方が「響きあう」社会の実現を目指してステークホルダーの皆様とともに活動を行っています。

 

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③リスク管理

 当社グループでは、リスクマネジメントコミッティにおいて、定期的に当社グループにおけるリスクの抽出・評価を行い、当社グループにとって優先的に取り組むべきリスクと機会を特定し、海外グループ会社を含めたグループ全体でのリスクマネジメント活動を推進しています。これらの活動につきましては、その内容を取締役会において定期的に報告しています。

 なお、リスクと機会の抽出・評価アプローチとしては、抽出されたリスクに対し、「リスクエクスポージャー(発生可能性×影響度)」及び「対策レベル(対策の準備の度合い)」の二軸で評価し、優先的に取り組むリスクと機会を特定しています。

 リスク抽出・評価のアプローチ及び特定したリスクの管理方法については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

④指標及び目標

 サントリーグループでは、サステナビリティの課題の中でも特に事業への影響が大きいと想定している水及び気候変動について、2050年を目標年とする長期ビジョン「環境ビジョン2050」を設定しています。当社グループでは、2030年を目標年として、水及び気候変動に関する「環境目標2030」及び容器・包装に関する目標を設定し、活動を推進しています。

 また、人的資本に関する指標及び目標については、後記「(3)人的資本 ④指標及び目標」に記載のとおりです。

 

■「環境ビジョン2050」及び「環境目標2030」

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※1 製品を製造するサントリーグループの工場

※2 2015年における事業領域を前提とした原単位での削減

※3 製品を製造する当社グループの工場

※4 コーヒー等

※5 目標の500万人はサントリーグループの人数

※6 当社グループの拠点

※7 2019年の排出量を基準とする

 

■水、気候変動及び容器・包装に関する2030年目標並びに進捗

重点分野

2030年目標

2024年実績

工場節水

自社工場※1の水使用量の原単位をグローバルで20%削減※2

特に水ストレスの高い地域においては、水課題の実態を評価し、水総使用量の削減の必要性を検証

基準年比22%削減※2

水源涵養

自社工場※1の半数以上で、水源涵養活動により使用する水の100%以上をそれぞれの水源に還元

特に水ストレスの高い地域においては全ての工場で上記の取組を実施

全世界の自社工場※1の33%で水源涵養を実施。水ストレスの高い地域にある工場においては、その9%で活動を実施

原料生産

水ストレスの高い地域における水消費量の多い重要原料※3を特定し、その生産における水使用効率の改善をサプライヤーと協働で推進

ブラジル・セラード地域のコーヒー農家に対して、再生農業を通じた水利用の評価・支援等を行うパイロットプログラムを実施

水の啓発

水に関する啓発プログラムに加えて、安全な水の提供にも取り組み、合わせて500万人※4以上に展開

累計175万人※5に展開

・次世代環境教育「水育」等の水啓発プログラム:133万人

・安全な水の提供:42万人

気候変動

GHG排出削減

自社拠点※6でのGHG排出量を50%削減※7

基準年比30%削減※7

バリューチェーン全体におけるGHG排出量を30%削減※7

2025年7月末に当社サステナビリティサイトにて開示予定

容器・包装

ペットボトルのサステナブル素材使用率※8

グローバルでのペットボトルの

サステナブル素材使用率※8100%

38%

※1 製品を製造する当社グループの工場:国内10工場、海外23工場

※2 2015年における事業領域を前提とした原単位での削減

※3 コーヒー等

※4 目標の500万人はサントリーグループの人数

※5 累計の175万人はサントリーグループの人数

※6 当社グループの拠点

※7 2019年の排出量を基準とする

※8 ペットボトル重量のうちサステナブル素材(リサイクル素材あるいは植物由来素材等)の比率

 

(2)サステナビリティに関する重点テーマの取組

①気候変動関連課題への対応(TCFDに基づく開示)

 地球温暖化による水資源への影響は、飲料製品の安定供給にも影響を及ぼすと考えられます。また、資源の枯渇により、生産コストの増加も大きなリスクとなる可能性があることから、当社グループでは、気候変動を事業継続のうえで重要な課題の一つと認識しています。このことから、地球温暖化の緩和を目指す政府や地方自治体の環境取組と連携するとともに、バリューチェーン全体での環境負荷低減を目指し、グループ一体となって気候変動対策に取り組んでいます。

 サントリーグループでは、気候変動によるリスクや事業への影響を特定し、適切に対応していく必要があると考え、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を2019年に表明し、以降、毎年TCFD提言に基づく重要情報を当社サステナビリティサイトにおいて開示しています。

 本項目では主要な情報を記載しています。

 

(ⅰ)ガバナンス

前記「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」に記載のとおりです。

 

(ⅱ)戦略

 当社グループでは、シナリオ分析を通じて特定したリスク・機会の中でも、カーボンプライシングの導入による生産コストの増加、生産拠点への水の供給不足による操業影響、農産物の収量減少による調達コストの増加の3点が、特に大きな財務的影響を及ぼす可能性があることを認識し、これらの影響額の試算及び開示を行っています。

 

 

1.主要なリスク・機会の抽出

2.各リスク・機会の事業への影響を評価

(最重要リスクは事業に対する影響額を試算)

3.対応策の検討/実施

リスク・機会の種類・分類

想定される事業への影響

リスク軽減・機会取り込みへの

対応策

移行

リスク

新たな

規制

カーボンプライシング導入による生産コスト増

・炭素税の導入や税率の引き上げによる財務上の負担増

・事業に対する試算影響額95億円(2030年)、180億円(2050年)※1

・内部炭素価格を導入し、投資意思決定の際に考慮

・2030年までに脱炭素を促進する投資(再生可能エネルギーへの転換・ヒートポンプの活用等)を実施予定

・「環境目標2030」「環境ビジョン2050」で設定した目標を達成した場合には、47.5億円(2030年)、180億円(2050年)の削減効果

物理的

リスク

慢性

リスク

生産拠点への水供給不足による操業影響

・グループにとって最も重要な原料である水の供給不足で工場が操業停止することによる機会損失

・事業に対する試算影響額60億円※2

・当社グループ工場の全拠点を対象に、工場流域の利用可能な水資源量に関するリスクを評価

・工場での水総使用量の削減の検討や、水源涵養活動により工場で使用する水の100%以上を還元する目標を掲げて取組実施

農産物の収量減による調達コストの増加

・現状と同品質の原料調達のためのコスト上昇

・事業に対する試算影響額54億円(RCP8.5シナリオ、2050年)

・原料産地別に気候変動による将来収量予測等の影響評価を行い、原料の安定調達のための戦略実行

・持続可能な農業に向けたパイロットの実施

急性

リスク

大型台風やゲリラ豪雨を

要因とした洪水等の発生

・洪水被害による浸水、バリューチェーン分断等による操業停止

・リスクマネジメントコミッティにおいて、全ての当社グループ生産拠点のリスク評価を行う仕組みを構築

機会

商品/

サービス

気温上昇に伴う健康への影響

・平均気温の上昇や猛暑等により、熱中症対策飲料や水飲料へのニーズが高まる

・生産能力増強や安定供給体制構築のための設備投資を実施

・消費者ニーズを捉えた商品開発

環境意識の高まりによる顧客行動の変化

・水資源を大切にする企業姿勢が社会に認知されることによるブランド価値の向上

・科学的データに基づく水源涵養活動、工場での節水・水質管理の取組、水に関する啓発プログラム「水育」等を継続・強化するとともに、社外に情報発信

資源効率

新技術導入によるコスト削減

・新技術開発による石油資源の使用量とCO2排出量の削減

・ワンウェイプラスチック関連課税に対するコスト削減

・PETプリフォーム製造プロセスの効率化を目的とした新たな技術開発(「FtoPダイレクトリサイクル技術」等)

・効率的な使用済みプラスチックの再資源化技術開発(㈱アールプラスジャパン)

※1 2019年の当社グループ排出量(Scope1、2)をもとにIEA NZEの予測値から独自に推計した炭素税価格を使用し試算(為替は1ドル=146円で計算)

・2030年 日本、欧州、米州 140ドル/t、APAC 90ドル/t

・2050年 日本、欧州、米州 250ドル/t、APAC 200ドル/t

※2 水ストレスが高いエリアに立地する全当社グループ工場において、取水制限を想定した場合の利益インパクトを試算。なお、工場所在地の水ストレス評価は、世界資源研究所のAqueduct 3.0と世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filter 6.0を使用(為替は1ドル=146円で計算)

 

(ⅲ)リスク管理

前記「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」に記載のとおりです。

 

(ⅳ)指標・目標

 前記「(1)サステナビリティ全般 ④指標及び目標 「環境ビジョン2050」及び「環境目標2030」」に記載のとおりです。

 

②水の取組

 水は当社グループにとって最も重要な原料の一つであり、かつ、貴重な共有資源であるため、水に関するリスク評価に基づきグループの事業活動や地域社会、生態系へのインパクトを把握することは持続的な事業成長のために不可欠です。

