第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

「独創と融合」を当社の経営理念としております。これは、個々の独自性と創造性を尊重し、それらをあらゆる次元で発展的に融合させることにより、新しい価値を継続的に生み出していく、という意味があります。当社に関わる全てのステークホルダーに価値を提供できるよう事業展開を行っております。

当社グループ理念としては、「環境に優しい空気のソリューションを届ける。」をパーパスとし、また「クライメイト・ニュートラルな未来実現のため、空気処理技術のイノベーション・リーダーであり続ける。」をビジョンに掲げ、世界各国で社会課題の解決の一助となり得る製品・サービスを提供しております。また、2024年12月にコアバリューを次のとおりにブラッシュアップし、パーパス及びビジョンの実現を目指す上でこれらの価値観を意識し、日々の業務に取り組んでおります。

達成 目標必達のため決めたことをやり遂げる

結束 永続的な成長を実現するためチームビルディングに努める

探究 社会のトレンドと独自技術を融合させ新たな価値を創造する

協働 多様性を尊重しアウトプットの最大化を図る

機敏 予測不能な変化や想定外の問題に対しスピーディーに行動する

当社グループのデシカント除湿機により、製薬、食品製造工程だけでなく、近年ではリチウムイオン電池等の製造に必要不可欠なドライ環境を提供することで、製造途中で発生するロスを削減し、製品自体の品質を維持することが可能であります。また、自動車製造、造船、半導体製造の工程で排出される有害なVOC(注1)のみを吸着・濃縮する当社のVOC濃縮装置(注2)により、排出ガスを効率的に浄化処理することが可能であるため、処理過程で排出されるCO2を抑えながらの大気汚染防止に貢献しております。さらに、電池製造工程で使われる溶剤を回収し再利用する用途にも使われており、顧客のサーキュラーエコノミー実現にも寄与しております。このように、当社グループは、顧客の抱える環境に関する課題、ひいては地球環境全体の課題を解決する一助となる製品・サービスを提供し、また当該製品・サービスの更なる改良や環境保全に貢献する新製品の開発を通して、クライメイト・ニュートラルの実現に寄与することを目指しております。

 

(注1)VOCとは、Volatile Organic Compounds(揮発性有機化合物)の略語で、浮遊粒子状物質(SPM)、光化学オキシダント、悪臭等を発生する大気汚染物質の一つであります。

(注2)VOC濃縮装置は、塗装、印刷、コーティング等の過程や、VOCを含む化学物質や原材料を使用する製造工場から主に排出されるベンゼンやトルエンといった有害なVOCのみを吸着・濃縮し、効率的な処理を行い、排ガスを浄化させるための、環境保全に貢献する装置であります。

 

(2) 経営環境

当社グループが属する業界の市場データが存在しないため、「デシカント除湿機」及び「VOC濃縮装置」に絞って記載をしております。

 

(デシカント除湿機)

デシカント除湿機の用途は多岐にわたり、食品や医薬、倉庫や輸送を含むロジスティック関連、発電所、及び近年特にEV用リチウムイオン電池といった急進産業で必要とされております。

2024年の世界人口は約80億人であり、2030年には85億人、2050年には97億人にまで増加すると予測されております。また、それに占める65歳以上の高齢者の割合は2022年の10%から、2050年には16%にまで増加するとされております(注1)。これらの人口動態のトレンドにより、食品及び医薬品産業の安定的な伸びが見込まれます。また、リチウムイオン電池を含む蓄電池は、2019年の世界市場規模は約5兆円であり、2030年には約40兆円、さらに2050年までに約100兆円に成長(注2)することが見込まれております。これらの各産業において今後も積極的な設備投資が期待されており、各産業の成長とともに、当社グループのデシカント除湿機の需要増加が期待されております。これらの産業の中でも特に近年はEV用リチウムイオン電池産業におけるデシカント除湿機の採用が増えており、当社グループのデシカント除湿機販売においても最重要市場として位置付けております。EV自動車への移行とともに更なる投資が見込まれ、今後も当社グループにとって需要拡大の機会であると認識しております。

 

(VOC濃縮装置)

VOC濃縮装置の用途も多岐にわたっております。自動車や船の塗装、半導体の製造、及びグラビア印刷の工程等で発生する揮発性有機化合物(VOC)やVOCを含む原材料を扱う生産拠点等で必要とされております。近年市場が拡大している半導体については、2018年に54兆円であった半導体関連の世界市場規模は、2030年には約100兆円に成長する見込みとされております(注3)。日本国内ではVOC排出に関して厳格に規制されていないものの、近年では特に、厳格なVOC排出規制が施行された中国や韓国において、施行前の対策措置として需要が急増する傾向がありました。現在、中国が最大の市場であり、韓国、ヨーロッパ、台湾、アメリカがそれに続きます。今後もこれらの市場において、本装置に使われている主要部品であるローターの交換需要が継続して発生すると認識しております。また今後は、インドや東南アジア諸国等、大気汚染が問題視されているにもかかわらず、これらの法規制が制定されていない国での需要増加を見込んでおります。

 

(注1)United Nations『World Population Prospects 2022』

(注2)経済産業省『「次世代蓄電池・次世代モータの開発」プロジェクトに関する研究開発・社会実装の方向性 2021年7月』

(注3)経済産業省『半導体戦略(概略)2021年6月』

 

(3)  経営戦略

上記のような経営環境のもと、当社グループは2024年12月期を初年度とする3か年を対象とした中期経営計画を策定し、その実現に向けて取り組んでおります。中期経営計画の概要は以下のとおりであります。

 

① 基本方針

当社グループのパーパスの実現を通し、新たな価値を提供することで、企業価値と社会価値の両立を図ることを目指し、また、2030年の当社グループビジョンの実現に向けての第1フェーズとして、持続的成長の土台づくりを目的として、以下の3つを2024年~2026年中期経営計画の基本方針としております。

1. コア事業で市場シェア拡大

2. 成長事業の本格始動

3. グループガバナンスの強化

 

② 数値目標

中期経営計画の最終年度である2026年12月期には、売上高360億円、営業利益率12%、EBITDAマージン15%、及びROE 13%を達成することを目標としております。

 

③ 戦略的方向性

エナジーデバイス領域

1. 車載用電池等、エナジーデバイス製造の最適環境創出のトータルエンジニアリングを提供する

2. デシカント除湿機の安定供給継続とともに、海外サービス事業を拡充する

半導体、半導体材料領域

1. 半導体材料製造に最適なクリーン環境のソリューション提案

2. VOC濃縮ローターの交換により、海外サービス事業を拡充する

その他の市場領域

1. 既存事業:既存の販売網を通じて継続的に伸ばす

2. 新規事業:2027年に年間10億円の事業規模を目指す

 

(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、持続的な成長を果たし、全てのステークホルダーの利益増大と企業価値の向上を目指し、営業利益率、EBITDAマージン、及びROE(自己資本利益率)を重要な経営指標としております。

 

(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

ウクライナ情勢等による原油価格をはじめとするエネルギー価格の高騰、米国による対中投資規制の影響等、複数の不確実要素が混在する中で、先行きは極めて不透明な状況であります。また、景気低迷に直面する中国市場をはじめ、企業間競争が激しくなることが予想されます。このような状況の中、当社グループを取り巻く状況も予断を許しませんが、引き続き、原材料価格や物流コスト上昇に対処すべく、生産効率化、業務効率化に注力、製品の安定供給を継続し、また、継続的に収益を確保できるサービス事業の海外展開により収益確保に繋げてまいります。

 

