当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
当社グループは、グループ理念「創業者精神に則り、自然と環境を守り、確かな価値の創造を通じて、豊かな社会の実現に貢献」のもと、企業の持続的発展と企業価値の向上を図り、株主、取引先、従業員、地域社会等からの信頼と期待に応えるとともに、法令その他の社会的規範を遵守し、公正で健全な企業活動を行い、社会の発展に貢献することを経営の基本方針としております。また、先行きが不透明で予測が困難な状況下、将来のありたい姿を「環境、社会、地域に配慮した持続可能な事業戦略の実践」と明確化した「長期ビジョン2050」を構築し、長期的な成長に向けた取り組みを進めることとしております。
政府の掲げる温室効果ガス削減目標を踏まえた非財務に関する取り組みについては「サステナビリティビジョン2030」を策定し、持続可能な社会の実現に貢献していくこととしております。ESGに配慮し、社会課題の解決と企業価値の向上を両立すべくグループ一丸となって取り組んでまいります。
(2) 経営環境
当社グループを取り巻く経営環境は、製品需要は全般的に改善傾向にあるものの、資源価格の高騰や為替レートの影響による原燃料価格の変動などによる事業活動への影響が懸念されます。また、気候変動への対応をはじめとするサステナビリティの取り組みについては、新たなリスク及び収益機会について適時・適切に対処していくことで、当社グループの持続的成長につなげていく必要があります。なお、事業別の経営環境については以下のとおりです。
アグリ事業は、農業従事者の高齢化と減少に歯止めがかからない中、令和6年改正の「食料・農業・農村基本法」による「食料安全保障」と「環境と調和のとれた食料システムの確立」の基本理念のもと、2050年に向けた「みどりの食料システム戦略」に基づく化成肥料の使用量削減や国内未利用資源の活用などがさらに推し進められ、アグリ事業を取り巻く環境は重要な転換期を迎えています。
化学品事業の水処理薬剤は、国内水処理薬剤市場の底堅さはあるものの、国際的な需給バランスの変動等に伴う原料高や燃料価格の高騰に伴う物流運賃の上昇などにより、厳しい状況が続くものと予想されます。その一方で、気候変動などによる原水の水質悪化、環境負荷低減の観点から、当社が開発した超高塩基度ポリ塩化アルミニウムの市場への浸透が進んできております。
化学品事業の機能性材料は、自動車産業においてEV化への流れはやや減速したものの、依然EV化のトレンドは継続しており、またスマートフォンなど移動体通信の技術革新も予想され、先行きは依然不透明であります。
建材事業は、石こうボード出荷量と関連性の高い新設住宅着工戸数の漸減が予想されているほか、燃料価格の高騰などによる製造コスト上昇の長期化が懸念されます。
石油事業は、自動車の電動化、気候変動への対応強化に伴う化石燃料からの燃料転換等により、需要の減退が予想されています。
不動産事業は、ショッピングセンターが堅調に推移しているものの、電子商取引が台頭する中、実店舗販売を取り巻く環境は厳しさを増しております。
運輸事業は、景気の先行きが不透明な中、荷動きの動向にも不確実性があります。
(3) 経営戦略等
当社グループにおいては令和6年を初年度とする5カ年の「中期経営計画2028」の1年目が終了いたしました。「中期経営計画2028」では、①成長事業への積極的投資と新事業の創出、②既存事業の深化による収益力向上、③サステナビリテイ・トランスフォーメーションの実践、④GRCの推進、を基本方針とし、最終年度の経営目標を、連結売上高420億円、連結営業利益30億円、ROE6.0%以上としております。令和6年度は、肥料の販売価格は値下がりしたものの、販売数量が回復したことに加え、水処理薬剤の増販やスマートフォン向け高純度酸化タンタルの需要が大幅に回復したことなどにより、好調に推移しました。その結果、当社グループの業績は、連結売上高389億16百万円、連結営業利益26億68百万円、ROE6.4%となりました。令和7年度は、原料価格の上昇が見込まれますが、引き続き需要動向を的確に捉えた生産と適切な販売戦略により、収益を確保してまいります。
なお、令和6年12月2日開催の取締役会において、洛東化成工業株式会社の株式の56.3%を取得し、子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結しました。また、令和7年1月7日に同社の株式を取得しました。同社の株式取得は、当社グループの主要セグメントであるアグリ事業におけるバイオスティミュラントや化学品事業における環境に配慮した水処理薬剤の開発、さらに新たな研究開発において事業シナジーを発揮することが期待されており、長期ビジョンの達成に向けて強力な推進力の一つとなると考えております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
企業が持続的に成長するためには、事業の競争力を高めて収益を確保するとともに、社会や環境の問題に真摯に向き合い、課題解決に貢献することは、企業価値を本質的に高める上で必要な要素であります。「中期経営計画2028」では4つの基本方針を掲げ、財務・非財務の両面から企業価値の向上に取り組んでまいります。
① 成長事業への積極的投資と新事業の創出
成長事業に対しては、積極的な投資によって事業の早期拡大を実現していきます。メディカル材料、コラーゲン材料は、品質や機能の向上によりライフサイエンス分野への展開を推進します。アルミニウム化合物やナノ材料などの機能性材料は顧客ニーズや技術動向を踏まえ開発と拡販に取り組みます。完全人工栽培に成功した「バカマツタケ」は、引き続き事業化に向け課題解決に取り組んでまいります。また、新事業・新商品の創出に関しては、自社開発に加え、産官学連携、M&A、海外進出などについても積極的に検討してまいります。
② 既存事業の深化による収益力向上
アグリ事業は、国内需要のさらなる縮小が予想される中、生産の合理化、物流の効率化などの取り組みの徹底に加え、農業関連の周辺領域の開拓により事業の拡大に努めます。化学品事業の水処理薬剤は、環境配慮型の水処理薬剤の市場浸透が進んできており、引き続き拡販に努めるとともに、気候変動に伴う水質の変化に対応した薬剤の開発等により新たな収益機会の獲得を目指します。不動産事業は、事業拡大と地域社会への貢献の両立を目指し、自社開発エリアを中心としたコンパクトシティ化に取り組んでまいります。
③ サステナビリティ・トランスフォーメーションの実践
「サステナビリティビジョン2030」で定めた4つのマテリアリティ、重要課題への取り組みを推進します。
特に温室効果ガス削減を含む気候変動への対応、人的資本経営の推進、DXの推進など、当社グループの持続的な成長、発展に向けた取り組みにより企業価値の向上を図ります。
④ GRCの推進
進展するビジネスのグローバル化、ICTの急速な発達など、企業を取り巻く経営環境の変化がますます激しくなる中、対応すべきリスクや要求されるコンプライアンスも複雑化・多様化してきております。ガバナンス(G)、リスク管理(R)、コンプライアンス(C)を一体的に捉え、責任ある企業活動を推進します。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般
当社グループは、「創業者精神に則り自然と環境を守り、確かな価値の創造を通じて豊かな社会の実現に貢献する」をグループ理念とし、わが国がカーボンニュートラルを目指す2050年を目標年とする「長期ビジョン2050」を定めております。長期ビジョンでは、環境、社会、地域に配慮した持続可能な事業戦略の実践をありたい姿とし、それらをバックキャストした足元の課題に対して、5カ年の中期経営計画に落とし込み取り組んでおります。また、「サステナビリティビジョン2030」では、気候変動や人権・人的資本などへの対応をはじめとするマテリアリティ及び重要課題を特定し、その解決に向けた目標を設定の上、事業戦略に関連付けて推進しております。
