第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

  文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社は1950年の創立以来、金属加工技術を軸に市場が求める製品を創出し、新市場を切り拓く金属製品加工メーカーとして事業展開しており、その基本方針は会社の経営理念である「限りない未来の創造」に掲げております。

・お客様のニーズにかなう高品質な、信頼性のある製品を創造しつづけること

・技術が企業活動の源泉であること

・社会のニーズの変化への適応力が不可欠であること

・時代が要求する製品を開発し社会に提供することが企業発展の基本であること

としており、成長を重ねる事業の継続が最も重要であり、それが当社を巡る株主様をはじめとするステーク ホルダーの満足に応えることを可能とする源と考えております。

 また、当社グループはゴルフクラブヘッド、医療機器、航空機部品、メタルスリーブ製品及び自動車等鍛造部品の製造を主体にその基盤の拡充を図り、収益力を強化していくことを目指しております。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、ゴルフクラブヘッド、医療機器、航空機部品、メタルスリーブ製品及び自動車等鍛造部品の製造を拡充して経営基盤の強化を図り、安定的な収益の確保と効率化を目指した経営を行うことで、企業価値の向上に努めてまいります。

 経営上の目標の達成状況を判断する経営指標としましては、中長期的な経営戦略を総合的に勘案し、経営に最も適した指標の設定を考えておりますが、自己資本利益率(ROE)5.0%以上の継続的な実現を目指します。

 

(3)経営戦略等

当社グループを「鍛造技術と塑性加工技術を中核とした金属製品加工業」と位置付け、ゴルフクラブ(クラブヘッド)、医療機器、航空機部品、メタルスリーブ製品(OA機器部品)、自動車等鍛造部品を中心とし、技術開発成果を事業に活かすとともに、新たな分野についても研究を進め、そのための設備投資を行っていく方針であります。

 具体的に中長期的な経営戦略としては、全事業部門を通して次の3つテーマを設定し、目標管理を徹底することによって売上の確保と利益の拡大に努めてまいります。

『事業ポートフォリオの再構築』

・事業や市場の特性等を踏まえたポートフォリオの再構築

・新技術導入、M&A、アライアンス活用による新たな価値の創造

・生産コスト最適化と品質の安定化による市場拡大

『経営基盤の強化』

・遠藤製作所が目指す姿を実現するための人材戦略の実行

・基幹システムの刷新/統一によるデータドリブン経営の基礎づくり

・グローバルレベルでのシームレスな組織運営の基盤構築

『資本効率の向上』

・利益成長と安定した配当を実現するためのROEの目標設定

・成長投資と株主還元の推進

・新たな成長機会の獲得に向けた積極投資

 

(4)経営環境及び優先的に対処すべき事業上並びに財務上の課題

今後の経営環境につきましては、わが国経済は、景気の回復基調が続くと思われますが、円安等の影響によりコストプッシュによるインフレが継続すると同時に、金利のある世界となり調達金利の上昇等予断を許さない極めて厳しい状況が続くものと思われます。

 

当社グループの経営環境につきましては、ファインプロセス事業のゴルフ分野では、TGLリーグ等バーチャルとリアルが融合した新しい形や日本人選手の活躍もあり、競技人口の減少は以前よりも小さくなっていくと予想しております。医療機器分野につきましては、今後も、世界的な高齢化による需要増加を予想しております。航空機分野につきましても、旅客需要及び貨物需要ともに需要が増加傾向にあると予想しております。メタル事業において、鍛造分野では、電気自動車への切り替え需要は一定数あるものの、現状では内燃機関をもつ自動車及び二輪車等の需要は底堅いと予想しております。メタルスリーブ分野においては、ペーパーレスの進展による複合機等の印刷機械への需要は長期的には漸減すると予想しておりますが、足元では横ばいとなると予想しております。

このような状況のなか、当社グループは、ファインプロセス事業及びメタル事業ともにOEMとして製品開発力及び製造能力等を伸ばすとともに、継続した原価低減に努め、安定した製品供給能力を向上させていくことに取り組んでまいります。

