文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
藤田観光グループでは、「私たちは、健全な憩いの場と温かいサービスを提供することによって、潤いのある豊かな社会の実現に貢献したいと願っております。」を社是とし、これに基づいて具体的な指針となる経営指針および行動指針を定めております。
経営環境を踏まえた基本認識
2024年はコロナ禍の収束や円安の影響などによって訪日外国人数が大幅に増加し、観光業界にとって強い追い風となりました。当社グループにおいてはこの需要を確実に捉えるべく早期から商品造成・販売活動に取り組んでいたことに加え、コロナ禍以前から取り組んでいた商品力引き上げの効果も相まって、各セグメントにおいて客室などの販売単価が上昇いたしました。コスト面においてもコロナ禍において取り組んだ構造改革の効果が寄与し、営業利益は過去最高益の123億円となりました。
業績の回復により財務体質の改善が前倒しで進む一方、コロナ禍で必要性を強く認識した事業ポートフォリオの是正など、道半ばの課題も残っております。
再び同様の災害などが起こった際にも揺らぐことのない強固な経営基盤の構築を目指し、昨年策定した「中期経営計画2028~Shine for Tomorrow, to THE FUTURE」を着実に推進しております。
経営戦略
本中期経営計画では、当社グループが持続的な成長を遂げるために、以下の3つの重点課題を掲げております。
これらの課題を解決するため、以下の5つの戦略を策定し、全社一丸となって取り組んでおります。
<戦略>
Ⅰ.事業戦略
WHG事業
WHG事業においては、ⅰ.商品力強化による収益向上、ⅱ.ブランドの再整理と認知度向上、ⅲ.ファンの獲得、ⅳ.新規出店による拠点数拡大を重点課題に位置付けております。
まず、既存事業所の客室やレストランの機能強化などを目的とした改装・美装、ラウンジ機能の追加を進めることで、利便性および快適性を向上させるほか、朝食の品質向上にも取り組んでおります。また、従業員への研修などを通じてチェーン全体のサービス水準をさらに引き上げ、施設・設備の充実とサービス向上を両輪とした取り組みを推進することで、お客さまに選ばれるホテルブランドの確立を目指しております。
また、本中期経営計画期間中に8店舗の新規出店を計画しております。出店形態については、これまでの賃借主体から、中古資産の取得やフランチャイズ、マネジメントコントラクト(*1)など、多様な方法を取り入れることで、柔軟な事業展開を図ります。また、出店エリアについてはお客さまの多様なニーズにお応えすべく、ビジネスエリアのみならず、観光エリアへの出店計画も進めております。
(*1)ホテルの管理運営を受託する方式。
ラグジュアリー&バンケット事業
ラグジュアリー&バンケット事業では、ⅰ.有形固定資産の活用、ⅱ.ブランド、ノウハウ・スキルの活用、ⅲ.専門技能強化に取り組んでおります。
まず、「ホテル椿山荘東京」では、チャペルの一つを転用し、スイートルームご利用のお客さま専用のラウンジ「ル・シエル」として2024年7月にオープンいたしました。このラウンジではチェックイン・チェックアウトの利便性向上や軽食の提供、日本各地の工芸品を展示するギャラリースペースの設置など、伝統文化と季節を体感できる付加価値の高いサービスを提供しております。これにより、ブランド力の強化と利用単価の向上を図っております。
また、広島の㈱Share Clappingでは、2024年に新たな外部提携会場での婚礼プロデュースを開始し、ノウハウを活かした事業領域の拡大を推進しております。
さらに、婚礼をきっかけとした産後ケアサービスや七五三、卒・入学、成人式など、人生の節目におけるサービス提供を強化し、お客さまとの生涯にわたる関係構築を目指しております。
リゾート事業
リゾート事業では、ⅰ.「箱根小涌園観光地化」の推進、ⅱ.商品力強化と遊休地活用、ⅲ.事業領域の拡大と新規出店に取り組んでおります。
まず、箱根小涌園再開発により箱根小涌園エリアが「箱根の観光客の誰もが訪れる場所」となることを目指し、「箱根小涌園観光地化」を推進しております。2024年には、近隣の自然や名所を巡る散策ツアーや和文化体験のアクティビティを実施し、2年目となる本年は、地域との連携によるイベント開催を通じて、インバウンド需要の獲得、連泊促進、日帰り客の誘客を図ってまいります。
また、2023年7月に開業した「箱根ホテル小涌園」では、客室の増室をいたします。
各事業所で、付加価値向上・顧客満足度向上の為に、料理・サービスの品質を引き上げる取り組みを行っており、新規出店に向けた用地・物件探索も進め、収益力向上を目指します。
Ⅱ.人材戦略
人材戦略においては、2023年に導入した、エリアや事業所を限定して働く「エリア職」コースが採用競争力の強化に寄与し、2024年4月には200名超の新入社員を採用いたしました。これにより、サービス水準の維持・向上を図るとともに、組合員平均6%の賃上げを実施し、従業員エンゲージメントの向上に努めております。また、「トップマネジメントダイレクトミーティング」(*2)を通じて、従業員との直接的な対話を促進し、組織全体の一体感を醸成しております。
