第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、多様化する「食」に対するニーズの変化に対応し、お客様のみならず社会に貢献できる「進化する企業」を目指し、これを満たすため、独自の技術に基づくオリジナル製品を創造し、より快適でより効率的な食環境へ向けての新たな提案と迅速かつ高品質なサービスを提供することをグループの経営理念に掲げ、その実現・実行を目指しております。

このため、遵法はもとより社会と社員から信頼される会社づくり、透明性のある経営、議論のできる経営の実践、事業活動と環境との調和、働きやすい職場環境の実現に向け、努力してまいります。

 

(2)中長期的な会社の経営戦略

長期的なありたい姿の実現に向け、持続可能な事業モデルへの変革を推進し、将来の事業成長加速の基盤となる経営ビジョンを策定し、経営戦略及び目標とする経営指標の水準を定めております。

長期的なありたい姿としては、「これから伸び行く新たな市場並びに未開拓市場で先手を取り、存在感を高めることで、世界No.1を目指す」ことと、「『食』に関わるお客様及び社会の課題を、製品・サービスの提供を通して解決することで、地球の未来に貢献する」ことを掲げております。

今後の戦略の方向性としましては、多様化する顧客ニーズ及び社会から要請される課題解決に向けて積極的な取り組みを強化するとともに、持続的成長を可能とするグローバルな事業基盤と安定的な収益基盤を構築していきます。

日本においては、既存飲食市場を深掘しつつ、成長を求め飲食外市場開拓を一段と強化します。具体的には環境変化が速い飲食市場及び多様な顧客を有する飲食外市場の顧客に対応するため、新たな販売モデルを確立することを目指します。また、海外においては、既存市場の成長を最大化しつつ、伸び行く新興市場への他社に先行した進出と事業拡大を行っていきます。

 

(3)目標とする経営指標

当社グループでは、2022年度を初年度とする5ヵ年経営ビジョンを策定し、経済価値及び社会・環境価値それぞれの継続的な向上を目指し、目標とする経営指標を定めております。経済価値向上に向けては、連結売上高及び連結売上高営業利益率、連結ROEを重要な経営指標と捉え、それらの継続的な向上を目標としております。目標とする経営指標の水準として、2026年度連結ベースでは売上高4,500億円、売上高営業利益率14%以上(M&Aのれん償却前)、ROE12%以上を掲げ、持続的成長と企業価値向上を目指していきます。社会・環境価値向上に向けては、世界的な環境問題解決の実現に貢献すべく、CO排出削減の目標を掲げております。また、全ての社員が多様な価値観を共有し、誇りを持って働くことができる活力ある職場風土への進化を目指し、女性役職者の育成・登用の目標を掲げるとともに、社員の働きがい向上に継続的に取り組んでまいります。

 

(4)対処すべき課題

フードサービス業界を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大による経済・社会活動の停滞を乗り越え、人の流れが活発化しインバウンドが過去最高の水準を継続するなどの明るい動きが見られます。一方で、今後も業界の垣根を越えた競争の激化、人手不足や人件費の上昇、原材料費や物流費の高騰などの懸念材料については継続が予想されます。

このような環境のもと、当社グループは、以下6つの課題に取り組んでまいります。

①気候変動への対応

日本政府は2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しました。2050年までに日本全体の温室効果ガス排出を実質ゼロにすることを掲げたこの宣言の実現に向けて、多くの企業が温室効果ガス排出量削減の取り組みを加速しています。

気候変動が社会に与える影響は大きく、当社グループとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。当社グループは、2050年に事業活動からのCO排出量(スコープ1&2)実質ゼロ実現へ向け、徹底した省エネ活動や再生可能エネルギーの積極的な利活用を推進していきます。2030年の削減中間目標は当社グループ(海外含む)で、2023年比30%削減としています。CO排出量スコープ3については国内外での算定などを進めており、今後の開示を予定しています。

 

②持続可能なサプライチェーンマネジメント

企業がサプライチェーンを通じて、間接的にでも途上国の環境破壊や人権侵害に加担しているとされれば、ネガティブキャンペーンの対象となり、消費者からボイコットされるなどのレピュテーションリスクやブランドリスクにつながる可能性がますます高まってきております。グローバル企業として、その活動がサプライチェーンに及ぼしている影響の大きさを理解し、サプライチェーンが抱える社会的課題の解決に取り組むことが今後の当社グループの持続的な成長に不可欠と考えています。

また、健全なサプライチェーンのもとでこそ、消費者により安全・安心な製品・サービスをお届けできると考えています。

当社グループは、法令を遵守し、環境や人権に配慮したサプライチェーンにより、廃棄物を最小限に抑え、健康で安全な労働条件を促進してまいります。

 

③新たな顧客価値の創造

先進国の経済・社会構造は、モノ中心からサービスや情報中心に大きく変わろうとしています。お客様が望む価値を確実に提供し続け、お客様との関係をより長期的かつ強固なものにすることで顧客満足を獲得し、当社グループは成長を持続することが可能になります。新たな顧客価値の創造のために、お客様の声に耳を傾け、顧客ニーズを把握し、最適なソリューションの提案や製品・サービス開発を行っています。

当社は国内において、2024年末には自然冷媒を使用した冷蔵庫・冷凍庫をモデルチェンジし、製品化いたしました。このモデルチェンジにより、代替フロンを使用した製品から自然冷媒を使用した製品への完全切り替えが完了いたしました。製氷機においても、自然冷媒を使用した製品を開発し、製品化を進めております。

国内市場においては、既存の飲食市場を深掘りしつつ、積極的に飲食外市場を開拓しています。戦略的な他社との協業による製品機能の補完や新たな販売体制の構築などにより、多様な業種ならびにニーズを有する飲食外市場のお客様の課題解決に取り組んでいます。

 

④安全・安心な食環境づくりへの新たな提案

私たち人間が生きていくためには食が欠かせませんが、我が国の生活水準が向上すると共に、社会経済構造や国民の食に関する価値観など「食」をめぐる状況が変化し、食生活のあり方も多様化してきています。このような中、核家族化の進展や地域社会の弱体化などにより、食の大切さに対する意識が希薄化すると共に、健全な食生活や古くから各地で育まれてきた多彩な地域の食文化が失われつつあることが危惧されています。「食べる」ことは人間が生きるために不可欠な行為ですが、社会情勢や経済状況、地域の文化の影響を色濃く受けるものでもあります。

当社グループは、世界各地でより良い製品やサービスを提供することにより、食文化を支え守ることに貢献し、どのような状況においても、より良い状態で食を届けることを使命と考えております。

 

⑤社員の働きがいの向上

事業を通じてお客様・社会に貢献し、会社と社員が共に進化・成長し続けるためには、社員の働きがいの向上が大切です。当社グループでは、活力にあふれる社員がポテンシャルを最大限に発揮する会社であり続けるために、「社員一人ひとりの成長に向けた機会づくり」「活力あふれる職場風土づくり」を通じ、社員の働きがいの向上に取り組んでいます。

