文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営の基本方針
当社グループは、企業価値の源泉である社是「仕事を楽しむ」を掲げ、経営理念「わたしたちは『独創の技術』『信頼の品質』『万全のサービス』を信条に、自由に着想し、グローバルな事業活動を通して界面価値創造を実現することで豊かで潤いのある社会と環境づくりに貢献します。」を基本方針として事業を展開しております。
それぞれの人生で大切な時間をかける仕事を、精一杯楽しみ、どのような仕事も自分たちのこととして真剣に取り組み、その成果が人々の豊かな暮らしに役立つ。私たちは、仕事を楽しむ自分たちの手で楽しい社会の実現に寄与し、自らの心豊かで幸ある人生と、明るく楽しい社会への貢献を同時に追い求めてまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは、連結ベースにおける事業経営を念頭に置き、積極的に事業の拡充、技術力の向上を図っております。独創的で価値が高く市場ニーズに合った製品を開発し続け、これまで培ったコア技術により、顧客における歩留まりの向上、電子機器の高機能化、信頼性向上に貢献いたします。世界中のどの地域の顧客に対しても高付加価値で高品質な製品を生産し、営業を行うことで事業の拡大を目指し、また、企業価値向上や株主への積極的な利益還元、持続的成長に取り組んでおります。
2025年12月期を初年度とする2027年12月期までの3ヵ年を対象期間とした中期経営計画「2030年ビジョン Phase 2における目標は次のとおりです。
(経営指標)
(資本政策)
当社グループは、持続的な成長に向け、収益性の観点からは、営業利益率を重要視しており、具体的には当社連結営業利益率を主要指標と定め、その向上に努力しております。
また、効率性の観点からは、資本コストを的確に把握した上で、ROE(自己資本当期純利益率)を意識した経営を行っております。
詳細は、当社ウェブサイトに掲載しております「中期経営計画策定に関するお知らせ」(2025年2月14日発表)をご覧ください。
(3)経営環境
当社グループの主要事業は、電子基板・電子部品製造用薬品の開発・製造販売および関連機械、資材の販売であり、薬品の売上および営業利益がいずれも9割超を占めております。
また、主な顧客は世界中の電子基板・電子部品メーカーであり、当社および「3 事業の内容(1)当社グループの事業内容について」に記載した連結子会社7社でそれらの市場を包括できる体制を取っております。
当社グループの主要市場であるエレクトロニクス業界は、AIの多様化、5G等の次世代通信ネットワーク、クルマの電動化・自動化・コネクテッド化やDX(デジタルトランスフォーメーション)・GX(グリーントランスフォーメーション)などの進展等、技術の広がりを背景に技術革新が進んでおり、当社関連市場は拡大すると予測しております。
(4)経営戦略と対処すべき課題
当社グループは、エレクトロニクス関連の界面処理を核とする技術開発力を最大の特長として、高い付加価値のある製品をグローバルに顧客に提供する研究開発型企業です。市場のニーズに的確に応え、革新的なテクノロジーの実用化に貢献できるようなシーズを生み出し育めるよう、独創的な技術開発力にさらに磨きをかけるとともに、エレクトロニクス業界および関連する業界、参入が可能な事業領域についてのグローバルな動向把握と潜在需要の掘り起こしに努め、高い品質の製品と技術サービスの提供を図ります。また、環境・安全への配慮とワーク・ライフ・バランスの実現等により、事業推進力の強化を図ってまいります。
また、さらなる成長路線を実現すべく、当社グループは、企業価値の源泉である社是「仕事を楽しむ」を掲げ、経営理念「わたしたちは『独創の技術』『信頼の品質』『万全のサービス』を信条に、自由に着想し、グローバルな事業活動を通して界面価値創造を実現することで豊かで潤いのある社会と環境づくりに貢献します。」を基本方針とし、中期経営計画に沿って、次のとおり、各種施策に取り組んでおります。
2030年への指針
「創造と変革」
~「つくる」を変える~
~「うる」を変える~
目指す企業像
・独創の技術で新たな価値を創造する真のグローバルカンパニーになる
・研究開発型企業であり続ける
・独創のAI企業としての顔を持つ
目指す人財像と組織
(人財像)
・各自自立自走し、連帯できる人財を目指す
・熱意をもち、挑戦を続ける人である
・基本的なデジタルリテラシーをもつ
(組織)
・役割に応じて優秀な人財の確保を行い、適正に配置し、十分に活躍できる環境を準備するよう最善を尽くす