上記の当社グループの経営戦略を確実なものとするためファインプロセス事業及びメタル事業において次の様な取り組みを行ってまいります。

① ファインプロセス事業について

・当社グループがコア技術とする鍛造製法の特性を更に明確にすべく、製法を更に進化させ、新しいニーズに適応した製造方法の開発に努めてまいります。

・グローバルなサプライチェーンの中で、一層の製造技術、製品品質の向上を図り、ニーズに対応した競争力のある付加価値製品の供給に努めてまいります。

・当社のコア技術により獲得した、医療機器分野及び航空機分野での受注及び製品供給を拡大するとともに更なる安定供給体制の確保に努めてまいります。

・ゴルフ分野の生産拠点であるタイ工場(ENDO THAI CO.,LTD.)につきましては、生産体制の最適化、効率化に取り組み、製造コストの低減を更に推し進めます。

・急激な為替変動による製造原価上昇に対して、為替予約等のリスク回避に努めると同時に生産性の向上によるコスト削減を徹底し、収益の確保に努めてまいります。

・変化の激しい市場動向の中で取引先に対する対応をきめ細かく行なうために、企画・製造のリードタイムの短縮を図ります。

② メタル事業について

・当社グループの最大の強みとする自動車部品のエアーハンマーによる鍛造製法の部門を拡大し、この分野での圧倒的優位性を実現します。

・鍛造部品の強みを活かし、農耕機及び二輪車等自動車以外の新分野領域への取り組みを強化することで受注の獲得を図ります。

・定着スリーブの強度化と更に熱特性に優れた新素材の開発で、付加価値のある製品のバリエーションを広げます。

・幅広い分野への製品提案によって、国内外企業での既存取引先との取り組み拡大と新規取引先の開拓を進めることで受注の拡大を図ります。

・極薄加工技術を含む金属塑性加工技術を更に発展・応用した次世代製品の研究開発に取り組みます。

・製造原価低減による競争力強化の実現、品質及び納期の安定供給を行い受注拡大につなげます。

③ サステナビリティについて

・持続的に発展する社会を目指し「環境課題の解決に向けた取り組み推進」「より豊かな地域社会の実現に向けた取組」「グローバルガバナンスの更なる高度化」に取り組んでまいります。

 

なお、本項に含まれる将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

(サステナビリティ基本方針)

 持続可能な社会の実現は、経営理念である「限りない未来の創造」の実践のためにも必要不可欠であると当社グループは考えています。

 ものづくりに一層の磨きをかけ、お客様に満足を超える感動をお届けすること、事業活動全般を通じて、環境・社会・ガバナンスに関する様々な課題に積極的に取り組むことで、持続可能な社会への貢献とグループの成長を両立し、お客様やお取引先、従業員、株主そして地域社会といったあらゆるステークホルダーから信頼される存在であることを目指します。

 

① ガバナンス

 当社グループは、サステナビリティ基本方針に則り、グループ全体のサステナビリティ推進の責任者である取締役を委員長とし、各事業部の部長を委員メンバーとする「サステナビリティ推進委員会」を設置いたしました。サステナビリティ推進委員会では、活動方針の策定、施策の立案、実施を担い、取締役会へ報告を行います。取締役会は、サステナビリティに関する重要事項について審議・決定するとともに、委員会活動の評価・検証を行い、サステナビリティへの取り組みに関する進捗状況を監督し、サステナビリティ経営を推進してまいります。

 

<当社グループのガバナンス体制>

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② 戦略

 当社グループは、経営理念の実践を通じた企業価値向上と環境・社会課題の解決に向けて優先して取り組むべき重要課題「マテリアリティ」を以下のとおり特定いたしました。今後は、特定したマテリアリティの実現に向けて、様々な取り組みを行ってまいります。なお、特定したマテリアリティについては、当社グループを取り巻く環境に合わせて、定期的に見直しを行ってまいります。

 

<当社グループの重要課題「マテリアリティ」>

 

テーマ

主な取り組み内容

E 環境

1.サステナブルな未来の創造に向けた脱炭素社会への貢献

・CO2排出量の開示(Scope1、2)

