文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
1.会社の経営の基本方針
当社グループは「次世代の人々が地球を理解し、レジリエントな未来を実現するための新たなインフラをつくる」ことを目指し、衛星コンステレーションとデータ解析技術を用いた衛星データ事業を展開しております。人々の生活とそれを支える経済は、地球規模での災害や紛争、気候変動などの、さまざまなリスクに脅かされており、当社グループは人類が自然環境や次世代を思いやりながら安心して生きていくには、それらリスクを定量的に可視化し、理解することが重要だと考えます。それには、地球規模での均質性、定常性、広域性、公正性を備えたデータを、高頻度で取得する必要があります。
当社グループはこのミッションを実現するため、地球を恒常的に俯瞰する自社SAR衛星「StriX」のコンステレーションの衛星機数を増やし、継続的なデータ販売で堅実に収益を積み上げつつ、SAR衛星が強みを持ち、かつ社会的関心度も高い自然災害・安全保障・環境リスクを軸にソリューションのラインナップを拡大し、新規衛星データ市場を開拓してまいります。
2.経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、以下を経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として定めています。
・総収入
売上高の成長に加えて、中期的には補助金収入がグループ全体の収入に占める割合が一定程度あるため、売上高と補助金収入を合算した総収入を当面は重要な指標として管理することとしています。
・衛星運用機数
防衛領域を中心に拡大する世界の需要に対し、供給側のプレイヤー数が不足しており、SAR衛星データの希少性が高いにも関わらず供給力が限定的であることがSAR衛星事業の市場の特徴であり、売上拡大には供給力が重要となります。そのため、当社グループのSAR衛星データの供給力を決定する衛星運用機数を重要な指標として管理することとしています。
・受注額、受注残高
現在、官公庁を中心に主に1年から複数年の契約を獲得しています。将来の売上を予測するうえで受注額、受注残高は重要な情報であり、重要な指標として管理することとしています。
3.経営環境及び中長期的な会社の経営戦略
(1)防衛・宇宙需要が牽引するSAR衛星データ市場
①防衛・宇宙市場の世界的な拡大
世界のSAR市場は需要の増加や技術の進歩により成長しており、2023年時点の市場規模が9,280億円、2030年までに推定1.89兆円規模になると見込まれています(注1)。これはSAR衛星だけでなく、航空機、UAVなどの市場も含むものですが、基本的に全天候で広範囲の撮像が可能なSARは情報収集・警戒監視・偵察などの防衛用途に広く使用されており、SAR技術の進化に伴い、防衛・情報機関のSAR利用は今後も継続的に拡大し続けることが予想されています。また、従来の防衛・政府利用にとどまらず、環境モニタリングや災害対応、農業、林業、インフラ管理など、さまざまな商業分野での需要の高まりがSAR市場の成長を後押しすると予想されます。
広く防衛領域における需要が見込めるSAR市場ですが、特に宇宙領域における伸びは著しいものです。世界の防衛領域における宇宙予算は、2023年は8.8兆円と推定され、2022年比で21%増という前例のない伸びを示し、過去5年間で継続的に増加しています(注2)。これは、昨今の地政学リスクの高まりや国際情勢の複雑化に伴って安全保障を目的とした衛星データを始めとする宇宙技術活用の重要度が増していることが背景としてあり、今後も各国の防衛領域における宇宙予算は増加することが見込まれています。
その中でも、各国の偵察、通信、ミサイル探知などを目的とした、防衛用途の衛星開発・コンステレーション構築に対する投資は今後も拡大が予測されます。また、特に北米では、防衛用途の衛星製造や衛星画像データにおける官公庁と民間企業の契約事例が増えており、コンステレーションの構築加速化に向けて、各国政府の民間衛星事業への投資は拡大することが見込まれます。
日本の防衛省も『我が国の防衛と予算(2020-2022)』『防衛力抜本的強化の進捗と予算(2023・2024)』にて示される通り、衛星データ活用に関する予算を過去5年間で約2.5倍と大きく増加させています。また、『防衛省の令和7年度宇宙予算案』において「スタンド・オフ防衛能力に必要な目標の探知・追尾能力の獲得」のため、令和7年度末から衛星コンステレーション構築に2,832億円を要求(注3)すること、加えてその衛星構成はSAR衛星が中心となることが公表されており、今後より一層SAR衛星データ活用に関する予算の増加が期待できると想定されます。
他方で、2024年3月に内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省により、民間企業等による宇宙分野の技術開発を複数年度にわたって強力に支援するため、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に『宇宙戦略基金』が設置されました。本基金では10年間で合計1兆円の支援が想定されており、同年3月に内閣府より公開された『宇宙技術戦略』にて示された日本として注力すべき宇宙技術に沿った事業に対して補助または委託という形で支援されることとなっています。2024年には1兆円のうち約3,000億円の予算が総務省、文部科学省、経済産業省によって確保されており、そのうち950億円は公募テーマ「商業衛星コンステレーション構築加速化」に配分され、当社を含む4社が採択されました(注4)。当社としては、今後各省庁へと配賦されるであろう残りの予算も含めて、今後の事業戦略を実現するための手段として申請検討してまいります。
(注1)Global Market Insights, “Synthetic Aperture Radar (SAR) Market Report, 2024-2032” (2023年5月)。出所に記載がある市場規模元データを1ドル=150.0円として換算。市場規模には衛星、航空機、UAVの市場規模を含む。但し、記載内容は当該市場予想が合理的な根拠に基づくものと当社グループ内で適切な検討を経たものであるが、その予測統計モデルは、複数の予測手法と重要性による加重を組み合わせて設計されており、その達成を保証するものでない。
(注2)Euroconsult, “Government Space Programs, 23rd edition”。出所に記載があるデータを1ドル=150.0円として換算。但し、記載内容は当該市場予想が合理的な根拠に基づくものと当社グループ内で適切な検討を経たものであるが、各国の宇宙予算を算出・推計するために、政府公式発表に加え専門誌やマスメディアの情報、推計も含まれており、その達成を保証するものでない。
(注3)2024年12月27日付公表「防衛力抜本的強化の進捗と予算 令和7年度予算案の概要」より記載。
(注4)経産省およびJAXAが公表している表記および金額を記載。
(2)競争環境と優位性
防衛領域を中心に拡大する世界の需要に対し、供給側のプレイヤー数が不足しており、SAR衛星データの希少性が高いにも関わらず供給力が限定的であることがSAR衛星事業の市場の特徴です。現在、小型SAR衛星を商業運用している事業者は当社グループを含めて世界に5社ですが、SAR衛星の小型化の技術的難易度の高さ、エンジニアの希少性、衛星開発に係る資本と時間などが障壁となり、新規プレイヤーが参入することは難しいため、当面の間は限定的な競争環境が継続することが想定されます。以下では、この5社間での競争環境と当社グループの優位性について、技術的側面と事業的側面から記載します。
①技術的な競争優位性
SAR衛星の性能を特徴付ける要素として分解能と広域性の二軸があります。つまり詳細分析と広域分析の実行性、という二軸となりますが、これは観測時の消費エネルギー制約によりトレードオフの関係にあります。昨今は防衛需要へ応える性能向上が各社主流となっており、分解能を高める競争が進んでいますが、当社グループの小型SAR衛星「StriX」では、ステアリングスポットライトモードにより世界最高水準の0.25mの分解能を実現しています(他社との比較は各社公表情報による(2025年1月上旬時点))。また、広域性の観点では、ストリップマップモードにより、他社に比べて10~50倍の撮像域を実現しています。このように、当社グループ「StriX」では同一衛星での撮像モード切替により、分解能と広域性を両立させており、これによって種々のニーズを広くカバーできることが強みとなっています。
特に広域性の確保ができることは、長い国境線監視や海洋監視などの防衛データ需要に応え得るだけでなく、自動解析を伴うソリューション利用を前提とした価値提供にもつながります。例えば、大規模災害による被災時には、まず広域撮像により災害直後の被災全域を撮像し、ただちに解析することで救命活動等の初動優先度をつけることができます。続いて、選択された特定エリアを対象に、高分解能撮像と解析によって具体的な計画に資する情報提供が可能となります。これらの撮像モード切替と自動解析により、従来ではできなかった被災時の迅速な状況把握と現場対応をはじめとするリスク管理・生産性向上が実現しますが、これは自社内でソリューション開発をする能力とチームを持つ当社グループ独自の強みと言えます。
②事業的な競争優位性