 当社グループでは、地球の環境と開発の問題に関するグローバルな非営利研究団体である世界資源研究所(World Resources Institute)が開発したAqueduct Baseline Water Stress及び2040 Water Stress、世界最大規模の自然環境保護団体である世界自然保護基金(WWF)が開発したWater Risk Filterを使用して、当社グループの製品を製造する当社グループ工場を対象に、水の供給のサステナビリティに関するリスク評価を実施しています。

 リスク評価の結果に基づいて1次選定した拠点に対して、水マネジメント(取水と節水)及び地域との共生の観点から各拠点に対して質問票による個別評価を行い、リスク低減対策の状況把握と進捗管理を行っています。

 また、「環境目標2030」の達成に向け、バリューチェーン上の各拠点の属する流域における自然環境の保全・再生活動等、水に関わる様々な取組をグローバルに推進しています。サントリーグループは、日本において、2003年から水を育む森を育てる「天然水の森」の活動を進めており、2024年12月末時点では「天然水の森」を全国16都府県26か所、約1万2千ヘクタールを超える規模まで拡大し、国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養する森林面積の整備活動を進めています。海外でも、事業を展開する世界各地で水源涵養・保全活動を展開しており、現在6か国で取組を進めています。

 また、サントリーグループは、子どもたちが自然の素晴らしさを感じ、水や、水を育む森の大切さに気づき、未来に水を引き継ぐために何ができるのかを考える、次世代環境プログラム「水育」を世界8か国で実施しています。2024年には、水の啓発と安全な水の提供に関して、2030年までのサントリーグループの展開目標人数を当初の100万人から500万人に引き上げました。

 更に、サントリーグループでは、水の保全やスチュワードシップ(管理する責任)をグローバルに推進する国際標準の権威ある機関「Alliance for Water Stewardship(AWS)」による国際規格に基づくAWS認証を、「天然水奥大山ブナの森工場」(鳥取県)、「サントリー九州熊本工場」(熊本県)、「天然水南アルプス白州工場」(山梨県)の3工場で取得しています。2023年には「サントリー九州熊本工場」でAWS認証のレベルの中で最高位にあたる「Platinum」を取得しました。2021年に、サントリーグループは、AWSと日本企業等へのウォーター・スチュワードシップの浸透を目的とした連携協定を締結し、日本で初となるAWS会議をAWS国際事務局、WWFジャパンと共同で開催し、産業セクターを超えて、様々な企業、NGOや行政機関の参画を呼びかけ、日本で初となる日本企業向けのAWS公式のトレーニングセミナーの開催を支援する等、啓発活動を推進しています。

 

③容器・包装の取組

 使用済みプラスチックの不適切な取扱いによって引き起こされる環境汚染や廃棄時のGHG排出量の増加等は大きな社会問題になっており、ワンウェイプラスチック関連課税によるコスト増加等のリスクがある一方で、新規技術の開発・導入により石油使用量の削減が可能となる機会があります。

 サントリーグループでは、循環型社会の実現に向けて、「プラスチック基本方針」のもと、“2030年までにグローバルで使用する全てのペットボトルに、リサイクル素材あるいは植物由来素材等のみを使用することで、化石由来原料の新規使用をゼロにする”という「ペットボトルの100%サステナブル化」を目標として掲げて活動を行っています。

 ペットボトルのメカニカルリサイクルの推進に加え、更にGHG排出量を低減する世界初の「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発する等、長年にわたって技術革新にも取り組み、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせる、「ボトルtoボトル」水平リサイクルを積極的に推進しています。

 

④原料の取組

 当社グループの製品に不可欠な農作物やその他原料は、気候変動による平均気温の上昇や、干ばつ、洪水といった異常気象の発生により、収量の変動、栽培適域の移動等、当社グループの生産活動に大きな影響を及ぼすものがあります。

 サントリーグループでは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等を参照しながら、リスクと機会の把握を進めています。

 原料の安定調達のための取組として、原料産地別に気候変動による将来収量予測等の影響評価を行い、戦略を策定し、原料由来のGHG排出量削減や気候変動の緩和・適応効果が期待される再生農業を農家等と連携して試験的に実施しています。現在、当社グループのサプライチェーンにおいて、持続可能な農業に向けた取組を5つの産地で実施しています。

 なお、主要原料に関する人権の尊重への取組については、後記「⑤人権の尊重への取組」に記載のとおりです。

 

⑤人権の尊重への取組

 サントリーグループは、人権に配慮した活動を推進するため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)等の枠組みに沿った「サントリーグループ人権方針」のもと、人権デュー・ディリジェンスの活動をグローバルに推進してきました。当社グループでは、2024年に、更なる人権尊重に関する取組を進めるべく「サントリー食品インターナショナルグループ人権方針」を制定し、事業を展開する9か国語に翻訳し、役員及び従業員に研修、e-ラーニング、イントラネット等を通じて周知しています。

 また、サントリーグループでは、サプライチェーンにおける人権尊重に関しては、「サントリーグループサステナブル調達基本方針」及び「サントリーグループ・サプライヤーガイドライン」に則り、Sedexのプラットフォームを通じて取引先と連携して、人権・労働基準・環境等の社会的責任にも配慮した調達活動を推進しています。原料における人権リスクについては、グローバルリスクコンサルティング会社のVerisk Maplecroft社と連携し、一般的な国・業界データを用いて当社グループが購買する主要原料における潜在リスク評価を実施しました。評価の結果、潜在リスクが特定されたコーヒー豆については、サプライチェーンを遡ったリスク評価を開始しています。

 

(3)人的資本

 当社グループでは創業以来、「人」こそが経営の最も重要な基盤であるという「人本(じんぽん)主義」に基づき、従業員一人ひとりがイキイキと、やりがいを持って働き、それぞれの個性と能力を最大限発揮して成長し続けることを目指し、様々な取組を進めています。

 

①ガバナンス

 当社グループでは、人的資本経営の実行体制として、前記「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」のガバナンス体制に加え、当社取締役会で、当社グループ全体の人事戦略を審議し、当社グループ全体の重要人事を決定しています。

 当社グループの人事戦略の立案・推進は、当社の人事部門が担っています。当社の人事部門は、サントリーホールディングス㈱の人事部門及び当社グループ会社各社の人事部門と、定期的に意見交換及び情報共有する場を設け、当社グループ全体で人事戦略を着実に推進・実行できる体制を整えています。

 また、タレントマネジメント、人財育成・キャリア開発、エンゲージメント向上に向けた施策の立案実施、人権問題への対応、DEI及び健康経営に関する方針・戦略の立案実施等、様々な取組において、国内外のグループ各社と情報を共有し、議論・連携できる体制としています。

 なお、当社は、任意の人事委員会を設置しています。人事委員会は、委員の過半数を独立社外取締役とすることで、客観性及び透明性を確保しつつ、当社経営陣及びサントリーホールディングス㈱からの独立性も確保し、当社取締役候補者案、当社最高経営責任者及び社外取締役の後継者計画(プランニング)の策定、並びに取締役報酬水準を審議しています。また、より実効的に当社取締役候補者案の審議を実施すべく、経営幹部候補人財のタレントマネジメントの進捗状況についても、人事委員会へ、適宜報告しています。

 

②戦略

 当社グループは、以下の方針を立て、様々な取組を進めています。

 

■人財育成方針

 人財育成を「中長期的な視点」で捉え、性別や国籍、年齢等にかかわらず、全ての従業員に成長の機会を提供することに努めています。

 

・成長フィールド(事業・リージョン・機能)の拡がりを活用した新たなチャレンジの機会提供

 サントリーグループは、清涼飲料・スピリッツ・ビール類・ワイン・健康食品・外食・花等、様々な分野に事業を展開しています。また、日本から世界へフィールドを拡げ、今日では、米州・欧州・アジア・オセアニアにおいて、メーカーとして幅広いバリューチェーン・機能を有しています。グローバル食品酒類総合企業グループへ成長する中、「全社員型タレントマネジメント」の実践を掲げ、従業員が挑戦・成長を続けられる機会を提供できるよう努めています。

全部門育成会議/Talent Review

グローバル共通の指標を活用し、各社・各部門・各組織において年間を通じて育成会議/Talent Reviewを実施。複数・多様な視点で一人ひとりの今後のキャリアの方向性・育成ポイントについて議論を重ね、個人・組織の成長を支援

戦略的ローテーション加速

事業・リージョン・職種を跨いだ戦略的ローテーション加速により、多様なキャリアの拡大を促進。組織の活性化や事業間のシナジーの創出

 

・世界中のサントリー従業員の学び舎「サントリー大学」における企業理念の浸透と能力開発

 サントリーグループは人が育つための、日常の学びの仕組み・学びの風土づくりを強化するため、2015年4月に企業内大学「サントリー大学」を開校しました。「サントリー大学」は、「自ら学び、成長しつづける風土の醸成」、「創業の精神の共有と実践」、「リーダーシップ開発」及び「未来に向けた能力開発」の4つの視点からサントリーグループに属する全ての従業員に様々なプログラムを開発、提供しています。