「社員一人ひとりの成長に向けた機会づくり」としては、次世代経営者育成研修、論理的思考力強化研修、英語力強化研修等のOff-JTを通じた能力開発と共に、一人ひとりの「将来ありたい姿」の実現に向けたキャリア開発を進め、成長を実感できる機会及び場の提供に取り組んでいます。

「活力あふれる職場風土づくり」としては、多様な人材が個性や能力を発揮できる環境の創出に向け、多様な人材の採用、働きやすい職場環境づくりを進めています。

様々なライフステージ・生活スタイルの社員が働きやすいように人事制度を整えると共に、職場内コミュニケーションの更なる活性化、互いを尊重する風土づくりに取り組んでいます。定期的に社員満足度調査を行い、現状を確認すると共に課題を明確にし解決することにより、今後も継続して社員の働きがいの向上に取り組んでまいります。

 

⑥経営基盤の強化

取締役会の実効性向上や内部統制の強化・充実等により、コーポレートガバナンスの実効性向上に努めます。また、コンプライアンスに関するリスクの予防措置や教育等の施策を実施し、法令遵守と風通しの良い企業文化の醸成を図ることで、持続的成長と社会からの信頼性の向上に努めます。

お客様に安全と安心を提供することは企業の社会的責任であり、当社グループは、製品に関わる法令遵守と製品事故の撲滅に取り組むことで、安全性の高い製品を提供し、競争力の強化と社会からの信頼性向上に努めます。

当社グループはもとより、パートナーやサプライチェーン全体に対して、企業の社会的責任を強く意識した事業運営を促すことで、サプライチェーン上の環境・人権等のリスク低減を図ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、取締役会の承認を得て、以下の「サステナビリティ基本方針」を掲げています。

サステナビリティ基本方針

「当社グループは、経営理念にある「お客様のみならず社会に貢献できる『進化する企業』であること」という基本的考えのもと、事業活動を通じた持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指します。

●多様な人材が生き生きと活躍できる環境を実現し、常に「進化する企業」として、お客様のみならず社会への価値創造に貢献します。

●グローバル企業としてサプライチェーン全体での人権の尊重、環境負荷低減に努め、地球環境及び未来を担う世代に貢献します。

●すべてのステークホルダーとの対話と連携を通じ、公正かつ透明性の高い経営を目指します。」

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ

①ガバナンス

代表取締役社長を委員長、管理部門の担当常務執行役員を副委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は四半期に1度開催され、その審議結果を含めて取締役会に定期的に(原則四半期に1度)進捗報告をおこなうこととしています。サステナビリティに関する事業リスクはコンプライアンス・リスク管理委員会と共有しており、適宜必要に応じて取締役会に上申することとしています。サステナビリティ委員会の傘下には、マテリアリティの解決推進を目的として、マテリアリティごとにワーキンググループ(WG)を設置しています。各WGの責任者は原則として執行役員が就くものとし、取り組み内容や活動進捗は適宜サステナビリティ委員会に報告されます。

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②サステナビリティ戦略

当社グループはさまざまな社会課題を議論・検討し、6つのマテリアリティを特定しています。各マテリアリティに対しては目標、KPIを設定し、課題解決に向けた施策を実行することで経営ビジョンおよび長期的にありたい姿の実現を目指します。

気候変動を中心とした環境への取り組みに関しては、グループ全体でのCO排出量の削減、廃棄物の発生抑制、環境に配慮した省エネ製品の開発を通じて環境負荷低減に向けた環境マネジメントを推進しています。

社会への取り組みとしては、社員の働きがいの向上の実現に向けて、女性の活躍推進を図りつつ、人的資本の充実を図っています。持続可能なサプライチェーンの構築に向けては、取引先様との密なコミュニケーションを図りながら、環境保全、人権への対応や安全な労働条件などの調査により、サプライチェーンマネジメントの強化に取り組んでいます。

お客様に対しては、国内では、他社に先行した環境に優しい自然冷媒※冷蔵庫・冷凍庫の販売を本格化させ、飲食外市場の積極的な開拓を通じて新たな顧客価値の創造を目指しています。同時に、全国を網羅する営業所を活かして安心・安全な食環境づくりへの新たな提案をおこなっています。

経営基盤の強化に関しては、コンプライアンス・リスク管理委員会や指名・報酬委員会、サステナビリティ委員会の各活動などにより、ガバナンス推進体制を強化しています。

特定された6つのマテリアリティの解決と経営ビジョン達成に向けた取り組みを連動させるために、原則として執行役員を責任者とするマテリアリティWGが目標及び指標を設定し活動を推進しています。マテリアリティの抽出・特定プロセス、KPI設定プロセスについては、統合報告書2024のP.25~P.26をご覧ください。

 

※自然冷媒:自然界にもともと存在する物質を使って冷凍用や空調用の冷媒に使用できる物質。オゾン破壊係数(ODP、Ozone Depletion Potential)がゼロ、かつ、地球温暖化係数(GWP、Global Warming Potential)が非常に低く地球に優しい冷媒。

 

統合報告書2024:https://www.hoshizaki.co.jp/ir/library/pdf/integrated_report2024_a3.pdf

 

③リスク管理

サステナビリティ委員会にて各マテリアリティに対応したリスクと機会を考慮し、設定したKPIの適時モニタリング及び関連各部署と自社の強みと弱みを加味した対策を講じ、リスクの最小化と機会の最大化を目指します。なお、事業活動及びサステナビリティ関連のリスク管理については、毎月開催されるコンプライアンス・リスク管理委員会の場で、リスク管理の徹底と迅速な対応を行うこととしております。リスク管理の詳細は後記「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④指標及び目標

サステナビリティ活動の推進に向けたKPIに関しては、各マテリアリティに紐付いたKPIを設定し、活動を強化することで、実効性を高めています。

 

マテリアリティ

ありたい姿との関連性

目標

気候変動への対応

世界的な気候変動問題に対し、快適な食環境の提供(ビジネス)を通じて、環境課題解決に貢献

KPI

脱炭素社会の実現に向け、事業活動からのCO排出量削減

目標値

2030年までにCO排出量(スコープ1&2)30%削減(2023年比)

持続可能なサプライチェーンマネジメント

環境や人権に配慮したサプライチェーンにより、廃棄物を最小限に抑え、健康で安全な労働条件を促進

KPI

・環境保全(廃棄物等)、人権・労働(安全)等を含むサステナビリティに関する調達先調査

・取組成果向上のための調達先との持続的なコミュニケーション

目標値

・調査質問票の重要取引先様回答回収率95%以上(2026年)(当社)

・工場方針説明会への重要取引先様出席率95%以上(2026年)(当社)

新たな顧客価値の創造

お客様を取り巻く環境変化を迅速にキャッチし、変化へ柔軟に対応したモノづくり、サービスビジネスを創造

KPI

今後拡大を目指す、多様な飲食外市場のお客様への貢献

目標値

飲食外売上高1,000億円(2026年)(国内)

