第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

① 当社グループが目指す姿 ~A One-of-a-Kind Global Technology Company~

当社グループは、新しい時代環境に適応し、事業環境の変化を捉えて成長することで社会に貢献していくことを目指して、2022年に当社グループの「Mission, Vision and Values(注1)」を制定いたしました。

当社グループは、この「Mission, Vision and Values(注1)」に則り、X線技術を中心とした最先端の分析ソリューションを顧客や社会に提供し、様々な活動分野で生まれる技術イノベーションを支援していくことを通して、「視るチカラで、世界を変える」を実践し、企業理念である「科学技術の進歩を通して人類社会の発展に貢献する」を追求しています。

また、当社グループは、かかる経営の基本方針に則り、持続可能な社会の実現に貢献し、それによる企業グループとしての持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、強みとする技術資産、人材資産及び顧客資産を最大活用します。

さらに、そうした社会への貢献とあわせて、世界各地の拠点が有する多様性を武器に「グローバル・ワン・リガク(注2)」の総合力を結集し、それらを最大活用することで、優れた技術力をベースとしたリガクらしいユニークな成長モデルを創造する「A One-of-a-Kind Global Technology Company」を目指しています。

 

A One-of-a-Kind Global Technology Company


(注) 1.「Mission, Vision and Values」の詳細は「https://rigaku-holdings.com/group/」を参照。

2.リガクで働く全世界の多様性を持つ仲間がグローバル企業としての全体最適を共有・尊重し、役割に応じてそれぞれが持つ能力を結集した「One Team」で、その統合された能力を最大発揮するリガクの企業スピリット。

 

② 事業ポートフォリオ戦略の基本方針

当社グループは、理科学機器の専門メーカー(注3)として、事業ポートフォリオに「多目的分析機器」、「半導体プロセス・コントロール機器」、「部品・サービス」の3つの製品カテゴリーを持ち、当社グループの経営資源は、これらに集中配分しています。

当社グループは、この事業ポートフォリオ戦略の基本方針に基づいてさらなる選択と集中の推進を図り、X線技術を利用したソリューション力をより一層強化するための外部とのパートナーシップの確立やM&A投資、さらにX線を補完する他の分析技術分野への参入・事業拡大等の機会に対しても、これらを排除することなく、選別的に取り上げていきます。

(注) 3.リガクの開示上の事業セグメントは「理科学機器の製造・販売」の単一セグメント。

 

 

(2) 経営環境

① 当社グループが事業を行う市場の動向とそれぞれの市場における地位

当社グループの事業において主要な市場となるX線回折機器(XRD)、蛍光X線分析機器(XRF)及び半導体X線計測機器の市場の動向とそれぞれの市場における地位につきまして、以下に説明いたします。

X線回折機器(XRD)のグローバル市場の規模は、2023年の933百万米ドルから2027年には1,135百万米ドルに成長すると予想されており、これらから同期間における年間平均成長率は5.0%と算定されています(注1)。また、蛍光X線分析機器(XRF)のグローバル市場の規模は、2023年の1,320百万米ドルから2027年には1,661百万米ドルに成長すると予想されており、これらから同期間における年間平均成長率は5.9%と算定されています(注1)。これらのX線回折機器(XRD)と蛍光X線分析機器(XRF)のグローバル市場の規模からそれらの合計値をベースに算定される2023年から2027年までの年間平均成長率は5.5%であり、堅調な成長が予想されています(注1)。当社グループは、その主力製品であるX線回折機器(XRD)において、国内では2023年に77%と第1位の市場シェア(注2)を、またグローバルでは2023年に26%と第2位の市場シェア(注3)を、それぞれ獲得しています。

さらに、半導体X線計測機器の需要につきましては、2023年に470百万米ドルとされているグローバル市場の規模が2026年には607百万米ドルに拡大すると予想されており(注4)、これらから同期間における年間平均成長率を8.9%と算出することができます(注5)。当社グループは、半導体X線計測機器のグローバル市場において2023年に30%の市場シェアを有するマーケット・リーダーとなっております(注6)。

(注) 1.Strategic Directions International, Inc.「SDi Global Assessment Report 2024」に基づく機器販売額とサービス等の関連売上高を含むグローバル市場規模及びその年間平均成長率。

2.株式会社アールアンドディ「科学機器年鑑 2024年版」に基づく機器販売額による2023年国内市場シェア。

3.Strategic Directions International, Inc.「SDi Global Assessment Report 2024」に基づく機器販売額とサービス等の関連売上高を含む2023年グローバル市場シェア。

4.Yole Intelligence「Wafer Fab Equipment Market Monitor – Q4 2024」におけるX-Ray Metrology(総売上高(USDMM)、暦年)の市場規模を参照。

5.Yole Intelligence「Wafer Fab Equipment Market Monitor – Q4 2024」におけるX-Ray Metrology(総売上高(USDMM)、暦年)の市場規模を参照して算出。

6.Yole Intelligence「Wafer Fab Equipment Market Monitor – Q4 2024」におけるX-Ray Metrology(総売上高(USDMM)、暦年、販売企業毎)の販売企業毎の売上高を参照して算出。

 

② 市場ニーズの変化に伴う技術イノベーションの進展

X線技術を利用した分析・計測機器は、様々な材料の研究開発や生産プロセスにおける品質管理、半導体製造のためのプロセス・コントロール、ライフサイエンスの発展に寄与する医薬品の研究開発等、アカデミア、産業分野を問わず、幅広く利用され、科学技術の発展に伴うX線分析ソリューションへの需要の高まりにより、その市場が拡大しています。

さらに、人類社会の豊かで便利な暮らしへの欲求、また健康や環境保全の追求は、それらの新しいニーズに応えるための技術イノベーションを様々な活動分野で促進しています。こうした市場ニーズの変化に伴う技術イノベーションの進展は、X線技術の新たなアプリケーションの開発を通じて当社グループがさらに成長と発展を続けていくための好機となっています。

当社グループの提供ソリューションが貢献できる、先端的な技術イノベーションへのニーズが高い分野として、次の例を挙げることができます。

先端的な技術イノベーションへのニーズが高い分野


 

X線技術を中心とした当社グループの既存の技術の深掘りとその周辺領域にある新しい技術の獲得、市場需要の成長性に加えてプレゼンスの浸透による販売シェアの拡大余地が大きい海外市場におけるさらなる成長の加速、足下で引き合いが増している上記のような先端的な技術イノベーションへのニーズが高い分野における新しいソリューションの提供機会の取り込み等により、将来に向けた事業拡大の機会と潜在性は豊富にあるものと考えています。

 

(3) 当社グループの強み

① 差別化された高度なX線要素技術力

当社グループは、X線発生装置、光学素子、X線検出器、解析ソフトウェア等、X線分析・計測機器の能力を左右する要素技術の研究開発に重点的に投資し、そうした要素技術をパーツ製品化した要素部品を自社で生産することにより、製品の高性能化、開発サイクルの短縮化、量産効果等を実現するアドバンテージを有しています。

当社グループの研究開発は、PhD学位保持者をはじめ、高度な専門性を有する約300名のX線技術者をグループ内に擁し、加えて世界各国の著名な研究機関とも緊密なパートナーシップを構築しています。こうして生まれる他社とは差別化された高度なX線要素技術力は、それらの要素部品を搭載する製品の技術優位性と市場競争力の源泉となっています。

さらに、当社グループの要素部品は、自社の製品に搭載するほか、その高度なX線要素技術力を評価する他社の技術ニーズにも応えて、一部を外販しています。例えば、当社グループの先端多層膜ミラーは、半導体製造のためのEUVマスク検査機器に不可欠な技術パーツとして半導体製造機器メーカーに供給されています。

また、自動化/ロボティクス、AI(人工知能)/マシンラーニング等の新たな能力についても、外部とのパートナーシップの確立等を通じてその獲得を図り、X線要素技術力とともに、当社グループの成長を加速する原動力としていきます。

当社グループは、その製品の技術優位性と市場競争力をさらに強固なものとするため、「グローバル・ワン・リガク」の技術開発力を結集し、それらを最大活用する一方、外部研究機関との協働を積極的に推し進めて、当社グループの強みの源泉であるX線要素技術への重点的な研究開発投資を継続していきます。

 

リガクのX線要素技術


 

② 強固な顧客基盤と高い顧客ロイヤルティ

X線回折機器(XRD)、蛍光X線分析機器(XRF)、X線イメージング機器(X線CT)を製品ラインアップに持つ多目的分析機器は、当社グループの歴史的な事業ドメインであり、大学・研究機関等のアカデミア/ガバメントや産業分野の幅広いエンドマーケットの多様な研究開発ニーズに応えることで、国内外に1万超の製品ユーザーを数える強固な顧客基盤を構築し、なかでも主力製品であるX線回折機器(XRD)では、国内市場においては圧倒的No.1シェアを、グローバル市場においてもNo.1に迫る高いシェアを、それぞれ獲得しています。

さらに、95%(注1)を超えるリピート需要の獲得率に象徴される多目的分析機器の高い顧客ロイヤルティは、当社グループの全社業績の安定性を支える無形のアセットとなっています。

 

多目的分析機器エンドマーケット別

売上高構成(2024/12期)

X線回折機器(XRD)市場シェア(2023)

国内(注2)

グローバル(注3




 

(注) 1.2015年1月~2024年12月の10年間におけるX線回折機器(XRD)、単結晶X線構造解析機器(XRD)及び蛍光X線分析機器(XRF)の更新商談件数に占める受注獲得件数の割合。

2.株式会社アールアンドディ「科学機器年鑑 2024年版」

3.Strategic Directions International, Inc.「SDi Global Assessment Report 2024」

 
(4) 会社の中長期的な経営戦略(成長戦略)

① Lab to Fab 戦略の推進

当社グループは、強みとする卓越したX線要素技術の開発力と内製力、強固な顧客基盤と各業界の技術動向に対する深い知見、さらに顧客とのパートナーシップに基づく共同開発とそれを通じて顧客の顕在・潜在ニーズを解決するソリューション提供力等を活かし、大学・研究機関や産業分野の研究開発部門(Lab)との協働から発展して、社会が必要とする新たな分析技術・手法を確立し、それらを産業分野の生産プロセス(Fab)における標準技術として導入し、幅広く展開していく「Lab to Fab 戦略」の推進により、事業領域を拡大しています。

この「Lab to Fab 戦略」は、当社グループが持つ固有の強みを活かして、3つのPillarから成る戦略をグローバル・スケールで展開することで当社グループの成長をドライブする中長期的な経営戦略の中心となっています。

 

リガクの成長戦略コンセプト(3本の矢)


 

A. Pillar 1「多目的分析機器」

~先端的なX線分析ソリューションの提供と海外市場における成長の加速~

当社グループの歴史的な事業ドメインである多目的分析機器は、大学・研究機関等のアカデミア/ガバメントや産業分野の幅広いエンドマーケットに構築する強固な顧客基盤と高い顧客ロイヤルティをレバレッジとして、卓越したX線要素技術力を武器に得意分野である新材料の発見・開発に貢献する先端的なX線分析ソリューションを提供し、高度化する顧客の研究開発ニーズに応えることで、その売上高と利益率を着実に拡大させています。