①ガバナンス及び推進体制
サステナビリティを強力に推進するため、当社グループでは代表取締役社長を委員長とし、全役員からなるサステナビリティ委員会(開催頻度:原則4回/年)(※)を設置しております。サステナビリティ委員会のワーキング組織である「サステナビリティ推進会議」は、中期経営計画のモニタリング組織である「中期経営計画委員会」と連携し、サステナビリティに関する重要課題の推進及び進捗管理を随時行っております。また、「危機管理委員会」は、防災からBCPまで事業上のリスクを幅広く取り扱っており、気候変動への対応などサステナビリティに関連するリスクについても同委員会で対応しております。
一方、人的資本に関する取り組みは、サステナビリティのマテリアリティの一つとして選定し、人事労政部門を主たる検討組織として推進しております。これらの組織における部門横断的な検討の内容は、定期的に経営会議、サステナビリティ委員会に報告され、議論を深めております。いずれの課題についても、重要事項は取締役会において適切に審議の上、各業務執行部門にフィードバックされております。
(※令和6年12月1日 CSR委員会からサステナビリティ委員会へ名称変更)(推進体制図)
②戦略
「サステナビリティビジョン2030」では、以下のプロセスによりマテリアリティ及び重要課題を特定しました。特定された課題は、中期経営計画における各部門の推進項目に組み込まれることで、日々の事業活動の一つとして取り組んでおります。
③指標及び目標
サステナビリティに関する重要課題における指標及び目標は以下のとおりであります。
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マテリアリティ |
重要課題 |
ESG 区分 |
2030年に向けた目標並びに指標 |
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1. 持続可能な 地球環境への貢献 |
1 |
気候変動への対応 省エネルギー・省資源への取り組みや、環境に配慮された原材料及びエネルギーの調達を推進し、温室効果ガスや水の削減に貢献する。 |
E |
・温室効果ガス排出量(多木化学グループ) ⇒2013年度比38%以上削減(Scope1、2) ・PAC製品の付加価値当たり水使用量 ⇒2023年度比18%以上削減 |
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2 |
サーキュラーエコノミーの推進 従来の3Rに加え、持続可能な天然資源の使用、廃棄物の再資源化、代替材料の活用などを通じて、サーキュラーエコノミーへの推進に貢献する。 |
E |
・産業廃棄物の削減と再資源化率の向上 ⇒再資源化率:100% ・環境配慮型製品、原料、包装材料の新規採用及び購入の継続⇒年6件以上 ・再生資源原料の新規採用及び購入の継続⇒年1件以上 ・脱炭素由来原料の新規採用⇒累計5件以上 |
|
|
2. 製品・サービスを通じた環境と社会への貢献 |
3 |
新製品・新技術の研究開発 時代の変化を見据えた新たなコア技術の確立と、高付加価値素材の開発を推進する。 |
E,S |
・高付加価値新商品・新技術開発の継続⇒開発件数:年5件 ・知的財産権の取得、保護、活用の推進 ⇒特許出願等件数:50%増(2013~2021年:累計80件) |
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4 |
環境配慮型、社会課題解決型製品・サービスの提供 環境配慮型、社会課題解決型の製品・サービスの提供により、持続可能な社会に貢献する。 |
S |
・環境配慮型、社会課題解決型のアグリ関連製品上市 ⇒累計5件 ・水処理用PACの販売数量に占める環境配慮型製品の比率 ⇒50%以上 ・環境配慮、社会課題解決に関連する機能性材料開発素材の売上高比率⇒9.0%(2021年売上高実績比50%増) |
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3. 人的資本経営の推進 |
5 |
人権尊重と働きやすい職場づくり あらゆる人権を尊重するとともに、心身ともに健康で働きがいのある職場環境づくりに努める。 |
S |
・加古川市企業人権・同和教育協議会に正副会長として参画 ・全社員を対象としたハラスメントアンケートの継続的実施 ⇒年1回 ・年次有給休暇取得率⇒75%以上 ・育児支援、介護支援制度の利用促進 |
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6 |
人材育成とダイバーシティの推進 教育制度の充実等により従業員の成長を支援するとともに、属性や働き方の異なる多様な人材が活躍できる企業風土を醸成する。 |
S |
・各種研修、資格取得支援制度の更なる充実と通信教育 eラーニング受講率の向上⇒60%以上 ・ダイバーシティ研修ほか、女性活躍を推進するための研修の継続的実施⇒対象者への100%実施 ・全管理職中の女性管理職比率⇒15% ・全管理職中の中途採用者管理職比率⇒25% |
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7 |
業務効率化と生産性向上 DX及び生成AIによる自動化、業務見直しによる合理化などにより、ムリ、ムダ、ムラを排除し、生産性を向上させる。 |
S |
・ITを活用した業務改善件数⇒累計15件 ・TKグループ活動(小集団活動)の継続的実施⇒年1回 (全グループ100%実施及び完了) |
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4. ステークホルダーエンゲージメントの向上とGRCの推進 |
8 |
ステークホルダーエンゲージメントの向上 ステークホルダーと価値観を共有し、よりよい社会を目指して行動するグループであるために、ステークホルダーに積極的に働きかけ、相互理解と協働を深める。 |
S,G |
・IR個別面談依頼への対応率⇒100%の維持 ・一般投資家向けIR説明会の開催⇒年1回 ・サステナビリティレポートの定期発行の継続⇒年1回の発行と内容の充実 ・サプライチェーンマネジメントの強化 主要取引先へのサステナブル調達ガイドライン要請率 ⇒100% ・コミュニケーションプログラム(文化振興活動や地域清掃など)の継続的実施⇒年2回 ・災害時における支援活動の継続 |
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9 |
ガバナンス(G)の強化 コーポレートガバナンス・コードを踏まえ、意思決定の迅速化、業務執行状況の監督、内部統制システムの整備などの取り組みを強化する。 |
G |
・公正で透明性の高いガバナンス体制の維持 ⇒取締役会実効性評価の維持・向上 ・コーポレートガバナンス・コード ⇒各原則のフルコンプライ |
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10 |
リスクマネジメント(R)の強化 リスクを的確に把握し、その影響を最小化するための対策を講じる体制を強化するとともに、事業継続性の強靭化を図る。 |
G |
・重要リスクの特定 ・化学物質管理の強化 ・BCP教育実施⇒年1回 ・統合マネジメントシステムの効率的な運用 ⇒品質に関する重大クレーム 年0件 ⇒重大環境事故件数 年0件 ⇒重大労働災害件数 年0件 |