① 人材の育成

当社グループにとって、顧客の声に耳を傾け、顧客起点の製品開発を推進するための人材育成は最重要課題の一つと位置づけており、従業員のモチベーションの向上やスキルアップに取り組んでおります。さらに、世界各国で事業展開をしているため、グローバルに活躍できる人材の育成にも取り組んでおります。

また、全社的な労務管理を行うとともに、働き方の多様性を推進し、より良い労働環境の整備、運用に努めてまいります。

 

② 高品質、安全・安心な製品の安定供給

当社グループは、社会や業界を取り巻く法律や規制への対応に積極的に取り組むとともに、大規模な事故・災害等の発生に備えて、事業継続計画(以下「BCP」という。)を策定し、社員教育や災害訓練等によりBCPの周知徹底及び実効性の向上を図っております。

一方、経営環境に大きな影響を及ぼす、物流コストや原材料の価格と安定的な調達も大きな課題ととらえております。

 

③ 顧客ニーズに沿った製品開発と新しいマーケットの開拓

当社グループは、デシカント除湿機及びVOC濃縮装置を主力としております。

デシカント除湿機については、近年のEV普及に伴うリチウムイオン電池製造投資の増加により、売上は好調であります。特にEV用リチウムイオン電池製造投資が続く日本や米国で売上が伸長しております。一方、2023年上期まで当社グループの業績を売上・利益面で牽引してきた中国では、2023年度下期からの景気悪化や過剰な生産能力によるリチウムイオン電池製造投資の急減により売上が減少しております。

VOC濃縮装置については、当社がパイオニアということもあり世界市場でも認知度が高く、世界30か国以上の顧客に選ばれております。なお、排ガス規制が厳しく需要の大きい中国においては現地メーカーによる安価な製品が多く上市されており、競争が増しております。このような状況の中、当社グループは品質と性能で高く評価されており、現地の廉価な製品よりも高付加価値製品として市場でポジショニングが形成されております。また、EV用リチウムイオン電池の製造工程で使用されるVOCを回収して再利用する用途での使用が増えております。

当社グループにおいては、引き続き顧客ニーズを満たす製品を提供するとともに、海外主要拠点での24時間のサービス体制を構築し柔軟に対応することで、顧客と良好な関係を築き、当社グループのプレゼンスを高める取組を進めております。また、今後の成長機軸としましては、従来からの顧客の最適な製造環境と環境負荷低減に寄与する機器・装置販売を中心とするコア事業に加えて、顧客の製造工程における最適空間創出のためのシステムの提案、設計、製作、施工等のトータルエンジニアリングを成長事業として、コア事業及び成長事業をともに伸長させることで継続的な成長を目指してまいります。

なお、中長期的な視点から、将来的にリチウムイオン電池産業の伸びが緩やかになる可能性、又は、VOCを含まない代替塗料等が普及する可能性に備え、次世代製品の開発についても取組を進めております。

 

④ 生産性の向上

世界的なEVシフト加速に伴い、高まるデシカント除湿機への需要に応えるために、経営資源を最適活用し、組織・業務・生産活動の効率化に努めてまいります。欧米での今後の需要増加を見込み、Seibu Giken DST Poland SP. ZO.O.(グディニャ)の既存工場を増設し、Seibu Giken America,Inc.の工場を新設しました。また、福岡県宗像市に除湿ローターを生産する新工場の建設を予定しております。生産能力を上げることで収益力の向上に繋げてまいります。

 

⑤ グループ経営における社会的責任

当社グループの経営につきましては、社会的責任を果たすために、環境保全に積極的に取り組んでおります。当社グループの製品を使っていただくことで大気汚染防止に繋がり、顧客の製造過程で排出されるロスを削減し、また顧客におけるCO2排出量の削減にも繋がることから、当社グループの事業そのものが、2015年9月に国連持続可能な開発サミットで採択された「持続可能な開発目標:SDGs(Sustainable Development Goals)」の「12 つくる責任 つかう責任」及び「13 気候変動に具体的な対策を」等を達成することに繋がると考えております。

また、当社では2018年より企業主導型保育施設として「はにかむほいくえん」を運営しております。従業員の福利厚生としての側面だけでなく、地域の皆様の仕事と育児の両立をサポートできるよう、また、子どもたちの未来を地域で育むことを目標にしております。

さらに、科学技術に関する分野を専攻する大学院生や日本文芸の伝統等の活動を行う団体等に対する支援を行っている「公益財団法人隈科学技術・文化振興会」おります。意欲ある若手研究者の独創的、先駆的な研究開発、実用化に対する助成及び起業家の育成、また日本文化の発展と伝承に寄与することは、持続可能な社会の発展に繋がると考えております。

今後も事業活動を通じ、SDGsを始めとする社会課題の解決に貢献できるよう努めてまいります。また、適切な企業情報の開示やコンプライアンスを一層推進するため、コーポレート・ガバナンス体制の強化及び内部統制の充実に全力を投入いたします。

 

⑥ 収益力の向上

グループ各社をあげて、高付加価値製品の受注拡大を図り、製造時間の短縮や製造経費の更なる削減を継続して進め、利益確保に努めてまいります。また、利益率の高いサービス事業の海外展開を推進することで収益力の向上を目指してまいります。

さらに、Seibu Giken DST East Africaの早期黒字化及び債務超過の解消に向けて取り組んでまいります。

 

⑦ グローバルなグループ経営

国内外拠点の自立と連携を図り、各製造拠点の生産技術力の向上に努め、顧客に満足いただける品質、価格、納期及び製品開発をも含めた生産競争力の強化・充実に努めてまいります。

また、グループガバナンスの向上に向けた強固なグループ体制の構築に努めてまいります。海外のグループ子会社については、現地トップと当社経営陣が日常的に電話やWeb会議等で頻繁に情報交換することで、課題やトラブル等に対して協議しながら解決に当たっております。それに加えて2023年より、グループ会社の経営陣によるGlobal Management Councilを開催することとし、グループとしての方針や戦略の策定と進捗管理、予算管理、共有課題の抽出と解決を図っております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

当社グループでは、グループの経営理念に基づく事業活動により、環境及び社会の課題を解決し、社会や環境との融合を図りながら、サステナブルな社会の実現に寄与することを目指しております。

 

サステナビリティに関する基本的な考え方

・事業活動を通し、クライメイト・ニュートラルな未来実現に向けて貢献します。

・独創的な空気処理技術のイノベーションによりステークホルダーそして社会に向けての価値創造を目指します。

・世界中のステークホルダーと連携し、公正・誠実に業務を遂行します。

 

環境方針

当社では、日々の業務で環境負荷を低減し、クライメイト・ニュートラルな未来実現を目指しております。

① 環境配慮型製品・ソリューションのグローバル展開

地球規模での環境負荷低減に向けて、独自の技術や多様なイノベーションを活かした製品開発を行い、お客様の環境負荷低減に貢献できるソリューションをグローバルに提供します。

② バリューチェーン全体で環境負荷を低減

循環型社会の形成に向けて、責任ある調達をはじめ、資源や製品の3R (Reduce, Reuse, Recycle)及び有効利用を通し、バリューチェーン全体での環境負荷の低減に努めます。

③ 社会とのコミュニケーション

持続可能な社会の実現に向けて、環境関連の各国法規制やグローバルな社会的規範を遵守するとともに、社会とのコミュニケーションや連携を推進します。

④ 生物多様性保全

生物多様性を育む社会づくりに向けて、社内外の意識向上のための自主的な活動に取り組みます。

 