本年は、「人材の確保」から「人材の育成」へと重点を移し、次世代人材の育成を目的とした外部研修の継続実施や、マネジメント力および専門性強化のための海外研修の検討を進めてまいります。さらに、タレントマネジメントシステム(*3)の活用を通じて、個々の能力を最大限に引き出し、組織全体の競争力を高めてまいります。
(*2)代表取締役など経営陣が全国の事業所を訪問し、従業員と対話を行うミーティング。
(*3)研修や評価、社員からのキャリア申請などの人材に関する情報を一元管理できるシステム。
Ⅲ.財務戦略
財務戦略においては、2020年以降の構造改革の成果として財務体質の改善が進捗しており、A種優先株式の償還を計画よりも前倒しで進めております。また、改装など既存事業所の品質向上を目的とした投資を営業キャッシュ・フローの範囲内で実施し、有利子負債の削減を図ることで、財務基盤のさらなる強化に努めてまいります。
Ⅳ.サステナビリティ戦略
サステナビリティ戦略の重点課題として、環境保全、お客さまの安心・安全、ダイバーシティ&インクルージョン(人権尊重)、地域社会への貢献と文化財・歴史的建造物の保全、企業倫理の遵守の5点を掲げており、各事業所においてSDGsの推進活動を展開しております。
Ⅴ.成長戦略
成長戦略においては、a.会員プログラム b.新規事業の戦略を推進しております。
a. 会員プログラム
2022年4月に立ち上げた会員プログラム「THE FUJITA MEMBERS」の会員数は60万人を超え、会員利用売上は順調に拡大しております。アプリ機能の拡充や会員データを活用したマーケティングを通じて、顧客との関係を強化し、利用促進を図ります。
b. 新規事業
産官連携、産学連携、他事業者との協業など、多様な手法により事業領域の拡大に取り組んでおります。また、2024年秋には従業員を対象にした「事業化アイデア公募制度『BizNex(ビズネク)』」を導入し、従業員が主体的に新規事業の創造に挑戦する機会を提供しております。これにより、当社の経営理念である「潤いのある豊かな社会の実現」や「ライフスタイルに寄り添うユニークな事業」を具現化し、事業領域の拡大を目指してまいります。
<経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標などの進捗>
2024年から2028年までの5ヵ年の「中期経営計画2028~Shine for Tomorrow, to THE FUTURE」における数値計画と2024年の実績は以下のとおりです。
2024年の業績は、売上高762億円、営業利益123億円、ROE35.6%でした。営業利益、営業利益率、ROEについては2028年の目標を上回る水準となりました。計画初年度につき、設備投資額は29億円にとどまっておりますが、本年は箱根ホテル小涌園において温泉半露天風呂付客室40室の増室計画に着手するほか、WHG事業の複数施設において客室改装を実施するなど、競争力強化と顧客満足度向上を目的とし、収益基盤の強化に寄与する投資を積極的に行ってまいります。
本中期経営計画の進捗管理については、毎年の予算策定において、各事業課題解決のための施策と達成までのロードマップを見直し、事業環境の変化に対応しております。これにより、計画の実効性を高め、持続的な成長を実現してまいります。
また、本年11月には、藤田観光株式会社設立70周年を迎えます。長年にわたり事業を継続できましたのは、ひとえにお客さまや関係者の皆さまのご愛顧とご支援の賜物であり、心より感謝申しあげます。今後も、コーポレートガバナンス・コードの各原則の実施や、非財務情報の適切な開示に努め、すべてのステークホルダーの皆さまと良好な関係を築き、企業価値向上を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づき当社グループが判断したものです。
当社グループでは、「健全な憩いの場と温かいサービスを提供することによって、潤いのある豊かな社会の実現に貢献したいと願っております。」という社是のもと、創業以来、「環境に関する取り組み」、「多様な価値観に対する取り組み」などを企業としての持続的成長に不可欠で重要なものと捉え、推進してまいりました。また、2019年にはSDGs推進委員会(2025年2月よりサステナビリティ推進委員会に改称)を発足させ、持続的に成長するための重点課題を以下のとおり設定いたしました。今後も、事業を通じて社会課題の解決と持続可能な社会の実現に努めてまいります。
当社グループでは、取締役会の諮問機関としてサステナビリティ推進委員会を設置しております。サステナビリティ推進委員会は、サステナビリティ関連事項への対応が当社の重要な経営課題の1つであるという認識のもと、本社部門・事業部門を横断した全社的な組織として構成されており、気候変動を含むサステナビリティ関連の重要課題について審議・検討を行っております。また、その審議・決議内容を取締役会において適宜報告することで、取締役会が気候変動リスクをはじめ、サステナビリティに対する取り組み全般の監督を行う仕組みとしております。
