当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
当社グループは、「オンリーワンの画像検査技術で世界の製品品質の向上に貢献し、人々の生活に豊かさと幸福をもたらす」ことをミッションとして掲げております。当社の主たる事業である画像検査市場は、シンクタンク等では、国内・海外共に成長が大きい分野と分析されています。この市場に向け、「世界ナンバーワンの画像検査システムを開発し、モノづくり現場の目視検査ゼロを目指す」ことを当社のビジョンとして定義しています。このビジョンは、持続可能な社会が到来することを意味し、結果として企業価値が増大し、株主の皆様への利益に資すると考えております。この実現に向け、グループ役職員一同、邁進して参ります。
(2)中長期的な会社の経営戦略
当社グループのコアコンピタンスは、画像検査技術と考えております。画像検査技術を常に相対的に高いレベルに位置付けるために、ソフトウエア開発のみならず、ハードウエア開発においても研究開発投資を継続しております。また、国内のみならず海外での画像検査市場の成長率は高いことから、積極的な投資とグローバル展開を行う攻めの経営を行う所存です。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
足元の経営環境については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」をご参照ください。
今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載の通り、連結グループ子会社において固定資産の減損を計上することといたしましたが、今後も事業の成長のために必要なソフトウエア開発投資を継続する方針です。当社グループの認知度向上やお客様の購買活動に沿った営業活動を実施するためのマーケティング、事業採算性を重視した社内組織の再編成など様々な取り組みを通じて営業利益の黒字化の達成を図ってまいります。
当社の重要経営課題として、中国経済不況の長期化に伴う当社中国画像検査事業の立上げの遅れ、新型コロナ感染期から続く当社ASEAN事業の業績低迷からの脱却の遅れ、そして日本国内顧客におけるDX・クラウドサービス事業の受け入れ環境構築の遅れの3つが挙げられます。これらの3つの経営課題のために、2023年8月に発表しました中期経営計画「SIRIUS2026」の遂行が大変厳しい状況にありますが、本中期計画に示しました基本方針・経営戦略を見直し、売上計画を修正した新中期経営計画を2025年3月に発表いたしました。
なお、3つの経営課題につきましては、解決のための具体策を検討・立案し、当連結会計年度(2024年12月期)から実施してまいりました。その成果が現れてまいりますのは、翌連結会計年度(2025年12月期)の下期からとなる見込みです。
当社は、「オンリーワン画像検査技術で世界の製品品質向上に貢献し、人々の生活に豊かさと幸福をもたらす。」ことを経営理念とし、「スピード経営」と「グローバル展開」を実現してまいります。近年、国内のみならず消費者保護とコンプライアンス重視の観点から検査への要求水準が飛躍的に高くなっています。こうしたことから、積極的な研究開発投資、グローバル投資、迅速な意思決定と行動が最も重要と考えております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティに関する考え方
当社グループは、「オンリーワン画像検査技術で世界の製品品質向上に貢献し、人々の生活に豊かさと幸福をもたらす」ことを目標に活動しています。高精度な検査技術の普及により、不良品の発生を抑えることで資源の無駄を排除し、また検査担当者の作業負荷を軽減することを可能にし、当社グループの事業活動を通じて環境問題、社会問題の解決に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献いたします。
(2)具体的な取り組み
当社グループは、SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)の理念に共感し、SDGsを積極的に推進して社会の持続的発展に貢献してまいります。
具体的な取り組みについては、当社Webサイトに記載しておりますので、詳細は下記をご参照ください。
https://siriusvision.co.jp/sdgs/
① ガバナンス
当社グループは、外部環境の変化によるリスク及び機会を把握し、特に経営に影響を及ぼす課題をもとに、取締役会において、当社グループが取り組むべき課題の特定及び解決に向けた施策の方向性を決定しています。現状、サステナビリティに関する基本方針を上記の具体的な取り組みに記載のとおり定めておりますが、サステナビリティ関連のリスク及び機会の監視及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続等の体制を、その他のコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりません。