前述のように、全世界的に防衛市場が宇宙産業にとって最大顧客でありますが、各国政府の国防所管省庁の情報管理や優先権要求により、その地域のローカル企業への発注が現在の主流となっております。当社グループを含む小型SAR衛星事業者5社のうち、2社は日本、2社は米国、1社はヨーロッパに本社が所在していますが、上記理由により各所在地域での防衛需要に対するデータ販売が中心となることが予想されます。現状では、各社供給力よりも世界の防衛需要が大きく競合状況には至っておりませんが、特に日本における防衛市場の規模と成長を鑑みれば、日本に本社を構える企業は当該市場に対して優位に事業展開を進められることが想定できます。
(3)中長期の成長戦略
当面の堅実な日本政府のデータ需要を起点に、衛星数を増やしていくとともに、その運用における安定性と生産性を高めて海外展開を進め、さらにはソリューション展開を進めて高収益化を目指していきます。これは、前章(3)ビジネスモデルで述べたデータ販売とソリューション提供の相乗効果によってもたらされる4つのポイント、すなわち、拡大する民間市場への参入、余剰データ活用での高収益化、長期視点でのデータ値崩れリスクへのヘッジ、グローバル展開におけるパートナーシップ形成を活かした成長戦略となります。当成長戦略は大きく3つのステージから成り、日本政府へのデータ販売を中心とする短期、海外政府へのデータ販売拡大が進む中期、そして民間市場でのソリューション提供が拡大する長期です。
まず短期では、防衛需要を軸とする日本政府へのデータ販売、並びに政府補助金収入を活かし、安定した収益基盤の構築を目指します。この先のステージで必要となる、海外展開、ソリューション開発についても並行して投資していく方針です。当社は設立当初より、グローバル市場において優位性のある事業展開をすべく、設立後早期にシンガポールにビジネス拠点を開設し、アジアを中心としたビジネス開発を推進して来ました。2025年2月時点において、北米・ヨーロッパ・中央アジア・インド・東南アジア・オセアニアと世界各国で日本を含むディストリビューター提携や戦略パートナー計27の国や地域(34パートナー)と提携を締結しています。
(図表)海外パートナーとのグローバル展開

(注1)2025年2月時点。
(注2)ここでは、パートナー提携に向けた合意文書(覚書)を締結した段階や、交渉中の段階を含めたものを指す。
(注3)ウズベキスタン、カザフスタン、ベトナムでは政府とMoUを締結。
続く中期では、パートナー提携を活用して、アジアを中心に海外政府へのデータ販売を拡大していくとともに、30機のコンステレーションにより1時間以内にデータと解析結果を提供できるデータ・ソリューションの販売体制を整えていきます。一度に多くの場所のデータや複数の解析結果を提供する事により、この頃から民間事業向けのソリューションビジネスを立ち上げることを目指しております。
その後は、増強されるコンステレーションの膨大な撮像キャパシティから生まれる余剰データを、ソリューション提供に有効活用することで高い利益率を目指す、長期として位置づけられます。ここでは、種々の自動解析技術を広く横展開することを目指しており、民間市場として起点となるインフラ開発・保守や資源エネルギーから、金融・保険やユーティリティといった顧客を主なターゲットとして販売先を広げることを目指しています。
(図表)グローバル展開とソリューション提供による成長戦略

(注)上記は当社グループの中長期な収益構成の変遷を示したもので、イメージ図であり、実際の売上高のサイズとは一致せず、実際の業績を示唆するものではない。
4.成長戦略を支える製造・開発方針
(a)衛星製造・開発体制
前述の成長戦略を実現するための衛星製造・開発にあたっては、国内外の多数のパートナー企業と連携しながら進めています。衛星の通信や姿勢制御などの汎用的機能を司るバス部の部材に関しては、軌道上での稼働実績のあるメーカーより仕入れを行い、SARなど独自機能を含むペイロード部については特注で仕入れています。その後、当社と組立パートナーであるセーレン株式会社(2021年より量産を目的としたパートナーシップ締結)、東京計器株式会社(2022年より量産を目的としたパートナーシップ締結)と協力しながら、衛星の構体およびアンテナの組み立てを行い、各種試験(振動試験、熱真空試験、電気試験等)を経て打上に向けて出荷を行います。打上場所はロケット会社により異なり、当社がこれまで打上に使用したRocket lab社(本社:アメリカ合衆国カリフォルニア州、CEO:Sir Peter Beck)のElectronはニュージーランドより打上を行っています。
さらに、汎用部材等については仕入れの複線化を図り、サプライチェーンの脆弱性を無くすことに努めています。一方で、当社の開発優位性にもあたるImPACT時代の研究成果に関わる部材については特定のパートナーからの仕入れに依存するものの、将来的な製造計画を複数ヶ年に渡って共有し十分な製造ラインを確保することを標準的な対応としています。
また2023年、神奈川県大和市に量産のための工場を賃貸契約し(賃貸部分面積:8,594.52㎡)、製造工程の汎用化や再現性の高い作業のための治具開発、そして検査器具等の設備投資を行い、2024年9月より本格的に稼働を開始しました。これにより、前述のパートナー企業とともに分業体制を構築し、拠点間を物流網で結ぶことで、将来的には年産12機まで、より効率的で大規模な製造を拡大できる見込みです。また、量産体制の構築と並行してより高スペックの衛星や量産に向いた構造の設計等、継続的な開発を検討しており、国際的に競争力のある衛星を製造してまいります。
(b)衛星製造・打上計画
これまでに確立した前述のサプライチェーンをパートナー企業とともに強化し、コンステレーション形成と成長戦略実現に向けて製造・打上を進めてまいります。当社設立以来、これまで「StriX」を6回打上げてきましたが、既に最初の実証機2機「StriX-α」「StriX-β」は商用運用は終了しており、本書提出日現在は4機を軌道上で商用運用しています。今後は、順次機数を増やし、2025年末には軌道上6機、2026年末には11機前後となることを計画しています。これらの過程で、特定地域の観測頻度が週次から数時間毎に向上する見込みで、加えて、より多くの撮像キャパシティを持つ第3世代「StriX」が主力機としてコンステレーションを構成する予定です。
2028年以降には30機以上のコンステレーション形成に加えて、衛星間通信などの追加機能開発や当社自動解析と併せ、1時間以内に顧客に解析結果を届けることを目指しています。これは大規模災害時の生存率向上に加え、多くの民間企業におけるリスク管理・生産性向上に寄与することが期待できます。
(図表)衛星の製造及び打上計画

(注1)実際の製造機数は顧客からの需要およびビジネス状況に応じて上下しうる。また、製造能力が増強したのちにも、製造期間が一定程度かかるため、すぐに製造能力分の機数打ち上げとはならない。また、実際の打上数及び時期は、打上事業者のキャパシティ、天候その他の要因によって決まる。2024年に打上げた第3世代の1機の撮像枚数は15枚/日、2025年以降打上げる第3世代の撮像枚数は40枚/日となるが、撮像枚数はスペックから試算される理論キャパシティであり、運用年数によって上下する可能性がある。
(注2)部品・資材の調達、製造の開始を行うことができる機数のキャパシティを指す。製造開始から完成までは約2年を要する。
(注3)将来見通しに関する記述は、当社の管理外にある事業、経済、規制、競争に関する不確実性および偶発事象によって大きく影響を受ける可能性がある。これらの記述は、当社の将来の戦略や方針に関する特定の仮定に基づいているが、それらは変更されることがある。
(注4)衛星の性能向上については当社の想定であり、開発の進捗状況によっては当初想定通りには性能向上が達成できない可能性がある。将来的な実際の数字は、様々な要因により目標から逸れる可能性があり、その差異は大きい可能性がある。この文書の内容は、これらの目標が達成されることを示すものではなく、状況が変化した際にこれらの目標を更新する義務を当社が負うものではない。
5.優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①量産体制の構築
「3.経営環境及び中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおり、SAR衛星データ市場は、安全保障や防災に関わる世界需要の大きさに対して、供給量に制約があり寡占傾向が強いことが特徴と認識しています。この世界的な需要に応えるために、早期の衛星の量産体制の構築・運用機数の増加が当面の重要課題となります。
当社グループは、これまで衛星6機の製造・打上げを行ってきましたが、基本的には年間1機から2機ずつの製造を行ってまいりました。現在多数機のコンステレーションを構築するため、小型SAR衛星を年間最大12機程度同時に生産できる量産体制構築の準備を行っており、今後段階的に量産体制による製造を拡大する予定です。量産を実現するために、必要な人員の採用・教育、製造体制の整備、パートナー企業との連携を進めてまいります。
②衛星の製造・打上げ資金の資金確保
当社グループは、小型SAR衛星の年間最大12機程度の量産製造に向けた製造を開始しています。衛星の製造・打上げの支払いは売上に先行して発生するため、その先行資金の確保が課題となります。
上場達成により一定の資金を確保できましたが、上場後も継続して資金調達を行っていく必要があります。株式市場からの増資や銀行からの融資等を通して、資金調達手段の確保・拡充・多様化を図ってまいります。
③組織戦略
