文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
① 経営理念
当社グループは、「人によし、社会によし、未来によし。」の経営理念のもと、油脂の力を活かした“ものづくり”を通して、すべての人から信頼される企業であり続けることを目指しております。
② 目標とする経営指標
当社グループは、株主資本の効率的運用による投資効率の高い経営を図るため、自己資本利益率(ROE) 2030年度に向けて8.0%以上を目標経営指標としております。
(2)経営環境
・企業構造
当社事業の中核をなすのは、「油脂」の力を活かしたものづくりです。当社では、食品事業と油化事業の二本柱で強固な経営基盤の構築に努めており、環境に左右されない「持続的成長基盤」の確立を目指しております。
・主要製品と競争優位性
当社グループの強みは、私たちが普段食べているもの、使っているものに当社製品が幅広く使われていることです。食品事業においては、マーガリン、ショートニング、粉末油脂、ホイップクリーム等を主要製品として、製パン、製菓、即席麺メーカー等に対して、生産力、技術力、提案力を活かして新しい味の創出・拡充に向けた「おいしさ」で暮らしへ貢献する製品を安定的に供給しております。油化事業においては、脂肪酸、グリセリン、香粧品原料、重金属処理剤、その他各種界面活性剤を主要製品とし、「油脂製品」「化成品」「環境産業製品」の3つの分野においてさまざまな産業分野に向けて、製品の提供に努めております。
(3)優先的に対処すべき事業上および財務上の課題
当社グループを取り巻く事業環境は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の高まり等により緩やかな回復基調にあるものの、円安の進行に伴う諸物価上昇、中国を中心とした海外経済の減速懸念等により、依然として先行き不透明な状況が続くものと思われます。
このような事業環境のなか、当社グループは、「人によし、社会によし、未来によし」という経営理念のもと、2030年に向けた経営構想を策定し、食品と油化の2つの事業を柱に、環境の変化に左右されない“持続的成長基盤”を確立させ、その持続的成長基盤を“土台”とした両事業の継続的な成長と発展を目指しております。
2024年度は、2030年に向けた経営構想の“種まき”の期間と位置付ける第一次中期経営計画の最終年度となり、各種戦略的投資・大型投資の実行等の持続的成長のための基盤づくりとあわせて、主力製品の拡販等に注力した結果、売上、利益ともに堅調に推移するなど、業績において一定の成果を得ることができました。
2025年度は、新たに2025年12月期から2027年12月期の3年間を対象とした第二次中期経営計画の初年度となります。営業利益については、前期から発生していた本社移転関連費用の計上や、物流費、人件費等の諸費用の増加があり減益となる見込みですが、第二次中期経営計画では、前中期経営計画において構築した持続的成長基盤を活用し、前中期経営計画でまいた種を“育成”する期間と位置付けて、次の内容に取り組むことにより、2027年度には2024年度以上の営業利益を目指してまいります。
食品事業は、これまでの取り組みを通じて得た技術を活かし、強みを生かせる食品領域全般の可能性に対し、新しい味の創出・拡充に向けた進化により、市場、販売業界を拡大してまいります。また、ポートフォリオの改善をさらに促進し、価格最適化の取り組み等により収益の拡大、収益性の強化を推進いたします。
油化事業は、トイレタリー向け製品や家庭紙用柔軟保湿剤を中心に、技術、生産、販売の各領域でこれまでの活動から深化を図り、さらなる拡販に取り組むとともに、将来に向けて製品開発を強化すべく技術力の研鑽に努めてまいります。
加えて、両事業ともに第二次中計期間では、北米市場への販売拡大など、引続き海外市場への取り組みを加速いたします。
これらの事業の成長に向けて、また、人々の暮らしを支えるインフラ企業としての供給責任を果たすため、強固な財務体質を構築し、継続して成長投資を実施いたします。さらに、技術開発力の強化、チャレンジ力の向上に向けた人財育成とマネジメントの実施、販売力の強化に向けたマーケティングプラットフォームの活用を推進し、企業価値の向上に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
また、連結グループにおける記載が困難であるため、連結グループにおいて主要な事業を営む提出会社単体の記載としております。
当社は、SDGsやESGに関わる世の中の情勢を踏まえて、サステナビリティの視点を取り入れた経営を促進するため、2020年に「サステナビリティ推進委員会」を設置いたしました。