「企業理念・創業精神の浸透」「グローバル経営人財の育成強化」に向けたプログラム

Global Leadership Forum/Suntory Harvard Program/Beyond Borders/Global Leadership Development Program/次世代経営者研修/グローバルチャレンジ/トレーニー制度/COMPASS – Suntory Leadership Fundamentals Program等、国境を越えた真の“Global One Suntory”を実現し、事業の枠を超えてサントリーグループ全体を牽引するリーダーを育成することを目的としたプログラムの数々を実施

学習プラットフォーム

・「My SU(My Suntory University)」国内外のサントリーグループの従業員約4万人がいつでもどこでも自発的かつ効果的に学習できる環境を整備

・「寺子屋」国内グループ従業員を対象に、業務に関することから一般教養まで様々な内容で、講義を受講したり、自らが講師として講義を行ったりする、「学ぶ」「つながる」「教えあう」をコンセプトとした環境を整備

 

 以上の人財育成方針を各現場で浸透・実行できるよう、サントリーグループでは、サントリーリーダーシップ考動項目(Suntory Leadership Spirit)(SLS)を設定し、リーダー層に求められる考動をグローバル共通で明確化しています。

 SLSは、「やってみなはれ」「お客様志向 現場発想」「組織の壁を乗り越える」「中長期視点も踏まえた、機敏な判断・考動」「人を育てる 自らも育つ」の5項目からなり、サントリーグループならではのバリューやユニークネスを生み出すリーダーシップの基盤となっています。

 とりわけ「人を育てる 自らも育つ」という項目では、中長期視点で部下の育成計画を定め、成長を積極的に支援すること、マネジャー自らの成長を常に意識し、不断の努力を行うことを求めています。

 

■社内環境整備方針

・DEI推進

 サントリーグループは、新たな価値を絶えず創造していくためには、性別や国籍、年齢等にとらわれることなく、多様な人財、多様な価値観を積極的に取り入れ、公平性を担保し、活かすことが重要であるという考えのもと、「DEI Vision Statement」と「Strategic Pillars」を制定し、その実現に向けてグループグローバルで様々な取組を進めています。

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女性の登用・活躍推進

・ストレッチ機会提供による意識・考動変革、ライフイベントとの両立に向けた制度・環境整備、グローバルでの啓発活動、部門ごとの状況・課題に応じた目標設定とサクセッション・パイプライン形成

・年に3回程度、社外取締役・監査等委員へDEI推進状況を報告し、議論を行う協議会の実施

男性育休推進

・5日間の有給育休制度の活用(ウェルカム・ベビー・ケア・リーブ)、男性従業員の第一子が出生した際のwelcome babyセミナーへの参加必須化

・子女の誕生を控える従業員は性別にかかわらず「仕事と育児の両立計画書」を作成し、両立に向けた計画を早めに立てるプロセスを導入することで、育休を取得しやすい環境の整備

・出生時の育児休職期間中の就業の条件付き認可

LGBTQ+に関する活動の展開

同性パートナーを配偶者に加える等の制度改定、相談窓口設置、グローバルでの啓発活動、東京・九州のレインボープライドへスポンサーとして協賛し体験を通じた理解促進を推進

障がい者の活躍推進

職域を限定しない採用活動、「コラボレイティブセンター」の活躍とコラボる体験(コラボレイティブセンターのメンバーの仕事を学ぶ体験)を通じたインクルーシブな風土の醸成

シニア層の多様な働き方支援

制度改定、キャリアワークショップの実施、地方創生人財支援、リスキリング支援(生成AI活用研修等)

 

・健康経営の推進

 サントリーグループは、従業員・家族の健康がサントリーの挑戦・革新の源であるという考えのもと、全従業員が心身ともに健康でやる気に満ちて働いている状態を目指しています。

 2016年に「健康経営宣言」を掲げ、Global Chief Health Officer(健康管理最高責任者)が中心となり、健康保険組合や労働組合と連携しながら様々な取組を進めています。

生活習慣病対策

食事、運動、睡眠、禁煙、適正飲酒等の観点で、従業員が主体的、継続的に健康増進に向けて取り組むための支援

メンタルヘルス対策

セルフケア、ラインケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4つの観点での支援

安全衛生管理体制の整備・推進

事業所ごとに健康レポートを配布。健康課題に対する目標を各事業所が計画し実行するPDCAサイクルを推進

女性の健康支援

女性活躍支援の一環として、女性が健康で安心して働ける環境を整備するため、婦人科専門の相談窓口を設置

 

・エンゲージメントの強化

 世界に4万人超の従業員を有するサントリーグループは、様々な個性やバックグラウンドを持つ従業員同士が仲間として積極的に繋がり、ミッションに向かってともに成長していくうえで、「エンゲージメントの強さ」が重要であると考えています。「ONE SUNTORY One Family」を合言葉に、様々な取組を進めています。

One Suntory Walk

健康×社会貢献×一体感醸成の3つの価値を持ち合わせた、世界30か国から7,700人以上が参加するユニークなイベント

ソフトバレーボール大会

全国8会場にて、国内グループ会社従業員とその家族約20,000人が参加する一大イベント

アルムナイネットワーク

・社会で幅広く挑戦、活躍しているOB、OG(自己都合退職者)の新たなネットワーク(約200人が登録)

・定年退職した従業員が旧交を温める会員組織(約2,200人が所属)

組織風土調査

エンゲージメント、企業理念の理解、コンプライアンスについてどのような意識を従業員が持っているのかを毎年調査

有言実行やってみなはれ大賞

・企業理念を体感・表現するチャレンジングな事例共有・表彰の場

・自ら旗を掲げ、従来のやり方にとらわれないまったく新しい発想に基づくチャレンジングな活動によって「やってみなはれ」を実践したチームを表彰する取組

 

③リスク管理

 リスク管理については、前記「(1)サステナビリティ全般 ③リスク管理」に記載のとおりです。

 

④指標及び目標

 サントリーグループは、人財育成を中長期的な視点で捉え、全ての従業員に成長の機会を提供するという方針に基づき、チャレンジの機会創出や、「サントリー大学」における企業理念の浸透と能力開発に取り組んでいます。

 また、新たな価値を絶えず創造していくために、性別や国籍、年齢等にとらわれることなく、多様な人財、価値観を積極的に取り入れ、公平性を担保して活かすことが重要であるとの考えから「DEI Vision Statement」を掲げ、従業員・家族の健康がサントリーの挑戦・革新の源であり、全ての従業員が心身ともに健康でやる気に満ちて働いている状態を目指して「健康経営宣言」を、それぞれ掲げています。世界中の従業員同士が仲間として積極的に繋がり、ミッションに向かってともに成長すべく「ONE SUNTORY One Family」の精神で、一人ひとりがイキイキと働ける環境づくりを進めています。

 なお、当社グループは、グループ各社がそれぞれ独自に人事制度を整備・管理していること、特に海外グループ各社においては各国の法規制・慣習を含む地域の特性及び事業形態・事業規模等も異なることから、当社グループに属する全ての会社では人的資本管理関連指標のデータ管理を行っていません。

 

指標

目標

2024年実績

対象範囲

人財育成方針

当社グループで自分自身のキャリアを築いていく様々なチャンスの機会についての好意的回答割合

2030年目標

80

69

※1

当社グループの企業理念の意味合いの理解についての好意的回答割合

2030年目標

95

91

社内環境整備方針

DEI推進

女性管理職比率

2030年目標

30

9.2

※2

男性育休取得率

2024年以降

100以上維持

109.4

健康経営の推進

再検査・精密検査受診率

2030年目標

100

93.0

※1

プレゼンティーイズム※3

2030年目標

90

80.3

従業員エンゲージメント

当社グループで働く誇りについての好意的回答割合

2030年目標

90

87

※1

※1 当社の雇用する従業員(一部の海外グループ会社への出向者等を除く)が対象

※2 当社の正規雇用従業員(当社から他社への出向者を含み、他社から当社への出向者を除く)が対象

※3 病気やケガがない時を100%とした場合の仕事の生産性 4週間の平均

 

3【事業等のリスク】

当社グループでは、リスクマネジメントコミッティが、海外グループ会社を含めたグループ全体でのリスクマネジメント活動を推進する役割を担っており、定期的に当社グループにおけるリスクの抽出、当該リスクの顕在化する可能性及び経営成績等の状況に与える影響の評価を行い、重要リスクを特定しています。当該重要リスクにつきましては、リスクマネジメントコミッティが責任者を選定のうえ、対応策の策定及び実施・モニタリングを行っています。また、リスクマネジメントコミッティは、その活動内容を取締役会において定期的に報告しています。

経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している重要なリスクは、以下のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