詳細は、「
② 戦略
当社グループは、中期経営計画「SIRIUS2026」を策定し事業戦略を定めています。積極的な研究開発に基づき、(1)新事業・製品を生み出すことにより新市場にビジネスを展開するという「探索」活動と、(2)既存事業・製品を磨き掘り下げることにより既存ビジネスの伸長を図るという「深化」活動により持続的成長と企業価値最大化を目指すことを事業戦略の中核としております。当社は、その達成に向けて、人材が最も重要な経営資源と考えており、サステナビリティ関連の項目の中で、特に人的資本を重視しております。人材の育成及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりであります。
[1] 人材育成方針
当社グループを取り巻く経営環境は、IT技術の急速な発展や、少子高齢化による労働人口の減少、グローバル化等の要因により日々変化しております。変化が激しいこれからの時代に対応していくためには、従業員個々人が主体的に考え、自己成長していくことが不可欠であり、当社グループとしても各々が期待される役割を認識し、自律的な学びを促進する仕組みづくりが重要であると認識しております。
このような状況下で、当社は以下の人材育成方針を掲げ、それらを実現するために各種施策を推進しております。
・有能な人材確保のため、様々な経験・スキル・資格を有し、即戦力となる中途採用やシニア採用を積極的に行い習慣や文化が違う環境においても活躍できる人材の採用
・スキル研修やOJT等を通じてプロ組織集団への成長を目指す
・付加価値向上を目指す人材開発として自己研鑽、キャリア形成への支援
・環境に応じた諸制度(人事・評価・賃金等)の変革の推進
[2] 社内環境整備方針
当社グループは、従業員個々人の力を最大限に発揮し、それをチームの力に転換する組織を目指し、多様な人材が相互に活発なコミュニケーションを取りながら、心身ともに健康で安心して働くことができ、また全社員がパフォーマンスを発揮できるような職場環境の整備に取り組むことを基本方針としております。
当社は、ダイバーシティに配慮した雇用制度の設計、個々のワークライフバランスを前提とした働き方改革の推進、人材の最適配置とコミュニケーション活性化のためのローテーションの実施、目標達成度に応じた公平な評価制度の構築に関する取り組みなどを通して上記の方針を実現してまいります。
③ リスク管理
当社グループは、リスク管理規程を制定し、その中で全社的なリスクマネジメント推進に関わる課題・対応策を協議・承認する組織を取締役会と定めております。
また、内部監査室及びリスクマネジメント委員会による内部監査や内部通報制度を制定しており、コンプライアンス経営強化を通じて、より一層のリスク管理に努めております。
④ 指標及び目標
当社グループでは、現状、サステナビリティに関する基本方針は「(1)サステナビリティに関する考え方」に記載した通りでありますが、中期経営計画「SIRIUS2028」における人材戦略の実行に関連して、人的資本に関する具体的な「指標及び目標」については議論中の段階であることから具体的な「指標及び目標」を定めることを見送っております。今後、具体的な人的資本の課題を詳しく分析することにより、今年度内を目処に具体的な「指標及び目標」を策定予定です。しかしながら、当社が描くサステナビリティを推進するために、より働きやすい環境の実現や社内制度の改善に向けての取り組みを推進してまいります。
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。
また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても、投資家に対する積極的な情報開示の観点から、以下に開示しております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、事態の発生の回避および発生した場合の対応に努める所存であります。
(1)事業構造改革について
当社は、成長性の高い画像検査事業へ経営リソースをシフトするため、これまでにないM&Aや新会社の設立など外部の経営資源を積極的に活用する施策を推進しております。今後も、当社の成長戦略に有効と判断した場合には、こうした施策を実行することがあり得ます。しかしながら、買収等により確保した優秀な人材が、異なる文化的背景から士気を維持することができない場合や製品ポートフォリオを構築することができない場合、買収後に想定していなかった重大な問題が発見された場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)市場ニーズ・価格競争について