委員長は代表取締役社長兼CEO兼CBOの三木逸郎が務め、委員会ではサステナビリティに関する全社方針や目標の策定、各本部のモニタリングなどの審議および決議を行っております。

① サステナビリティ
当社は、「人によし、社会によし、未来によし。」という経営理念のもと、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3要素、いわゆる「ESG」を重視した経営を推進し、国連の持続的な開発目標「SDGs」に事業活動を関連づけ、環境問題、社会問題、人権問題などの解決に努めております。SDGsに向けた取り組みを中期経営計画の中に取り入れ、新たな製品やサービスを生みだすことによって、自社にイノベーションをもたらします。SDGsのゴールである2030年に向けて全社を挙げて取り組んでおります。
② 人的資本について、人材育成方針や社内環境整備方針
イ 人的資本の考え方
当社にとって人材は価値創造の中核であり最も重要な資本であると考えております。社員の多様性を最大限に尊重し、創造性が発揮できる企業風土を目指しております。
ロ 人材育成
社員がキャリア形成に主体的に取り組めるよう支援し、一人ひとりの強みを活かした育成を行っております。階層別研修、目的別研修、社内講師による動画学習コンテンツ(ミヨシビジネスアカデミー)の配信など、さまざまな学びの機会をつくり、社員の成長に力をいれております。
また、ウェルビーイング経営を推進し担当役員による個別面談や、上司による部下の成長支援などを目的とした1on1面談を全社で実施しております。
① サステナビリティ関連
各工場の生産設備更新においては省エネ設備を導入するとともに効率のよい生産体制を構築することで、エネルギー使用に関する原単位が年平均1%以上改善できるように努めております。また、営業車については電気自動車の導入の他、カーシェアを推進し保有台数を削減しております。その他事業所内のLED照明への切り換え等も含め、全社でエネルギー削減に取り組んでおります。
② 人材育成方針や社内環境整備方針
イ DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進
(イ)方針
社員一人ひとりが自分らしさを大切にしながら、安心して働き続けられる企業を目指して、人権や多様な価値観を尊重し、誰もがいきいきと活躍できるよう、DEIを推進しております。
(ロ)取り組みについて
・社員活躍推進
すべての社員にとって、より働きやすく、働きがいが実感できる職場環境を目指し、社員活躍推進に取り組んでおります。また、女性社員がより責任のある立場で活躍することが組織の活性化に繋がると考え、2025年末までに、管理職に占める女性社員比率を9.5%以上にするという目標を掲げております。キャリアを積み重ね、組織の中核を担う女性社員が着実に増えております。
(2024年12月時点での当社の女性管理職比率:9.1%)
・仕事と育児の両立支援
仕事と育児を両立したいという社員の希望を実現するとともに、女性に偏りがちな育児や家事を夫婦で分かち合うことが女性の能力発揮につながると考え、男性社員の育児休業取得を推進しております。育児休業の取得を検討している社員に対して、育児休業や復職後に活用できる制度の説明を個別に行い、不安の解消に努めております。
(2024年度の男性育児休業取得率:85.0%・平均取得日数:37.1日、過去5年間における女性社員の育児休業からの復帰率:100%)
・障がい者雇用
個人の特性に合わせたコミュニケーションをとることで、一人ひとりが能力を発揮し、安心して働くことができる職場づくりに取り組んでおります。
(2024年12月時点での当社の障がい者雇用率:2.19%(法定雇用率:2.5%))
・LGBTQ理解促進
すべての社員がお互いの性別、性的指向、性自認などを尊重し、自分らしく誇りを持って働けるよう、LGBTQの理解促進・環境づくりに取り組んでおります。研修実施やパートナーシップ制度規程の施行、外部相談窓口の設置、Ally(アライ)を増やす取り組み、定期的な情報発信などが評価され、PRIDE指標2024においてゴールド認定を受けました。
ロ 健康経営
全社員の健康保持・増進に注力した活動を積極的に行い、社員一人ひとりが心身ともに健康で幸せであり続けるための支援を目的として、健康経営を推進しております。高精度健診(婦人健診・人間ドック等)受診率の向上や、喫煙率の低減などに取り組んでおります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクについては以下のようなものがあります。これらは、社内のモニタリングを通じて網羅的に把握した上で、特に重要なリスクはコンプライアンス・リスク管理委員会で協議し決定しております。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月26日)現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
