第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

当社は、自分の想いをどんな形であれ表現し、自分らしく生き、人々と交流することが人生をより豊かにすると考えます。このような人々を表現者(クリエイター)と位置づけたうえで、当社は「世界中の人々を表現者にする」企業となることを目指します。

そのために、「クリエイターに品格を伴った価値を提供するという、利他的な動機を基にした行動」という規範のもと、創作活動を加速させる魅力的なクリエイティブオーディオ機器の開発を推し進めるとともに、より多くの人々に当社を認知してもらい、かつ既存顧客の満足度を高めるべく、ブランド価値の向上に努めます。

また、適正で安定した利益還元によって株主の期待に応えるとともに、技術革新に対する投資を積極的に行います。更に、コンプライアンス、透明性、環境への配慮を重視することで企業の社会的責任を果たしてまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは、持続的な成長と適正な利益の確保のための指標として売上高及び営業利益を、また、資金の効率的な運用を実現するための指標として株主資本利益率(ROE)及び投下資本利益率(ROIC)を、重要な指標と考えております。

 

(3) 経営環境

当社グループが属する楽器関連機器業界においては、コロナ特需の2021年をピークに下方傾向にあり、旅行やレジャー等の体験消費が旺盛なことや中古市場が拡大傾向にあること、世界的なインフレに伴う特に若年層の可処分所得の減少や金利差を背景とする急激な為替レートの変動により市況感が低迷していることから需要が減少しており、先行きの不透明な状況が続いております。

 

(4) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、中長期的な経営ビジョンとして、「“進化”と“挑戦”により、より多くの自己表現を支える」を掲げ、当社製品のターゲットユーザーを楽器の演奏をするミュージシャンに限定せず、広く創造活動をするクリエイターと位置づけることにより、製品カテゴリーを拡げることで成長シナリオを描いております。一方で、ハンディオーディオレコーダー、マルチエフェクターやデジタルミキサーといった既存の製品カテゴリーにつきましても、引き続き新製品を投入し、持続的な成長を目指してまいります。すなわち、製品カテゴリーを入れ替えていくのではなく、実績ある従来製品で安定した事業基盤を確保しつつ、新たな製品カテゴリーを加えていく、という経営戦略を掲げております。

加えて、開発標準化・最適化や効率的なプロモーション活動による利益率向上、部品納期短縮と販売子会社との連携強化による在庫最適化がもたらす回転率向上、AIやDXを活用した生産性向上という3つの効率化により、収益率を強化します。

また、2021年1月に株式会社フックアップを子会社化したことにより、音楽用電子機器のディストリビューション・ビジネスを営む基盤が、日米欧に揃いました。ズームブランドの成長に加えて、第二の収益の柱として育成してまいります。M&Aを含めた成長のために必要な投資については、継続的に実施していく予定であります。

当社は、上記方針を踏まえ、2024年度から2026年度までの中期経営計画「第4次中期経営計画2024-2026」を策定しております。当該中期経営計画において、2026年度の数値目標を、売上高220億円、営業利益22億円と定めました。また、資本効率性の指標としてROE10%以上、ROIC10%以上、PBR1倍以上を目標として設定いたしました。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当面は不透明な外的要因が続くことを前提に、安定的、持続的に事業を拡大するため、下記のような課題に優先的に取り組んでまいります。

 

中国で生産される当社の米国向け輸出商品のうち、第一次トランプ政権下で追加関税の対象となった主要製品は既に中国外へ生産移管を完了していました。しかしながら、第二次トランプ政権により、中国からの全輸入品に20%の追加関税が適用されることとなりました。
 これに対応するため、当社は2025年販売開始の新商品を全て中国外で生産する方針を事前に決定しており、新たに追加関税が課せられる主力商品も、2025年12月期第3四半期中に生産拠点を移管する予定であります。更に、1月中に相当数の在庫を米国へ移動させることで影響を緩和しております。これらの施策により、連結営業利益への影響を最小限にとどめる見通しとなっております。
 しかしながら、中国外での生産はコスト上昇の傾向があり、品質を維持するためにも相応の指導が必要となります。これらの課題に対処するため、生産工場との連携を強化し、徹底した生産指導と品質監視を実施することで、安定した品質と競争力のあるコスト構造の確立に努めてまいります。
 また、年々難易度が上がる人材確保に対応するため、インターンシップやOB訪問などの採用活動を強化するとともに、新たに芸術系大学からの採用を開始しました。その結果、2024年は過去最多の新卒人材を確保することができましたが、今後も継続的に優秀な人材を確保するための施策が重要であり、さらなる採用戦略の強化に取り組んでまいります。
 一方で、既に働いている人材の育成も重要となり、2024年には全社員を対象としたデザイン思考の外部研修を実施しました。この研修は半年にわたるプログラムで、ユーザーや仕事仲間への共感を起点とし、物事を抜本的に捉え直す「統合思考」、先入観や思い込みを排除し、新しい枠組みで物事を捉える「転換思考」などのフレームワークを活用しながら、課題解決のプロセスを学ぶ内容となっております。
 人材育成は継続的な取り組みが求められるため、より実務的な育成プログラムを社内で立ち上げるなど、長期的な成長を支援する体制を強化してまいります。今後も、社員一人ひとりのスキル向上とキャリア成長を促進する取り組みを積極的に推進してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1) ガバナンス