当社グループでは、全社的なリスクを総合的・網羅的に洗い出して掌握し、取り組み方針の立案、各リスクの主管部署選定、主管部署によるリスク低減のための諸施策の進捗状況管理、指導・助言を行う機関としてリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会において、当社グループの経営上重要なリスクについて把握・対策を行うことに伴い、サステナビリティ推進委員会で審議・検討されたサステナビリティ関連のリスク・対策についても把握・管理を行っております。
気候変動はグローバルで重要な社会課題であり、脱炭素社会の実現に向けた動きは世界的にも拡大してきております。当社グループでは、気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題の一つと認識し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づいた情報開示を行いました。今後も、気候変動対策を当社の事業展開及び持続可能な社会のために必要不可欠なものと位置付け、気候変動リスクの低減に積極的に取り組んでまいります。
当社グループでは、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び中長期的な世界を想定した当社グループのレジリエンス(リスク・機会に対する戦略の強靱性)と、さらなる施策の必要性の検討を目的に、2022年度にシナリオ分析を実施いたしました(※)。当社グループの事業活動に影響を及ぼすリスク・機会の重要度を評価した結果、①炭素税導入・気温上昇による原材料費高騰、②顧客行動・消費者選好の変化、③台風・大雨等による災害頻度増加・被害の甚大化の3項目を事業に特に大きく影響を及ぼす可能性がある重要なリスク・機会として判断いたしました。当社グループでは、これらの重要なリスク・機会に対し、それぞれの対策を講じ、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげてまいります。
※シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオの2つの世界を想定しております。シナリオ分析の内容など、TCFD提言に基づく情報開示の詳細については、
(https://www.fujita-kanko.co.jp/sustainability/tcfd/index.html)
当社グループでは、将来目標であるカーボンニュートラル達成に向け、TCFD等の枠組みを参照しながら必要なデータ収集及びCO2排出量の削減に取り組んでまいります。
当社グループのScope1、2のCO2排出量は以下の通りです。
●指標
●目標
当社は、延べ床面積当たりのCO2排出量を2030年度までに2013年度比で46%削減することを目標としております。
※上記は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」の報告対象事業所の実績です。4月から翌3月までを一年度としており、決算年度とは異なります。
なお、グループ全体の実績およびScope3の排出量につきましては現在準備中です。
<CO2削減に向けた取組>
・自社所有の山林や庭園の保全(ホテル椿山荘東京、箱根小涌園)
当社グループは、日本全国に約795haの山林や庭園を所有しており、その自然を保全することによりCO2の吸収に寄与しています。また、ホテル椿山荘東京では、その庭園を大切に受け継いでいくため、庭園に湧き出る地下水や樹木の保全に努めており、庭園内の清流では毎年蛍が飛翔し、季節の風物詩となっています。
・客室のエコ清掃(WHGホテルズ、ホテル椿山荘東京、箱根小涌園)
お客さまのご理解とご協力のもと、2泊以上の滞在の場合、客室のエコ清掃(ゴミ捨て・タオル類交換・アメニティ補充のみの簡易清掃)を行っています。清掃時のエネルギー使用量を抑制することで、お客さまとともにCO2排出量削減に取り組んでいます。
・コージェネレーションシステムの導入(ホテル椿山荘東京、箱根小涌園 ほか)
発電の際に発生する廃熱を冷暖房や給湯に無駄なく利用するコージェネレーションシステムを導入し、CO2排出量削減を図っております。また、コージェネレーションシステムの活用により、震災・火災などの緊急時や非常時においても確実な電力供給が可能になるため、BCP(事業継続計画)の観点としても、有用であると考えております。
上記以外のサステナビリティに関する取り組みについては、
(https://www.fujita-kanko.co.jp/sustainability/)
当社グループでは、「企業の根幹は人であり、人材の育成が企業発展の基礎であることを確信し、意欲に燃え、平衡感覚に優れた人材を育成する。」という経営指針に基づき、教育の根幹に上項を掲げ、従業員一人ひとりの主体的な向上心を最大限に尊重する教育体系を整備しております。
また、人事の基本方針として「必要な要員ならびに戦略人材(変革・挑戦しつづけるマネジメント人材・専門人材)を安定的に確保し、会社の成長を推進する基盤を確立」を掲げております。これらを実現するための人材育成方針、環境整備方針を以下のとおりとしております。