当社グループは、海外からパーム油等の油脂原料を仕入れているため、原材料用油脂の市況および為替相場が、当社グループの原材料の仕入価格に影響を与えます。原材料の仕入価格に著しい変動があった場合、納入先ユーザーとの価格改定交渉に時間が必要となり、原材料の仕入価格の上昇を販売価格に転嫁するのに時間差が生じた場合、また、原材料の高騰が継続し、原料価格の上昇の全部または一部を製品価格に転嫁できない状況が継続した場合は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
原材料のサプライヤーを複数確保し、サプライヤーからの密な情報収集により仕入価格の変動を把握し、販売価格の是正が必要な場合は速やかに納入先ユーザーに対して価格改定を申入れます。また、仕入および販売の精緻な数値管理を行い、収益管理を徹底することで、原材料の仕入価格変動による業績への影響の抑制に努めております。
社会全般にわたる食品の安全性問題が発生した場合、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループでは、食品安全システムに関する国際認証規格「FSSC22000」、HACCPおよびAIB国際検査統合基準の認証を取得し、国際標準規格にしたがって各種製品を製造しております。また、トレーサビリティーシステムの構築および定期的な品質管理システムの監査等を通じて、食品の安全性に関するリスクの発生を防止するよう努めております。
当社グループの生産拠点において、地震や火災等の大規模災害が発生した場合には、生産設備の損壊、生産活動の停止等により、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループは、工場火災等の事故を防止するため、設備点検を定期的に実施するとともに、各工場で安全衛生防火委員会を開催し、リスク発生の未然防止に努めております。また、地震等の自然災害への対応については、「災害対策マニュアル」を策定し、初動の対応を行うとともに、早期に事業を復旧させるために「事業継続計画(BCP)」を策定し、委託生産先の確保や複数の拠点での在庫管理に努める等、万全の災害対策を講じることにより、事故および自然災害の業績への影響の抑制に努めております。
当社グループの退職給付費用および債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて算出されております。実際の結果が前提条件と異なった場合、将来期間において認識される費用および計上される債務に影響を及ぼします。年金資産の運用利回りの悪化や割引率の低下等は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
企業年金の積立金の運用が、従業員の安定的な資産形成に加えて自らの財政状態にも大きな影響を与えることの重要性を認識し、経理財務部および人事部の担当取締役が、定期的に運用状況のモニタリングを行い、運用方針を決定しております。なお、退職給付信託に組み入れる給付原資の分散化を図るとともに運用利回りの安定化を図ることにより業績への影響の抑制に努めております。
事業活動のなかで重要な訴訟等が提起され当社グループに不利な判断がなされた場合には、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループは、法令等の遵守、違反行為、不正行為の未然防止を徹底するため、企業倫理行動を定めた「ミヨシ油脂行動規範」を当社グループに周知徹底しております。また、コンプライアンス委員会を法令遵守の主管部門と位置づけ「コンプライアンス規程」及び「コンプライアンスプログラム」に則り、コンプライアンス経営に努めることで訴訟リスクの発生を防止するよう努めております。
(6) 重大な感染症等に関するリスク
新型コロナウイルス感染症のような大規模な感染症等の発生により事業を運営する人材が不足し、生産または販売体制に支障が生じた場合は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループは、政府や都道府県等の指針に沿った感染拡大防止策の徹底をはじめとして、時差出勤やリモート勤務の導入等、平時より感染防止対策に努めており、従業員等が治療方法の確立されていない感染症等に罹患した場合でも、従業員の健康状態の確認とともに適切な感染拡大防止対応を行うことにより、業務が停止するリスクを防止するよう努めております。
(7) 法令等の規制強化