当社グループの事業内容はハード/ソフトウェアの広範に渡ります。加えて、SARシステムや衛星開発をはじめ専門性の高いエンジニアの確保は難しく、グローバルでの採用を積極的に進めることが求められます。当社グループは、不確実性への対処と組織の魅力付けのため、リーダーシップを持つ専門家集団が、自由に議論と試行錯誤を行い組織的学習を行う組織を目指し、日々改善を続けております。また、国際的なカンファレンスやプレスへの積極的な発信を通じて、グローバルでのプレゼンス向上と採用力の強化を図っております。
④営業戦略
データ販売における顧客基盤確立のため、主要顧客となる政府機関の要求仕様を満たす衛星データ/サービス品質の確保が必要です。当社グループでは、現在は国内官公庁向けにデータ販売を実行しながら、各国政府とのチャネル構築、対話とサンプルデータの提供を通じて、サービス内容や購入予算額、要求されるデータ品質等についてのコミュニケーションを継続しております。
一方で、ソリューションでは、中期での戦略的視点と短期での収益確保のバランスをとりながら営業活動を進める必要があります。当社グループでは、現状の製品版ソリューション展開を軸に、国内の長期プロジェクト確保に有効な公共事業やODA案件をパートナー企業と共に進めつつ、事業環境の異なる海外での展開にも取り組んでおります。
⑤規制への対応
後述の「第2 事業の状況 3 事業等のリスク(3)主要な事業活動の前提となる法的規制①人工衛星に関連する法令について」に記載の3つの関連規制のうち、当社グループの業務遂行において特に衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律、電波法への対応に多くの工数/時間を要します。最新の技術動向に照らしてより効率的な申請プロセスとなるよう、関連省庁との情報連携を進めてまいります。
⑥内部管理体制の強化
機微な衛星データを扱う当社グループは、コーポレート・ガバナンス、内部統制、情報管理・セキュリティについて常に高い意識を持ち、継続的な強化を進めていく必要があると認識しております。引き続き、積極的に最新技術動向や重要懸案の情報収集を進め、対応を強化してまいります。
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)当社が目指すサステナビリティ経営
当社グループは「次世代の人々が地球を理解し、レジリエントな未来を実現するための新たなインフラをつくる」ことをミッションに掲げております。当社グループは、衛星コンステレーションを利用した全地球の経済・社会・環境に関わるあらゆる事象を観測・可視化し、解析技術を用いることで、災害・パンデミックなど有事のみならず、日常の活動においても、あらゆる人々がデータに基づき持続可能な社会の構築に資する判断を行えるようにすること、その結果として世界全体で社会課題の解決に貢献してまいります。
(2)ガバナンス
サステナビリティに係る方針や戦略の検討、立案については、常勤取締役、執行役員が参加する経営会議にて行なっております。経営会議においては各部門の責任者が出席しており、各部門が連携し、サステナビリティの取り組みを推進しております。また、重要な案件については、取締役会で審議を行い、実効性を確保しております。
なお、当社のコーポレート・ガバナンス体制は
(3)戦略
サステナビリティを巡る課題の解決については、当社グループはリスクの低減のみならず、収益機会にもつながり、また当社グループのミッションに直結する重要なものであると認識し、主に以下の3つの課題解決を目指します。
(自然災害)
世界中で頻発・激甚化する自然災害。 地震、津波、火山噴火、洪水、土砂・ 地滑りなどにより、堅実な経済成長が大きく阻害されています。いつ世界のどこで災害が起きても、発災直後に広域データを取得し、迅速な救命・救出活動の開始と早期復興計画の策定を推進します。また、土木・建設領域へのサービスにより、災害に強く安全なインフラ開発・維持の実現に貢献します。
(安全保障)
近年の地政学リスクの高まりにより、エネルギー価格高騰、輸出入制限、テロなどが発生し、安全・安定した社会が脅かされています。安全保障領域へのサービスにより、全世界の紛争の状況やロジスティクスの途絶状況を把握し、世界平和と安定したライフラインの提供に貢献します。
(環境)
経済成長と人口増加により、世界の資源エネルギー消費は年々増加傾向にあります。石油・ガス、鉱業、林業領域へのサービスにより、地球規模での森林分布や洋上の風況を定量的かつ継続的に把握し、カーボンクレジット取引や再生可能エネルギーの導入等、効率的・安定的な資源利用の促進に貢献します。
(4) 人的資本経営に関する取り組み
人的資本の活用に関しては、小型SAR衛星の開発・製造、データ販売事業に加え、ソリューション事業を持つ当社グループは、他社と比較して幅広い技能の人材を必要としています。宇宙業界に限らない様々な専門知識・技能を持つ人材の採用にグローバルで取り組み、役員・管理職には国籍・性別を問わず登用しております。
様々なバックグラウンドを持つ役職員がミッションを達成するために、CREDOを設定し、人事評価制度における評価項目に組み込まれております。全社会議等においてはトップマネジメントから全社員に向けて説明を行うなど、CREDOの徹底・浸透を図っております。
また、言語、宗教、文化の異なる様々な人材が活躍できるよう、社風の構築、労務サポート、語学学習の奨励等に注力しております。
社内環境整備については、従業員の衛生管理と健康の保持増進を図り、快適な職場環境を確立することを目的に安全衛生委員会にて安全衛生計画の作成、実施、評価及び改善を行っております。
(5)リスク管理
当社グループは、リスクコンプライアンス規程に基づき、管理部と各部門にて事業を取り巻く様々なリスクを網羅的にボトムアップで抽出する仕組みを構築し、その発生可能性と事業への影響度の2つの評価基準に基づき、重要度の一次的な評価・特定を行っております。重要度の一次的な評価・特定は経営会議にて再評価を行い、対応方針策を設定し、四半期ごとに取締役・監査役で構成されるリスクコンプライアンス委員会に報告を行っております。
リスクコンプライアンス委員会は、当社グループの業務運営におけるリスク及び機会について、設定した対応策の監督、状況の把握・管理を行います。
(6)指標及び目標
本書提出日現在において、当社グループは、「(3)戦略」に記載の3つの課題、および「(4)人的資本経営に関する取り組み」に記載の人材の採用、社内環境整備等に関する方針に係る指標及び当該指標を用いた具体的な目標を設定しておりません。今後、これらの方針に関連する指標のデータ収集及び分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても投資家の投資判断、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、投資家に対する積極的な開示の観点から以下に開示しております。
当社グループは、これらのリスクの発生可能性を記載した上で、発生回避及び発生した場合の対応に努めております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境に関するリスク
①継続的な先行投資と赤字計上について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
当社グループの提供するSAR衛星のデータ販売及びソリューションについては、市場の立ち上げ期であり、現在のところ大きなシェアを獲得できているプレーヤーは存在しておらず、競合事業者に先んじて早急な市場シェアの獲得が重要であると考えております。市場シェア獲得のためには、複数の衛星機システムの早期構築によるSAR衛星データの供給量の確保、継続的な開発や営業活動の実施によるソリューションサービス拡大を実現する必要があり、継続的に先行投資を実施する方針としています。また、今後一定期間については、黒字化よりも売上高成長率を重視して経営していく方針です。
経営環境の急激な変化、その他本「事業等のリスク」に記載のリスクの顕在化等により、これらの先行投資が想定どおりの成果に繋がらなかった場合、黒字化しない可能性があります。当社グループでは、継続的な顧客開拓、衛星製造コストの削減努力等を実施することにより、先行投資が将来の黒字化や収益性向上につながるように努力していきますが、それらが達成できない場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②社歴、業歴が浅いことによる業績の不確実性について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社グループは、2024年12月期まで赤字決算であり、過年度の業績のみでは期間比較を行う充分な材料とはならず、今後の業績については当社グループにおいて合理的と考えられる方法により予測、算定したものでありますが、判断指標が不十分であり、当社グループの業績予測と実績に乖離が生じる可能性があります。
③必要なタイミングで資金を確保できなかった場合の資金繰りについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
当社グループは、(1)①に記載のとおり、継続的に先行投資を実施する方針としており、2024年12月期まで営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスであり、今後も一定期間は継続してマイナスとなる見込みです。過年度は増資による資金調達を実施し事業活動に必要な資金に充当してきました。
当社グループでは必要な資金を確保するために継続的に財務活動を行なっていく方針ですが、必要なタイミングで資金を確保できなかった場合、資金繰りに窮する可能性があります。
④衛星データ関連市場について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