・CO2排出量の削減に向けた再エネ・省エネの推進

2.資源循環の推進と汚染の防止

・廃棄物の削減

・再生可能、リサイクル原料の利用拡大

・水使用量の削減

・重大環境事故「0件」の継続

3.環境マネジメント体制の強化

・サステナビリティ推進委員会の設置

・各種イニシアチブへの賛同

S 社会

1.人材育成

・外部研修等への参加を通じた従業員の能力開発の促進

・従業員満足度(調査実施)の向上による離職率の低下

2.健康経営の実践と労働安全衛生の向上

・安全で健康的な職場環境の整備による健康経営の推進

・労働災害発生件数の抑制

3.ダイバーシティの推進

・ダイバーシティ推進のための人事データのDX化

・女性管理職比率の向上

4.人権の尊重

・人権に関する方針の策定とグループ内での徹底

5.製品・サービスの信頼性向上と新技術の確立

・品質マネジメントシステム(ISO)の認証取得継続

・新技術の確立に向けたR&D体制の推進

G ガバナンス

1.コーポレートガバナンスの強化

・株主との対話の実施

・取締役会におけるサステナビリティ関連項目の評価・審議・監督

2.コンプライアンスの徹底

・コンプライアンスマニュアルのグループ内での徹底

3.サイバーセキュリティ

・既存システムのレジリエンス向上や新システムの導入

・サイバーセキュリティに対する従業員教育の実施

4.事業継続計画

・早期復旧計画の見直しと社内訓練実施

・安否確認体制の構築

 

<人的資本に関する項目>

 当社グループは、上記マテリアリティに記載のとおり、「人材育成」や「健康経営の実践と労働安全衛生の向上」等の人的資本に関する項目をマテリアリティとして特定するとともに、中期経営計画において経営基盤の強化の一つとして人的資本基盤を構築することを掲げております。マテリアリティに記載の取り組みと合わせて、中期経営計画にあるとおり次の方針を実施することで常に新たな分野の開拓を推し進めてまいります。

 当社グループにおける人材の多様性を含む人材育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、次のとおりであります。

 

「経営戦略実行のための人材育成と流動性」

 強固な基盤づくりに向けて人材の育成と、主体性を発揮できる魅力的なミッションの付与と共創のための仕組みづくりを講じてまいります

 

「戦略的健康経営の実施」

 業務パフォーマンスの維持・向上はもとより、将来にわたって、一人ひとりが自律的に心身の健康づくりを行い、生き生きと過ごせるよう全役職員のヘルスリテラシー向上を推進してまいります

 

「魅力的な働く環境づくり」

 社内外の優秀な人材の確保を実現するために、一人ひとりが当社で働くことに向き合い、働き方の選択肢を増やし、働く上での負担を減らす体制を構築していきます

 

「ダイバーシティの推進」

 多様な社員が強みを発揮し、共創する集団となるため、人事データのDX化を図り、グループ全体のダイバーシティ&インクルージョンを推進してまいります。

 

③ リスク管理

 当社グループにおいて、全社的なリスク管理は、常勤取締役、常勤監査役および全管理職を含む幹部からなるコンプライアンス・リスク管理委員会において行っております。また、リスクのなかでも優先的に対応すべき事項については、当社グループに与える財務的影響や環境・社会に与える影響を踏まえ審議し、審議された事項は、取締役会に報告されます。

 なお、コンプライアンス・リスク管理委員会は、サステナビリティ推進委員会と情報連携を行う体制としております。

 

④ 指標と目標

 当社グループでは、2024年度において、サステナビリティ推進委員会の設置による体制面の整備やマテリアリティの特定等を実施いたしました。

 当社では、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、主に次の指標を用いております。当該指標に関する当社の目標及び実績は、次のとおりです。なお、指標等については、連結子会社において行われていない事項があるため、当社において記載しております。

指標

目標

実績(当事業年度)

健康経営優良法人認定

2025年度認定取得

取り組み開始

健康診断・人間ドック受診率

100%

96.7%

特殊健康診断受診率

100%

98.1%

ストレスチェック受診率

100%

98.6%

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)OEM企業としてのリスク

当社グループの事業は相手先メーカーのブランドで製造し販売するOEM生産の形態をとっているため、当社グループの業績は相手先メーカーの営業施策や外注施策による影響を受け、当社グループの業績が著しく変化する可能性があります。

また、特定取引先への販売依存度が高くなると、その取引先の販売政策の影響を強く受ける可能性があります。一方で取引先数の拡大を図れば主要取引先との関係の希薄化の懸念もあり、取引先拡大と関係強化の面で慎重な対応が必要であります。

(2)為替変動におけるリスク

当社グループは、タイ国において3法人の子会社を有しており、連結財務諸表作成時における売上、費用、資産及び負債を含む現地通貨建て項目は、円換算されており円換算後の価値が為替変動の影響を受ける可能性があります。