当社グループの根幹を支える研修として、お客さま満足度、企業価値向上に貢献するための人材育成の要となる独自のHRDL(ヒューマン・リソース・デベロップメント・リーダー)を育成し、当社の成り立ちから価値観、理念を新たに入社する従業員へと伝えることで、全従業員に浸透させております。
当社グループが求める人材像は「会社・商品・自己を変革し続けていくことで、大きな市場環境の変化に対応し、厳しい環境下においても、独創的な発想のもと挑戦を続け、事業の価値向上に寄与する人材」です。そのために求められる知識、技能を得るための教育・研修をはじめ、事業部・職種を超えたローテーションを実施することでより広い視野とより高い視座を得る育成プログラムを実施し、個人の能力向上支援を推し進めております。
また、2022年に人事制度の改定を行い、複線型(マネジメントと専門性)のキャリアパス体系の中で自身がどのような成長をしていくかを選択するためのキャリアビジョンを考える機会として、人財戦略部へのキャリアプランシートの提出(毎年)や、キャリア面談の実施(二年に一度)等、社員一人ひとりが活躍できる環境を提供しています。さらに、従来の育成プログラムに加え、専門性を高めるための社外セミナーや研修への参加など、積極的に社外との交流を深めることによるスキルアップを促すことで、従業員の成長を促進しております。
従業員が自発的にキャリアの選択を行い申告する仕組みや、従業員の能力(専門能力含む)を向上させていくための環境を整備するとともに、従業員一人ひとりが優れたサービスや商品を提供し続けるために、安心して働き続けられる環境の整備にも取り組んでいます。私たちは、多様な価値観に対する取り組みを企業としての持続的成長に不可欠で重要なものと捉え、多様性の理解・促進のため、多様な従業員の活躍を支援しております。また、様々なハラスメントの撲滅を目指すとともに、ワーク・ライフ・バランスの浸透を推進し、有給休暇の取得増加、男女問わない育児・介護の休暇取得を促進していきます。健康経営への取り組み、ノーマライゼーション推進・LGBTへの理解促進等、従業員が安心して働き、キャリアアップを目指すことができる環境の整備に継続的に取り組んでまいります。
当社グループでは、上記「人的資本に関する戦略」において記載した、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標は、次のとおりであります。
(注)1 2023年のモチベーションサーベイ実績
(外部調査機関に委託し、一部法人を除く全社従業員へモチベーション調査を実施)
(注)2 2023年1月~12月の月平均実績
(注)3 取得日数÷付与日数 基準値:2022年10月~2023年9月実績 2024年実績:2023年10月~2024年9月実績
(注)4 過去4年平均 基準値:2017年4月~2020年4月入社 2024年実績:2018年4月~2021年4月入社
(注)5 基準値:2023年12月末時点 2024年実績:2024年12月末時点
(注)6 基準値:2019年実績57千円(93百万円/1,629人) 2024年実績54千円(82百万円/1,530人)
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を下記のとおり記載いたします。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合はその対応に最大限の努力をする所存であります。
下記事項には、将来に関するものが含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2024年12月31日)現在において判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。
①株価の変動
当社グループは、取引先を中心に市場性のある株式を102億円保有しており、株価変動のリスクを負っております。当連結会計年度末で市場価格により評価すると含み益となっておりますが、今後の株価の動向次第で業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②減損損失の計上
当社グループは、ホテル建物等の有形固定資産を当連結会計年度末で494億円保有しておりますが、今後一定規模を上回る不動産価額の下落や事業収支の悪化が発生した場合、有形固定資産の一部について減損損失が発生する可能性があります。
③賃借した不動産の継続利用もしくは中途解約
ワシントンホテル等ホテル事業においては、ホテル不動産を長期に賃借しているものがあり、不動産の所有者が破綻等の状態に陥り、継続利用が困難となった場合には業績に悪影響が生じる可能性があります。また、長期賃貸借契約の途中で、何らかの事情に基づき当社グループの意図により契約を中途解約することがあった場合、残存期間分の未経過賃料653億円のうちの一部について、賃料の支払もしくは補填の義務が生じる可能性があります。
④自然災害および流行性疾患の発生