化学物質管理に関する法令改正等で規制が強化された場合は、設備投資やシステムの構築等が必要となり、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループは、食品事業、油化事業の両事業において法令を遵守し、製品の製造ならびに販売を行っておりますので、法規対照表のアップデートを随時行い、法改正の事前調査および事後観察を行うことで法令等の規制強化に伴う業績への影響の抑制に努めております。
(8) 情報セキュリティ
重大なシステム障害や未知のコンピューターウイルスの社内ネットワークへの侵入、または外部からの不正アクセスやサイバー攻撃を受けコンピューターシステムが長期間使用できなくなった場合は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループは、重要セクションには電子錠等を設置し入館管理を行うなど物理的な情報管理対応を行っております。また、重要情報は関係者のみアクセスできるファイルサーバに保管するとともに、不正アクセスに対する電磁的情報の漏洩対策を施す防御システムの導入および全社的なセキュリティ教育の実施による従業員のリテラシーの向上、さらには情報管理関連規程類の整備を行い情報セキュリティ対応に努めております。また、サイバー保険に加入し、第三者への損害賠償責任の発生等に備えております。
(9) 基幹システム更改
基幹システム更新においてプロジェクトが遅延または中断した場合には、プロジェクト費用の増加、既存システムの継続使用によるコスト増の発生等により、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。基幹システムの障害、不測の事態によるインシデントや、外部からのウイルスの侵入等が発生した場合、情報システムの停止が引き起こされ、当社の事業運営に支障が発生する可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループは、基幹システム関連業務の進捗管理を定期的に実施するとともに、システム会社と連携し情報共有に努め、業務要件を網羅したシステム構築を実施期限までに行うこととしております。また、事業所間の連絡を含めた情報インフラの冗長化により、平常時から不測の事態に備えた運用を行うことに努めております。
(10) 自社物流倉庫の機能停止
2024年10月に稼動した阿見倉庫(茨城県稲敷郡阿見町)において、倉庫システムのオペレーション等にインシデントが発生した場合や、今後更改を予定する基幹システムとの連携に不具合が発生した場合には、製品の入出庫業務等に支障が発生する可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループでは、阿見倉庫の管理を目的として新設した阿見倉庫管理部において、物流専門コンサルティング会社の徹底した指導のもと、WMS(倉庫管理システム)による効率的なオペレーション体制を構築するとともに倉庫管理体制を強化することにより、リスクの発生を防止するよう努めております。
(11) 不動産売買に係る契約違反に伴うリスク
当社グループでは、2022年2月25日付で本社事務所、物流倉庫、東京工場として利用していた当社所有地の売却に係る契約を締結しております。当該契約に基づく売却対象不動産の引渡しを2025年6月に予定しておりますが、引渡し後の契約不適合責任その他の契約上の義務違反を問われ、違約金の支払いや損害賠償責任を負うこととなった場合には、当社グループの業績、財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループでは、顧問弁護士の指導のもと不動産売買契約を締結し、専門コンサルティング会社の指導のもと、売却対象不動産の引渡しに向けて移転・撤収作業を計画的に進めるとともに、買主との間で綿密に協議を進めつつ、契約上の義務履行に向けた準備を段階的かつ着実に進めることにより、リスクの抑制に努めております。
(12) 人材確保
少子化等により企業間での採用競争が激しくなり必要とする人材を確保できなかった場合、また、従業員の退職等によって必要な人材が確保できなくなった場合は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(リスク対応策)
当社グループは、優秀な人材を採用し、製造部門、技術部門、販売部門、管理部門等の幅広い部門において、人材を育成することで、事業運営と競争力の向上に努めております。また、テレワーク等を積極的に推進し、従業員の働きやすさの向上を目指すなど、従業員のエンゲージメントの向上に向けた施策を通じて人材の流出の抑制に努めております。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における我が国経済は、社会・経済活動の活性化が進み、雇用・所得環境の改善等を背景に緩やかな回復の動きが見られましたが、資源・エネルギー価格の高止まりや円安の進行による諸物価の上昇、海外経済の減速懸念等により、先行き不透明な状況が続きました。