■事業計画・事業見通し

当社グループは、経済情勢、消費者嗜好、競合企業との競争等を織り込んで各事業の計画・戦略を立てていますが、これらの外部環境は、急速に変化するものであります。経済情勢については、当社グループが事業活動を行う主要市場において、将来の景気の後退、減速等の経済不振が生じる可能性があり、特に日本は長期的な人口動向の高齢化及び減少傾向にあります。また、飲料・食品市場では、以前より、大手メーカーの商品、特定の地域や商品カテゴリーで強みを持つメーカーの商品、プライベート・ブランド商品、及び輸入商品等との競争が行われていましたが、特にデジタル技術の進化による新たな営業活動・広告宣伝活動が競争をより激しいものにしています。更に、消費者の嗜好も目まぐるしく変化しています。こうした状況では、消費者嗜好の重大な変化を的確に把握したうえで、研究開発、商品の品質、新商品導入、商品価格、広告宣伝活動、販売促進活動等や、これらにおける新しい価値の創造によって、競合企業よりも優位に立ち、消費者の需要に見合った商品を十分な数量で市場に供給することが求められます。しかし、これらの対応が遅れた場合、当社グループの商品に対する需要の減少、競合企業による市場の奪取、ブランドイメージへの悪影響、棚卸資産の評価損等が生じ、当社グループの売上又は利益が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、卸売業者及び大手小売業者を含む多数の販売チャネルを通じて商品を販売しています。日本においては、自動販売機等もまた重要な販売チャネルとなっています。このような販売チャネルに変化が生じることにより、特定チャネルにおける売上や利益が減少する等のリスクが、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。更に、当社グループが販売する商品の中には、天候により売上が大きく左右されるものがあります。当社グループの商品は、通常春から夏にかけての暑い時期に販売数量が最大となりますが、この時期に気温が十分に高くならなかった場合、商品需要が落ち込み、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、消費者嗜好の変化を敏感に予測して、嗜好にあった魅力的な商品の研究開発に努めるほか、商品の供給量に関しても適切な需給計画を立案しています。加えて、新商品投入、ブランド力強化のための積極的な広告宣伝活動・販売促進活動に励む等、適切に経営資源を投入しています。また、外部環境変化の兆候を適時に捉えるように努め、これに見合った各事業の計画・戦略の見直しを行うことで、対応を図っています。

 

■事業提携・資本提携・企業買収

当社グループは、競争力強化による更なる成長の実現のため、国内外他社との事業提携・資本提携及び国内外他社の買収を重要な経営戦略の一つと位置付けています。事業提携・資本提携・企業買収の意思決定に際しては必要かつ十分な検討を行っていますが、事業提携等の適切な機会を見出せないこと、競合的な買収による場合を含め、相手先候補との間で事業提携等に係る条件について合意できないこと、事業提携等に関連して必要な同意・許認可・承認を得ることができないこと、必要資金を有利な条件で調達できないこと、新たな地域・商品カテゴリーに参入することにより、当社グループの事業内容が変化すること、当社グループが精通していない若しくは予測することができない課題に直面すること、又は事業提携等の結果として、予期していた利益や経費削減効果を実現できないこと等の問題が生じ、意図した成果を十分に得られない可能性があります。これらの事由が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。かかるリスクに備え、事業ポートフォリオの適切な見直しを図っています。

また、当社グループは、企業買収等に伴い、のれん及び商標権を計上しており、当社グループが将来新たに企業買収等を行うことにより、新たなのれん、商標権を計上する可能性があります。当社グループは、かかる無形資産等について、毎期減損テストを実施し評価しています。当該無形資産等について減損損失を計上した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があるため、投資評価及び判断、投資後のモニタリングについての共通ルールを定めて対応しています。

 

■品質・安全性

当社グループは、商品及びサービスに当社グループにおける品質基準を設定していますが、その基準に対する品質の不足、品質の低下、安全性等に問題が生じた場合、又は当社グループの商品・サービスの安全性等に問題がない場合であっても、食品等の安全性等に関する否定的な報道がされた場合、ソーシャルネットワーク上で否定的な情報が拡散された場合、又は他社商品等の安全性に問題が生じた場合に、当社グループの商品・サービスへの安全性への懸念が生じることがあります。このような問題は、当社グループにおいて生じ得るのみならず、当社の管理が及ばない販売先や仕入先・製造委託先において生じる可能性があります。

これらのリスクが発生した場合、製造中止、リコール又は損害賠償請求が発生する可能性があり、また、仮に限定的なリコール又は根拠のない若しくは僅少な金額の損害賠償請求であっても、当社グループのブランド及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの事由が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

サントリーグループは、食品を製造・販売する企業グループとして商品及びサービスの品質、安全性等を最重要課題と認識し、適用される規制を遵守するとともに、「サントリーグループ品質方針~All for the Quality~」を制定し、①サントリーグループの一人一人が、お客様の立場に立って、誠実に商品及びサービスをお届けする、②お客様に正確で分かりやすい情報をお届けし、お客様の声に真摯に耳を傾け、商品及びサービスに活かす、③法令を遵守する、④商品及びサービスの安全性を徹底する、⑤国際標準を活用し、よりよい品質の追求を続ける、という理念のもと、品質、環境、健康及び安全性等に関する様々な基準を採用し、品質管理・品質保証に取り組んでいます。

 

■原材料

当社グループが使用する主要な原材料には、気候変動やグローバル市場の状況等により、その需給バランスが大きく変動し、価格が著しく変動する可能性があります。また、商品を製造する際に使用する電気や天然ガスといったエネルギーの価格も著しく変動する可能性があります。これらの原材料及びエネルギーの価格が継続的に上昇し生産コストが上昇した場合、当社グループの原価を押し上げることとなり、高騰した原価を販売価格に十分に転嫁できない場合や、高騰した原価の販売価格への転嫁により当社グループの商品に対する需要が減少する場合には、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの取引先において、気候変動、自然災害、火災、作物の不作、感染症、労働力不足、労働衛生・労働安全上の問題、ストライキ、製造上の問題、輸送上の問題、供給妨害、政府による規制、行政措置、国家間の対立、戦争の勃発、政治不安、テロリズム、環境への配慮不足、人権問題、エネルギー危機等の事由が生じたことにより、当社グループが原材料の持続可能な調達を妨げられる可能性があります。かかるリスクは、供給源が限られている原材料であったり、取引先又はその施設が、上記の事由が生じる危険性の高い国や地域に所在したりする場合、より深刻な問題となる可能性があります。また、取引先を変更する場合には長期のリードタイムを要する可能性があります。原材料不足に陥った場合又は原材料の供給が長期にわたり滞る場合、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組」に記載のとおり、取り組んでいます。

 

■サプライチェーン

当社グループ及び当社グループの取引先は、世界各国で原材料の調達・製造を行っています。デジタル技術等を活用したサプライチェーンマネジメントにより適切な品質管理、サプライチェーン(ロジスティクス、生産、調達等)コストの削減及び収益性の向上を実現することは、当社グループの事業戦略の一つです。しかし、当社グループは、当社グループの管理が及ばない要因による場合を含め、これを実現できない可能性があります。更に、気候変動、自然災害、火災、作物の不作、感染症、労働力不足、労働衛生・労働安全上の問題、ストライキ、製造上の問題、輸送上の問題、供給妨害、政府による規制、行政措置、国家間の対立、戦争の勃発、政治不安、テロリズム、環境への配慮不足、人権問題、エネルギー危機等により当社グループの製造又は販売活動に支障が生じる結果、当社グループの製造又は販売能力が損なわれる可能性があります。かかる事由の発生可能性を減少させ、その潜在的影響を低減するための十分な措置が取られない場合、又はかかる事由が発生したときに適切な対処ができない場合には、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があるとともに、当社グループのサプライチェーンを修復するための追加的な経営資源の投入が必要となる可能性があります。

当社グループでは、生産・物流・営業等をシステム上で、データ連携し、情報一元化することにより、サプライチェーンマネジメントの最適化を実施してまいります。また、当社グループでは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組」に記載のとおり、取り組んでいます。

 

 

■水

水は当社グループのほぼ全ての商品の主要な原料ですが、世界の多くの地域において、人口増加による消費量の増加、水質汚染、管理不足や気候変動により、水の供給を受けられない可能性があります。世界中で水資源の需要が高まるにつれて、当社グループを含む、豊富な水資源に依存している企業は、製造コストの増加や、生産量についての制約に直面する可能性があり、その結果、長期にわたって当社グループの収益性又は成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。

水に関する取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組」に記載のとおりです。

 

■GHG

GHG排出量増加に起因する地球温暖化により、カーボンプライシングの導入による生産コストの増加、生産拠点への水の供給不足による操業影響、農産物の収量減少による調達コストの増加等が生じる可能性があります。

GHG削減に関する取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組」に記載のとおりです。

 

■容器・包装

サントリーグループでは、循環型社会の実現に向けた取組を推進していますが、使用済みプラスチックの不適切な取扱いによって引き起こされる環境汚染や廃棄時のGHG排出量の増加等は大きな社会問題になっています。ワンウェイプラスチック関連課税によるコスト増加等が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

容器・包装に関する取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組」に記載のとおりです。

 