一般に生活水準が向上することにより、製品検査ニーズは高まります。パッケージの記載に間違いがないか、成分が正しく表記されているかなどの検査が必要となります。また、医薬品市場などでは、コンプライアンスの観点からサンプリング検査ではなく全品検査が前提となる状況が発生し、その傾向は高まっています。これに対処するためには、目視では限界があり、画像検査装置が必要とされるようになっています。
社会的なニーズの変化として、誤謬に対する寛容性の拡大、意匠性の軽視等が発生する可能性は低いと考えられますが、デジタルサイネージのような通信手段にて修正が可能な技術がパッケージ表面等に採用されるなど、大きな技術的な変化が発生した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす恐れがあります。
(3)生産体制について
当社グループは、オリジナルのソフトウエアを開発し販売しています。ユーザの多くは、国内のハイエンド企業であり、要求水準も高いため、ハードウエアなどを限界まで稼働させるソフトウエア品質が要求され、これに応えるエンジニアにも高い開発力が必要です。
労働市場では、慢性的にソフトウエアエンジニアが不足しており、高度な技術を持つエンジニアの不足は顕著です。社内に、こうしたスキルの高いエンジニアが不足すると、外部への委託開発やコストの高いエンジニアの採用を行う必要があります。これは、コストアップ要因であり、予定する開発が困難となったとき、当社グループの業績およびキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
(4)特定の外注先・仕入先への依存について
画像検査装置は、搬送機器と撮像機器(カメラ・照明)とソフトウエアにて構成されますが、当社グループが供給しているのはソフトウエアのみです。半導体等の不足や金属素材や部品価格の高騰により、必要とする搬送機や撮像機器が高騰した場合、画像検査装置の価格が高騰し、市場で受け入れられなくなるリスクが考えられます。
当社グループはこうした状況に対応するため、部材の調達を長期的観点から行っておりますが、搬送機メーカーや撮像機器メーカーからの調達価格の高騰や、調達そのものが困難になった場合は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす恐れがあります。
(5)製品等の品質確保について
当社グループは、お客様に満足を提供し、安全で快適な社会の維持向上を図るため、品質保証体制においても万全を尽くしておりますが、予期せぬ製品等の不具合が発生することなどにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、画像検査事業ではソフトウエアや通信サービスなどITテクノロジーを駆使してサービスを提供しておりますが、IT分野に著しい技術革新が発生した場合において、当該新技術の利用が制限されるなどした場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6)為替変動について
当連結会計年度における当社グループの海外売上高は、連結売上高の10.2%を占めており、前連結会計年度と比較して0.9%増加しました。
当社グループは、出来る限り円建での取引を行い、為替の変動による業績への影響を最小限にするよう努力しておりますが、為替が大きく変動した場合、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。
(7)人材の確保と育成について
当社グループでは、優秀な人材を確保・育成することは、今後、当社グループが事業を発展・拡大するうえで重要な項目の一つと認識しており、特に業界特有の専門知識と技術の継承は、当社グループの事業遂行に不可欠であります。従いまして、的確な人材確保や育成ができなかった場合、もしくは重要な人材の流出が発生した場合には、今後の事業展開も含めて業績その他に影響を与える可能性があります。
(8)その他
当社グループだけでは回避できない、経済や政治経済の変化、自然災害、戦争、テロ、感染症のパンデミック等の予期せぬ事象が発生した場合、当社グループの業績が影響を被る可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度の売上高は23億14百万円(前年同期比1.2%増)、営業損失1億12百万円(前年同期は56百万円の利益)、経常損失84百万円(前年同期は1億20百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失は1億62百万円(前年同期は90百万円の利益)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して1億62百万円減少し、31億93百万円となりました。これは主として、電子記録債権が27百万円増加、仕掛品が1億7百万円増加、有形固定資産が1億51百万円増加、ソフトウエア仮勘定が82百万円増加、投資有価証券が23百万円増加したものの、現金及び預金が68百万円減少し、また受取手形及び売掛金が3億85百万円減少したことによるものであります。