当社グループは、市場需要の成長性に加えてプレゼンスの浸透による販売シェアの拡大余地が大きい海外市場における成長をさらに加速するため、セールス、サービス、アプリケーション・サイエンティスト等の要員やラボ等、海外のコマーシャル・インフラへの積極的な投資と「グローバル・ワン・リガク」のチーム力の発揮により、グローバル市場での販売シェアをさらに伸ばし、多目的分析機器の分野でX線回折機器(XRD)市場と蛍光X線分析機器(XRF)市場の年平均成長率5.5%(2023年~2027年)(注1)を上回る平均年率約7%の売上高成長を目指しています。

多目的分析機器の業績推移と

売上高成長計画


 

 

(注) 1.Strategic Directions International, Inc.「SDi Global Assessment Report 2024」

 

 

 

B. Pillar 2「半導体プロセス・コントロール事業」

~半導体の技術進化に貢献するX線技術の応用を通じた事業領域の拡大~

a. 半導体X線計測機器市場における高成長と分散ポートフォリオの構築

「Lab to Fab 戦略」の推進とその成果により、当社グループの製品は、半導体製造におけるプロセス・コントロールでその採用が拡がり、近年高成長を遂げています。当社グループは現在、半導体X線計測機器市場でグローバル・リーダーの地位を確立しています。

また、当社グループは、半導体設備投資額でグローバル上位10社(注2)のうち、全社との間で取引関係を有しているほか、メモリ、ロジック、パワーデバイス等、アプリケーションでもバランスのとれた売上高構成を形成しており、そうした分散ポートフォリオの構築により、半導体業界のシリコンサイクルに対して強い耐性を持つ事業の安定性を有しています。

 

半導体X線計測機器

グローバル市場シェア(注3)(2023)

半導体プロセス・コントロール機器

アプリケーション別売上高構成(2024/12期)



 

(注) 2.TechInsights, Inc.「Capital Expenditure Forecast June 2024」

3.Yole Intelligence「Wafer Fab Equipment Market Monitor – Q4 2024」

 

 

b. 半導体の技術進化を捕捉する光学・CD計測機器市場への事業領域の拡大

半導体は、日進月歩の技術革新により微細化や積層化が進展し、内部構造がますます複雑化しています。こうした半導体の技術進化は、ナノスケールの微細構造を非破壊で解析できる強みを持つX線技術にとって、その応用領域を拡大する好機となっています。

当社グループは、高度なX線要素技術力を武器に半導体の技術イノベーションを支援する新しいX線計測機器を開発し、市場に供給することで、これまでのX線計測の市場から、光学計測やCD計測等、他の計測技術分野への事業領域の拡大を目指しています。さらに、この分野では、光学技術とX線技術が相互に補完し合うことで、より高度化・複雑化する半導体計測ニーズに対して優れたソリューション(Hybrid Metrology)を提供できることが期待されており、それを実現するための外部とのパートナーシップの模索についても積極的に取り組んでいます。

当社グループの半導体プロセス・コントロール機器事業は、半導体X線計測機器市場でのさらなる販売シェアの獲得に加えて、こうした半導体プロセス・コントロールの分野におけるX線技術の応用領域の拡大を通じた事業領域の拡大により、半導体X線計測機器市場の年平均成長率8.9%(2023年~2026年)(注4) を上回る平均年率約18%、あるいはそれをさらに超える売上高成長を目指しています。

X線計測機器市場から光学・CD計測機器

 市場への事業領域の拡大余地(注4)(2023)


 

半導体プロセス・コントロール機器の

業績推移と売上高成長計画


 

(注) 4.Yole Intelligence「Wafer Fab Equipment Market Monitor – Q4 2024」

 

c. アドバンスト・パッケージング検査市場への参入

AI(人工知能)技術の普及や進化により、今後新しい技術イノベーションの進展が期待されている次世代AIチップの製品化のために不可欠な技術とされ、高い需要成長が予測されているアドバンスト・パッケージングの分野においても、新しい品質検査製品を開発・供給し、その市場に参入することを計画しています。AIチップの進化を実現するためには、さらに大型化・立体化が進む次世代パッケージにおいて、マイクロバンプやTSV等の複雑な構造の欠陥検査が課題となっています。当社グループは、これを解決する高度な測定技術とAI応用検査アルゴリズムの開発に取り組んでおり、近い将来の実用化に向けた製品化を進めています。

 

 

C. Pillar 3「多目的分析機器」

 ~X線技術の新たなアプリケーションの開発を通じた新市場の創出~

当社グループは、幅広いエンドマーケットに拡がる強固な顧客基盤を活かして、技術イノベーションが活発な半導体・電子部品、電池・電池材料、ライフサイエンス等、X線技術の新たなアプリケーションの開発を通じてその応用領域の拡大が期待される有望市場への重点的なマーケティング活動を展開しています。

当社グループは、各業界の技術動向に対する深い知見と顧客ニーズを解決するソリューション提供力を活かして、これらの業界で生まれる最先端の技術イノベーションを支援する新たな分析技術とアプリケーションの開発に精力的に取り組み、多目的分析機器の新市場を創出しています。

当社グループは、半導体プロセス・コントロール機器での成功に続いて、これらの技術イノベーションが活発な産業分野への「Lab to Fab 戦略」の拡大展開とそれを通じた多目的分析機器のFabへの浸透を強力に推進することで、新たな成長機会を開拓し、同事業の売上高成長を加速していきます。

Pillar 3 製品の販売拡大による

多目的分析機器の売上高成長への貢献


 

 

新市場を創出するリガクの最先端ソリューション製品


 

 

② 顧客セグメントに応じたサービス戦略

当社グループの成長戦略をその基盤として下支えするサービス事業では、アカデミア、一般産業、半導体産業等の顧客セグメントに応じて、それぞれの異なるニーズに適応した事業展開を行いその強化を図ることで、安定的なリカーリング収益を創出し、リガクの成長と発展に貢献しています。例えば、半導体産業向けサービスでは、24×7対応のハードウェア保証とパーツ保証にアプリケーション・サポートを加えてパッケージ化したCCS(注5)を提案し、製造ラインのダウンタイムの予防を求める顧客ニーズに応えています。

顧客セグメントに応じた注力サービス


 

 

サービス売上高成長計画(注6)

部品・サービスの業績推移と売上高成長計画



 

(注) 5.Comprehensive Customer Support

6.サービス売上高は、部品・サービスに含まれるサービス売上高のほか、多目的分析機器及び半導体プロセス・コントロール機器に含まれるサービス売上高を含む。

 

③ コマーシャル・インフラや生産能力等への基盤増強投資

市場需要の成長性に加えてプレゼンスの浸透による販売シェアの拡大余地が大きい海外市場における成長をさらに加速するため、セールス、サービス、アプリケーション・サイエンティスト等の人材投資を増強し、各地域の顧客の声からグローバルな市場ニーズを捕捉してそれに応えるプロダクト開発体制を拡充することで、製品販売力の強化を目指します。

さらに、主要市場に営業拠点、ラボ、テクノロジーセンター等の新設投資を行い、これらのコマーシャル・インフラの有効活用を通じて製品販売の促進を支援します。

 

 

コマーシャル・インフラ投資の実績と計画


 

また、当社グループは、国内に4拠点、海外5ヶ国に8拠点の生産拠点を有しており、要素部品生産の特定工場への集約や製品機種に応じた生産分業を通じて生産効率を高め、それに生産の一部を外部委託する協力会社を加えて、高品質の製品を安定的に供給できる体制を確立しています。

近年の売上高成長に伴い、市場の旺盛な需要に適切な納期で応えるため、2024年~2025年の計画期間で、当社グループの主力工場である山梨工場の生産能力を大幅拡大する増強投資を実施しています。この山梨工場の増強投資は、それとともに実施する生産性向上のための各種施策とあわせて、市場の旺盛な需要に応えるための当社グループの生産能力を2022年比で倍増させることにより、その成長戦略を下支えする製品供給基盤となります。


 

 

(5) 中期計画目標

当社グループは、(3)に掲げる強みを武器に、(4)に掲げる成長戦略を推進することにより、以下に示す中期計画目標の達成を目指しています。

 


 

(注) 1.レンジ幅は売上高の中期計画目標の5%の範囲内に設定(調整後EBITDA、調整後営業利益及び要員数のレンジ幅についてもそれぞれ同様)。売上高の中期計画目標におけるYoY成長率は、2023年12月期を基準とする2027年12月期までの4ヶ年における売上高の年平均成長率で、2025年12月期から2027年12月期までの各期の売上高は想定為替レートを1米ドル145円、1ユーロ156円として算出。

2.調整後EBITDA=税金等調整前当期利益+減価償却費及び償却費+減損損失-受取利息及び配当金+支払利息+一時費用(IFRS導入費用、コンサルティング・フィー、中国免除申請関連費用、上場関連費用等)    調整後EBITDAマージン=調整後EBITDA/売上高

3.調整後営業利益=営業利益+PPA償却費+減損損失+一時費用    調整後営業利益率=調整後営業利益/売上高

4.研究開発費比率=研究開発費/売上高

5.CAPEX比率=CAPEX/売上高    CAPEXは使用権資産を除いた設備投資の金額により算出。

6.2027年12月期のCAPEX比率目標は、その分子となるCAPEXに現在時点で計画されていない山梨工場に続く大型の工場改修・増強投資を含まない。

7.要員数は年度末の就業人数と年度平均の臨時雇用人数の合計により表示。

 

(6) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりです。

 

① 生産キャパシティの増強と資材購買の分散化

当社グループの製品に対する市場の旺盛な需要に適切な納期で応えるとともに、当社グループの成長戦略を下支えする生産基盤を増強するため、当社グループの主力工場である山梨工場について、2024年~2025年の計画期間で生産キャパシティを2022年比で倍増させる投資計画を実施しています。

 

また、新型コロナウイルス感染症の流行拡大、世界各地での異常気象、ロシアによるウクライナへの侵攻等、世界規模の不確実性の高まりに伴うサプライチェーンの停滞や資源・エネルギーの供給制約、またそれらに伴う原材料価格の高騰は、当社グループの生産活動に対しても少なからず影響を及ぼしました。当社グループは、お客さまへの製品供給を最優先に対応し、資材価格の上昇に伴うコストアップを吸収して、なお十分な利益を確保してきましたが、かかる事態が再発する場合に備えて、資材購買の複数サプライヤーへの分散化の取組みを推進しているところです。

 