人権に関する基本方針

当社では「リスク・コンプライアンス規程」及び「コンプライアンス・マニュアル」を定めております。その中で、職場指針として、「人権尊重・差別禁止」及び「ハラスメントの禁止」を掲げております。あらゆる差別及びハラスメントを禁止し、個人の人権を尊重することで、一人ひとりの個性を尊重する企業風土の確立を目指します。

 

ダイバーシティに関する基本方針

多様な人材が相互理解と尊重に基づいて組織力を最大化することにより、経営理念である「独創と融合」の実現を目指します。そのため、当社では、社員一人一人がそれぞれの働き方やライフステージ、性別や国籍などの属性やコンディションにかかわらず、誰もが最大限にパフォーマンスを発揮できる状態を作ることに取り組んでおります。

 

(1) ガバナンス

当社では、ステークホルダーの皆さまに提供する価値の向上に資する経営資源の配分や戦略の実行が適正になされているか、サステナビリティに関する事項を含め経営会議等で確認した内容を取締役会へ報告し、審議することで監督をしております。

 

(2) リスク管理

当社運営に関する全社的・総括的なリスク管理の報告及び対応策検討の場としてリスク・コンプライアンス委員会を設置しております。各事業部長は担当部門のリスク管理責任者として日常の業務活動におけるリスク管理を行うとともに、関係する法令等の内容及び改廃動向を部員に伝達し、不測の事態が発生した場合にはリスク・コンプライアンス委員会へ報告することになっております。

なお、気候変動をはじめとした環境配慮を行うことは事業においてのリスクを低減するとともに新たなビジネス機会や経営体力の強靭化にも繋がると考えております。当社ではリスクの最小化と機会の最大化を目指して取組を推進してまいります。

カテゴリー

リスク

機会

気候変動

政策的

・規制等が強化される際の対応コスト

・取引先企業による気候変動への対応要請

・カーボンプライシングによるコスト増

・ESG等への対応の遅れによる損失

・情報開示の遅れによる機会損失

物理的

・自然災害による資産や設備へのリスク

・温暖化進行による作業環境の悪化リスク

 

・企業としての価値や評価向上

・ムリ/ムダ/ムラの削減による効率化

・エネルギーコストの安定化

・金融機関等との連携拡大

・新たなサービスや製品/システムの開発

排出物

・周辺環境への影響リスク

・従事者の健康影響

・モニタリングや対策による信頼獲得

・労働安全衛生環境の向上

資材

・資材等の減量規制やコスト増リスク

・代替素材の検討や総量削減による効率化

 

 

(3) 環境

① 戦略

当社では「西部技研『環境アクション2030』」として、2050年のクライメイト・ニュートラル実現に向け、当社の重点項目として3つの活動目標を定めております。これらの活動を通し、 2015年に国連で採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)のうち、「目標12:持続可能な生産消費形態を確保する」のターゲット「12.5: 2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」、及び「目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」のターゲット「13.3: 気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する。」の実現に寄与することを目指しております。

a.アクション1. 電力消費由来CO2排出量の削減

b.アクション2. 当社製品・サービスの開発及び提供による環境貢献量の拡大

c.アクション3.バリューチェーン全体での環境負荷把握と削減

また、上記の直接的なエネルギー対策以外にも、PRTR対象物質の把握・削減の取組や、使用溶剤をより低負荷な物質に切り替えるといった取組も進めております。

 

② 指標及び目標

西部技研『環境アクション2030』に基づき、各アクションにおいて以下の指標及び目標を掲げております。なお、当社においては活動目標の達成を目指し具体的な取組が行われているものの、連結グループに関する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

a アクション1.電力消費由来CO2排出量の削減

(a) 中長期的な温室効果ガス排出量の削減目標

脱炭素社会の要請が高まる中、当社としての中長期的な目標を設定しました。2030年までは再生可能エネルギーの導入と省エネ活動を進めることで電力由来の排出量の削減に取り組んでまいります。その後、技術発展と歩調を合わせて2050年に向けて燃料由来の削減に取り組んでまいります。

●中期的対策活動

- 再生可能エネルギー導入

- 省エネルギー設備活動推進

●長期的対策活動

- 電化推進

- 水素等最新技術への適合

- 工場レイアウト等を含めた効率化

 

(b) 現状のCO2排出量とその構成

当社の2023年の温室効果ガス排出量は約4,797tです。そのうちの約半分は化石燃料利用由来に伴うもの、残り半分は電力利用に伴う排出であります。短期的には電力由来の排出削減に対してのアプローチを推進してまいります。一部で導入を決定している太陽光発電設備などの再生可能エネルギーの活用、工場における断熱や運用改善によるエネルギー効率向上に向けた取組をより一層進めることが必要であると考え、当社ではGXリーグ(注)に参加しております。

(注)GXリーグ:2050年カーボンニュートラル実現と社会変革を見据え、グリーン・トランスフォーメーションヘの挑戦を行い、持続的な成長実現を目指す企業が、同様の企業群・官・学と協働する場

温室効果ガス排出量の内訳(2023年1月~2023年12月)

分類

排出量(t-CO2/ 年)

主要排出源

Scope1

2,242t

    46.7%

本社・各工場での化石燃料燃焼に伴う排出

Scope2

2,555t

    53.3%

本社・各工場の電力利用に伴う排出

 

 

(c) 2030年までの温室効果ガス排出量削減計画

  まず自社での直接的な排出削減活動を進めることでエネルギーコストの低減や安定化を目指します。

当社では国内に5つの工場を稼動しております。これらの工場及び研究開発を行うイノベーションセンターにおける排出削減に向け、各拠点で日々の省エネ活動を推進するだけでなく、一部の拠点では再生可能エネルギーの導入を決定しております。また、社会の要請に応じて非化石証書等を活用した再生可能エネルギー電力の調達やカーボンニュートラルガスの導入についても検討してまいります。

 

b アクション2. 当社製品・サービスの開発及び提供による環境貢献量の拡大

  当社は、当社製品利用顧客企業の環境負荷削減に寄与する製品をご提供しております。これは顧客企業のScope1又はScope2の削減の貢献に繋がるものであり、当社ではScope3の中で評価される項目となります。

  VOC濃縮装置は、工場等の大風量の排ガスに含まれる低濃度のVOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を小風量化かつ高濃縮化することによって、大幅な酸化分解燃焼装置の小型化、燃料の削減が可能となり、CO2削減に貢献いたします。当社のVOC濃縮装置の利用によって顧客が削減しているCO2は、年間約200万トン(内燃機関自動車約10,000台分の年間CO2排出量に相当)と推計しております。

  また、全熱交換器は、空調換気時の排気からの熱回収によるエネルギー削減、CO2削減に貢献いたします。当社の全熱交換器の利用によって顧客が削減しているCO2は、年間約20万トン(5~10階建て中規模ビル10棟の年間CO2排出量に相当)と推計しております。

 

c アクション3.バリューチェーン全体での環境負荷把握と削減

環境配慮は様々な領域にわたり、当社の事業活動のバリューチェーン全体を通して様々な側面で環境への影響があると考えております。当社は製品の機能や便益を損なうことのない無理のない形で低減を図ることの重要性や製造業者としての社会的な要請として求められるであろうことを考え、以下のような取組について推進や検討を進めております。

環境活動

実施年度

効果

KPI

廃棄物の削減

継続実施

CO2削減資源効率向上

産業廃棄物処理量

自社製品の環境負荷低減のための開発・設計 (Design for Environmentの推進)