対処すべき課題は、次のとおりです。
当社グループの顧客はその大半が電子基板・電子部品メーカーです。技術・マーケティングの強化が製品開発の迅速化にも寄与すると考えております。当社のコア技術をより全面に出したグローバルなマーケティングにより、技術変化への対応や既存技術の応用展開を強化してまいります。また、新規市場への進出、新規事業の創出に取り組んでまいります。
生産・ロジスティクスに関しましては、「優れた人財」「グローバル生産ネットワークの拡充」「高度な品質・化学物質管理」「SDGs観点での取り組み」による強みのシナジーで圧倒的な優位性を発揮すべくグローバル生産戦略を構築し、安定した調達、生産、供給体制の確立に努めてまいります。
競争力があり、社会に価値を生み出し続ける企業であるためには人財が非常に重要であると認識しております。人的資本基本方針を定め、短期・中期・長期の視点で、経営に資する人的価値創出を図ってまいります。
E:Environment環境、S:Social社会、G:Governance企業統治の頭文字からなるESG戦略は、会社事業の礎となるものです。
当社グループは、2030年ビジョンのもと、事業活動を通して界面価値創造を実現することで豊かで潤いのある社会と環境づくりに貢献するために、事業運営にとって大切な6つのマテリアリティ(重要課題)を策定し、事業が関わるSDGsからの観点を見据えながら進めております。6つの重要課題「未来を切り拓く研究開発」、「適正な調達、生産、物流」、「環境保全」、「品質と安全」、「多様な人財の活用」、「経営基盤の強化」の取り組みの成果がお客様の利益や生産工場にもつながっていくと考えています。
さらには、気候関連問題を重要な経営課題と位置づけ、気候変動を含めた環境対応への取り組みをより強化してまいります。
当社は化学薬品事業会社として、これらマテリアリティに対する取り組みを通じ、着実にESGを推進し、社会と産業全体、お客様の持続可能な発展に寄与してまいります。
当社グループは、これらの課題を克服することにより、オンリーワンまたはナンバーワンの領域を複数保有する地位の獲得を目標とし、継続的に高い成長を実現し続けるべく全力を尽くしてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在の状況における判断に基づくものです。
(1) サステナビリティに関する考え方
当社グループでは、経営におけるサステナビリティの位置づけを明確にするため、『サステナビリティ基本方針』を制定しています。「独創の技術」「信頼の品質」「万全のサービス」を信条に、ESGの視点における企業責任を認識した経営基盤の整備・運用を行い、公正で誠実な事業活動を通して社会課題の解決に取り組み、企業自身が成長しながら継続的に社会的価値を創造し、持続的な社会の実現に貢献していくことを目指します。
● 事業活動を通してサステナビリティ課題に取り組み、解決するなかで新たな事業機会の創出に努めます
● 互いを尊重し、多様な能力や専門性を最大限に発揮し、活かし合える労働環境・風土を醸成します
● 気候変動や限りある資源に配慮し、環境負荷低減の取組みに努めます
本方針のもと、定期的に事業活動におけるマテリアリティ(重要課題)を見直し、事業環境とステークホルダーからの要請・期待を踏まえた経営を行うこととしています。
当社では、取締役会をサステナビリティ基本方針と基本計画を審議・決定する最高意思決定機関と位置づけています。また、取締役会の監督のもと、サステナビリティ経営を推進するための体制として、ESG委員会を設置しています。代表取締役社長を委員長とし、社内・社外全取締役および委員長が指名する役職員で構成されています。
化学物質を取り扱う研究開発型企業として、気候変動・水管理等も重要な経営課題と認識しております。サステナビリティ全般に関する重要な方針や施策、ならびにそのリスク・機会は、ESG委員会において審議・策定し、取締役会に提言されます。
取締役会は、ESG委員会における審議・決定事項について定期的に報告を受け、ESG委員会からの提言を踏まえて、サステナビリティ経営を監督するとともに、重要性が高い事項の審議及び意思決定を行っています。
社内体制図については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要および当該体制を採用する理由」に記載しています。
当社グループは、「独創の技術で新たな価値を創造し、お客様とともに持続可能な社会の実現に挑戦する」という2030年ビジョンのもと、事業活動を通して界面価値創造を実現することで豊かで潤いのある社会と環境づくりに貢献するために、経営として取り組むべき6つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。