SAR衛星データは国防に関わる世界の需要の大きさに対して、もともと供給量に制約があり、寡占傾向が強く先行者利益を獲得しやすい市場と当社グループは認識しています。これは市場に参入するための資金的及び技術的ハードルが高いことや、SAR衛星がデータを取得する際に電波照射に多くの電力を使うためSAR衛星以外の観測衛星と比べデータ取得量が限定的であることが理由です。仮に当社グループ以外の競合事業者が各社の計画通りにSAR衛星を打ち上げた場合でも、供給量が飽和することはなく、今後数年程度は供給者優位の市場が保たれると認識しています。
一方で、光学衛星などの他の地球観測データの代替、現在は市場草創期であり将来の市場規模拡大には不確実性が伴うこと、防衛予算の増減・安全保障政策の変更などの各国の方針変更を要因として、想定通りの需要を獲得することができず成長が阻害される場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤競争状況について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループのターゲットとなるSAR衛星データの市場分野においては、資金的及び技術的な参入障壁が高いため、現在安定して市場にSAR衛星データを供給できている企業は世界で数社程度であり、寡占状態となっていると当社グループは認識しております。
当社グループは、SAR衛星データの取得からデータ販売、ソリューションの提供までをワンストップで行うことにより、競合事業者と差別化したサービス展開をし、継続的な事業成長に努めております。ただし、既存の競合事業者の競争力の向上や、市場の急激な拡大に伴って大型のSAR衛星を製造している大資本の企業などの参入により競争環境の変化が生じ、当社グループや当社グループのサービス等に対する評価を維持することができず、又はその優位性が失われる場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥衛星打上の失敗のリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループは自社で衛星を開発・製造し、外部のロケット事業者による衛星打ち上げサービスを利用して衛星の打上を行っています。近年衛星に係る打上の成功率は向上しているものの一定程度失敗のリスクが存在します。当社グループでは、打上の失敗に係る損害を回避するため、人工衛星保険の打上げ危険担保保険(以下、ロケット保険)に加入しています。なお、当社グループが加入している保険は、打上げの点火がされた時に始まり打上ロケットと衛星の分離が完了するまでがてん補対象であり、打上ロケットとの分離後の通信の不具合等をカバーするものではありません。
ロケット保険により、打上ロケットと当社グループ衛星の分離が完了するまでの完全な打上失敗の際の金額的な補償は得ることができるものの、計画していたSAR衛星データの取得はできなくなるため、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦固定資産の減損リスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社グループは、人工衛星、その製造設備及び本社設備の有形固定資産を保有しています。投資実行に際しては規程に基づいて、事業計画、収益率、その他のリスク等を検討して実施の判断を行っており、その後は継続して各資産の収益性に関して管理を行っています。
規程で定めた対策を講じても、市場や競争環境の変化により完全に減損を防止することは不可能であり、減損の兆候が認められ、減損損失の認識をすべきであると判定された固定資産について減損損失を計上する場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ソリューション事業におけるデータの安定確保のリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社グループのソリューション事業では、衛星データに限らず様々なデータの解析結果を提供する情報提供サービスを行なっています。現在、当社グループの衛星の機数が少なく他社データも併用しており、必要なデータを十分に入手できないこと等により、顧客の要求する品質を充たせずに案件を獲得・継続ができないリスクがあります。当社グループでは、衛星データの購買先の多様化・当社グループの衛星の機数の早期の増加により、データの安定確保を図ってまいります。
上記の対策を講じても、とりわけSAR衛星データによる定期観測の需要が高いため、自社衛星の打上げ計画が想定より遅延し安定したデータの確保が遅延することで収益化が遅延するリスクがあります。
⑨景気変動に関するリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低
当社グループは、クライアントの分散、多様化を図っておりますので景気変動リスクに対し一定の耐性を備えておりますが、国内外の景気動向や外国為替相場の変動により、当社グループの主要クライアントが事業投資等を抑制した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩為替リスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低
当社グループは、衛星部品の購入の一部を海外から行っており、衛星の打上サービスは海外事業者を利用しています。また、一定程度の海外売上があり今後増加する見込みです。長期の外貨建の債権債務は存在しないものの、急激な為替変動によって価格の変動が生じ為替リスクとなることがあり、当社グループの業績に間接的に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑪衛星の打上機会の確保について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:高
ロシア・ウクライナ情勢以降、ロシアからの打上げが実質的に不可能になったことにより、ロケット事業者の選定は以前よりも難しくなっています。一方、各国の新興のロケット事業者が商業化に向けて開発・実証を進めており、中長期的にはロシア・ウクライナ情勢の影響は緩和される見込みであり、当社グループとしては複数のロケット事業者による打上げの検討を進めています。
しかしながら、新興のロケット事業者の商業化が遅れるなど想定通りにロケット事業者のサービスを利用することができない場合、計画したスケジュールからの打上げ遅延や打上費用の上昇などの影響が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業体制に関するリスク
①研究開発に係るリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループの属する衛星データ関連の業界は、衛星のハードウェア開発及びソリューションのソフトウェア開発共に技術的な進歩が急速であるため、当社グループでは常に技術革新に対応できる最先端の技術開発に努めております。当社グループの衛星のハードウェア開発においては、SARデータ取得のためのSARアンテナの最先端技術の採用のための研究開発等を進めていきます。また、当社グループのソリューションのソフトウェア開発においても、地表面予測に関する自社独自技術を搭載したソリューションサービスを展開するなど、多数のサービスを引き続き展開していきます。
しかしながら、当社グループが顧客又は市場のニーズにマッチした製品をタイムリーに提供できない場合、もしくは競合事業者が先んじてサービスを開発した場合には、当社グループのサービスの競争力が低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②衛星の運用に関するリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社グループが保有する小型SAR衛星は5年程度と比較的長期にわたって使用されますが、運用期間中に製造上の瑕疵、デブリ(使用不能になった人工衛星やロケットの破片や部品等のうち軌道上に残っているもの)や隕石等との衝突、衛星管制上又は運用上の不具合その他の要因による衛星の機能不全又は運用能力低下の可能性があります。上記リスクへの対策として、複数機を定期的に打上げ続けることによりSAR衛星データの取得における1機当たりの依存度の低減を図っています。当社グループは現在、毎年複数機の打上げを計画しており、運用中の衛星に不具合が生じた場合にも可能な限り事業上の影響を小さくする体制をとっています。
このような事態が生じた場合、撮像能力を維持できないことによる顧客の流出などに伴う収益の低下で、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③開発・製造・打ち上げ等の事業計画の進捗に関するリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
衛星の開発・製造・打ち上げの進捗については毎月の取締役会等で継続的に状況を確認・管理をしており、事業計画に沿ったスケジュールの確保に向けて取り組んでおります。しかし、当初の計画通りに衛星の開発・製造・打ち上げが進まなかった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④特定の販売先への取引依存について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:高