② 品質の改善

当社グループは、市場に供給する製品に対してお客さまにご満足を頂けるよう、品質の改善を最優先課題の一つと捉え、品質保証部と生産本部を中心にKPIを設定して様々な施策を実施しています。具体的には、お客さまのサイトで生じた不良(納入時の不良、1年間の保証期間内の不良)と自社内で生じた不良(生産工程での不良、外注先での不良)とに分けて不良の要因を分析し、改善に結び付けるための諸施策を実施しています。不良の発生、改善の進捗、KPIに対する実績等の状況を週次で品質保証部が経営層や関係者に報告しています。

 

③ 成長投資の拡大と一時的な市況変動リスクに備えた財務基盤の強化

当社グループは、今後とも継続的な成長のための投資を見込む一方、一時的な市況悪化リスクに備える必要からも、強固な財務基盤の整備が必要不可欠と考えています。具体的な取組みとして、製品利益率と資産効率の改善によりキャッシュ創出力を高めるとともに、規律ある資金残高管理と機動的なコーポレート・ファイナンスの実施により財務基盤の強化を図ってまいります。

 

④ 人材確保・育成

当社グループが各戦略を推進するにあたっては、国内外を問わず、優秀・多様な人材の確保とその育成が必要不可欠と考えています。そのために、将来を担う人材の確保を目的とした新卒採用、即戦力となる人材の確保を目的とした経験者採用、優秀な開発人材の確保、海外展開の強化を目的とした海外人材の採用等、様々な必要人材を確保するための採用活動を活発に展開する一方で、経営幹部候補の育成を目的とした研修制度の充実化、リスキリングや技能伝承等の人材開発にも注力してまいります。また、人材の定着や活性化に向けて、働き方改革の推進による生産性向上や業務効率化、さらに従業員満足度の向上に対する取組みについても積極的に推進いたします。これらの基礎となる当社グループの「Mission, Vision and Values」を会社の文化として定着させる施策を今後とも継続的に実施してまいります。

 

⑤ 経営基盤の強化

当社グループは、企業価値を高めるとともに、株主の皆さまをはじめ、様々なステークホルダーから信頼され、支持される企業となるために、コーポレート・ガバナンスへの積極的な取組みが不可欠と考えています。そのために、内部統制をはじめとした内部管理システムの強化、ESG活動の積極的推進、人材の育成、損益管理を含む戦略達成状況の管理の徹底等、持続的な成長を支える経営基盤の強化に引き続き取り組んでまいります。

 

(7) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、事業を継続的に発展させていくために、安定した財務基盤を維持しつつ売上高を着実に増加させ、適正な利益の確保を図っていくことが必要と考えています。そのために、売上高成長率(年間平均成長率(CAGR))、調整後営業利益率、調整後EBITDAマージン、研究開発費比率、CAPEX比率及びNet Debt/調整後EBITDAレシオを重要な経営指標として位置付け、その向上に努めてまいります。「調整後営業利益率」、「調整後EBITDAマージン」、「研究開発費比率」、「CAPEX比率」及び「Net Debt/調整後EBITDAレシオ」の算出方法につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容」をご参照ください。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中における将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1)サステナビリティ全般

1951年の設立以来、当社グループの使命は、科学技術の進歩を通じて人類社会の発展に貢献することにあります。顧客をはじめとした多様なステークホルダーと共存する上で、サステナビリティに関する取り組みは必要不可欠なものだと考えております。

当社グループは、「科学技術の進歩を通して人類社会の発展に貢献する」という企業理念のもと、当社グループの有する技術による製品を通じて、社会全体のサステナビリティ推進に貢献しています。環境保全に資するリガクの技術の例は以下のとおりです。

アスベスト測定:アスベスト(石綿)を使用した高度成長期の建物が耐用年数を迎えつつあります。その解体時のアスベスト含有調査に当社グループの製品が活躍しています。全自動多目的線回折装置SmartLab SEは、特別な前処理を行うことなく低含有率のアスベストを検出することが可能です。

水銀測定:全自動前処理機能を有した世界唯一の水銀測定装置(全自動水銀測定装置RA-7000Aシリーズ)が2年連続で環境賞を受賞しました。環境負荷及び経済性に配慮しながら環境汚染物質である水銀を測定できる点が評価されています。

その他の事例については、「https://rigaku-holdings.com/sustainability/solutions/」をご参照ください。

 

① ガバナンス

当社グループでは、中期経営計画等の経営方針に沿ってESG経営を実現することを目的として、ESG推進委員会を設置し、四半期毎に開催しております。

同委員会は、サステナビリティ分野の経営課題に関して取締役会の諮問機関としての役割を担い、当社及び株式会社リガクの代表取締役社長(川上潤)を委員長とし、当社及び株式会社リガクの取締役2名、当社及び株式会社リガクのエグゼクティブオフィサー10名並びに当社グループの役職員2名の15名で構成しております。

また、同委員会の傘下には、サステナビリティに関する活動を会社横断的に推進することを目的として、ESG推進プロジェクトチームを設置しております。同チームは、当社又は株式会社リガクの従業員16名で構成しております。

また自社環境負荷低減、サプライチェーンマネジメント、製品の環境配慮、社会貢献と労働環境整備等の重要課題については、ESG推進プロジェクトチームの傘下にワーキンググループを設置し、中期ロードマップを策定した上で活動を展開しております。

 

② 戦略

当社グループでは、サステナビリティに関する活動を進めるに当たり、当社グループの重要課題(マテリアリティ)の特定を以下のとおり行い、ESG推進委員会や経営会議等での議論を通じ、2023年7月取締役会にて承認されました。

 

 


気候変動や環境負荷に関する経営課題への対応として、当社グループの技術力を生かして製品機能を向上させることで、より少ないエネルギーで必要な分析を行える分析装置の開発や、環境・エネルギー関連で不可欠とされる分析装置の主流化を図っております。その結果当社グループの水銀測定に係る製品が2年連続で環境賞を受賞しております。具体的な概要は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1)サステナビリティ全般」前段をご参照ください。

 

またCO2排出量削減を目的として、その可視化を進めるとともに、自社拠点における再生可能エネルギーの導入やエネルギーのクリーン化により、Scope1、Scope2のCO2排出量を2030年12月期までに基準年(2021年12月期)比で50%削減する目標を設定いたしました。Scope3の排出量も集計し、CDP(Carbon Disclosure Project)のプラットフォームで開示しており、今後はサプライチェーン全体の排出にも配慮していきます。またTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)への賛同を表明し、気候変動がもたらすビジネス上のリスク・機会の情報を当社のホームページにて開示しました。

 

③ リスク管理

当社グループの経営におけるサステナビリティに関するリスクと機会については、取締役会の監督のもと、経営会議及びESG推進委員会の連携をもって管理する体制をとっております。その一環で、前述のマテリアリティを作成する工程において、人的資本の確保、製品の信頼性向上、サプライチェーン関連、気候変動を含めた環境関連の課題等が重要なリスクとして特定されました。同様に脱炭素社会への貢献、半導体・デジタル産業への貢献、健康・医療分野への貢献という重要な機会も特定されました。これら重要なリスクと機会に対して、下記④項に示しているKPIを定め、グループ内各社にてこれら重要なリスクと機会に対する取り組みを組織的に行っています。

 

④ 指標及び目標

マテリアリティの特定に合わせ、ESG推進委員会の指導のもと、ESG推進プロジェクトチームにおいて指標及び目標を検討しました。その指標はKPIとして、2023年9月取締役会にて、中期経営計画の一環で承認されました。

 


 

 

(2)人的資本

人類社会の発展への貢献を企業理念に掲げる当社グループにとって、事業を支える人材一人ひとりが力を発揮できる環境を整備することは大変重要です。ESG推進委員会及びESG推進プロジェクトチームでは、マテリアリティを構成する欠かせない要素の一つとして人的資本経営を捉えております。

 

① 戦略

多様性を含む人材の育成や社内環境整備の方針につきまして、マテリアリティを特定するプロセスの中で併せて議論を行っております。

うち、人材育成に関しては、人材一人ひとりが自身の階層や職種等において身に着けるべき知識や技能について、人事部門を中心に改めて検討を行い、教育体系の一層の拡充を進めております。

また、社内環境整備に関しては、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンと健康管理に重点を置いて施策を展開しております。

特に健康管理について、2024年6月6日から健康管理システムを導入し、健康管理体制の推進とともに、社員が自身の健康状態を容易に把握できるようにすることで意識の醸成を図っております。計機健康保険組合「銀の認定」の取得、また「健康経営優良法人」の認定取得を目指し、今後取り組みを一層強化します。

 

② 指標及び目標

サステナビリティ全般における指標及び目標と同様に、人的資本についてもKPIを設定し、2023年9月取締役会にて、中期経営計画の一環として承認されました。

また、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画にて、育児休業取得率について、男性の育児休業取得率50%(当社単体)、女性の育児休業取得率100%(当社単体)を目標にしております。

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当社グループが当連結会計年度末において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

当社グループにおけるリスク管理体制に関し、後掲の「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ③ 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」において、取締役会、監査役会、経営会議、指名評価報酬委員会、ESG推進委員会、コンプライアンス委員会、リスク管理委員会の構成と活動状況について詳述しております。

 

<業界・市場に関するリスク>

1.国内外の市場の動向に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループが販売するⅩ線分析機器は、国内外の半導体・電子部品、ライフサイエンス、化学等の幅広い産業分野や大学・研究機関で使用されており、当社グループの製品やサービスの需要はこれらの各産業等の市場動向や対象となる国・地域の経済情勢の影響を受けます。とりわけ、その需要は、研究開発予算及び設備投資計画の内容や、その資金源となる企業の業績、資金調達の状況や各国政府の予算編成、補助金政策等に影響され、これらの動向によっては当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

品質検査用の装置の需要は、一般に設備投資額の増減の影響を受けます。当社グループが販売している品質検査用の装置は、一度導入されると工場の稼働率の影響は受けにくいため、変動リスクは限定的であり、過去の傾向を踏まえても設備投資額の増減による業績への影響は大きくないと判断しておりますが、設備投資額の水準が著しく悪化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

一方、当社グループの主力事業として近年成長している半導体プロセス・コントロール機器の需要は、半導体業界の動向の影響を受けます。半導体デバイスは、急速かつ複雑な技術革新と製品の陳腐化の影響を受け、その需要は、主にマクロ経済と業界動向に基づく需要の変化に大きく影響されます。そのため、当社グループの事業は、半導体メモリ分野に代表される大幅な景気変動の影響を受ける可能性があります。当社グループが販売する半導体プロセス・コントロール機器はメモリ等の特定のアプリケーション向けに集中しないようバランスを考慮しており、また、半導体製造に関する研究開発投資は全体として今後も堅調に推移すると考えておりますが、半導体を利用した最終製品の需要が著しく減少した場合、又は想定どおりに成長しなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、日本や米国等による半導体製造に対する補助金支給等の政策は、製造設備開発の促進を通じて、当社の半導体プロセス・コントロール機器に対する需要の増加をもたらしてきました。しかしながら、このような政府の政策が縮小又は終了した場合、製造設備開発が減少し、その結果、当社の半導体プロセス・コントロール機器への需要が減少する可能性があります。