これらのマテリアリティは、「2022-2024中期経営計画」策定にあたり選定されました。2030年ビジョンPhase2「2025-2027中期経営計画」においても、同マテリアリティに関して更なる深化と充実を図るべきとの見解となりました。
(注) 2024年度の取り組みの実績につきましては、2025年7月に発行予定のサステナビリティ報告書2025で開示する予定です。
(4)リスク管理
当社ではリスク管理として、事業リスクマネジメント、情報セキュリティ、品質・環境・労働安全衛生マネジメントシステムによる取り組みを継続的に行うことで、事業ならびに気候変動をはじめとする環境関連のリスクの把握と分析、評価を行っています。毎月の品質会議、半期ごとのリスクマネジメント委員会、コンプライアンス委員会で、各会事務局は重要事案について報告しています。
気候関連のリスク・機会については、毎年、関連部門と連携し、その認識・進捗確認に努め、評価プロセスによって特定した重要度の高いリスク・インパクトについては、各会事務局がESG委員会に報告の上、ESG委員会にて協議・決定しています。また、必要に応じ、取締役会に諮っています。
(5)気候変動への取り組みとTCFDへの対応
<気候変動に関する戦略>
TCFDは、気候関連のリスク・機会が企業の財務にどのような影響を及ぼすのか、開示を求めています。TCFD提言では、気候関連リスクは「移行」「物理」のカテゴリーに分類されています。
当社では同提言に基づき、目指すべきビジョンを掲げている2030年をターゲット年とし、リスク項目を検討しました。その中で、当社事業と関連性が深いリスク項目の洗い出しを行い、特に重要なリスクを特定しました。
また、気候変動に伴う環境問題や事業環境の変化とその影響から生じる機会についても把握に努め、「移行」による変化の機会についても洗い出しを行いました。

(影響評価プロセス)
<リスクと機会を踏まえたシナリオ分析>
パリ協定では、世界全体の平均気温の上昇を産業革命以前に比べ2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求するとされています。
当社は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告や国際エネルギー機関(IEA)の世界エネルギー見通しなどを参考に、CPS*1による「4℃シナリオ」、SDS*2による「2℃未満シナリオ」、NZE*3による「1.5℃シナリオ」から2030年の世界を想定し、事業経営における移行リスクと物理リスクの検討を開始しました。
気候変動対策が進む「1.5/2℃未満シナリオ」では、カーボンニュートラル実現に向けて政策規制が強化され、社会全体が積極的に気候変動対策に取り組むシナリオで、環境に配慮した製品への需要の高まりや、電子基板・半導体業界における新市場に係る機会の創出が考えられ、また、炭素税の導入などによる生産や原料調達コストの上昇といった影響が想定されます。
「4℃シナリオ」では、脱炭素の施策が十分に推進されず、洪水などの自然災害の頻発化や激甚化による影響の可能性が高まると考えられます。
気候変動関連リスクと機会を評価するにあたり、当社およびステークホルダーにとっての重要度を相対的に検討しました。
*1 CPS: Current Policy Scenario
*2 SDS: Sustainable Development Scenario
*3 NZE: Net‐Zero Emissions by 2050 Scenario
■気候変動に関し想定するリスク一覧
上表、リスク一覧から特に重要度が高いと考えるリスクを下表のとおり特定しました。
■気候関連のリスク(1.5/2℃未満シナリオ):低炭素経済への「移行」による変化
■気候関連のリスク(4℃シナリオ):「物理的」による変化
気候変動に伴う環境問題や事業環境の変化とその影響から生じる機会について、下表のとおり特定しました。
■気候変動に関する機会:「移行」による変化
(対象範囲)
当社グループ全体
(影響度)発生頻度や金額的影響度の面から
小:ほとんど影響なし(1億円未満)
中:事業の一部に影響がある(1億円以上10億円未満)
大:事業の停止もしくは大幅に縮小・拡大するほどの影響がある(10億円以上)
(発生(顕在化)時期)
短期:2030年ビジョン中期経営計画Phase2の最終年度である2027年まで
中期:2030年ビジョン中期経営計画Phase3の最終年度である2030年まで
