当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、「法とすべての活動の垣根をなくす」をパーパスとし、テクノロジーを活用した法務業務を支援するITプロダクトを提供しております。
私たちの社会では、企業活動や個人の行動はすべて法に支えられています。しかし、法の複雑さが垣根となり、多くの活動に制約を与えています。この垣根をなくすため、まずは大企業の法務部門や弁護士といった専門家向けに、業務効率化のプロダクトを提供し、市場に参入しました。
その後、技術を進化させ、法務部門だけでなく、事業部門を含む全社対応のソリューションを展開しています。
さらに、中小企業向けの支援も進めながら、今後は個人ユーザーにまで広げ、最終的にはすべての活動から法の垣根を取り除くことを目指します。
LegalTech SaaS事業において、株式会社富士キメラ総研が2023年7月に発表した「ソフトウェアビジネス新市場2023年版」によると、当社が属する国内SaaS市場は2023年には1.41兆円に達し、2027年には2.09兆円に達する見込みです。この増加の背景には、リモートワークの普及によりSaaSの需要が増加し、SaaSがビジネスに浸透したことが挙げられます。
また、株式会社アイ・ティ・アールが2022年10月に発表した「リーガルテック市場2022」によると、リーガルテックの国内市場(電子契約、CLM/契約管理、AI契約書レビュー支援、特許リサーチ検索、リーガルリサーチ検索の各サービスの市場規模を合算)は2021年で244億円であり、2026年に731億円に達する見込みです。この市場規模は、各ベンダーの売上を集計及び推定した規模であり、法務部門や法律事務所を中心とした法務リテラシーの高い方向けのサービスが主体です。当社が次に取り組む市場として、事業部門等の法務リテラシーが相対的に低い方への価値を発揮できるサービスや機能を展開し、全社展開をターゲットとした市場に拡大してまいります。この市場規模は、上記の731億円の市場に加え、全労働力人口6925万人(注1)を対象として、当社のOLGAの全社向けの機能の単価を掛け合わせて、4,886億円と当社独自に算定しております。
また、登記事業においては、登記申請の支援を行っている司法書士及び司法書士事務所の売上規模から市場規模を推定しております。その規模は、総務省の「サービス産業動向調査」によると2018年の市場規模は2,855億円と推定されます。なお、法務省の「登記統計 統計表」によると、2018年より商業・法人の登記申請の件数は約150万件からおおむね横ばいで推移しているため、同水準の市場規模で推移していると推測されます。
(注)1.政府統計ポータルサイト「e-Stat」2023年度労働力調査より算定
当社は、企業における契約書業務や法務手続き業務におけるペーパーレス化や業務効率化等を背景に、テクノロジーを活用して課題解決をするリーガルテック事業を主要な事業としており、LegalTech SaaS事業の「OLGA」を、登記事業の「GVA 法人登記」を主軸に、プロダクト開発やサービスの拡充・拡販を進めております。
今後の具体的な取り組みは以下のとおりです。
現状の製品戦略では、ユーザーが機能ごとに導入しやすいよう、「AI法務アシスタント」「法務データ基盤」「AI契約レビュー」「契約管理」の各モジュールは、それぞれに機能開発を進めておりました。前期の1年間で基本的な機能の開発が整ったことから、それぞれの機能連携を強化し、法務案件の受付・管理から契約審査業務までの業務をシームレスに実現し、よりユーザーの体験を向上させていきます。
これにより、競合企業との差別化による新規顧客獲得の推進に加えて、顧客単価の向上および既存ユーザーの解約率低下に寄与するものと考えております。なお、2024年12月末時点において、複数のモジュールを導入している企業のみで集計した顧客平均単価は198千円であり、全体の顧客平均単価の向上に寄与しております。
当社がLegalTech SaaS事業で取り組んでいる契約業務のDXは、法務部門だけでなく全社にかかる契約業務の全体の最適化です。実際の契約条件の交渉や、事業部内での契約内容の確認、個別取引に応じた契約条件の整理、契約締結に係る社内手続き等、契約業務の多くにおいて、事業部門が担っております。一方で、法務部門と事業部門において、取引に関する内容理解や法務リテラシー等の差が生じていたり、契約業務において様々なツールが駆使されることにより、情報の分担が発生し、不要な対応工数の発生や、取引や意思決定スピードの遅延、取引リスクが共有されないといった全社的な課題が生じております。
OLGAは、事業部門等の依頼部門がアカウントを持たなくても、法務部門とのコミュニケーションの円滑化や過去の案件に関するナレッジの利活用が可能ですが、さらに、法務部門以外での効果を高めるための機能を拡充し、より全社的に効果の高いツールとして進化させてまいります。
すでに事業部門でも使える依頼者アカウント機能やAIチャットボット機能をリリースしており、全社的な利便性が向上しており、法務関連の案件に関する対応工数が大きく削減することが可能です。これによる、新規顧客獲得の促進と、法務部門だけではなく事業部門での効果を促進し顧客単価の向上を進めてまいります。
既存のプロダクトで購入数増加のためには、現在対応していない登記事項の追加をすることで、当該登記事項での利用を期待する潜在的なユーザーを獲得することが可能です。各登記事項のニーズを分析しながら機能拡充に努めてまいります。