安心・安全な食環境づくりへの新たな提案

多様化する食環境の変化に対して、安全、安心な製品やサービスを提供し、人々の豊かな暮らしに貢献

KPI

全国を網羅する拠点数の強みを生かした製品保守、サービスコール対応を通じたお客様への安心、安全の提供

目標値

サービス売上高522億円(2026年)(国内)

社員の働きがいの向上

すべての社員が多様な価値観を共有し、互いに尊重しあい、誇りを持って働く、活力あふれる職場風土への進化

KPI

女性管理職の育成と次期女性管理職候補の育成確保

目標値

女性管理職(課長相当職以上)50名、女性役職者(係長相当職以上)300名(2025年)(国内)

経営基盤の強化

コーポレートガバナンスの強化及び徹底したコンプライアンス遵守により、社会から信頼される経営の実践

KPI

・コンプライアンス経営の基盤強化

・社員への網羅的なコンプライアンス教育の継続

目標値

・重大なコンプライアンス違反なし(グローバル)

・社員全員へのコンプライアンス教育実施(グローバル)

 

(2)環境への取組

(TCFDへの対応)

気候変動が社会に与える影響は大きく、当社グループとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。当グループはTCFD提言への賛同を表明し、TCFDフレームワークに基づき情報開示を進めています。2024年は、事業活動からのCO排出量(スコープ1&2)算出対象範囲を単体からグループ※へ広げ、削減目標については、2030年の中間目標としてCO排出量(スコープ1&2)の30%削減(2023年比)に設定しました。脱炭素社会の実現に向け、引き続きグループを挙げて取り組みを推進していきます。

 TCFDへの対応については、統合報告書2024のP55をご覧ください。

※海外販売会社は除く。

 

統合報告書2024:https://www.hoshizaki.co.jp/ir/library/pdf/integrated_report2024_a3.pdf

 

①ガバナンス

当社グループは、気候変動への対応を含むマテリアリティへの取り組みを推進する体制として代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しています。その傘下で気候変動対策を推進する気候変動ワーキンググループ(WG)が活動しています。

WGの活動実績はサステナビリティ委員会で定期的に進捗が検証されます。

 

②戦略(シナリオ分析)

「2℃以下シナリオ」を2℃から、より社会要請に沿った1.5℃へ見直しました。財務影響度はリスク・機会の期間収益への影響度と発生可能性によりそれぞれ3段階で評価しています。

 

区分

項目

該当

シナリオ

発生

時期

財務への

影響

対応策

実績

1.5

4℃

金額

確率

移行

リスク

政策・

法規制

冷媒規制の強化対応、製品の脱炭素化推進のための研究開発費・設備投資額負担の増加

 

短期

・研究開発への計画的な投資と製品設計

・省エネ型の設備の導入

・国や自治体の補助金などの支援制度の活用

・本社工場、島根工場における太陽光発電設備の導入

・本社LED照明化完了

・スコープ3排出量の算定に向けた準備

・日本国内において全ての冷蔵庫・冷凍庫標準機および製氷機(14機種)を自然冷媒化。

炭素税導入によるコスト増加

短・中・

長期

・スコープ2排出量を削減するための再生可能エネルギーの調達拡大

・当社事業に関わるサプライチェーンの排出量(スコープ3排出量)の算定を今後行い、対応を検討

 

 

区分

項目

該当

シナリオ

発生

時期

財務への

影響

対応策

実績

1.5

4℃

金額

確率

移行

リスク

市場

原材料調達コストの上昇

 

短・

中期

VA(Value Analysis)コストダウン活動(部品点数の削減、設計の変更、部材・部品の見直し)、調達先分散化、戦略的価格改定

・取引先様調査票の作成

・適正部品在庫確保、グローバルサプライチェーン適正化

・豊明本社工場、島根工場における太陽光発電設備の導入

再生可能エネルギー・代替燃料調達コストの上昇

 

短期

工場の電力使用量削減活動、太陽光パネルなど自家発電設備への計画的投資、外部電力の再生可能エネルギーの使用比率向上

物理

リスク

急性

サプライチェーン寸断による原材料調達

コストの上昇

 

短・

中期

・調達先の分散化および新規調達先の開拓

・製造拠点に近い仕入先からの調達、調達リスクに備えた部品在庫量の適正化

・飲食外売上高約953億円(2024年度・国内)

・コストダウンおよび価格改定の実施

 

自然災害への対策強化に向けたコストの増加

 

中期

・グローバル拠点(製造、販売)におけるBCPの明確化

・有事の際の安定調達に向けた仕入先との連携強化

慢性

猛暑、感染症拡大による外食市場の縮小

 

中期

顧客チャネル拡大(飲食外市場、特に流通販売業、加工販売業、基幹産業、病院・老健に注力)

機会

製品と

サービス

顧客の省エネ・GHG削減に寄与する製品およびサービスの需要増

 

短・中・

長期

・自然冷媒を使用した製品のラインナップ拡充

・製品の電力使用量削減、水使用製品の使用水量削減(製氷機、食器洗浄機など)

・可燃性ガス取扱資格者の増員、修理用器具設備手配、サービス開発

・日本国内において全ての冷蔵庫・冷凍庫標準機および製氷機(14機種)を自然冷媒化

・稼働・温度データをクラウドサーバで管理するサービス(SaaS)「ホシザキコネクトWi-Fi」の導入

機会

市場

気温上昇に伴う冷機器の需要増

 

中・

長期

・気温上昇による影響度が高いエリアへのコールドチェーン製品拡充および進出

・未進出国などへのコールドチェーン製品販売の拡大、および販売エリア拡大に伴うサービス網の充実

・海外展開(M&A)の推進

・海外売上高比率51.2%

(前期比+5.3pt)(2024年度)

 

中・

長期

異常気象など環境変化に伴う自社製品およびサービスの需要増

 

中・

長期

・衛生製品ラインナップ、サービスの充実

・自動化、ロボティクス、リモート操作製品、サービスの開発、省力化製品拡大

・稼働・温度データをクラウドサー

バで管理するサービス(SaaS)「ホシザキ コネクトWi-Fi」の導入

・コネクテッドロボティクスとの協業

 

③リスク管理

気候変動に関する企画・立案、管理については、サステナビリティ委員会がこれを行い、全社的な気候変動への対応を推進しています。具体的には、気候変動に関する自社への影響(リスクと機会)を評価・識別し、対応策を立案・実施しています。

 

④指標と目標

当社グループは、2050年に事業活動からのCO排出量(スコープ1&2)実質ゼロへ向け、徹底した省エネ活動再生可能エネルギーの積極的な利活用を推進していきます。2030年の削減中間目標はホシザキグループ(海外含む)で、2023年比30%削減としています。気候変動への対応については、以下に記載した主な施策の他、統合報告書2024のP.54をご覧ください。

 

統合報告書2024:https://www.hoshizaki.co.jp/ir/library/pdf/integrated_report2024_a3.pdf