長期:2031年以降
<指標及び目標>
当社グループは、「環境保全」に関する気候変動問題への対応として、2030年の定性的目標に次の2つを掲げています。
具体的に、次のようにCO2削減目標を定め取り組んでいます。
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当社グループのCO2排出量の推移につきましては、2025年7月に弊社ウェブサイトにおいて公表予定のサステナビリティ報告書2025をご参照ください。
掲載ページ
(6) 人的資本経営の取り組み
<人材育成・社内環境整備方針>
当社は従業員を当社グループの持続可能な発展を支える最も重要な「人的資本」と捉え、理想の人財像に掲げる「自律自走し、連帯できる」の体現に取り組んでいます。短期・中期・長期的視点での人的価値の創出を目的とする人材育成・社内環境整備の取り組みとして「人材育成・社内環境整備方針」を制定します。
① 挑戦できる企業風土の実現
多様な個性・価値観を有する人財が、自律自走・連帯のもと、「創造と変革」に挑戦できる企業風土を醸成します。
② キャリア形成と能力開発支援
従業員一人ひとりの持続的成長のために必要な教育・研修機会を提供し、キャリア形成と能力開発を支援します。
③ ダイバーシティの推進
「多様な人財の獲得」「公正な評価で報いる人事制度の構築」「効果的な人財配置を実現するタレントマネジメントシステムの充実」による、働き甲斐のある労働環境づくりに取り組みます。
④ 従業員エンゲージメントの向上
多様な人財を受容する制度整備・意識変革を推進し、ワークライフバランスの充実による、従業員エンゲージメントの向上を実現します。
⑤ 良好な社内環境の構築
従業員一人ひとりが心身ともに健康で、安全にいきいきと働き続けることができる良好な社内環境を構築します。
当社の具体的な取り組みにつきましては、サステナビリティ報告書をご覧ください。
<指標及び目標>
(注)1 上記目標は、提出会社の状況であります。連結ベースでの目標は定めておりません。
(注)2 2024年度の実績につきましては、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは電子基板・部品資材事業を行っておりますが、電子基板向けの比重が大きいため、電子基板業界の動向に大きく影響されます。このため、今後の電子基板の生産動向によっては、当社グループの業績に影響を受ける可能性があります。
当社は、電子基板製造用薬品を中心に積極的な新製品開発を行っております。電子基板製造における技術革新は著しく、これに対応した製品を供給するためには充分な研究開発活動が不可欠であり、そのため当社は連結売上高の約10%を目安として研究開発投資を行っております。
今後も当社は、研究開発の成果である新製品の販売については、需要の喚起や販売の強化を図る方針でありますが、十分な収益を上げるに至らなかった場合は、研究開発費の負担が当社の損益に影響を与える可能性があります。
また、研究開発活動について当社が市場ニーズの分析を誤ることにより市場動向への対応が遅れたり、技術革新に対応できない場合には、製品の販売減に繋がり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
当社グループは、当社および連結子会社7社で構成され、世界の主要な電子基板市場を包括すべく体制を整備しております。
近年中国における事業の重要性が増しており、同地区における様々なカントリーリスクがより一層顕在化した場合には、当社グループの業績に影響を受ける可能性があります。
当社グループは研究開発体制のさらなる強化と海外展開をはじめとする販売力の強化に重点を置き、従来から優秀な人材の採用と教育研修・配置・ローテーションを含めた『戦略人事』に積極的に取り組んでおりますが、今後当社の求める人材を十分に確保・育成できない場合には、当社グループの損益に影響を与える可能性があります。
当社グループは、日本国内だけでなく世界的に事業活動を展開しており、海外売上高の比率は過半数を占めます。そのため、為替相場の変動は損益に影響を与える可能性があります。
一般に円高は減収・減益の要因となります。
当社グループの主要製品である電子基板・部品製造用薬品の主な原料は無機材料でありますが、一部薬品には原油をベースとする材料と銅をベースとする材料を使用しております。
さらに当社グループの薬品の運搬に原油価格に影響されるポリエチレン容器を使用しております。