また、登記事業の主なターゲットとしているスタートアップ企業や中小企業のように、社内の法務機能が充実していない企業においては、登記手続きだけでなく、会社運営において様々な法的手続きに対応する負担が非常に大きいです。中長期的な成長のために、登記申請手続き以外のこれらの法務手続きに対応したプロダクトの開発を検討しております。具体的には、弁理士や行政書士、社会保険労務士等の様々な士業が対応している各種申請を視野に入れており、市場規模やユーザーのニーズを考慮しながら、プロダクトの領域を検討し、開発を進めてまいります。
これらの新しい領域のプロダクトを、登記事業で獲得した顧客基盤に横展開することにより、1顧客当たりの利用数とともに売上を拡大してまいります。
なお、総務省の「令和3年経済センサス活動調査」によると、各士業における事業所の売上金額の合計から推定された市場規模は、それぞれ弁理士が属する特許事務所で1,806億円、行政書士事務所で622億円、社会保険労務士事務所で1,714億円とされております。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
(1)及び(3)に記載の、経営方針及び経営戦略を実行していくうえで、当社が優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。
当社が属するリーガルテック業界の発展には、AI技術をはじめとした、ITの技術開発が根幹にあると考え、OLGAにおける継続的な機能開発・機能改善に取り組んでおります。そのためには、最先端の技術の研究のための優秀な人材の確保は重要な課題と考えております。しかし、優秀な技能を持つ人材の安定的な確保は、同業他社とも競合することから困難な状況となっております。当社としては、リーガルテック業界における知名度向上を図り、魅力的で存在感のある企業であることを継続的に訴えかけるとともに労働環境や福利厚生の充実にも取り組んでまいります。
当社は、顧客の取引先における契約情報等、重要な情報資産を取り扱うサービスを展開しているため、サービス提供に係るシステムの安定稼働及びセキュリティ管理が重要な課題であると認識しております。
この課題に対応するため、今後の事業拡大においてサービス利用者数が増加した場合も、環境の変化に対応したシステム保守管理体制を構築するとともに、「ISO/IEC 27001:2022」に基づいた情報セキュリティの体制を構築することで、システムの安定稼働及び高度なセキュリティが維持された体制が可能となるように努めてまいります。
当社は、過年度において継続的な事業成長を図るため、サービスに関する開発や体制強化に伴う人員増強への投資を行った結果として、当事業年度まで営業赤字かつ営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが継続しております。特に、投資を進めているOLGAは、ユーザーに継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルになります。一方で、開発費用やユーザーの獲得費用が先行して計上される特徴があり、短期的には赤字が先行することが一般的です。
当社では、事業の拡大に伴い、OLGAの顧客拡大や単価拡大に伴いストック収益が順調に積み上がることで、先行投資として計上される開発費用やユーザーの獲得費用が売上高に占める割合は低下傾向にあり、営業損失率は改善しております。今後は、売上高と利益の成長を両立させたバランス型の成長を志向しつつ、早期の当期純損失の解消及び営業キャッシュ・フローの黒字化を目指します。
当社は、今後の成長戦略の展開に伴い、財務の充実と安定化を進めていくことが重要と考えております。これまで第三者割当増資及び借入による資金調達を実施しておりますが、今後も多様な資金調達手法を検討しながら、長期的な当社の成長を実現することに努めてまいります。
当社は、売上高の最大化が営業キャッシュ・フローの最大化ひいては企業価値向上につながると考えております。そのため、売上高を重要な経営指標と位置付け、高い成長率の維持を図ってまいります。また、各事業の継続的な成長を実現するため、LegalTech SaaS事業は、サブスクリプション売上(注1)、ARR(Annual Recurring Revenue)(注2)、顧客数(注3)、顧客平均単価(注4)、Net Revenue Churn Rate(注5)を、登記事業は、登記事業における売上、サービス利用数(注6)、リピート利用数(注7)、累計利用社数(注8)をKPIとしております。
各指標の推移は以下のとおりであります。
(注)1.LegalTech SaaS事業の売上のうちサービスの月額利用料といった継続性のある収益による売上を指します。
2.毎期決まって発生する売上(経常収益)の1年分を指します。対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額の12ヶ月分によって算出します。
3.OLGAの顧客社数のことを指します。
4.1顧客当たりの継続課金分の平均売上金額のことをいい、各四半期決算月の実績を四半期末時点の顧客数で割って算出した金額を記載しております。