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11 |
コンプライアンス(C)体制の維持・強化 遵法意識の徹底と健全な企業風土の醸成に努め、公正で透明性の高い企業経営を確立する。 |
G |
・社員教育の実施 ・内部監査体制の強化 ・内部通報制度の浸透と公正な運営 |
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(2)人的資本
①戦略
a)人材育成方針
当社グループは、企業活動においてあらゆる人権及び多様な価値観を尊重し、人の成長が企業の成長の原動力であるという考えのもと、働き方の改革や人材の育成に努め、安全安心で働きがいのある職場と目標に果敢に挑戦する人材による活力ある企業風土を醸成します。
b)社内環境整備方針
1.環境への配慮や社会的な課題に対する取り組みを強化し、企業のサステナビリティと社会的責任を推進し、従業員が誇りを持って働ける環境を構築します。
2.あらゆるバックグラウンドや性別に関わらず、全ての従業員が平等な機会を享受し、個々の能力やポテンシャルを最大限に引き出せるよう、積極的にサポートします。また、女性の活躍を推進するため、職域の拡大を進めます。
3.従業員一人ひとりの強みや目標に焦点を当て、個別のキャリアパスを構築するためのジョブローテーションやカスタマイズされたサポートを提供し、職務において持続的な成長を促進します。
4.変化の激しいビジネス環境に適応するため、継続的なスキル開発を奨励し、従業員が最新の知識や技術を習得できるよう支援します。
5.部門や階層を越えた円滑なコミュニケーションを奨励し、従業員同士のフィードバック文化を構築することで、組織全体の連携と成長を促進します。
6.従業員エンゲージメント調査により、課題の可視化を行い、その対策を講じることで心身ともに健康で
働きがいのある職場環境づくりを行います。
②指標及び目標
上記の①戦略において記載した、人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標及び実績は、以下のとおりであります。
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指標 |
目標 |
実績 |
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2024年12月 |
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対象者への |
対象者への |
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全社員を対象としたハラスメント アンケートの継続的実施 |
年 |
実施済 |
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通信教育受講率
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通信教育受講率
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(注)連結子会社についてはいずれも人数規模の観点から記載を省略しています。
(3)気候変動への対応(TCFD提言に基づく情報開示)
当社グループは、行動憲章の一つに「自然と環境を守り、社会との調和を大切にする事業活動を推進し、地球環境の保全に努めます。」を掲げ、共通価値の創造と中長期的な企業価値の向上に取り組んでおります。今後、提言に沿った気候変動関連の情報開示の拡充を進め、事業活動を通じて地球環境への負荷を軽減し、脱炭素社会・循環型社会・自然共生社会の構築と当社の企業価値向上に努めてまいります。
①ガバナンス
サステナビリティ委員会では、「気候変動への対応」が経営の重要課題であることを共有し、取り組み課題のレビュー及び監視を行っております。
また、サステナビリティ推進会議では、関連する方針の策定やサステナビリティ全般に関する目標の進捗管理・施策の検討などを行っております。
活動の基本方針及び重要施策等については、取締役会及び経営会議にて審議・決定しております。
②戦略
当社グループは、気候変動に伴うリスク及び機会が事業戦略上重要であると認識し、IEA(国際エネルギー機関)が公表したシナリオや、政府及び国際機関が公表した将来予測に関するレポート等を参考に、TCFD提言に沿って1.5℃シナリオと4℃シナリオの分析を実施し、短中長期にわたる時間軸でのリスクへの対応策及び機会の特定を行いました。
その結果、移行リスクとしては、カーボンプライシング(炭素税)の導入による原燃料調達コストの増加が事業活動に及ぼす影響が大きいと考え、今後の施策立案の中でイノベーションの進展や社会情勢などを見極めながら経済合理性を踏まえつつ、リスク低減のために適切な手段を選択する必要があると判断しております。
また、2022年よりインターナルカーボンプライシング(ICP)を導入し、設備投資を判断する基準の一つとして、活用を開始しております。
物理的リスクとしては、異常気象に起因する豪雨や洪水による自社拠点の操業を含むサプライチェーンへの影響が想定されるため、BCP体制を強化し事業継続力の向上により影響の低減に取り組んでおります。
なお、事業活動に対する移行及び物理的リスクの財務影響度分析については、一部の定量評価を除き「大」「中」「小」三段階の定性分析としております。また、カーボンプライシング導入による原燃料調達コストの増加のリスクがある一方、気候変動の緩和に貢献する製品及びサービスの需要増加の機会があることを認識しております。今後さらに、継続的なシナリオ分析により財務影響度や評価内容を精査し、リスクと機会への対応策を進めるとともに、経営戦略への統合を推し進め事業継続力の向上に努めてまいります。
主なリスクへの対応策及び機会
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区分 |
内容 |
財務影響度 |
リスクへの対応策及び機会 |
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リスク |
移行 リスク (1.5℃ シナリオ) |
政策 ・ 規制 |
・カーボンプライシング(炭素税)導入による原燃料調達コストの増加や温室効果ガス排出に関する各種規制拡大によるコスト増加 |
大 インターナルカーボンプライシング(ICP)として、10,000円/t-CO2を導入済み。なお、2023年度のグループ全体のScope1、2の合計43,975tで試算した場合、約440百万円のコスト増加が予想される。 |
・設備投資を判断する基準のひとつとして、ICPを導入し、活用を開始 ・再生可能エネルギーの導入や省エネ施策等更なる推進 ・関係法令に適合した循環資源、リサイクル原料の採用 ・新たな法規制への対応 |
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技術 |
・低炭素技術への移行コストの増加 |
中 |
・温室効果ガス排出量削減技術の開発 ・エネルギー消費量の削減につながる生産プロセスの変更 |
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市場 |
・顧客(消費)行動の変化に伴う、既存製品の需要減少 |
中 |
・環境配慮型製品及びサービスへの研究開発投資と新市場の開拓
<アグリ事業> みどりの食料システム戦略に適合する農業資材の開発
<化学品事業(水処理薬剤)> 超高塩基度ポリ塩化アルミニウム(PAC700A)の増販
<化学品事業(機能性材料)> 電気自動車(EV)普及率上昇に対応した高機能性材料素材の開発 |
||
