当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.経営方針
(1)中長期的な会社の経営戦略
2023年1月、旧昭和電工㈱と旧日立化成㈱(旧昭和電工マテリアルズ㈱)は統合し、レゾナックグループとして新たなスタートを切りました。
<経営理念>
当社は以下を経営理念と定めております。
存在意義(パーパス) 「化学の力で社会を変える」
私たちが大切にする価値観(バリュー) 「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」
「機敏さと柔軟性」
「枠を超える、オープンマインド」
「未来への先見性と高い倫理観」
この経営理念のグループ、グローバルでの浸透を図り、レゾナックグループは一丸となって事業に取り組むとともに、人材育成の強化、人事評価の透明性や実力主義の徹底等を進めてまいります。先端材料パートナーとして時代が求める機能を創出し、グローバル社会の持続可能な発展に貢献します。
<レゾナックがめざす姿>
*共創型化学会社
私たちの基盤は、川中から川下まで幅広く自在な最先端の機能材料テクノロジー。その上で、社会課題とその原因を鋭く可視化し、解決に向けてイニシアチブを発揮していく。そのためには、化学業界に閉じた個社の事業活動にとどまっていては足りないと考えています。
化学企業としてグローバルにおける一流の実力を備え、機敏かつ柔軟な行動と意思決定をもって、産業のキープレイヤーから生活者に至るまで 志を共にする仲間とよりよい社会を共創していく。これが、私たちが目指す“共創型化学会社”の姿です。
*世界トップクラスの機能性化学メーカー
私たちは「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指します。その姿として、質的な面、計数的な面それぞれを兼ね備えた「世界で戦える会社」、イノベーションと事業開発力で「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」、さまざまなステークホルダーからも注目されるような「国内の製造業を代表する共創型人材創出企業」となることを掲げ、実現してまいります。
世界トップクラスの機能性化学メーカーとなるためには、財務・非財務両面でステークホルダーの要求にこたえるとともに、当社らしさを発揮していかなければなりません。レゾナックはサステナビリティを全社戦略の根幹と位置づけ、目指す姿とサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に紐づく施策と目標を定め、取り組みを進めて長期ビジョンの達成を目指しています。(詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。)
(2)長期数値目標
|
|
|
2024年実績 |
目標 |
|
売上収益 |
|
1.39兆円 |
1兆円超 |
|
EBITDAマージン |
|
13.7% |
20% |
|
ROIC |
|
5.2% |
中長期的に10% |
|
ネットD/Eレシオ |
|
0.74倍 |
1.0倍 |
目標数値の達成により、TSR(株主総利回り)は中長期的に化学業界で上位25%の水準を目指します。
2.経営環境及び当社グループの対処すべき課題
世界的な金融引締めやインフレ進行による足踏みのリスク、アメリカの政策動向の影響等、不透明さはあるものの、緩やかな回復が続くことが期待されます。
このような状況下、当社は半導体需要を背景にコア成長事業である半導体・電子材料への積極的な設備投資を続けるとともに、引き続き事業ポートフォリオ改革、諸施策を進めてまいります。
企業価値最大化のためには、石油化学を中心とする伝統的な総合化学から、顧客のニーズに応じた機能を発揮するスペシャリティケミカル企業への変貌を遂げることと、それを支える共創型で自律的な人材の育成が不可欠であり、そのための施策に精力的に取り組んでいます。
また、従業員のエンゲージメントを高め、様々な社会課題や顧客のニーズを把握し、社内外のステークホルダーとの共創を推進することを通して、「世界トップクラスの機能性化学メーカー」となり、イノベーションを生み出していきます。
私たちは、パーパスに込められたサステナビリティの理念を根幹におき、先端材料の提供を通じた省エネルギーや環境負荷の低減、高度循環型社会の実現に貢献してまいります。
「コーポレート・ガバナンス基本方針」については当社ホームページをご参照ください。
https://www.resonac.com/jp/corporate/governance.html
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ全般に関わる開示
当社グループは、サステナビリティを経営の根幹に位置づけ、「サステナビリティビジョン2030」を設定するとともに、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しております。マテリアリティに紐づく施策と目標を定め、取り組みを進め、長期ビジョン及び「化学の力で社会を変える」というパーパスの実現を通じて企業価値向上を目指します。
|
サステナビリティビジョン2030
社会課題解決による企業成長 技術や事業を通じて社会の課題を解決し、社会に価値提供をすることで、自らの持続的な成長と企業価値の向上を実現していく 世界で仲間をつくる会社 顧客、従業員、投資家およびステークホルダーなどの将来世代を含む持続可能なよりよい社会づくりのパートナーから、「選ばれ」かつパートナーに「選ぶ」ことができる共創型化学会社になる
|
① サステナビリティ全般に関するガバナンス
当社グループのサステナビリティは、CEOが統括、CSuOが推進責任を担っています。2022年からCEOを含むグループCXOが集まるサステナビリティ推進会議を月に一度、事業責任者(BU長)も加えた拡大サステナビリティ推進会議を四半期に一度開催し、幅広いアジェンダを議論しております。また、同会議の下に複数のプロジェクトを設置し、具体的な課題に対して機動的かつ組織横断的に対応する体制です。
2023年からは同会議での審議事項を組織運営に結び付け、従業員に浸透させるため、事業部門・CXO部門にサステナビリティパートナーを設定しております。サステナビリティパートナーを通じたコミュニケーションにより、各部門の現状や課題、関心を把握するとともに、各部門でのサステナビリティの取り組みを促進しています。また、サステナビリティパートナー同士の横のコミュニケーションの場を設けることで、対面する業界の違いを超えた顧客要求の変化や対応などについて情報交換や議論を活発に行っております。
サステナビリティ推進会議で議論した重要事項については都度、経営会議で審議・決定の上、取締役会に付議・報告しており、サステナビリティに関する方針や計画の妥当性・有効性など取締役会から適宜必要な指示・助言を受け、監督される体制です。
また、当社は、役員報酬のうちの短期業績連動項目へサステナビリティ評価項目を入れ、報酬に連動させています。マテリアリティに紐づく非財務KPIの達成に向けた道筋の議論の下、それぞれの管掌領域に必要な役員ごとに異なる評価項目を設定して評価しています。同時に、安全や後継者育成といった共通項目も設定し、目標管理制度(MBO)を通じて、従業員の評価とも連携する仕組みとなっています。
サステナビリティ推進体制(2025年3月26日現在)
② サステナビリティ全般に関する戦略
当社グループのマテリアリティは、社会からの期待と当社にとっての重要度の両面から検討したパーパス実現と長期ビジョン達成に向けた経営課題です。2022年に各担当CXO領域(機能)との個別の議論とサステナビリティ推進会議における全経営陣の議論により、マテリアリティと全社レベルの非財務KPIを特定し、取締役会に報告しました。実際の運用や社外のステークホルダーとの議論を通じて、KPIの妥当性についてサステナビリティ推進会議で議論し、モニタリングや見直しをしております。
現状の非財務KPIは2025年を目標年としているため、2025年中に次期KPIを設定し、2026年に公表を予定しています。
③ サステナビリティ全般に関するリスク管理
サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に紐づく機会とリスクについては、サステナビリティ推進会議で議論し、当社の経営環境を踏まえて、施策や非財務KPIに反映しております。検討した機会とリスク、生み出そうとしている価値の一覧は、下図のとおりです。
なお、サステナビリティの各テーマを含む、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があるリスク情報は、全社的に展開するリスク棚卸を通じて、リスクマネジメントシステムに一元的に登録されます。重要度や優先度の非常に高いリスク(重要リスク)については、専門委員会(リスクマネジメント委員会)で審議します。重要事項は経営会議で審議・決定の上、取締役会に報告されます。詳細は「
④ サステナビリティ全般に関する指標と目標
3つのサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を16の構成要素に分解し、各々の施策と重要項目(非財務KPI)、2025年目標を定めて、取り組みを進めております。非財務KPIの半期ごとの進捗や課題をサステナビリティ推進会議において審議、確認することで、マテリアリティへの取り組みを着実に推進するとともに、適宜見直しております。
サステナビリティの取り組みのうち、社会にとって喫緊の課題であり、かつ機能性化学企業として重要度の高い気候変動と生物多様性、そして共創型人材を当社の価値の源泉として位置づけ、注力している人的資本の取り組みを重要事項とし、「
|
マテリアリティ |
構成要素 |
重要項目 (非財務KPI) |
2025年目標 |
2024年実績 |
|
イノベーションと事業を通じた共創力&競争力の向上と社会価値の創造 |
事業を通じた社会価値の創出 |
Resonac Pride製品・サービス*1 |
各事業部における主要製品のオープンプロセスによる認定 |
・社内外の審査会を通じ、川崎事業所でのプラスチック原料化事業及び、半導体実装材料・プロセスのオープンイノベーションを促進するパッケージングソリューションセンターの取り組みをResonac Pride製品・サービスとして認定 ・役員報酬の業績評価指標(KPI)に設定 |
|
CFP*2への取り組み |
主要製品のCFP算出 |
・国内:対象製品のうち約50%算出完了 |
||
|
マーケティング |
課題解決型マーケティングの浸透による大型案件創出 |
新規テーマ創出プロジェクトを事業領域ごとに始動 |
・新規開拓チームを発足し、大型テーマの重点開拓領域を特定。テーマ創出活動に向けて、プロジェクトの在り方を検討開始 |
|
|
デジタルプラットフォームの活用 |
デジタルマーケティングを活用した海外・地域情報発信強化 |
・事業部との連携によるデジタルマーケティングの自動化が定着し、新規重要案件創出に貢献 |
||
|
CRM*3ツール上の顧客データと案件情報を活用した営業の効率化と事業拡大への貢献 |
・CRMツールの利活用事業部数が増加。CRMツール上のデータを活用し、営業生産性向上の効果発揮 |
|||
|
オープンイノベーション・R&D・知的財産戦略 |
社内外との共創 |
オープンイノベーションや社外協業テーマ割合向上/論文・社外発表件数の対前年増加 |
・オープンイノベーション・社外協業:56件(2023年:59件) ・論文・社外発表:196件(2023年:192件) |
|
|
R&D戦略と知財戦略の強化 |
CFP算出割合向上及びMC(市場的価値)・TR(技術的価値)など知財指標の向上 |
・CFP算出割合 32%(2023年:31%) ・知財指標 MC:0.76、TR:1.09(2023年 MC:0.75、TR:1.02) |
||
|
人材育成 |
リーダーとプロフェッショナルの適正比率での配置/共創の場の完成 |
・FFS(Five Factors & Stress)理論を活用した人材育成、配置について検討開始 ・CTO組織内のリーダー交流会や各種ワーキンググループを通じた共創の風土醸成 |
||
|
デジタル変革 |
データドリブン経営 |
・財務KPI第一階層を自動収集できるレベルのマスターデータの整備完了 ・温室効果ガス(GHG)可視化・データの取得プロセス構築完了 |
・主要マスタを中心に全社統一管理に向けたマスタ構成を定義。一部マスタについては管理ツールの試作が完成 ・温室効果ガス(GHG)可視化・削減を目的とした全社統一管理システムを導入。Scope3可視化・削減、製品別LCA算定に向けたプロセス設計を開始 |
|
|
DX推進とプロフェッショナルの育成 |
・IT/DXビジネスパートナーの活動知見の横展開と事業部側でのBPRプロジェクト推進活動の自走化開始 ・CDO組織人材のスキル・コンピテンシーを活用した人材配置最適化の実現 |
・全社のIT/DX課題の半数が業務プロセスに起因することが判明したため、ビジネスプロセス改善手法を活用したBPRプロジェクトを推進 ・可視化したスキルアセスメントを活用した教育施策を実施するとともに組織の人材課題を明確化 |
||
|
IT/デジタルリテラシー向上 |
業務におけるIT/デジタルツールの活用定着 |
・デジタルマインド醸成の全社教育を実施し、従業員のIT/デジタルリテラシーの向上に寄与 |
|
マテリアリティ |
構成要素 |
重要項目 (非財務KPI) |
2025年目標 |
2024年実績 |
|
責任ある事業運営による信頼の醸成 |
安全 |
・安全文化の醸成 ・重大労働災害*4発生件数 ・休業災害度数率 ・重大設備事故*5発生件数 |
・事故災害ゼロに向けた安全文化の確立 ・重大労働災害0件(連結・協力企業含む) ・休業災害度数率0.1以下(国内連結・従業員) ・重大設備事故0件(連結) |
・トップの安全メッセージの配信 ・従業員による「私の安全宣言」安全意識向上と上司との対話の機会創設 ・対話型安全巡視(SCP*6)の拡充 ・重大労働災害1件(連結・協力企業含む) ・休業災害度数率0.64(国内連結・従業員) ・重大設備事故0件(連結) |
|
品質保証 |
・重大製品事故*7件数 ・重大品質コンプライアンス違反件数 |
・重大製品事故0件(連結) ・重大品質コンプライアンス違反0件(連結) |
・重大製品事故0件(連結) ・重大品質コンプライアンス違反0件(連結) |
|
|
化学品管理 |
プロダクトスチュワードシップ推進 |
優先評価対象物質のリスク評価*実施率100%(国内連結) *当社が選定した物質を対象として安全性要約書を発行することにより評価 |
・優先評価対象のリスク評価・安全性要約書の作成100%完了。改訂は49件実施 ・その他、2024年度日本化学工業協会JIPS*8大賞受賞(4年連続) |
|
|
環境 |