当社は、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続きについて、事業と密接に結びつくことからコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりません。サステナビリティ全般における課題については、当社取締役会においても協議し、今後のサステナビリティ活動に取り組んでまいります。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりであります。

 

(2) 戦略

当社の経営方針・経営戦略などに影響を与える可能性のあるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組として、開発される商品にアクセシビリティ(誰にでも使用可能なユーザーインターフェース)を確保し持続可能な社会の実現に努めております。また、地球環境に関する課題として、商品輸送時のCO2排出量削減、ペーパーレスなどを意識し、取扱説明書、乾電池、ビニール袋などの同梱物を極力排除し、リサイクル可能な環境配慮型の個装箱設計を推進しております。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

① 人材育成方針

当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境の整備に関する方針は、従業員の最大限の能力を発揮できるよう、CEOによる全社員への個人面談を実施し、各従業員から意見のくみ上げを行い、活力ある職場環境や企業風土の醸成に努め、適性のある人材を管理職として登用していくことを基本方針としております。

具体的には、技術を極めるプロフェッショナル職とプロジェクトを率いるマネジメント職を選択できる複線型人事制度の導入を2025年に予定しております。更に若手~中堅社員を中心に推進するプロジェクトチームを多数結成し、プロフェッショナル社員が横断的に技術品質を担保することで、更にプロジェクトチームの拡大が見込まれます。これにより、組織の開発力を強化するとともに、社員のモチベーション向上も期待できます。

② 社内環境整備方針

誰もが働きやすい環境づくりのための、フレックスタイム制に加えテレワークを可能とする体制の整備や、ITツールを活用した業務の効率化、ハラスメント研修の開催、年次有給休暇や産休・育児休業の取得奨励などに取組み、職場環境の整備・改善を図ることにより離職率の低下を目指しております。

なお 、2024年12月期は男性4名、女性1名が育児休業等・育児目的休暇を取得しており、取得した社員の職場復帰率は男女とも100%であります。また、有給休暇の取得率は87.32%、離職率は3.13%となりました。

 

(3) リスク管理

当社では、サステナビリティ経営の推進及び経営に係る各種リスクが、各部門で行われる定期ミーティングなどで認識された場合には、毎週1回開催される経営会議において、短期、中期及び長期的な問題点、更には潜在的リスク等について確認し、議論が行われ、対応が必要とされた事項については、適宜取締役会に諮り議論されながら、事業活動を行っております。また、ファブレス製造業者として事業を継続していく上で、BCP策定が重要な事項の一つと考えており、BCPコミッティーを設置し、策定に取り組んでおります。具体的なリスクの評価と選定につきましては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

(4) 指標及び目標

当社は、「(2) 戦略 ① 人材育成方針 ② 社内環境整備方針」に記載の各取組みを推進することにより職場環境を改善し、離職率の低下を目指してまいります。具体的な指標としましては、2026年度までに年次有給休暇取得率を90%、育児休暇からの職場復帰率を100%とし、離職率5%以下を達成することを目標としております。

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。これらのリスクのうち、既に顕在化しているあるいは顕在化の可能性が高いものについては、リスク項目の右側に「※」を付しております。

文中の記載のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 外部経営環境

① 為替の変動 ※

当事業年度における当社(提出会社)の売上高8,067,311千円のうち、6,819,283千円と約85%を占める海外への売上高は主に米国ドル建であり、加えて、生産委託先からの仕入高についても米国ドル建であるため、為替相場の変動は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。具体的には、売上高及び仕入高については、それぞれ販売及び仕入れをした日のレートで円換算されるため、同レートに応じて円換算後の売上高と売上総利益が増減いたします。すなわち、円高となった場合は売上高と売上総利益が減少いたします(円安の場合は増加)。

なお、現地の販売代理店として、イタリアに本社を置くMogar Music S.r.l.、ドイツに本社を置くSound- Service Musikanlagen-Vertriebsgesellschaft mbHが連結子会社となっていることから、ユーロの変動についても当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、棚卸資産の評価基準として総平均法を採用しているため、円高傾向が継続した場合、売上原価は過去の円安時に円換算された仕入価格の影響を受けることから、売上原価率が上昇する傾向にあります(円安傾向が継続した場合は下落)。

更に、当社の外貨建資産と外貨建負債のほとんどが米国ドル建であるため、為替相場の変動に応じて為替差損益を計上する可能性があります。

当社では、円高のリスクを取込んだうえで予算を作成すること、米国ドル建資産と米国ドル建負債のバランスを保つこと、及び一部米国ドル建て売掛金に対して為替予約を行うことにより、当社グループとして上記リスクに対応しております。

② 各国の経済状況及び市場の動向 ※

当社グループの製品は世界各国で販売されているため、各国の経済状況や競合他社との価格競争を含む市場の動向に大きな変化がみられた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

特に、当社グループの顧客には比較的若いユーザーが多いため、主に先進国で見られる少子化は将来の顧客数に影響を与える可能性があります。

また、趣味の多様化により当社グループの製品カテゴリーの対象顧客が減少する可能性があります。

更には、ミュージシャンやクリエイター等がターゲットユーザーである製品が多いため、限られたユーザーの動向が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、新しい製品カテゴリーを継続して開拓していくことを戦略目標の一つとすることにより、上記リスクに対応しております。