 

 

2.競合(価格/非価格競争)の激化に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループが販売している科学分析機器は顧客が求める性能や利便性を備えていることが購買条件です。個別商談においては競合により販売価格を下げるケースもありますが、販売価格を下げたことをもって売上が大きく伸びる製品ではないため、基本的には赤字販売は行わない方針としております。また、当社グループは、常に先端技術を開発し、かつ顧客の利便性に配慮した製品を提供することで、競合他社、新興企業や新興国との競争に対応する方針としております。しかしながら、価格や技術の競争が激化し、当社グループが顧客の要求や業界・市場動向の変化にうまく対応できず競合他社に遅れを取った場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、昨今の物価上昇を受け、販売価格の引き上げによる採算の確保・向上を図っております。業界の多くの会社が同様の施策を採っており、2024年度の受注ベースでの粗利率は、販売価格の引き上げにより、2023年度対比で上昇しております。しかしながら、コストの上昇を転嫁するに足りる販売価格の引き上げが実行できない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

加えて、X線分析機器の業界では、ある業者の機器が顧客の製品ラインに選定された場合、その保守やアップグレード等の継続的な取引関係が構築される傾向がありますが、その場合、当該顧客が他の業者との取引を切り替えることは費用の観点を含めて困難な場合があります。このような構造から、当社グループが、競合他社の機器を使用している先を潜在顧客として市場シェアを拡大することが困難なおそれがあります。

 

<事業活動に関するリスク>

3.海外での事業活動に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:直近1~3年、影響度:中)

当社グループは、海外に多くのグループ会社を保有し、また、一部の地域については販売代理店を通じた販売を行っており、製品を米州・欧州・中東・中国その他のアジア等の海外の顧客にも販売しています。日本以外の研究・生産拠点は米国・欧州・イスラエルに分布しており、その他、米国・欧州・中国・台湾・シンガポール・インド・ブラジルに販売とサービスの拠点を有します。これまでは、当該地域における当社グループの事業活動に重大な悪影響を及ぼす事態は生じておりませんが、海外で事業活動を行うにあたっては、地政学的リスク、為替の変動、輸出入管理規制の動向、各国政府の補助金政策動向、許認可等の取得状況、法規制の新設又は変更、税制の変更、販売代理店への依存、サプライチェーン及び販売代理店を含む海外オペレーションのガバナンス及びモニタリングリスク等が内在しております。予期していないこれらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループのガバナンスに関しては、グローバル企業としての強みを最大限に発揮し、各社がそれぞれの利益を最大化する部分最適化の枠組みを超えて、グループ全体としての最大の成果を追求するために『Global One Rigaku』体制を2023年7月から採用しております。『Global One Rigaku』体制を採用するに当たり、各ユニット内及びユニットをまたぐ各種会議体の多層コミュニケーションによりガバナンス体制を浸透させております。また、各社の取締役会を基本的に毎月(一部は四半期ごとに)開催することで、市場動向、業績、内部監査指摘事項の対応状況等をモニタリングしております。各グループ会社の取締役会には当社から取締役(非常勤)を派遣しており、毎月(ないし四半期ごと)の取締役会を通じて業績面、内部管理面から多面的に情報収集・分析によるモニタリングと課題への対応を行っております。また、グループ会社には共通の行動規範(Code of Conduct)とグループ会社管理規程(権限体系)を導入しており、加えて主要子会社とは個別に経営に関する契約を締結し遵守すべき事項や責任を明確にしております。しかしながら、これらの当社グループによる施策が奏功せず、ガバナンス上の問題が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4.取引先・製品・技術への依存に関するリスク(仕入先への生産依存) (顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループでは半導体や関連製品の不足による原材料や部品の仕入れ難が一時期見られましたが、当社グループのみの現象ではなく、科学分析機器のみならず幅広い業界で見られた現象でありました。当社グループでは、同様の事態が再発した場合に備えて、極力複数社購買等によるリスク分散を図っております。技術面や仕入れ面で特定の会社に大きく依存している購買先はありません。しかしながら、原材料や部品の仕入れ難が再度発生した場合には、代替先からより高価格の原材料や部品を購入しなければならなくなる可能性があり、また仕入先の予期せぬ変更により、製品設計の変更を実施することになる可能性があるほか、輸送能力の不足が生じた場合にも追加費用や遅延が発生し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

5.法令・規制に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループの事業は、事業自体に関して許認可が必要とされるものではありませんが、主力のX線分析機器においては各国毎に安全基準や取り扱いについての届出や登録が必要です。また、当社グループが事業活動を行っている国・地域により電気規格や環境汚染物質の使用制限等があり、基準を満たしている必要があります。そのほか、各国及び地域における安全保障、外国貿易管理、競争政策、腐敗防止、労働及び税制等に関連する様々な法律及び規制の対象となっています。本書提出日現在では中国向けの輸出規制を含め、法令・規制による事業上の重大な影響はありませんが、予期していない法令・規制の新設や変更等により、当社グループの事業の一部が制限され、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

規格や環境規制に関しては、該当製品について規制を満たしている製品を開発することで対応しております。

また、ロシアによるウクライナ侵攻、中東での紛争、米中対立等の地政学的緊張が高まる中、日本政府による輸出規制が拡大しています。そのため、当社グループでは貿易管理室を設け、日々複数の専任者が該当事例の確認を行っております。また、輸出規制の最新情報やリスク管理の重要性についての社内教育・研修を定期的に実施すると共に、内部監査を通じて輸出手続きの運営や規制の遵守状況を確認・改善しており、必要に応じて経済産業省や外部専門機関の意見を取り入れ、対策の精度を高めています。さらに、これらを踏まえ、年2回開催を基本とする貿易管理委員会にて現状や課題を確認し、対策を協議しております。もっとも、これらの当社グループによる施策が奏功せず、法令・規制上の問題が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

6.外注管理に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)

当社グループでは、外注先を自社工場の延長線にあるパートナーと位置付けており、品質、コスト及び納期が要求水準を満たしているかのモニタリングが必要であると認識しております。予期していない外注先でのトラブル等により当社の製造プロセス全体が中断又は遅延する等のおそれがあり、その結果、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、外注先については、品質管理を最優先に連携して対応しており、課題のある外注先には数人で訪問して課題把握と改善指導をする品質パトロールという制度により、外注先の管理を行っております。

また、コンプライアンスやESGの観点から、外注先が取引相手として相応しいかという点の確認を行っております。もっとも、これらの当社グループによる施策が奏功せず、外注先での問題が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

7.原材料の価格高騰や供給停止に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

レアメタルを含む当社製品の製造に使用する主要な原材料は、限られた購買先からしか調達できません。当社は購買先と強固な関係を築いておりますが、購買先が当社の要求水準を満たさない場合には、原材料の供給不足が生じる可能性があります。原材料の供給不足により、高い価格の市場品の購入を余儀なくされ、また他社の製品に切り替えるために設計変更費用が発生するおそれがあります。当社グループは、厳しい供給不足の事態が発生した場合には、採算性の良い事業・製品について優先的に部品を確保し、会社全体への影響を極力抑えるよう対応する方針としておりますが、想定を超える原材料の長引く供給不足や急激な価格高騰が起こった場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

8.コスト(設備)に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:直近1~3年、影響度:中)

当社グループにおいては、製品を生産するに当たり、専用ライン等の大型の設備投資は通常必要となりませんが、重要部品を生産するための加工機や半導体事業向けの部品・製品等を生産するために、クリーン・ルームへの投資が必要です。クリーン・ルームについては、極力設備を有する先への外注・組立て委託により能力拡大を図っておりますが、要素部品として自社生産が望ましい検出器等は、自社でクリーン・ルームを整備しております。また、近年の売上の成長に伴い生産能力の拡大が必要になっております。生産能力拡大の必要性に対しては、生産効率・物流効率も勘案して山梨工場の増設工事を実施中ですが、単に自社工場の拡大を行うだけでなく、自動化や外注化の促進により、全体としての生産性を高める方針です。また、山梨工場増設の先には、事業継続計画(BCP)やグローバルな物流効率の観点を踏まえて、海外での生産能力の拡大を検討する予定です。また、加工機については、外注化が困難なもの、当社グループの技術やノウハウが集約されており自社生産が望ましいものに限定し、加工機への投資を抑えていく方針です。

かかる設備投資について、想定外の設備投資費用が嵩んだ場合や、生産能力の拡大が大幅に遅れた場合等には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

9.品質に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)

当社グループの製品は高度な分析・検査装置であり、仕様どおりに機能することが購買要因となるため、当社グループでは品質の確保を最重要課題の一つと位置付けております。また、X線の漏洩防止や取扱いにおける注意喚起といった安全性の確保は極めて重要となります。そのため、品質保証部と生産本部を中心にKPIを設定して品質の向上・改善に取り組んでおります。具体的には、客先での初期不良(納入時の不良、1年間の保証期間内の不良)、自社での不良(生産工程での不良、外注先での不良)に分けて不良の要因を分析して改善に結び付ける施策を行っております。また、不良の発生、改善の進捗、KPIに対する実績等の状況を、週次で品質保証部が経営者層や関係者に報告しております。

しかしながら、このような取組みにもかかわらず品質不良や製品安全への懸念等が発生する場合には、当社グループの信頼性やブランド力の低下に繋がり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの製品に欠陥や安全性に関する懸念が発生した場合、顧客からの信頼を毀損する可能性があるほか、当社又は当社顧客に対して損害賠償請求がなされ、多額の訴訟費用の負担や顧客への補償を求められる可能性もあります。

 

 

10.研究開発に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループが属する市場や業界においては、新しい技術や、それを採用した製品を継続的に市場に投入することが長期的な成長要因となるため、新しい技術の開発は当社グループにとっての生命線となっております。予期していない市場動向の変化や当社グループの技術を代替しうる技術革新が起こった場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、新卒や中途で優秀な学生・研究者等の人材を採用する他、国内外の研究機関・大学・企業と提携した研究開発を多数手掛けております。また、当社グループは、技術を有する企業について積極的にM&Aを実施しており、海外のグループ会社の半数以上はM&Aによりグループ会社化したものです。このように、当社グループは、今後も幅広いオープン・イノベーションの文化を維持して世の中に貢献する技術や製品を生み出していく方針ですが、技術の発展に追いつけず、又は顧客のニーズを満たす新製品の開発に成功できない場合には、市場シェアや収益が低下し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

11.知的財産権に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループの事業は技術が競争力の源泉であり、積極的に特許・意匠・商標の登録を行っております。しかしながら、知的財産権に対する十分な保護が得られない法域もあり、当社グループの知的財産が他社により不正利用されるおそれもあります。他社との間に知的財産紛争が生じた場合、解決までに相当な時間と費用を要し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループではより多くの新しい特許性を有する技術を開発すべく、知的財産部が中心となって出願や権利化活動を行っております。知的財産部では、競合分野での他社特許の動向を監視しており、他社特許侵害をしていないかの確認を行うと共に、必要に応じて他社特許への異議申し立てや特許回避技術の開発を促しております。