・温室効果ガス排出量の削減 ・産業廃棄物埋立量の削減 ・重大環境事故*9発生件数 |
・温室効果ガス(GHG)排出量 2013年比30%削減(Scope1+2)(連結) ・廃棄物埋立量を2024年比で削減(連結) ・重大環境事故0件(連結) |
・Scope1+2:2023年実績:2013年比8.8%削減(連結) ・産業廃棄物埋立量:2023年実績:発生量の0.1%(国内連結) ・重大環境事故0件(連結) |
|
|
人権 |
人権尊重 |
人権デューデリジェンス運用体制の確立 |
・人権研修をグローバルで実施 ・高リスク地域・事業を中心にサプライヤー向けデューデリジェンスを開始(欧州電池規制対応を含む) |
|
|
調達 |
サプライヤーとのコミュニケーションの質の向上 |
・CSRアンケートの回答率 90%以上を維持 ・基準点以上のサプライヤーの比率向上85%以上(2028年目標 90%以上) |
・CSRアンケート回収率 93%(2023年:91%) ・基準点以上のサプライヤー比率 91%(2023年:89%) |
|
|
コンプライアンス |
・「私たちの行動規範」の浸透 ・グローバル・コンプライアンス・スタンダードの徹底 ・内部通報の件数増加 |
・「私たちの行動規範」の浸透度向上 ・海外グループ会社への規程導入100%*10 ・内部通報制度の周知による通報件数の増加 |
・E-ラーニングを通じた全従業員への行動規範の浸透 ・海外グループ会社への規程導入60% ・制度周知による内部通報件数増加(2022年81件→2023年97件→2024年101件) |
|
|
リスクマネジメント |
・統合リスクマネジメント体制の運営 ・セカンドディフェンスラインの機能強化 |
・新統合リスクマネジメント体制の構築 ・グループ内部統制基盤の拡充 ・海外展開着手とリスクデータの一元化 |
・現場からのボトムアップ型リスクに加え、シナリオベースのトップダウンリスクを洗い出し、さらに生成AIを用いた詳細分析を経て重要リスクを特定。経営層による審議によりリスクのランク付けを実施 ・重要リスク(S、Aランクリスク)の旗振り役実務担当者と協議を重ね、リスクシナリオを設定しCXO組織共通ダッシュボードを作成し、事業影響範囲と対応策を具体化 ・2023年に導入した「リスク統制実施評価機能」のサイクルの確実な回転を実施
※詳細は「 |
|
|
自律的で創造的な人材の活躍と文化の醸成 |
「 |
|||
*1 Resonac Pride製品・サービスの認定
当社は、バリューチェーンの川上から川下まで幅広い領域で、当社の製品・サービスが顧客や社会にどのような価値を、どのくらい提供することができたかを可視化することを重要と考え、Resonac Pride製品・サービスとして認定しております。認定に当たっては、パーパスに基づき社会を変えることで顧客や社会に提供した価値や、当社が大切にする4つのバリューの発揮の妥当性、製品環境アセスメント・レピュテーションなどのリスク評価、売上計画やシェアなどの将来性・インパクト、世界共通のゴール(SDGs)との関連性などの観点で第三者の視点を入れ評価しております。
*2 CFP(Carbon Footprint of Products):製品ライフサイクル全体又は対象領域において排出されるGHG排出量を、CO2に換算して算出したもの
*3 CRM(Customer Relationship Management):顧客関係管理
*4 障害認定の対象(労働基準法障害等級1~7級)となる場合、又は死亡を重大労働災害と定義する
*5 火災、漏えい、設備損傷等のうち、以下を伴うものを重大設備事故と定義する
①事業所内で休業災害以上が発生
②事業所外で緊急搬送、避難勧告、環境汚染等が発生し、社会的影響が大きい
*6 SCP(Safety Communication Program):管理監督者が行う指摘を目的としない安全巡視活動。管理者自らが、現場の状況観察や現場の方との会話を通じてリスクを認識し、問題解決の責任をもつことを求めております。
*7 定義は当社事故基準による
*8 JIPS(Japan Initiative of Product Stewardship):日本化学工業協会により、化学品管理の自主的かつ自律的な取り組みの一環である安全性要約書の公開において顕著な活動を行った会員企業に授与される賞
*9 定義は当社事故基準による
*10 KPIを見直し
(2)TCFD*及びTNFD提言に沿った情報開示
(TCFD及びTNFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示)
当社グループは、長期ビジョンの主要戦略を実行するため、気候変動対策を含むサステナビリティ重要課題を特定し、社内浸透を進めることを明確に定めております。2019年には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、2024年には自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に賛同しました。株主・投資家などのステークホルダーと当社の気候変動取組みについてのエンゲージメントを強化するため、TCFD及びTNFDが推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスクと影響の管理」「指標と目標」の4つの項目に基づいて、当社グループの気候関連及び生物多様性への取り組みを開示します。
* 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)は2023年10月に解散し、その機能はIFRS財団に引き継がれております。
① 環境に関するガバナンス
(取締役会の役割・監視体制)
当社グループは、気候変動をはじめとする環境に関するリスクや事業機会、目標や具体的な取り組み施策については、CEOが統括、CSuOが推進責任を担い、サステナビリティ推進会議や経営会議で協議・決定するとともに、進捗管理・モニタリングを定期的に実施し、必要に応じて対応策・是正策を検討します。
取締役会は、サステナビリティ推進会議や経営会議で協議・決定された内容の報告を定期的に受け、企業価値の最大化の観点から議論・監督を行っております。また、長期視点での経営を強く促し、当社グループの持続的な成長を促すため、2022年から長期ビジョンにおける取り組み・気候変動を含むサステナビリティ課題への対応などについて、社内取締役と執行役員の業績評価指標に含めています。また、2024年3月に取締役会の気候変動対応や生物多様性保全に関する役割を明確にするため、コーポレートガバナンス基本方針を改定しております。
なお、カーボンニュートラルへの対応については、全てのCXOと事業部門が参画する全社横断型のカーボンニュートラルプロジェクトにおいて、取り組みを進めています。
② 気候変動に関する戦略
(短期・中期・長期の気候関連リスク・機会及び対応)
当社グループは、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、気候変動を「事業機会」と「リスク」の両面で捉え、企業としての社会的責任の実践とさらなる競争優位性の構築を図り、「脱炭素に向けた製品・サービスの提供」「パートナーとの共創」「エネルギー効率の改善」「再生可能エネルギーの使用拡大」などによりバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に取り組んでまいります。そのような中で、気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響(事業機会・リスク)について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などが発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」の二つのシナリオでリスクと機会を分析し、当社の対応の必要性を改めて確認しております。事業における影響評価については、2023年は半導体・電子材料セグメントで実施し、2024年はモビリティセグメント、イノベーション材料セグメントなどで順次実施しており、2025年には全事業において完了する予定です。影響評価が終わったセグメントから開示しています。
(気候関連のリスク・機会と主な対応)
・想定期間:2030年度まで
・採用シナリオ:・4℃シナリオ:IPCC/RCP8.5, IEA/STEPS
・1.5/2℃シナリオ:IPCC/RCP2.6, IEA/SDS(一部IEA/NZE)
・時間軸の定義:短期:3年未満、中期:3年~10年未満、長期:10年~30年
・シナリオ分析対象:既存事業
③ 生物多様性に関する戦略
(短期・中期・長期の自然関連リスク・機会及び対応)
当社グループは、ネイチャーポジティブの実現に向けて、事業を通じた気候変動への対応や循環経済の実現を進めながら、自然への依存・影響を鑑み、影響低減、管理・保全活動に取り組んでまいります。その中で、直接操業とバリューチェーンにおける、自然への依存・影響及び自然関連のリスクと機会を、TNFDが推奨するLEAPアプローチに沿って分析し、当社の対応の必要性を改めて確認しております。2024年は、当社グループの主要事業及び主要サプライヤーについての評価を開始しました。
優先地域の評価(Locate)
Locateフェーズでは、当社グループの製造拠点及び主要サプライヤー拠点の位置情報を把握して、その周辺にある自然の状態などを評価しました。国内外にある計59の製造拠点と計40の主要サプライヤー拠点を評価対象としました。評価作業は、拠点周辺のバイオームを特定した後に、TNFDが定義している5つの基準(保全重要度、生態系の完全性、生態系の完全性の急激な劣化、物理的な水リスク、生態系サービスの重要度)に沿って、外部ツールなどで得られるデータを用いて、拠点ごとに実施しました。
評価結果の傾向を見ると、当社グループの製造拠点の中で保全重要度や生態系の完全性が高い拠点がいくつか見られ、今後優先して対応を進める必要があることを認識しました。
依存と影響の評価(Evaluate)
Evaluateフェーズでは、当社グループの主要事業における重要な自然への依存と影響を特定し、その大きさを評価しました。TNFDが推奨するツールであるENCOREや社内情報などを参考に評価を実施し、ヒートマップで結果を整理しました。直接操業では、製造工程に伴う大気汚染やGHG排出、汚染物資の排出、騒音、光害などの攪乱に関する影響が大きいことが分かりました。また、水資源の供給や水質浄化などの水に関する依存が大きいことが分かりました。
リスクと機会の評価(Assess)
Assessフェーズでは、LocateフェーズとEvaluateフェーズの評価結果を踏まえて、当社事業における自然関連のリスク・機会を特定して整理しました。
|
機会・リスクの種類 |
分類 |
顕在 時期 |
当社への 影響 |
領域 |
対応策 |
気候 影響度*1 |
自然 影響 *1 |
|
|
1.5/2℃ |
4℃ |
|||||||
|
移行機会・リスク |
リスク |
中期 |
カーボンプライシング(ICP)導入による、税負担(コスト)の増加 |
全ての 事業 |
・2030年GHG排出量削減目標の見直しとロードマップ策定 ・事業ごとの目標設定/削減取り組みの実施 ・再生可能エネルギーの導入拡大 ・原燃料転換 ・GXリーグへの参画 |
大 |
大 |
- |
|
リスク |
短期~ 中期 |
GHG排出規制強化による再生可能エネルギーへの切り替え・調達コスト増加 |
・太陽光発電の導入や水力発電設備等の活用 |
中 |
- |
- |
||
|
機会・ リスク |
短期~ 中期 |
政府による企業の脱炭素取り組みに対する政策上の支援 |
・次世代グリーンパワー半導体用8インチSiCウェハー開発計画(NEDOグリーンイノベーション基金事業採択) ・革新的分離剤による低濃度CO2分離システムの開発計画(NEDOグリーンイノベーション基金事業採択) ・半導体材料グローバルサプライチェーンを強化(経済産業省海外市場調査等事業費補助金(インド太平洋地域サプライチェーン強靱化事業)採択) |
○ |
○ |
- |
||
|
機会・ リスク |
短期~ 中期 |
気候変動に関する消費者の行動・意識変化に伴う、売上の増加・減少 |
・低炭素社会のニーズに対する製品拡販、新製品開発、競争力強化 ・共創の舞台での長期研究開発促進 |
○ |
○ |
- |
||
|
機会・ リスク |
中期 |
プラスチック汚染・資源循環に関する消費者の行動・意識変化に伴う、売上の増加・減少 |
・自社の製造過程の廃棄物の削減及び循環利用による廃棄コストの削減 ・リサイクル原料やバイオ原料の利用、技術開発 ・リサイクルの容易性向上や製品寿命の延長 ・海洋プラスチックゴミの再利用などの地域と連携した資源循環の取り組み |
- |
- |
○ |
||
|
リスク |
中期 |
保全上重要な地域における取水や水質・大気汚染などの自然への影響の低減に向けた規制強化への対応コスト増加、レピュテーションの低下 |
・化学物質管理の徹底 ・水質環境負荷低減に向けた取り組み ・水の効率的な利用や使用量の削減 |
- |
- |
○ |
||
|
リスク |
短期~ 中期 |
お客様からの低炭素化に対する取り組みと開示要求の増加 |
・CFP算定体制を整備し、炭素排出量の見える化、削減計画策定 |
○ |
○ |
- |
||
|
リスク |
中期 |
原材料の持続可能性対応、トレーサビリティ把握などに伴うコスト増加 |
・持続可能な方法で生産された原材料の調達 |
- |
- |
○ |
||
|
機会・ リスク |
短期~ 中期 |
社会や顧客からの環境課題解決ニーズの獲得状況に伴う投資家からの評価の変化 |
・社会や顧客の課題解決に貢献するための当社製品/サービス(Resonac Pride製品・サービス)の付加価値向上 積極的な気候変動/循環型社会に向けた対応を進めることによる投資の呼び込みなど |
○ |
○ |
- |
||
|
機会 |
中期 |
生物多様性保全に資する製品の展開による需要獲得 |
・バイオスティミュラント資材の販売など、自然への影響低減や自然の保全・復元・再生に寄与する製品の販売 |
- |
- |
○ |
||
|
機会・ リスク |
中期 |
取水・排水域を中心とした生物多様性保全活動による水資源の調達におけるレジリエンス強化、レピュテーションの向上 |
・拠点内及び拠点周辺における生物調査、希少生物の保護や地域の生物多様性保全 ・工業用水として利用する霞ヶ浦流域の環境再生事業の継続と推進(自然共生サイト認定エリアの維持・拡大) |
- |
- |
○ |
||
|
機会・リスクの種類 |
分類 |
顕在 時期 |
当社への 影響 |
領域 |
対応策 |
気候 影響度*1 |
自然 影響 *1 |
|
|
1.5/2℃ |
4℃ |
|||||||
|
移行機会・リスク |
リスク |
短期~ 中期 |
原材料の高騰化、素材の切り替えによる調達コスト増加 |
半導体・電子材料 |