■地政学・地経学

当社グループは、日本国内のみならず、海外においても幅広く事業を展開しています。海外事業においては、日本と大きく異なる又は十分に整備されていない租税制度や法令、規制等の制定及び変更、国家間の対立、紛争・戦争の勃発、政治不安、保護主義的政策、国際移動制限、テロリズム、暴動等の非常事態といった様々な要因が発生し、原材料や包材に係るコストの増加や原材料不足、最終製品の市場価格の上昇、輸出入への影響が生じ、事業損益への悪影響や事業継続に困難が生じる可能性があります。また、従業員の安全確保を適切に行えないことにより、従業員の生命・身体に重大な危険が及ぶ可能性があります。

当社グループでは、平時から有事対応体制基盤を強化・確立し、有事に際して速やかに対応体制を起動し、全社連携するとともに、具体的事案に沿ったシミュレーションを平時から重ね、グループ会社を含め、関係部署と適時に適切な判断を行うための事業継続計画(BCP)を策定しています。また、サントリーグループでは、情報の収集・分析・共有の実践と、その基盤の継続的強化のための活動も行っています。

 

■人権

当社グループ内又はバリューチェーン上で、人権問題が発生し、又は負の影響を与えた場合、人権対応や人権対応に関する情報開示が不十分と判断された場合、当社グループの信用が損なわれ、又は当社グループの商品に対する消費者の信頼が失われ、当社グループの商品の需要の低下に繋がる可能性や、原材料調達等に支障が生じる可能性があります。これらの事由が生じた場合、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に影響を及ぼし、更には当社グループの信用を回復するための追加的な経営資源の投入が必要となる可能性があります。

人権に関する取組については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組」に記載のとおりです。

 

 

■事業継続

大規模地震、台風や集中豪雨による洪水・土砂災害、雪害、火山噴火等の自然災害や、感染症等、経済・社会活動の継続を脅かすリスクが発生した場合、当社グループの事業継続に重大な影響が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、こうしたリスクに備え、生産、原材料調達、物流、営業・販売活動について、事業継続計画を策定するとともに、有事の際の本部機能、インフラの分散等、有事対応体制の強化を継続的に図っています。影響が広範囲に及ぶリスクについては、対応マニュアルを定め、対応基盤を構築するとともに、実際に重大なリスクが発生した際には、迅速な情報伝達と意思決定を行い、適切に対処することで、その影響及び被害の極小化に取り組むこととしています。

 

■情報セキュリティ

当社グループは、取引業務の遂行、顧客との連絡、経営陣への情報提供及び財務に関する報告書の作成等を正確かつ効率的に行うため、情報システムを利用しています。また、消費者への新しい価値の提供や、業務遂行の効率化を目的に、AI技術を利用しています。これらが、地震その他の自然災害、テロリストによる攻撃、ハードウエア・ソフトウエア・設備・遠隔通信の欠陥・障害、処理エラー、コンピュータ・ウイルス感染、ハッキング・悪意をもった不正アクセス等のサイバー攻撃、その他セキュリティ上の問題、誤った方法での利用、外部業者に起因する障害又は不具合等により、個人情報や機密情報の漏洩、著作権・肖像権・パブリシティ権等の侵害、情報システムの一定期間の停止等が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループが、グローバル化やデジタル技術革新に伴い、データの利活用をする中、個人のプライバシーに対する配慮や対応が不足することにより、各国の個人情報保護法令を遵守できない場合があります。これらの事由が生じた場合、多額の損害賠償責任・制裁金やレピュテーションの毀損等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

情報システムについては、セキュリティ、バックアップ及び災害復旧に係る対策を講じています。情報の取扱いについては、「サントリーグループ情報セキュリティ基本方針」のもと、個人情報や機密情報の安全管理と漏洩防止、情報セキュリティ遵守意識の維持・向上及び情報システムの安全かつ円滑な稼動の堅持のため、適切なセキュリティ対策を実施し、また、AIの利用については「サントリーグループAI基本方針」をグループ全体で共有・遵守し、責任あるAI利用を進めています。個人情報保護法令については、当社グループ内での個人情報の取扱いや既存社内ルールにつき現状を把握し、各国の法的規制への対応策を検討のうえ、優先度に応じて必要な社内ルール策定、契約・業務フロー整備等の対応を進めています。

 

■コンプライアンス

当社グループは、日本その他当社グループが事業を行う地域において、様々な法的規制を受けています。これらの規制には、品質、表示・健康訴求、競争、贈収賄防止、労働、環境・リサイクル及び税関連法規が含まれ、当社グループによる商品の製造、安全、表示、輸送、広告宣伝及び販売促進等の事業活動の様々な側面に適用されます。また、当社グループは国際的に事業を展開していることから、日本法及び外国法における腐敗防止規定を遵守する必要があります。当社グループに適用のある法的規制に違反した場合、当社グループの信用が失われ、厳格な罰則又は多額の損害を伴う規制上の処分又は私法上の訴訟提起が行われる可能性があり、特にかかる規制の不遵守や事故により環境汚染が発生した場合、当社グループは損害賠償請求や行政処分により多額の費用を負担することがあります。更に、当該法的規制の内容が大幅に改正され、若しくはその解釈に大幅な変更が生じ、又はより高い基準若しくは厳格な法的規制が導入された場合、コンプライアンス体制構築に係る費用が増加する可能性があります。

当社グループでは、規範策定、周知・啓発、実行、状況把握の活動サイクルを通じ、コンプライアンスを最優先する組織・風土づくりを進めています。また、サントリーグループでは、全従業員共通の基本姿勢を示した企業倫理綱領を制定し、グループ横断的な視点からコンプライアンス推進体制を整備しています。

 

 

■人財の確保・育成

当社グループが持続的に成長するためには、リーダーシップのある経営陣及び有能な従業員を継続して雇用し、かつ、育成することが必要となります。また、当社グループは、新たな従業員を雇用し、教育し、その技術及び能力を育成しなければなりません。計画外の退職が生じ、又は現経営陣の適切な後継者の育成に失敗した場合には、当社グループの組織的ノウハウが失われ、当社グループの競争優位性が損なわれる可能性があります。また、ジェンダー、性的指向、年齢、障がい、国籍、文化、民族、宗教、信条、経歴、生活様式等のあらゆる多様性が受容されるとともに、従業員の人権問題が適切に予防・把握・対処されることで、多様な人財がパフォーマンスを発揮できる制度や職場環境を醸成できない場合には、当社グループのレピュテーションが損なわれる可能性及び優秀な人財を確保できず、多様性がもたらすイノベーション創出やリスク管理が達成できない可能性があります。

従業員の雇用に関する競争の激化、従業員の退職率の上昇、従業員の福利厚生費の増加に起因するコストの増加又は適切な労務管理ができないことによる従業員の健康阻害等が発生することにより、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

当社グループでは、人財評価をグループ全体及び地域ごとに行い、人財の確保の観点も踏まえて、育成施策や配置を討議し、人財ローテーションやグローバル共通の人財開発に取り組んでいます。国内では、戦略領域での人財獲得をより一層進める等して事業経営人財を計画的かつ構造的に育成しています。

なお、人財育成方針及び社内環境整備方針については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」に記載のとおりです。

 

■為替と金利の変動

当社グループは、原材料の一部を、主に米ドルを中心とした、日本円以外の通貨建てで海外から調達しています。当社グループは、為替相場の変動リスクを軽減するためにデリバティブ取引を利用しているものの、かかるヘッジ取引によっても全ての為替相場の変動リスクを回避できるわけではなく、為替の変動が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの連結財務諸表は日本円により表示されているため、海外子会社の収益及び費用並びに資産及び負債の金額を、各決算期の期中平均又は期末における為替レートに基づき日本円に換算する必要があります。したがって、外国通貨の為替変動は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

更に、当社グループは、必要資金の一部を有利子負債で調達しており、将来的な資金需要に応じて今後も金融機関からの借入や社債等による資金調達を新たに行う可能性があります。金利の変動リスクを軽減するために、固定金利での調達やデリバティブ取引を利用していますが、金融資本市場の混乱や格付機関による当社の格付の引下げ等により、金利に大幅な変動があった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、為替リスクヘッジや資金調達手段の多様化により、これらのリスク低減に取り組んでいます。

 

■酒類に対する規制

WHO(世界保健機関)において、2010年に「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が採択され、2022年には2030年までの世界戦略の更なる推進のための実行計画が採択される等、世界的な規模で、責任ある酒類のマーケティング活動、アルコール関連問題への取組強化が求められています。長期的に見て、当社グループの予測の範囲を超える規制等が実施された場合、酒類の消費が減少する場合が考えられます。このようなリスクが顕在化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

サントリーグループは、アルコール関連問題にグローバルに取り組むために、専門部署を設置し、国内外の酒類業界と連携して、①不適切な飲酒の予防や適正飲酒の啓発、②責任ある酒類マーケティング活動の推進、③様々なステークホルダーとの連携・協力等を行っています。酒類を製造・販売する企業グループとしての社会的責任を果たすため、広告宣伝活動にあたっては、厳しい自主基準のもと、自ら規制を行っています。また、WHO等国際機関、各国政府の政策やアルコールに対する社会的動向等、機能横断的に現状把握を進めています。そして、アルコールによる健康リスクに関する世界の最新情報の収集を行っています。