継続実施

CO2削減資源効率向上

共通部品数

製品単位での環境負荷の評価・把握

2026年

トレーサビリティ確保

把握製品数

中長期的な生産効率性向上の検討

長期検討事項

生産環境改善

検討実施有無

 

 

(4) 人材活躍

当社においては活動目標の達成を目指し具体的な取組や関連する指標のデータ管理が行われているものの、連結グループに関する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の戦略、指標及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

① 戦略

当社の人材活躍方針は、経営理念「独創と融合」を体現し、パーパス及びビジョンを実現することを目的としています。即ち、個を活かす=個人の独自性と創造性の尊重、チームワーク重視=組織としての成果をあげる、という相反するこの二つの視点を高次元でバランスすることにより、ダイバーシティ&インクルージョンを実践し、付加価値の向上を図っております。

当社の成長戦略として、当社のコア事業である装置・機器販売事業の着実な進化とともに、今後の成長事業としてのトータルエンジニアリング事業の強化を行うことを掲げています。この戦略の実現に当たっては、多様な価値観やスキルを持つ人材を確保すること、既存技術の深耕と新規技術の獲得を両立しながら、共通の目標達成に向けて行動する人材を育成すること、そしてこれらの多様な人材の働く土台を支える社内環境を整備することが最も重要であり、独創と融合を実現するための人的資本戦略となります。

a 人材の多様性の確保に関する戦略及び取組

事業の変化に応じて、年齢・性別・国籍等を問わない多様な人材の採用を積極的に行うとともに、それぞれの特性や能力を最大限に活かせる職場環境の整備を行っています。

・中途入社人材の採用

今後の事業戦略の実現に必要な知見・技術を持つ人材を中途採用として積極的かつ計画的に採用しています。2024年度の入社者のうち88%を中途入社人材が占めています。なお、これらの中途入社人材が定着し活躍するための導入としての入社時教育及びフォローアップ面談・研修の機会を随時充実させています。

・女性の採用

当社は事業特性により技術系人材の需要が高く、当社の女性社員比率は2024年度に21.4%と、産業分野においても比率がやや低いという課題を抱えております。この課題を解決するため、特に新卒採用において、女性の採用割合を5割以上とする目標を掲げ、女性採用を積極的に推進しております。

・外国籍人材の採用

海外市場における事業展開及び当社グループ会社との連携において、国籍を問わない人材の活躍は非常に重要となります。新卒採用における留学生ネットワーク形成を重視するとともに、中途採用においても外国籍人材の採用を積極的に推進しております。

b 人材育成に関する戦略及び取組

人材育成は職場でのOJT及び部門内教育が中心にありながらも、全社教育において、各階層のステージに合わせた階層別研修に加え、新たな技術や知識の習得についての自律的な学びを支援しています。また、西部技研のビジョンを達成するために重視する行動指針の策定により、共通の目標達成に向けて行動する人材の育成に努めています。

・自律的な学びの支援

事業戦略上必要な資格の取得を推奨するため、資格取得支援金制度を設けて自律的な学びと資格取得を促しています。また、資格取得に直結しないビジネスリテラシー向上のため、手挙げ式研修の社内開催及び自ら受講項目・受講方法・受講日を選択して申し込むことのできる個人別の自己啓発研修申込機会を全社員に付与し、業務や勤務地を問わず自律的に学ぶ人材の育成に努めています。

また、上記自己啓発研修に加え、グローバル事業展開のために必須となる英会話講座の受講支援も行っています。

・改善提案活動

飽くなき挑戦や改善を創出し、生産性の向上を図るため、改善提案活動に力を入れています。個人を中心に行う「P-UP提案制度」と、チーム単位や部門横断で行う「QC活動・VC活動」が存在し、月間及び年間表彰を行っています。

・人材育成会議

2024年度より、当社経営層が社員の人材育成について認識を共有し、中長期目線での戦略策定と実践に繋げるため、「人材育成会議」を組織し、定期的な議論を行っています。

当該事業年度は、当社グループPVVを基に、当社が目指す姿や社員のあるべき姿の解像度を高め、共通の目標達成に向けてより主体的に行動する人材育成に繋げるため、2024年12月にコアバリューのブラッシュアップを行いました。2025年度以降、このコアバリューを全社に浸透すべく、研修及び人事評価におけるコアバリュー評価の導入を進めていきます。

c 社内環境整備に関する戦略及び取組

当社では、ワークライフバランス(仕事とプライベートの適切な調和)から、ワークライフシナジー(仕事とプライベートの相乗効果の最大化)へと働き方をシフトしていくことを目指しています。

一人一人が働きやすさと働きがいを高めていくため、直近では以下の内容を重点施策として取り組んでおります。

・多様な働き方

生産性向上のため、企画部門等導入可能な部門におけるテレワーク制度に加え、育児・介護等の事情に応じて利用できるフレックス勤務制度を導入しています。また、男性育児休業の推進やポジティブオフ休暇(有給休暇連続5日間取得)の推奨により、仕事を離れたプライベートの活動充実によるシナジーを期待しています。

・労働安全衛生

月1回の安全衛生委員会活動による議論及び職場巡視を中心に、各職場の安全衛生向上に努めるとともに、年間表彰を通じた職場環境づくりのモチベーションアップに努めています。

・健康経営

当社はこれまでも長時間労働者へのフォローや健診の充実を通じ、社員の健康維持に努めてきましたが、健康な社員がより生き生きと活躍し、現場の生産性や品質・技術力向上に繋げるために、2025年1月に健康経営推進委員会を設立し、西部技研健康経営宣言を策定しました。

今後は健康経営に関する各種課題に対し、委員会による定期的なモニタリングを行いながら施策を実践してまいります。

d 各種モニタリング

上記a~c及びその他の人材活躍に関する施策の効果や、職場環境の実態を把握し改善に努めるため、定期的なエンゲージメントサーベイ及びストレスチェック時のサーベイ・集団分析を行っております。

2024年度よりエンゲージメントサーベイを導入し、年2回実施いたしました。全社及び職場単位の傾向と変化を分析し、課題の抽出及び優先順位を付けた対応を随時実施しています。

年に1回のストレスチェック時においては、集団分析を実施するとともに、2024年度よりハラスメントに関するサーベイを実施しました。これにより、個人・組織の心身の健康状態とこれに影響する職場ハラスメントの実態を把握し、職場単位での改善や、ハラスメント研修による啓蒙活動を実施いたしました。

 

② 指標及び目標

上記戦略及び取組に関する主な指標と目標は以下のとおりです。

指標

目標

新卒社員採用時における男女比率
(人材の多様性の確保)

男女比率 1:1(女性比率50%以上)

→2024年実績:達成

(2025年入社予定者も達成予定)

手挙げ式スキル研修の実施及び受講率
(人材育成)

集合研修:年4の実施

→2024年実績:達成

個別研修:全社員の受講率50%以上(2025年度より設定)

男性育児休業取得率
(社内環境整備) 

男性育児休業取得率 50以上

→2024年実績:達成(66.7%)

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。ただし、以下の事項は、当社グループに係る全ての事業等のリスクを網羅的に記載したものではなく、記載された事項以外にも予測し難い事業等のリスクが存在するものと考えます。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資判断、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な開示の観点から記載しております。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業環境の変化に関するリスク

①原材料の供給及び価格について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

当社グループ製品の製造に使用する原材料及び部品類の仕入先における事業継続不能な不測の事態の発生、原料不足や経済環境の激変等何らかの理由により、必要な原材料等の適正な価格での適正な量の確保が困難になった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