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評判 |
・投資家及び顧客からの評価の低下 |
小~中 |
・ロードマップに沿ったカーボンニュートラルの推進 |
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物理的 リスク (4℃ シナリオ) |
急性 |
・異常気象の激甚化 |
大 |
・災害発生に備えた機動的なBCP体制の強化 ・原材料調達先の多様化及びロジスティクスの強化 ・製品在庫の確保 |
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慢性 |
・降雨や気象パターンの変化 ・平均気温の上昇 ・海面上昇 |
||||
③リスク管理
当社グループは、危機管理委員会において「全社リスクマップ」に基づいた「気候変動への対応」を含む経営リスクの抽出及び評価を行い、重大リスクの未然防止策や危機発生時の対応策等を策定するなど、機動的かつ総合的な危機管理体制を整備しております。
また、「気候変動への対応」に関連したリスクの管理は、他の経営リスクよりも事業戦略上特に重要度が高いため、サステナビリティ推進会議は危機管理委員会と連携し、シナリオ分析に基づくリスクの選別・優先順位付け・管理・評価を行い、必要に応じて取締役会並びに経営会議に報告しております。
④指標及び目標
当社グループは、「2030年までに2013年度比温室効果ガス排出量38%以上の削減(Scope1、2)※1」、更には「2050年のカーボンニュートラル達成」を目指して、持続可能性の観点から経済合理性を踏まえつつ、各種施策に取り組んでおります。
本社工場ではこれまで省エネルギー活動を積極的に推進する中、環境汚染の防止と低炭素化を目的として、1999年から2005年までの6年間ですべての重油を都市ガスへ燃料転換することにより、事業活動で発生するCO2排出量を大きく削減してまいりました。このインフラを活用することによって、将来的に合成メタン※2が社会実装された際には、速やかにカーボンフリーエネルギーを導入することが可能となります。
これらのインフラの有効活用など、目標達成に向けた各種施策を下記カーボンニュートラルロードマップ概要の通り、社会の動向に対応して適宜適切に見直しながら柔軟な施策展開を図ってまいります。
今後は、早期にサプライチェーン全体も含めた温室効果ガス排出量(Scope3)※1の削減取り組みの拡大など、社会全体でのカーボンニュートラル達成に向け精力的に取り組んでまいります。
※1 Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
※2 水素とCO2から合成(メタネーション)されたメタン
カーボンニュートラルロードマップ概要
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期間 |
実施施策 |
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2022~2030年 移行期 |
・徹底した省エネ施策実施、生産プロセス及び事業構造の見直し改善 ・再生可能エネルギーの導入または調達の実施 ・カーボンニュートラルな都市ガス※3の活用(2021年から順次導入開始) ・Scope3削減目標の設定、削減への取り組み ・グリーン電力の活用(2024年からの利用開始) ⇒これらの施策実施により2013年度比温室効果ガス排出量38%※4以上の削減(Scope1、2)を目指す |
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2030~2040年 技術革新期 |
・(継続)徹底した省エネ施策実施、生産プロセス及び事業構造の見直し ・グリーン水素※5の利用、及び合成メタン使用率を段階的に高める ⇒既存インフラを有効活用しつつ更なる低炭素化を目指す |
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2040~2050年 社会実装期 |
・グリーン水素の利用、及び合成メタン使用率を最大限まで高める ・その他の施策を継続もしくは導入 ⇒既存インフラを有効活用しつつカーボンニュートラル達成を目指す |
※3 天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生する温室効果ガスを、森林保全等のプロジェクトによるク
レジットで相殺(カーボン・オフセット)し、排出量ゼロとみなされる都市ガス。なお、当社は現時点でボラ
ンタリークレジットによるものを調達しております。
※4 環境省 地球温暖化対策計画(R3.10.22閣議決定)温室効果ガス削減目標 産業部門
https://www.env.go.jp/earth/211022/honbun.pdf
※5 再生可能エネルギー由来の電力により水を電気分解した際に得られる水素
当社グループにおけるリスク管理の体制と枠組みは、「危機管理方針」に基づいており、危機管理委員会において、当社グループに関する経営リスクの抽出・評価を行い、重大リスクの未然防止策や危機発生時の対応策等を策定するなど、グループ各社が連携してリスク管理やリスク対応力の向上に努めています。そして、経営会議及び取締役会において、事業及び投資に係るリスクの総合的かつ多面的な検討のほか、重点的に管理すべきリスクの評価・管理などをそれぞれ行っております。
財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況(以下「経営成績等」という。)に重要な影響を与える可能性があると当社グループが認識しているリスクのうち、投資者の判断に重要な影響を与える可能性があると考えられる主な事項は、以下のとおりです。ただし、これらのリスクは必ずしもそれぞれ独立して存在するものではなく、ある事象の発生に伴って、ほかの様々なリスクが増大する可能性があります。また、記載したリスク以外にも投資者の判断に重要な影響を与える事項が発生する可能性があります。
なお、以下の(1)から(5)までの各区分に記載のリスクの順序は、当該リスクが現実化した場合の影響度やその蓋然性をそれぞれ5段階評価(下図参照)の上、経営会議及び取締役会において総合的に評価した結果に応じた順序としております。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
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影響度評価 |
蓋然性評価 |
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5 |
高い |
高い |
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4 |
やや高い |
やや高い |
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3 |
中 |
中 |
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2 |
やや低い |
やや低い |
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1 |
低い |
低い |
(1) 経営環境に関するリスク
① 事業環境の変動(影響度評価:4、蓋然性評価:4)
当社グループを取り巻く事業環境において、国内外の経済情勢や業界再編等の変動が、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