5.サービスの解約率の指標であり、既存顧客のアップセル/ダウンセルを考慮した指標です。四半期決算月ごとに次の算式により算出しております。「(当月解約のあった顧客及び減額された顧客のMRR-既存顧客の追加のMRR)/前月のMRR」の12か月平均」なお、MRRとは、Monthly Recurring Revenueの省略表記であり、経常収益のうちの1か月分を指します。対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分の料金の合計額によって算出します。
6.GVA法人登記及びそのOEMサービスを利用された回数を指し各四半期の合計で算出しております。
7.サービス利用数のうち、過去にGVA法人登記を利用した顧客が利用した件数を指します。
8.GVA法人登記を1度でも利用したことのある顧客の総数のことを指します。
(LegalTech SaaS事業)
(登記事業)
当社は、「法とすべての活動の垣根をなくす」をパーパスとして掲げており、法律業務の専門性の高さゆえに、法律業務を仕事としている人とそうでない人との間に生じている格差を解消することを目指しております。これらの活動により、世の中における不要な法務リスクやコストの軽減、業務の効率化・付加価値の向上等を目指しております。
継続的なサービス提供及び持続的な成長を目指すにあたり、サステナビリティへの取り組みは重要な経営課題として捉えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、パーパスおよびサステナビリティに関する基本方針やそれを踏まえた経営方針等を効果的に実現し、中長期的な企業の価値向上を目指した経営を推進する基盤として、コーポレート・ガバナンス体制の構築とさらなる高度化に取り組んでおります。また、企業倫理・コンプライアンス・腐敗防止の徹底、プライバシー、情報セキュリティ等においても継続的な活動の改善、強化に取り組んでおります。
また、関連するリスク及び事業機会に関しては、「リスク・コンプライアンス委員会」を設置し、外部環境、財務、コンプライアンス、労務、事故、災害等のリスク項目を整理し、適宜適切に取締役会や経営会議への報告を行っております。
なお、具体的なガバナンス体制図については、「
当社は、持続的な成長や事業価値の向上を実現していくうえで、人材は最も重要な経営資源であると考えております。毎年積極的な採用を行い、多様性に富んだ優秀な人材を採用することで、事業の成長に取り組める人材の確保と継続的な雇用の創出に努めております。
また、従業員の働き方については、ライフステージの変化、多様化する価値観に合わせて、性別や年齢等に関係なく様々な人材が活躍できるよう、フレックス勤務、時短勤務、在宅勤務、育児休業取得等の多様な勤務形態と働き方を後押しし、多様な人材がやりがいをもって働ける組織の構築に努めております。
当社では、「(2)人的資本戦略について」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成方針及び社内環境の整備に関する取組に係る指標については、サステナビリティ全体の視点と合わせ、適宜整備し、人的資本に関する課題解決を推進してまいります。
当社が、本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
当社は、「OLGA」「GVA法人登記」をはじめ、複数のクラウド型サービスを提供しております。当社が事業を展開するクラウド市場は急速な成長を続けており、この市場成長傾向は今後も継続するものと見込んでおります。しかしながら、経済情勢や景気動向の変化による企業の情報化投資の抑制や、新たな法規制の導入、技術革新の停滞等の要因によりクラウド市場の成長が鈍化するような場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社が事業を展開するリーガルテック市場は、今後クラウド市場の普及を背景に、規模の大小を問わず競合企業の新規参入が予測されます。これら競合他社の中には、当社に比べ大きな資本力や技術力、販売力等の経営資源及び顧客基盤等を保有している企業が含まれます。当社では、製品開発力の強化や継続的な製品改修・サービス品質の向上等により顧客企業との良好な取引関係の維持等に積極的に取り組み、価格だけでなく付加価値で対抗できるブランディングを図っておりますが、競合企業のサービス力の向上や新規参入による価格競争の激化により当社の競争力が相対的に低下した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社が属するIT業界やAI業界の技術は、国内外を問わず研究開発が進められており、その結果、常に新しい技術が生み出され、その技術がサービスの一部として提供されております。当社の事業の競争力の源泉は技術力であるため、最新の技術の収集及び優秀な人材確保に努めてまいりますが、急速な技術革新への対応が遅れた場合、新規契約が伸びず、また既存顧客の解約が発生することで当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社は、サービスシステムをクラウドサーバに置いており、当該クラウドサーバにおいても、複数のデータセンターにおける常時バックアップ体制等により洪水や地震等の大規模災害のサービス提供への影響を最小限に抑える対策を講じておりますが、想定を超える自然災害が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、より多くの新規顧客の獲得を目指し、知名度や信頼度の向上のための広報・プロモーション活動の一環として、オンラインセミナーの開催やイベント展示会への出展等を積極的に行っております。