・生産性改善による原材料消費量の削減 |
小 |
小 |
- |
|
モビリティ |
・資源循環に貢献する材料、部材の開発促進 |
中 |
小 |
- |
||||
|
全ての 事業 |
・原材料の調達先・リソースの多様化 ・リサイクル原料の活用検討 ・供給不安原料の内製化・地産地消型生産シフト ・サプライチェーン(サプライヤー/顧客)とのGHG削減に向けた協働 ・主要原材料の価格変動に対するフォーミュラ制(原料価格変動分を製品価格に自動反映)の適用 |
○ |
○ |
- |
||||
|
リスク |
短期~中期 |
顧客の行動・意識変化に伴う、売上減少 |
半導体・電子材料 |
・半導体気候コンソーシアム(SCC)各ワーキンググループへの参加 |
中~大 |
- |
- |
|
|
モビリティ |
・環境配慮型製品の拡充 |
小~中 |
- |
- |
||||
|
全ての 事業 |
・製造工程におけるGHG排出量削減及び顧客への情報開示 ・製品・技術の活用を通じて、社会でどの程度の量のGHGが削減されたかを定量的かつ科学的に算定 (GHG削減貢献量・CFP算定) ・環境配慮型製造工程の検討 |
○ |
○ |
- |
||||
|
機会 |
短期~ 中期 |
EV/自動運転の需要増に伴う売上増加 |
半導体・電子材料 |
・SiCパワー半導体需要増大への対応 ・部品の小型化・軽量化に貢献する材料開発 |
大 |
大 |
- |
|
|
モビリティ |
・軽量化に貢献する材料、部材の開発・拡販 ・EV拡大地域への拠点拡充、オンサイト開発、現地生産 ・パワーモジュールインテグレーションセンターにおける顧客共創 ・リサイクルアルミ技術に関する顧客共創の推進 |
中 |
中 |
- |
||||
|
機会 |
短期~ 中期 |
顧客のScope3排出量削減に寄与する低消費電力半導体、環境配慮型製品の需要増による売上増加 |
半導体・電子材料 |
・環境適合製品設計アセスメント ・SiCパワー半導体需要増大への対応 ・お客様製品の部品の小型化・軽量化に貢献する材料開発 ・次世代グリーンパワー半導体用8インチ化SiCウェハー開発 ・低GWP値の半導体用エッチングガス開発 ・GHG削減プロセスに貢献できる封止材の開発 ・メモリ用途接着フィルムの薄膜化への対応 ・米国シリコンバレーにパッケージングソリューションセンター設置 ・半導体気候コンソーシアム(SCC)各ワーキンググループへの参加 ・先端半導体コンソーシアム「TIE(Texas Institute for Electronics)」参画 |
大 |
中 |
- |
|
|
機会 |
短期~ 中期 |
テレワーク化・自動化・データ化普及による、サーバー関連設備・データセンターの脱炭素化に伴う売上増加 |
大 |
小 |
- |
|||
|
機会・リスクの種類 |
分類 |
顕在 時期 |
当社への 影響 |
領域 |
対応策 |
気候 影響度*1 |
自然 影響 *1 |
|
|
1.5/2℃ |
4℃ |
|||||||
|
物理リスク |
リスク |
短期 |
気候変動・生態系の劣化起因の自然災害による製造拠点の操業停止、設備の修復費用の増加、原材料の調達不安定化による収益減少 |
全ての 事業 |
・各拠点及び主要サプライヤーの洪水リスク分析の実施 ・定期的なリスクの抽出/低減活動、BCP(事業継続計画)の強化 |
小*2 |
小*2 |
○ |
|
リスク |
短期 |
気候変動や生態系の劣化に起因する、水不足による操業停止、対策費用の増加による収益減少 |
・水の効率的な利用や使用量の削減 ・地元のステークホルダーとの水の利用、節水について積極的に対話 |
- |
- |
○ |
||
*1 気候変動及び生物多様性に関する機会とリスクの財務的影響については算定を順次進めているため、段階的に開示してまいります。このため同じリスク・機会でも前年度開示した影響度と異なる場合があります。
大:気候変動に対する規制・政策等により今後も当社への影響が見込まれ、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が100億円以上と試算されます
中:気候変動に対する動きが既にあり、今後も当社への影響が見込まれ、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円以上100億円未満と試算されます
小:気候変動に対する動きがあり、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円未満と試算されます
〇:気候変動及び生物多様性への影響があると評価しています
―:気候変動及び生物多様性への影響がないと評価しています
*2 物理リスクについて本年は国内・海外グループ会社21拠点の分析をハザードマップ・AQUEDUCTを活用して追加(合計57拠点)で実施しました。100年に一度の災害が発生した場合には昨年の分析結果と合わせて20拠点がリスクに曝される事になりましたが、再現期間を加味した年間影響額は1.5/2℃・4℃どちらのシナリオでも小さいことから影響度は「小」としております。また、主要サプライヤーの40拠点の分析を行い、事業への影響は小さい事を確認しました。
④ 気候変動及び生物多様性に関するリスクと影響の管理
(リスクを評価・識別・管理するプロセス)
当社グループは、各事業の気候変動や生物多様性のリスク評価を順次実施し、気候変動影響による「移行リスク」「物理リスク」、自然関連の依存・影響・リスク評価を実施し、当社グループにとって重要なリスクを特定して対応策を立案しております。リスクの特定、対応策の立案にあたっての重要事項は取締役会へ報告しております。今後もリスク評価を継続し、リスク・対応策を更新していくとともに対応策の進捗状況のモニタリングを実施してまいります。
(全社リスクマネジメントへの統合状況)
リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、グループ共通のフレームワークで統合リスクマネジメントの取り組みを行っております。気候変動・生物多様性関連のリスクを含め当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があるリスク情報は、全社的に展開するリスク棚卸を通じて、リスクマネジメントシステムに一元的に登録されます。重要度や優先度の非常に高いリスク(重要リスク)については、専門委員会(リスクマネジメント委員会)で審議します。重要事項は経営会議で審議・決定の上、取締役会に報告されます。
リスクマネジメントの流れ(2025年3月26日現在)
⑤ 気候変動における指標と目標
(GHG排出量目標及び実績)
長期ビジョンで掲げる「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」を目指して、「2050年カーボンニュートラル」にチャレンジしております。また、そのマイルストーンとして「Scope1・2:2030年GHG排出量30%削減(2013年比)」を目標としております。2023年は、Resonac Graphite Austria GmbHにて使用電力量の100%を風力発電由来の電力に変更したほか、レゾナックグループ全体で115千MWhの再生可能エネルギー由来の電力を購入しました。GHG排出量については、太陽光発電など非化石エネルギーへの転換などにより、2013年比で8.8%削減しました。今後は、目標達成に向けた取り組みの加速、情報開示をさらに進めてまいります。Scope3についても、算定が完了したカテゴリーから順次当社ウェブサイトで開示しております。今後も算定の精度向上を図るとともに削減に取り組んでまいります。
(GHG排出量削減ロードマップ)
「2050年カーボンニュートラル」に向けて、2030年までは徹底した合理化、高効率化、省エネルギー、ガス燃料への転換(高効率コージェネレーションシステム)、自社の水力発電や再生可能エネルギーを活用した製品製造などを進めます。2030年以降は2050年に向けて、アンモニア・水素への燃料転換・混焼なども積極的に推進してまいります。目標達成に向けては各事業部での目標設定・削減施策立案・実行を進めるほか、カーボンニュートラルプロジェクト主導のもと、全社横断施策も実行し、科学的根拠に基づく削減目標の設定も進めてまいります。また、自社の事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目標に、新たに使用電力の再エネ化のロードマップも作成しました。加えて、CO2分離・回収技術と回収CO2の化学品原料としての利用により、カーボンニュートラルを達成してまいります。
カーボンニュートラルへの道筋
⑥ 生物多様性における指標と目標
当社グループは、環境パフォーマンスをモニタリングし、目標を設定しております。現時点で開示できていないTNFDが推奨するグローバル中核開示指標については、今後も検討を進めます。
自然関連のモニタリング指標と目標
|
TNFDグローバル中核開示指標 |
モニタリング内容 |
目標設定状況 |
|
排水排出 |
排水量、水質汚染物質の排出量をモニタリングして開示 |
COD、BOD、窒素、リンを対前年度で削減することを目標に掲げる |
|
廃棄物の発生と処理 |
産業廃棄物の埋立量をモニタリングして開示 |
2025年目標として廃棄物埋立量を2024年比で削減を掲げる |
|
プラスチック汚染 |
廃プラスチック発生量、プラスチック再資源化量をモニタリングして開示 |
- |
|
GHG以外の大気汚染物質 |
大気環境負荷物質排出量をモニタリングして開示 |
- |
|
水不足の地域からの取水量と消費量 |
取水量をモニタリングして開示。また、各拠点の水リスク分析も実施 |
エレクトロニクス事業本部生産センターにおいて、原単位年1%改善を目標に掲げる |
|
自然への影響に伴う罰金・起訴の金額 |
環境汚染に関する法令違反件数をモニタリングして開示 |
人の健康や環境に悪影響を与える重大な環境事故の発生ゼロを目標に掲げる |
(3)人的資本に関する情報開示
① 人的資本に関する戦略
当社の企業価値向上のためには、事業戦略(ポートフォリオ戦略)と人材戦略を合致させることが必要不可欠です。パーパス・バリューの実践によるレゾナックならではの共創文化を醸成し、共創型人材*を創出することで、事業のさらなる成長を実現します。
当社のマテリアリティ「自律的・創造的な人材の活躍と文化醸成」及び事業戦略に連動している4つの人材マテリアリティを核に、長期では共創型人材を生む組織づくり、短中期では共創型人材が機能性化学メーカーとして事業成長を実現するための施策を進めてまいります。
*共創型人材:社会課題の解決に向け、社内外の人々と自律的につながり、共創を通じて創造的に変革と課題を解決できる人材
当社はグローバル全体における最適な人材マネジメントを行うための各人事施策の実行を加速させております。特に2022年から2023年にかけては人事制度の統合やタレントマネジメントの仕組みの構築、人事システムの導入などの主要な人事施策の変革を実施しました。経営統合に合わせ極めて短期間で一気に全体を刷新し、すでに運用を開始しております。経営コア人材の育成やタレントレビュー、後継者計画などの施策については、グローバル標準の人材マネジメントシステムを導入し、人材のデジタル基盤を確立するとともに、施策に合わせてデータを活用できる仕組みを構築しております。2023年までは主に国内を中心に実施してきたこれら各施策について、2024年からはグループグローバル全体での展開を進めております。
共創型人材を育成するリーダーを育てるために、「共創型リーダーシップトレーニング」を2022年10月より実施しております。部下を持つマネージャーや、OJT等で後進の育成にあたる非管理職の社員も多数受講しております。共創型リーダーシップトレーニングはレゾナック設立前に行われたエンゲージメントサーベイの結果を受け、ピープルマネジメントの基本的な知識・スキルの再学習・実践確認のために実施しており、MBOの理解や、効果的なOJTのポイント、適切なフィードバック・コーチングについて学習する内容です。研修内に豊富に設けられたグループワーク、ロールプレイにより、理解だけでなく、実践状況を参加者が振り返ることができる内容です。2024年から海外展開を推進しており、2024年上半期に欧州、中国、米国、東南アジアでの社内講師育成トレーニングも実施しております。
今後もレゾナックグループの人材開発の土台となる施策として継続的に展開してまいります。
また、次世代を担うリーダーを育成するため、経営陣が全社最適視点で組織課題や後継者候補・次世代リーダー候補人材についてオープンに話し合う場として「全社タレントレビュー」の会議体を発足しております。各部門で作成した後継者計画の内容や人材育成方針について議論するとともに、グループ全体として管理するタレントプール(次世代リーダー候補者の母集団)の構築に取り組んでおります。2023年には国内単体の全リーダーポジションを対象に、CEOをオーナーとするボトムアップでのタレントレビューを実施しており、今後はグローバルに対象を拡大し、海外のハイポテンシャル人材の可視化や国を超えたアサイメントの適用の検討を開始します。また、タレントレビューについては、実施状況を指名諮問委員会に対し定期的に報告し、プロセスの妥当性を確認しております。
レゾナックは従業員の声をタイムリーに汲み取り、各種施策を通じて経営に活かしていくことを重視し、定期的にエンゲージメント調査を行っております。法人格統合前(2021年)のエンゲージメント調査を経て、経営理念の共感や心理的安全性の確保、仕事のやりがいなどが課題として挙がり、その対応としてさまざまな施策を展開してまいりました。
心理的安全性やアンコンシャスバイアス、建設的な議論など共創に必要な要素について変容を促す「共創型コラボレーション力強化研修」は全マネージャーを対象に実施し、エンゲージメント調査における心理的安全性の肯定的回答率は着実に向上しております。
エンゲージメント調査の分析結果から全社的な優先課題を設定し、継続的な改善に取り組む方針です。
当社の人的資本に関する戦略及び取組の詳細については、当社Webサイトに掲載している最新の統合報告書をご参照ください。
https://www.resonac.com/jp/sustainability/report/report.html
② 人的資本に関する指標及び目標
|
構成要素 |
重要項目 (非財務KPI) |
|
2024年実績 |
|
事業が求める人材の供給 |
将来人材ポートフォリオの策定 (提出会社及び㈱レゾナック) |
対象部門のポートフォリオ策定 |
対象2部門策定 |
|
後継者計画準備率 (提出会社及び一部国内グループ会社) |
150%*1 |
142.7% |
|
|
ポートフォリオのロールモデル・職種・育成計画の策定(提出会社及び㈱レゾナック) |
対象部門のロールモデルほか策定 |
対象2部門策定 |
|
|
選び選ばれる魅力構築と発信 |
|
対前年比改善 |
|
|
|
対前年比改善 |