当油脂加工業界におきましては、人流の活性化やインバウンド消費の増加等を背景に景況感の改善が進む状況のなか、主要原料油脂価格につきましては比較的安定して推移いたしましたが、物流費、人件費、包材・副原料等の各種コスト高が継続したほか、年度後半には一部原料において相場高の状況が見られました。
このような状況のなかで当社グループは、「第一次中期経営計画(2022~2024年)」の最終年度として、引き続き持続的成長のための基盤づくりを推進いたしました。販売においては、計画の達成に向け主力製品の拡販を推進するとともに適正な販売価格の確保にも取り組んだ結果、主要原料価格が安定的に推移したことが追い風となり収益の拡大に繋がりました。また、収益拡大に向けた取り組みとして、付加価値の追求に重点を置いた製品開発を進める一方、国内外の各種展示会への出展や食品事業向けの「ネクストフードラボ」、油化事業向けの「ネクストケミカルラボ」などのWEBサイトにおいてデジタルツールを活用した販売促進活動を展開し、主力製品のみならず生産ロスや環境に配慮した製品の拡販を進めるとともに、独自性のある新規素材の市場開拓に向けた取り組みを加速させました。生産面においては、東京工場の閉鎖に伴う他工場等への生産移管のほか、各製造拠点における設備の更新や生産ラインの集約など、生産体制の効率化や生産性の向上に努めました。また、茨城県稲敷郡阿見町に物流倉庫を新設し、倉庫の集約化と保管製品の品質管理の徹底にも努めました。
この結果、売上高は57,033百万円(前連結会計年度比1.4%増)、利益については、上期は主力製品の拡販および適正な販売価格の確保の取り組みにより堅調に推移したものの、下期には本社移転関連の一時的費用を計上するなど販管費の増加の影響もあり、営業利益は2,961百万円(前連結会計年度比24.9%増)、経常利益は3,007百万円(前連結会計年度比15.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は2,819百万円(前連結会計年度比35.7%増)となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
≪食品事業≫
食品事業につきましては、国内人流の活性化とインバウンド消費の高まりを背景とした土産菓子、外食産業関連の旺盛な需要が継続するとともに、主要販売先である製パン業界をはじめ、製粉、流通菓子等の業界が堅調に推移しました。
このような状況のなかで当社グループは、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等の主力製品の拡販はもとより、フードロス削減につながる製品やプラントベースフードの当社ブランド「botanova」シリーズ等の市場ニーズに即した高付加価値製品の拡販に努めるとともに、おいしさと健康に貢献するための新たな価値の創造や、付加価値の追求に重点を置いた製品開発に取り組みました。また、当社技術・製品と市場ニーズとを融合するために様々な食品業界への展開を見据えたマーケティング活動にも注力し、新規顧客の開拓に努めました。これらに加え、包材・副原料、ユーティリティ等の各種コストの上昇に対応した販売価格の適正化や、各種原材料・資材の見直し、生産体制の効率化等の取り組みを推進し、収益の拡大を図りました。
この結果、売上高は39,704百万円(前連結会計年度比3.9%増)、営業利益は1,926百万円(前連結会計年度比56.2%増)となりました。
≪油化事業≫
工業用油脂製品につきましては、脂肪酸は、主要需要先である輸送機械、タイヤ、塗料等の業界の需要減少の影響を受けて苦戦したものの、原料価格の状況に対応した適正価格での販売により収益の確保に努めました。一方、化粧品や薬局方の高品質グレードの拡販に注力したグリセリンや工業用石鹸は好調に推移しました。
界面活性剤製品につきましては、紙・パルプ分野の家庭紙用柔軟保湿剤は、中国向けは低調に推移しましたが、インバウンドの増加等による国内向けが堅調に推移しました。また、トイレタリー向け製品では「アンホレックス」などの高付加価値シャンプー向け原料基剤や「Mファインオイル」などのクレンジング製品向け原料基剤が堅調に推移しました。これらに加え、環境関連分野では、ごみ焼却場向け飛灰用重金属処理剤の販売が好調に推移したほか、新規素材として取り組んでいる紫外線吸収剤や土壌改良剤等の市場開拓を進めました。
この結果、売上高は16,728百万円(前連結会計年度比3.7%減)、営業利益は1,026百万円(前連結会計年度比5.4%減)となりました。