当社グループは製品原材料の見直しや一括大量購入等様々な製品コストダウンに取り組んでおりますが、原材料価格が高騰した場合、あるいは原料素材の世界的需要増加等にともなう枯渇状況が発生した場合には、当社グループの損益に影響を与える可能性があります。
当社ではリスクマネジメントの観点から知的財産管理が経営上重要であるとの認識をもっており、社内に専任部署を設置し、当社の知財戦略に基づいて各国において権利を取得・管理しておりますが、当社の想定の範囲外で第三者から知的財産権を侵害したと主張されることが全く無いとは言い切れません。そのような場合には、当社グループの損益に影響を与える可能性があります。
(8) 情報セキュリティについて
当社グループは、事業運営に関する顧客情報、個人情報および技術上の秘密情報を保有しております。これらの情報の秘密保持、情報管理には細心の注意を払い、社内規程の整備、従業員教育等の対策、また、コンピューターウイルスへの感染、サイバー攻撃等による不正アクセス、改ざん、破壊、漏洩および滅失等を防ぐための管理体制を構築し、安全措置を講じております。しかし、故意、過失の如何に関係なく、外部に情報が流出する事故が起きた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの電子基板・部品製造用薬品は様々な化学物質を使用しております。日本をはじめ世界中には、化学物質による人の健康や環境への影響を最小化するための法規制があります。
当社グループでは、このような法規制を確認し順守に努めておりますが、改正等による法規制への対応や当社グループの製品開発が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの損益に影響を与える可能性があります。
当社グループは、地震、洪水等の自然災害、事故、感染症の流行およびその他の災害により生産活動が妨げられないようにするために、生産拠点を分散して設置し、被災時の影響を最小化するべくBCP(事業継続計画)を策定するなど、活動を行っておりますが、災害等による影響を受けた場合、またサプライチェーンの分断により電子機器等の最終製品の生産量が減少し、電子基板・部品もその影響を受けた場合には、当社グループの損益および財政状態に影響を与える可能性があります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績」という。)の状況の概況は次のとおりであります。
当連結会計年度(2024年1月1日~2024年12月31日)において、わが国経済は、一部足踏み状態は見られるものの緩やかな回復基調にあり、海外経済は、金融引き締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念、米国の政権交代による政策変更の可能性、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の高い緊張状態にある地政学リスクのもとで推移しました。
エレクトロニクス業界は、データセンターにおいては生成AI関連がけん引役となり先端分野への投資は堅調さが持続し、従来分野における需要も2024年後半には緩やかに回復基調へと転じる動きが見られました。電装化や自動運転への技術転換が進む車載関連は、地域により大きく濃淡は見られましたが概ね堅調に推移しました。在庫調整が一巡したと見られるパソコンやスマートフォンは緩やかながら回復基調にあるもののその勢いは力強さに欠けました。中長期視点では、通信革命によるデジタル技術進展のメガトレンドは不変であり、それらに向けた投資は継続されると見込まれております。
このような環境のもと、当社グループは、2030年ビジョンの実現に向けた第一期である「Phase1 中期経営計画(2022年度~2024年度)」を達成するため、「創造と変革」を指針に事業活動に取り組みました。特に、デジタル化やグリーン化に向け社会が変化・変革期にあるなか、高密度電子基板向け製品の開発、販売に注力いたしました。
売上高については、生成AI関連など先端パッケージ基板向けに製品の需要が堅調に推移したこと、為替の影響や当社が関連する電子機器の生産が回復基調にあることなどの影響を受け、過去最高となりました。営業利益面でも、薬品生産数量の増加やグローバル生産戦略における生産効率の改善等による利益貢献もあり、大幅な増益となりました。しかしながら、2030年に目指すべき企業像に向け、事業の合理性および経営効率を勘案し、販売活動の縮小が続く当社連結子会社であるMEC(HONG KONG)LTD.の解散および清算を決定し、その子会社であるMEC FINE CHEMICAL(ZHUHAI)LTD.の当社完全子会社化を行いました。これらグループ再編に伴う日中両国の税金計上により法人税等が増加し、親会社株主に帰属する当期純利益は減少しました。