|
|
|
男性育休取得率・取得日数 (提出会社及び㈱レゾナック) |
取得率:100% 日数 :2030年60日以上を目標とし各年目標定めず |
取得率:97% 日数 :37.3日 |
|
|
男女賃金格差(提出会社及び㈱レゾナック) |
- |
75.6% |
|
|
自律的なプロフェッショナルの創出 |
共創型リーダーシップトレーニングに参加したラインマネージャーの割合 (提出会社及び㈱レゾナック) |
90% |
87% |
|
共創を生む 企業文化作り |
パーパス・バリュー実践度のサーベイスコア(連結) |
対前年比改善*2 |
パーパス実践:57% バリュー実践:67% |
|
パーパス・バリュー共感度のサーベイスコア(連結) |
対前年比改善*2 |
パーパス共感:71% バリュー共感:74% |
|
|
|
対前年比改善 |
|
|
|
|
対前年比改善*2 |
|
|
|
|
対前年比改善*2 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
検討中 |
|
|
|
障がい者雇用率(㈱レゾナック) |
2.50%*2 |
2.51% |
*1 後継者計画準備率:(後継者プール人数÷事業部長及びCXO-1以上のポジション数)×100
*2 2025年目標値につきましては、2024年実績を踏まえ見直しを実施しております。
なお、当社グループにおいては、指標及び関連するデータの管理とともに具体的な取り組みの展開を進めておりますが、連結グループに属する全ての会社が対象となっていない指標もあります。そのため、一部指標においては当社及び㈱レゾナック、一部国内グループ会社を対象に記載しております。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる主要なリスクには、以下のものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクを最小化するためにリスク管理体制の整備・充実に努めており、詳細は以下「(1)リスクマネジメントの取組み」に記載しております。
なお、これらの事項は有価証券報告書提出日(2025年3月26日)現在において判断したものであり、当社グループに関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
また、米国新政権の諸施策及びウクライナや中東における不安定な政治情勢等による事業への影響について、今後も注視してまいります。
(1) リスクマネジメントの取組み
①リスクマネジメント体制
当社グループでは、事業経営に与えるリスクとその影響を明確化し、経営資源の適正配分を実現するため、ISO31000に準拠したリスクマネジメント体制を整備しております。
CEOが議長を務めるリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント体制やグループの重要リスクやその対応策など、トップマネジメントによる組織横断的な審議を行っております。リスクマネジメント委員会での審議事項は経営会議で審議・承認された後、取締役会でも報告され、取締役によるリスクマネジメント体制の妥当性や有効性の評価や推進状況の監督等が行われます。
また、国内の事業部・事業所及び主要なグループ会社に、各部門のリスクの識別やリスクの対応策の推進などの実行責任を負うリスクオーナー、リスクオフィサー、リスクマネージャーを配置するとともに、各CXO組織は、各部門によるリスク評価や対応策について、全社を横断し俯瞰する視点からレビューや支援などを行い、相互に連携を図りながら、経営と現場が一体となって統合的なリスクマネジメントを推進する体制を構築しております。
〔リスクマネジメント体制図〕
②当社のリスクの定義
リスクは戦略リスクとオペレーショナルリスク、ハザードリスクに分けることができ、さらに戦略リスクは計画上の前提が変動するリスクと、策定した戦略が実行されないリスクの二つに分けることができます。企業価値の持続的成長のためには、従来の安全・コンプライアンス重視の“守りのリスクマネジメント”だけでなく、適切なリスクテイクを促す“攻めのリスクマネジメント”が必要であり、リスクを総合的に判断し、経営戦略に反映してまいります。
③リスク棚卸の実践
年に1回、課・グループといった組織単位で事業活動の潜在リスクを含めた網羅的なリスクの洗い出しと評価(リスク棚卸)を実施しております。リスク棚卸の結果は、事業部・事業所・グループ会社の拠点単位でトップによるレビューを行い、システムに登録されます。登録されたリスクの中から、発生頻度と影響度の観点から分類を行い、重要度や優先度の非常に高いリスクを重要リスクとして位置づけ、リスクマネジメント委員会へ報告し、グループの重要リスクとその対応策などを審議します。
④全社重要リスクテーマの特定と優先順位付け
当社では、CEOが議長を務めるリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント体制やグループの重要リスクやその対応策など、トップマネジメントによる組織横断的な審議を行っております。リスクマネジメント委員会での検討内容をもとに、経営幹部勉強会において、「全社重要リスクテーマ」の特定と優先順位づけを行い経営陣の膝詰めの議論により、全社重要リスクを発生可能性と事業への影響及び影響額でプロットし、Sランクリスク(会社経営上の最重要リスク)及びAランクリスク(会社目標達成上の重要リスク)に特定し優先順位付けを行っております。これらリスクに関し、Sランクリスクは、最も厳重な監視や即時の対応策の実施、Aランクリスクは、定期的なレビューと迅速な対応計画の準備を行っております。
(2) 個別事業の経営成績における大幅な変動
当社グループは、半導体・電子材料、モビリティ、イノベーション材料、ケミカルの事業領域において様々な製品の製造・販売を行っております。主要事業において想定されるリスクとして以下のようなものがありますが、リスクはこれらの事業に限定されるものではありません。
①半導体・電子材料セグメント
当社グループの半導体・電子材料セグメントの各種製品は、モバイル機器、データセンタ、パワーモジュール、ITインフラストラクチャ、電気自動車や先進運転支援システム搭載車などに使用され、世界のマクロ経済や業界動向等に基づく最終製品需要の変化により、その需要は大きく影響を受けます。また、これらの市場は、急激な技術変化や製品の陳腐化による価格低下などの影響を受ける国際的競争が厳しい事業です。更に、市場ニーズに合致した製品を適時・適切に開発・提供するため、グローバルなサプライチェーン網を整備しておりますが、地政学リスク等による原材料・エネルギー・物流コストの高騰、サプライチェーンの寸断などの可能性があります。
こうしたことから、需要や競争環境の大幅な変動、サプライチェーン上の重大なリスクの発生、あるいは、為替の大幅な変動などの場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
そのため、顧客のニーズや市況動向の把握に努め、新製品や技術の開発や製造プロセスの改善などに取り組むとともに、リスクの早期検知及び顧客への安定供給を実現すべく、サプライチェーン・マネジメント体制の強靭化に継続的に取り組んでおります。
②モビリティセグメント
当社グループは、地球環境保護を目的とした燃費・CO2排出量の規制強化及び地政学的リスクの高まりなど、グローバルなモビリティ市場の動向に影響を受けます。モビリティ市場は、カーボンニュートラルの実現やCASE(※)の進展などに伴い、自動車の電動化、軽量化、電装化、安全性・快適性向上のための商品開発が求められており、将来の中長期的な拡大が見込める有望な市場であります。一方、競合他社、新規参入者との競争環境も激化しており、新たな技術・製品の開発や開発リードタイム短縮など顧客の要求水準やニーズの変化への対応が遅れるリスクに加え、新しい技術・製品により、既存事業が陳腐化し、市場競争力を失い、販売価格が下落することがあります。また、EVシフトによる内燃機関車市場の縮小により、既存事業の収益性が低下するリスクもあります。こうしたことから、需要や競争環境の大幅な変動などにより、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
そこで、当社グループでは、当社グループが有する有機・無機材料技術を活用することでモビリティの基本性能である「走る・曲がる・止まる」を大幅に向上させる材料や部品のモジュール化などのソリューションを提供することで、既存顧客における採用モデル拡大や新規顧客開拓を一層推進します。
※CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング/サービス、Electric:電動化)
③ケミカルセグメント
〔石油化学事業〕
当社グループは、大量の原料用ナフサ等を購入(輸入を含む)しており、原油価格の変動や需給バランス、為替等の要因によりナフサ価格等が変動し、販売価格との間に十分なスプレッドが確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。また、石油化学事業の収益は、需給バランスによるところが大きく、他社による大型プラントの建設等により需給が緩和した場合や、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。さらに、気候変動影響への懸念による世界的なカーボンニュートラル化推進への対応のスケジュールによって、要求される投資や費用支出が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、コストダウンの推進や販売方法の見直し等収益の安定化に努めております。
〔グラファイト事業〕
当社グループは、アジア、北米、欧州にて黒鉛電極を生産し、その製品をグローバルで販売しており、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、需給バランスの悪化により販売価格と原材料調達価格の間に十分なスプレッドが確保できず、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、在庫を市況に応じて適正な水準を維持する、コストダウンを強化するなど、収益基盤強化に積極的な取り組みを行います。
④グローバルな事業活動
当社グループは、アジア、北米、欧州等にて生産及び販売活動を行っておりますが、海外での事業活動には、予期しえない法律又は規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争等による社会的混乱等、国内における事業運営とは異なるリスクが存在します。ウクライナ及び中東における不安定な政治情勢が長期化し、その影響が他の地域へ波及することにより、原燃料価格や物流コストの更なる上昇に繋がるリスクがある他、経済安全保障をめぐる国際情勢の変化によるサプライチェーンの途絶などの可能性もあります。
こうしたリスクにより、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑤企業買収、資本提携及び事業再編
当社グループは、事業領域の拡大や収益性向上を目的として国内外における企業買収、資本提携及び事業再編を実施しております。当社グループでは、買収検討の対象企業のデューデリジェンスを慎重に行い、買収後の事業統合の計画を入念に検証することでリスクの低減に努めておりますが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境の変化により、当初期待していた成果が得られない場合には、のれん及び無形資産の減損等により、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行った場合、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(3) 財務状況及びキャッシュ・フローの予想以上の変動
①為替相場の大幅な変動
当社グループは、輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じてリスクの最小化に努めておりますが、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。特に、米ドルをはじめとする他の通貨に対する急激な円高は、国内から海外市場に輸出される製品の価格競争力を弱め、一方、円安は、海外から輸入する原材料価格を上昇させ、それぞれ当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
また、為替相場の変動は、海外グループ会社の財務諸表の円貨への換算を通しても、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
②金融市場の動向や調達環境の変化
金融市場の動向や当社グループの財務指標の悪化が、一部借入金等の財務制限条項への抵触による期限前弁済を含め、当社グループの資金調達や支払金利に対して影響を与え、これらを通して、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当初想定された業績及び財務状況並びに財務指標等が実現されない場合には、信用格付けが引き下げられる可能性があり、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れの条件にも影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対して、財務体質の改善・強化に加えて、取引金融機関とのコミットメントライン契約等による流動性の確保、返済・償還額の平準化や固定金利・変動金利のバランス等を考慮した適切な資金調達に努めております。
③退職給付債務
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回り等に基づき算出されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更等が、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
④固定資産の減損
当社グループの連結財政状態計算書に表示されるのれん、無形資産、土地等の固定資産について、事業環境の悪化による収益性の低下や、保有資産時価の著しい下落等が生じた場合、固定資産に減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
また、日立化成㈱に対するTOBの結果、のれん及び無形資産の金額が増加しており、当社グループの業績が悪化した場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑤繰延税金資産