今後も費用対効果を見極めつつ、顧客獲得のためのマーケティングコストを効率的に投下して、売上高の拡大及び収益性の向上に向けた取り組みを行っていきますが、各種マーケティング・PR活動等の効果が期待通り得られない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社のサービスの一部は、サービス料金を使用期間やユーザー数等に応じて定期定額契約として課金することで継続的な収益を得るビジネスモデルであるストック型の収益モデルであることから、当社の継続的な成長には、新規顧客の獲得に加え、既存顧客の解約防止及び単価向上が重要であると認識しております。当社では、最適なマーケティング活動及び販売戦略の立案・遂行に注力するとともに、製品開発力の強化や継続的な製品改修・サービス品質の向上等に取り組んでおります。しかしながら、経済情勢や市場環境の悪化等による顧客企業のIT投資抑制等が生じた場合や、新規・追加契約が想定通り進まない場合、想定を超える解約が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、2024年12月期の第4四半期末時点での月額の顧客平均単価は93千円であり、当社のユーザー層である中堅企業から大手企業における金額的な影響は軽微と考えるため、蓋然性は低いと考えております。
当社が顧客に提供している各サービスは、クラウドという特性上、インターネットを経由して行われており、インターネットに接続するための通信ネットワークやインフラストラクチャーに依存しております。当社では、企業向けクラウドプラットフォームとして信頼されているAmazon Web Services社が提供するクラウドプラットフォーム上に各サービスを構築するとともにバックアップ管理の冗長化やセキュリティ対策の強化を行い、各サービスの安定的かつセキュアな運用体制を取っております。加えて、24時間365日稼働のクラウド監視センターを設置し、各サービスが適切に利用できる状況か常時監視、障害発生時には定められた手順に基づき復旧作業を実行する等の管理運用を行っております。しかしながら、自然災害や事故、プログラム不良、不正アクセス、その他何らかの要因により大規模なシステム障害が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社が顧客に提供している各サービスは、企業向けクラウドプラットフォームとして信頼されているAmazon Web Serviceを用いて構築しております。当該製品における市場規模の縮小や大幅な仕様変更、経営戦略の変更がある場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、提供する各種サービスに係る特許権や商標権を取得しており、今後も積極的に知的財産権の保護に努めるとともに、当社の役職員による第三者の知的財産権の侵害が発生しないよう、啓蒙活動及び社内管理体制の強化に取り組んでおります。また当社では、提供する各種サービスが第三者の知的財産権を侵害していないか外部の専門家と連携し可能な範囲で調査を実施しております。しかしながら、第三者の知的財産権の状況を正確に調査・把握することは困難であり、知的財産権侵害とされた場合、その訴訟の内容及び結果や損害賠償の金額によっては、当社の財政状態及び経営成績や企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
当社は事業を推進していく中で、取引先企業における個人情報や秘密情報等の情報資産を扱う機会があります。当社では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001:2022)の第三者認証を受けるとともに、情報セキュリティに関する規程の策定や役職員に対する定期的な教育の実施、コンピュータ等の情報機器やネットワーク等の情報通信設備に対するセキュリティ管理の徹底、外部委託先との秘密保持契約の締結等を行い、当社からの情報漏洩を未然に防ぐ措置を講じております。しかしながら、コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の不正な手段による外部アクセス、役職員及び外部委託先の過誤、自然災害の発生等によりこれらの情報資産が外部に流出した場合、これらに起因して損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起される可能性があり、その訴訟の内容及び結果や損害賠償の金額によっては、当社の財政状態及び経営成績や企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
弁護士法72条では、「弁護士又は弁護士法人ではない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件、非訴訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して、鑑定、代理、仲裁、若しくは和解その他の法律事務を取扱い、又は周旋することを業とすること」を禁止しております。当社のサービスである「OLGA」のAI契約レビューモジュールにおける「論点検知機能」(契約書上の論点や契約締結後に不利になりうるような単語をAIが検知し提示する機能)等をはじめ、各機能が本条文の規制に抵触しないよう遵守する必要があります。