在庫調整局面にあった前期と比較した主要製品の売上動向としましては、全般的にエレクトロニクス業界の影響を受け増加しました。半導体を搭載するパッケージ基板向けに高いシェアを持つ超粗化系密着向上剤「CZシリーズ」は、生成AI関連など先端パッケージ基板向け製品需要の拡大、汎用サーバーやパソコン向け製品の需要において力強さに欠けるものの回復基調にあることなどを受け大きく増加し、ディスプレイ向け「EXEシリーズ」も、関連する電子機器の在庫調整一巡により、当社製品の需要に回復が見られ増加しました。ディスプレイ向け「SFシリーズ」は、関連する電子機器の生産動向を受け増加、多層電子基板向け密着向上剤「V-Bondシリーズ」は、車載基板向けや衛星関連基板向けに堅調に推移しました。
資産は、現金及び預金や売上債権の増加等により、前期末に比べ43億73百万円増加し、330億39百万円となりました。
負債は、未払法人税や繰延税金負債等の増加等により、前期末に比べ22億54百万円増加し、61億41百万円となりました。
純資産は、利益剰余金の増加等により、前期末に比べ21億19百万円増加し、268億97百万円となりました。
以上の結果、自己資本比率は81.4%、ROEは8.9%となりました。また、連結配当性向は36.8%となりました。
当連結会計年度の経営成績は、売上高は182億34百万円(前期比42億14百万円、30.1%増)となりました。販売費及び一般管理費は65億39百万円(同7億15百万円、12.3%増)となり、営業利益は45億62百万円(同20億69百万円、83.0%増)、売上高営業利益率は25.0%、前期の17.8%と比較し7.2ポイント改善しました。経常利益は46億82百万円(同19億99百万円、74.5%増)となりました。税金等調整前当期純利益は46億69百万円(同14億50百万円、45.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は22億91百万円(同13百万円、0.6%減)となりました。
売上高の内訳は、薬品売上高は174億78百万円(前期比37億13百万円、27.0%増)、機械売上高は5億79百万円(同4億67百万円、415.0%増)、資材売上高は1億69百万円(同29百万円、21.5%増)、その他売上高は7百万円(同3百万円、112.6%増)となりました。
海外売上高比率は61.7%となり、前期の62.0%に比べ、0.3ポイント減少しました。なお、日本国内代理店経由で販売した海外顧客への売上を海外売上高比率に含めた場合は、77.3%となり前期の77.4%と比べ0.1ポイント減少しました。
株主の皆様への還元といたしましては、年間配当金を45円とし、連結配当性向は36.8%となっております。
セグメントごとの業績は、次のとおりであります。
日本
日本では、生成AI関連など先端パッケージ基板向け製品の需要は拡大基調で推移しました。パソコンに関連する製品の需要は回復の兆しは見られるもののその勢いは力強さに欠けました。従来型サーバーにおいては昨年までの投資抑制が方向転換し、需要は復調に転じました。一方、ディスプレイ向け薬品は関連する電子機器の生産動向を受け当期前半は堅調に推移したものの後半には在庫調整の影響を受け減速しました。日本代理店経由で販売している韓国向けにおいては、メモリー向けパッケージ基板は回復途上にあり、一方、ディスプレイ向け薬品は日本と同様に推移しました。その結果、当連結会計年度の売上高は72億6百万円(前期比16億62百万円、30.0%増)、セグメント利益は34億77百万円(同22億61百万円、185.9%増)となりました。
台湾
台湾では、ディスプレイ向け薬品は年後半に減速したものの、先端パッケージ基板の需要増加や従来型サーバーの投資回復、スマートフォンの緩やかな回復によるパッケージ基板の需要により、当連結会計年度の売上高は33億26百万円(前期比7億6百万円、26.9%増)、セグメント利益は4億円(同91百万円、29.7%増)となりました。
香港(香港、珠海)
香港(香港、珠海)では、スマートフォンや車載に関連する製品の需要が緩やかな回復基調にあり、当連結会計年度の売上高は23億5百万円(前期比5億88百万円、34.3%増)、セグメント利益は3億48百万円(同1億8百万円、45.1%増)となりました。
中国(蘇州)