大地震、噴火、台風、異常気象等の自然災害や、新型コロナウイルス感染症、新型インフルエンザ等の流行性疾患が発生した場合は、営業の一時停止や旅行の取りやめ、海外からの入国規制や渡航自粛によるインバウンド需要の減退等により、当社グループの財政状態や業績に悪影響を与える可能性があります。
⑤不動産周辺事業からの撤退損失
当社グループでは従前、不動産分譲事業を活発に行なっていた時期があり、現在でも道路、水道等インフラや不動産管理等の周辺事業を引き続き行なっていますが、これらの多くのものは低採算または不採算であり、これらの事業からの撤退を決めた場合、相応の額の損失が一時的に発生する可能性があります。
⑥食中毒等の事故
安全衛生には十分注意を払っておりますが、万が一食中毒等が発生した場合は、お客さまの信認を損ね、また営業の一時停止などが生じる可能性があります。
⑦円金利の変動
当連結会計年度末における借入金374億円のうち、102億円は変動金利による借入となっており、今後国内景気の回復等により円金利が上昇すると、金利負担の増大を招く可能性があります。
⑧為替の変動
当社グループは、海外事業の営業活動により生じる収益・費用および債権・債務が外貨建てであり、海外連結対象会社の財務諸表を日本円に換算する際、為替変動により影響を受ける可能性があります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、企業収益や個人消費の持ち直しなどにより、景気は緩やかな回復基調で推移しました。円安等を背景として、訪日外国人数が年間3,686万人を記録し過去最多となり、ホテル・観光業界におきましてはインバウンド需要が伸長しました。
このような状況のもと、当社グループでは海外セールスの強化等により訪日需要を捉え、当連結会計年度のインバウンド宿泊者数が前期比で増加しました。また、付加価値向上策の一環として推進した商品強化により、利用単価が上昇しました。人材への投資においては、採用により人員数が充足したことに加え、賃上げ等の処遇改善を実施するなど従業員エンゲージメント向上の取り組みを進めました。
これらの結果、当社グループ全体の売上高は前期比11,664百万円増収の76,211百万円、営業利益は前期比5,672百万円増益の12,309百万円、経常利益は前期比5,541百万円増益の12,623百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、税金費用の計上等により前期比1,020百万円増益の9,134百万円となりました。営業利益及び経常利益は過去最高益となり、親会社株主に帰属する当期純利益も333億円の固定資産売却益(特別利益)を計上した2021年度(第89期)に次ぎ過去最高水準となりました。
また、2021年9月28日に発行したA種優先株式のうち、80株を当連結会計年度中に償還(取得及び消却)しました。これにより、当連結会計年度末における未償還株式数は20株となりました。
業績の概要は以下のとおりです。
(単位:百万円)
セグメント別の概況については以下のとおりです。
セグメント別売上高・営業利益 (単位:百万円)
(注)1.調整額は、セグメント間取引消去および各セグメントに配分していない全社費用が含まれております。
2.当連結会計期間より、組織変更に伴い、従来「その他」に区分していたPT.FUJITA KANKO INDONESIAは「WHG事業」に変更しております。なお、前連結会計期間のセグメント情報は、変更後のセグメント区分で記載しております。
(WHG事業)
WHG事業では、欧米豪やアジアでの海外セールスを実施し、顧客開拓の取り組みを継続しました。その結果、当連結会計年度のインバウンド宿泊者数が前期比で増加しました。加えて、早期から高単価での予約を獲得したことでADR(客室平均単価)が上昇しました。また、客室やレストラン、ロビー・ラウンジ改装、社内研修による接遇サービス向上のほか、朝食内容を充実させメディアへの露出を増やすなど、商品力強化施策を実施しました。なお、4月より新宿ワシントンホテルANNEX(別館)を直営事業所として営業開始しております。同事業全体では、前期比で売上高は8,884百万円増収の45,582百万円、営業利益は4,749百万円増益の10,195百万円となりました。
(ラグジュアリー&バンケット事業)
ラグジュアリー&バンケット事業では、「ホテル椿山荘東京」各部門において商品の付加価値を高め、利用単価の引き上げに注力しました。婚礼部門は、件数が前期から減少したものの、件当たり平均人数及び単価が増加したことにより、売上高はほぼ前期並みとなりました。また、宿泊部門では、スイートルームを利用するお客様専用のエグゼクティブラウンジを新設したこと等によりADRが向上し、前期比で増収となりました。同事業全体では前期比で売上高は766百万円増収の18,645百万円、営業利益は第2四半期及び第3四半期を中心とした労務費増加等の影響により19百万円減益の1,234百万円となりました。
(リゾート事業)