負債は、前連結会計年度末と比較して33百万円増加し、6億45百万円となりました。これは主として借入金が90百万円増加、未払法人税等が10百万円増加、繰延税金負債が7百万円増加、支払手形及び買掛金が51百万円減少、未払消費税等が36百万円減少したことによるものであります。
純資産は、前連結会計年度末と比較して1億96百万円減少し、25億48百万円となりました。これは主として、その他有価証券評価差額金が15百万円増加したものの、為替換算調整勘定が33百万円減少、利益剰余金が2億10百万円減少したことによるものであります。
これらの結果、自己資本比率は、前連結会計年度末と比較して2.7ポイント減少し、77.4%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末と比較して68百万円減少し、10億15百万円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローでは、2億40百万円の収入(前年同期は1億6百万円の支出)となりました。これは主として、税金等調整前当期純損失1億10百万円があるものの、売上債権の減少3億68百万円によるものであります。
投資活動によるキャッシュ・フローでは、3億60百万円の支出(前年同期は20百万円の支出)となりました。これは主として、有形固定資産の取得による支出1億61百万円、及び無形固定資産の取得による支出1億92百万円によるものであります。
財務活動によるキャッシュ・フローでは、41百万円の収入(前年同期は48百万円の支出)となりました。これは主として配当金の支払額47百万円はあるものの、長期借入れによる収入1億円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
セグメントにつきましては、単一セグメント(画像検査関連事業)となっております。
a 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
画像検査関連事業 |
2,708,850 |
13.7 |
|
合計 |
2,708,850 |
13.7 |
(注) 金額は、販売価格であります。
b 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
画像検査関連事業 |
2,302,406 |
△10.5 |
752,220 |
△1.6 |
|
合計 |
2,302,406 |
△10.5 |
752,220 |
△1.6 |
c 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
画像検査関連事業 |
2,314,764 |
1.2 |
|
合計 |
2,314,764 |
1.2 |
(注) 最近2連結会計年度における「主な相手先別販売実績」については、販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先はありませんので記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り、予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成のための重要な会計方針等は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、以下のとおりであります。
a 経営成績の分析
当連結会計年度(2024年1月1日~2024年12月31日)における日本経済は、コロナ禍からの社会・経済活動の正常化が進んでいくなかで、緩やかな回復が続きました。個人消費は、国内旅行の回復や外食等のサービス消費に持ち直しの動きが見られました。企業の設備投資は、製造業を中心にコロナ禍や物価高により先送りしてきた更新投資や人手不足に対応するための省人化投資等を背景に、好調に推移しました。特にIT投資については、金融業や製造業を中心に幅広い業種で投資意欲が高い状態にありました。
こうした経済環境の中、当社グループのビジョンであります「モノづくり現場の目視検査ゼロ」を実現するために、新技術・新製品の研究開発投資を維持しながら、中期経営計画達成に向けた事業戦略を遂行してまいりました。この結果、当連結会計年度の当社グループの売上高は、前連結会計年度22億87百万円に対し1.2%増加の23億14百万円となりました。