中国(蘇州)では、スマートフォンに関連する製品需要の回復や当社主要顧客におけるパソコン需要の取り込みにより、当連結会計年度の売上高は35億95百万円(前期比9億24百万円、34.6%増)、セグメント利益は5億円(同1億42百万円、39.7%増)となりました。
欧州
欧州では、顧客により需要動向に濃淡が見られるものの、当連結会計年度の売上高は9億89百万円(前期比92百万円、10.4%増)、セグメント利益は66百万円(同6百万円、11.6%増)となりました。
タイ
タイでは、電子基板メーカーの東南アジアにおける設備投資が活発化するなか、主に衛星通信やパッケージ基板用途において当社主要顧客における製品需要の拡大が牽引し、当連結会計年度の売上高は8億10百万円(前期比2億40百万円、42.1%増)、セグメント利益は1億1百万円(同95百万円、1,476.1%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前連結会計年度末に比べて35億64百万円増加し、102億54百万円となりました。
当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、42億円(前期比22億58百万円増)となりました。
これは主に税金等調整前当期純利益が46億69百万円、減価償却費が8億16百万円、および、法人税等の支払額が9億50百万円計上されたこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は、51百万円(前期は13億97百万円の使用)となりました。
これは主に有形固定資産の取得による支出が7億29百万円、投資有価証券の売却及び償還による収入が1億円、定期預金の払戻による収入が純額で9億71百万円計上されたこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、8億73百万円(前期比9億円減)となりました。
これは主に配当金の支払が8億49百万円計上されたこと等によるものであります。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、電子基板用薬品の製造原価によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
当社グループ製品は見込生産を主体としており、総販売高に占める受注生産の割合は僅少のため受注実績の記載を省略しております。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、決算日における資産・負債の報告数値および報告期間における費用の報告数値に影響を与える見積りおよび仮定設定を行っております。経営陣は、重要な会計方針の一部、具体的には貸倒引当金、賞与引当金、投資の減損、繰延税金資産、退職給付費用等に関する見積りおよび判断に対して、過去の実績や決算日現在の状況に応じ合理的だと考えられるさまざまな要因に基づき、継続して評価を行っております。ただし、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの当連結会計年度の財務状態は、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
今後もさらなる会社の財産の有効な活用に取り組む所存であります。
具体的には連結ROEは、10%をベースに持続的改善を図り、連結配当性向については30%を中期的目標といたします。
当社グループの当連結会計年度の経営成績は、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりでありますが、損益区分ごとの分析は以下のとおりであります。
売上高
当連結会計年度の連結売上高は182億34百万円となり、前期に比べ42億14百万円(30.1%)増となりました。そのうち薬品売上高は174億78百万円で、前期に比べ37億13百万円(27.0%)増となりました。主な要因は、生成AI関連など先端パッケージ基板向けに製品の需要が堅調に推移したこと、為替の影響や当社が関連する電子機器の生産が回復基調にあること等によるものであります。機械売上高は5億79百万円、前期に比べ4億67百万円(415.0%)増となりました。
売上総利益
当連結会計年度の売上総利益は111億1百万円となり、前期に比べ27億84百万円(33.5%)増となりました。売上総利益率は60.9%となり、前期に比べ1.6ポイント改善しました。主な要因は、薬品の出荷数量が増加したこと等によるものであります。
販売費及び一般管理費