当社では、複数の企業で「一般社団法人AI・契約レビューテクノロジー協会」を設立し、同法72条とAI契約レビューのツールに関して従来明確でなかった解釈について、内閣府規制改革推進会議等を通じて提言をしてまいりました。その結果、2023年8月1日法務省大臣官房司法法制部より、「AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について」と題するガイドラインが公表されております。
当社では、「OLGA」のAI契約レビューモジュールが、前述のガイドラインに準拠するものであり、サービス内で提供される機能やカスタマーサポートの対応についても、機能等の説明に留まるものとして対応しており、同法72条に抵触せず適法である旨、外部の法律事務所からも意見をいただいております。
今後においても、当社サービスの機能の拡充や変更に際して、適宜事前に社内及び外部の顧問弁護士のリーガルチェックを行い、当該法令に抵触しないよう十分に留意しております。しかしながら、同法の内容又は解釈が変更された場合には、当該規制の内容や解釈の変更等により、当社の事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社の事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
司法書士法第3条にて、司法書士が行うことができる業が規定されており、その中に「法務局又は地方法務局に提出し、又は提供する書類又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第四号において同じ。)を作成すること。但し、同号に掲げる事務を除く。」)(第3条第一項第2号)および、同第3条第5号では「前各号の事務について相談に応ずること。」とされており、また同法第73条では、「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第三条第一項第一号から第五号までに規定する業務を行つてはならない。」とされて、司法書士でない者が、法務局に届出を行う書類の作成を行うこと、その相談に応じることを禁じております。当社のサービスである「GVA法人登記」の各機能による、登記申請書類の作成支援が、本条文の規制に抵触しないように遵守する必要があります。
当社では、「GVA法人登記」によって登記申請書類作成の機能は、あくまでも申請者本人による書類作成をサポートするものであり、サービス内で提供される機能やカスタマーサポートの対応についても、機能等の説明に留まるものとして対応しており、外部の法律事務所からも適法である旨の意見をいただいております。
今後においても、当社サービスの機能の拡充や変更に際して、適宜事前に社内及び外部の顧問弁護士のリーガルチェックを行い、当該法令に抵触しないよう十分に留意しております。しかしながら、同法の内容又は解釈が変更された場合には、当該規制の内容や解釈の変更等により、当社の事業が制約を受ける可能性があり、その場合、当社の事業および業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社の事業領域は、進化の早い領域であることに加え、多様化するエンタープライズを中心とした顧客ニーズに対応するためには、最先端の技術と経験を有する優秀な人材の確保が必要と考えております。当社は継続して採用活動を行っておりますが、必要な人材を獲得できない場合及び十分な人材育成が進まなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
現段階で、顧客、パートナーや取引先及び株主などのステークホルダーとの間で訴訟等はなく、その可能性も把握しておりませんが、将来これらが生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(15)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:中、時期:常時、影響度:小)
当社では、長期的な企業価値向上に対するインセンティブを目的とした当社役職員向けのストックオプションや、一部金融機関向けに、借入に付随した新株予約権を付与しております。本書提出日現在、その総数は現時点における発行済株式総数の11.48%に相当します。これらの新株予約権が行使された場合、既存株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。