当社グループの主要販売先のうち、官公庁への販売実績が連結売上高に占める割合は、2023年12月期及び2024年12月期連結会計年度で約9割を占める状況にあります。
現時点において、上記の取引先との関係は良好であり、当社グループは今後も友好的関係を維持し、安定的な取引関係を継続する方針で国内の民間顧客のさらなる獲得、海外政府・民間顧客の獲得も強化しており、特定の取引先への取引依存度は順次低減させる方針ですが、当面は引き続き官公庁への販売比率が高い状況が引き続き想定され、また官公庁との契約期間は1年単位のものが多く、何らかの理由により継続できない場合や、入札条件の変更等が生じた場合には、今後の事業運営や経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。
⑤海外展開に関するリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループは、収益機会の拡大に向けて海外でも衛星データ販売、ソリューションの提供を展開しており、今後とも海外展開の強化を図っていく予定であります。
なお、海外展開にあたっては、人件費等の投資を今後も相当規模で行う可能性があります。また、言語、地理的要因、法制・税制を含む各種規制、経済的・政治的不安、文化・商慣習の違い、為替変動等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開国において競争力を有する競合他社との競争リスクが存在する可能性があります。当社グループがこのようなリスクに対処できない場合、当社グループの海外展開に影響を及ぼす可能性があります。
⑥協力会社(外注先)への外部委託に関するリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社グループの小型人工衛星開発においては、多額の開発費と時間を要するだけでなく、一部は協力会社への外部委託品及び協力会社からの購入品を使用しているため、一部の協力会社からの購入品についても、別協力会社からの購入の検討及び内製化を進めており、安定的な衛星開発を実現し、当社グループの衛星データ販売事業及び業績への影響をできる限り低減していきます。しかしながら、協力会社からの納入遅れ、協力会社の喪失、購入品の供給不足や価格上昇により、当社グループの衛星データ販売事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦東京計器株式会社その他のパートナーシップ先への衛星製造の委託に関するリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
当社グループでは、今後の衛星の量産体制を構築するうえで、複数拠点で並行して製造を行うことで、安定的に製造を行うことを実現することを指向しております。このため衛星製造の一部は、2022年6月15日に開示しました通り、東京計器株式会社とのパートナーシップの基本合意に基づき同社に衛星組立の工程を委託しております。現在当該パートナーシップにより安定した生産体制を構築できておりますが、衛星組立に必要な製品・部品の調達の遅れや、各種自然災害の発生等により東京計器株式会社側での製造に遅延等の影響が出た場合、また、その他のパートナーシップ先との間のパートナーシップにおいて同様の影響が出た場合、当社グループの衛星データ販売事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧人材獲得及び育成に関するリスクについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
SAR衛星システムの開発のコア技術であるSARアンテナや信号発生器などのコンポーネントに携わるレーダ技術者、また、データ販売やソリューションサービス提供に関わる画像処理、アルゴリズム開発に携わるレーダ信号処理技術者は、労働市場での絶対数が少なく、また専門性の高い領域で育成も容易ではありません。人材獲得の観点では中途採用をメインとして経験のある候補人材へのアプローチ施策を強化しております。人材育成の観点ではノウハウを社内資料に蓄積し、従業員同士での技術向上に繋がる活動を推進してまいりますが、当社グループが想定どおりの人材獲得及び育成ができない場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨特定人物への依存リスクについて
発生可能性:小、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社グループの経営陣が果たす役割は大きなものであり、特に代表取締役CEOである新井元行は、ミッション、企業理念、会社文化、経営方針・戦略の立案・実行等に大きな役割を負っています。人材育成の強化や人材獲得により経営陣・組織の強化を行ってまいりますが、経営陣の不測の事態や辞任が発生した場合、また、代行体制が十分に機能しない場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑩特定施設の利用に関するリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
衛星の製造工程において、部品の組み立て後に、設計通りの機能や耐久性が備わっているかなどの確認のために各種試験を行う必要があります。当社グループは現在、一部の大規模施設を要する試験については国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の施設を利用しており、当該施設や試験設備を利用できない場合に衛星の開発や製造が遅延する可能性があります。
なお、試験の一部については新工場への移管を進めており、新工場の本格稼働後、当該リスクは軽減する見込みです。
⑪衛星の製造体制が想定通りに構築されないリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
量産体制の構築に伴って年間製造機数の増加を見込んでおり、将来的には年間12機まで製造能力を強化していくことを見込んでいます。現時点では必要な製造体制は構築過程にあり、本格稼働に向けて準備を進めています。当該製造体制の構築が想定通りに進捗せずに、想定した機数を打ち上げられない場合には当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑫想定したシーン数が提供できないリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
衛星1機あたりが提供するシーン数について、第3世代商用機は従来のものと比較して提供できるシーン数が多くなると見込んでいます。これは、衛星の設計上のキャパシティの改良などから増加することができると見込んでいるためです。当社グループの事業計画は提供シーン数が増えていくことを前提に策定されているため、想定したシーン数を計画通りに提供できない場合には当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)主要な事業活動の前提となる法的規制
①人工衛星に関連する法令について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
当社は人工衛星の打ち上げに関しては、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(以下、宇宙活動法)、電波法及び衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(以下、リモセン法)により、人工衛星の運用等で規制を受けております。当社グループは、社内の管理体制の構築等により、当該法律および関連府・省令を遵守する体制を整備しておりますが、国際法及び各国の国内法ともに整備途上であり、法規制の変更があった場合、当社グループが当該法令に抵触すること等により何らかの行政処分を受けた場合や、社会情勢の変化等により当社グループの事業展開を阻害する規制の強化等が行われた場合には、今後の事業運営や経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、重要法令の概要は以下の通りです。
・宇宙活動法について
日本国内から人工衛星の位置、姿勢及び状態を把握し制御する場合、事前に内閣総理大臣の許可を受けるため、内閣府宇宙開発戦略推進事務局へ許可申請を行う必要があります。人工衛星1機ごとに衛星管理許可を取得しなければならず、許可を受けるためには、人工衛星の利用目的及び方法が宇宙活動法の基本理念や宇宙諸条約に則したものであること、人工衛星に機器や部品の飛散を防ぐ仕組みが講じられていること、宇宙空間に有害な汚染をもたらさないための措置に講ずることが管理計画に含まれていること等の措置が適切に講じられていることなどが求められております。
・電波法について
人工衛星を運用するために、無線局(以下、地上局)を使用するにあたり、総務省へ免許申請を行い、許可を得る必要があります。電波法には外資規制がありますが、上場後は外国人による議決権比率をコントロールできないため、規制に該当してしまい免許停止となる可能性があります。そのため、当社が100%の株式を保有する完全子会社の株式会社Synspective Japanにより免許を取得し、免許要件を満たしております。電波法は電波の公平かつ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進することを目的としておりますので、免許申請前に既存免許人と干渉調整をし、同意を得る必要があります。また、免許取得後、登録された地上局は検査を受けることが義務づけられております。