  また、当社グループの製品の大半に特定の取引先(以下この項目において「取引先」という)から調達する原材料を使用しております。取引先とは取引基本契約を締結しており、現時点においても当該契約の継続に支障となる要因は発生しておりませんが、将来において何らかの予期せぬ要因により、契約の変更や取引の縮小等が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループでは、当該取引先との良好な関係を維持できるよう努めると同時に、複数購買による購買ルートの検討、確保等を進めることにより、安定した原材料及び商品の調達に努めております。

また、取引先との取引については、何らかの要因により、取引先からの供給が困難になった場合であっても、取引先において常時3か月間の在庫を継続運用するといったBCP対策も確認しており、また取引先との取引継続が困難になった場合であっても、契約上、供給停止に至るまでの猶予期間を設けております。これらの猶予期間内で、取引先による製造体制の復旧、また当社の他の製品に使用している原材料への置き換え、もしくは他社から代替品の調達は可能であります。このように、当社の生産が停止するような重大な影響を及ぼす事態にならないよう努めております。

 

 

 

 

 

 

②市場環境について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

当社グループは、デシカント除湿機、VOC濃縮装置、全熱交換器等の製造販売及び据付・保守管理を主要事業として展開しており、当社グループの売上高は、基本的には顧客の設備投資動向に影響を受けやすい傾向にあります。

  経済情勢の変化等の影響を受け、顧客の投資計画の中止・延期、内容の変更等により、想定を上回る需要の減退が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

スウェーデン、ポーランド、アメリカ、中国、韓国等の各子会社との緊密な連携のもと、現地で製造を行い、ヨーロッパ、アメリカ、アジアをはじめ、約50か国にその販売網を広げており、特定地域の需要動向に影響を受けにくいビジネスモデルを構築しております。また、国内においては客先納入後のメンテナンスサービスまで自社サービスとして提供しており、当該収益は需要動向の影響を受けにくく、事業の下支えとなっております。今後、海外でもサービス提供を拡充してまいります。

 

 

 

 

 

 

 

③競合について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

当社グループは、事業を展開する市場において、価格、機能や納期を含む様々な要素での競争に晒されております。競合他社による画期的なコスト低減策や強力な価格政策等により当社グループの製品が価格競争力を失う場合には、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

対応策

顧客のニーズを満たす製品開発・改良、サービス体制の強化、積極的なソリューション提案を重ね、価格競争が激化する市場において、高付加価値を提供する当社グループのポジショニングを維持できるよう努めてまいります。さらに、グローバル市場で勝ち残るため、引き続き世界主要拠点での生産体制を維持し、同時にコスト削減の追求等にも取り組んでまいります。

 

 

 

 

 

 

④海外事業について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 当社グループはグローバルに事業展開をしており、当社グループの業績は国内の景気動向とともに、海外諸国の経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等に影響されます。今後の内外経済環境の先行きについては引き続き不透明な状況にあり、社会情勢の混乱及び地政学的リスク等が現実化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

  米中貿易摩擦、新興国の成長鈍化、中東及び北朝鮮での地政学的リスクの増大等により世界経済が低迷する場合、当社グループの主要な販売地域にも悪影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループを取り巻くマクロ経済環境について注視しながら事業展開を進めていく方針です。

 

 

 

 

 

 

(2)当社グループの事業活動に関わるリスク

①安全性について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

 国内外の当社グループ及び顧客やパートナー企業において、地震、台風等の自然災害や、人的・物的事故により、施設や機能の全て又は一部が停止する事象が発生した場合、サービスを提供できないことで、損失が出るおそれがあります。

  重大な事故・労働災害等が発生した場合、当社グループの社会的信用に重大な影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社グループの一部施設や一部地域の事業が停止する事象が発生した場合においても、他施設や他地域で事業をカバーできるよう、グループ間連携の強化等に努めております。

 製造及びサービスメンテナンスに携わる社員及び協力会社等への安全教育を徹底することにより事故防止に努めております。

 

 

 

 

 

 

 

②為替レートの変動について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

 当社グループは、国内外で事業を行っているため、為替レートの変動の影響を受けます。為替レートの変動は、常に当社の事業活動の成果や海外資産の価値及び生産コストに影響を与えるため、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへ影響を及ぼす可能性があるとともに、事業活動の結果について期間ごとに比較することを困難にする場合があります。また、為替レートの変動は、当社グループと海外の競合企業が同一市場で販売する製品の価格競争や、当社の事業活動に必要な輸入品の仕入価格にも悪影響を及ぼす場合があります。

対応策

 為替レートの変動について、主に短期の為替予約を行うことにより、この影響の軽減に努めております。

 

 

 

 

 

 

③取引先の情報管理について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 当社グループでは事業の過程で取引先の機密情報や顧客の個人情報を受け取ることがあります。また、当社独自の営業秘密や従業員の個人情報も取扱っており、意図的な行為や過失等により外部に流出する可能性があります。これら情報の流出により賠償責任が生じる可能性があり、対策のための多大な支出が発生する可能性があります。また、当社グループの事業やイメージが悪影響を受ける可能性があります。

これらの結果、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 「情報セキュリティ管理規程」を制定し、これらの重要な情報を適切に扱うよう全従業員に周知徹底をしております。

 

 

 

 

 

 

④新製品及び新技術開発について

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

 市場ニーズに対してタイムリーに新製品を提供できなかった場合や新製品が市場ニーズに適合しなかった場合、異業種メーカーの参入によるサプライチェーンの再編や予期せぬ新技術の台頭があった場合等は、収益性や成長性が低下する等当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

CO2の濃縮等の次世代技術開発をはじめとして、模倣困難性の高い新製品及び新技術の開発を行っております。

 

 

 

 

 

 

⑤製品の品質について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 製品の品質や安全性において重大な欠陥が発生した場合、その欠陥に起因した損害賠償の発生や製品品質への信頼の低下等を招き、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループは、国際標準化機構(ISO)の品質マネジメントシステムに基づき、万全の品質管理体制を整え、製品の設計・製造を行い欠陥の発生を抑えるように努めております。また、新製品の開発を担う当社では、設計審査(デザインレビュー)を通してリスクアセスメントを実施しております。

 

 

 

 

 

 

⑥倫理的な業務遂行について

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 当社グループでは、国内外の法令、慣習その他全ての社会規範を遵守して事業活動を行っておりますが、それらに反する事象が発生した場合、法的制裁や社会的信用の失墜に伴う受注機会の減少により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社グループでは、決して法令違反を起こさないことを基本方針とし、リスク・コンプライアンス委員会の下、グループ全ての役員及び従業員に対して「Seibu Giken Group Policies and Procedures Guideline」(以下「グループガイドライン」という)及びグループのCore Valuesの周知徹底を図っております。「グループガイドライン」は、子会社が所在する各国の法規制や商慣習の違いにかかわらず、当社グループとして遵守すべき倫理的な事項をコンプライアンスの観点からまとめており、職場環境方針、法令・規制遵守、職務権限、文書管理等全14項目の重要項目を網羅しております。なお、当社との協議・承認が必要な事項及び報告事項を明確にするための「職務権限表」もこの中に定めております。

当社においては、内部通報制度の設置等、違法行為や不適切行為の防止及び早期解決を図る枠組を整備しており、階層別・職種別等の各種コンプライアンス研修においては、独禁法、下請法、建設業法、個人情報保護法等の法令や、贈収賄の防止等、幅広くコンプライアンス・倫理に対する意識・知識の向上を図っております。

  さらに製造部門においては品質検査データの不正を防止するため、各部門の自主点検と品質保証部による監査の実施と啓発活動により、不正発生の芽を摘み取る活動を実施しております。