特に、化学品事業のうち機能性材料の製品群は、中間原材料であり、最終製品の市況の変化により、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、各担当部門において、業界、市況及びユーザーの動向を可能な限り確認し、速やかに必要な情報を関係部門と共有することなどにより、それぞれの対応に遅れが出ないよう注力しております。
また、不動産事業では、経済情勢や事業環境の変化等に伴うテナントからの賃料収入の減少により、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、リニューアルやリノベーションを行うことで常に商業施設としての価値の維持・強化に努めております。
② エネルギーコスト(影響度評価:4、蓋然性評価:5)
当社グループが生産・販売にあたって購入する石油・ガスの価格は、中東情勢や世界経済の変動の影響を受け、急激な価格変動を起こすことがあります。これらの価格が急激に上昇することによりエネルギーコストが高騰した場合、製品価格への転嫁が遅れることなどにより、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また中長期的には、気候変動問題解決のため環境規制の強化策として、炭素税等が導入された場合、エネルギーコストの上昇につながる可能性があります。当該リスクへの対応策として、エネルギー管理の徹底・強化及びエネルギーのベストミックスに関する取り組みなどを行っておりますが、状況によっては当社グループの生産・販売活動への影響を十分に回避できない可能性があります。なお、当社グループは、脱炭素社会・カーボンニュートラルの実現に貢献するため、TCFD提言に基づいた情報開示を行っております。今後、シナリオ分析を進め情報開示を拡充していくとともに、策定したロードマップに沿って、脱炭素エネルギーの調達や省エネルギー施策などへの投資・資源配分などを通じて気候変動問題への対応に努めてまいります。
③ 為替レートの変動(影響度評価:3、蓋然性評価:4)
当社グループが購入する主要原料の多くが輸入品であるため、為替レートの変動の影響を受ける場合があります。当該リスクへの対応策として、為替レートの動向・見通しを確認しつつ、購入の時期、数量を見極め、適宜調整するなどしております。また、一部の原料購入分については為替予約を行い、変動リスクを抑えるよう努めております。しかし、これにより当該リスクを完全に回避できる保証はなく、為替レートが大きく円安に振れ、それが継続した場合、コスト上昇分を吸収しきれないことや競争激化などで価格転嫁できないことにより、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
④ 原材料の確保(影響度評価:4、蓋然性評価:4)
当社グループが購入する原料、資材、燃料等は、海外の需給バランスの影響を受けるものが多くあり、当該リスクへの対応策として、国内外の複数の取引先からの購入を行い、当社工場や国内の外部倉庫等に需要に応じた一定量の在庫を維持するなど、原材料価格の変動リスクを低減するための調整、及び原材料の安定調達に努めております。しかし、各国の政策変更、情勢悪化や輸出規制による供給不足、需要拡大による原材料価格の高騰が発生した場合や戦争、暴動、テロ、自然災害、感染症や伝染病等の蔓延、気候変動その他環境規制、ストライキ等により供給が中断及び制限された場合は、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
⑤ 風評等(影響度評価:1、蓋然性評価:1)
当社グループの商品・サービス等に関連した、悪意のある風評・風説(以下、「風評等」という。)や、不正確または不十分な情報に基づくネガティブな報道等に起因する風評等が、それが事実であるか否かにかかわらず、当該商品・サービス等に対する信頼を毀損し、それが当社グループ全体に対する社会的信用にも影響を与えるような場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、風評被害への対応マニュアル等を定めておりますほか、平時から関係部門が風評等に関する情報の把握に努めております。
(2) 経営戦略に関するリスク
① 技術革新(影響度評価:5、蓋然性評価:4)
当社グループの製品のうち、機能性材料の主要販売先は、技術革新の激しい業界であり、新規技術が開発されることにより、市場構造が急速に変化する場合があります。それに伴って、当社製品の競争力が著しく低下し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また、水処理薬剤など、上記以外の業界向け製品についても、競争力の高い代替製品の出現が、同様の影響を与える可能性があります。これらのリスクへの対応策として、将来の技術革新の方向性を注視し、次世代の技術に必要とされる機能性材料の開発などを進めてまいります。
② 研究開発(影響度評価:4、蓋然性評価:3)
当社グループは、「研究開発は企業価値向上の原動力」と位置づけ、新製品・新技術の研究開発に注力しております。しかしながら、当社グループの研究開発は、新規事業の創出のための研究を含んでいるため、研究開発期間が長期間にわたる場合があり、また、研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、競争力が低下し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、研究マネジメントの徹底により、研究開発の案件ごとに進捗状況や見通しを厳しく管理し、必要に応じて当該研究開発案件の継続可否、方向修正等の判断を行うこととしております。
(3) 事業運営に関するリスク
① 自然災害及び感染症(影響度評価:5、蓋然性評価:5)
当社グループでは、自然災害及び感染症に関するリスクへの対応策として、自然災害や新型インフルエンザ等の感染症への対策等を定めておりますが、事業継続計画(BCP)の想定を超える大規模な地震や大雨、高潮等の自然災害や新型インフルエンザ等の未知の感染症による製造の中断、物流ルートの寸断などにより、製品の供給が長期間にわたって滞った場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
② 事故等による操業停止(影響度評価:5、蓋然性評価:2)
当社グループは、組織的な労働安全衛生体制及び保安防災管理体制の構築・運用並びに設備の保全・保守等の対応策により、労働災害及び生産設備等の事故防止に取り組んでおります。しかしながら、重篤な労働災害や重大な火災・爆発・漏洩事故等の不測の事態が発生することを完全に防止することはできません。また、重大な事故等に至らない状況においても、安全、環境、製品の品質等を確保するために操業を停止しなければならない場合があります。これらのリスクが顕在化し、当社グループのいずれかの設備における一時的または長期にわたる操業の停止があった場合、製品によっては代替生産が難しいものもあるため、供給に支障をきたす可能性があり、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
③ 情報セキュリティ(影響度評価:4、蓋然性評価:3)
当社グループの事業活動における情報システム・ネットワークへの依存度は年々高まっており、その対応策として、シンクライアント化、クラウドの利用等、セキュリティの高度化等により、システムやデータの保護に努めておりますが、自然災害等に伴う停電やコンピューターウイルスへの感染、ハッキング等により、ネットワーク障害、情報漏洩が発生する可能性があります。これらのリスクが顕在化した場合、事業活動に支障をきたし、当社グループに対する社会的信用に影響を与える場合があるほか、多額のコストが発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。また、当社グループは、システムの運用やメンテナンス等の一部を第三者に委託しているため、システムの不具合等について、当社グループのみでは対処できない可能性があります。加えて、情報インフラの構築、運用、拡張に係るシステム投資や維持費用が、将来大幅に増加する可能性があります。