③ 競合

スマートフォンが携帯音楽プレーヤー、カメラや携帯電話の市場を取込んだように、技術革新や新しいコンセプトの製品の誕生により、思いもよらない製品が将来当社製品の競合となる可能性があります。

また、資金力や技術力がある企業が、新たに当社グループの製品が属するカテゴリーに参入することにより、競争が激化する可能性があります。

当社グループでは、商品開発5か条に基づき他社製品にはないユニークでオリジナリティのある製品を継続して開発することにより、上記リスクに対応しております。

 

④ 法的規制 ※

当社グループは日本国内において電波法、会社法、法人税法、独占禁止法、個人情報保護法、製造物責任法、景品表示法など様々な法的規制を受けております。これらの法改正や新たな法的規制が設けられる可能性があり、その場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループでは製品を世界各国の販売代理店を通じて販売しているため、各国の現地の法的規制を遵守するよう努めております。しかしながら、現地の法的規制が改正又は新たに設定された場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、関税について、米国政府は中国からの輸入品の一部に対して追加の関税を賦課する政策をとっております。現在、当社が中国の生産委託先で製造する製品のうち、第一次トランプ政権下で追加関税の対象となった主要製品のマルチエフェクター等は、既に中国外へ生産移管を完了しております。しかしながら、第二次トランプ政権により、中国からの全輸入品に20%の追加関税が適用されることとなりました。これに対応するため、当社は2025年販売開始の新商品を全て中国外で生産する方針を事前に決定しており、新たに追加関税が課せられる主力商品も、2025年12月期第3四半期中に生産拠点を移管する予定であります。更に、1月中に相当数の在庫を米国へ移動させることで影響を緩和しております。これらの施策により、連結営業利益への影響を最小限にとどめる見通しとなっておりますが、関税対象が更に拡大した場合には、米国市場においてコスト競争力が低下し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、現地販売代理店又は会計・法律事務所から、法改正や新たなる規制の導入についての最新の情報を継続的に入手し、リスクの高い項目については事前に対応策を検討すること等により、上記リスクに対応しております。

特に税務については、海外の税法に関する知識不足や見解の相違が原因で、当社又は子会社の税務申告が否認され追徴課税されること等により巨額の損失が発生する可能性があるため、移転価格税制やタックスヘイブン税制等税務リスクが高い分野について専門のコンサルタントから助言を受け、事前にリスクを低減するよう努めております。

⑤ 原材料の調達

当社の製品は、機種により数十から数千個から成る部材で構成されております。ある機種の部材が一つでも調達ができなくなった場合には、当該機種の製品が生産できなくなることから、全ての部材について十分な在庫の確保に努めております。何らかの理由により特定の部材の購入が困難となった場合、必要な数の製品が生産できず販売機会損失が発生することから、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、重要な部材については十分な量の在庫を保有することに加え、複数の調達ルートや代替となる部材を確保すること等により、上記リスクに対応しております。

⑥ 戦争、テロ、感染症又は自然災害等 ※

当社グループは、開発拠点を日本に、生産拠点を中国及び東南アジアに、販売拠点を日本及び海外に置いております。これらの拠点において、地震、水害等の自然災害、新型コロナウイルス・新型インフルエンザ等の感染症や疫病の発生、戦争・テロ又は第三者による当社グループに対する非難・妨害などが発生するリスクがあります。

当社グループでは、一定規模の災害等を想定したリスク対応策を講じておりますが、こうしたリスク等により、短期間で復旧不可能な莫大な損害を被り、部品・資材の調達、生産活動、製品の販売及びサービス活動に遅延や中断が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 新製品開発及び製造

① 製造物責任

当社グループは製品の開発、製造及び販売に当たり、適切な品質管理の実施に努めておりますが、予期せぬ欠陥が生じることによりリコールや訴訟が発生する可能性、また、その後のレピュテーションリスクやブランド力の毀損のリスクが考えられます。

更に、製造物責任賠償保険に加入しているものの、保険で賠償額が十分にカバーされなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、品質管理部門において品質管理を一元化するとともに、週次で品質管理ミーティングを開催し問題が深刻化することを未然に防止することにより、上記リスクに対応しております。

② 新製品開発 ※

当社グループは世界初のユニークな製品を開発することを目指しておりますが、期待どおりの成果が得られず製品化を断念した場合、あるいは開発の遅延により予想外の追加コストが発生した場合や販売開始が遅れた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、週次で開発会議を開催し進捗をコントロールするとともに、複数の新製品開発を同時並行で行うことでリスクを分散することにより、上記リスクに対応しております。

③ 生産コストの上昇 ※

当社グループの生産は、中国及び東南アジアにあるEMS企業へ委託しているため、今後EMS企業の所在地の人件費や物流費用の上昇等の理由により生産コストが上昇する可能性があります。

当社グループでは、必要に応じて製品出荷価格の値上げを行うほか、特定の国に偏重しないようEMS企業を選定することにより、上記リスクに対応してまいります。

 