当社は少人数であり、現段階の事業規模にあわせた内部管理体制をとっております。今後、事業規模の拡大に伴い、人材の採用、育成を行うことにより現状の内部管理体制をより強固にしていく方針ではありますが、この体制強化が事業規模の拡大に追いつかない場合には、内部管理体制が有効に機能せず、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社の代表取締役社長である山本俊は、当社のサービスモデル及びビジネスモデルの考案、事業戦略の立案に加えて、営業活動をはじめとする事業推進においても中心的な役割を担っております。当社では今後の事業拡大に備え、外部人材の登用、社内人材の育成等代表取締役社長へ過度に依存しない体制の構築を進めておりますが、何らかの理由により代表取締役社長が職務遂行をできなくなった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社以外に弁護士法人GVA法律事務所にも所属しておりますが、同法律事務所における経営実務や弁護士としての法律実務には携わっておらず、当社の代表取締役社長としての経営専念に支障をきたすものではないと判断しております。一方で、当社がリーガルテックサービスを提供している限りにおいて、弁護士事務所の創業者としての視点を持っていることが、サービスの信頼感につながっているものと考えており、また、当社の競合優位性の1つと認識している当社の事業ドメインに強い人材の確保の観点でも、弁護士資格保有者や法務経験者を積極的に確保できる要因の一つと考えております。
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しておりますが、現段階では、事業拡大のための投資及び財務基盤の強化が最優先の課題であると認識しており、そのバランスを見極めながら、必要な内部留保を確保し安定した配当ができる体制が整った後に継続的に実施していくことを基本方針としております。なお、現時点において配当実施の可能性及び実施時期等については未定であります。
当社は、ソフトウェア等の固定資産を保有し、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。同会計基準では、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減額した当該金額を減損損失として計上することとなります。このため、当該資産又は資産グループの経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社の事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社は、税務上の繰越欠損金を計上しているため、利益が生じた場合の税負担が軽減されることが想定されます。しかしながら、当該欠損金に相当する利益を計上するまでに税務上許容される期限が経過し、欠損金が消滅した場合には、期待した税負担の軽減が受けられず、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は税務上の繰越欠損金にかかる繰延税金資産に対して、その実現の不確実性を勘案し全額に相当する評価性引当額を計上しております。
当社が提供するITサービス事業は、サービス提供に必要な支出及び顧客基盤の拡大のための営業人員の採用、広告宣伝費等の先行投資を必要とする事業であります。この結果、創業以来継続して営業赤字を計上しております。当社は、かかる投資の成果による売上高の拡大及び収益性の向上により今後は継続的な利益計上が可能であると考えておりますが、技術革新や競合他社の参入及び既存顧客の解約等が当社の想定を超えて発生した場合には、営業赤字が継続し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
資金調達について、当社の借入金に係る契約のうち一部の契約には、各月末日における純資産及び預金残高の金額、2025年12月期以降の経常損益に関する財務制限条項が付されております。これに抵触し、借入先金融機関の請求があった場合、当該借入金について、期限の利益を喪失する可能性があります。当社が借入金について期限の利益を喪失し、一括返済の義務を負った場合には、当社の財政状態に悪影響をもたらす可能性があります。
なお、適宜、金融機関からの借入等による資金の確保を実行しており、期限の利益を喪失する事態が生じた場合でも、経営への影響は限定的と考えております。財務制限条項の詳細な内容については、「5 経営上の重要な契約等」に記載しております。
当社代表取締役が創業したGVA法律事務所と当社とは、何ら資本関係はございませんが、同じ「GVA」の名称を冠していることから、関連会社と誤認される恐れがあります。
GVA法律事務所の業績悪化やトラブル、不祥事等が生じた場合、当社グループとみなされ、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、同事務所に対して、OLGAのサービス提供を行っており、本取引は関連当事者取引に該当致します。関連当事者取引については、新規取引の場合には都度取締役会の承認を必要とし、また、継続取引においても毎年定期的に取締役会に報告することとしており、当該サービスの提供については、独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っていることを確認しております。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
(資産の部)
当事業年度末における流動資産は681,552千円となり、前事業年度末に比べ33,628千円増加いたしました。これは主に、売掛金が22,252千円増加したことによるものであります。無形固定資産は593,459千円となり、前事業年度末に比べ236,625千円増加いたしました。これは主にソフトウエアが203,740千円増加したことによるものであります
この結果、総資産は1,301,194千円となり、前事業年度末に比べ282,436千円増加いたしました。
(負債の部)