本書提出日現在において、第三者特許を利用して当社グループの主要な技術・製品・事業が行われている事実、又は当社グループが第三者の知的財産を侵害しているとの主張を受けている事実はありませんが、当社が第三者の知的財産権を侵害していると第三者が判断した場合、当該第三者から差止命令又は損害賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<政治・社会情勢・環境に関するリスク>

12.国際情勢に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:直近1~3年、影響度:中)

当社グループは世界的に事業展開を行っているため、当社グループの事業は国際情勢や地政学的リスク、例えばサプライチェーン分断による調達・物流・販売規制等の影響を受けます。予期していない地政学的リスクが発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

特にロシアによるウクライナ侵攻、中東での紛争、米中対立等の地政学的緊張が高まっており、これに伴い日本を含む各国で輸出規制が拡大しています。また、米国商務省産業安全保障局による規制の強化により特定の顧客への米国原産品の販売制限や半導体製品及び関連技術の輸出に対するライセンス要件が追加され、これらの規制は米国域外にも及んでいます。これらの各国における輸出規制の拡大は、半導体等の関連する産業とそのサプライチェーンに重大な混乱を引き起こすことに伴う影響等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

そのほか、国際的な貿易摩擦により、関税や貿易障壁、その他の保護主義的措置が強化され、当社グループの製造コストの上昇、当社グループの製品の競争力の低下、国境を越えた当社グループの製品の移動の支障や遅延が生じる可能性もあります。

 

13.為替変動に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは世界的に製品販売を行っているため、当社グループの業績は為替変動の影響を受けます。当連結会計年度末では円・米ドルのレートが1円円高に動くことの営業利益への影響は1億円強/年程度の減少と見込んでおりますが、売上高や売上地域の割合の変動により影響を受ける金額は変動いたします。

当社グループでは、為替による調達コストや販売価格の変動は期ズレ現象と判断しているため、調達・販売に当たって為替予約は行わない方針としております。また、当社グループでは、売上高における海外比率に対して日本国内での生産・輸出の割合が多いため、円高は減益要因になりますが、引き続き生産性の効率化と販売価格の適正化を中心に対応し、円高が長期に継続する場合は海外生産能力の拡大や海外からの部品調達の促進等で対応し、マクロベースでの為替ポジションが中立的になるような対策を検討してまいります。

もっとも、為替変動による影響を完全に排除することは困難であり、円高が急激に進んだり長期に及んだりする場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

14.自然災害等に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)

当社グループの主力工場は日本国内の東京都昭島市、東京都武蔵村山市、山梨県北杜市、大阪府高槻市に所在しております。その他海外(米国テキサス州・同マサチューセッツ州・同ミシガン州・ポーランド・チェコ・オランダ・イスラエル)にも製造拠点を有しております。予期していない自然災害等により、当社グループの施設、特に生産工場が稼働できなくなる場合、製品の出荷が停止又は遅延し、施設の修理や交換のために多額の損失及び費用が発生する可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、国内及び海外の施設について災害リスク分析を行っており、今後も災害リスクのより正確な把握と保険によるカバーの適正化を進めていく予定ですが、災害リスクは完全にコントロールできるものではなく、保険によるカバーが十分になされない可能性もあります。

 

 

15.環境保全に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)

当社グループは、有害物質(薬品や有毒ガス)、廃棄物、商品リサイクル、土壌・地下水の汚染、RoHS2規制(EUの電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に係る規制)等に関する種々の環境関連法令及び規制等の適用を受けております。

環境規制への未対応や環境問題の発生に伴い、想定を超える対策費用の支出、事業遂行への影響、環境規制への適応が極めて困難となった場合には、当社グループへの社会的信頼が損なわれることにより顧客の喪失等が発生するおそれがあるほか、環境規制に違反した場合には損害賠償責任、刑事罰、生産・操業停止等のおそれもあり、これらにより当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループではESGの観点から環境規制に対応すべく取り組んでおりますが、有害物質の利用は比較的少量で潜在的なリスクは比較的少ないと考えております。武蔵村山市、昭島市と高槻市の工場は築年数40年~60年以上であり、建材の一部にアスベストが使用されている可能性があり、工場を建て替える際には信頼できる工事業者を起用して飛散が生じないよう万全を期す予定ですが、それができなかった場合には、多額の追加費用が発生し、又は規制当局から処分を受ける可能性があります。

 

16.パンデミックに関するリスク(顕在化の可能性:不明、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)

新型コロナウイルスの蔓延等パンデミックにより人の動きに制約が生じることは、人流停滞を補うためのIT/DX促進という社会的な潮流により半導体や電子部品・材料の研究や製造を促進する面があり、当社グループの受注・売上にとってプラスの要因になりえますが、他方で、受注活動、外注先の生産活動、販売・購買における物流等への影響や、社員が出社できないことによる業務停滞といったリスクも生じさせます。新型コロナウイルスを始めとする感染症の流行等により、世界レベルでの経済活動の停滞が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

その対策として、当社グループでは様々な業務をウェブベースで進めることで人の動きに制約が生じた場合でも業務が進むようなプロセスや商慣行を構築しております。

また、製造や物流といった業務は実際に人がいないと進まない面はありますが、当社グループの製造拠点は比較的「密」になることを回避しやすい職場環境であると判断しており、加えて自動化の推進や環境整備で対応する方針です。しかしながら、社員の安全を確保するために施設の閉鎖や操業停止が必要になる可能性は否定できず、このような閉鎖や操業停止に関連して発生する費用や生産性の悪化は、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<内部統制・システムに関するリスク>

17.コンプライアンス・内部統制に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

法令違反による事業への制約や制裁、社員の不正による経済的損失、ハラスメント等による社風の乱れやモラールの低下等のコンプライアンス問題が発生した場合には、当社グループの社会的信用が低下し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グループ共通の行動規範を導入してコンプライアンス遵守を促しております。

また、コンプライアンス委員会を設置し、発生した問題の対応に加えて、定期的にコンプライアンス教育を行うことで法令、社内規程、社会規範等の遵守の定着を図っております。

加えて、会社を経由しない弁護士への内部通報制度を整備しており、海外のグループ会社においても当該内部通報制度を利用できる仕組みになっております。しかしながら、これらの取組みが奏功せず、コンプライアンス問題が発生する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループは財務報告に係る内部統制を構築していますが、内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全に防止又は発見することができない可能性があります。また、当社グループが適正な財務報告に係る内部統制を維持できなかった場合、適時適切な財務報告の実施ができず、当社の財務報告に対する投資家の信頼性が低下し、当社の株式価格に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

18.情報セキュリティに関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)

当社グループでは、事業活動全般に亘り情報システムを利用しており、情報セキュリティの確保は重要な課題です。また、当社グループはその事業活動において、顧客情報や個人に関する機密情報又は個人情報を保有しています。情報セキュリティ対策としては、情報セキュリティ全般の体制についてリスクコンサルティング会社による分析・評価を2021年に実施し、指摘された課題に対応すべく情報システム部が改善に向けた対策を実施しております。加えて2023年8月より全社プロジェクトとして情報セキュリティ委員会を発足させ、情報システム部が管轄していない領域についてもセキュリティ対策を強化すべく対応しております。しかしながら、想定を超えるサイバー攻撃や、予期していない不正利用等が発生した場合、対応のために多額の費用負担が発生するだけでなく、当社グループの社会的信用に影響を及ぼし、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

そのため、全社的な情報セキュリティのレベルを向上すべく、コンサルティング会社を起用して体制構築するプロジェクトを構築しており、将来的にはISO27001取得を目指す計画です。

社内メールへの侵入に関してはシステム上の対策とともに役職員に対して年数回Phish Mailのテストを実施し、定期的に啓蒙と注意喚起を促しております。

外部からの侵入が判明した会員サイトに関しては、一度サイトを閉鎖した上で、セキュリティ対策を施した新サイトに移行済みです。

また、海外のグループ会社は、当社で制定した情報セキュリティ規程の内容をベースに自社の実態や規制状況を踏まえて、社内ルールの整備を行っております。しかしながら、これらの取組みが奏功しない場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<人材に関するリスク>

19.人材確保に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:直近1~3年、影響度:高)

当社グループは、成長に向けた様々な活動や新しい技術の開発・獲得を支えるため、また既存の技能やノウハウの承継等の必要性から、人材の確保が事業継続上の大きな課題となっております。有能な人材の確保ができない場合や、人材流出が生じた場合又は人材育成が計画どおりに進まなかった場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、毎年の新卒採用の他、必要な事業・部門で積極的に中途採用を実施しており、海外のグループ会社の多くも業容の拡大に応じて人材増強を図っております。

短期では習得できない技術・技能に関しては早期に承継ができるよう後継者育成を行い、また、新入社員から中堅層や経営幹部に至るまで階層別に研修・教育のプログラムを用意し、役職員の成長を積極的に支援しております。しかしながら、このような当社グループの教育努力やプログラムが十分でない可能性があり、そのような不足を補強するために、追加的な費用や時間等を必要とする可能性があります。

 

20.ビジネスと人権に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)

当社グループの事業は世界的に展開しており、ビジネス遂行の過程で人権問題が顕在化するリスクがあります。当社グループ内のみならず、取引先を含めた当社グループ事業に関わる領域全体で人権を侵害する行為が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは共通の行動規範を制定しており、人権を含む差別や権利侵害を禁止し、また当社ホームページにおいて「リガク・グループ人権方針」を掲載して開示しております。

加えて、原材料や部品の購入に関して人権侵害に関与しているサプライヤーからの購入を回避すべく、直接の購入先には人権侵害の無いサプライヤーからの調達であることの証明を求める等の施策を推進しております。しかしながら、これらの取組みが不十分で人権問題が発生した場合には、当社グループの社会的信用が低下し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

21.ステークホルダーの信頼及び企業価値に関するリスク(顕在化の可能性:不明、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)

事業運営に際してステークホルダーからの信頼は重要であり、何らかの理由でステークホルダーからの信頼を失った場合には、企業価値が毀損し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループではMission/Vision/Values(MVV)を制定し、理念・社是の他、顧客・仲間(社員)・社会・株主といったステークホルダーとの関係を詳細に定めており、それを実効的に推進するために、定期的にMVVに基づいた振り返りや対話の機会の設定、各組織や個人の目標へのMVVの反映等、定着に向けた施策を実行しております。これに加え、MVVを具体的行動として体系化、言語化した「リガク・コンピテンシー」を展開することで、社員の行動変容をいっそう促進する予定です。しかしながら、これらの価値観を実現し、ステークホルダーとの良好な関係を維持することができない場合には、当社グループの社会的信用が低下し、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

22.労務に関するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)