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は65億39百万円となり、前期に比べ7億15百万円(12.3%)増となりました。主な要因は、人件費や旅費交通費、発送運賃の増加等によるものであります。
営業利益
当連結会計年度の営業利益は45億62百万円となり、前期に比べ20億69百万円(83.0%)増となりました。売上高営業利益率は、25.0%となり、前期に比べ7.2ポイント改善しました。
キャッシュ・フローの分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
また、当連結会計年度を含む5期間のキャッシュ・フロー指標の推移は以下のとおりであります。
(注) 自己資本比率 :自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率 :株式時価総額/総資産
債務償還年数 :有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
1 各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
2 株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数により算出しております。
3 営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを利用しております。有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
資金需要
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための原材料および部品の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費の営業費用によるものであります。営業費用の主なものは人件費、研究開発費および荷造運搬費等であります。また、これ以外に納税資金、利益配当金等も特定の時期に必要となります。
財務政策
当社グループは、運転資金および経常的な設備投資資金については手持資金で賄っており、工場建設等の大規模投資に関しましては、案件ごとに市場の金利情勢等に応じていくつかの選択肢から適切に資金調達を行う考えであります。
該当事項はありません。
当社グループは、電子基板や電子部品向け等を中心とする関連市場のニーズを先取りし、研究開発へ積極的に反映させ、迅速に製品化することによって、エレクトロニクス製品の進化・高度化に寄与していくことを基本姿勢と しております。当社グループにおける研究開発活動は、電子基板や電子部品向け製造用薬品の新製品開発・既存製 品改良を中心としておりますが、同時に既存以外の新事業分野に進出するための開発も進めております。 当社グループでは、提出会社従業員数(2024年12月31日現在277名)の約3割を研究開発業務に配員して、研究開発機能を提出会社に集中させることにより、研究開発活動の効率化を図っております。
提出会社では83名が薬品の開発およびその関連業務に携わっております。
提出会社の研究開発体制は、主に4つのグループが製品開発業務に当たっております。既存の製品の改良や技術サポートを行うグループ、新しい領域の開発を行うグループ、配線パターン形成用薬品の開発を行うグループ、金属と樹脂との接合技術を開発するグループであります。また薬品使用に適した機械・自動分析装置の開発業務を行うグループがあります。
このように、研究開発体制においては、テーマの進捗および市場ニーズの変化に適した組織により、迅速かつ柔軟に市場動向に対応できる体制を整えております。
当連結会計年度の研究開発費総額は
研究開発活動の基本方針は、さまざまな顧客ニーズに適した製品開発と品質向上を目指すことであり、その対象は高機能・高付加価値製品から顧客ニーズに合致した製品、あるいはコスト重視の製品開発まで多岐に渡っております。特に、IoTやAI、自動運転の分野等に関連する、高密度化や高周波、信号低損失(低遅延)、高信頼性、省電力化が求められる電子基板向け製品、スマートフォンやタブレット端末向けの電子基板やディスプレイ関連の製造用薬品の開発に注力しており、 最先端の技術に対応するよう研究開発活動を進めております。
当社の表面処理技術は、従来から当社が関わってきた分野のみならず、環境負荷低減を意識した他分野にも応用展開が可能と考えております。
今後もさまざまなニーズを敏感に捉え、さらなる用途拡大に向け、力を尽くしてまいります。 また、今後は基礎研究も進め、将来の表面処理に関するさまざまなニーズに対応する所存であります。