 

■ガバナンス

当社グループは、国内外に数多くのグループ会社を保有し、グループ経営を行っています。グループが複層化・複雑化することで、適切なグループガバナンスが機能しない場合、一体経営の推進やグローバル成長戦略推進に大きな支障をきたし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、意思決定の迅速性・透明性を確保すべく、権限の最適な分配、レポートラインの整理等の体制整備を行っています。

 

■親会社の支配権

本書提出日現在において、当社の親会社であるサントリーホールディングス㈱は当社発行済普通株式の59.48%を所有し、当社取締役の選解任、合併その他の組織再編の承認、重要な事業の譲渡、当社定款の変更及び剰余金の配当等の当社の基本的事項についての決定権又は拒否権を有しています。株主総会の承認が必要となる全ての事項の決定に関して、他の株主の意向にかかわらずサントリーホールディングス㈱が影響を与える可能性があります。なお、サントリーホールディングス㈱の事前承認事項はなく、当社が独自に経営の意思決定を行っています。

当社とサントリーホールディングス㈱及びその子会社との間の主な関係等についての詳細は、以下のとおりです。

 

① サントリーグループとの取引関係について

 当社グループは、サントリーグループ(当社グループを除く。)に属する会社と取引を行っています。

 当連結会計年度における主な取引は次のとおりです。

(単位:百万円)

取引内容

取引先

金額

取引条件等の決定方法

製品輸送業務の委託

サントリーロジスティクス㈱

54,174

品質及び類似サービスの市場相場価格を勘案し、両者協議のうえ決定

ブランドロイヤリティの支払い

サントリーホールディングス㈱

24,349

ブランド価値等を勘案し、両者協議のうえ使用対価として妥当な料率を決定

コーヒー豆の仕入れ

サントリーコーヒーロースタリー㈱

17,439

品質及び類似商品の市場相場価格を勘案し、両者協議のうえ決定

ウーロン茶葉・コーヒーエキスの仕入れ

三得利貿易(香港)有限公司

14,636

品質及び類似商品の市場相場価格を勘案し、両者協議のうえ決定

 

 サントリーホールディングス㈱を含むサントリーグループ(当社グループを除く。)との取引・行為等については、社内規程に従い、取引・行為等を実施する部署において、また、法務部門及び財務・経理部門において、サントリーホールディングス㈱からの独立性の観点も踏まえ、必要性・合理性、条件等の妥当性、公正性について、事前に確認を行うこととしています。更に、一定金額以上の取引、及び、ブランド・人財・重要な資産・情報等の当社の企業価値の源泉となる経営資源に関する取引・行為等(以下、合わせて「重要取引・行為等」という。)については、特別委員会の事前審議・答申を経た上で、取締役会において、その重要取引・行為等の必要性・合理性、条件等の妥当性、公正性について十分に審議した後、意思決定を行います。事前の審議に加え、事後、審議の内容に基づいた取引・行為等が行われたかどうかについて、社内規程に従い、法務部門、財務・経理部門、内部監査部門によるチェックと、監査等委員会による監査を実施します。また、重要取引・行為等については、特別委員会及び取締役会に実施状況を報告し、実施結果を確認することとしています。これらの体制により、サントリーグループ(当社グループを除く。)との取引・行為等の公正性・透明性・客観性を確保していきます。

 

② サントリーホールディングス㈱との人的関係について

 当社の取締役(監査等委員である取締役を含む。)8名のうち、サントリーホールディングス㈱の常務執行役員である宮永暢氏が、当社の取締役に就任しています。これは、同氏の有する、サントリーグループの飲料事業・酒類事業における豊富な海外での財務・会計部門における経験や経営経験、経営企画部門の部門長としての経営全般についての高い見識が、当社取締役会の更なる機能強化に資すると判断したためです。

 また、当社では、サントリーホールディングス㈱より受け入れる従業員につきましては、出向ではなく、転籍としています。

 

③ 商標権、特許権、包括ライセンス契約等について

当社グループは、サントリーホールディングス㈱との間でコーポレートブランド「サントリー」についての使用許諾契約を締結しており、これに基づき「サントリー」の名称・ブランドを使用することを許諾されています。当該契約に基づく「サントリー」の使用については、当社がサントリーグループに属していることが条件となっています。なお、当社は当該契約に基づきサントリーホールディングス㈱にロイヤリティの支払いを行っています。

また、当社グループの事業に関連する商標権、特許権、意匠権等の知的財産権については、サントリーグループにおける知的財産権の有効活用の促進及び維持管理集中化による効率化のため、一部をサントリーホールディングス㈱が保有し、当社はサントリーホールディングス㈱から独占的実施権等を付与されています。なお、当社はサントリーホールディングス㈱に当該独占的実施権等に伴うロイヤリティの支払いを行っていません。また、当該許諾関係が終了する場合には、これらの知的財産権についてはサントリーホールディングス㈱から当社に無償で譲渡されることになっています。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績等の状況の概要

(ⅰ)経営成績

当連結会計年度の業績は、売上収益は1兆6,968億円(前年同期比6.6%増、為替中立2.7%増)、営業利益は1,602億円(前年同期比13.1%増、為替中立7.1%増)となりました。

販売費及び一般管理費は、4,780億円計上しましたが、この主な内容は、広告宣伝及び販売促進費が1,625億円、従業員給付費用が1,671億円等であり、その結果、営業利益は1,602億円(前年同期比13.1%増、為替中立7.1%増)となりました。

金融収益は56億円となりました。また、金融費用は48億円となりました。

これらの結果、税引前利益は1,610億円(前年同期比13.6%増、為替中立7.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は935億円(前年同期比13.0%増、為替中立7.8%増)となりました。また、1株当たり当期利益は302円57銭となりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

 

[日本事業]

売上収益は7,318億円(前年同期比3.3%増)、セグメント利益は491億円(前年同期比21.3%増)となりました。

[アジアパシフィック事業]

売上収益は4,020億円(前年同期比8.2%増、為替中立3.1%増)、セグメント利益は454億円(前年同期比5.4%増、為替中立1.0%増)となりました。

[欧州事業]

売上収益は3,681億円(前年同期比8.5%増、為替中立0.0%増)、セグメント利益は604億円(前年同期比16.7%増、為替中立7.0%増)となりました。

[米州事業]

売上収益は1,948億円(前年同期比12.7%増、為替中立4.5%増)、セグメント利益は237億円(前年同期比12.9%増、為替中立4.7%増)となりました。

 

(ⅱ)財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、売上債権及びその他の債権の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,456億円増加して2兆580億円となりました。

負債は、社債及び借入金の減少等があった一方、仕入債務及びその他の債務の増加等により、前連結会計年度末に比べ154億円増加して7,428億円となりました。

資本合計は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,303億円増加して1兆3,153億円となりました。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は58.8%となり、1株当たり親会社所有者帰属持分は3,914円53銭となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ113億円減少し、1,605億円となりました。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益1,610億円、減価償却費及び償却費770億円等に対し、法人所得税の支払393億円、売上債権及びその他の債権の増加207億円等により、資金の収入は前連結会計年度に比べ354億円増加し、1,937億円の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出1,083億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ235億円増加し、1,013億円の支出となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払491億円、社債の償還による支出350億円等により、資金の支出は前連結会計年度に比べ34億円減少し、1,120億円の支出となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

(ⅰ)生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

679,878

103.5

アジアパシフィック

384,126

104.3

欧州

276,303

110.7

米州

149,152

114.9

合計

1,483,399

105.6

(注)1.金額は、最終販売価格によっています。

2.生産実績には外注分を含んでいます。

 

(ⅱ)受注実績

 当社グループは、原則として見込み生産を主体としているため、記載を省略しています。

 

(ⅲ)販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前年同期比(%)

日本

731,814

103.3

アジアパシフィック

402,049

108.2

欧州

368,081

108.5

米州

194,819

112.7

合計

1,696,765

106.6

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成されています。

 連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しています。重要な見積り及び判断については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。また、過去の実績や取引状況を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積りを行っている部分があり、これらの見積りについては不確実性が存在するため、実際の結果と異なる場合があります。

 

② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(ⅰ)経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社グループは、中期経営戦略及び中期経営計画を「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営戦略及び(3)中期経営計画(2024-2026)」に記載のとおり策定しています。その実現に向けて、当社グループが実施した活動は以下のとおりです。

当社グループは、真のグローバル飲料企業として持続的な事業成長と企業価値向上を実現すべく“質の高い成長”を目標に掲げています。前連結会計年度に策定した中期経営計画では、「ブランド戦略」、「構造改革」、「DEI」、「サステナビリティ」の4つを重要な戦略テーマに掲げ、積極的に事業を展開しています。

2024年は、外部環境は引き続き厳しいと想定された中、コアブランドを中心とした積極的なマーケティング活動を展開するとともに、RGM活動を強化し、全セグメントで更なる売上収益成長を目指しました。そして、主要国の需要状況を着実に捉え、全セグメントでコアブランドへの集中活動を継続した結果、売上収益及び営業利益は過去最高となりました。