画像検査事業は、昨年夏から顕著になってきたラベル印刷市場における設備投資の先送りの影響を受け、当社主力の印刷品質検査用ソフトウエア「AsmilVision」を搭載したラベル検査機の販売が伸び悩みました。一方で、多機能ソフトウエア「FlexVision」を搭載した検版機「S-Scan-LNC」および枚葉印刷シート検査機「S-Con-Smart」に代表されるスマートシリーズの販売が堅調に推移しました。さらに、4年間にわたり高額の研究開発費を投資して開発してきた高速・広幅印刷検査用ソフトウエア「PolarVision」が、紙器パッケージ印刷の大手企業複数社に採用され売上を伸ばしました。
こうして、国内画像検査事業の売上は昨年より伸長しましたが、国内大型案件の搬送機械製造の遅延による受注・納品の遅れや、特注機械の顧客の設備投資計画の見直し、海外メーカーからの検査用搬送機の長納期化により、当初の売上・受注計画からの乖離が生じました。
このような状況下におきましても、当社画像検査技術に期待する国内顧客からの引き合いの増大に対応するために、計画に即した研究開発投資の継続と、開発者・技術者および営業人材の積極的な採用を継続して進めてまいりました。また、本社と技術センターがワンチームとなるとともに、当社社員が働きやすいオフィス環境を構築し、新技術・新製品の研究開発と販売、顧客サポート力をより一層高めるために、新本社に移転しました。
こうした研究開発投資や人材投資、営業活動へのコスト投資、新本社移転と設備投資の結果、売上が販売費及び一般管理費の増加をカバーできず、営業収益は悪化しました。
当社画像検査事業をAI(人工知能)とDX(デジタルトランスフォーメーション)、クラウドサービスで支えるUniARTSは、ラベル印刷メーカーや紙器・パッケージ会社への導入が進行しています。特にAI検査技術は多くの印刷工場現場で高く評価され、実稼働を始めております。しかし、このDX戦略の推進にあたり、クラウド上で画像データを保有するための顧客工場基幹システムの仕組みづくりやサブスクリプションによるサービスの受け入れに想定より長時間を要したこと、及びクラウドサービスに対する認知度不足が課題となり、顧客への浸透が当初の計画より遅れました。その結果、本DX・クラウドサービスによる収益確保に時間を要しています。そこで、DX戦略の推進方法を見直すことにしました。すなわち、同社事業における割引前キャッシュ・フロー総額が固定資産簿価(主にソフトウエア開発コストのうち資産計上していた無形固定資産)を上回ることがまだ見込めないため、減損損失を計上することにしました。
ウェブソフトウエアとクラウドサービスの企画・開発・運営を行う株式会社ウェブインパクトは、「WEB給(給与明細サービス)」、「Sync(スケジューラ同期サービス)」、「QUICK GATE(スキー場チケット販売サービス)」などのプロダクト販売や、受託開発、システム運用が堅調に推移するとともに、申請審査システムの行政サービス向けの受注と売上が継続して増大しています。
海外市場は、中国経済悪化による不況の長期化の影響を受けております。
当社の中国グループ会社(シリウスビジョン上海)の画像検査事業は、顧客の設備投資予算の大幅減や大手印刷工場における設備投資の凍結によって、予定していた化粧品・医薬品ボトル検査機やチューブ検査機の受注・納品の大幅な遅れが発生しました。そこで、ボトル検査市場からラベル検査市場へ営業・技術リソースを移し、ラベル検査機の中国市場への本格参入を目指しました。その結果、複数の有力案件を創出することができましたが、顧客の設備投資予算の縮小と延期により早期の受注・納品にはつながりませんでした。さらには、検査用搬送機械の仕入先である中国搬送機メーカーによる機械開発・製造の遅延が当初の想定よりも長引いたため、中国国内だけでなく、シリウスビジョン上海から日本やASEAN地域への輸出販売も遅れました。この結果、シリウスビジョン上海における有形固定資産で、減損損失を計上いたしました。この厳しい中国経済状況が今後も続くことを想定し、シリウスビジョン上海の大幅人員削減、オフィスの移転・縮小、その他固定費の大幅削減など、短期間にリストラ策を実行しております。これらのコスト削減策と、ラベル市場への当社検査技術の浸透、そして日本の成功事例に習って市場開拓を始めた検版市場からの新規受注の増大により、早期の赤字体質からの脱却が可能になってきております。