リゾート事業では、「箱根小涌園 天悠」において高付加価値商品の販売に引き続き注力し、高稼働を維持しつつADRも前期比で上昇しました。「箱根ホテル小涌園」は通年営業による増収に加え、顧客ニーズを先取りした商品、イベント造成やランチ営業等によりファミリー層を中心に幅広い客層を獲得しました。「箱根小涌園ユネッサン」のリニューアル効果による入場人員増加等もあり、同事業全体では前期比で売上高は2,307百万円増収の10,765百万円、営業利益は751百万円増益の920百万円となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末比545百万円増加の94,041百万円となりました。主に現金及び預金と売掛金の増加により流動資産が2,410百万円増加し、有形無形固定資産の減価償却や投資有価証券の減少等により固定資産が1,864百万円減少しました。
負債は、借入金が返済により2,591百万円減少した一方、未払法人税等や未払消費税等が増加したため、前連結会計年度末比868百万円増加の68,389百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末比322百万円減少の25,651百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、利益剰余金が12,861百万円増加しました。A種優先株式の償還等により資本剰余金が12,390百万円減少し、その他有価証券評価差額金が739百万円減少しました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金および現金同等物(以下「資金」という)は14,446百万円となり、前連結会計年度末から770百万円増加いたしました。
①営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動により得られた資金は、15,905百万円(前期は11,109百万円の収入)となりました。前期比では営業利益が5,672百万円増加したことが主な収入増の要因です。
②投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動により支出した資金は、3,831百万円(前期は5,919百万円の支出)となりました。これは主に固定資産の取得による支出2,968百万円によるものです。
③財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動により支出した資金は、11,311百万円(前期は15,667百万円の支出)となりました。これは主にA種優先株式の償還に伴う自己株式の取得8,007百万円、借入金の返済等2,589百万円によるものです。
④生産、受注及び販売実績
該当事項はありません。
該当事項はありません。
当社グループは、WHG事業、ラグジュアリー&バンケット事業およびリゾート事業の各事業を主な内容とし、更に各事業に関連するサービス等の事業活動を展開しています。
セグメントごとの販売実績は次のとおりであります。 (単位:百万円)
(注)1.調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
2.当連結会計期間より、組織変更に伴い、従来「その他」に区分していたPT.FUJITA KANKO INDONESIAは「WHG事業」に変更しております。なお、前連結会計期間のセグメント情報は、変更後のセグメント区分で記載しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、この見積りは不確実性が伴うため実際の結果と異なる場合があり、結果として連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況」に記載しております。
②経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は76,211百万円(前連結会計年度64,547百万円)となり、11,664百万円(18.1%)の増加となりました。円安等を背景として、訪日外国人数が年間3,686万人を記録し過去最多となり、ホテル・観光業界におきましてはインバウンド需要が伸長しました。また、当社グループでは海外セールスの強化等により訪日需要を捉え、当連結会計年度のインバウンド宿泊者数が前期比で増加しました。また、付加価値向上策の一環として推進した商品強化により、利用単価が上昇しました。
(売上原価および売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は60,210百万円(前連結会計年度54,800百万円)となり、5,409百万円(9.9%)の増加となりました。増収による労務費の増加や送客手数料が増加した結果、当連結会計年度の売上総利益は16,000百万円(前連結会計年度9,746百万円)となり、6,254百万円の増益となりました。
(販売費及び一般管理費ならびに営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は3,691百万円(前連結会計年度3,109百万円)となり、581百万円(18.7%)の増加となりました。当連結会計年度の営業利益は12,309百万円(前連結会計年度6,636百万円)と前期比5,672百万円の増益となりました。