・リモセン法について
リモセン法で規定する衛星リモセン装置の対象物判別精度(いわゆる「地上分解能」)が内閣府令で定める生データの基準(SARセンサーでは3m以下)を超える場合、当該装置の使用につき事前に内閣総理大臣の許可を得る必要があります。許可を得るためには、外部からの不正アクセスを防止する措置や、衛星リモセン記録の漏洩、滅失、損傷を防ぐための安全管理措置が講じられていることなどが求められており、許可後も実効性を担保するため、使用者にデータの暗号化の義務や、許可を受けた送受信設備以外を使用しない義務などが課されています。
②現在適用されている許認可、免許及び登録などの状況について
当社グループの宇宙活動法の許認可
当社グループの衛星リモートセンシング法の許認可
当社グループの電波法の許認可
③知的財産権について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
当社グループでは随時他者の保有する特許調査を行っており、その調査範囲において解決すべき他者特許への侵害は当社グループから抽出されておりません。当社グループで創出した発明・独自技術について権利化を進め、他社の使用等を抑止しています。また、当社グループでは、知的財産権の管理、特に第三者の知的財産権への侵害等を回避することは事業活動に不可欠なものと認識しており、特許公報の調査などを強化することにより当該リスクの低減に努めてまいります。
しかし、第三者との間で、無効、模倣、侵害等の知的財産権の問題が生じた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2024年12月31日現在)
主な特許権
(4)重要情報の流出や取扱い及びサイバーセキュリティに関するリスク
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高
当社グループのデータ販売の主要な販売先は各国の防衛機能を担う省庁となるため、安全保障上重要な情報を取り扱っており、当社グループは、事業活動を正常かつ円滑に行う上で、法令の遵守、顧客要求の達成をはじめとする情報セキュリティの確保は重要課題のひとつであると考え、顧客の機密情報や個人情報及び当社グループの情報資産を保護する指針として、情報セキュリティ基本方針を策定し、以下の通り実施し推進しております。
①本基本方針は、当社グループが事業の中で取り扱う「情報資産」ならびにすべての役職員及び協力会社社員を対象とします。情報資産とは、当社グループが預託、保有、運用管理する情報、データ及び情報システム、ネットワーク、設備とします。
②情報セキュリティに関するリモートセンシングに関連する法令をはじめとする、規則、顧客および外部利害関係者と締結した契約等のセキュリティ要求事項を遵守します。
③情報を取り扱う上で事業に影響を及ぼすリスクを識別し、その発生の可能性や影響度を把握することで情報の適正な管理に努めるとともに、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)が経営に寄与することを確実なものとするために、情報セキュリティ目的を設定し、その達成に向けた活動を推進します。
④適用範囲内すべての役職員及び関係会社社員に対し、本方針の重要性と情報の適正な管理について啓発させます。
⑤ISO/IEC 27001(ISMSに関する国際規格)に準拠した情報セキュリティマネジメントシステムを確立した上で、推進体制を確立して運用し、運用状況を監督すると共に本システムを継続的に維持・改善します。
⑥情報セキュリティに関連する事故及び事件を予防し、事故及び事件が発生した場合は、内容の報告および必要に応じた緊急措置を迅速に対応し、原因分析の上で適切な再発防止策を講じます。
上記取組みの一つの実績として、国際標準であるISO/IEC 27001に関する認証審査、及び初回認証登録を2021年5月18日に完了いたしました(認証登録番号: IS 745935)。また、複雑化し変化の速いサイバーセキュリティ攻撃に対応するため、2021年3月に米国Space ISACに加入いたしました。Space ISACにて共有される、宇宙業界に関係する脆弱性、インシデント事例、脅威動向の情報を当社グループの情報セキュリティ対策に活用してまいります。
しかしながら、これら情報セキュリティ管理にも関わらず、当社グループが情報資産の情報セキュリティ侵害又はその他法令違反を起こした場合には、損害賠償責任又は刑罰を負う可能性があるほか、当社グループが社会的信用を喪失し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他のリスク
①システム障害に関するリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループで扱うシステムには、顧客へ提供しているクラウドベースサービス、当社グループ衛星運用のための地上システム、及び業務システムがあります。これらのシステムにおいて、ソフトウェアの不具合、人為的ミス、又はサプライヤーや災害等に起因するシステム障害が発生した場合、リスクに応じて予め計画していた冗長化やバックアップを用いた迅速な復旧を試みます。しかし、これら対応にも関わらず障害が深刻・長期化した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
②調達資金の使途について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
当社グループが計画している公募増資による調達資金については、主に事業の拡大に係る衛星の開発・製造及び関連する設備投資、人件費、研修採用費、研究開発費、業務委託費及び事業発展に伴うシステム利用料の運転資金に充当する予定であります。しかしながら、当社グループが属する業界においては変化が著しく、環境変化に柔軟に対応するため、調達資金を現時点における資金使途計画以外の使途へ充当する可能性があります。また、当初の計画に沿って調達資金を使用した場合でも、想定していた投資効果を上げられない可能性もあります。このような場合、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③財務制限条項に関するリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:高
④ストック・オプションの行使による株主価値の希薄化について
発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
当社グループは、当社グループ従業員及び社外協力者に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとしてストック・オプションを付与しているほか、今後も優秀な人材確保のためストック・オプションを発行する可能性があります。これらのストック・オプションが権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する1株当たりの株式価値を希薄化させる可能性があります。
⑤税務上の繰越欠損金についてのリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社は税務上の繰越欠損金を有しております。当社の業績が計画通りに推移することにより、期限内にこれら繰越欠損金の繰越控除を受けることが予想されます。しかしながら、繰越期限の失効する繰越欠損金が発生した場合には、繰越控除が受けられなくなり、通常の税率に基づく法人税等が計上されることになり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥無配の実績を踏まえた配当政策についてのリスクについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
当社は、創業以来繰越利益剰余金がマイナスとなっており配当可能利益がなく、現在まで配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な課題として認識しております。しかしながら、当社は成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り将来の事業成長のための投資等に充当することが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、配当による利益還元を検討していきますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定です。
⑦ベンチャーキャピタル等の株式保有比率についてのリスクについて
発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中
当社の本書提出日現在における、当社発行済株式総数111,444,750株のうち、計53,934,750株は、株式公開時のロックアップ対象のベンチャーキャピタル、ベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合及びベンチャーキャピタル又は投資事業有限責任組合が株式事務を委託した代行機関、金融商品取引業者(以下「VC等」という。)が所有しており、VC等が保有する当社株式の割合は48.4%となっております。
2025年6月16日に株式公開時のロックアップが解除されるため、その後は所有する当社株式の一部又は全部を売却することが予想され、当社株価形成に影響を与える可能性があります。