また、取引においては、当社及び子会社間でのタイバーツや米ドルで為替の影響を受けます。これに対して、製造原価を低減するためにタイ国生産工場の合理化を進めるとともに、為替予約取引等により為替レートの変動による悪影響を最小限にとどめる努力を行っているものの、大幅な為替レートの変動が当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(3)海外廉価製品との価格競争についてのリスク

ゴルフクラブ市場において、価格及び品質競争が激化を続けている中で、市場での中国製製品の拡大が進んできております。当社グループは技術力と品質面で高い評価を受けておりますが、今後一層のコスト低減策を進めて行く必要があり、この取り組みが不十分な場合、市場シェアの低下をまねき、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(4)原材料の高騰についてのリスク

当社グループが製造に使用しているチタン材をはじめ原材料及び資材等の価格が予想を超えて高騰し、その状況が長期化した場合は、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(5)製品開発力についてのリスク

ゴルフクラブ市場においては、製品サイクルの短命化及び多品種小ロットになってきております。当社グループは開発力と生産技術力の強化により対処すべく取り組んでおりますが、市場環境の変化や取引先の販売施策によっては、取り組みが功を奏さないことも考えられ、その場合当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(6)製品の品質についてのリスク

鍛造分野において製造しております自動車等鍛造部品については、安全性の配慮から特に品質について万全の体制で行なっておりますが、万が一、重大なリコールや賠償責任につながる製品の欠陥が発生した場合には、信用が失墜し、かつ、多額の費用を要することとなり、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7)災害等による影響についてのリスク

当社グループの生産拠点はタイ国に、また開発等の中枢機能と一部の生産は新潟県燕市にありますが、それらの地域に地震・洪水等その他の災害が発生した場合、生産活動に支障が生じ当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(8)海外での事業展開についてのリスク

当社グループは、タイ国に生産の拠点があり、その重要性は高くなってきております。当地域において政情不安、鳥及び新型インフルエンザ、その他の要因による社会的・経済的混乱の長期化や予期せぬ事象の発生及び規制等により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、欧米諸外国を中心としたインフレに対する政策金利の上昇施策等は徐々に緩和の傾向がみられたものの、日本との政策金利の差が依然乖離しており円安の状況が継続しました。また、円安の影響等により、コストプッシュによるインフレの状況が継続し、先行きに対する不透明感が続いております。

このような状況のもと、当社グループは、生産及び販売体制の最適化・効率化を進めるとともに、成長分野への研究開発及び投資を実施してまいりました。また、全社で受注獲得の取り組み強化及び製造コストの一層の低減に取り組んでまいりました。

この結果、当連結会計年度における財政状態及び経営成績は、以下のとおりとなりました。

イ.財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、264億81百万円となり、前連結会計年度に比べ24億63百万円増加いたしました。

当連結会計年度末における負債合計は、42億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億31百万円増加いたしました。

当連結会計年度末における純資産合計は、222億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ22億31百万円増加いたしました。

ロ.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高は174億16百万円(前期比10.9%増)と堅調に推移いたしました。また、利益面につきましても売上高の増加及び主にメタル事業において原材料価格や電気料等の落ち着きが見られたこと等の影響があり、営業利益15億46百万円(同31.5%増)、経常利益16億12百万円(同40.2%増)となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は11億18百万円(同46.6%増)となりました。

セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

(ファインプロセス事業)

ファインプロセス事業のゴルフ分野につきましては、新商品の市場販売に向けて受注が堅調に推移し、安定的に製品を供給することができました。また、医療機器・航空機分野につきましては、生産体制の拡充を実施し、本格的な受注に対して安定して製品を供給することができました。その結果、売上高92億27百万円(前期比20.4%増)と増収となりました。利益面では、増収による利益はあったものの、医療機器・航空機分野におきまして、新規設備投資の設備費が増加いたしました。また、ゴルフ分野では急激な円安等の影響に伴い仕入価額が上昇したことにより、営業利益12億81百万円(同1.1%増)となりました。

(メタル事業)

