第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営方針・経営戦略等

 当社グループは、「わたしたちは、MROを中心とする包括的な商品とサービスを提供することを通じ、サプライヤー、そしてパートナーとともに、お客様の価値の創造と間接コストの削減を実現し、日本の産業の変革と再活性化に貢献します」を基本理念として掲げております。

 

 当社グループの対象市場は、多品種・少量かつ一件あたりが少額という特徴を持っており、当社グループの主要顧客である大企業グループにとって、①内部統制上の適切な購買管理と、②商品選定から、購買、支払までに至る購買プロセスコストや人手の削減、および③購買単価の低減は大きな課題となっています。一方、当社グループでは、MRO、FMの調達に特化したITシステムとサプライヤーの全国ネットワークを持ち、顧客グループからサプライヤーまでを含む多数当事者間のITシステムを相互接続するシステム運用能力を持つことから、多品種・少量・少額市場において、全ての取引当事者のDX(Digital Transformation)化を支援することができます。当社グループでは、このIT技術と事業の仕組みを用いて、多品種・少量・少額市場における「規模の経済」と「DX」を実現することを通じ、日本の産業界全体の効率化を実現するとともに、当社グループ自体の業績を向上させることを目指してまいります。

 

 また、「私たちが大切にすること」という企業グループ共有の価値観については、

 ・新しい価値の創造に向けた強い情熱

 ・変革を実現するための機動性と柔軟性

 ・全ての業務における卓越性と誠実性のたゆまぬ追求

 ・仕事を通じた一人ひとりの成長と幸福の実現

の4点を掲げております。

 

 当社グループの基本理念および私たちが大切にするものは、2006年に制定したものですが、現在もその経営の基本理念および企業グループとしての価値観に関する変更はありません。なお、英語版では以下の構成および文章となっています。

 

[Our Mission]

Revolutionize and revitalize Japan's industrial and commercial businesses through the creation of value and savings for customers with suppliers and partners as a comprehensive source of solutions for effectively managing MRO-related products and services.

 

[Our Values]

Passion for results that create value

Agility and execution that focuses on best outcomes

Excellence and honesty in all operations

Achievement of growth and fulfillment in both professional and personal lives

 

(2)経営環境

 MROの物販市場における近年の大きな変化は、個人および中小事業者向けのBtoC(個人向け)型オンライン販売の急速な普及です。株式会社MonotaROや株式会社ミスミグループ本社および株式会社大塚商会などの電子商取引のプラットフォームベンダーが、従来、MRO商品販売の担い手であった機械卸商社などのシェアを奪い、売上を伸ばしています。これは、個人および中小事業者向け市場において、それまでオンラインでMRO商品を買える適切な仕組みがなかったためと考えられます。一方、日本の大企業グループでは、以前より企業グループ毎に独自のITシステムを活用しており、また、それぞれ異なる社内ルールでMRO商品の購買を行っております。

 このような事業環境の下で、当社グループは、大企業グループの既存のITシステムと共存、あるいは一部機能を置き換えることが可能な電子購買プラットフォームを提供していることから、大企業グループ向けのMRO物販市場で、一定の地位を占めています。しかしながら、2021年の大企業向けMRO物販の市場規模は約1兆円(注)であると推計しているのに対して現状の当社グループのシェアは数%にとどまることから、需要開拓の余地は極めて大きいと考えております。特に、当社グループのお客様の中心である大企業グループの連結内部統制強化へのニーズは年々高まっており、多品種・少量・少額品に対する購買プロセスを子会社、関係会社を含む連結グループ会社全体でシステムの管理下に置くことができるという当社グループのITシステムと仕組みへの関心が自ずと高まると考えております。

 FM事業の顧客である国内の商業施設市場は、新型コロナウイルス感染症の影響で大きな影響を受け、2020年から2021年前半までは、それまでインバウンド需要に支えられてきた宿泊施設や都市部の小型店舗を中心に、新規の投資案件が激減しました。しかしながら、2021年後半から、その事業環境を逆に生かすテイクアウト店舗の開店・改装や、売れ筋商品の変化に対応した郊外店舗の売り場改装案件が増加し、新たなビジネスチャンスが生まれてきています。また、2022年後半に入ると、諸物価の高騰に対応したコストダウンの要請が強まる一方、インバウンド需要対応の投資案件が復活し始めるなど、市場の状況は半年から年の単位で大きく変化しており、その変化に即応し、機敏に新たな需要を取り込んでいく努力が重要となっています。