⑧継続企業の前提に関する重要事象等について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:低
当社グループは、継続的な営業損失の発生及び営業キャッシュ・フローのマイナスを計上している状況にあり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在しているものと認識しております。
この主たる要因は、衛星データ事業において、衛星の製造及び打上げに伴う大規模な先行投資が必要であり、投資回収までに期間を要するためであります。
このような事象又は状況を解消すべく、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載のとおり、当該重要事象等を解消するための対応策を実施しております。
また、当連結会計年度末において、14,239,861千円の現金及び預金を保有しており、当連結会計年度末から翌12ヶ月間の資金繰りを考慮した結果、当面の事業資金を確保していることから資金繰りに重要な懸念はありません。
以上により、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないと判断しております。
当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末の流動資産合計は16,253,228千円となり、前連結会計年度末に比べ10,273,066千円の増加となりました。これは主に、小型SAR衛星の製造・打上げにより減少したものの、第三者割当による新株式の発行、金融機関からの借入金、2024年12月19日付で東京証券取引所グロース市場に株式上場し、公募増資を行ったこと等により現金及び預金が9,771,337千円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の固定資産合計は11,942,108千円となり、前連結会計年度末に比べ6,607,327千円の増加となりました。これは主に、小型SAR衛星の稼働に伴い、建設仮勘定からの振替等により、観測衛星(純額)が5,280,542千円、小型SAR衛星の製造等により建設仮勘定が826,627千円増加したことによるものであります。
(負債)
当連結会計年度末の流動負債合計は2,229,395千円となり、前連結会計年度末に比べ723,590千円の増加となりました。これは主に、長期借入金からの振替により1年内返済予定の長期借入金が103,500千円増加したことによるものであります。
当連結会計年度末の固定負債合計は6,093,000千円となり、前連結会計年度末に比べ4,154,500千円の増加となりました。これは、長期借入金が4,154,500千円増加したことによるものであります。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は19,872,941千円となり、前連結会計年度末に比べて12,002,302千円の増加となりました。これは主に、第三者割当による新株式の発行、2024年12月19日付で東京証券取引所グロース市場に株式上場し、公募増資を行ったこと等により資本金と資本剰余金がそれぞれ7,579,652千円増加したものの、親会社株主に帰属する当期純損失を3,592,954千円計上したことによる利益剰余金の減少によるものであります。なお、欠損金の解消および財務体質の健全化を目的に、資本剰余金を1,559,650千円減少させ、同額を利益剰余金に振り替え、欠損填補を行っております。
②経営成績の状況
当連結会計年度における我が国の経済は、中東情勢の緊迫化や中国経済の先行きの不透明さによる景気の下振れリスクはあるものの、実質所得の上昇やインフレ率の鈍化に伴い安定的な成長が見込まれ緩やかな回復基調が続くものと見込まれています。宇宙業界においては、10年で1兆円という長期かつ大規模な支援となる「宇宙戦略基金」が国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)に設置され、2024年度からスタートした第1期では、当社は公募テーマ「商業衛星コンステレーション構築加速化(予算総額950億円で4社が採択済み)」に採択されました。加えて、防衛省の令和7年予算案において「衛星コンステレーション」構築に2,832億円が計上されるなど、宇宙産業を日本経済における成長産業とするための政府施策がより具体化した年となりました。
このような状況の下、当社グループは、2024年3月13日に打上げた当社4機目の小型SAR衛星の初画像(ファーストライト)を4月8日に、8月3日に打ち上げた当社5機目の小型SAR衛星の初画像を9月17日に、12月21日に打ち上げた当社6機目の小型SAR衛星の初画像を2025年1月16日に取得しました。また内閣府宇宙開発戦略推進事務局が推進する「令和6年度小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」、防衛省が推進する安全保障用途に適した小型合成開口レーダ(SAR)衛星の宇宙実証の採択事業者として、複数の国内政府機関へ納入しております。既存サービスの「Land Displacement Monitoring」サービス及び「Flood Damage Assessment」サービスの提供並びに顧客との共同ソリューション開発プロジェクトは引き続き順調に進捗しております。
技術開発の成果としては、新たな撮像モードであるステアリング・スポットライトモードでのテスト観測にて、日本最高分解能であるアジマス分解能25cmの画像取得に成功しました。
衛星製造につきましては、小型SAR衛星の製造事業所「ヤマトテクノロジーセンター」が2024年9月より本格稼働を開始し、衛星コンステレーション構築を実現するための強固な生産体制が整いました。
また、衛星の打上げ契約につきましては、Rocket Lab社(本社:アメリカ合衆国カリフォルニア州、CEO:Sir Peter Beck)が提供するエレクトロン・ロケットで2025年以降に10機の衛星打上げを行うことに合意しました。
この結果、当連結会計年度における売上高は、2,316,649千円(前連結会計年度比67.1%増)、営業損失は3,070,206千円(前連結会計年度は1,795,927千円の損失)、経常損失は3,594,948千円(前連結会計年度は1,951,232千円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は3,592,954千円(前連結会計年度は1,520,458千円の損失)となっております。
なお、当社グループは衛星データ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度に比べ9,771,337千円増加し、14,239,861千円(前連結会計年度末は4,468,524千円)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動に使用した資金は1,798,097千円(前連結会計年度は2,221,564千円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失3,586,493千円(前年同期は税金等調整前当期純損失1,505,008千円)、減価償却費1,097,476千円(前年同期は減価償却費115,259千円)、株式報酬費用437,930千円、上場関連費用383,560千円(前年同期は上場関連費用6,988千円)によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動に使用した資金は7,464,995千円(前連結会計年度は3,636,955千円の使用)となりました。これは主に、衛星製造部品等購入による有形固定資産の取得による支出7,336,512千円(前年同期は有形固定資産の取得による支出3,619,099千円)等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動から得られた資金は19,032,705千円(前連結会計年度は3,722,615千円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入4,270,000千円(前年同期は長期借入れによる収入2,030,000千円)、第三者割当による新株式の発行及び東京証券取引所グロース市場への上場に伴う株式の発行による収入15,159,304千円(前年同期は株式の発行による収入1,300,182千円)等によるものです。
当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
当社グループは、衛星データ事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は次のとおりであります。
(注)第7期連結会計年度において、受注実績に著しい変動がありました。これは、衛星データ事業の前連結会計年度において、中小企業イノベーション創出推進事業(経産省SBIR、金額:4,100,000千円)の受注があったためです。
当社グループは、衛星データ事業の単一セグメントであり、当連結会計年度における販売実績は、次の通りであります。
(注) 1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次の通りであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
a.総収入(売上高と補助金収入の合算額)