 

 

 

 

 

 

⑦人材の確保及び育成について

発生可能性:大

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

 当社グループは、技術、販売、管理面において優れた人材を確保する必要があると認識しております。さらに、世界中で事業展開をしているため、グローバルに活躍できる人材を獲得するとともに、そのような人材を育成する必要もあると認識しております。近年、優秀な人材の獲得競争はますます激しさを増してきております。本格的な人口減少社会を迎え、一層の経済規模の縮小が懸念される中、新たな人材を確保し、既存の人員を含めた人材を育成することは企業の維持と成長に必須であると考えております。人材の確保及び育成が円滑に進まず、あるいは当社グループの優秀な人材が社外に流出する状況になった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 ダイバーシティや健康経営の推進等、良き社風(企業文化)を醸成し、従業員エンゲージメント調査を定期的に実施し、その結果に基づきより働きやすい労働環境の整備を進めることで人材確保・定着に努めております。

 

 

 

 

 

 

  (3)法的規制・訴訟等に関するリスク

①法的規制について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 当社グループは、国内外において事業を展開しており、各国の法的規制の適用を受けております。予想外の規制の変更、法令適用や政府の政策運用の変更等により、当社グループの事業、経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

全ての役員及び従業員が、行動規範の基本原則である「法令遵守」に努め、また公正で透明な企業風土の構築に努めております。また、「グループガイドライン」を定め、運用体制を整備し、当社グループ全体での厳格な運用に努めております。

 

 

 

 

 

 

②環境関連の法規制

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 当社グループは、排水、排気、騒音、廃棄等における環境汚染に関する様々な環境法及び規制の適用を受けており、現在及び過去の生産活動に関わる環境責任に伴う費用負担や損害賠償が発生する可能性があり、当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があります。

  また、将来、環境に関する規制がより一層厳しくなった場合には、設備の改修、入替、増設等のために多額の支出が生じ、これにより当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 環境法及び規制への遵守のために必要な経営資源を投入しております。

 

 

 

 

 

 

③訴訟について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:小

リスク認識

 当社グループは、製造、工事施工等の事業活動を行っており、それらが訴訟や紛争等の対象となる可能性があります。対象となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは、当社の中国子会社が売上債権の回収を目的とした訴訟を提起している案件はありますが、全係争金額が当社グループ売上に占める割合は僅少であり、現時点において業績に重大な影響を及ぼす訴訟を提起されている事実はありません。 

対応策

 訴訟を回避すべく、取引先とトラブルが発生しないよう日頃から適正な業務運営に努めております。また月1回開催しているリスク・コンプライアンス委員会におきましても、訴訟に繋がるおそれのある大きなリスクの管理強化、低減策実行を図っております。

 

 

 

 

 

 

 

④知的財産権について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 当社グループは、特許権は研究成果を事業化し、市場を獲得する上で極めて重要であると考えております。コア技術を活かすシステムフロー等、応用技術分野での特許権取得に注力しております。また、商標権も、当社製品をブランド化し他社製品との差別化を明確にする上で有効なものであると考えており、日本だけでなく海外での取得も積極的に行う必要があると考えております。このような特許権をはじめとする知的財産権等が取得できずに当社グループが使用する技術等を保護できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 一方で、特許出願時に技術情報の公開が求められるため、特許出願自体が、当社の重要性及び秘匿性の高い技術等の流出のリスクに繋がります。そのような場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

  当社グループが現在販売している製品、あるいは今後販売する製品が第三者の知的財産権に抵触する可能性を的確・適切に判断できない可能性があり、また、当社グループが認識していない特許権等が成立することにより、当該第三者より損害賠償等の訴えを起こされる可能性があります。そのような場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

当社が知的財産権等を取得できずに当社グループの事業に影響を及ぼす可能性のある技術等については「知的財産管理規程」の方針に則り、積極的に取得しております。一方、当社事業の根幹となるハニカムローターの製造技術等については特許出願による技術情報の公開を回避するため、戦略的に出願しない方針をとっております。また、他社の知的財産権に対する侵害のないようリスク管理に取り組んでおります。

 

 

 

 

 

 

   (4)自然災害等に関するリスク

自然災害等に関わるリスク

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 地震・火災・洪水・感染症等の自然災害への対策には十分注意を払っておりますが、開発・生産拠点及び取引先等の事業活動が停止した場合、また、それらの災害に起因して電力・通信・交通等の社会的インフラに問題が生じたことで事業活動が中断した場合、生産や出荷に遅延が生じるおそれがあり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 国内生産体制は5拠点(第一工場・第二工場・第三工場・宗像工場・湘南工場)、海外生産体制も中国、スウェーデン、ポーランド、アメリカの7つの製造拠点での生産とリスク分散に努めております。

 

 

 

 

 

(5)財務状況に関わるリスク

①債権回収遅延等について

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

 当社グループでは、過去に海外子会社にて多額の債権の未回収が発生しておりましたが、取引先ごとに売上債権の回収状況、滞留状況のチェックを強化し、滞留債権の発生の低減に努めております。今後もさらに当社グループ全体で債権管理を強化し、滞留債権の発生防止に努めてまいりますが、取引先の業績悪化等による売上債権の回収遅延や貸倒れが発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 取引先の情報収集を行い、与信枠を設定し、与信管理を実施しております。また、海外や新規取引先とは原則前受金での取引を実施する等、取引条件を厳格化し、さらに、営業社員の回収意識を高める目的で、与信管理に関する教育を実施するとともに、回収に対するインセンティブ制度を導入する等の債権保全リスクを最小化するための施策や回収が進まない場合には法的措置による回収に取り組んでおります。

 

 

 

 

 

 

②有利子負債について

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

当社グループの有利子負債は、2024年12月31日現在で、長期借入金1,342百万円、総資産に対する割合は3.1%となっております。業務運営に有利子負債を活用しているため、新たに借入れを行うことが困難となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 これらのリスクに対して当社グループでは、有利子負債残高を適切に管理することに加え、資金調達の多様化を進めることで流動性の確保に努めております。

 

 

 

 

 

 

③大株主について

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

当社の代表取締役社長執行役員である隈扶三郎は、当社の大株主(支配株主)であり、自身の資産管理会社である株式会社グリーンフューチャーの所有株式数を含めると当連結会計年度末日現在で発行済株式総数の35.16%を所有しております。当社といたしましても、隈扶三郎は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により、大株主である隈扶三郎の持分比率が低下した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 当社の代表取締役社長執行役員である隈扶三郎は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使に当たっては株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。

 

 

 

 

 

 

 

④大株主 (公益財団法人隈科学技術・文化振興会)との関係について

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:小

リスク認識

公益財団法人隈科学技術・文化振興会は科学技術に関する分野を専攻する大学院生に対する奨学金事業及び日本文芸の伝統等の活動を行う団体等に対する支援事業を行うことを目的とした公益財団法人であり、本書提出日現在、当社株式3,000,000株を保有しております。同財団は、1997年に当社の創業者である隈利實が死去した際、取引先、友人から隈利實の名前を何らかの形で残そうという機運が高まりお金が寄せられたため、故人の遺産を集めて「隈基金」が個人的に設立され、2003年4月には任意団体「隈基金」を「NPO法人 国際科学技術・文化振興会」として組織化しました。2019年にはその基盤をさらに安定させるべく、一般財団法人 隈科学技術・文化振興会を設立し、NPO法人の事業を引き継ぎ、2021年4月に公益認定をいただき、公益財団法人隈科学技術・文化振興会として活動しております。