(注)株式会社東京証券取引所による調査レポート「2022年3月期決算短信集計結果」において、市場第一部の売上高又は営業収益の合計額(ただし、売上高又は営業収益におけるMRO商品の購入高の占める割合が小さく、購入額を推計することが難しい卸売業、銀行業、証券、商品先物取引業、保険業、その他金融業を除く)である約507兆円の0.2%を当社グループの市場として推計しております。なお0.2%については、当社グループMRO事業の売上高上位10社(当社グループのシステムの利用率が低い顧客を除いた順位)における最近連結会計年度の連結売上高(各社有価証券報告書より)と当社グループの当該顧客グループ向け売上高の割合より算出しております。なお、一定の前提及び外部資料に基づき推計しているため、実際の市場規模と異なる可能性があります。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営上の目標は、当社グループが提供するITシステムと仕組みを通じて、日本の産業界全体の効率化とDXを進めることを通じて、当社グループ自体も収益を上げることであり、その目標達成状況を計る指標は、当社グループのサービスの普及度を測れる連結売上高と当社グループの連結営業利益額となります。なお、MRO事業においては大手企業グループとの新規契約の獲得が大切ですが、契約時から本格的な売上計上時までの間のITシステム開発や相互接続に要するリードタイムが1~2年に及ぶケースが多いため、単年度の経営管理指標としては新規契約数を用いておりません。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の項目と認識しております。

 

①知名度および顧客からの信頼度の向上

 当社グループの新規顧客獲得の上での最大の障害は、当社グループの知名度と顧客からの信頼度の低さです。当社グループは、MRO商品購買の担当者には一定の知名度を得ておりますが、その他では一般的に知名度は低く、顧客である大企業グループの購買部門が、当社グループに購買に係る重要な機能を一括して委ねようとした場合に、顧客グループ内での当社グループの知名度の低さが、信頼度の低さへとつながり、当社グループのサービスの採用過程での障害となる例があります。

 

 また、当社グループの知名度が低いために、顧客グループのシステム切り替え時に、新規参入の機会を逃す例もあります。当社グループの知名度が高ければ、顧客グループのシステム切り替え時に、当社グループへの問い合わせ等から当社グループが商談の存在を知る可能性が高まりますが、知名度が低ければ、結果として当社グループが商談の存在に気付かず、その段階でビジネスチャンスを失うこととなります。

 

 この知名度および信頼度の低さについては、当社グループが継続的に高品質のサービスの提供することを通じて、潜在顧客を含めた顧客からの信頼度向上に努めるほか、当社グループのサービス展開に関するプロモーション活動の強化にも努め、顧客側の認知度向上を図ってまいります。

 

②IT人材、およびコンサルティング人材の中途採用での獲得

 当社グループの新規顧客開拓の速度が遅い理由の一つは、顧客企業グループのニーズを的確に捉えた提案を行い、かつ、その提案を顧客グループのITシステムと当社グループの提供するITプラットフォームとの連携により実現するIT設計のスキルのある人材が不足していることです。具体的にはITおよびコンサルティングスキルを持つ人材の不足が原因ですが、顧客が当社グループに期待する提案は、かなり高難度なものとなることが多いため、それができる人材の獲得は容易ではありません。

 優秀な新卒社員の新卒段階での定期採用と、積極的な教育を進めてはおりますが、高スキルのIT、コンサルティング人材を育成するためにはかなりの年月を要するため、急速な顧客の拡大を進めるためには、優秀な人材の中途採用が必須となります。当社グループは中途採用については経験豊富ですが、優秀な人材の獲得には当社グループ自体の魅力を更に高める必要があり、当社グループがコンプライアンスや財務基盤において不安がないことに加え、成長企業であることを、対外的に、幅広く、かつタイムリーに示していくことが不可欠と考えています。

 