当社グループは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しておりますが、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の修正が必要となり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(4) 特有の法的規制
当社グループが行っている事業は国内外の各種の法規制を受けます。その規制内容は、「石油コンビナート等災害防止法」「消防法」「高圧ガス保安法」「労働安全衛生法」等の保安・安全に係るもの、「大気汚染防止法」「水質汚濁防止法」「廃棄物処理法」「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」「毒物及び劇物取締法」等の環境や化学物質に係るもの等があり、当社グループはこれら法規制の遵守を徹底しております。特に製造設備等に関連する法規制については、グループで法規制情報を共有するとともに、設備の新設・変更等に際し遵守状況を確認しております。しかしながら、万一遵守できなかった場合は、当社グループの活動が制限される可能性があります。また、これら法規制が一段と強化された場合には、コストの増加につながり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(5) 重要な訴訟事件
当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めておりますが、広範な事業活動の中で、訴訟の提起を受ける可能性があります。
(6) その他
①研究開発
当社グループは、川中の素材技術と川下のアプリケーション技術を併せもつハイブリッド型の先端材料企業グループとして、技術融合によるイノベーションの実現に重点を置いております。川中素材の「作る化学」と、川下アプリケーションの「混ぜる化学」、そして評価・シミュレーション、構造解析、計算科学の「考える化学」、この3つの技術の融合によって市場に幅広い機能を提供し続けて事業を強化・創出する研究開発に注力しております。
これらの研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
②知的財産
当社グループは、産業財産権やノウハウ等の知的財産権が事業の競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、自社権利の取得、活用及び保護、並びに他社権利の尊重に努めております。しかしながら、自社権利を適切に取得、活用できなかったり不当に侵害されたりした場合、又は、第三者の知的財産権を侵害する事象が発生した場合、若しくは保有するノウハウ等が不当に第三者へ流出した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
③品質保証・製造物責任
当社グループは、「品質保証・品質管理規程」の制定や、品質保証を所管・統括・推進する組織の整備、ISO9001等の積極的な取得により、品質管理に万全を期すべく努めております。しかしながら、重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起といった事象が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループは、確実な工程管理を行うための設備維持、適切な測定機器設置、作業マニュアル整備、従業員教育等に努め、必要十分な検査実施による不良品流出防止の体制を構築するとともに、国内外を対象とした生産物賠償責任保険に加入しております。
④事故・災害
当社グループは、安全・安定操業の徹底を図り、製造設備の停止や設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、製造設備について定期的な点検を実施しております。しかしながら、事故、大規模な自然災害等の発生により、製造設備で人的・物的被害が生じた場合、当社グループの社会的信用が低下し、事故災害への対策費用や生産活動停止による機会損失により、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、リスクアセスメントを含む適切なリスクマネジメントを実施し、事故防止及び事故発生時の被害の極小化を図っております。
⑤環境に対する影響
当社グループは、製品の開発から製造、流通、使用を経て廃棄に至る全ライフサイクルにおける「環境・安全・健康」を確保することを目的とした「レスポンシブル・ケア」活動を推進しております。しかしながら、周囲の環境に影響を及ぼすような事象が発生した場合には、社会的信用の失墜を招き、補償などを含む対策費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、全事業場において網羅的なリスク棚卸による環境リスク評価を行い、環境施設の安全対策を進めるとともに、経年劣化が原因による環境汚染防止のための点検・補修等を計画的に実施しております。また近年益々高まっている環境問題に対する社会的要求や将来的な環境法規制の強化へ適応するために、経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑥感染症の蔓延
世界的な感染症の流行が発生した場合、製造拠点における生産停止や営業拠点を始めとするサプライチェーンでの当社製品供給の停滞により、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
世界的な感染症の流行に対しては、グループ従業員、協力企業従業員の健康を最優先事項とし、健康経営や産業保健の施策企画・実行統率を管掌するCHRO部門が統括産業医の意見を踏まえ、リスクマネジメント部と連携し、当社グループ従業員への注意喚起、感染防止対策の指示を行っております。同時に、社会生活に不可欠な製品を供給する社会的責任を果たすべく、BCP(事業継続計画)マニュアルを整備し、重要製品を選定するなど事業活動への影響を最小限とします。
平時より基本的な感染症対策を中心に、従業員の健康と事業活動の両立に向けた取り組みを進めてまいります。
⑦気候変動の影響
当社グループは、2050年までのカーボンニュートラルに向けて真摯な取り組みを進めております。当社グループが提供する各種製品は製造過程で化石原燃料を使用し、温室効果ガス(GHG)を排出しており、2030年GHG排出量2013年度比30%削減(Scope1・2)に向けた施策を進めております。顧客との共創によるカーボンニュートラルへの取り組みも取引上重要性を増しているため、省エネルギー・炭素循環に貢献する製品の更なる効率性向上や開発等を事業・技術戦略に組み込むとともに、主要製品ごと及び技術開発段階でのカーボンフットプリント算定も順次進めております。しかしながら、顧客要求に加え加速度的に厳しくなる各国の法規制への対応、それに伴う設備投資、再生可能エネルギーの外部調達といったカーボンニュートラルに向けた移行リスクや、自然災害への備えを含む物理リスク対応のアセスメントや対応コスト増も見込まれます。
このようなリスクと機会の両面を重要な経営課題と捉え、2019年には「気候変動情報開示タスクフォース」(TCFD)に賛同し、シナリオ分析を通し、気候変動が当社に及ぼすリスクと機会を評価して対応策を検討・実行し、レジリエンスを強化すべく、事業毎に順次取組みを進め、情報開示を行っております。また2023年にはGHG排出量削減に向けて経済産業省が設立したGXリーグに参画しました。
※「気候変動情報開示タスクフォース」(TCFD)の要請に沿った情報開示については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)TCFD及びTNFD提言に沿った情報開示」をご参照ください。
⑧人権への取り組み
当社グループは、2021年に国際規範に基づいた人権方針を策定し、事業を展開するあらゆる国や地域において、事業活動の根幹として人権を尊重することを宣言しました。当該方針を全従業員が自らの規準とするべく「行動規範」(2022年改訂)に盛り込んでおります。しかしながら、製品の開発から調達、製造、流通、使用そして最終消費を経て廃棄に至るバリューチェーンの各プロセスにおいて、レゾナックグループ及びサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーのビジネスが、直接又は間接的に、人権に影響を及ぼす可能性があります。また、組織運営に伴う人権リスクに対して、自社グループ内の従業員にむけた人権サーベイを実施するなど人権デューデリジェンスを開始し、人権研修を行いました。また、サプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーに当該方針を遵守頂くため「サステナブル調達ガイドライン」(2022年改訂)を通じた働きかけを開始し、海外リスク予備調査を実施しました。更に、従業員のみならずサプライヤーを含むビジネスパートナー、地域コミュニティなどあらゆるステークホルダーが利用可能な通報窓口を設けることでリスクの把握や救済措置の提供に努めております。
⑨人材・労務
当社グループは世界トップレベルの機能性化学メーカーになることを目指しており、2030年を見据えたサステナビリティ重要課題の一つに「自律的で創造的な人材の活躍と文化醸成」を掲げております。その解決のための重要項目「人と組織の持続的な成長」には、経営又は技術に関する能力に優れた共創型人材を採用、確保し、育成することが重要であると考えますが、優秀な人材の採用及び確保に関する競争は激化しております。
長時間労働に起因する効率低下やエンゲージメント低下が社内外に及ぼす影響を考慮し、労働時間の適正把握と長時間労働の予防により、従業員の心身の健康管理・維持を推進するとともに、パーパス/バリューのもと、従業員エンゲージメントを高めつつ、共創文化を育んでまいります。具体的には、人材戦略に関する4つのマテリアリティとして、「事業が求める人材の供給」「選び選ばれる魅力構築と発信」「自律的なプロフェッショナルの創出」「共創をうむ企業文化作り」を定め、2030年を見据えて、その実現に向けたKGI・KPIを設定し、定期的なモニタリングを行ってまいります。
※KGI(Key Goal Indicator)、KPI(Key Performance Indicator)
⑩サプライチェーン
当社グループの事業継続における安定調達を実現するためには、サプライヤーとの良好な取引関係が不可欠ですが、サプライヤーにおける不法・反社会的行為、人権尊重・環境保全の欠如等、当社のみならず社会全体にとって好ましくない事態が発生することが想定されます。こうした事態の発生を抑え、当社と共に社会的責任を果たすことを目的に、「サステナブル調達ガイドライン」を作成・公開しており、サプライヤーがこれを遵守するよう要請するとともに、その遵守状況を把握するために定期的なアンケートや訪問調査を実施しております。
また、自然災害・事故・感染症等によるサプライヤー操業停止、物流網寸断などで当社事業活動が影響を受ける可能性があります。これらの影響を最小限に留めるため、調達部門では有事におけるサプライヤー被災状況の情報収集と当社事業活動への影響を把握する手順を定めたマニュアル整備とこれに基づいたBCP(事業継続計画)訓練を実施しております。
⑪情報セキュリティ(サイバーリスク)
当社グループは、社内システムや製造設備に対するサイバー攻撃等による被害や情報漏えいが生じた場合、社会的信用の低下や、対策費用や生産活動停止の発生により、経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、世界標準のセキュリティソリューションを導入することで、日々高度化・巧妙化するサイバーリスクに対する防御網を実現するとともに、当社グループの情報セキュリティグローバルスタンダード運用を確立し、教育・モニタリングによる改善活動を行うことで、情報管理の徹底及びインシデント発生時の影響を最小限に抑える対応策を講じております。
当社グループは、当連結会計年度よりIFRSを適用しており、前連結会計年度の数値もIFRSに組み替えて比較分析を行っております。
(経営成績等の概要)
(1)経営成績全般
当連結会計年度の世界経済は、世界的な金融引き締めに伴う影響が続きました。また、ウクライナや中東情勢によるエネルギーコスト及び原材料コストの高騰などが長期化し、供給面での制約が続いたものの、全体としては緩やかな回復が見られました。なかでも半導体業界については比較的顕著な回復が見られました。国内経済は、個人消費や企業の設備投資に持ち直しの動きが見られ、全体として緩やかに回復しました。
当連結会計年度の連結営業成績における売上収益は、モビリティとケミカルの2セグメントは前期並みとなりました。半導体・電子材料とイノベーション材料の2セグメントは販売数量増により増収となり、総じて増収となる1兆3,914億80百万円となりました。コア営業利益について、モビリティセグメントは減益となりましたが、その他の3セグメントは増益となり、総じて増益の921億45百万円となりました。営業利益は、旧本社土地建物の固定資産売却益等があり、890億36百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用の計上等により、735億3百万円となりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
|
2023年 通期 |
2024年 通期 |
増減 |
増減率 |
|
売上収益 |
1,295,395 |
1,391,480 |
96,085 |
7.4% |
|
コア営業利益 |
9,887 |
92,145 |
82,258 |
832.0% |
|
営業利益 |
△9,407 |
89,036 |
98,443 |
- |
|
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
△6,505 |
73,503 |
80,008 |
- |
(注) コア営業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益(その他の収益、その他の費用及び減損損失(売上原価、販売費及び一般管理費に含まれます。))を除いて算出しております。
(2) セグメントの経営成績
[半導体・電子材料セグメント]
当セグメントでは、半導体材料は市況の回復に伴う販売数量増により増収となりました。デバイスソリューションは、HDメディアがデータセンター向け需要の回復により大幅な増収、SiCエピタキシャルウェハーも販売数量の増加で増収となりました。
この結果、当セグメントは前期比で増収増益となりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
|
2023年 通期 |
2024年 通期 |
増減 |
増減率 |
|
売上収益 |
338,118 |
445,139 |
107,021 |
31.7% |
|