(営業外損益および経常利益)
当連結会計年度の営業外損益は313百万円の利益(前連結会計年度444百万円の利益)となりました。この結果、当連結会計年度の経常利益は12,623百万円(前連結会計年度7,081百万円)と、5,541百万円の増益となりました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別利益は貸倒引当金戻入額等の計上により139百万円(前連結会計年度675百万円)となり、535百万円減少しました。
また、特別損失は減損損失や事業撤退損等の計上により1,434百万円(前連結会計年度1,071百万円)となり、362百万円増加しました。
(法人税等、非支配株主に帰属する当期純損失および親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の法人税等は2,193百万円(前連結会計年度△1,426百万円)となりました。この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は9,134百万円(前連結会計年度8,114百万円)となり、1,020百万円の増益となりました。
③財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は23,703百万円(前連結会計年度末21,293百万円)となり、2,410百万円(11.3%)増加しました。現金及び預金や受取手形及び売掛金が増加したことが主な原因です。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は70,338百万円(前連結会計年度末72,202百万円)となり、1,864百万円(2.6%)減少しました。有形無形固定資産の減価償却や投資有価証券の減少等が主な原因です。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は31,217百万円(前連結会計年度末30,365百万円)となり、852百万円(2.8%)増加しました。未払法人税等の増加が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は37,172百万円(前連結会計年度末37,156百万円)となり、15百万円(0.0%)増加しました。会員預り金等の増加が主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は25,651百万円(前連結会計年度末25,974百万円)となり、322百万円(1.2%)減少しました。親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が12,861百万円増加した一方、A種優先株式の配当金支払及び償還等により資本剰余金が12,390百万円減少したことが主な要因です。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
(ア)キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(イ)資金調達と流動性
当社グループは、事業活動のための資金確保、流動性の維持ならびに健全な財政状態を常に目指し、安定的なキャッシュ・フローの確保に努めております。その施策の一つとして、キャッシュマネジメントシステムの導入によるグループ各社の余剰資金の一元管理を行い、資金効率の向上を図っております。また、複数の金融機関と総額で201億円の当座貸越契約およびコミットメントライン契約を締結することにより、資金調達リスクに対する補完措置がなされております。
また安定的な資金調達の一環として長期借入金の比率を高めており、当連結会計年度末の借入金残高は37,429百万円、その内訳として、短期借入金の残高は8,320百万円、長期借入金(一年以内に返済期限の到来する長期借入金を含む)の残高は29,109百万円となっております。
⑤戦略的現状と見通し
当社は、「Shine for Tomorrow, to THE FUTURE」をスローガンに掲げ、2024年から2028年までの5ヵ年の中期経営計画を策定しております。この計画の推進により、持続的な成長と収益拡大を実現し、更なる企業価値の向上を目指してまいります。
2025年通期の業績予想は、売上高は前期比2,388百万円増収の78,600百万円、営業利益は前期比309百万円減益の12,000百万円、経常利益は前期比923百万円減益の11,700百万円となる見込みです。親会社株主に帰属する当期純利益は8,000百万円を見込んでおります。
なお、この業績予想は現時点で入手可能な情報に基づき判断したものであり、実際の業績等は様々な要因により当該予想数値と異なる場合があります。
連結およびセグメント別の業績予想は下表のとおりです。
2025年12月期の連結業績予想(2025年1月1日~2025年12月31日) (単位:百万円)
(注)調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。