労務に関するリスクは基本的人権に関わるため、短期的な影響に留まらず長期的な会社の風土の問題に繋がり、良質な人材が長期に定着する事の阻害要因になると考えられます。

当社では36協定の遵守により過大な残業が発生することを防止するとともに、分単位での勤務時間管理によりサービス残業を回避しております。

加えて、労働者の健康や安全に関しては、産業医制度、安全衛生委員会によるモニタリングと改善等を行うことで、働く環境の整備と質の向上に努めております。

しかしながら、労務管理が不十分な事態が生じた場合には、当社グループの社会的な信用低下を招き必要な人材の確保に支障をきたす等、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

<経理・財務・会計に関するリスク>

23.財務資本に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:3年以内、影響度:高)

2024年12月31日現在、当社グループの借入金総額は55,388百万円であり、当社グループの資本合計81,769百万円の67.7%に相当します。借入金の大部分は、当社グループがThe Carlyle Group(関係会社及びその他の関連事業体を含め、以下「カーライル」といいます。)からの出資を受入れたことに関連するLBOローン契約によるものです。当該LBOローン契約には、連結ベースの経常利益が二期連続で赤字となる状態を生じさせない、及び連結ベースの純資産を前期実績の75%以上に維持しなければならないという2つの財務制限条項が含まれており、当社グループがこれらに抵触した場合、期限の利益を喪失し、一括返済を求められる等成長資金の確保に制約が生じることで当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、2024年12月31日現在、当社グループの有利子負債は全て変動金利付であり、金利変動のリスクも存在します。

なお、当社グループは2022年9月末にLBOローンの借換えを実施しました。借換え後も上記の財務制限条項は残るものの、その他条件は一般のコーポレート・ローンと同水準に改善しております。また、当社グループは、成長に伴う増産実現のため山梨工場の増設工事を開始しており、必要資金を従来よりも有利な条件で新規借入しております。2024年12月31日現在、新規借入が借入金総額に占める割合は限定的であり、当社グループの財務資本に関するリスクに及ぼす影響は限られると判断しております。

 

24.税制に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは世界的に事業を展開しており、国境をまたぐ取引やグループ会社間取引も多く存在するため、移転価格税制の対象となる場合があります。

事業を展開する国毎に税制や税率が異なることから、税務効率の悪化、取引形態によっては付加価値税の還付が受けられない等により、予期せぬ税負担が発生する可能性もあります。

グループ会社間取引は税理士法人等の専門家に相談しながら適正な取引形態や取引価格を設定して行っております。

また、配当や付加価値税還付についても税務効率が阻害されないよう専門家のアドバイスを得ながら進めております。しかしながら、これらの取組みにもかかわらず、各国の税制の変更や、移転価格税制及び上記還付に関する論点を含む税務当局との見解の相違等によっては、追加的な税負担等が発生するおそれがあり、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

25.固定資産の減損損失に関するリスク(顕在化の可能性:不明、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、事業の性質上、不動産や機械設備等の固定資産を多く保有しているため、特定の事業の業績悪化に伴い、不動産や機械設備あるいは投資に関わるのれんの減損損失の計上により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、事業に対する投資をする前に採算性や回収可能性を十分に検討して実行することとしており、また事業の採算が悪化した場合は、直ちに立て直しの措置をとると共に、会計監査人とも協議の上で適正な時期に適正な金額の減損損失を計上する方針としております。

なお、現在において業績が計画どおりに推移していない等の事業は既に減損損失計上済みであり、将来における減損損失発生のリスクの影響は少ないと見込んでおりますが、将来、当社の固定資産の相当額が減損損失の対象となった場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

26.のれんについてのリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:直近1~3年、影響度:高)

当社グループは株式会社リガク及びその子会社群を買収した際、並びにその後の新規買収時に多額ののれんが計上されており、その総額は2024年12月末時点において51,710百万円となっており、当社グループの資産合計の29.12%を占めております。のれんに関しては、毎期減損テストを実施しており、のれんの対象となっている事業の将来予測キャッシュ・フローの現在価値が買収時の評価を下回る場合には減損損失が計上されます。2024年度において減損損失は計上されておらず、今後も業績の向上に努めて参りますが、当社グループの見通しが悪化した場合には、減損損失又は追加的な償却費を認識する必要が生じる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

27.中国製品免除認証届出対応に関する費用の財務影響リスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:直近1~3年、影響度:中)

中国においては輻射安全許可証制度があり、放射線装置の製造・販売・使用について許可証の取得を行う必要があります。また許可制度の例外として製品の免除認証届出制度が存在します。当社グループの製品について免除届出が認証されたモデルとして販売を行った事案において、中国規制当局から免除認証を得られなかった場合、顧客や代理店が中国規制当局から罰金や制裁金を課される可能性があるほか、中国での販売活動が制限され、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、一部の製品について代理店名義で免除認証を取得したものの、装置のモデルチェンジをしたモデルが、その免除認証の対象外と認定されて輻射安全許可証を取得していない顧客による利用が継続できない可能性が高いことが判明したため、当該対応に関連する費用として、2024年12月期において218百万円の引当金を計上しております。当該事案については既納製品の認証を満たす装置への置換えによる顧客の装置利用継続の確保等の対策に万全を期することで収束を図るべく対応中であり、また、従来は代理店名義で取得していた免除認証を中国現地法人名義で取得することで、免除認証に関する以下のリスクを軽減することを図っております。

・認証について問題が発生した場合に対応が遅れるリスク

・代理店が認証の権利(主権)を主張するリスク

・代理店が事業を停止した場合の認証の取扱いが不透明となるリスク

 

<外部関係に関するリスク>

28.訴訟等についてのリスク(顕在化の可能性:不明、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:不明)

当社グループは、事業活動において、各種契約違反、労働問題(労働組合紛争を含む。)、製造物責任、知的財産権侵害、機密情報漏洩等の請求に関連して、顧客、取引先、競合他社、従業員、規制当局等の当事者から訴訟その他の法的手続を提起されるリスクに晒されております。本書提出日現在において、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす訴訟は提起されておりませんが、今後、当社グループが契約違反や特許権侵害等を理由とする訴訟を第三者から提起された場合や、当社グループに対して多額の損害賠償の支払いを命ずる判断がなされた場合、当社グループの社会的信用が低下し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

特許権については特許委員会において第三者の特許権を侵害しないよう個別案件別にチェックをする体制をとっており、また、上記リスクに備え、製造物責任保険や損害賠償責任保険を付保しておりますが、これらによっても上記リスクに十分に対応できる保証はなく、その場合、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

29.サステナビリティに関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:高)

社会的公器としての企業活動が一層意識されてきており、ステークホルダーからの信用や理解が十分に得られなかった場合には、社会的信用の低下等により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、気候変動対策に関連する新たな法令や規制の導入がなされた場合には、対応費用の増加により、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社グループではESG推進委員会が中心になってサステナビリティ活動を行うことで、社会的信用を維持すると共に、当社グループの分析装置を利用して顧客のサステナビリティ活動に貢献することを通じて当社グループの事業にもプラスになるという好循環を生んでおります。

当社ホームページにおいて、サステナビリティ全般や、サステナビリティに関するマテリアリティについて開示しております。しかしながら、ステークホルダーからのサステナビリティに関する企業への期待や要求は急速に変化しており、将来において当社グループがそれらの期待や要求に適切に対応できない場合、当社グループの社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

30.配当政策に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:不明)

当社は、中長期の経営視点から成長投資の推進と財務健全性の確保とのバランスを考慮しつつ、各期の業績に応じて当期連結利益の30%を目途に株主への配当を実施していくことを、資本政策の基本的な方針としております。

当社は健全な業績成長を続けており、かかる成長から創出される利益とキャッシュ・フロー、さらに利益剰余金を原資として、成長投資や借入金返済等とのバランスを考慮した株主への配当支払いを実施することについて、その支障が生じる可能性は低いと考えておりますが、配当の実施が必ず保証されているわけではありません。

 

31.買収や提携・共同開発に伴う業績や財政状態の変化に関するリスク(顕在化の可能性:不明、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:不明)

当社グループは、M&Aや他社(大学や研究機関を含む。)との連携・共同開発により、X線に関する要素技術や要素部品の開発・製造能力を取り込むことで、既存製品の改善や新しい製品の開発に繋げてきましたが、今後も新たな技術を取り入れるべくM&Aや他社との提携・共同開発を実行する方針です。

引き続きM&Aや他社との提携・共同開発を行うことでオープン・イノベーションを促進していく方針ですが、事前の調査の段階で確認又は想定されなかった事象がM&A等の実行後に発生又は判明する場合や、M&A等の実施等の後の事業展開が計画どおりに進まない可能性があり、当初期待した成果が実現しない場合には新技術や新製品の開発が遅れ、さらには減損損失を計上し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

32.新株予約権の行使による株式の希薄化に関するリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:低)

当社グループは、当社の取締役、監査役及び執行役員、並びに当社の子会社の取締役及び執行役員に対して、企業価値増大への意欲を高めるためのインセンティブとして、ストック・オプション制度を導入し、これらの者に新株予約権を付与しております。付与した新株予約権が行使された場合には発行済株式が希薄化し、当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

なお、2024年12月末時点での新株予約権の付与数は37,126個、新株予約権による希薄化性潜在的普通株式数は5,470,154株であり、2024年12月末時点での当社の発行済株式総数225,268,600株を基準として全ての新株予約権が行使された場合でも希薄化率は2.4%にとどまり、希薄化の影響度は低いものと考えております。

 

 

<大株主に関するリスク>

33.資本関係についてのリスク(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:直近1~3年、影響度:高)

2024年12月末日現在において、当社の発行済株式数(自己株式を除く。)の42.23%をカーライルがGeneral Partnerとして支配・運用するAtom Investment, L.P.により保有されています。かかる大株主が今後においても相当数の当社株式の保有を継続した場合、大株主と少数株主との間で潜在的な利益相反関係が生じる可能性があります。そうした大株主と少数株主との間で生じうる利益相反関係に対して、当社では、社外取締役4名及び社外監査役3名を独立役員として指定し、経営の透明性を確保するとともに、取締役会の諮問機関として任意設置している指名評価報酬委員会の構成員のうち過半数を独立社外取締役とすることで少数株主の利益の確保に向けた体制を強化しております。また、大株主が保有株式を売却する際には株価への影響、すなわち、株式売買の需給関係に伴う株価形成への影響あるいは特定の株主への売却に伴う事業運営上の影響が生じる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりです。

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末から14,426百万円増加し、177,547百万円となりました。主な要因は、現金及び現金同等物が7,470百万円増加、為替影響及び売上収益増加等で営業債権及びその他の債権が1,373百万円増加、山梨工場増設に伴う設備投資等で有形固定資産が4,021百万円増加等です。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末から1,993百万円減少し、95,777百万円となりました。主な要因は、売上収益の実現により流動負債の契約負債が1,336百万円減少、4,000百万円の借入金返済及び2,721百万円の山梨工場増設に伴う新規借入で非流動負債の借入金が1,279百万円減少、退職金の支払い等で非流動負債の従業員給付が1,008百万円減少等です。