また、当連結会計年度における財政状態の状況は次のとおりであります。
(資産)
流動資産は、前連結会計年度末に比べ1,078百万円増の33,763百万円となりました。固定資産は、前連結会計年度末に比べ9,184百万円増の38,943百万円となりました。
この結果、総資産は、前連結会計年度末に比べ10,263百万円増の72,706百万円となりました。
(負債)
流動負債は、前連結会計年度末に比べ605百万円減の25,562百万円となりました。固定負債は、前連結会計年度末に比べ8,056百万円増の16,076百万円となりました。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べ7,451百万円増の41,639百万円となりました。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べ2,812百万円増の31,067百万円となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ963百万円増加し、7,071百万円となりました。
当連結会計年度における活動ごとのキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動の結果、3,283万円の資金の増加(前連結会計年度は3,716百万円の資金の増加)となりました。これは、主に税金等調整前当期純利益3,659百万円、減価償却費2,069百万円、棚卸資産の減少598百万円による資金の増加があった一方、法人税等の支払額1,110百万円、仕入債務の減少1,105百万円、投資有価証券売却益938百万円等による資金の減少があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動の結果、2,516百万円の資金の減少(前連結会計年度は1,492百万円の資金の減少)となりました。これは、主に有形固定資産の取得による支出2,717百万円、無形固定資産の取得による支出832百万円、子会社株式の取得による支出524百万円等による資金の減少があった一方、投資有価証券の売却による収入1,454百万円等による資金の増加があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動の結果、196百万円の資金の増加(前連結会計年度は1,072百万円の資金の減少)となりました。これは、主に長期借入れによる収入3,000百万円、短期借入金の増加410百万円等による資金の増加があった一方、長期借入金の返済による支出2,400百万円、配当金の支払515百万円、リース債務の返済による支出234百万円等による資金の減少があったことによるものです。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1 金額は、製造原価によっております。
2 上記金額には、中間製造工程の自家消費分は含まれておりません。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 金額は、仕入価格によっております。
当社グループは、原則として受注生産を行っておりません。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。
(注) 1 その他は、不動産賃貸、原料油脂等であります。
2 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
1)財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べ10,263百万円増の72,706百万円となりました。主な増加はリース資産6,854百万円、土地1,016百万円、現金及び預金963百万円、投資有価証券630百万円、退職給付に係る資産466百万円であります。
(負債)
負債は、前連結会計年度末に比べ7,451百万円増の41,639百万円となりました。主な増加は有利子負債8,105百万円、設備関係電子記録債務341百万円であり、主な減少は支払手形及び買掛金1,040百万円であります。
(純資産)
純資産は、前連結会計年度末に比べ2,812百万円増の31,067百万円となりました。主な増加は利益剰余金2,305百万円、その他有価証券評価差額金451百万円、退職給付に係る調整累計額126百万円であります。
当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末の45.2%から42.7%に減少しました。また、1株当たり純資産額は、前連結会計年度末の2,759円45銭から3,049円76銭に増加しました。