 

(気候変動への対応)

①冷媒のノンフロン化による地球温暖化ガス(GHG)削減

国内において、2023年5月に普及価格帯の自然冷媒業務用冷蔵庫・冷凍庫計68機種の発売を開始、2024年には、全ての業務用冷蔵庫・冷凍庫の標準機において自然冷媒化が完了しました。今後も全ての冷機器の自然冷媒化を促進していきます。製品のライフサイクルでのGHG排出量削減につながり、環境負荷低減に大きく寄与します。

 

②自然冷媒 製品による地球温暖化抑制効果

地球温暖化への影響が大きい代替フロンからノンフロンへの冷媒への転換が進むなか、海外では自然冷媒が広く使用されています。ホシザキはグローバルに冷機器を供給するメーカーとして環境負荷低減に配慮し、国外だけでなく日本においても海外市場で使用されている自然冷媒(イソブタン、プロパン)製品(代替フロンと比較してGWP※99%削減)の投入を進めています。

※GWP:Global Warming Potential の略で、地球温暖化係数。

 

(フロン排出抑制法への対応)

日本では、2015年4月に「フロン排出抑制法」が施行されており、フロン利用機器の定期・簡易点検やフロン漏えい量などの報告が義務づけられています。ホシザキは工場や事務所内で対象となるフロンガス利用機器をピックアップし、管理台帳(記録)を作成して、機器容量に応じた定期・簡易点検、整備を実施し、フロンガス漏えい防止に取り組んでいます。CO換算で1,000t以上のフロンガスの漏えいが生じた場合には、法令に基づく報告が必要となりますが、ホシザキにおける2024年度の漏えい量は、報告を要する値未満となりました。

 

(3)人的資本

①人的資本の基本方針

当社グループでは、全社員が大切にしたい行動指針として掲げている「夢を持とう」から始まるホシザキ・イズムを社員一人ひとりが意識し、行動することで、存在意義である社会に貢献する「進化する企業」の実現を目指します。その実現のための施策として、「働きやすさ」の向上に向けた職場環境の整備やワークライフバランスの改善、女性活躍を含むダイバーシティ活動の推進を強化しています。また、フードサービス機器メーカー世界No.1の実現に向けたグローバル人材育成プログラムに加え、人権を尊重した活動、報酬を含む人事制度の改革などによる「働きがい」の向上を通じ、全社員が個々の能力を最大限に発揮することで、経営ビジョンと長期的にありたい姿の実現に向けたプロフェッショナル人材の育成を目指します。

 

②保有する人的資本

2024年12月末の連結社員数は前年度末比2,700名増加の16,061名(連結グループ会社59社)、内訳は日本8,799名(ホシザキ+グループ会社20社)、米州2,956名(グループ会社18社)、欧州1,998名(同5社)・アジア2,308名(同17社)となっています。ホシザキと国内販売会社合計の社員数7,787名に対する女性社員比率は5年前と比べて+1.9%の17.8%に上昇しています。また、係長相当職以上の女性役職者数は、5年前と比較して90名増加の233名となり、役職者比率は9.0%です。

 

③これまでの成果と課題

国内の社員全体を対象とした教育体系の構築、経年劣化した人事制度の見直し、安全衛生活動の抜本的見直しなどに着手しています。特に、2018年の国内販売会社による不適切取引を契機に、内部統制の強化を優先してきましたが、現場における業務負荷が高い状況が長らく続いてきました。このため、内部統制の強化を維持しつつも、重複業務や承認制度などを改め、業務負荷軽減に取り組みました。国内販売会社における人事制度に関しては、働きぶりが処遇に反映され、ルール・基準が明確な制度への改革を進めています。女性活躍を中心とした多様性の向上活動に関しては、数年前から着手しており、着実に成果が見られています。一方で、外国人社員の登用などグローバル視点での人材戦略の策定、および人材戦略を通じた財務インパクトの数値化などの面に課題が残りました。

 

④5ヵ年経営ビジョンの達成に向けた戦略

5ヵ年経営ビジョンの達成に向けては、「ホシザキ・イズム」の体現者であるプロフェッショナルな人材の確保と育成、全社員の働きがいの向上による生産性の向上を重要視しています。まず、人材確保と育成に関しては、女性社員比率を意識して毎年一定数の新卒採用をおこなうことで安定的な人材の確保を図るとともに、キャリア採用を併用することで人材補強をおこなっています。能力開発に関しては、各種研修制度の充実を図っています。一方、働きがいの向上に向けては、社員の自発的な「貢献意欲」を高めることを目指し、社員一人ひとりのキャリアデザインや機会の提供などの環境整備を進めています。また、業務成果が公平に評価される人事制度改革を着実に進めることで、社員の働きがいの向上を通じた生産性向上を経営ビジョンの達成につなげたいと考えています。

 

⑤社員満足度調査

国内の当社グループにおいて、年1回、無記名式の社員満足度(以下「ES」)調査を実施しています。その内容を分析し、アクションプランを作成し、実行することで、社員の働きやすさや働きがいの向上を目指したES向上活動に活かしています。特に近年は、定性的な自由コメントの内容を重視しており、現場が抱える危機感や課題などを取り上げ、対応を強化しています。今後は海外ビジネスの成長に合わせ、グローバル展開を志向し、当社グループ全体での働きやすさや働きがいの向上を目指す方針です。そのため、海外グループ会社でも2023年度からは米州で、2024年度には欧州でES調査を開始しました。

 

⑥指標と目標

人的資本のKPIとしては、ホシザキおよび国内グループ会社における女性管理職を2025年度に50名(2020年度対比4倍)、係長相当職以上の女性役職者を2025年度に300名(2020年度対比1.5倍)とすることを目標として掲げています。2025年度目標達成に向けて設定している2024年度の目標値についてはクリアしました。なお、当該指標については、当社においては関連する指標のデータ管理とともに具体的な取組みが行われているものの、在外子会社においては関連する指標のデータ管理までは行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、上記指標に関する目標及び実績は、国内で事業を営む提出会社のものを記載しております。

 

3【事業等のリスク】

1.当社のリスク管理体制

当社は、当社グループの事業活動に関するリスク管理を所管するコンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、毎月1回開催することにより、リスク管理のグループへの推進と情報の共有化を図り、リスクへの迅速な対応とリスク顕在化の回避及び軽減等の決定を行っております。委員は、社外取締役を含む全取締役で構成されており、取締役会が定めたリスク管理規程に従って、事務局である法務部を所掌する執行役員がコンプライアンス・リスク管理統括責任者に指名されリスク管理体制の運用に当たっています。

当社グループは、リスク・リストを定め、各リスク分野を所掌する部署は、各々の職務分掌に基づいて担当職務ごとにこれらのリスクを管理(リスク・マッピング)し、重要度と脆弱性が高いと分類されたリスクについては、優先的に対策を立案し、随時実践して行くこととしています。