売上収益は、全セグメントでコアブランド集中活動を徹底したことに加え、日本における価格改定を含めたRGM活動が寄与し、1兆6,968億円(前年同期比6.6%増、為替中立2.7%増)となりました。

営業利益は、原材料高及び為替変動によるコスト増の影響を概ね想定どおりに受けたことに加え、欧州におけるマクロ経済減速の影響を受けましたが、日本及びアジアパシフィックが全体をけん引し、増収効果及びコストマネジメントの徹底により吸収し、1,602億円(前年同期比13.1%増、為替中立7.1%増)となりました。

税引前利益は、営業利益の増加により、前連結会計年度に比べ193億円増加して1,610億円(前年同期比13.6%増、為替中立7.7%増)となりました。

当期利益は、税引前利益の増加により、前連結会計年度に比べ131億円増加して1,176億円(前年同期比12.6%増、為替中立6.8%増)となりました。

非支配持分に帰属する当期利益は、Suntory PepsiCo Vietnam Beverage Co., Ltd.やPepsi Bottling Ventures LLCにおいて業績が伸長した影響により24億円増加し、親会社の所有者に帰属する当期利益は、935億円(前年同期比13.0%増、為替中立7.8%増)となりました。

 

セグメント別の業績は次のとおりです。

[日本事業]

清涼飲料市場(当社推定)は、価格改定の影響を受ける中、猛暑効果もあり、前年同期並みとなりました。

販売数量は、継続的なコアブランド集中活動の強化、新商品投入、マーケティング活動を強化しましたが、価格改定の影響等もあり前年同期を僅かに下回りました。

ブランド別には、「サントリー天然水」は、需要が堅調な中、引き続き多彩なマーケティング活動を展開しました。「きりっと果実」シリーズや「特製レモンスカッシュ」は引き続き好調を維持しました。また新しい容器にリニューアルした1Lペットボトルも好調に推移し、過去最高の販売数量となりました。「BOSS」は、「クラフトボス」シリーズの「甘くないイタリアーノ」が好調を維持しましたが、ブランド全体の販売数量は前年同期を下回りました。「伊右衛門」は、無糖茶市場が価格改定の影響を大きく受ける中、販売数量は前年同期を下回りましたが、「伊右衛門 濃い味(機能性表示食品)」、「特茶」は、いずれも好調を維持しています。

売上収益は、価格改定効果や商品容量に基づく商品構成の改善が寄与したことにより、増収となりました。

セグメント利益については、ブランド及び各チャネルの重点活動による売上収益の伸長と原材料高及び為替変動の影響が想定内に収まったこと、コストマネジメントの徹底により、増益となりました。

日本事業の売上収益は7,318億円(前年同期比3.3%増)、セグメント利益は491億円(前年同期比21.3%増)となりました。

 

[アジアパシフィック事業]

アジアパシフィックでは、タイ(清涼飲料事業・健康食品事業)、ベトナム(清涼飲料事業)を中心に、市場の回復と継続的なマーケティング活動強化により増収増益となりました。

売上収益は、主要事業における販売数量の伸長により、増収となりました。

セグメント利益については、増収及びマーケティング活動強化により増益となりました。

清涼飲料事業では、ベトナムは、主力ブランドの「PEPSI」、「Aquafina」が引き続き好調に推移し、増収となりました。タイは、「PEPSI」や「TEA+」が好調に推移し、増収となりました。オセアニアでは、主力ブランドであるエナジードリンク「V」のマーケティング活動を引き続き強化した結果、販売数量は前年同期を上回り、増収となりました。

健康食品事業では、インバウンド需要をはじめとする市況の改善に加え、コミュニケーション刷新やマーケティング活動強化により「BRAND'S Essence of Chicken」が回復トレンドを維持し、「BRAND'S Bird's Nest」は引き続き販売数量が前年同期を大きく上回り、増収となりました。

アジアパシフィック事業の売上収益は4,020億円(前年同期比8.2%増、為替中立3.1%増)、セグメント利益は454億円(前年同期比5.4%増、為替中立1.0%増)となりました。

 

[欧州事業]

売上収益は、主要国における個人消費の低迷、競争環境の激化や不安定な天候の影響を受けましたが、コアブランド集中活動に加え、価格改定を含めたRGM活動が寄与し、増収となりました。セグメント利益については、コストマネジメントの徹底や、英国における供給体制の回復もあり、増益となりました。

フランスでは、主力商品である「Oasis」の販売数量が前年同期を上回りましたが、長引くインフレによる消費動向の低下や天候不順等による需要の減少により減収となりました。英国は、第2四半期における商品の供給不足の影響があり、「Lucozade」の販売数量が前年同期を下回りましたが、その後回復基調に転じ、増収となりました。スペインでは、市況の鈍化により、販売数量が前年同期を下回り、減収となりました。

欧州事業の売上収益は3,681億円(前年同期比8.5%増、為替中立0.0%増)、セグメント利益は604億円(前年同期比16.7%増、為替中立7.0%増)となりました。

 

[米州事業]

米州では、主力の炭酸カテゴリー及び非炭酸カテゴリーの販促活動を強化しました。

売上収益は、価格改定を含めたRGM活動も寄与し、増収となりました。

セグメント利益については、売上収益の伸長により、原材料価格並びに物流費及び人件費高騰の影響を吸収し、増益となりました。

米州事業の売上収益は1,948億円(前年同期比12.7%増、為替中立4.5%増)、セグメント利益は237億円(前年同期比12.9%増、為替中立4.7%増)となりました。

 

セグメント利益合計は1,602億円(前年同期比13.1%増、為替中立7.1%増)であり、連結損益計算書の営業利益と一致しています。

 

2025年は、為替変動・原材料高や厳しい競争環境が続くとの想定のもと、コアブランドを中心とした積極的なマーケティング投資・販促活動を徹底することに加え、RGM活動を強化し、更なる売上収益成長を目指します。コストマネジメントの徹底も継続し、増益を目指します。

日本では、「コアブランドイノベーション」、「自販機事業の構造改革」、「サプライチェーン構造革新」を事業戦略の重点領域とし、売上収益と利益を成長させていきます。

アジアパシフィックでは、各主要市場において堅調な需要が続くとの想定のもと、フルバリューチェーンの総合力を発揮し、コアブランドの更なる成長を目指します。売上収益の伸長及び生産設備の増強等のコスト削減活動を徹底していきます。

欧州では、主要国の需要回復に時間がかかるとの想定のもと、コアブランドイノベーションの継続及び販促活動強化や、ポートフォリオの拡充により、売上収益の成長を目指します。売上収益の増加やコスト削減活動及び事業構造改革を継続させることで、収益性を維持していきます。

米州では、主力である炭酸カテゴリーの強化を進めるとともに、伸長する非炭酸カテゴリーの更なる拡大に取り組みます。また、価格政策やサプライチェーンの更なる強化を進め、売上収益と利益の成長を加速していきます。

経営陣一体となって、以上の取組を、強力に迅速に進めていきます。

 

 

(ⅱ)財政状態の分析

 当社グループは日本のみならずアジアパシフィック、欧州、米州の各地に活動拠点を有しています。各拠点の機能通貨で算定された資産・負債は連結財務諸表の表示通貨である日本円に換算するため、当社グループの資産・負債残高は各種通貨の日本円に対する為替変動に大きく影響されます。各通貨の期首及び期末の為替レートについては「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (3)外貨換算」に記載のとおりです。当連結会計年度は主要な通貨が期末にかけて円安に推移したことが要因となり、資産・負債がそれぞれ増加しています。

 

 のれん及び無形資産は当社グループの資産総額の約39.7%を占める重要な構成要素であり、過去に実施した企業買収等の結果、取得したブランドや統合により得られるシナジーを評価して計上したものです。このうち、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については定期的な償却は行わず、年に一度実施する減損テストを実施しています。減損テストの回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい金額として算定しています。これらの回収可能価額は、経営者が承認した事業計画及び事業計画期間後の長期成長率に基づいたキャッシュ・フローの見積額を、当該資金生成単位及び資金生成単位グループの税引前加重平均資本コスト(WACC)により現在価値に割り引いて算定しています。ブランドごとに販売する地域の景気や天候、ブランドコンディションには違いがあり、翌連結会計年度以降、個別には減損損失が発生する場合がありますが、現時点において、当社グループがこれまでに実施したM&Aとその後の統合プロセスはいずれも全体としては順調に推移していると評価しています。当社グループは、今後ものれん及び無形資産の適正な評価に取り組む方針です。

 

 また、負債は、社債及び借入金の減少等により減少しています。借入金が毎期着実に減少しており、ネットD/Eレシオは△0.06となりました。

 

(ⅲ)キャッシュ・フローの状況の分析

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ113億円減少し、1,605億円となりました。

 営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額の増加28億円に対し、税引前利益の増加193億円等により、資金の収入が前連結会計年度に比べ354億円増加し、1,937億円の収入となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出の増加291億円に対し、子会社の売却による収入の増加47億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ235億円増加し、1,013億円の支出となりました。フリーキャッシュフローは924億円の収入となり、前連結会計年度から119億円増加しました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は短期借入金及びコマーシャル・ペーパー、長期借入金、社債の減少による支出498億円、配当金の支払額501億円等に対し、当連結会計年度は短期借入金及びコマーシャル・ペーパー、長期借入金、社債の減少による支出488億円、配当金の支払額491億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ34億円減少し、1,120億円となりました。

 

(資本の財源及び資金の流動性について)

 当社グループにおける資金需要のうち、主なものは設備投資、事業投資、有利子負債の返済及び運転資金等です。当社グループは資金の流動性確保のため、市場環境や長短のバランスを勘案して、銀行借入やリース等による間接調達のほか、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等の直接調達を行い、資金調達手段の多様化を図っています。

 また、事業活動等により創出したキャッシュ・フローに加えて、金融機関より随時利用可能な信用枠を確保しており、資金需要に対応しています。

 なお、今後予定されている設備投資に係る資金需要の主なものは、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。

 

5【経営上の重要な契約等】

契約会社名

契約締結先

国名

契約内容

締結年月

サントリー食品

インターナショナル㈱

PepsiCo, Inc.