④ 製造物責任(影響度評価:4、蓋然性評価:2)
当社グループでは、製造する各種製品の販売にあたり、製造物責任に関するリスク検討を確実に実施することで、製造物責任に関する問題の未然防止を図っております。しかしながら、すべての製品について欠陥がなく、製造物責任に関する問題が発生しないという保証はありません。製造物責任に基づく損害賠償については、PL保険に加入し、万一の事態に備えておりますが、賠償額が保険の補償範囲を超える大規模な製造物責任につながるような製品の欠陥が発生した場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、品質保証体制を整備し、品質方針に基づく品質管理を徹底しておりますほか、関係部門が平時から潜在的なリスクの把握に努めております。
⑤ 内部統制(影響度評価:2、蓋然性評価:1)
当社グループは、財務報告の信頼性を確保するための体制を整備・運用するとともに、継続的な改善により内部統制システムの強化に努めております。しかしながら、内部統制システムが有効なものであっても、役職員の悪意または重大な過失に基づく行動など、様々な要因により機能しなくなる可能性があります。
また当社グループは、業務の有効性と効率性を確保するための体制についても整備・運用するとともに、継続的な改善を図っております。しかしながら、内部統制システム構築時点では想定していなかった非定型な取引や事業・社会環境等の変化に、当社グループ内の組織・機能が適切に対応できず、構築された業務プロセスが十分に機能しない可能性があります。
これらの事象に適切に対処できない場合、将来的に法令違反等の問題が発生する可能性があり、それに伴い、当社グループの社会的信用の失墜により事業に影響が生じる、または課徴金や罰金、損害賠償等の支払いが生じることにより、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
以上のとおり、内部統制システムには本質的に内在する固有のリスク把握には限界があるため、その目的が完全に達成されることを保証するものではありませんが、これらのリスクへの対応策として、コンプライアンス教育を含む不正防止策の強化・徹底及びその不断の見直しによる改善のほか、平時より業務プロセスの機能不全につながるような潜在的リスクの把握に努めております。
(4) 経理・財務に関するリスク
① 棚卸資産(影響度評価:2、蓋然性評価:4)
当社グループの棚卸資産の評価方法は、総平均法による原価法(収益性の低下に基づく簿価切下げの方法)であります。当社グループが保有する棚卸資産について、市場価格の下落等により多額の簿価切下げが発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、各担当部門において販売計画、製品在庫、原料在庫及び原料購入の適正化等をそれぞれ実施しております。
② 有価証券の減損(影響度評価:2、蓋然性評価:3)
当社グループは、株式市場の変動の影響を受ける有価証券を保有しております。当社グループが保有する有価証券の市場価格の大幅な下落等により、減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、保有目的が純投資目的である株式については、株式市場の変動を踏まえ機動的に売却できる体制としているほか、保有目的が純投資目的以外である投資株式については、定期的に保有の合理性を検証し、適宜縮減する方針としております。
③ 固定資産の減損(影響度評価:3、蓋然性評価:2)
当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。将来、当社グループが保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、定期的に減損テストを実施することにより、潜在的な減損リスクの把握や販売計画の適正化、減損が必要な事態となる前の売却等の見極めに努めております。また、必要に応じて不動産鑑定評価などを実施しております。
④ 繰延税金資産(影響度評価:2、蓋然性評価:2)
当社グループは、将来の課税所得に関する予測・仮定に基づき、繰延税金資産の回収可能性の判断を行っております。将来の課税所得の予測・仮定を変更した場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。また、税制改正に伴い、税率変更等が実施された場合は、繰延税金資産の計算の見直しが必要となり、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、関係部門が平時から監査法人と十分にコミュニケーションをとり、潜在的な税務リスクの把握に努めております。
(5) 法務・知財に関するリスク
① 訴訟等(影響度評価:3、蓋然性評価:2)
当社グループは、国内及び海外における事業活動の中で、訴訟、係争、その他の法的手続きの対象となる可能性があり、将来重要な訴訟等が提起された場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、コンプライアンス研修を定期的に実施するほか、関係部門が平時から潜在的な訴訟リスクの把握に努め、必要に応じて外部専門家と連携するなどしております。
② 知的財産(影響度評価:3、蓋然性評価:1)
当社グループは、独自の技術やノウハウを蓄積し、競争力の強化を図ってまいりましたが、係る技術やノウハウは、厳正な管理を行っているものの、予期しない事態により外部へ流出する可能性があります。加えて、特定の地域では、知的財産権の保護が極めて困難であるため、第三者が当社グループの知的財産を不正に使用して類似商品を製造することを効果的に防止できない可能性があります。また将来、知的財産に係る紛争が生じ、当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。当該リスクへの対応策として、関係部門が平時から潜在的な知財紛争リスクの把握に努め、必要に応じて外部専門家と連携するなどしております。また、役職員の退職にあたっては、係る技術やノウハウが社外に流出することを防ぐため、秘密保持契約を締結するなどしております。さらに、これらのリスクへの対応策の実効性を上げるため、知的財産保護についての教育を継続して行っております。
③ 法規制等(影響度評価:3、蓋然性評価:3)
当社グループに関連する法令等に関しては、国内外において大幅な変更や規制の強化等が行われる可能性があります。特に、温室効果ガス排出の規制強化や炭素税などの新しい法規制・政策が導入される可能性があり、係る法令の改変が、当社グループの事業活動に支障をきたす場合があります。また、諸法令に基づき当社グループが受けている許認可等について、現時点においては、それら法規制等に基づく許認可等が取消しとなるような事由は発生しておりませんが、将来、何らかの理由により取消事由等に該当し、事業活動の制限や新たなコストが発生した場合、当社グループの経営成績等に重要な影響を与える可能性があります。