また、リスク管理規程に基づくリスク管理情報報告の制度の下、日常の事業活動の中で各部署あるいは各グループ会社で認識されたリスクは、随時コンプライアンス・リスク管理統括責任者に報告されることとしています。認識されたリスクについては、コンプライアンス・リスク管理委員会にて社外取締役からも助言や指導を得て、対策の立案と推進に活かしています。

 

2.事業等のリスク

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性のある主要なリスクは以下のとおりです。これらは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや重要性が低いと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性もあります。また、特定された主要なリスクに対して講じている各々の対応をしても全てのリスクの発生を排除することができず、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報等に基づいて、当社グループが判断したものです。

 

(1)気候変動に関連するリスク

気候変動にかかるリスク及び収益機会が当社グループの事業活動や収益等に与える影響等については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)環境への取組」をご覧ください。

 

(2)天候・災害等について

当社グループの主力製品は、製氷機、冷蔵庫等ですが、用途の特性上需要期の天候が業績に影響を及ぼします。また、地震・風水害等の大規模自然災害、テロ等の人為的災害及び感染症等が発生した場合、当社グループの設備、情報システム、取引先等の操業等に影響が出る可能性があります。このような災害発生時には、当社グループの生産活動及び販売活動に大きな影響を与え、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

自然災害等への備えとして、BCP(事業継続計画)を策定すると共に必要な保険を付保したり、地震プロテクション内包型外貨預金を手当したりすることによって、災害等発生時にも事業及び財政状態等への影響を最小限に抑えています。

感染症に対しては、コロナ禍での学びも活用して感染防止に努めると共に、生活様式やマーケットの変化に対しては新たな市場や需要の開拓により対応することにより、経営成績等への影響の極小化、ひいては好影響を与えられるように引き続き努めていきます。

 

(3)製品の品質について

当社グループが生産している製品及び他社仕入商品については、高品質な製品を安定供給するという基本方針の下、厳重な品質管理をして出荷しています。しかしながら、万一、市場クレームの発生等によって想定を超える品質問題が発生した場合には、製品・部品の不具合点検と交換による費用が発生することに加え、企業イメージや社会的評価が低下する可能性があり、その場合には当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社は、品質保証部が、全社的立場から品質改善や品質管理を徹底・強化すると共に、グローバル技術部及びグローバル製造部による海外各国の製造拠点に対する設計・製造品質支援も定着し、さらなる品質向上に努めています。万一品質問題が発生したときは、品質保証部、中央研究所、法務部その他の関係部署が連携して解決に万全を期す体制を整備すると共に、PL保険(生産物賠償責任保険)を付保して財政状態等への影響を軽減する措置を取っています。また、海上輸送や国内輸送中に生じ得る製品等の毀滅リスクを低減すべく、保険会社の知見を活用したloss prevention(損失予防)活動を強化しています。

(4)原材料・部品の調達について

当社グループの製品における原材料、部品等は、市況の変動等により調達価格が高騰した場合は製造コストに影響を及ぼします。製造コストの低減や製品価格への転嫁が困難な状況においては、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、米国新政権下で予想される輸入関税の変更やその米国施策に対する各国対抗措置による半導体等部材のレアメタル・自然冷媒用の液化天然ガス等の輸出停止、その他の原因による世界的サプライチェーンの混乱等に起因する部材の調達難が起こった場合には、当社の製品製造にも相当の影響を及ぼす可能性があります。さらに、米国・メキシコ間での保税加工制度の見直しが行われた場合には、製造コストの増加の可能性もあります。

また、当社のサプライチェーンにおいて不適切な対応に基づく環境や人権問題が発生した場合、顧客との取引の停止や行政罰、また、社会的信頼の喪失につながる可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、市況の変動等による原材料価格の変動リスクを吸収し得る製造原価低減策やIT投資による製造業務効率化施策及びその他の経費節減を継続し、高利益体質への強化を引き続き図ってまいります。

また、半導体等部材の調達懸念に対しては、代替可能材料や部品を積極的に取り入れています。その調達先も複線化する等グローバルで見直し、部品の確保等により需要回復に対応した増産に努めています。また、部材価格や物流費の増加に対しては予実管理を強化すると共に、自社努力のみでは収益性の改善は困難と判断した場合は、製品価格の改定を実施していきます。

当社グループは対処すべき重要な課題の一つに持続可能なサプライチェーンマネジメントを掲げ、環境や人権に配慮した責任ある調達活動を目指しています。また、EUを始め各国で制定されつつある人権デュー・ディリジェンスの法令化に対応し、契約への反映等コンプライアンスの徹底を目指しております。

 

(5)価格競争について

当社グループを取り巻く事業環境は、フードサービス産業における競争が激化するなか、競合他社との競争が大変厳しくなっております。当社のコスト低減レベルを超えて低価格競争が激化した場合、加えて、上述(4)のとおり原材料・部品調達難、製造コストの高騰となれば、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、製品の品質、コスト(労務費、物流コスト等を含む)、技術・サービス等のあらゆる面で、継続的かつ積極的に競争力の向上に努めています。特に、より高品質で独創的な、環境保護性能に優れた製品や省エネ・省力化に寄与する製品(例:「ホシザキ コネクトWi-Fi」等)の提供により他社との差別化を推進し、市場シェアの拡大を目指しています。特に、グローバル・スタンダードとなっている自然冷媒化を全製品で進めています。また、各地域の需要動向、製造コスト等を総合的に勘案した上で、製造拠点や供給方法の最適化を進めていきます。

 

(6)情報セキュリティについて

当社グループは、事業活動を通じて、取引先等の個人情報あるいは機密情報を入手することがあります。これらに加え、技術、契約、人事等に関する当社グループの機密情報について、サイバー攻撃等による不正アクセスや保存情報の破壊、漏洩等が発生した場合には、当社グループの事業継続に支障が生じる等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社は、情報セキュリティ管理について、適切な技術対策、社内管理体制の整備、社員への教育等の対策の実施を進めています。技術的には、従来の入口対策(不正アクセスや不正ソフトウェア等の侵入を防ぐ対策、暗号化通信によるネットワーク環境の提供、会社指定デバイス以外からのネットワークへの接続を制限するなどの対策)に加えて、システム・ネットワーク監視や出口対策(機密情報等の外部流出防止対策)を導入し運用しています。また、標的型攻撃メール等のセキュリティ・インシデントを想定した訓練を定期的に実施しています。2022年以降新たにグローバルでのサイバー保険を付保し、インシデント発生時にも事業及び財政状態等への影響を最小限に抑えています。

 

(7)法的規制等について

当社グループは、事業活動を行う国や地域において、食品衛生規制、環境保護規制、贈収賄防止法、投資許認可、安全規制、輸出入規制、人権や労働関係法制等の様々な政府規制の適用を受けています。また、経済関連法令の主なものとして、独占禁止法(下請代金支払遅延等防止法、建設業法等を含む)、知的財産権に関する法令、法人税、関税、付加価値税等多岐に渡るものがあげられます。とりわけ環境保護関係では、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、有害物質の使用、廃棄物処理、製品リサイクル等を規制する様々な法令の適用を受けております。