コア営業利益 |
3,343 |
73,713 |
70,370 |
2,105.0% |
[モビリティセグメント]
当セグメントでは、自動車部品は、自動車生産の回復や新規車種向け製品の立上げ等があったものの、タイの情勢等を背景として需要の低迷の影響を受け、売上収益は減収となりました。リチウムイオン電池材料は、民生向けの需要減速の影響が継続した一方で、電動車向けで数量が増加し、増収となりました。
この結果、当セグメントは、売上収益は前期並み、コア営業利益は減益となりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
|
2023年 通期 |
2024年 通期 |
増減 |
増減率 |
|
売上収益 |
219,032 |
215,528 |
△3,504 |
△1.6% |
|
コア営業利益 |
6,974 |
6,741 |
△233 |
△3.3% |
[イノベーション材料セグメント]
当セグメントでは、原材料価格の高騰を製品販売価格に転嫁したことや販売数量増により、前期比で増収増益となりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
|
2023年 通期 |
2024年 通期 |
増減 |
増減率 |
|
売上収益 |
92,971 |
97,001 |
4,030 |
4.3% |
|
コア営業利益 |
8,717 |
11,267 |
2,550 |
29.3% |
[ケミカルセグメント]
当セグメントでは、石油化学は、ナフサ価格上昇に伴う販売単価上昇により増収となるも、誘導品の定修による販売数量減で減益となりました。化学品は、売上収益は前期並み、一部製品の原料高により減益となりました。黒鉛電極は、市況低迷の影響を受け販売数量、販売単価ともに下落し減収となるも、低価法の戻り益があり赤字縮小となりました。
この結果、当セグメントは前期比で売上収益は横ばい、コア営業利益は増益となりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
|
2023年 通期 |
2024年 通期 |
増減 |
増減率 |
|
売上収益 |
519,444 |
517,186 |
△2,258 |
△0.4% |
|
コア営業利益 |
6,125 |
10,123 |
3,998 |
65.3% |
(生産、受注及び販売の実績)
(1)生産実績
当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産の状況については、「経営成績等の概要 (2) セグメントの経営成績」におけるセグメントの経営成績に関連付けて示しております。
(2)受注実績
当連結会計年度において受注実績は、金額に重要性がないため記載を省略しております。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
半導体・電子材料 |
445,139 |
31.7 |
|
モビリティ |
215,528 |
△1.6 |
|
イノベーション材料 |
97,001 |
4.3 |
|
ケミカル |
517,186 |
△0.4 |
|
報告セグメント計 |
1,274,854 |
9.0 |
|
その他 |
116,626 |
△7.3 |
|
合計 |
1,391,480 |
7.4 |
(注)1 「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、ライフサイエンス関連事業等を含んでおります。
2 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1)財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は、現金及び現金同等物等が増加し、前連結会計年度末に比べ1,180億32百万円増加の2兆1,726億26百万円となりました。負債合計は未払法人所得税等が増加し、前連結会計年度末比125億37百万円増加の1兆4,806億20百万円となりました。資本合計は、その他の包括利益累計額に含まれる在外営業活動体の換算差額の増加等もあり、前連結会計年度末比1,054億95百万円増加の6,920億6百万円となりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度末 |
当連結会計年度末 |
増減 |
|
資産合計 |
2,054,594 |
2,172,626 |
118,032 |
|
負債合計 |
1,468,083 |
1,480,620 |
12,537 |
|
資本合計 |
586,511 |
692,006 |
105,495 |
(2)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、当期利益の増加等により、前連結会計年度に比べ449億38百万円の収入増加となる1,636億53百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、子会社等の売却による収入の減少があったものの、固定資産の売却による収入の増加等により、前連結会計年度に比べ28億52百万円の支出減少となる523億6百万円の支出となりました。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ477億90百万円の収入増加となる1,113億47百万円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済や社債の償還等による支出の増加があったものの、長期借入れや転換社債型新株予約権付社債の発行による収入等の増加により、526億18百万円の支出減少となる204億68百万円の支出となりました。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ1,040億14百万円増加となる2,946億56百万円となりました。
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
2023年 通期 |
2024年 通期 |
増減 |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
118,715 |
163,653 |
44,938 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△55,158 |
△52,306 |
2,852 |
|
フリー・キャッシュ・フロー |
63,557 |
111,347 |
47,790 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△73,086 |
△20,468 |
52,618 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
190,642 |
294,656 |
104,014 |
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、必要な資金について、自己資金の利用に加え、長期資金を主に設備投資計画等に基づき銀行借入及び社債の発行等によって調達するとともに、短期的な運転資金を銀行借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等により調達しております。
当連結会計年度においては、事業及び資産売却等により得たキャッシュによる有利子負債の返済等により、ネットD/Eレシオが0.74倍まで改善しました。企業価値向上のため、コア成長事業向けを中心とした設備投資を積極的に行うとともに、引き続き財務体質強化を進めてまいります。
当社グループは、事業活動における収益力の向上に加え、運転資金の効率化等により、フリー・キャッシュ・フローの拡大を進めております。また、グループ各社の資金集約化等により、資金の効率的な活用も行っております。資金の流動性については、当連結会計年度末に保有している2,946億56百万円の現金及び現金同等物に加え、600億円のコミットメント・ラインを確保しており、資金需要にタイムリーに対応ができる状態を維持しております。
(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
|
|
|
2024年実績 |
目標 |
|
売上収益 |
|
1.39兆円 |
1兆円超 |
|
EBITDAマージン |
|
13.7% |
20% |
|
ROIC |
|
5.2% |
中長期的に10% |
|
ネットD/Eレシオ |
|
0.74倍 |
1.0倍 |
目標数値の達成により、TSR(株主総利回り)は中長期的に化学業界で上位25%の水準をめざします。
各種指標の算定式
|
指標 |
算定式 |
|
EBITDAマージン |
(コア営業利益 + 減価償却費及び償却費)÷ 売上収益 |
|
ROIC |
(コア営業利益 ± 持分法投資損益 - 法人所得税費用)÷(有利子負債 + 資本合計) |
|
ネットD/Eレシオ |
{(借入金 + コマーシャル・ペーパー + 社債 + リース負債) - 現金及び現金同等物 - 劣後ローン × 50%}÷(資本合計 - 非支配持分 + 劣後ローン × 50%) ※劣後ローン(借入金に含まれます。)の50%の資本性は、2020年4月27日付並びに2024年7月29日付の㈱日本格付研究所の格付に基づきます。 |
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」といいます。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、当連結会計年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要があります。経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表作成において採用する重要性のある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針についての概要」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4)見積り及び判断の利用」に記載しております。
(6)並行開示情報
連結財務諸表規則(第3編から第6編までを除きます。以下、「日本基準」といいます。)により作成した要約連結財務諸表は、以下のとおりであります。
なお、日本基準により作成した当連結会計年度の要約連結財務諸表については、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査を受けておりません。
①要約連結貸借対照表(日本基準)
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 (2023年12月31日) |
当連結会計年度 (2024年12月31日) |
|
資産の部 |
|
|
|
流動資産 |
751,922 |
873,441 |
|
固定資産 |
|
|
|
有形固定資産 |
678,586 |
683,151 |
|
無形固定資産 |
470,589 |
427,836 |
|
投資その他の資産 |
130,856 |
140,539 |
|
固定資産合計 |
1,280,031 |
1,251,525 |
|
資産合計 |
2,031,953 |
2,124,966 |
|
|
|
|
|
負債の部 |
|
|
|
流動負債 |
461,881 |
486,422 |
|
固定負債 |
991,404 |
980,149 |
|
負債合計 |
1,453,285 |
1,466,571 |
|
|
|
|
|
純資産の部 |
|
|
|
株主資本 |
415,963 |
429,684 |
|
その他の包括利益累計額 |
136,875 |
201,791 |
|
非支配株主持分 |
25,830 |
26,921 |
|
純資産合計 |
578,668 |
658,395 |
|
負債純資産合計 |
2,031,953 |
2,124,966 |
②要約連結損益計算書及び要約連結包括利益計算書(日本基準)
要約連結損益計算書
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
|
売上高 |
1,288,869 |
1,389,277 |
|
売上原価 |
1,042,252 |
1,055,295 |
|
売上総利益 |
246,617 |
333,982 |
|
販売費及び一般管理費 |
250,380 |
255,232 |
|
営業利益又は営業損失(△) |
△3,764 |
78,750 |
|
営業外収益 |
14,253 |
14,864 |
|
営業外費用 |
25,263 |
23,922 |
|
経常利益又は経常損失(△) |
△14,773 |
69,692 |
|
特別利益 |
34,335 |
32,020 |
|
特別損失 |
45,746 |
35,068 |
|
税金等調整前当期純利益又は税金等調整前当期純損失(△) |
△26,184 |
66,644 |
|
法人税等合計 |
△8,159 |
9,876 |
|
当期純利益又は当期純損失(△) |
△18,026 |
56,768 |
|
非支配株主に帰属する当期純利益 |
929 |
1,347 |
|
親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△) |
△18,955 |
55,422 |
要約連結包括利益計算書
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
|
当期純利益又は当期純損失(△) |
△18,026 |
56,768 |
|
その他の包括利益合計 |
34,252 |
38,132 |
|
包括利益 |
16,227 |
94,900 |
|
(内訳) |
|
|
|
親会社株主に係る包括利益 |
14,003 |
91,765 |
|
非支配株主に係る包括利益 |
2,223 |
3,135 |
③要約連結株主資本等変動計算書(日本基準)
前連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
株主資本 |
その他の包括利益 累計額 |
非支配株主持分 |
純資産合計 |
|
当期首残高 |
444,576 |
105,719 |
24,423 |
574,718 |
|
当期変動額 |
△28,613 |
31,156 |
1,406 |
3,949 |
|
当期末残高 |
415,963 |
136,875 |
25,830 |
578,668 |
当連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)
|
|