(3) 知的財産権 ※

当社グループでは、製品の開発にあたり知的財産権を使用することから、知的財産侵害の指摘を受け他社との間で紛争や訴訟が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、新製品開発に当たり他社の知的財産権の調査を行い、特に新製品で使用する技術が他社の特許権を侵害しないか、新製品の名称が他社の商標権を侵害していないか、に留意して調査することにより、問題の発生の防止に努めております。

また、当社グループが保有する商標権や特許権等の知的財産が侵害されることにより市場において当社ブランドとの混同や模倣製品が流通すること等によって、当社のブランド価値に毀損が生じることにより、中長期的に当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、知的財産の侵害を発見した場合には決して容認せず、毅然とした態度で法的措置等を含めた対応をとることにより、上記リスクに対応してまいります。

 

(4) 海外の販売代理店への依存

当社グループの海外売上高比率は82.7%(2024年12月期)と非常に高く、その全ては海外の販売代理店経由の売上となっております。販売代理店が子会社である北米、南欧及び中欧を除き、各国での当社製品のプロモーションや営業活動は、原則として当該国担当の販売代理店が独自で行うため、各販売代理店の販売戦略等は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、主要な販売代理店との契約終了や関係の悪化が、小売業者や顧客の喪失、競合他社へのノウハウの流出、当社グループの営業力の減退をもたらし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

更に、販売代理店に対するモニタリングが不十分であった場合、当社グループの評判又は信用が毀損し、又は小売業者や顧客との関係を悪化させ、その結果、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、主要な代理店については定期的にミーティングを行うとともに、新製品について各主要代理店の営業担当に対しトレーニングを行うことでコミュニケーションの円滑化を図ることにより、上記リスクに対応しております。

 

 

(5) 人材の確保と育成

当社グループの製品は、競合商品の出現や技術革新により販売台数が減少する傾向にあることから、持続的な成長のためには継続的に新製品を開発し、発売していくことが不可欠となります。製品開発に当たってはエンジニアの数と質が制約条件となるため、優秀なエンジニアの確保と継続的な人材の育成に努めてまいります。

しかしながら、我が国では若年層及び生産年齢人口が減少の一途を辿っていることもあり、優秀な人材の確保や育成が予定どおり進捗しない場合や優秀な人材の流出が続いた場合、競争力の低下や事業計画の予定どおりの遂行ができなくなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、エンジニアについては新卒採用の間口を広げるとともに、学生との接点を増やすことにより毎年必要な新卒を継続的に採用し、大学院派遣やジョブローテーションを実施し、スキルアップを図ることにより人材を育成するとともに、必要に応じて中途採用を行うことにより、優秀な人材の確保に努めております。

 

(6) システムトラブルと情報漏洩

当社グループは、生産管理、部品や製品の発注、在庫管理、販売管理に基幹システム及び情報システムを利用しております。これらのシステムが、不正アクセスやシステムの不具合、自然災害等により、アクセスできなくなる等の障害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、業務を通じて取引先の機密情報やユーザーの個人情報等を保有しており、これらの情報を保護するために個人情報保護等の規程の整備を含めた情報セキュリティ体制を構築、運用しております。

しかしながら、コンピューターウイルスの感染やパソコンの盗難等の不測の事態により機密情報が漏洩した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、システムのバックアップやファイアウォールの設定等不正アクセスを防止するための措置を講ずるとともに、定期的にセキュリティの見直しを行うこと等により、上記リスクに対応しております。

 

(7) レピュテーションリスク

当社グループの製品は主として個人向けであり、スマートフォン、タブレット及びパーソナルコンピューターとの連携を前提とした製品も多いため、ネットリテラシーの高いユーザーが多く、ユーザーからの感想や要望がソーシャルメディアやブログ等に多くあがっております。事実の有無にかかわらず、インターネット上で当社若しくは当社製品への誹謗・中傷が広がった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、ソーシャルメディア運用管理規程等を定め、いわゆる“炎上”が起こらないように注意することにより、上記リスクに対応しております。

 

(8) 売掛金の回収リスク

当社グループの主要取引先に対しては、主として売上の1か月から2か月分の与信を設定しております。取引先には、有力な卸、小売店又は販売代理店が多いため売掛金残高も多額となるケースがあり、倒産等により売掛金の回収が不可能となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、主要取引先に対しては定期的に信用調査を行うなど慎重に与信管理を行うことに加え、一部販売先の売上債権に対して金融機関の保証ファクタリングを利用することにより、上記リスクに対応しております。

 

(9)重要な訴訟

当社グループの製品は世界中で利用されているため、様々な理由で訴訟の提起を受ける可能性があり、その場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、コンプライアンス規程及びコンプライアンス・マニュアルを制定し、法令及び契約の遵守に努めることにより、上記リスクに対応しております。

 