これらのリスクへの対応策として、関係部門が係る法令の改変に関する最新の情報を収集し、また許認可等の状況を定期的に確認することにより、必要に応じて迅速に対応できる体制としております。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、経済社会活動の正常化が進む中で、各種政策の効果もあって、緩やかに回復しているものの、物価の上昇や金融資本市場の変動による下振れリスクや、アメリカの政策動向の影響など不透明な状況で推移しました。
このような環境の中、当社グループにおいては令和6年1月から推進している「中期経営計画2028」に基づいて、既存事業の収益力向上などに努めた結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は次のとおりとなりました。
a.財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、584億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ71億2百万円増加いたしました。
当連結会計年度末における負債合計は、204億43百万円となり、前連結会計年度末に比べ30億43百万円増加いたしました。
当連結会計年度末における純資産合計は、379億59百万円となり、前連結会計年度末に比べ40億59百万円増加いたしました。
b.経営成績
当連結会計年度の売上高は389億16百万円(前期比11.7%増)、営業利益は26億68百万円(前期比192.3%増)、経常利益は31億61百万円(前期比136.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は22億99百万円(前期比69.5%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
(アグリ)
肥料の販売価格は値下がりしたものの、販売数量が回復したことにより、売上高は107億79百万円と前期に比べ7.9%の増加となり、加えて在庫評価の影響により売上原価率が低下し、営業利益は2億30百万円(前期は4億23百万円の営業損失)となりました。
(化学品)
水処理薬剤は、超高塩基度ポリ塩化アルミニウムの販売数量が増加したことや、原料価格の上昇に伴う販売価格の是正に努めたことにより、売上高は119億98百万円と前期に比べ11.8%の大幅な増加となりました。
機能性材料は、自動車関連セラミック繊維向け高塩基性塩化アルミニウムの販売数量が需要の回復等により増加したことに加え、スマートフォン向け高純度酸化タンタルの販売数量が好調に推移し、売上高は61億68百万円と前期に比べ27.9%の大幅な増加となりました。
その他化学品の売上高は1億57百万円と前期に比べ19.1%の減少となりました。
それらの結果、売上高は183億23百万円と前期に比べ16.4%の大幅な増加となり、営業利益は20億86百万円と前期に比べ41.4%の大幅な増加となりました。
(建材)
石こうボードの販売数量が増加したことに加え、販売価格が上昇し、売上高は37億2百万円と前期に比べ15.2%の大幅な増加となり、営業利益は54百万円(前期は3億15百万円の営業損失)となりました。
(石油)
燃料油の販売数量が需要の減退により減少したものの、販売価格が値上がりしたことなどにより、売上高は19億57百万円と前期に比べ0.8%の増加となりましたが、洗車等油外収益の減少により、営業利益は13百万円と前期に比べ19.4%の減少となりました。
(不動産)
ショッピングセンターの賃料収入は前期並みに推移し、売上高は13億38百万円と前期に比べ1.4%の減少となったものの、修繕費の減少により、営業利益は7億36百万円と前期に比べ2.2%の増加となりました。
(運輸)
荷役量は減少したものの、貨物輸送量が増加したことにより、売上高は28億13百万円と前期に比べ8.1%の増加となり、営業利益は2億96百万円と前期に比べ11.7%の増加となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは43億43百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは16億13百万円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは3億52百万円の支出となり、その結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末残高に比べ23億83百万円増加し、74億58百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
売上債権の増加による資金の減少が13億38百万円、法人税等の支払が5億7百万円ありましたが、税金等調整前当期純利益32億62百万円、減価償却費12億44百万円、仕入債務の増加による資金の増加が7億98百万円、災害損失引当金の増加による資金の増加が5億20百万円あったことなどにより、43億43百万円の資金の増加(前年同期は16億20百万円の増加)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
固定資産の取得による支出が18億9百万円あったことなどにより、16億13百万円の資金の減少(前年同期は16億40百万円の減少)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
配当金の支払による支出が4億23百万円あったことなどにより、3億52百万円の資金の減少(前年同期は11億69百万円の減少)となりました。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 令和6年1月1日 至 令和6年12月31日)
|
前年同期比(%) |
|
アグリ(百万円) |
10,747 |
103.3 |
|
化学品(百万円) |
18,020 |
115.5 |
|
建材(百万円) |
3,698 |
115.5 |
|
石油(百万円) |
1,923 |
101.0 |
|
不動産(百万円) |
4 |
30.9 |
|
運輸(百万円) |
489 |
156.0 |
|
合計(百万円) |
34,883 |
110.9 |
(注)1.金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、外注製品受入高が含まれております。
b.受注実績
製品の大部分について、需要予測をもとに見込生産方式を採用しております。
c.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 令和6年1月1日 至 令和6年12月31日)
|
前年同期比(%) |
|
アグリ(百万円) |
10,779 |
107.9 |
|
化学品(百万円) |
18,323 |
116.4 |
|
建材(百万円) |
3,702 |
115.2 |
|
石油(百万円) |
1,957 |
100.8 |
|
不動産(百万円) |
1,338 |
98.6 |
|
運輸(百万円) |
2,813 |
108.1 |
|
合計(百万円) |
38,916 |
111.7 |
(注)1.セグメント間の取引については、相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績等
1) 財政状態
(資産合計)
当連結会計年度末の総資産は、584億2百万円(前期比71億2百万円増)となりました。流動資産は、商品及び製品が2億94百万円減少しましたが、現金及び預金が23億83百万円、受取手形及び売掛金が10億18百万円、電子記録債権が3億19百万円それぞれ増加したことなどにより、272億74百万円(前期比34億89百万円増)となりました。固定資産は、有形固定資産が6億10百万円、投資有価証券が30億44百万円それぞれ増加したことなどにより、311億28百万円(前期比36億13百万円増)となりました。