2)経営成績の分析
(売上高、売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益)
売上高は、前連結会計年度比1.4%増の57,033百万円となりました。
食品事業の売上高は、前連結会計年度比3.9%増の39,704百万円となりました。
食品事業においては、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等の主力製品の拡販に加え、各種コストの上昇に対応した販売価格の適正化や、各種原材料・資材の見直し、生産体制の効率化等の取り組みを推進し、収益の拡大を図りました。
油化事業の売上高は、前連結会計年度比3.7%減の16,728百万円となりました。
工業用油脂製品においては、脂肪酸は、輸送機械、タイヤ、塗料等の業界の需要減少の影響を受けて苦戦したものの、原料価格の状況に対応した適正価格での販売により収益の確保に努めました。
界面活性剤製品においては、紙・パルプ分野の家庭紙用柔軟保湿剤は、中国向けは低調に推移しましたが、国内向けが堅調に推移し、また、クレンジング製品向け原料基剤が堅調に推移しました。環境関連分野では、ごみ焼却場向け飛灰用重金属処理剤の販売が好調に推移したほか、紫外線吸収剤や土壌改良剤等の市場開拓を進めました。
売上原価は、前連結会計年度に比べ1,203百万円減少し、45,405百万円となり、原価率は、前連結会計年度比3.3ポイント減少し、79.6%となりました。これは主に油脂原料価格が安定的に推移したことによるものです。
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比19.4%増の8,665百万円となりました。売上原価、販売費及び一般管理費に含まれている研究開発費は、前連結会計年度比7.9%増の1,388百万円となりました。
この結果、営業利益は、前連結会計年度比24.9%増の2,961百万円となりました。
なお、研究開発活動の詳細については、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載しております。
(営業外損益、経常利益)
営業外損益は、前連結会計年度の221百万円の収益(純額)から、45百万円の収益(純額)になりました。
この結果、経常利益は、前連結会計年度比15.9%増の3,007百万円となりました。
(特別損益、税金等調整前当期純利益)
特別損益は、前連結会計年度の389百万円の利益(純額)から、651百万円の利益(純額)になりました。これは、前連結会計年度の有形固定資産売却益16百万円、投資有価証券売却益614百万円、有形固定資産除却損99百万円、投資有価証券評価損141百万円計上、当連結会計年度の投資有価証券売却益938百万円、有形固定資産除却損269百万円、関係会社株式評価損16百万円計上によるものです。
この結果、税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度比22.7%増の3,659百万円となりました。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度比35.7%増の2,819百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の203円29銭から277円03銭となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、油脂原料等の原材料購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、生産設備の更新を中心とした設備投資等によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は20,094百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,071百万円となっております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産および負債または損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等の連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。
また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
④ 経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、株主資本の効率的運用による投資効率の高い経営を図るため、自己資本利益率(ROE)5.0%以上を目標経営指標としております。