当社代表取締役執行役員隈扶三郎は同財団の代表理事を兼務しておりますが、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律第5条10号(注)において公益財団法人の理事及び監事の構成に関する制限がなされており、同財団における隈扶三郎及びその親族が理事会に占める割合は限定的となっております。役員構成は下表のとおりです。

代表理事

隈 扶三郎

当社 代表取締役社長執行役員 

理事

田名部 徹朗

㈱三松  代表取締役社長 

理事

清須美 匡洋

九州大学 名誉教授

評議員

下薗 誠

当社 常務取締役

評議員

矢野 彰一

㈱矢野特殊自動車 代表取締役社長 

評議員

濵田 弥亜

公認会計士

監事

篠原 俊

公認会計士・税理士

 

(注)各理事について、当該理事及びその配偶者又は三親等内の親族(これらの者に準ずるものとして当該理事と政令で定める特別の関係がある者を含む。)である理事の合計数が理事の総数の三分の一を超えないものであること。監事についても、同様とする。

 

当社といたしましては、同財団の活動に賛同し、優秀な学生を将来当社に採用することを見込むとともに、当社のCSR活動の一環として、同財団しております。

同財団は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、当社株式の議決権行使に関しては同財団が独自で判断するものと理解しております。当社株式における議決権行使については当財団の定款に定められているとおり、理事会による3分の2以上の承認を要するため、当社の代表取締役社長執行役員である隈扶三郎個人の意向に左右されるものではありません。当社代表取締役社長執行役員は、同財団の保有する当社株式に係る議決権行使について関与をしない方針です。

同財団は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により、当社株式の保有方針を変更した場合、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 公益財団法人隈科学技術・文化振興会は、安定株主として引き続き一定の議決権を保有し、その議決権行使に当たっては株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。

 

 

⑤一定の期間にわたる工事取引の収益認識について

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

当社グループは、一定の期間にわたり履行義務の充足が認められる工事(デシカント除湿機を使用したドライルームの施工等)について、履行義務の充足に係る進捗度に基づき収益を認識しております。進捗度の測定は、当連結会計年度末までに発生した工事原価が工事原価総額に占める割合(インプット法)に基づいて行っております。なお、当連結会計年度の売上高に占めるインプット法による売上高の割合は8.3%であります。

工事等の完成のために必要となる作業内容及び工数の見積りの見直しが必要となった場合、翌連結会計年度の連結財務諸表に影響を及ぼす可能性があります。なお、主要な顧客との間で、中途解約の発生及び災害、工事遅延等による追加コストの発生並びに技術・製品トラブル等に伴うペナルティの発生等、当初見積った工事原価総額を上回るコストが発生した場合、翌連結会計年度の連結財務諸表に影響を与える可能性があります。

対応策

これらのリスクに対して、当社グループでは工事原価総額は、工事案件ごとの仕様や工期といった契約内容を精査の上、機器・資材の調達先や工事業者からの見積りや過去に積み重ねてきた実績・経験・ノウハウに基づき、単価・数量・作業工程・作業工数等の主要な仮定を設定し、期末決算日までの進捗状況を踏まえて、最善の見積りを行うことで見積原価総額の精度向上に努めております。

 

 

 

 

 

⑥固定資産の減損に関するリスクについて

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

  当社グループは、今後、事業を成長拡大させるために、生産能力の増強及び新規事業の立ち上げ等のために投資を行う可能性があり、将来においてこれらの投資を行った場合に、事業環境の変化等により当初想定した効果が得られない場合、有形固定資産又は無形固定資産の減損処理等によって当社グループの業績、財政状態及び事業計画に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

  当社グループでは、これらの当該投資の意思決定に際しては、詳細な調査、分析を行い、その結果を基に取締役会において十分な検討を図り意思決定を行うことでリスクを低減するように努めております。

 

 

⑦資金使途に関するリスクについて

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

リスク認識

  東京証券取引所への上場に伴う公募増資資金に関しましては、デシカント除湿機のローターの生産設備及び完成品の組み立て工場等、生産能力を増大させる投資に充当する予定でおります。しかしながら、経営環境の変化等の理由により、調達資金が予定どおり使用できない場合、また投資効果が期待どおりの成果を上げられない場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

  当社グループでは、これらの当該投資の意思決定に際しては、詳細な調査、分析を行い、その結果を基に取締役会において十分な検討を図り意思決定を行うことでリスクを低減するように努めております。

 

 

⑧配当政策に関するリスクについて

発生可能性:小

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:小

リスク認識

 当社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、将来の事業展開と財務体質の強化のために必要な内部留保資金を確保しつつ、業績及び将来の見通しを総合的に勘案して、連結配当性向40%以上を目標として配当を実施してまいりたいと考えております。しかしながら、当社の業績が計画どおりに進展しない場合には配当を減少もしくは実施できない可能性があります。

対応策

 当社グループは、収益力を高め、企業価値の向上を行うことで、安定的に配当できる財務基盤の構築に努めてまいります。

 

 

   (6)代表者への依存のリスク

代表者への依存のリスク

発生可能性:中

発生する可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

リスク認識

 当社代表取締役社長執行役員である隈扶三郎は、大株主であり、経営方針や事業戦略の決定において重要な役割を果たしています。何らかの理由により隈扶三郎が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対応策

 隈扶三郎に過度に依存しない体制を作るために、取締役会等における役員間の相互の情報共有や経営組織の強化を図っております。

 

 

 

 

 

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産は30,710百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,333百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金の増加(11,638百万円から14,442百万円へ2,804百万円の増加)、売上債権の回収に伴う受取手形、売掛金及び契約資産の減少(8,309百万円から6,883百万円へ1,425百万円の減少)及び受注増加に伴う商品及び製品の増加(1,007百万円から2,509百万円へ1,501百万円の増加)等によるものです。固定資産は12,085百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,127百万円増加いたしました。これは主に在外子会社の新工場稼動に伴い建物及び構築物(純額)が1,770百万円増加し建設仮勘定が735百万円減少したこと、KUMYOUNG ENG CO., LTD.との業務提携により投資有価証券が484百万円増加したこと等によるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債は11,667百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,037百万円増加いたしました。これは主に、受注高の増加に伴い契約負債が1,407百万円増加したこと、返済に伴い一年内長期借入金が377百万円減少したことによるものです。一方で、固定負債は1,170百万円となり、前連結会計年度末に比べ739百万円減少いたしました。これは主に、長期借入金が325百万円、中国子会社でのリース条件変更によりリース債務が354百万円減少したことによるものです。

 

(純資産)

 当連結会計年度における純資産は29,957百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,162百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上及び配当金の支払により利益剰余金が2,106百万円、円安の進行により為替換算調整勘定が1,048百万円増加したこと等によるものであります。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢や中東情勢の地政学的リスク、エネルギー価格や原材料価格の高止まり、各国経済の減速見通しや不安定な為替相場等、依然として先行きが不透明な状況が続いております。加えて、脱炭素化に向けた世界的な流れは、欧州の政情不安や米国新政権動向等により、一部の国や市場において停滞が懸念されております。このような中、当社グループは、EV普及に伴うリチウムイオン電池業界での設備投資需要の高まりを背景に、特に日本や北米向けを中心にデシカント除湿機のシェア拡大に繋げるべく受注活動の強化を進めました。