メタル事業のメタルスリーブ分野につきましては、複写機市場で得意先の在庫調整が終了したことにより大幅な受注回復がみられ、安定的に製品を供給することができました。また、鍛造分野につきましては、タイ国での生産台数の減少が見込まれるものの、受注獲得の取り組み強化等により受注は堅調に推移しました。その結果、売上高81億88百万円(同1.8%増)となりました。利益面につきましては、両分野において生産及び販売体制の最適化・効率化を図り製造コストの一層の低減に取り組んだこと及び原材料の価格やタイ国での電気料金の高騰が落ち着いたこともあり、営業利益10億13百万円(同90.3%)と増益となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

営業活動によるキャッシュ・フローは、17億56百万円の収入となりました。この主な要因は、税金等調整前当期純利益16億12百万円及び減価償却費11億71百万円等によるものであります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、13億13百万円の支出となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出13億69百万円及び投資有価証券の取得1億31百万円等によるものであります。

財務活動によるキャッシュ・フローは、2億87百万円の支出となりました。この主な要因は、配当金の支払額1億76百万円及び長期借入れの返済による支出1億円等によるものであります。

この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は98億28百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億25百万円増加いたしました。

 

③生産、受注及び販売の実績

イ.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

ファインプロセス事業(千円)

9,259,650

116.5%

メタル事業(千円)

8,148,802

102.0%

合計(千円)

17,408,452

109.2%

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。

 

ロ.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

ファインプロセス事業

9,405,366

129.7

1,438,588

114.1

メタル事業

8,357,517

102.7

932,188

122.1

合計

17,762,884

115.4

2,370,777

117.1

 (注)1.金額は販売価格によっております。

2.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。

 

ハ.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前年同期比(%)

ファインプロセス事業(千円)

9,227,636

120.4

メタル事業(千円)

8,188,921

101.8

合計(千円)

17,416,558

110.9

 (注)1.当連結会計年度より報告セグメントの区分を変更しており、前年同期比は、変更後の報告セグメントの区分に基づき作成しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

住友ゴム工業㈱

1,630,889

10.4

2,738,967

15.7

㈱IHI

1,460,297

9.3

2,079,877

11.9

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末日現在において当社グループが判断したものであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態

イ.資産の部

流動資産は171億66百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億39百万円増加いたしました。この主な要因は、現金及び預金、受取手形及び売掛金、原材料及び貯蔵品が増加したこと等によるものであります。

固定資産は93億15百万円となり、前連結会計年度末に比べ7億23百万円増加いたしました。この主な要因は、建設仮勘定、土地、機械装置及び運搬具が増加したこと等によるものであります。

ロ.負債の部

当連結会計年度末における負債合計は、42億80百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億31百万円増加いたしました。

流動負債は30億49百万円となり、前連結会計年度末に比べ96百万円増加いたしました。この主な要因は、支払手形及び賞与引当金が増加したこと等によるものであります。

固定負債は12億30百万円となり、前連結会計年度に比べ1億34百万円増加いたしました。この主な要因は、繰延税金負債及び退職給付に係る負債が増加したこと等によるものであります。

ハ.純資産の部

純資産合計は222億1百万円となり、前連結会計年度に比べ22億31百万円増加いたしました。この主な要因は、利益剰余金及び為替換算調整勘定が増加したこと等によるものであります。

 

2)経営成績

当連結会計年度におけるわが国経済は、欧米諸外国を中心としたインフレに対する政策金利の上昇施策等は徐々に緩和の傾向がみられたものの、日本の政策金利との差が依然乖離しており円安の状況が継続しました。また、円安の影響等により、コストプッシュによるインフレの状況が継続し、先行きに対する不透明感が続いております。

このような状況のもと、当社グループは、生産及び販売体制の最適化・効率化を進めるとともに、成長分野への研究開発及び投資を実施してまいりました。また、全社で受注獲得の取り組み強化及び製造コストの一層の低減に取り組んでまいりました。

 

その結果、売上高は174億16百万円(前期比10.9%増)と堅調に推移いたしましたが、利益面につきましては、急激な円安や原油価格、原材料の高騰等の影響があり、営業利益15億46百万円(同31.5%増)、経常利益16億12百万円(同40.2%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は11億18百万円(同46.6%増)となりました。

 

イ.売上高

 ファインプロセス事業のゴルフ分野につきましては、新製品の市場投入に合わせて受注が堅調に推移し、安定的に供給することができました。医療機器・航空機分野につきましては、生産体制の拡充を実施し、本格的な受注に対して安定して製品を供給することができました。その結果、売上高92億27百万円(前期比20.4%増)となりました。