③新規顧客の獲得

 当社グループと取引を開始した顧客の解約率は非常に低く、当社グループの売上拡大の鍵は新規顧客の開拓につきます。しかしながら、当社グループの中心顧客層である大企業グループが当社グループのシステムの導入を検討する機会は、顧客側で稼働中のITシステムの更新時期にほぼ限定されます。大企業グループの潜在市場規模は大きいものの、個々の顧客の市場に参入可能な時期は、一般的なITシステム更新の周期である5~6年に一回と限定されており、そのシステム更新時期を把握してタイムリーに提案を行い、採用されることが当社グループの事業拡大の要件です。

 

 FM事業においては、必ずしもITシステムの更新がサービス切り替えの要件になる訳ではありませんが、他の理由によって、同様にサービス切り替えの機会が提供される時期は限定されます。他の理由とは、既存のサービス提供者が何らかの理由によって顧客の信頼を失いつつある状態や、顧客が当該サービスを受けるための社内の仕組みを変更しようとしている時期であり、不定期でのチャンス到来となります。そのチャンスをタイムリーに捉えなければ、従来のサービス提供者が優先して継続業者となるため、継続的な顧客との接触による情報収集と、タイムリーかつ説得力のある提案が必須となります。個別の環境変化は顧客やビジネス形態のポートフォリオによって吸収しつつ、商業店舗チェーンの開店・改装工事の「材工分離」(資材供給と施工を別の業者が行う形態)による資材供給集約化の効果である管理の一元化と調達コストの低減や、全国をカバーする修繕業者のネットワークによる均一なサービス提供と管理の一元化を訴求し、新たなビジネスチャンスを獲得してまいります。また、FM事業の分野では、業界全体でITシステムの活用は極めて限定的で、人手によるサービス提供が主流です。当社グループは、ITシステムへの深い理解と経験を競争力の源泉としておりますので、将来的には、FM事業においても、クラウドサービスやIoT技術の活用により、業務の効率化と顧客のニーズ獲得、深耕を進めて行く方針です。

 

 当社グループはこれらの課題を解決し、従来以上に新規顧客の開拓に注力して、売上の拡大およびそれに伴う営業利益の拡大を目指してまいります。

 

④財務体力の改善

 当社グループのバランスシートにおいては、休前日を除き、売上債権と棚卸資産残高の合計額と買掛債務がほぼバランスしており、帳簿上の運転資金は債権債務相殺でゼロとなっています(休前日のみ買掛債務が売上債権を上回ります)。しかしながら、月末日の支払の大部分は前日までに送金明細を銀行に指示する総合振込の振込予約を用いて支払うため、実際には月商の半分程度の自己資金を、月末日の前夜迄に銀行の普通預金口座に置くことが必要になります。

 

 一方、当社グループの株主資本の大部分はITシステムのソフトウエア(無形固定資産)の取得に使われています。本来は、累積利益により生み出された資金で、休前日分を含めて運転資金は足りるはずなのですが、当社グループでは、いわゆる内部留保の大部分が当社グループの事業を支えるITシステムへの投資に充当されているため、銀行借入が必要な状況が継続しています。

 

 今回の公募増資資金により、このITシステム投資の原資が得られ、資金問題は成長の制約条件ではなくなる予定です。また、将来は、システム投資の水準が一定額で頭打ちになり、減価償却費と新規投資額がバランスする結果、投資資金の問題は解決する見込みです。ただし、将来の不測事態に備え、金融機関からの一定額の借入は、資金コストを見ながら継続する予定です。その分、総資産効率(ROA)が悪化しますが、金利コストが極めて低い状態が継続すれば、自己資本利益率(ROE)への影響は少ないと考えております。

 

⑤コンプライアンスの遵守、および適時適切な情報開示

 当社グループは、会社設立後、早い段階からコンプライアンス遵守の管理体制を構築してきたほか、適時適切な情報開示を行うため、上場企業の開示業務の経験者を採用しております。しかしながら、開示基準やコンプライアンスの遵守項目は日進月歩で進化しており、その変化に着実に追従して、正確な手続と開示を漏れなく行うことは高難度な業務です。当社グループでは、この点につき、今後、更に経験、知見を深めるとともに、専門家の的確なアドバイスを随時取得することにより、迅速かつ誤謬のない適切な開示に努めてまいります。