(10)業績の季節変動 ※

当社グループの主たる市場である欧米においては年末商戦における需要が強いことから、当社グループの売上及び利益は上期に比べて下期に増加する傾向があります。このため、為替の変動や生産コストの上昇等何らかの理由により下期の売上及び利益が予想を下回る場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、インフレの拡大が落ち着きつつあり、利下げの継続を背景に底堅い成長を維持しておりますが、第二次トランプ政権の追加関税を含む政策変更の可能性から、先行きは不透明なまま推移しております。米国では、個人消費は底堅いものの、高金利や物価高により個人消費に鈍化の兆しが見え、欧州では、インフレの鎮静化に伴い消費は緩やかに持ち直しているものの、回復のペースは緩やかにとどまっています。中国では、不動産市場の長期的な停滞から雇用環境が悪化し、内需の鈍化により景気回復に足踏みが続いています。我が国経済は、円安により企業の景況感が堅調であり、雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費は緩やかに持ち直す見通しとなっております。当社グループが属する楽器関連機器業界においては、コロナ特需の2021年をピークに下方傾向にあり、旅行やレジャー等の体験消費が旺盛なことや中古市場が拡大傾向にあること、世界的なインフレに伴う特に若年層の可処分所得の減少や金利差を背景とする急激な為替レートの変動により市況感が低迷していることから需要が減少しており、先行きの不透明な状況が続いております。
 このような状況の中、当社は、「世界中の人々を“表現者”(クリエイター)にする」という長期目標に向けて、「“進化”と“挑戦”により、より多くの自己表現を支える」という中期経営計画のビジョンのもと、様々な取り組みを実施しました。

 

「取り組み1」収益率の向上
 2020年秋以降に発生し、現在は沈静化しつつある世界的な半導体不足に伴う部品コストの上昇に対し、積極的な価格正常化交渉を実施しました。また、部品の集約化や内部構造の簡素化によるコスト削減を徹底した結果、2024年に市場投入した製品の利益率については、約3ポイント向上しました。
 また、利益率が比較的高い国内市場の活性化を図るため、主要取引先との連携を強化するとともに、積極的な仕入れを実施した結果、当社単体では、国内売上が37%増加し、エリア別売上ランキングで日本が5位から3位へと急上昇しました。

 

「取り組み2」商品力の向上
 プロダクト・アウト思考とマーケット・イン思考を融合させた商品企画を推進し、ハンディレコーダーでありながらマイクを搭載せず、多様なユーザーニーズに対応するH1 XLRや、デジタルミキサーの機能を妥協なく搭載しつつ、世界最小サイズを実現し、クリエイターにアディショナルなスペースを提供するL6を市場投入しました。これにより、新たな市場の開拓を実現しました。
 マルチエフェクターでは、2012年から販売していたMS(MultiStomp)シリーズをMS+シリーズとして刷新しました。ユーザーの要望が多かった「足元で全てをコントロールできる」機能を提供するとともに、アナログ・デジタル両領域での音質を飛躍的に進化させました。更に初代ラインナップにはなかったドライブ専用機、アンプシミュレーター専用機、ルーパー専用機にも挑戦し、シリーズ全体を再ブランディングしました。その結果、通年販売していない機種が多いにもかかわらず、シリーズ全体の出荷台数を倍以上に伸ばすことに成功しました。

 

 「取り組み3」開発体制の強化
 プロジェクトチームへの臨機応変なメンバーアサインに加え、新たなプロジェクトチームを発足させることで、同時開発できる商品数を拡大する組織体制を構築しました。更にハードウェアのプラットフォームを共用できるMS+シリーズなど、効率的な開発手法を取り入れた結果、過去3年間の年間新機種投入数の平均5.7機種に対し、2024年は11機種を投入することができました。
 2025年には、技術を極めるプロフェッショナル職とプロジェクトを率いるマネジメント職を選択できる複線型人事制度の導入を予定しております。更に若手~中堅社員を中心に推進するプロジェクトチームを多数結成し、プロフェッショナル社員が横断的に技術品質を担保することで、更にプロジェクトチームの拡大が見込まれます。これにより、組織の開発力を強化するとともに、社員のモチベーション向上も期待できます。

 

 

「取り組み4」成長投資
  交渉を進めていたカリフォルニア創業のスタートアップ企業Instamic, Incの完全子会社化は、2025年に完了を予定しています。同社は、超小型・防水仕様の32bitフロートレコーダーを開発・販売しており、MEMSマイクを複数使用した小型かつ高音質を実現する特許を保有しております。当社と共通の理念を持ちながらも、当社にはない独自の強みを有しており、今回の買収により更なる技術革新と市場拡大が期待できます。

 

業績につきましては、当連結会計年度に発売した11機種の新製品の貢献や、年末商戦が特に日本国内で好調だったことに加え、為替レートが円安に推移したこともあり、売上高は前期比で増加いたしました。将来の財務健全性と収益性向上のために一部商品の評価額の見直しを行った影響並びに、高価格帯製品の苦戦及び北米と南欧地域の不振により外貨ベースでの売上総利益が減少しました。販売費及び一般管理費は経費削減に努め、前期比98,376千円減となったものの、営業利益は前期比で減少いたしました。

以上の結果、当社グループの当連結会計年度の経営成績は、売上高は18,072,018千円(前期比1.0%増)、営業利益は531,518千円(前期比7.3%減)、経常利益は554,189千円(前期比14.7%減)、及び親会社株主に帰属する当期純利益は40,876千円(前期比54.0%減)となりました。

当社グループは音楽用電子機器事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。製品カテゴリー別の説明は以下のとおりであります。

 

(ハンディオーディオレコーダー)

ハンディオーディオレコーダーは、新製品である主力機種H-essentialシリーズが、国内では予想以上の好調な販売を見せた一方、海外では旧製品の在庫処理に時間がかかり、市場への浸透が遅れたことにより、売上高は3,870,899千円(前期比5.6%減)となりました。