このような規制を遵守できなかった場合、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(リスクへの対応)

当社ではコンプライアンスをコア・バリューの一つと位置付け、法務部を中心に法令遵守を徹底する活動に力を入れています。万一、法令違反、不適合等の問題が発生した場合には、適切に解決する体制を強化する一方、毎年、強化すべきトピックスを取り入れたコンプライアンス研修を当社グループ全社員向けに実施しています。また、法制動向をタイムリーに把握して法改正時には関係者に要点を周知徹底することによって意識と知識の向上に努めています。なお、法令違反や不適合などの行為については内部通報制度などでこまめに拾うことによって、人づくり・仕組みづくりに生かしています。

 

(8)知的財産権について

当社グループが生産・販売する製品に関連して保有する知的財産権を、第三者が不正に使用して類似製品を製造、販売することを完全には防止できない可能性があります。一方、当社グループが製品を開発する際は、第三者の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、第三者から侵害訴訟を提起された場合、当社グループの信用低下や損害賠償責任の発生等により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、技術企画部が中心となって知的財産権を管理し、当社の知的財産を保護し、第三者の知的財産権の侵害を防止する体制を取っています。特に当社グループの製品や技術の模倣に対しては、特許、意匠、商標などの知的財産権の活用及び不正競争防止法等に基づく排除も含め、厳正に対応しています。2023年には、中国で発見された当社製品の模倣品について、当局より当社ロゴに類似したロゴの使用中止命令を含む行政処分が下されました。

 

(9)重要な訴訟事件等について

当社グループの事業活動に関して重要な訴訟その他の法手続が提起又は開始されるリスクは皆無ではありません。当報告書作成の時点では、重要な訴訟等はありませんが、万一、将来提起された訴訟等において不利な判断がなされた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社では、法務部にグローバル法務の豊富な知見を有する人材を採用、配置し、紛争処理、紛争予防及び渉外法務を3本柱として法務体制を強化しています。

 

(10)企業買収等について

当社グループは、既存の事業基盤の拡大やシナジーを創出するため、あるいは新たな事業分野への進出のために、企業買収や事業提携を行うことを成長戦略の一つとして位置付けております。その実施に際しては十分な検討を行いますが、買収後の事業計画が当初の計画通りに進捗しない場合には、のれん等の減損処理あるいは多額の資金投入が発生し、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、企業買収等を行う場合、買収前には、外部専門家によるデュー・ディリジェンスの実施や事業計画の妥当性検証を十分に行うことによってリスク軽減を図るとともに、買収後には、想定した効果を創出すべく組織力を積極的に発揮し、PMI(post-merger integration)を推進して事業計画の達成に取り組んでおります。

 

(11)政治経済の状況について

当社グループが事業活動を行う主要な市場における政治経済の状況や変動は、当社グループ製品の主な販売先であるフードサービス産業、流通業界等の企業業績動向に影響を及ぼします。特に、米国新政権、ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ情勢を始めとした米州、欧州、アジア各国における地政学リスクの高まりや、各国の物価上昇や金融・経済政策の影響による経済環境の悪化等は、サプライチェーンの混乱による部品・資材調達難、製造コストの増加など、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、国内及び海外における政治、経済及び社会のリスクをグループ会社ごとに見える化し、各種のリスクに適時適切に対応することにしています。

 

(12)為替相場の変動について

当社グループは需要地生産を中心としているため、輸出入取引に係る為替相場の変動による影響は限定的ですが、部材の調達等を外貨建てで取引しているものもあり、為替動向によっては製造コストや売上高に影響を及ぼす可能性があります。また、連結財務諸表の作成にあたって、各グループ会社の現地通貨建ての売上、費用、資産、負債等の項目を円換算しているため、換算時の為替レートによりそれらの項目の円換算額が影響を受けます。加えて、当社が保有する外貨建預金や海外の関係会社に対する投資を換算する際の為替相場の変動は、当社グループの財政状態、包括利益を含む経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社が保有する外貨建預金や海外の関係会社に対する投資については、主要な通貨別の為替換算による影響額を継続的にモニタリングし、ポジションを見直す等随時必要な措置を取って為替リスクの低減を図っています。

 

(13)人材確保、育成について

当社グループは、2024年12月末現在において内外拠点に研究開発人員を約670名、国内に営業人員約3,400名、サービススタッフ約2,800名を擁し、グローバルに技術、製造、販売、サービスの各部門に配置するプロフェッショナル人材及び経営人材を重要な人的資本と位置付け、その育成、拡充に力を入れております。労働人口が減少傾向にあるわが国を始め、関係各国の労働市場において人材の確保のための競争は激化しており、優秀な人材の採用や育成、雇用の継続が困難になった場合は、結果として当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(リスクへの対応)

当社グループは、生産過程における省力化と省人化に取り組むとともに需要地生産を一層推進して、労働人口の減少リスクの低減を図っています。その他、人材確保、育成にかかるリスクへの対応については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3)人的資本」をご覧ください。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における日本経済は、物価の上昇や企業における賃上げ幅の上昇、日銀の金利政策にも変化があった中で、日経平均株価が史上最高値を記録する等、景気の緩やかな回復基調が続きました。また円安もあり、インバウンドについては過去最高の水準を継続しました。海外では、米国における景気の底堅さやインドにおける堅調な経済成長、一部の国を除きインフレの緩和が見られるものの、欧州や中国の景気停滞、中東地域の情勢懸念の継続など景気先行きの不透明さが継続しました。

このような環境下、当社グループは、国内では飲食市場及び宿泊施設や流通販売業、病院・福祉施設等の飲食外市場への拡販を実施いたしました。海外では、需要の継続に対しての製品供給に注力するとともに、収益性の改善にも努めました。また、買収した企業による業績への影響がありました。

 

イ.経営成績

当連結会計年度の業績は、売上高は4,454億95百万円(前期比19.3%増)、営業利益は514億79百万円(同18.3%増)となりました。経常利益は578億23百万円(同14.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は371億70百万円(同13.2%増)となりました。

 

セグメントごとの業績は、次のとおりであります。

なお、当連結会計年度より、報告セグメントを変更しております。以下の前年同期との比較については、前年同期の数値を変更後の区分に組替えた数値で比較しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。

1.日本

日本におきましては、深掘りを進める飲食市場、積極的な開拓を進める飲食外市場に向け、ノンフロン自然冷媒を使用した冷蔵庫、製氷機や、食器洗浄機等主力製品を中心とした拡販を実施いたしました。特に飲食・サービス業界においては、原材料費や人件費等のコストアップ、人手不足の深刻化等は継続しているものの、インバウンドの回復等を受け高まっている設備投資需要への対応に注力いたしました。その結果、売上高は2,252億96百万円(前期比8.0%増)、セグメント利益は287億29百万円(同20.5%増)となりました。