総収入は、前連結会計年度に比べて1,122,479千円(81.0%)増加し、2,508,762千円となりました。これは主に、官公庁向けの売上が増加したことによるものであります。特に、宇宙開発利用加速化戦略プログラム(通称:スターダスト・プログラム)「小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」の令和6年分(契約額:1,280,070千円)が令和5年分の契約額から増額されたことによります。なお、当該期間における補助金収入(中小企業イノベーション創出推進事業)は192,112千円です。
b.衛星運用数
期初は2機、期末の衛星運用機数は4機となりました。ただし、依然として各国政府からの強い需要には応えられていない状況のため、早急な量産体制の構築・運用機数の増加が必要と判断しております。
c.受注額/受注残高
「小型SAR衛星コンステレーションの利用拡大に向けた実証」の令和6年分(契約額:1,280,070千円)の受注により、受注額は2,648,304千円、受注残高は5,362,256千円となりました。
なお、当該指標においては、補助金収入を含めて受注額/受注残高を算出しております。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。連結財務諸表の作成において適用する会計基準等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表注記事項(重要な会計上の見積り)」、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表注記事項(重要な会計方針)」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りです。
②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.財政状態
主な増減内容については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
b.経営成績
主な当該内容については、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。
(売上高)
売上高は、前連結会計年度に比べて930,366千円(67.1%)増加し、2,316,649千円となりました。これは主に、官公庁向けの売上が増加したことによるものであります。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は、前連結会計年度に比べて1,532,188千円(268.8%)増加し、2,102,132千円となりました。これは主に、官公庁向けの売上が増加したことによるものであります。この結果、売上総利益は214,517千円(前連結会計年度は816,338千円)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業損失)
販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて672,457千円(25.7%)増加し、3,284,723千円となりました。これは主に、事業拡大のため人員採用を積極的に行ったことにより給料及び手当が181,015千円、株式報酬費用が184,693千円、外形標準課税対象法人になったことにより租税公課が112,673千円増加したこと等によるものであります。この結果、営業損失は3,070,206千円(前連結会計年度は1,795,927千円の営業損失)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常損失)
営業外収益は、前連結会計年度に比べて170,430千円(686.8%)増加し、195,245千円となりました。これは主に、中小企業イノベーション創出推進事業による補助金収入が192,112千円発生したこと等によるものであります。営業外費用は、前連結会計年度に比べて539,868千円(299.7%)増加し、719,988千円となりました。これは主に借入金の支払利息が206,013千円、2024年12月19日付で東京証券取引所グロース市場に株式上場したことにより上場関連費用が376,571千円増加したこと等によるものであります。この結果、経常損失は3,594,948千円(前連結会計年度は1,951,232千円の経常損失)となりました。
(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純損失)
特別利益は、8,487千円となりました。これは、固定資産売却益7,323千円、新株予約権戻入益1,164千円を計上したことによるものであります。特別損失は、32千円となりました。これは、固定資産除却損32千円を計上したことによるものであります。この結果、税金等調整前当期純損失は3,586,493千円(前連結会計年度は1,505,008千円の税金等調整前当期純損失)となりました。
(親会社株主に帰属する当期純損失)
法人税、住民税及び事業税6,460千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純損失は3,592,954千円(前連結会計年度は1,520,458千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。
③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況につきましては「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社グループの資金需要は主に運転資金需要と設備資金需要があります。運転資金需要は企画から製造に必要な運転資金(研究開発費、人件費、諸経費)、販売費及び一般管理費等の営業活動および広告宣伝等費用によるものです。設備資金需要につきましては、衛星製造設備投資であります。
財務政策につきましては、当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金を安定的に確保するため、必要に応じて内部資金の活用及び第三者割当増資により資金調達を行っております。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおり、衛星の開発・製造・打ち上げ等の事業計画の進捗、衛星の製造体制、衛星の運用及び法規制等の様々なリスクの顕在化により業績に影響を受ける可能性があるものと認識しております。
したがって、内外の経営環境及び事業環境に影響を及ぼす要因に留意しつつ、適時に情報を収集・分析する体制を整備し、特に衛星の製造や運用に関するリスクに対応可能な体制を構築するとともに必要な経営上の施策を実行することにより業績に影響を与えるリスク要因の分散及び低減を図ってまいります。
⑤経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
(2) タームローン契約
当社は、2022年3月17日開催の取締役会において、タームローン契約の締結について決議し、2022年4月15日付で契約いたしました。なお、2024年3月28日開催の取締役会において、原契約の修正を決議し、2024年3月29日付で変更契約書を締結いたしました。
(3)コミットメントライン契約
当社は、2023年2月14日開催の取締役会において、コミットメントライン契約の締結について決議し、2023年2月21日付で契約いたしました。なお、2024年3月14日開催の取締役会において、原覚書の修正を決議し、2024年3月26日付で変更覚書を締結いたしました。
(4)実行可能期間付タームローン契約
当社は、2023年6月27日開催の取締役会において、シンジケートローン方式による革新的技術研究成果活用事業活動債務保証付 実行可能期間付タームローン契約の締結について決議し、2023年7月20日付で契約いたしました。
(5)特殊当座貸越契約
当社は、2024年7月29日開催の取締役会において、特殊当座貸越契約の締結について決議し、2024年7月29日付で契約いたしました。
(6)コミットメント期間付タームローン
当社は、2025年2月19日開催の取締役会において、シンジケートローン方式によるコミットメント期間付タームローンの締結について決議し、2025年2月20日付で契約いたしました。
当社はこれまでの研究開発の成果により、小型SAR衛星において世界トップクラスの解像度・広域性の実現を達成してきました。一方で、未だ黎明期にあるSAR衛星コンステレーションの継続的な能力向上と、市場ニーズに順次応えるためのコンステレーション拡大を両立させる必要があると認識しており、漸進的開発と量産体制の確立、それを通じたコンステレーション構築が必要となります。
これらを実現するために、社内体制としましては、衛星システム開発第1部は衛星設計・開発を主に担当し、衛星システム開発第2部は、衛星の量産やそれに必要な工場・量産体制整備を主に担当し、技術戦略室が技術監修を実施しております。
当連結会計年度は、コンステレーション(衛星群)構築へ向け、量産機の性能と低コスト化のバランスを考慮し、SARの高分解能化に向けたアンテナパネルの高性能化、高出力アンプの開発、高性能衛星プラットフォーム開発、他社地上局と連携し衛星コンステレーションの運用自動化等を見据えた研究開発、複数の分野に渡る新領域でのSAR衛星データソリューションの開発を行って参りました。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費の総額は