(負債合計)
当連結会計年度末の負債は、支払手形及び買掛金が7億98百万円、未払金が2億21百万円、未払法人税等が5億74百万円、災害損失引当金が5億20百万円、繰延税金負債が8億21百万円それぞれ増加したことなどにより、204億43百万円(前期比30億43百万円増)となりました。
(純資産合計)
当連結会計年度末の純資産は、利益剰余金が18億76百万円、その他有価証券評価差額金が21億50百万円それぞれ増加したことなどにより、379億59百万円(前期比40億59百万円増)となりました。
2) 経営成績
(売上高及び営業利益)
売上高は389億16百万円(前期は348億52百万円)、営業利益は26億68百万円(前期は9億12百万円)となりました。
(経常利益)
営業外収益は5億20百万円と前連結会計年度に比べ48百万円の増加、営業外費用は28百万円と前連結会計年度に比べ19百万円の減少となり、経常利益は31億61百万円(前期は13億37百万円)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
特別利益は8億7百万円と前連結会計年度に比べ1億88百万円の増加、特別損失は7億7百万円と前連結会計年度に比べ7億7百万円の増加、法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は9億64百万円と前連結会計年度に比べ3億36百万円増加し、親会社株主に帰属する当期純利益は22億99百万円(前期は13億56百万円)となりました。
b.経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの経営に影響を及ぼす可能性のある要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。これらのリスクの回避に努めるとともに発生した場合の対応に万全を期してまいります。
c.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、企業の持続的発展と企業価値の向上を実現するためには、株主資本の有効活用が不可欠であると考え、売上高、営業利益に加えてRОEを重要な指標の一つとして位置づけております。
当社グループでは、令和6年から5カ年を対象とする「中期経営計画2028」をスタートさせ、①成長事業への積極的投資と新事業の創出、②既存事業の深化による収益力向上、③サステナビリテイ・トランスフォーメーションの実践、④GRCの推進、を基本方針とし、連結売上高420億円、連結営業利益30億円、ROE6.0%以上を最終年度の経営目標として定めております。
d.セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a.キャッシュ・フローの状況
当社グループは、営業活動によって得られた資金を、市場環境や資本効率等を総合的に勘案し、更新投資及び成長投資、手元資金、株主還元等に適切なバランスで配分し、また必要に応じて追加の資金を財務活動によって調達することをキャッシュ・フローの基本方針としております。なお、更新投資は生産設備の更新及び合理化に、成長投資は研究開発及びそれに伴う設備投資並びに人材獲得・育成等に、手元資金は運転資金、財務基盤の強化等に、株主還元は配当金の支払等に充当しております。
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
同期間における営業活動によるキャッシュ・フローは43億43百万円の収入であり、投資活動によるキャッシュ・フローは固定資産の取得等により16億13百万円の支出及び財務活動によるキャッシュ・フローは配当金の支払等により3億52百万円の支出となったことから、当連結会計年度における連結ベースの資金は、前連結会計年度から23億83百万円増加し、74億58百万円となっております。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、内部資金または借入により資金調達することとしております。このうち、借入による資金調達に関しましては、運転資金については短期借入金で、設備投資資金については長期借入金での調達をしております。また、多額の資金需要が発生した場合には、これらに加えエクイティファイナンス等による調達手段についても検討することとしております。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間の収益・費用の報告数値に影響を与える見積りを行っております。ただし、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っておりますので、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。
なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものはありません。
該当事項はありません。
当社グループは、「研究開発は企業価値向上の原動力」と位置づけ、新製品・新技術の研究開発に注力しております。特に、将来の成長が期待されている高機能性材料及びそれらの先端応用技術について、大学の研究機関などとも連携・共同して研究開発を進めております。
当社グループの研究開発要員は71名で、グループ総従業員数の約12%にあたります。研究開発要員のうち30名は製造技術支援要員で、既存製品に対するユーザーからの要求に対応して、品質向上やコストの低減などを進めております。令和6年4月に研究所・技術部の組織再編を行い、既存事業の収益力向上と成長事業の創出に向けて、研究開発の充実化を図りました。また本年には、本社新社屋隣接地に新たな研究拠点を設ける予定で、本社との連携機能を充実させる計画であります。
当連結会計年度における研究開発活動の主なものは、以下のとおりであります。
(1) アグリ
肥料生産方式の合理化に関しては、生産コスト及び温室効果ガスを削減する技術に基づき製造支援を行い、安定操業体制を確立しました。更に、温室効果ガス削減を推進するため、よりエネルギー効率の高い肥料製造方法の検討を行いました。
(2) 化学品
① 水処理薬剤
超高塩基度ポリ塩化アルミニウムの拡販のための適用研究を行い、需要の拡大に貢献しました。また、本社工場の製造支援を行い、生産能力増強を実現しました。
② 機能性材料
メディカル材料分野では、医療用材料の基準に適合した設備及び品質保証体制を維持しました。また、新たな医療領域への適用に向けて、ユーザーや大学と共同して材料開発を進めました。
無機材料分野では、セラミックス向けの新たなバインダーの研究開発を行い、関連特許を出願しました。
(3) その他の研究開発活動
バカマツタケの完全人工栽培に関しては、量産化に必要な生産安定性や生産コストが当社の想定する水準に達しておらず、引き続き課題解決に取り組んでまいります。
魚うろこ由来3重らせんコラーゲン材料に関しては、iPS細胞との親和性を持ったコラーゲン材料をクオリプス株式会社と共同開発しました。2025大阪・関西万博での大阪ヘルスケアパビリオンやPASОNA NATUREVERSEに展示される拍動するiPS心筋シート及びiPS心臓に使用されます。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、以下のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
|
アグリ |
|
|
化学品 |
|
|
その他の研究開発費 |
211 |
|
合計 |
|
(注)上記には、製造技術支援にかかる費用は含まれておりません。