当連結会計年度末の資本合計は利益剰余金が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ16,420百万円増加し、81,769百万円となりました。以上の結果、当連結会計年度末の自己資本比率は前連結会計年度末から6.0ポイント増加し、46.1%となりました。

 

当連結会計年度における我が国の経済状況は、雇用・所得環境の改善並びに経済活動の正常化が進んだことにより、賃金上昇、物価上昇が認められますが、インフレによって実質賃金の伸びが抑えられ、緩やかな回復に留まっています。米国ではインフレ減速と金融緩和の中、緩やかな成長を維持、欧州はインフレに伴う経済減速、中国経済は引き続き不動産不況等で内需が低迷しています。ロシアのウクライナ侵攻の長期化、パレスチナを中心とした中東情勢の悪化等により、地政学的リスクは高いままです。また、米国の金融緩和の動きと日本における日銀の政策金利引き上げの動きにより、為替相場の変動が生じています。

こうした経済状況下ではありましたが、半導体市場の成長と材料イノベーションへの取り組みの進展は当社グループのソリューションに対し高い需要を生み出し、主に以下の事業における伸長と出荷増等により、売上収益、利益ともに二桁成長を達成しました。

・ 多目的分析機器においては、グローバル戦略が奏功し、海外、特に米州・アジアで高い成長を実現しました。新素材や新技術の研究需要の高まりや中国補正予算案件の獲得により、アカデミア/ガバメントの領域で売上を伸ばしました。Lab to Fab戦略が進展し、X線トポグラフィ技術を利用したパワー半導体の開発・量産工程で使用される製品の販売が伸長しました。

・ 半導体プロセス・コントロール機器においては、北米及びアジア(中国を除く)におけるAI半導体向けへの当社製品の採用が加速され、GAA世代のロジックやアドバンスト・パッケージング向けの新たな需要を獲得しました。また先端半導体エコシステムへのアプローチ戦略強化により、半導体製造装置メーカーの研究開発及び出荷時検査を目的とした需要を獲得しました。さらに中国においてはレガシー及びパワー半導体の需要を効果的に獲得しました。これらにより大幅な成長を実現しました。

・ 新型コロナウイルス感染症の影響による部材仕入の遅延等で生産・出荷が遅滞していた状況が緩和され、生産の円滑化とサプライチェーンの改善により出荷が増加しました。

・ 販売ミックス、プライシング戦略を改善させ、また通年では円安傾向にあることも当社業績に寄与しました。

以上の結果、当連結会計年度の業績は、円安による効果もあり、売上収益は90,652百万円(前年比13.5%増)、営業利益は18,367百万円(同20.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は13,615百万円(同24.9%増)となりました。

なお、当社グループは、「理科学機器の製造・販売」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は27,992百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,470百万円増加しました。

当連結会計年度における各活動におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において営業活動による資金の増加は14,604百万円(前期は11,723百万円の資金の増加)となりました。これは主に、税引前当期利益17,977百万円(前期は14,826百万円)、減価償却費及び償却費4,868百万円(前年同期は4,408百万円)があった一方で、法人所得税の支払5,674百万円(前年同期は4,161百万円)があったこと等によるものです。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において投資活動による資金の減少は6,053百万円(前期は2,358百万円の資金の減少)となりました。これは主に、保険積立金の解約による収入282百万円(前年同期は280百万円)があった一方で、有形固定資産の取得による支出5,867百万円(前年同期は2,780百万円)、無形資産の取得による支出495百万円(前年同期は46百万円)があったこと等によるものです。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度において財務活動による資金の減少は2,442百万円(前期は4,023百万円の資金の減少)となりました。これは主に、借入による収入2,721百万円(前年同期は無し)があった一方で、借入金の返済による支出4,000百万円(前年同期は3,333百万円)、リース負債の返済による支出1,158百万円(前年同期は839百万円)があったこと等によるものです。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績を示すと、以下のとおりです。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前期比(%)

理科学機器の製造・販売

35,356

106.5

 

(注) 金額は、販売価格の売上原価によっております。

 

b 仕入実績

当連結会計年度における仕入実績を示すと、以下のとおりです。

 

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前期比(%)

理科学機器の製造・販売

36,282

98.3

 

(注) 金額は、仕入価格によっております。

 

c 受注実績

当連結会計年度における受注実績を示すと、以下のとおりです。

 

セグメントの名称

受注高(百万円)

前期比(%)

受注残高(百万円)

前期比(%)

理科学機器の製造・販売

80,739

100.9

32,326

80.0

 

 

d 販売実績

当連結会計年度における販売実績を示すと、以下のとおりです。

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前期比(%)

理科学機器の製造・販売

90,652

113.5

 

(注) 販売先の販売割合が総販売実績額の10%以上を占める販売先はありません。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による主要な経営指標に基づく当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

 至 2024年12月31日)

売上収益

79,887

百万円

90,652

百万円

対前年売上高成長率

27.4

13.5

営業利益

15,256

百万円

18,367

百万円

調整後営業利益(注1)

18,315

百万円

20,917

百万円

調整後営業利益率(注1)

22.9

23.1

調整後EBITDA(注2)

20,229

百万円

23,462

百万円

調整後EBITDAマージン(注2)

25.3

25.9

Net Debt/調整後EBITDAレシオ(注3)

2.1

1.4

研究開発費比率(注4)

6.5

7.5

CAPEX比率(注5)

3.5

7.0

 

 

当連結会計年度における世界経済は、インフレの沈静化による各国における利下げ、世界的な貿易の持ち直し等により、底堅い成長が見られました。また、日本経済は年初の落ち込みから年央以降は復調する等、年後半にかけて徐々に回復しました。一方で各国における地政学的な紛争リスク、米国における政権交代等による先行きの不透明さがあります。このような環境下において、当社グループが手掛けている分析機器ビジネスは、旺盛な研究開発投資による多目的分析機器事業の高い成長と市場のシクリカリティを超えた半導体プロセス・コントロール機器事業の成長に支えられ、当連結会計年度の売上収益は90,652百万円(前年同期比13.5%増)で過去最高となりました。2023年前半までは、主に新型コロナウイルス感染症の影響による部品・部材の調達問題とそれに起因する生産遅延等の影響がありましたが、全社プロジェクトとして、代替部品の選定や仕入先の拡大を行い資材調達の改善を図り、自社の生産体制の強化・効率化と併せて外注の拡充を行って生産能力の拡大につなげたことが、売上の成長に大きく貢献しております。

調整後営業利益(注1)は20,917百万円(前年同期比14.2%増)、調整後EBITDAマージン(注2)は25.9%(前年同期比0.6ポイント増)、Net Debt/調整後EBITDAレシオ(注3)は1.4倍(前年同期比0.6ポイント減)となり、価格の見直しと売上成長によるオペレーティングレバレッジにより利益率を堅実に向上させ、財務上の高い健全性を実現しました。

研究開発費は当社の成長の源泉となる重要な投資となるため増額し、前年同期比で32.5%増えたものの、売上の成長率も大きかったため、研究開発費比率(注4)は7.5%となり前年同期比で1.1ポイント上昇しております。CAPEXは主に山梨工場増設に伴う設備投資等でCAPEX比率(注5)7.0%の支出になり、前年同期比で3.5ポイント上昇しました。

(注) 1.調整後営業利益=営業利益+PPA償却費+減損損失+一時費用

         調整後営業利益率=調整後営業利益/売上高

2.調整後EBITDA=税金等調整前当期利益+減価償却費及び償却費+減損損失-受取利息及び配当金+支払利息+一時費用(IFRS導入費用、コンサルティング・フィー、中国免除申請関連費用、上場関連費用等)   

    調整後EBITDAマージン=調整後EBITDA/売上高

3.Net Debt/調整後EBITDAレシオ=(短期借入金+長期借入金+リース負債(流動)+リース負債(固定)- 現金及び現金同等物)/ 調整後EBITDA

4.研究開発費比率=研究開発費/売上高

5.CAPEX比率=CAPEX/売上高    CAPEXは使用権資産を除いた設備投資の金額により算出

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

また、流動性リスクを管理するために、以下の指標を用いて、それぞれの数値の変化を毎月モニタリングし、原因を分析することにより流動性リスクを管理しております。

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

 至 2024年12月31日)

DSO(注1)

75

72

DIO(注2)

222

219

DPO(注3)

75

74

Net Debt/EBITDAレシオ(注4)

2.11

1.44

 

 

当社グループは、経営の効率化を進めるために基幹システム等IT投資を強化する計画です。また売上増加に対処するために生産能力の拡張投資を実行しておりますが、運転資金の改善やグループ内での資金集約等の資金効率化を通じて、必要な資金は原則として手元資金で賄うことを基本方針としております。資金繰りが悪化した場合には、「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等 (コミットメントライン契約の締結)」に記載されたコミットメントローンを活用いたします。

(注) 1.DSO=売掛債権残高/売上高(12ヶ月)*365

2.DIO=棚卸資産残高/売上原価(12ヶ月)*365

3.DPO=買掛債務残高/売上原価(12ヶ月)*365

4.EBITDA=税金等調整前当期利益+減価償却費及び償却費-受取利息及び配当金+支払利息

    Net Debt/EBITDAレシオ=(短期借入金+長期借入金+リース負債(流動)+リース負債(固定)- 現金及び現金同等物)/ EBITDA

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。

なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「同 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

(重要な資金の借入)

当社は、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行をマンデーテッド・リード・アレンジャーとする銀行団との間で山梨工場増設のために追加のタームローン契約を2024年1月31日に締結しております。

(1)シンジケートローン契約締結の目的

タームローン

山梨工場増設のための資金とすることを目的としています。

(2)シンジケートローン契約の概要

契約形態

タームローン

契約金額

タームローン 5,607百万円

契約日

2024年1月31日

初回実行日

2024年6月28日

利率

Tibor+0.6%

返済期日

2026年9月末日を初回返済日とし、毎年3月末、9月末を期日として、貸付実効額の26分の1を分割返済

残額は2028年3月3日

コミットメントフィー

貸付が工事進行に合わせて実行されることから、契約金額と実行額の差額に対して2024年4月1日から2026年8月末日までの間、0.15%のコミットメントフィーがかかります。

担保

当社が保有する預金債権、グループ会社宛貸付債権及び㈱リガク株式並びに㈱リガクが保有するグループ会社宛貸付債権、預金債権及び不動産

参加金融機関

㈱三菱UFJ銀行、㈱みずほ銀行、㈱三井住友銀行 計3行

 

 

(コミットメントライン契約の締結)

当社は、株式会社三菱UFJ銀行、株式会社みずほ銀行、株式会社三井住友銀行をマンデーテッド・リード・アレンジャーとする銀行団と、総額4,500百万円のシンジケートローン形式のコミットメントライン契約を2022年9月27日に締結しております。

 