当事業年度末における流動負債は503,349千円となり、前事業年度末に比べ69,714千円増加いたしました。これは主に、契約負債が85,699千円、未払金が31,364千円増加した一方、1年内返済予定の長期借入金が45,060千円減少したことによるものであります。固定負債は191,941千円となり、前事業年度末に比べ59,676千円減少いたしました。これは、長期借入金が59,676千円減少したことによるものであります。
(純資産の部)
当事業年度末における純資産合計は605,904千円となり、前事業年度末に比べ272,397千円増加いたしました。これは主に、公募増資の実施により資本金及び資本剰余金がそれぞれ403,188千円増加した一方、当期純損失を計上し、利益剰余金が532,379千円減少したことによるものであります。
その結果、自己資本比率は43.7%となりました
当事業年度の売上高は、1,165,421千円(前年同期比60.0%増)となりました。この主な要因は、OLGAのAI法務アシスタントおよび法務データ基盤のリリースに伴う新規顧客獲得の増加によるものであります。
当事業年度の売上原価は、411,557千円(前年同期比61.7%増)となりました。これは主に、登記事業の売上高の増加に伴う印紙及びレターパック仕入の増加によるものであります。この結果、売上総利益は753,864千円(前年同期比59.1%増)となりました。
当事業年度の販売費及び一般管理費は、1,277,533千円(前年同期比43.6%増)となりました。これは主に、管理体制の強化及び業容拡大に伴う業務委託費177,774千円、新規顧客獲得のための広告宣伝費用275,336千円がそれぞれ増加したことによるものであります。この結果、営業損失は523,669千円(前年同期は416,007千円の営業損失)となりました。
当事業年度の営業外収益は85千円(前年同期比77.1%増)、営業外費用は、8,099千円(前年同期比43.1%減)となりました。この結果、経常損失は531,683千円(前年同期は430,188千円の経常損失)となりました。
当事業年度において特別損失は発生しておらず、特別利益は1,600千円であり、当期純損失は532,379千円(前年同期は431,536千円の当期純損失)となりました。
なお、当社はリーガルテック事業を行う単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
当事業年度の現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ5,751千円増加し、542,360千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、資金は296,823千円の減少(前事業年度は262,565千円の減少)となりました。これは主に、増加要因として減価償却費135,935千円、契約負債の増加額85,699千円等、減少要因として税引前当期純損失530,083千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、資金は381,128千円の減少(前事業年度は220,246千円の減少)となりました。これは主に、減少要因として無形固定資産の取得による支出360,036千円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、資金は683,703千円の増加(前事業年度は864,557千円の増加)となりました。これは主に、増加要因として株式の発行による収入806,377千円、減少要因として長期借入金の返済による支出104,736千円等によるものであります。
提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当事業年度の販売実績をサービスごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1.当社はリーガルテック事業を行う単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.当事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は総販売実績の100分の10未満であるため記載を省略しております。
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況 ②経営成績の状況 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
当社の資金需要は、「LegalTech SaaS事業」「登記事業」の両方において、新規機能及びサービス拡充のための開発、営業人員等の人件費のほか、関連する業務委託費が中心となっております。これらの必要な資金は自己資金、金融事業者からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。財務諸表の作成に当たり、資産及び負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております。
経営者の問題意識と今後の方針については、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
金融機関との金銭消費貸借契約
該当事項はありません。