その結果、当連結会計年度におきましては、中国経済の停滞が引き続き影響し、中国向けのデシカント除湿機の売上は大幅に減少しましたが、国内を中心に欧州、アジア及び北米におけるデシカント除湿機の売上が増加したことにより、売上高は32,069百万円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。一方、利益面につきましては、国内、欧州及びアジアはデシカント除湿機の売上増により利益増となりましたが、中国向けのデシカント除湿機の売上減の影響等に伴い売上総利益が減少したことにより、営業利益は4,030百万円(同6.2%減)となりました。受取利息及び受取配当金を120百万円計上したこと等により、経常利益は4,190百万円(同3.9%減)、税金等調整前当期純利益は4,221百万円(同2.2%減)となりました。法人税等合計で887百万円、非支配株主に帰属する当期純損失2百万円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,336百万円(同2.8%減)となりました。

 

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、14,012百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,594百万円増加いたしました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られたキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ4,568百万円増加し、6,568百万円となりました。収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益4,221百万円、売上債権の増減額1,354百万円、契約負債の増減額1,269百万円、減価償却費962百万円であり、支出の主な内訳は、棚卸資産の増減額398百万円、法人税等の支払額692百万円であります。

 

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果支出したキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ157百万円増加し、2,498百万円となりました。これは有形固定資産の取得による支出が1,705百万円、投資有価証券の取得による支出が537百万円あったこと等によるものであります。

 

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果支出したキャッシュ・フローは、2,058百万円(前連結会計年度は1,801百万円の収入)となりました。これは配当金の支払いが1,230百万円、長期借入金の返済による支出が902百万円あったこと等によるものであります。

 

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当社グループは空調事業の単一の報告セグメントであるため、製品別に記載しております。

 

(a)生産実績

生産品目

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

 至 2024年12月31日

生産高

(百万円)

前期比

(%)

デシカント除湿機

14,088

100.5

VOC濃縮装置

8,628

128.0

その他

2,387

108.6

合計

25,104

109.4

 

(注)生産金額は販売価格により表示しております。

 

(b)受注実績

受注品目

当連結会計年度

(自 2024年1月1日  至 2024年12月31日

受注高

(百万円)

前期比

(%)

受注残高

(百万円)

前期比

(%)

デシカント除湿機

15,061

△41.7

8,634

△32.7

VOC濃縮装置

10,422

29.8

5,370

24.7

その他

5,511

104.8

3,402

335.9

合計

30,995

△15.2

17,407

△2.9

 

 

(c)販売実績

販売品目

当連結会計年度

 (自 2024年1月1日

  至 2024年12月31日

金額(百万円)

前期比(%)

デシカント除湿機

19,661

6.0

VOC濃縮装置

9,572

31.0

その他

2,835

△1.2

合計

32,069

11.6

 

 (注)  総販売額に対する割合が10%以上の主要な販売先がないため、相手先別の記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

① 財務状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

財政状態及び経営成績の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況 ②経営成績の状況」に記載しておりますが、その主な要因は以下のとおりとなります。

 

(売上高、売上原価及び売上総利益)

当連結会計年度における売上高は、32,069百万円(前連結会計年度比11.6%増)となりました。これは、前連結会計年度に引き続き、EV普及に伴うリチウムイオン電池業界での設備投資需要の高まりを背景に、特に日本や欧州、北米向けを中心に当社グループの経営戦略であるデシカント除湿機の販売注力による主力市場でのシェア拡大に繋げるべく受注活動の強化を進めたことによるものであります。当連結会計年度における売上原価は、21,165百万円(前連結会計年度比20.6%増)となりました。これは主に、売上高の増加によるものであります。

この結果、売上総利益は10,904百万円(前連結会計年度比2.4%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費並びに営業利益)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、6,873百万円(前連結会計年度比0.1%増)と前年同期並みとなりました。

この結果、営業利益は4,030百万円(前連結会計年度比6.2%減)となりました。

 

(売上高営業利益率)

当社グループでは売上と売上を獲得するために費やしたコストを管理するために売上高営業利益率を主要なKPIとして管理しております。

前年度に引き続きデシカント除湿機販売注力による主力市場での売上拡大戦略等が奏功し、売上高が11.6%(前連結会計年度は15.4%)増加した一方、中国向けのデシカント除湿機の売上減の影響等に伴い売上原価が20.6%(前連結会計年度は18.3%)増加したため、当連結会計年度における売上高営業利益率は、12.6%(前連結会計年度は15.0%)となりました。

 

(営業外損益、経常利益及び経常利益率)

当連結会計年度の営業外損益の主な内訳は、営業外収益として主に受取利息及び配当金が120百万円あり、経常利益は4,190百万円(前連結会計年度比3.9%減)となりました。売上高経常利益率は13.1%(前連結会計年度は15.2%)となりました。

 

(特別損益及び当期純利益)

当連結会計年度の特別損益の主な内訳は、特別利益としてリース条件変更利益が45百万円、特別損失として固定資産除却損が14百万円となりました。

法人税、住民税及び事業税は920百万円、法人税等調整額は△33百万円となりました。非支配株主に帰属する当期純損失は2百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は3,336百万円(前連結会計年度比2.8%減)となりました。

 

(EBITDAマージン及びROE)

「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおり、当社グループでは、EBITDAに対する売上高の比率であるEBITDAマージン及びROE(自己資本利益率)を重要な経営指標としております。当連結会計年度におけるEBITDAマージンは前連結会計年度の18.1%から2.5ポイント下降し15.6%に、ROEは前連結会計年度の15.4%から3.6ポイント下降し11.8%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報 

 (a) キャッシュ・フロー

「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

(b) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの資金需要のうち主なものは、製品製造のための費用、販売費及び一般管理費等の営業費用や、生産能力拡大のための生産設備や生産性を向上させるための情報処理システム等への設備投資であります。

これらの資金需要に対応するための財源は、営業活動によるキャッシュ・フローで得られる自己資金により調達することを基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの借入等により調達していく考えであります。

 なお、現金及び現金同等物の残高は、当連結会計年度末において14,012百万円であり、当社グループの事業を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

 

6 【研究開発活動】

当連結会計年度の研究開発活動は、長期的なクライメイト・ニュートラルの実現を目指し、環境保全や省エネルギーを目的とした顧客に信頼される製品開発、及び産官学連携による新技術開発を中心に進めております。

当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は348百万円であり、主な研究内容は、次のとおりであります。

 

①グリーンハウス向け全熱交換装置「Green-SAVE」製品化

 グリーンハウスと全熱交換装置を組み合わせたクローズドグリーンハウスの実現を進めております。これにより、病害虫の外気からの侵入低減や、雨風による収穫量の変動低減が期待されます。また、C-SAVE Greenと組み合わせることで施工の簡素化や収穫量の向上も見込まれます。さらに、年間を通した空調の可能性も新たに見い出されており、特許出願も並行して進めております。2024年は冬から春にかけてクローズドグリーンハウスの実現可能性を確認いたしました。2025年は春から秋にかけてクローズドグリーンハウスの実現可能性を検討し、年間を通じた費用対効果を算出いたします。中期的な実用化・製品化を目指しております。

 

②燃焼排ガスからのCO2回収装置「C-SAVE」の開発

 2023年から大学等と連携した実証試験を継続中です。CO2濃度10%程度の実際の燃焼排ガスからCO2を分離回収する装置開発をオンサイトで進めており、2030年の製品化を目指しております

 

③酸素濃縮装置の開発

 空気中に含まれる酸素をハニカムローターを用いて直接濃縮する先導研究を、産学官連携で実施しております。酸素濃度の高い空気を燃焼器に導入することで、燃焼効率を向上させ、燃料投入量を減らすことで、CO2の削減を目的としています。次世代技術開発として、産学官連携で研究開発を続けております。