(1)コミットメントライン契約締結の目的

本契約締結により、外部要因による資金需要の増加に対し、機動的かつ安定的な資金調達手段を確保して事業の安定性と財務の健全性向上を図ることを目的としております。

 

(2)コミットメントライン契約の概要

契約締結日

2022年9月27日

借入極度額

4,500百万円

契約期間

2022年9月27日~2028年3月3日

資金使途

運転資金

参加金融機関

㈱三菱UFJ銀行、㈱みずほ銀行、㈱三井住友銀行

利率

Tibor+0.7%

コミットメントフィー

0.5%

担保

当社が保有する預金債権、グループ会社宛貸付債権及び㈱リガク株式並びに㈱リガクが保有するグループ会社宛貸付債権、預金債権及び不動産

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発は、当社グループの強みであり、製品競争力の源泉であるX線源、光学素子、検出器、解析ソフトウェア等のX線要素技術の優位性を、それらの強化投資によりさらに強固なものとし、かかるX線要素技術の優位性を原動力とした、他社が真似ることのできない革新的な製品・サービスを生み出すことにより、科学技術イノベーションに対する顧客や社会のニーズに応えていくことを、その方針としております。

また、X線分析機器の将来を見据えて、これまでにない革新的な製品・サービスを生み出すための技術基盤となるX線による先端解析技術の研究やX線の新応用分野の開拓、その他X線技術を深掘りした先進的な研究に取り組んでおります。

さらに、当社グループの研究開発活動が結実した独自技術に関する知的財産権の保護、管理及び活用により当該独自技術の知的財産権の確実な保全を図る一方、先進的な研究に取り組む国内外の大学・研究機関や独創的な技術力を有する企業との提携、あるいはそれらのM&Aを通じて、当社グループの技術力を強化するオープン・イノベーションを積極的に推進しております。

当社グループは、グローバル・ワン・リガクの技術開発力をグローバルで活用する一方、外部研究機関等との協働も進め、研究開発費比率(注)を引き上げることを経営の目標としております。2024年12月期における当社グループが支出した研究開発費の総額6,838百万円で、研究開発費比率7.5%となりました。

(注) 研究開発費比率=研究開発費/売上高

当社グループの研究開発体制は、X線による先端解析技術の研究やX線要素技術の開発・製品化を担うグローバルR&Dユニット傘下のRCX線研究所、RCライフサイエンス研究所、RIT及びRITE、そしてグローバルな製品戦略に基づく製品の開発・競争力強化を担うグローバルプロダクトユニット傘下のRCプロダクト本部XRD、ライフサイエンス、XRF、X線イメージング、XRDアプリケーションソフトウェア開発部、XRD製品設計部、XRF開発設計部及び熱分析、RC薄膜デバイス事業部設計部、要素部品事業部、ART、RAD、並びにNSIの各組織で構成されております。

 

当社グループにおける主な研究開発活動は以下のとおりです。

 

研究開発体制

研究開発活動

国内

Ⅹ線研究所

先端解析技術研究部

長期的な視点から、将来の技術基盤となるX線による先端解析技術の研究やX線の新応用分野の開拓、その他X線技術を深掘りした革新的かつ先端的な研究に取り組んでおります。

X線研究所

要素技術研究部

製品の実用化に直結するX線源や検出器等のX線要素技術の開発・製品化を行っております。各製品の競争力強化に寄与するためのX線要素技術の高性能化を推進しております。

ライフサイエンス研究所

ライフサイエンス事業の拡大に繋がる要素技術の研究開発ロードマップの策定や優位化技術の開発に取り組み、ライフサイエンス事業の基盤の構築を推進しております。

グローバルプロダクトユニット(RC各製品所管・設計部門)

所管製品の競争力強化や新分野への進出を図るため、新製品の開発や既存製品の機能向上・新機能追加等に関わる開発を推進しております。

国内・海外子会社

自社事業の強化を目指した開発や当社グループのX線の製品に搭載される要素部品の開発を行っております。

 

 

当連結会計年度の研究開発活動の主要課題・成果は以下のとおりです。

(1) 研究開発の主要課題

研究分野

主要課題

粉末・薄膜解析

X線回折・散乱を用いた構造解析の主要分野であり、電子部品、電池材料、医薬品、セメント、化学製品等の幅広い産業分野において必要とされる高度な材料構造解析技術を開発し、複雑化する材料開発に役立てることができる評価方法を提供しております。

近年はLab to Fab体現するSemi規格製品や自動化機能を有する製品の開発にも力を入れております。

ライフサイエンス

従来からの強みであるX線を用いた単結晶構造解析の製品の機能強化に向けた開発に加えて、電子線を用いた回折装置を開発することで微小サイズの結晶を解析する技術を提供しております。

X線では不可能とされていた、溶液中のタンパク質を結晶化することなく観察できる装置を開発し、複数の大学や研究者と提携して具体的なアプリケーションの提供に向けて取り組んでおります。

蛍光X線分析

材料の元素組成や微量元素を簡便かつ迅速に測定する方法として、蛍光X線分析は幅広く活用されており、多くの分析機器メーカーが開発や製品化に参入しております。そのため、精度や感度を他社が容易に到達できないレベルに高めることが、当社グループの蛍光X線分析分野における課題と考えております。かかる課題への対応として、分光素子や光学系あるいは検出器の継続的な性能向上を図るとともに、これまでにない機能を備えた製品の開発を推進しております。

X線透過(イメージング)分析

高電圧化と高分解能化を進めることが、当社グループのX線透過(イメージング)分野における課題と考え、これらに対応するための技術の開発を推進しております。高電圧化は、当社グループの従来製品では困難な電子材料等の重元素材料の透過及びCT撮影を実現するため、高電圧X線源とそれに対応した検出器の開発を行っております。高分解能化は、材料内部のより微細な構造や欠陥を感度良く検出するための高感度検出器やX線レンズの開発を行っております。

薄膜デバイス

半導体デバイスは、コンピューターやスマートフォンだけでなく、自動車や家電等生活のあらゆる分野に浸透しております。さらに、スマートグリッド等エネルギーの効率的活用にも重要な役割を果たしており、今日では人類のより良い生活にとって欠かすことのできないものとなっております。半導体デバイスは、引き続きその使用量の増大が見込まれているとともに、技術開発や製造プロセス管理が求める技術要求は高度化の一途を辿っており、これまでの光や電子線では応えることが困難となる微細化・積層化・新材料の採用等に対して、透過性、非破壊、微小部計測等のX線の特長を活かした計測技術を継続的に進化させることで対応し、半導体産業の発展に寄与してまいります。

熱分析

当社グループの熱分析分野では、最先端の感度性能等を持つ製品の開発を引き続き推進するとともに、品質管理での利用や海外顧客のニーズに即した製品のラインアップの充実に向けて取り組んでおります。

 

 

 

(2) 研究開発の主要成果

主要製品・

サービス

実用化

概要

小型試料水平型X線回折装置

MiniFlex XpC

2022年3月よりセメント会社向けに納入開始

セメント会社の品質管理現場に最適な小型のX線回折装置を開発いたしました。卓上型X線回折装置MiniFlexで用いられているX線電源とほぼ同じ大きさで、800Wの高出力を可能にしております。検出器にD/teX Ultra 250を搭載し、測定データの高強度化を実現することで、測定時間の短縮化を可能にするとともに、試料ローディング機構を備えることで、作業効率を向上させております。

サブミクロン結晶用電子回折統合プラットフォームXtaLAB Synergy-ED

2021年12月より出荷開始

当社グループの高速・高感度検出器HyPix-ED、測定から構造解析までを包括的に支援するソフトウェアCrysAlisPro ED、日本電子㈱の電子線発生・制御技術を有機的に統合いたしました。

電子線回折の技術を用いてナノメートルサイズの微小結晶の構造解析を可能にしたシステムで、測定から3次元分子構造の決定まで、シームレスなワークフローを提供しております。

ナノサイズの結晶が測定可能である電子回折の強みを活かし、数百ナノメートルあるいはそれ以下の微結晶でも構造を決定することが可能となりました。

検出器

XSPA-400ER

2023年3月より出荷開始

高いエネルギー分解能により試料由来の蛍光X線をカットし、バックグラウンド成分を低減することで、従来機よりも高感度な測定を実現させております。

0、1、2次元に対応しているため、一般的なX線回折パターンの取得からデバイリングの形状測定まで、対応することができます。また、全てのピクセル形状が同一であるため、IC境界補正が不要となり、一様な画像の取得も可能となっております。

半導体加工形状測定

XTRAIA

CD-3200T

2021年より

出荷開始

3D NANDメモリ等の深穴解析用の透過型X線小角散乱測定装置を、自社のX線源、光学素子、検出器を用いて開発しております。また、複雑な構造を解析するために、測定された多数の回折スポットの強度変動を全て詳細に最適化することができるソフトウェアも開発し、いち早く製品化に成功いたしました。この装置は、すでに納入が開始されており、従来の光や電子線では測定できなかった領域の測定を可能にすることで、補完技術としての普及が期待されます。

小角散乱解析

SAXS3DM

2022年4月に

製品開発完了

散乱データの可視化プロジェクトの第1弾として、小角散乱データから、ナノメートルレベルの複雑な二次構造を3次元モデルとして可視化する方法を開発し、製品化に成功しております。構成された3次元構造からは、内部の空孔径等を解析することが可能で、充填剤や溶媒中に分散した粒子の構造解析や物性のシミュレーションに有効な手法となっております。

X線トポグラフ

XRTmicron

Hybrid

2023年3月より

出荷開始

XRTmicronは開発から約10年が経っておりますが、SiCによるパワーデバイスの本格活用が始まっており、年間10台程度と高額機ながら堅調な販売実績を上げております。他方で、ユーザーから短時間測定へのニーズが高まっており、これに対応するため、当社グループのピクセル型検出器を活用した高速測定と高分解能測定の切換えが可能な装置(XRTmicron Hybrid)を開発しております。これにより、分解能において劣るものの、10倍以上の高速化を実現し、6インチウェーハを2~3分の短時間で測定することを可能とし、研究開発用途のみならず生産現場での利用も視野に入れております。

波長分散型蛍光X線装置

Supermini200

2024年7月1日より出荷開始

液体試料や粉末試料をそのまま測定する際は、特に軽元素を測定する場合にヘリウムガスを使用する必要がありましたが、隔壁ユニットを開発して大気雰囲気と真空雰囲気の双方の環境を提供することで、ヘリウムガスを使用せずに測定が可能となりました。測定感度は若干落ちますが、大半の顧客において実用面での影響を最小限にとどめております。

ヘリウムガスを使用するための設備やスペースの節約、ガス使用の手間の削減のみならず、近年不足が懸念され価格が高騰しているヘリウムガス代への支出が不要となり、顧客の利便性が大きく高まると考えております。加えて、環境省からの要請である「ヘリウム使用の削減やヘリウムを使用しない測定方法への変更」に応え、環境面でも貢献しております。