 

2【事業等のリスク】

 当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性のあるリスクのうち、投資者の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものがありますが、これらに限定されるものではありません。また、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 なお、本文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるリスクを全て網羅的に記載したものではありません。

 

(1)事業環境に係るリスクについて

 

①市場全般の景気変動によるリスク

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、MRO事業、FM事業分野に関する取引先顧客グループのニーズ全般に応えることを目指しており、当社グループと取引がある顧客グループ内での当社グループのシェアは、拡大傾向にあることに加えて、景気悪化時においても顧客企業における間接材の需要は継続的に発生すること等から、当社グループの業績は相対的に景気変動の影響が受け難い傾向にあるものと考えております。しかしながら、国内における景気動向の変化に伴い、当社グループの主要な顧客対象である大企業の企業グループの業績が急速に悪化する可能性は否定できず、かかる場合において、当社グループが迅速かつ十分に対応できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、当社グループではマクロ景気や特定市場の景気が落ち込む局面においても、その影響をカバーできるだけの新規顧客の獲得を続け、景気悪化局面においても売上成長を確実に維持することを目指しています。

 

②新型コロナウイルス感染症拡大に関するリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:3年以内、影響度:中)

 日本国内の新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、当社グループでは、商業店舗の活動が低迷することによるFM事業への需要減と、新型コロナ対策商品の需給バランスの崩れによる商品の欠品や納期遅れを経験しておりますが、この影響は管理可能な範囲にとどまりました。当社グループ内の日常のオペレーションに関しても、職場への出勤率が10%弱となったとしても十分に営業することが可能であることが確認できており、テレワーク対応やコールセンターの電話転送対応等のインフラについても十分に整備しております。一方、当社グループの売上は、外需(輸出)部門や海外のサプライチェーン活動の影響を受けやすい顧客や商品に依拠している場合が多いため、新型コロナウイルス対策でのロックダウン等、グローバル経済の生産基地における新型コロナウイルスの影響は、より大きくなる可能性があり、結果的に当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため当社グループでは、そのようなリスクが顕在化した際にも成長が維持できるだけの新規顧客の獲得を継続することを目指しています。

 

③地政学的なリスク顕在化に伴う業績変動リスク

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 現在、世界経済において、新たに発生する可能性のある最も大きな地政学的リスクは、中国と台湾との間で武力衝突が発生することであり、これにより台湾における半導体製造が停止し、世界中のサプライチェーンが麻痺する事が考えられます。万一、このようなリスクが顕在化した際には、世界中の生産活動が急激に縮小するため、当社グループにとっても、新規顧客の獲得を続ける等では対応しきれない需要減が発生する可能性があり、結果的に当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、台湾と地理的に近い日本においては、それ以外にも紛争の影響が発生することが予見され、事態は更に悪化するリスクがあります。この種の地政学リスクの顕在化に対しては、当社グループの日常のオペレーション施策では十分な対応ができないため、一定の余裕資金を持ち、固定費を常に低い水準に置くことにより損益分岐点を引き下げ、更に固定費の変動費化が可能な工夫をしておくことで対応してまいります。

 

④ESG対応の遅れによるリスク

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:5年以内、影響度:中)

 近年、ESG(Environment、Social、Governance)に関する関心の高まりから、原材料の分野では、製造地や製造方法、製造過程における二酸化炭素の発生量などの適切な表示が重要になってくることが想定されています。当社グループの扱うMRO事業の分野は、商品の品目数は膨大な割に、各商品の消費量は小さいことから、現時点においては、顧客グループから、商品毎にESGに関する表示や対応を行うことは求められていません。しかしながら、将来、ESGに関する表示のみならず、ESG活動全般に対するコミットメントが、当社グループの事業継続の要件になることが予測され、その対応が遅れることは当社グループの事業展開上のリスクとなり、将来の業績にマイナスの影響を与える可能性があります。当社グループではそのための対策の検討を開始しており、今後、当社グループならではのESG対応施策を実行すべく、努力してまいります。

 