(デジタルミキサー/マルチトラックレコーダー)

デジタルミキサー/マルチトラックレコーダーは、L6及びR4の新製品効果、ポッドキャスト需要が旺盛な北米地域におけるPシリーズの好調により、売上高は2,079,984千円(前期比14.8%増)となりました。

(マルチエフェクター)

マルチエフェクターは、MultiStompシリーズを刷新・拡大したMS+シリーズの売れ行きが好調のため、売上高は1,724,072千円(前期比6.4%増)となりました。

(プロフェッショナルフィールドレコーダー)

プロフェッショナルフィールドレコーダーは、半導体不足の解消に伴う前期の一時的な需要増を受け、当期は在庫調整が入りました。更に当期は新製品をリリースしなかったため、売上高は1,440,993千円(前期比24.5%減)となりました。

(ハンディビデオレコーダー)

ハンディビデオレコーダーは、北米では非常に好調だったものの、前期に南欧で政府機関への大量納入という一時的な需要増があったことの反動減により、売上高は594,727千円(前期比0.1%減)となりました。

(マイクロフォン)

マイクロフォンは、北米でポッドキャスト用のマイクパックの売上が増加したため、売上高は423,768千円(前期比16.4%増)となりました。

(ボーカルプロセッサー)

ボーカルプロセッサーは、中欧で売上が増加したこと及び円安により、売上高は281,168千円(前期比8.8%増)となりました。

(オーディオインターフェース)

オーディオインターフェースは、AMSシリーズの国内向け売上増により、売上高は171,259千円(前期比10.6%増)となりました。

 

(Mogar取扱いブランド)

Mogar取扱いブランドは、Zildjianブランドの取扱い終了により現地通貨ベースでは対前期比減となったものの、円安により売上高は1,217,085千円(前期比6.3%増)となりました。

(フックアップ取扱いブランド)

フックアップ取扱いブランドは、主要ブランドでの新製品の発売及びセールの実施により、売上高は1,862,563千円(前期比14.6%増)となりました。

(Sound Service取扱いブランド)

Sound Service取扱いブランドは、Blackstarブランドの取扱い終了及びNordブランドで前期に新製品の発売があったことによる反動減があったものの、円安により売上高は3,966,478千円(前期比2.8%増)となりました。

 

また、財政状態については、当連結会計年度末の資産合計は20,087,876千円となり、前連結会計年度末と比べ827,604千円増加しました。これは主に、流動資産が1,243,253千円増加したことによるものであります。

(流動資産)

当連結会計年度末の流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,243,253千円増加し、14,965,019千円となりました。これは主に、商品及び製品が680,682千円増加したことによるものであります。

(固定資産)

当連結会計年度末の固定資産は、前連結会計年度末に比べ415,649千円減少し、5,122,857千円となりました。これは主に、リース資産が60,113千円、のれんが249,172千円減少したことによるものであります。

(流動負債)

当連結会計年度末の流動負債は、前連結会計年度末に比べ616,957千円増加し、7,760,687千円となりました。これは主に、買掛金が173,773千円、短期借入金が719,032千円増加したことによるものであります。

(固定負債)

当連結会計年度末の固定負債は、前連結会計年度末に比べ487,695千円減少し、3,705,333千円となりました。これは主に、長期借入金が457,655千円減少したことによるものであります。

(純資産)

当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べて698,342千円増加し、8,621,856千円となりました。これは主に、為替換算調整勘定が561,947千円、非支配株主持分が194,826千円増加したことによるものであります。

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ461,781千円増加し、3,287,950千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により増加した資金は584,571千円(前連結会計年度は817,101千円の増加)となりました。これは主に、棚卸資産の増加額が135,697千円及び未払金の減少額399,796千円があった一方、税金等調整前当期純利益を554,188千円計上したこと、減価償却費336,801千円及びのれんの償却費を469,688千円計上したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により減少した資金は241,611千円(前連結会計年度は2,443,671千円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出203,181千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により増加した資金は15,111千円(前連結会計年度は2,231,619千円の増加)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出451,176千円及び配当金の支払額129,838千円があった一方、短期借入金の純増減額670,330千円があったことによるものであります。

 

 

③ 生産、受注及び販売の実績

イ. 生産実績

当社グループは、外部に製造を委託しており生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

ロ. 製品仕入実績

当連結会計年度における製品カテゴリー別の仕入実績は次のとおりであります。

製品カテゴリーの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額 (千円)

前年同期比 (%)

ハンディオーディオレコーダー

2,302,671

138.1

デジタルミキサー/マルチトラックレコーダー

975,396

97.1

マルチエフェクター

931,291

139.8

プロフェッショナルフィールドレコーダー

362,343

33.0

マイクロフォン

227,101

273.8

ボーカルプロセッサー

102,958

104.2

ハンディビデオレコーダー

93,431

114.4

オーディオインターフェース

31,694

35.3

Mogar取扱いブランド

786,196

84.3

フックアップ取扱いブランド

1,389,322

120.3

Sound Service取扱いブランド

3,344,288

122.1

その他

770,597

80.5

連結消去額

△98,387

合計

11,218,905

107.5

 

(注) 1.金額は、仕入価格によっております。

2.当社グループの製品は、当社ブランドの製品については全て生産委託しております。

 