2.米州

米州におきましては、競争環境が厳しくなる中、製造面での生産性向上や顧客開拓・関係強化等に注力しながら、製氷機、冷蔵庫、ディスペンサ、食器洗浄機等の拡販に努めました。その結果、売上高は1,083億33百万円(前期比10.8%増)、セグメント利益は113億6百万円(同11.3%増)となりました。

3.欧州

欧州におきましては、グループ会社間の連携強化等にも注力しつつ、主力製品である製氷機、冷蔵庫等の拡販に努めました。一方、トルコにおける超インフレ経済下による利益への影響等を受けた結果、売上高は550億76百万円(前期比101.6%増)、セグメント利益は32億19百万円(同4.0%減)となりました。

4.アジア

アジアにおきましては、インドを中心に、冷蔵庫等の販売が堅調に推移しました。この結果、売上高は692億21百万円(前期比37.8%増)、セグメント利益は115億48百万円(同45.4%増)となりました。

 

ロ.財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ785億83百万円増加し、5,439億44百万円となりました。

流動資産は、前連結会計年度末に比べ261億62百万円増加し、3,903億7百万円となりました。主な要因は、受取手形、売掛金及び契約資産、商品及び製品の増加によるものであります。

固定資産は、前連結会計年度末に比べ524億21百万円増加し、1,536億37百万円となりました。主な要因は、有形固定資産、のれんの増加によるものであります。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ288億43百万円増加し、1,612億67百万円となりました。

流動負債は、前連結会計年度末に比べ239億52百万円増加し、1,285億90百万円となりました。主な要因は、契約負債、支払手形及び買掛金の増加によるものであります。

固定負債は、前連結会計年度末に比べ48億90百万円増加し、326億76百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ497億40百万円増加し、3,826億77百万円となりました。主な要因は、利益剰余金、為替換算調整勘定、非支配株主持分の増加によるものであります。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ126億80百万円減少し、2,143億91百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、473億44百万円の収入(前期は376億98百万円の収入)となりました。主な要因は、税金等調整前当期純利益が552億91百万円ありましたが、法人税等の支払額が178億98百万円あったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、373億73百万円の支出(前期は32億86百万円の収入)となりました。主な要因は、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出155億36百万円、有価証券及び投資有価証券の取得による支出123億11百万円、定期預金の純増による支出が56億13百万円あったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、401億71百万円の支出(前期は103億55百万円の支出)となりました。主な要因は、配当金の支払額が158億74百万円、自己株式の取得による支出が145億5百万円あったことによるものであります。

 

③生産、受注及び販売の実績

イ.生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前期比(%)

日本(百万円)

86,339

114.5

米州(百万円)

85,315

108.0

欧州(百万円)

45,286

230.8

アジア(百万円)

51,026

120.2

合計(百万円)

267,968

123.8

(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

 

ロ.商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前期比(%)

日本(百万円)

57,234

100.1

米州(百万円)

1,996

103.9

欧州(百万円)

6,652

215.8

アジア(百万円)

12,570

209.9

合計(百万円)

78,454

115.1

(注)金額は、仕入価格によっております。

 

ハ.受注実績

当社グループは、見込生産を行っているため、該当事項はありません。

 

ニ.販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

前期比(%)

日本(百万円)

217,485

107.7

米州(百万円)

107,671

111.1

欧州(百万円)

53,039

204.8

アジア(百万円)

67,298

138.0

合計(百万円)

445,495

119.3

(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。その作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性の存在により、これらの見積りと異なる場合があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

また、連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

イ.経営成績等の分析

1.経営成績

売上高は4,454億95百万円(前期比19.3%増)となりました。セグメントごとの売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、日本は2,252億96百万円(同8.0%増)、米州は1,083億33百万円(同10.8%増)、欧州は550億76百万円(同101.6%増)アジアは692億21百万円(同37.8%増)となりました。海外売上高は2,280億9百万円(同32.9%増)となり、連結売上高に占める海外売上高比率は51.2%(同5.3ポイント増)となりました。

売上原価は2,790億46百万円(前期比17.5%増)となりました。売上総利益は1,664億49百万円(同22.3%増)となりました。売上総利益率は37.4%(同0.9ポイント増)となりました。

販売費及び一般管理費は1,149億69百万円(前期比24.2%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は25.8%(同1.0ポイント増)となりました。営業利益は514億79百万円(同18.3%増)となりました。セグメント利益は日本は287億29百万円(同20.5%増)、米州は113億6百万円(同11.3%増)、欧州は32億19百万円(同4.0%減)、アジアは115億48百万円(同45.4%増)となりました。

営業外収益は88億86百万円(前期比4.6%増)となりました。営業外費用は25億42百万円(同50.3%増)となりました。経常利益は578億23百万円(同14.9%増)となりました。

特別利益は1億34百万円(前期比39.2%増)となりました。特別損失は26億65百万円(同30.6%増)となりました。税金等調整前当期純利益は552億91百万円(同14.3%増)となりました。

法人税等合計は176億37百万円(前期比18.9%増)となりました。非支配株主に帰属する当期純利益は4億84百万円(同32.0%減)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は371億70百万円(同13.2%増)となりました。

なお、経営成績に影響を与える要因の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 」もご覧ください。

 

2.財政状態

財政状態の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 ロ.財政状態」のとおりであります。

 

3.キャッシュ・フローの状況の分析

キャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」のとおりであります。

 

ロ.資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料の購入費のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

また、事業運営上必要な資金を確保すると共に、経済環境の急激な変化に耐えうる流動性を維持することを基本方針としております。事業活動に必要な資金については、主に内部資金を活用しております。また、グループ内余剰資金を活用するためにキャッシュ・マネジメント・システムを導入し、資金効率の向上に努めております。

なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は90億54百万円、現金及び現金同等物の残高は2,143億91百万円となりました。

 

5【経営上の重要な契約等】

(当社連結子会社による株式取得(持分法適用関連会社化)の件)

 当社は、2024年2月21日開催の取締役会決議に基づき、当社の連結子会社であるHOSHIZAKI USA HOLDINGS,INC.が、パナマ共和国の業務用冷蔵庫メーカーであるFogel Company Inc.(以下、Fogel社)の株式譲渡契約を締結し、株式の一部を取得、持分法適用関連会社化いたしました。

(1)株式取得の目的

 Fogel社は、グアテマラ共和国の製造子会社(Fogel De Centroamérica, S.A.社)をはじめ、他中南米諸国に販売及びサービス拠点を有する業務用冷蔵庫メーカーであり、高品質の製品を開発・生産する技術力と、中米地域を中心に大手飲料メーカー向けなどの販売及びサービス網を有する、成長性及び収益性共に優れた企業です。

 今回Fogel社の株式を取得することで、中南米地域を熟知した現経営陣と共に、米州全体のボリュームゾーンにおける当社製品ラインナップの拡充と、今後市場開拓が期待できる中南米地域での事業拡大を図ってまいります。

(2)株式取得の相手先の名称

 Harrow Corporate Holding Inc.