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
株主資本 |
その他の包括利益 累計額 |
非支配株主持分 |
純資産合計 |
|
当期首残高 |
415,963 |
136,875 |
25,830 |
578,668 |
|
当期変動額 |
13,722 |
64,916 |
1,091 |
79,729 |
|
当期末残高 |
429,684 |
201,791 |
26,921 |
658,395 |
④要約連結キャッシュ・フロー計算書(日本基準)
|
|
|
(単位:百万円) |
|
|
前連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2024年1月1日 至 2024年12月31日) |
|
営業活動によるキャッシュ・フロー |
118,686 |
165,254 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△61,869 |
△51,601 |
|
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△62,880 |
△19,978 |
|
現金及び現金同等物に係る換算差額 |
9,922 |
11,842 |
|
現金及び現金同等物の増減額(△は減少) |
3,859 |
105,517 |
|
現金及び現金同等物の期首残高 |
186,056 |
189,915 |
|
現金及び現金同等物の期末残高 |
189,915 |
295,432 |
⑤連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(日本基準)
前連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)
(連結の範囲の変更)
HCホールディングス㈱は昭和電工マテリアルズ㈱(現㈱レゾナック)を存続会社とする吸収合併により消滅したため、連結の範囲から除外しております。昭和電工アメリカInc.及び昭和ケミカルズ・オブ・アメリカInc.はResonac America, Inc.を存続会社とする吸収合併により消滅したため、連結の範囲から除外しております。昭和電工シンガポールPte. Ltd.はResonac Asia Pacific Pte. Ltd.を存続会社とする吸収合併により消滅したため、連結の範囲から除外しております。ミナリスメディカル㈱及びその関係会社2社は当該株式を譲渡したため、連結の範囲から除外しております。昭和電工材料(香港)有限公司は力森諾科電子材料(香港)有限公司を存続会社とする吸収合併により消滅したため、連結の範囲から除外しております。AMI International, S.A.P.I. de C.V.及びその関係会社3社は株式の追加取得により、新たに連結の範囲に含めております。
(持分法適用の範囲の変更)
日立SC㈱は、当該株式の譲渡に伴い、持分法適用の範囲から除外しております。
(会計方針の変更)
(子会社における日本基準に基づく会計処理の適用)
当社の子会社である昭和電工マテリアルズ㈱(現㈱レゾナック)及び同社の国内子会社において、従来は国際財務報告基準(IFRS)を適用しておりましたが、当連結会計年度より日本基準を適用しております。
この変更は当連結会計年度以降、昭和電工マテリアルズ㈱及び同社の国内子会社において実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」で容認されている当面の取扱いの要件を満たさなくなったことから、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」に基づき親会社である昭和電工㈱(現㈱レゾナック・ホールディングス)の適用している会計基準(日本基準)に統一することを目的とするものであります。
当該変更は遡及して適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表となっております。
この結果、遡及適用を行う前と比較し前連結会計年度の営業利益は2,355百万円、経常利益及び税金等調整前当期純利益はそれぞれ2,344百万円増加し、当期純利益及び親会社株主に帰属する当期純利益はそれぞれ1,629百万円増加しております。
また、前連結会計年度の期首の純資産に累積的影響額が反映されたことにより、遡及適用後の利益剰余金の前期首残高は847百万円増加し、その他有価証券評価差額金の前期首残高は415百万円、退職給付に係る調整累計額の前期首残高は1,141百万円それぞれ減少しております。
なお、セグメント情報及び1株当たり情報に与える影響は、当該箇所に記載しております。
(期末日満期手形の会計方針の変更)
期末日満期手形の会計処理は、末日が金融機関の休日である場合、満期日に決済が行なわれたものとして処理しておりましたが、経営統合に伴う処理の統一を目的として、当連結会計年度より実際の手形交換日もしくは決済日に処理する方法に変更しております。当該会計方針の変更は遡及適用され、前連結会計年度については遡及適用後の連結財務諸表となっております。
これにより、遡及適用を行なう前と比べて、前連結会計年度の現金及び預金が627百万円減少し、受取手形及び売掛金が627百万円増加しております。
当連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)
(連結の範囲の変更)
韓国昭和化学品㈱は清算結了したため、連結の範囲から除外しております。㈱レゾナック電子材料九州は㈱レゾナックを存続会社とする吸収合併により消滅したため、連結の範囲から除外しております。クラサスケミカル㈱は新たに設立したため、連結の範囲に含めております。
(7)経営成績等の状況の概要に係る主要な項目における差異に関する情報
IFRSにより作成した連結財務諸表における主要な項目と日本基準により作成した場合の連結財務諸表におけるこれらに相当する項目との差異に関する事項は、以下のとおりであります。
前連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)
「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 37.IFRSの初度適用」に記載のとおりであります。
当連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)
(のれんの償却)
日本基準においては、のれんをその投資効果の及ぶ期間で償却しておりますが、IFRSでは、移行日以降の償却を停止しています。この影響により、当連結会計年度にて、IFRSでは日本基準に比べて、販売費及び一般管理費が17,198百万円減少し、持分法による投資利益が2,249百万円増加しております。
(再生医療事業の譲渡に関する契約の締結)
当社の連結子会社である㈱レゾナック(以下、「REC」といいます。)は、2024年9月24日付で、RECが直接的又は間接的に保有するMinaris Regenerative Medicine, LLC、Minaris Regenerative Medicine GmbH及びMinaris Regenerative Medicine㈱の全発行済株式をAltaris, LLCがサービスを提供するファンドに譲渡する株式譲渡契約を締結し、2025年1月6日付で、当該株式譲渡が実行されました。
(二次電池外装材・食品包装材事業の譲渡に関する契約の締結)
当社の連結子会社であるRECは、2024年11月11日付で、RECの完全子会社である㈱レゾナック・パッケージングの全発行済株式を大日本印刷㈱へ譲渡する株式譲渡契約を締結し、2025年2月3日付で、当該株式譲渡が実行されました。
(表面保護用フィルム事業の譲渡に関する契約の締結)
当社の連結子会社であるRECは、2024年8月7日付で、表面保護用フィルム事業を㈱サンエー化研に譲渡する契約を締結し、2024年11月15日付で、当該譲渡が実行されました。
(排ガス処理装置事業の譲渡に関する契約の締結)
当社の連結子会社であるRECは、大陽日酸㈱との間で、当社グループが日本及び台湾において営む排ガス処理装置事業の譲渡について合意し、2024年12月24日付で、(i)RECの排ガス処理装置事業をRECの完全子会社である㈱クリーンエス昭和に吸収分割により承継させた上で、㈱クリーンエス昭和の全発行済株式を大陽日酸㈱へ譲渡する契約及び(ii)RECの子会社である台灣力森諾科特殊氣體股份有限公司の排ガス処理装置事業を大陽日酸㈱の子会社である大陽日酸系統科技股分有限公司へ譲渡する契約を締結しました。
(石油化学事業のパーシャル・スピンオフに向けた吸収分割)
2025年1月1日付で、当社の連結子会社である㈱レゾナック(以下、「REC」といいます。)の完全子会社であるクラサスケミカル㈱(以下、「CSC」といいます。)に当社及びRECから石油化学事業の吸収分割(以下、「本吸収分割」といいます。)を行うとともに、同日付で、RECが有するCSCの株式を当社へ現物配当(以下、「本現物配当」といいます。)しました。
(1) 本吸収分割の目的
当社は、2020年12月10日に発表した「統合新会社の長期ビジョン(2021~2030)」で示した通り、世界トップクラスの機能性化学メーカーとして、持続可能なグローバル社会の発展に貢献することを目指しております。当社はその実現に向けて、継続的に事業ポートフォリオの見直しを行い、半導体・電子材料事業に経営資源を集中することで、成長を促進して参りました。当社における石油化学事業は、当社連結売上収益の約20%を占める主要事業の一つであり、「安定収益事業」と位置付けております。同事業は日本の社会インフラとしての役割を果たす公共的な側面があり、将来に亘って同事業の持続的・安定的な運営を行う必要があります。そのため、パーシャル・スピンオフにより、独立した上場会社として石油化学のグリーン・トランスフォーメーションを実現可能とする取り組みを加速し、更なる成長と競争力の強化を目指すこととしました。
(2) 本吸収分割の方式
当社及びRECを分割会社とし、CSCを承継会社とする吸収分割であります。
(3) 本吸収分割及び本現物配当の効力発生日
2025年1月1日
(4) 承継する資産・負債の状況(2025年1月1日見込み)
資産:1,830億円
負債:1,130億円
(5) 本吸収分割に係る割当の内容
CSCは、本吸収分割に際して当社に対して普通株式1,000株を発行し、RECに対しても普通株式1,000株を発行しました。
(6) 本吸収分割に係る割当ての内容の算定根拠
本吸収分割の効力発生時点においてCSCが当社の完全子会社であること、その他諸般の事情を総合的に考慮し、協議・検討を行った結果、上記(5)記載の割当の内容が相当なものであるとして合意しました。
(7) 本吸収分割後の吸収分割承継会社の資本金・事業の内容等
|
① |
名称 |
クラサスケミカル株式会社 |
|
② |
所在地 |
大分県大分市大字中ノ洲2番地 |
|
③ |
代表者 |
代表取締役 福田 浩嗣 |
|
④ |
事業内容 |
・エチレン、プロピレン等の基礎石油化学製品の製造・販売 ・酢酸を主原料とした有機化学製品の製造・販売 ・合成樹脂製品の製造・販売、等 |
|
⑤ |
資本金 |
110百万円 |
(固定資産の譲渡)
当社の連結子会社であるResonac HD Taiwan Co., Ltd.は、同社が保有する固定資産の譲渡に関する契約を締結し、2024年9月2日付で以下(1)の資産の譲渡が、また、2024年12月31日付で以下(2)の資産の譲渡が実行されました。
|
資産の内容及び所在地 |
譲渡益 |
|
(1)メディア工場建屋 8 Technology Fifth Road, Hsinchu Science Park, Hsinchu, Taiwan, R.O.C 建物:45,741.69㎡(延床面積) |
約1,184百万NT$ |
|
(2)基板工場建屋 No.8 Creation First Road, Hsinchu Science Park, Hsinchu, Taiwan, R.O.C 建物:9,242.15㎡(延床面積) |
約550百万NT$ |
(新規劣後特約付ローンによる資金調達及び既存劣後特約付ローンの期限前弁済)
当社は、2020年4月27日付で締結した総額275,000百万円の劣後特約付ローンのうち137,500百万円について、期限前弁済しましたが、その返済資金に充当するため、2024年7月29日付で新たに劣後特約付ローン(以下、「本劣後ローン」といいます。)137,500百万円の契約を締結しました。本劣後ローンの概要は次のとおりであります。
|
(1) |
調達金額 |
137,500百万円 |
|
(2) |
資金使途 |
既存劣後ローンの返済資金 |
|
(3) |
契約締結日 |
2024年7月29日 |
|
(4) |
実行日 |
2024年7月31日 |
|
(5) |
弁済期日 |
2059年7月31日 但し、借入実行日から5年経過後以降の各利息支払日において、元本の全部又は一部の期限前弁済が可能であります。 |
|
(6) |
リプレイスメント条項 |
当社は、本劣後ローンの期限前弁済にあたっては、期限前弁済日以前の12ヶ月以内に、本劣後ローンと同等以上の資本性を有するものと格付機関から承認を得た資金を調達することを意図しております。ただし、2029年7月31日の利払日以降、一定の財務指標を満たす場合には、上記の資金調達を見送る可能性があります。 |
|
(7) |
利息支払に関する条項 |
当社はその裁量により、本劣後ローンの利息の支払の全部又は一部を繰り延べることができます。 |
|
(8) |
劣後特約 |
当社について清算手続、破産手続、更生手続若しくは再生手続又は日本法によらないこれらに準ずる手続が開始され、かつ継続している場合、本劣後ローン契約に基づく債権の支払請求権の効力は、劣後債権を除く全ての債権が、全額支払われ、又はその他の方法で全額の満足を受けたことを停止条件として発生します。 本劣後ローン契約の各条項は、いかなる意味においても劣後債権の債権者以外の債権者に対して不利益を及ぼす内容に変更してはなりません。 |
|
(9) |
資本性 |
「中・50%」(㈱日本格付研究所) |
|
(10) |
貸付人 |
㈱みずほ銀行、㈱日本政策投資銀行、㈱三菱UFJ銀行 |
当社グループは、「世界No.1技術・製品を生み出し続ける」と言うビジョンのもと、技術の染み出しによるイノベーションの実現、事業本部を横断する技術開発の牽引、社会を変える長期R&Dの推進、という3つのミッションを掲げ、私たちの強み(コアコンピタンス)である、「作る化学」「混ぜる化学」「考える化学」の技術共鳴(レゾナンス)によるシナジー創出を図りながら、最短かつ確実に社会課題にお応えできるよう、研究開発活動に取り組んでおります。またオープンイノベーションやM&Aを活用し、必要な技術を社内外から積極的に導入していくことで、将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現、多様な技術・事業を通じたSDGsへの貢献に注力しております。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(半導体・電子材料)