ハ. 受注実績

当社グループは、需要予測による見込みで販売数量を決定しており、受注生産の形態を採っておりません。

 

二. 販売実績

当連結会計年度における製品カテゴリー別の販売実績は次のとおりであります。

製品カテゴリーの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(千円)

前年同期比 (%)

ハンディオーディオレコーダー

3,870,899

94.4

デジタルミキサー/マルチトラックレコーダー

2,079,984

114.8

マルチエフェクター

1,724,072

106.4

プロフェッショナルフィールドレコーダー

1,440,993

75.5

ハンディビデオレコーダー

594,727

99.9

マイクロフォン

423,768

116.4

ボーカルプロセッサー

281,168

108.8

オーディオインターフェース

171,259

110.6

Mogar取扱いブランド

1,217,085

106.3

フックアップ取扱いブランド

1,862,563

114.6

Sound Service取扱いブランド

3,966,478

102.8

その他

439,015

96.0

合計

18,072,018

101.0

 

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Amazon.com, Inc. (注)

3,534,770

19.8

3,308,222

18.3

Thomann GmbH (注)

2,302,674

12.9

2,778,556

15.4

 

(注) 当該顧客と同一の企業集団に属する顧客への販売実績を集約して記載しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討結果は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすものと考えております。

イ. 棚卸資産

当社グループは、棚卸資産の保有期間及び将来の需要予測に基づき検討した結果、正味売却価額が帳簿価額を下回るものについては商品評価損を計上しておりますが、想定よりも実際の市況が悪化した場合は追加の評価減が必要となる可能性があります。

 

ロ.貸倒引当金

当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、回収不能見込額を貸倒引当金として計上しておりますが、取引先の財務状況が悪化しその支払い能力が低下した場合又は債権が回収不能となった場合、追加の引当又は損失の計上が必要となる可能性があります。

 

ハ. 繰延税金資産

繰延税金資産については、将来の利益計画に基づく課税所得の十分性を慎重に検討し、回収可能性を判断した上で計上しております。繰延税金資産の回収可能性は、将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積り額が減少した場合は、繰延税金資産が減額され、税金費用が計上される可能性があります。

 

ニ.のれん

当社グループは、のれんに関して効果の発現する期間を見積り、その期間で定額法により償却しておりますが、その資産性の評価について検討した結果、当初想定したキャッシュ・フローが見込めなくなった場合に、評価の切り下げを行う可能性があります。

 

② 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度における売上高は、前期比1.0%増18,072,018千円となりました。取扱いブランドの減少や前年需要の反動減を主要因とする欧米市場不振により外貨建て売上は減少したものの、日本市場の躍進及び円安により、前期比で微増となりました。

(売上総利益)

売上総利益は、前期比2.0%減6,929,142千円となり、売上総利益率は前期比1.2%減少の38.3%となりました。これは主に、売上総利益率が相対的に高いプロフェッショナルフィールドレコーダーの苦戦と欧米市場の不振や将来の財務健全性と収益性向上のために一部商品の評価額を見直したことによるものであります。

(営業利益)

販売費及び一般管理費は、前期比1.5%減6,397,624千円となりました。これは主に、経費削減に努めたためであります。

以上の結果、営業利益は531,518千円(前期比7.3%減)となりました。

 

(経常利益)

営業外収益は、前期比41.6%減169,468千円となりました。これは主に、非連結子会社であるZOOM HK LTDからの受取配当金を前期比191,594千円減50,384千円、保険解約に伴う保険解約返戻金51,050千円をそれぞれ計上したことによるものであります。また、営業外費用は、前期比31.6%減146,797千円となりました。これは主に、支払利息を92,797千円、為替差損を53,483千円計上したこと、及び前連結会計年度にSound-Service Musikanlagen-Vertriebsgesellschaft mbHの株式を取得するための資金調達に伴うシンジケートローン手数料62,500千円を計上したことによるものであります(当連結会計年度は500千円を計上)。その結果、経常利益は554,189千円(前期比14.7%減)となりました。

(税金等調整前当期純利益)

税金等調整前当期純利益は、経常利益の減少により554,188千円(前期比13.1%減)となりました。

(親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、当社が株式の51%を保有するMogar Music S.r.l.、Sound-Service Musikanlagen-Vertriebsgesellschaft mbH及びその100%子会社であるSound Service U.K. Limitedの当期純利益等の49%を、非支配株主に帰属する当期純利益に129,282千円計上したため、前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益88,946千円から大きく減少し40,876千円(前期比54.0%減)となりました。

(経営上の目標達成状況)

  中期経営計画「第4次中期経営計画2024-2026」の初年度にあたる当連結会計年度は、計画に沿った下記のアクションを実施いたしました。

 

「収益率向上」

2020年秋以降の世界的な半導体不足による部品コストの上昇に対し、積極的に価格正常化交渉を実施いたしました。更に、部品の集約化や内部構造の簡素化によるコスト削減を徹底し、その結果、2024年に市場投入した製品の利益率が約3ポイント向上しております。

 

「生産体制変革」

2025年販売開始の新商品は全て中国外で生産する予定となっております。第二次トランプ政権で追加関税が課せられる中国製主力商品も、第3四半期中に生産拠点を移管する予定となっております。また、1月中に相当数の在庫を米国へ移動させることで影響を緩和し、追加関税の連結営業利益への影響を最小限に抑えてまいります。