(3)持分法適用関連会社化する会社の名称、事業内容、規模

 被取得企業の名称  :Fogel Company Inc.

 事業の内容     :フードサービス機器製造販売

 資本金の額     :615千米ドル

(4)株式取得の時期

 2024年2月21日(米国時間)

(5)取得した株式数及び取得後の持分比率

 取得した株式数   :153,781株

 取得後の持分比率  :25.0%(内、間接所有25.0%)

 取得価額      :27,996千米ドル

 本株式取得後も段階的に追加取得を実施し、今後3年間でFogel社株式の51%を保有、連結子会社化予定。

(6)支払資金の調達方法及び支払方法

 自己資金

 

(当社連結子会社による株式取得(孫会社化)の件)

 当社は、2024年4月11日開催の取締役会において、当社の連結子会社であるHOSHIZAKI SOUTHEAST ASIA HOLDINGS PTE. LTD.を通じて、フィリピン共和国のフードサービス機器の輸入販売会社であるTECHNOLUX EQUIPMENT AND SUPPLY CORPORATIONの全株式及びHKR EQUIPMENT CORPORATIONの株式の一部を取得し、連結子会社化することについて決議し、同日付で株式譲渡契約を締結いたしました。

 詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(企業結合等関係)」をご覧ください。

 

6【研究開発活動】

当社グループにおける研究開発活動は、日本では当社等が製品の研究開発を行っており、米州ではHOSHIZAKI AMERICA,INC、LANCER CORPORATION等が、欧州ではHOSHIZAKI EUROPE LIMITED等が、アジアではWestern Refrigeration Private Limited等が行っております。当社グループにおける研究開発部門では、市場情報収集から要素開発、試作、設計、生産フォローアップまでの一貫した研究開発体制を持つことで、最終顧客の多種多様なニーズに対応しております。当連結会計年度は、新規開発及びモデルチェンジを中心とした開発活動と、収益性を向上させるためのコスト低減活動を行っております。

なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費の総額は5,621百万円となっており、セグメントごとの研究開発費は、日本は3,175百万円、米州は1,925百万円、欧州は123百万円、アジアは397百万円となっております。当社グループにおける研究開発部門に所属する従業員は合計676名となっており、セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。

 

(1)日本

①当社

(冷蔵庫)

2024年末に自然冷媒を使用した冷蔵庫・冷凍庫をモデルチェンジし、製品化いたしました。環境に影響を及ぼす特定フロンや代替フロンに代えて自然冷媒を用いることで、従来製品に比べ地球温暖化係数(GWP)を約99%削減しました。このモデルチェンジによりタテ型とテーブル型の冷蔵庫・冷凍庫を一新、代替フロンを使用した製品から自然冷媒を使用した製品への完全切り替えが完了いたしました。

 

(製氷機)

自然冷媒を使用した製氷機を開発し、製品化いたしました。自然冷媒を用いることで、冷蔵庫と同様に、従来製品に比べGWPを約99%削減しました。

キューブアイスメーカーでは、2023年に追加となったアンダーカウンタータイプに続き、中型のバーチカル・テーブルタイプを製品化しました。また大型タイプのキューブアイスメーカーをモデルチェンジし、製品化いたしました。

キューブアイスメーカー以外の製氷機では、大型タイプのチップアイス・フレークアイスメーカーや、産業用大型製氷機クラッシュドアイスメーカー Rシリーズのモデルチェンジを行い、製品化いたしました。これらのモデルチェンジでは、新冷媒としてR448A(GWP 1390)を採用することで低GWP化を実現し、フロン排出抑制法に基づく環境影響度の目標達成をしております。また産業用大型製氷機クレセントアイスメーカー KMシリーズのモデルチェンジを行い、製品化いたしました。製氷効率をアップさせた製氷板(エバポレータ)に変更し、製氷能力をアップさせました。

 

(洗浄機)

器具洗浄機をモデルチェンジし、製品化いたしました。飲食チェーン店や流通販売業等で使用される製品で、視認性に優れた液晶パネルを採用し、節水性を向上させ従来製品よりすすぎ水量を37%削減いたしました。

 

(その他)

ブラストチラー&ショックフリーザーや、プレハブ式急速凍結保存庫をモデルチェンジし、製品化いたしました。これらのモデルチェンジでは、新冷媒としてR448A(GWP 1390)を採用することで低GWP化を実現し、従来製品に比べGWPを約65%削減しました。

自然冷媒を使用した東南アジア向けのディープフリーザーを開発し、製品化いたしました。超低温-60℃で食材の新鮮さを長持ちさせる製品で、タンパク質の酵素分解や脂肪の酸化を抑制します。

液体急速凍結機を開発し、製品化いたしました。カゴの取り出しが手動式の処理能力8kg・20kgタイプ、およびカゴが自動昇降する処理能力20kgタイプをラインナップに追加いたしました。-35℃のエタノールで食材を急速凍結させ、氷結晶の膨張を抑制することで細胞の破壊を防ぎ、食材の新鮮さを保ちます。エタノールの循環速度をアップさせるスピード凍結モードを搭載し、食材をより素早く凍結させられます。

テーブル形再加熱キャビネットを開発し、製品化いたしました。完全調理済み食品の導入が進んでいる小規模老人福祉施設等を主な販売先とした製品となります。

 

(2)米州

①HOSHIZAKI AMERICA,INC.

地球温暖化に大きな影響を与える冷媒の使用を制限したFガス規制※に対応した冷蔵庫、製氷機のモデルチェンジは順調に進んでいます。また今後さらに省エネ規制が発効となるため、省エネ性向上に関する研究開発も並行して進めています。

※Fガス規制…高GWPの冷媒を使用する機器の販売を禁止する規制。

②LANCER CORPORATION

HOSHIZAKI AMERICA,INC.同様、Fガス規制に対応した環境配慮型のディスペンサへのモデルチェンジを進めております。また外観デザインと視認性、操作性を充実させた大型ディスプレイの採用、さらにネットワークを利用した情報収集と分析が可能なアプリケーションの開発等、ソフトとハードの両面から新製品開発を推進しております。

 

(3)欧州

①HOSHIZAKI EUROPE LIMITED

今期は欧州市場の主力製品であるキューブアイスメーカーのフルモデルチェンジをいたしました。欧州はFガス規制が世界に先駆けて施行され、環境負荷低減に効果的な製品は市場で特に高く評価される傾向にありますが、本製品も同規制に適合した環境配慮型の製品であります。

 

(4)アジア

①星崎商厨智造(蘇州)有限公司

現在中国、東南アジア市場向けの冷蔵庫のフルモデルチェンジに取り組んでおります。ハイエンド製品の「金星」は競合に先駆けてインバータ制御を搭載し省エネ性能を向上させ、中国、シンガポールの省エネ規制で最高レベルの達成を目指しております。また中国、東南アジア市場向けの製氷機はHOSHIZAKI EUROPE LIMITED から生産を移管すると同時に、省エネ性の向上やコストダウンを実施いたしました。