当連結会計年度におけるROEは、前連結会計年度に比べ1.6ポイント増加し、9.5%となりました。
これは、主力製品の拡販を推進するとともに適正な販売価格の確保にも取り組み、また、主要原料価格が安定的に推移したことも追い風となり収益が拡大したことによるものです。
該当事項はありません。
当社グループの研究開発活動は、食品から地球環境関連製品に至るまで、多方面にわたる産業のニーズに応えるため、新素材開発の基礎研究と商品化に向けた応用研究を積極的に展開しております。研究開発体制は、食品事業では、中長期的な新技術と新製品の開発に取り組む部門と、市場のニーズに即応したマーガリン、粉末油脂、ホイップクリーム等の製品開発、提案活動を行う部門で構成されております。また、油化事業では、界面活性剤、環境産業、新規開発関連用途別の部門から構成されております。さらに、両事業の垣根を越えたリサーチや研究開発、実用化に向けた技術開発に取り組む部門により構成されております。
なお、当連結会計年度に研究開発に要した費用総額は、
セグメントの研究開発活動は、次のとおりであります。
食品事業では、「美味しさ・健康・安全・安心・環境・機能・簡便」をキーワードとして、マーガリン、ショートニング、ホイップクリーム、粉末油脂などの食用加工油脂を主体としてお客様に役立つ製品開発、新製品の投入、用途開発、プレゼンテーション、展示会、講習会などの技術活動の推進をしております。さらに油脂製品開発における基盤技術の構築と新技術の研究から学会発表や論文投稿、特許出願等を積極的に進めております。
当連結会計年度におきましては、これからの時代のおいしさ、健康、食生活の変化に貢献する製品の開発と提案に引き続き注力しました。また、動物脂の流通量減少や鶏卵の供給不安等、フードクライシスに通ずる問題にも対応すべく、素材の研究および新製品開発に取り組みました。
製菓製パン市場に対しては、おいしく食べられる期間を延長することで食品ロスを削減できる各種油脂加工製品を積極的に提案するとともに、世界的なチョコレート原料の不足・高騰を受け、焙煎風味のマーガリン「デフィ」において、ココア風味を底上げするという新たな用途開発を行い、展示会などを通して広く提案しました。
製菓製パン以外の市場に対しては、動物性原料を使用せずに動物脂のおいしさを追求した「botanova」シリーズをプラントベース食品への提案にとどまらず、動物脂特有のコクとうまみを付与できる新規呈味素材として積極的に提案しました。その結果、食品メーカーでの認知度・評価も向上し、お客様の各種食品での検討を進めていただいています。
粉末油脂事業では、粉末油脂の新たな機能開発と応用展開に向けて、粉末油脂の機能性に新たな価値を付与した新製品の開発に注力しました。具体的には、粉末油脂の食感改良機能と「botanova」で培った呈味付与技術を組み合わせた新たな香味油パウダーの開発を進め、展示会での先行提案を行いました。そのほかにも、WEBセミナーなどを通じ、既存製品を介護食市場などに向けて提案するなど、粉末油脂製品の新たな価値提案にも注力しました。
当セグメントに係る研究開発費は
油化事業では、紙パルプ用薬剤、香・化粧品基剤などの各種界面活性剤、工業用エステル基剤のほか、重金属処理剤や生分解性樹脂分散体などの環境関連製品など、ニーズに沿った開発を進めるとともに、オリジナリティーの高い技術を基盤とした新規事業創出に向けた研究開発を推進しております。
界面活性剤関連では、香・化粧品基剤分野において、新規増粘剤を開発、上市しました。同分野の主力製品、トイレタリー基剤の「Mファインオイル」「アンホレックス」についても、細かな営業・技術対応を行うことで、商権維持、新規顧客獲得、収益確保に努めました。紙パルプ分野では大手製紙メーカー向け柔軟剤の技術対応を推進し、顧客信頼獲得と商権維持を継続しております。同薬剤は、中国・北米などの海外への展開を強化し、現地展示会への出展、Webミーティングを活用した技術対応を行いました。環境関連薬剤では、Webサイトを通じたインサイドセールスにより、廃水処理剤「エポフロック」の新たなニーズの掘り起こしを継続して行い、新規顧客獲得に努めました。生分解性樹脂水分散体については、土木分野に応用展開しており、地球環境に配慮した製品として、法面緑化・飛砂防止用途での採用、施工実績を獲得し、良好な成果を挙げております。
また、新規事業の創出に向けた取り組みとして、レンズ、ディスプレイ分野に展開している高機能紫外線吸収剤「MYUA」は、細やかな顧客対応、改良検討を行い、確実に売上を伸長させました。一方、イオン液体「MYIL」は化粧品分野における新たな機能開発、潤滑剤等の新たな分野への用途開拓、サンプルワークに注力し、評価が進められています。
当セグメントに係る研究開発費は