 

「成長投資」

カリフォルニア創業のスタートアップ企業Instamic, Incを完全子会社化する予定となっております。同社は、超小型・防水仕様の32bitフロートレコーダーを開発・販売し、MEMSマイクを複数使用することで小型かつ高音質を実現する特許を保有しております。当社にはない独自の強みを持つ企業であり、買収によりさらなる技術革新と市場拡大を目指してまいります。

 

「開発体制強化」

2024年の取り組みとして、プロジェクトチームの柔軟なメンバーアサインに加え、新たなチームを発足し、同時開発できる商品数を拡大しました。更に、ハードウェアのプラットフォームを共用できるMS+シリーズなど、効率的な開発手法を取り入れ、過去3年間の年間新機種投入数平均5.7機種に対し、2024年は11機種を投入いたしました。

2025年の取り組み予定として、プロフェッショナル職とマネジメント職を選択できる複線型人事制度を導入します。若手~中堅社員を中心に推進するプロジェクトチームを多数結成し、プロフェッショナル社員が横断的に技術品質を担保することで、チーム数を更に拡大させて、2025年も多くの新機種を投入する予定です。組織の開発力を強化しながら、社員のモチベーション向上も図ってまいります。

 

「人材育成」

全社員を対象に半年にわたるデザイン思考外部研修プログラムを実施し、課題解決力を強化しました。

 

 

「株主優待」

収益改善を優先し2024年は実施せず、2025年の実施を検討しております。

 

 なお、中期経営計画の最終年度の2026年度の連結売上高目標を220億円、連結営業利益目標を22億円(営業利益率10%)と定めております。また、同中期経営計画より資本効率性に係る指標についても目標値を定めており、2026年度ではROE及びROICについてそれぞれ10%以上達成することを目標としております。それぞれの目標の達成に向けて、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載した課題に取り組むことにより、成長の実現を目指してまいります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報

当社グループの主な資金需要は、製品の仕入れ、人件費や外注先への支払等の営業費用及び金型等の設備投資であります。これらの資金需要は自己資金を充当し、不足が生じる場合は金融機関からの借入で調達を行っております。なお、取引金融機関との関係は良好であり、当座貸越枠を確保していることから、充分な資金流動性を確保していると考えております。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、様々なリスクが当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると考えております。中でも為替の変動リスクについては、当社グループの売上高は米国ドル建て又はユーロ建てが多いことから、当社グループの業績へ与える影響は特に大きいと考えております。また、第二次トランプ政権による今後の経済政策や政治の動向は不透明な部分が多く、その内容によっては当社グループの業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 

契約会社名

相手先の名称

契約締結日

契約期間

契約内容

株式会社ズーム
 (当社)

香港東英電子工業有限公司(Hong Kong Tohei E.M.C. Co., Ltd.)

2018年7月1日

2018年7月1日より
2019年6月30日まで

以後1年ごとの自動延長

当社が生産を委託
した製品の売買に
関する基本契約

 

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループでは、研究開発活動を当社に集中しており、当連結会計年度末における当社の開発人員は51名となっております。楽器演奏をはじめ、クリエイター経験の長いエンジニアが、臨場感ある音であるかどうか、心に残る映像であるかどうか、演奏の現場での使い勝手が良いかどうか等を、自身の経験とプロフェッショナルクリエーターの現場、更には販売代理店やエンドユーザーからのフィードバックを元に開発をすることにより、“ズーム”らしくかつ市場のニーズに合致した製品をいち早く製品化できるように努めております。当社が掲げる「世界中の人々を表現者にする」というパーパスと中期経営計画のビジョン「“進化”と“挑戦”により、より多くの自己表現を支える」を体現するために、(1)プロには挑戦への、アマチュアには継続へのモチベーションを提供する(2)機能、性能、価格、外観、操作性等に何らかの「世界初」を取り入れる(3)ユーザーの視点に立ち、自分でも使いたいと思える商品にする(4)デザインは機能と結びついていなければならない(5)課題解決型であり、かつ機会提供型でもある商品で新しい市場を創出する、という「商品開発5カ条」をバリューと定め、当方針をもとに研究開発活動を行った結果、当連結会計年度においては、32bitフロートフォーマットに対応した新世代のハンディオーディオレコーダーessentialシリーズ5機種(H1e、H2e、H4e、H6e及びH1 XLR)、MultiStompシリーズのモデルチェンジ5機種(MS-200D+、MS-70CDR+、MS-60B+、MS-80IR+、MS-90LP+)、32bitフロート録音技術対応の新世代のデジタルミキサーL6を開発・販売いたしました。

これらの活動の結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は898,225千円となりました。

なお、当社グループは音楽用電子機器事業の単一セグメントであるため、セグメント情報の記載を省略しております。

 

 「技術とノウハウの転用」

当社グループは、下記の図に示すとおり過去の技術とノウハウの蓄積を利用して、新しい製品カテゴリーに参入してまいりました。今後も蓄積してきた技術とノウハウを活用し、新しい製品カテゴリーを開拓していく所存であります。

 

<当社グループの製品における技術の転用(例)>