U.S.A.

ペプシブランド製品の製造・販売に関するライセンス契約

1997年12月

(注)1

サントリー食品

インターナショナル㈱

Pepsi Lipton Trading SARL

Switzerland

リプトンブランド紅茶飲料の製造・販売に関するライセンス契約

2016年1月

(注)1

サントリー食品

インターナショナル㈱

㈱福寿園

日本

日本茶製品の共同開発と商品展開に関する業務提携契約

2003年7月

(注)1

サントリー食品

インターナショナル㈱

STARBUCKS

CORPORATION

U.S.A.

スターバックスブランドRTDコーヒーの製造・販売に関するライセンス契約

2005年3月

サントリー食品

インターナショナル㈱

サントリー

ホールディングス㈱

日本

サントリーホールディングス㈱の有するコーポレートブランドの使用に関する契約

2009年4月

(注)2

Suntory Beverage & Food Asia Pte. Ltd.

PepsiCo, Inc.他

U.S.A.

ベトナムにおける飲料の製造・販売に関する合弁契約

2012年8月

(注)1

Suntory Beverage & Food Asia Pte. Ltd.

PepsiCo, Inc.他

U.S.A.

タイにおける飲料の製造・販売に関する合弁契約

2017年11月

Suntory International Corp.

Pepsi Ventures Holdings, Inc.

U.S.A.

ペプシブランド製品の製造・販売に関する合弁契約

1999年7月

(注)2、3

Pepsi Bottling Ventures LLC

Keurig Dr Pepper Inc.

U.S.A.

ドクターペッパーブランド製品に関するフランチャイズ契約

1999年7月

(注)2

(注)1.自動更新の定めがあります。

2.契約の終期は定めていません。

3.第15期有価証券報告書において開示しておりました、Pepsi Bottling Ventures LLCによるPepsiCo, Inc.との間のペプシブランド製品に関するフランチャイズ契約につきましては、Suntory International Corp.によるPepsi Ventures Holdings, Inc.との間のペプシブランド製品の製造・販売に関する合弁契約に関連するものであり、独立した契約として本表に掲載する重要性に乏しいと判断したことから、当連結会計年度より掲載していません。

 

 なお、当連結会計年度において、終了した契約は以下のとおりです。

契約会社名

契約締結先

国名

契約内容

締結年月

Greatwall Capital PTE LTD

PT DOMULYO MAJU BERSAMA

PT SENTOSA TEKNIK MANDIRI

Indonesia

インドネシアにおける飲料の

製造・販売に関する合弁契約

2011年10月

 

6【研究開発活動】

当社グループでは、安全、安心に裏付けられた「おいしさ」を価値の中心に据え、国内・海外に研究開発を担当する部門・部署を設置し、高付加価値商品の開発に取り組んでいます。

 

当社グループ横断での研究開発活動は、R&D部が行っています。

R&D部では、当社グループにおけるR&D戦略の立案・実施、R&Dに関する資源投入・配分計画の立案・実施、競争力の源泉となるグローバル中長期技術戦略の立案、関係部署との連携による技術戦略の推進と完遂、商品開発活動の支援を行っています。

また、研究開発部門を有するグループ各社においても研究開発活動を行っています。

 

セグメント別の研究開発活動は次のとおりです。

 

[日本事業]

研究開発活動の担当部署は、SBFジャパン内の商品開発部及び生産・SCM本部です。

商品開発部では、飲料の中味開発に関して、基本戦略に基づく中味開発戦略(中長期及び年次計画)の立案・推進・管理、新規原料の探索・開発・香味評価及び安全性リスク評価による新価値創出、新製品中味の香味・品質・収益性の設計、新製品中味開発における研究開発投資効率の追求、既存製品中味の原価・品質チェック及び再設計、中味製造に関する標準規格類の起案を行っています。

生産・SCM本部では、主に飲料のサプライチェーンマネジメント及びプロダクトライフサイクルマネジメントに関する中長期及び年次の基本戦略の立案・推進・管理、並びに新製品・リニューアル品・特発品の上市までの生産から販売に至る各部運営コントロール及び収益性・投資効率の追求を行っています。

 

研究開発活動は、神奈川県の商品開発センターにおいて行っています。

当連結会計年度は、水・コーヒー・無糖茶カテゴリーを中心に商品開発に取り組みました。

ブランド別に見ると、「サントリー天然水」ブランドにおいて、グレープフルーツとレモンの爽やかな果実の掛け合わせによる複層的な味わいと、皮ごと果実を丸ごと搾る、“丸搾り製法”を採用することで、無糖でありながら飲みごたえがある味わいを実現した「サントリー天然水 FRUIT-SPARK グレフル&レモン」を発売しました。

「BOSS」ブランドにおいて、「クラフトボス」コーヒーシリーズから「甘くないイタリアーノ」をリニューアルし、乳原料と植物由来の原料のバランスを調整することで、より豊かなミルクの味わいを実現し、また、深煎り“イタリアンロースト”をブレンドしたドリップコーヒーの深煎り香を強化することで、香りの余韻を更に楽しめるように進化させました。

「伊右衛門」ブランドにおいて、サントリー緑茶「伊右衛門」をリニューアルし、厳選した茶葉量を1.5倍にすることで、茶葉の味わいをしっかり感じられる中味にし、更に“旨み抹茶”を3倍にすることで、なめらかなコクを感じる味わいに強化し、緑茶本来の味わいが愉しめるように、伊右衛門本体史上最高レベルの濃さに進化させました。

「GREEN DA・KA・RA」ブランドにおいて、「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」をリニューアルし、麦茶のためだけに独自開発した“発芽大麦”の使用量を、約3倍に増やしました。更に、従来から支持されているすっきりやさしい味わいはそのままに、より甘香ばしく飲みごたえのある中味に仕上げました。

新ブランドとしては、果汁分100%の濃厚感と生姜の刺激で、ショットドリンクサイズ(65ml)でも満足できる中味設計の「GINGER SHOT+(ジンジャーショットプラス)」を発売しました。また、当社グループの健康飲料の開発知見を活かして、牛乳と混ぜて振るだけで簡単に“果実のおいしさと栄養”が摂れるスムージーが作れる冷凍スムージーキューブ「Frutte!(フルッテ)」を発売しました。

 

[アジアパシフィック事業]

タイにおいて、「TEA+」ブランドから「TEA+ Brown Sugar - Barley Oolong Tea」等、2フレーバーを発売し、「TEA+ Oolong Tasty」等、2フレーバーをリニューアルしました。また、「BOSS」ブランドから「BOSS Just Mix No Sugar」等、2フレーバーを発売しました。ベトナムにおいて、「TEA+」ブランドから「TEA+ Oolong Peach Tropical」等、2フレーバーを発売し、「TEA+ Oolong」等、2フレーバーをリニューアルしました。オーストラリア及びニュージーランドにおいて、「V」ブランドから「V Refresh Blackcurrant & Yuzu」を発売し、「V Zero Sugar Original」等、2フレーバーをリニューアルしました。また、「BOSS」ブランドから「BOSS Coffee」をリニューアルしました。

 

[欧州事業]

英国において、「Lucozade」ブランドから「Lucozade Energy Blue Burst」等、3フレーバーを発売しました。また、「-196」ブランドから「-196 Lemon」等、2フレーバーを発売しました。フランスにおいて、「Oasis」ブランドから「Oasis Ice Tea Mangue Passion」を発売しました。また、「Schweppes」ブランドから「Schweppes Vir'gin Tonic Touche de Citron」等、2フレーバーを発売しました。スペインにおいて、「TriNa」ブランドから「TriNa Té Sabor Limón」をリニューアルしました。

 

 以上により、当連結会計年度における研究開発費は、日本セグメント65億円、アジアパシフィックセグメント18億円、欧州セグメント30億円となり、研究開発費の総額は113億円となりました。