ASEAN画像検査事業は、固定費削減のためのリストラ策の実行がほぼ終了し、経営体質の変革が進みました。その結果、赤字体質からの脱却が実現できました。タイ(シリウスビジョンタイランド)とベトナム(シリウスビジョンベトナム)ともにバックオフィスに情報共有システムを導入することによる業務プロセスの効率化を実施済です。日本とタイ・ベトナム間の営業・技術連携をさらに強くするために日本にASEAN事業本部を設置し現地従業員への管理体制と教育を強化するとともに、ASEAN地域における効率的な営業活動による新規案件獲得など業績向上に向けた受注活動の促進を図っております。新たな人材の採用活動も継続しており、さらなる経営体質の変革と営業体制の強化に取り組んでまいります。
また、新技術・新製品の研究者・開発者の積極的増員とともに、国内営業体制の再編と海外営業担当の増員など、来期に向けた人員体制の強化のために積極的に投資を継続しています。
b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、並びに健全な財政状態を目指し、その財源として安定的な営業キャッシュ・フローの創出を最優先事項と考えており、事業活動に必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており、運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することに努めております。
また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,015百万円となっております。
なお、当社グループは画像検査関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は記載を省略しております。
該当事項はありません。
2018年12月、基礎研究強化のため、コンシューマ向け新製品開発の経験が豊かな人材を研究開発室長に迎え、研究開発体制を一変しました。当社グループの成長に必要な技術を長期的な視野で、市場調査・仮説検証からスタートし、試作評価を経て、設計量産・事業化というステップを目指すことを前提に、従来の研究開発案件を全て見直しました。研究開発室は、2020年には、意思決定の迅速化のために別法人としましたが、グループ全体のシナジーを高めるために2022年にシリウスビジョン株式会社に再度合流しています。この間、売上規模に対して多額となりすぎているという批判もありましたが、2021年には多くの案件が試作評価段階に入り、当連結会計年度には事業の柱として成長が期待される案件に関連して画像検査機の受注および販売へと結実いたしました。2023年2月発表いたしました株式会社サトーさま(本社:東京都港区、代表取締役社長:小沼 宏行)との共同開発は、医薬品ラベル市場での成長が期待されるような成果を生み出しております。その他、グラビアシリンダー版検査機『S-Scan-Grace』、ブランクス検査機『S-Blanks』、高速チューブ検査機『S-Bottle-Dual』など、これまでの開発投資によって製品化した技術による装置の受注が続きました。更に、2024年には小型、軽量、簡単で検査員をストレスから解放する新型検査機の発売を目指し開発中です。また大手の医療用製品を手掛けるメーカーの画像検査設備の開発を受託し、共同開発に参画しています。
また、Willable株式会社では、ソフトウエア開発としては、グラビア市場への参入のためにPolarVisionを開発しましたが、単に新市場への投入製品としてではなく、これまで開発してきた基幹技術を活かすことにより上述のブランクス検査機『S-Blanks』の受注獲得に貢献しました。
特に、株式会社シンク・ラボラトリーさま(代表取締役重田龍男氏・千葉県柏市)と共同開発したグラビアシリンダー版検査機は、当社グループが開発したソフトウエアが同社の自動グラビア製版システムに組み込まれ、2024年春にデモラインが完成し稼働続けています。
生産現場では、IoTとAI(人工知能)技術が求められておりますが、印刷現場に合わせたソリューションを株式会社UniARTSが開発しました。これは、画像検査機の検査データを自動的にクラウドに上げ、クラウドサービス「UniARTS」でデータ分析とAI学習(ディープラーニング)およびAIシミュレーションを実施後、出来上がった学習モデルを画像検査機にフィードバックしてAI判定処理を実行するものです。このAIシステムを「AI印刷検査」と命名し2024年6月に新製品としてリリースしました。その後半年間で、このAIシステムが数多くの印刷工場現場で採用され、『目視検査ゼロ』を目指し稼働しています。さらに、AI活用を次世代検査機の中核技術と位置づけ、AIを包含したDX・クラウドサービスの効率的な開発を行っております。
当社グループでは、過去5年間に15億円以上の研究開発投資を行っておりますが、急激な経営環境変化に対応しながら、新技術を追求し、持続的な成長をするために引続き積極的な研究開発活動を行ってまいります。
当連結会計年度における当社グループが支出した研究開発費は