半導体・電子材料分野では、次世代事業のコアとなる基礎・基盤技術の研究開発、事業部門協働による新製品・新事業創出、社会を変える長期R&Dを目的として、研究開発部門との密接な連携の下に研究開発を推進しております。
一例としては、半導体デバイスの微細な回路形成を実現する半導体前工程材料(情報電子化学品(電子材料用高純度ガス・機能性薬品)、半導体回路平坦化用研磨材料)、半導体後工程材料(エポキシ封止材、ダイボンディング材料、銅張積層板、感光性フィルム、感光性ソルダーレジスト)、デバイスソリューション(ハードディスク、SiCエピタキシャルウェハー(以下、「SiCエピウェハー」といいます。)、化合物半導体(LED))等の付加価値を高める開発をしました。
半導体前工程分野では、半導体製造プロセス材料として各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、超高純度溶剤の開発を進め、市場展開しております。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進めます。
半導体後工程分野では、AI半導体などの高性能半導体向け材料として絶縁接着フィルム「NCF」、及び放熱シート「TIM」の生産能力を従来の3.5~5倍に拡大することを決定し、市場での競争力を一層強化してまいります。さらには、先端半導体の製造に使用する高解像度の感光性フィルムを新たに開発し、先端パッケージの有機インターポーザーにおいて、線幅と配線間隔が各1.5マイクロメートルという微細な銅回路形成を実現します。この高解像度を達成するために、計算情報科学研究センター、高分子研究所、感光性材料開発部、パッケージングソリューションセンターの4つの部門が共創し、新規ポリマー樹脂を開発しました。また、外部との更なる共創活動として、半導体製造の後工程の自動化を目的とする「半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)」に参画しました。半導体材料メーカーとして、先端パッケージと後工程の研究開発で培った知識・経験を活用して、SATASの組立工程と検査工程を対象としたプロセス開発に貢献してまいります。次世代半導体パッケージ分野において、半導体の製造装置・材料メーカーの枠を超えて日本で進めてきた半導体パッケージ技術開発のコンソーシアム「JOINT」、及び「JOINT2」の取り組みに加え、日米の材料・装置等の企業12社によるコンソーシアム「US-JOINT」を米シリコンバレーに設立することを発表し、2025年稼働に向けてクリーンルームや装置導入等の準備を進めております。
ハードディスクについては、唯一のハードディスク外販メーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しております。世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式の高性能化を進めるとともに、次世代ハードディスク向け高密度記録方式であるシングルド記録(瓦書記録)、マイクロ波アシスト記録、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っており、熱アシスト磁気記録に対応した次世代ハードディスクに関して米シーゲイト・テクノロジー社と共同開発を進めております。シングルド記録方式では、アルミ基板を用いて当社の最新磁性層設計及び結晶微細化技術を導入することで、業界最高の記録容量となる1枚あたり2.8テラバイトの製品を出荷しております。
SiCエピウェハーについては、世界最大の外販メーカーとして、最高水準の品質の製品を提供し、国内外のデバイスメーカーから高い評価を得ております。SiCエピ膜製造に関しては、(一財)電力中央研究所、㈱デンソー、㈱ニューフレアテクノロジーと共同で、研究開発テーマ「高品質SiC単結晶膜の高速製造技術の開発と応用」について「第50回(2023年度)岩谷直治記念賞」を受賞しました。2022年に開始した内製基板を用いた8インチSiCエピウェハーのサンプル出荷を進めるとともに、さらなる品質向上に向けて、(国研)新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」といいます。)の「グリーンイノベーション基金事業」において研究開発を進めております。ここでは、より高速でエピウェハーを製造する高速昇華法技術の開発にも取り組んでおります。なお、先駆的な技術開発の成果により取得した特許群は、2024年米LexisNexis社PatentSight+の特許データベースを用いた有効特許に対する総特許価値でグローバルトップです。仏KnowMade社による特許分析においても高く評価されております。さらに当社は先進的な半導体基板材料を製造する仏ソイテック社と、パワー半導体に使用される8インチのSiCエピウェハーの材料となる8インチSiC貼り合わせ基板の共同開発契約を締結しました。SiCエピウェハービジネスでのサプライチェーンの多様化を目指します。今後も高性能で高い信頼性の製品を供給することで、SiCパワー半導体の普及に貢献します。
化合物半導体を用いた発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力しております。成長する車載センサーや高性能フォトカプラなどの赤外領域の発光デバイスを主ターゲットに業界トップの品質とカスタマイズ力によりお客様の要望に応える製品を提供しております。
当連結会計年度における半導体・電子材料セグメントの研究開発費は、
(モビリティ)
モビリティ分野では、自動運転化、電動化、軽量化、電装化、冷却性、安全性といった市場ニーズに幅広い材料ソリューションで応えるとともに、企業の社会的責任としてカーボンニュートラルへの取り組みを一層進めております。具体的には、製品や工場端材のリサイクルやバイオプラスチックの開発を推進しております。
現在、上市中の樹脂ギヤ、樹脂バックドア、負極材、ブレーキパッド、粉末冶金などの製品については、変化する市場動向に迅速に適応するため、開発を継続しております。それらに加えて、自動運転化のためのセンサー対応技術として「ミリ波透過コーティング」、車載デバイスの軽量化と冷却性を両立させた新コンセプトの冷却ユニット「樹脂ウォータージャケット」など、その他の製品技術の開発も進めております。
また、主要な自動車メーカーやTier1サプライヤーにおいて既に主流となっているモデルベース開発(MBD)を継続的に推進しております。MBDでは、自動車システム全体から末端部品の機能や必要性能をモデル上でシミュレーションを実施します。これにより、開発初期段階において3Dモデルと計算科学を活用し、仮想試作や仮想評価を行うことで、自社や顧客の開発時間を大幅に短縮することが可能です。さらに、これまでにない新システムに必要な解析手法や評価方法は、社内の計算情報科学研究センターや大学と共同で開発中です。加えて、2050年のカーボンニュートラルに向けた長期R&Dテーマとして、資源循環型材料の開発を大学との共同研究で進めており、外部機関が主催するコンソーシアムにも参加しております。
先端電池材料については、リチウムイオン電池向け導電助剤である気相法炭素繊維「VGCF-H」の新プラントを川崎事業所内に建設し生産能力を年産300トンから400トンに引き上げました。
アルミニウムでは、市場から要望されている材料、部品及び製品の開発を進めるとともに、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力しております。自動車メーカーと共創しリサイクル材適用増加の検討や次世代冷却器の開発などに取り組んでおります。
当連結会計年度におけるモビリティセグメントの研究開発費は、
(イノベーション材料)
イノベーション材料分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、光機能材料、エネルギー領域、インフラケミカルズ、高機能ゲル、化粧品原料、及びセラミックスの研究開発を推進しております。
テレビなどの大型液晶ディスプレイ、スマートフォン端末などの有機ELに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けております。市場が中国シフトする中で2020年6月に増設を完了した上海においても生産・供給を開始し、現地需要の取り込みに向けお客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入しております。また電子材料、光学材料や歯科材料などに使用されるイソシアネートモノマー「カレンズMOI」や機能性アクリレート・メタクリレート「ファンクリルFAシリーズ」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続しております。特に「ファンクリルFA500シリーズ(脂環式モノマー)」の耐熱性及び高信頼性の特徴を生かし、電子部品材料用途への横展開を行い、事業拡大を図っております。
エネルギー領域におきまして、電力モーターの高性能化に伴う高電圧・耐サージ性に対応できる、xEV向け高耐熱絶縁ワニスの技術開発を継続して進めております。また、リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾールLBシリーズ」につきましては、その低抵抗性や優れた温度特性などが評価され、急速充電対応が求められるHEV用途への国内納入を開始いたしました。今後は、市場動向を注視しつつ、xEV向けリチウムイオン電池全般への展開を推進してまいります。
インフラケミカルズでは、耐用年数が寿命を迎えた下水道管補修用不飽和ポリエステル樹脂「リゴラック」の光硬化タイプに注力しております。下水道管補修市場においては、熱硬化タイプから環境負荷の小さい光硬化タイプへの転換が進んでおり、この変化に対し樹脂技術で貢献してまいります。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックスカラム」では、新製品として単糖の分離性能を改善した糖分析カラム、次世代医薬品バイオナノパーティクル精製を目的としたゲルろ過カラムの販売を開始し、新市場の獲得を進めております。環境関連では国際的に規制強化が進むPFASやハロゲン酸化物の高感度分析を可能とする各種カラムの市場展開を推進しております。今後もバイオ・医薬分野、迅速・省溶媒、高感度・高分離に重点を置いたゲル(充填剤)やカラムの研究開発を促進します。
化粧品原料では、オンリーワン製品であるビタミンC誘導体「アプレシエ」及びビタミンE誘導体「TPNa」を中心に、市場ニーズの高いアンチエイジング、保湿、アイケア、ヘアケアの分野で新機能を見出し、お客様の製品企画のきっかけを作ることで市場の拡大を図っております。
セラミックス関連では、電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料(アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)の開発を行っております。また、スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の更なる小型化・高容量化に貢献すべく、酸化チタンの微粒子化に向けた課題をお客さまとの共創により解決し、量産化を実現しました。
当連結会計年度におけるイノベーション材料セグメントの研究開発費は、
(ケミカル)
ケミカル分野では、石油化学・基礎化学で、さまざまな産業の起点・インフラとなる製品を提供するとともに、製造工場のCO2排出量削減などカーボンニュートラルに向けた技術開発に取り組んでおります。
石油化学においては、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進しております。主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めております。大分コンビナートの酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸アリルのプラントは、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求しております。
長期R&Dの取組みとして、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」において、日本製鉄㈱とともに、低圧・低濃度のCO2を低コストで分離回収するための技術開発及び、回収したCO2を原料に化学品を製造する技術検証に取り組み、カーボンニュートラルの実現に貢献してまいります。また、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」において、岐阜大学、三菱化工機㈱とともに、アンモニア燃焼器用改質器ユニット及び燃料電池用改質器ユニットの研究開発で協働し、アンモニア分解技術を活用した化学品事業のビジネスモデルの創出を目指します。
当連結会計年度におけるケミカルセグメントの研究開発費は、
(その他)
計算科学・情報科学の技術力強化と材料開発への適用に積極的に取り組んでまいりました。
半導体パッケージ用レジストの感光性樹脂の原料となるポリマー探索でも、AIを活用し、材料の最適な組成を従来の5分の1の時間で探索できる独自技術を確立し、さらに、材料探索の汎用ツールとして本技術の社内展開を開始しております。
材料開発のためのシミュレーションとして一般的に用いられる計算手法「第一原理計算」と、AIを融合した新しいシミュレーション技術「ニューラルネットワークポテンシャル(NNP)技術」を、CMPスラリーによる半導体回路の研磨メカニズムのシミュレーションに初めて導入し、解明しました。NNP技術は、これまで難しかった化学反応のシミュレーションを、第一原理計算と同程度の精度を維持しながら、10万倍以上の速度で実施できる技術です。当社は、本技術により複雑な半導体製造プロセスで起きている材料の挙動を解明し、迅速な新材料創出に繋げます。
過去蓄積してきたデータや文書を、生成AIにより対話形式で活用できる社内システムChat Resonacを構築しました。技術文書だけにとどまらずガイドライン統合業務効率化など全社での活用が進んでおります。
共創の舞台では、長期R&Dテーマとして、循環型ケミカルリサイクルを目指し、カーボンリサイクルテーマを推進しております。また6G向け半導体の新材料開発テーマとして、次世代高速通信材料テーマにも取り組んでおります。
当連結会計年度における報告セグメントに含まれない「その他」の研究開発費は全社共通を含め12,830百万円であります。