 メタル事業につきましては、メタル分野においては半導体不足等による得意先の在庫調整が終了したことにより受注が回復いたしました。鍛造分野につきましては、タイ国における個人へのローン残高規制の影響もあり各メーカーの生産数量が減少したこと等により、当社の受注数量は漸減いたしました。その結果、売上高81億88百万円(同1.8%増)となりました。

ロ.営業利益

 ファインプロセス事業につきましては、急激な円安による仕入価格の高騰等の影響があったものの各分野で生産体制の効率化及び拡充の取り組みを実施したことにより、営業利益12億81百万円(同1.1%増)の増益となりました。

 メタル事業につきましては、メタルスリーブ分野において得意先の在庫調整が完了したことによる売上高が回復したほか、鍛造分野において、原材料の価格転嫁及び電気料の落ち着き等により営業利益10億13百万円(同90.3%増)となりました。

ハ.営業外損益、経常利益

 営業外損益、経常利益につきましては、営業利益が上記のとおり推移したこと等により、経常利益は16億12百万円(同40.2%増)となりました。

ニ.親会社株主に帰属する当期純利益

親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、上記のとおり売上高が増加しメタル事業での受注回復による損益分岐点を上回る受注を確保できたこと等により増収増益となり、決算による繰延税金資産の再計算により法人税等調整額を29百万円計上したこと等により親会社株主に帰属する当期純利益11億18百万円(同46.6%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

イ.資金需要

 当社グループの資金需要は、主に生産活動のための原材料費、労務費、販売費及び一般管理費に係る運転資金、事業拡大及び生産性の向上のための設備投資資金等であります。

ロ.財務政策

 当社グループの事業活動拡大のため、安定的な資金調達手段の確保及び運転資金の効率的な調達を行うことを目的として、単独の金融機関との間で15億円のコミットメントラインを更新しております。

 

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、決算日における資産・負債の報告数値、当連結会計年度の収入・費用等の報告数値に影響を与える見積り等は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。しかしながら、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。

 また、連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積りは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

(3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、経営基盤の強化を図り、安定的な収益の確保と効率化を目指した経営を行うことで、企業価値の向上に努めてまいります。

 翌連結会計年度以降につきましては、中期経営計画を策定し、資本コスト等を意識した経営を実施していくにあたり、経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等として、自己資本利益率(ROE)5.0%を目標とするものであります。

 なお、当連結会計年度における自己資本利益率(ROE)につきましては、5.3%であり、自己資本利益率(ROE)の向上に取り組んでまいります。

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1) 製品の製造委託及び受託に関する契約

当社は、以下のとおり経営上の重要な契約を締結しております。

契約先

契約年月日

契約内容

契約期間

ブリヂストンスポーツ㈱

1983年5月1日

「取引基本契約書」

製品の製造委託に関する契約

1年間

(自動更新)

住友ゴム工業㈱

2004年4月15日

「取引契約書」

ゴルフクラブヘッドの製造、加工委託に関する契約

1年間

(自動更新)

 

(2) 株式取得による会社等の買収

2024年12月25日開催の取締役会において、日亜鍛工株式会社の株式を取得して子会社化することを決議いたしました。これに基づき、同日付で株式譲渡契約を締結するとともに、2025年2月1日に本取得をしております。

詳細は、「第5 経理の状況(1)連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発は、金属塑性加工製造業での「Only One企業」を目指し、コア技術である鍛造及び塑性加工技術を更に追求・発展させつつ、各事業戦略の中で、顧客のニーズに対応した研究開発活動を行なっております。研究開発組織は、当社及び一部連結子会社の研究開発部門であります。

 なお、当連結会計年度の当社グループ全体の研究開発費は、404百万円となっております。

 また、セグメント別の研究の目的、研究開発費は以下のとおりであります。

(1) ファインプロセス事業

 ファインプロセス事業では、製品の性能、品質の向上を追求するとともに、生産のリードタイム短縮とコスト低減の開発を実施しております。また、提案型開発を強化し、製品の差別化に努めております。

 ファインプロセス事業に係る研究開発費は、404百万円であります。

 

(2) メタル事業

 メタル事業では、生産効率の向上・製造原価の低減及び製品の用途変更の研究・開発を実施しております。また、新機能素材の開発を進め、製品化を図っております。