⑤優秀な人材の採用、および定着のリスク

(発生可能性:高、発生可能性のある時期:5年以内、影響度:中)

 当社グループにおける新規顧客獲得の局面では、顧客企業グループの課題を深く理解し、その課題解決に向けたソリューションとして、当社グループの財・サービス購入の仕組みとITシステムの導入を一括して提案する必要があり、コンサルティング能力に優れた人材が必要です。また、バックオフィス業務においても、最新のIT技術による不断の生産性向上施策を立案し、実行に移せる人材が必要であり、優秀な人材の確保が極めて重要です。一方で、日本全体のDX化の推進が産業界全体のテーマとなっているため、現在、優秀なDX人材の採用と、採用後の離職防止のハードルは急激に高くなりつつあります。このDX人材の確保が難しいことに対して、採用活動の強化と教育研修の充実を推進しておりますが、適切な人材を十分に確保できず、あるいは在職中の従業員が退職するなどした場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)当社グループ事業固有のリスクについて

 

①当社グループと競合するシステムの普及に伴う解約リスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループの主要顧客層である大企業グループ向け市場で、当社グループのMRO事業向けITシステムと直接競合するシステムや事業者は存在しません。しかしながら、当社グループの主要顧客である大企業グループは、SAP SEやOracle Corporationなどが提供する基幹ITシステムであるERP(Enterprise Resource Planning)を採用し、そのERPは購買管理の付加機能を年々充実させており、当社グループの専用システムの付加機能とオーバーラップし始めているため、市場においても部分的な競合が発生しています。当社グループでは、このような顧客の基幹ITシステムの機能追加に対応し、更に各種機能を充実させることによって専用システムの優位性を維持するとともに、基幹システムとの相互接続も実現して、競争しつつ共存する戦略を採っています。ただし、その戦略が奏功しない場合には、顧客の基幹システムの機能追加に伴って、当社グループの専用システムの利用と、そのシステム上でのMRO商品売買契約の解約がなされる可能性は否定できず、かかる事態となった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②システムのグローバル統一化に伴う解約リスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 前項で述べた顧客グループの基幹システムの最大の特徴は、世界中の拠点を同一のシステムでカバーできるという点です。一方、当社グループのシステムは、日本および中国においては活用が可能ですが、まだ、それ以外の地域での活用ができておりません。複数言語、通貨対応仕様の開発は完了しておりますが、海外でのシステム展開のためには、通信距離を短縮するための現地のクラウド上へのシステム展開や、現地対応のサポートデスクが必要であり、それらの海外投資は、現時点においては時期尚早として具体的な計画がありません。したがって、早急にグローバル対応を求める顧客グループが出てきた場合には、その対応に苦慮する事態が予想され、短期間で海外対応の準備を行う場合には、システム自体と現地サポート体制の構築に緊急投資が必要となり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③特定顧客への依存に伴う業績変動リスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループの売上の10%以上を占める顧客グループ、もしくはフランチャイズ企業を含む取引グループはアスクル、ならびに日本マクドナルド株式会社およびそのフランチャイズ企業の2グループのみですが、他にも大手の顧客グループが多数存在します。当社グループと大手顧客グループとはITシステム間の密な連携を行っている例が多いため、当社グループのサービスに関する解約率は低く、突然の解約はきわめて稀ですが、当該顧客グループからの解約があった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ITシステム費用の高騰による業績悪化のリスク

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、MRO商品と役務を販売するために常に最新のIT技術を用いたシステムを顧客グループおよび仕入先(サプライヤー)に提供しています。その結果、ITシステム提供の専門業者と一部の領域では競合が発生しており、常に専門業者と同水準のシステムプラットフォームを開発し、取引先に提供していく必要があります。一方で、近年、当社グループのITシステム開発費と運用費は高騰しており、固定費が増加して損益分岐点も上昇しています。そのため、当社グループでは積極的な拡販を行い、売上増による収益性改善を目指していますが、固定費増に対する売上増が不十分な場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤無形固定資産における減損のリスク

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループの無形固定資産は、その大部分が内製ソフトウエアです。市場競争力を強化・維持するためソフトウエアへの投資を進めており、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた開発費用をソフトウエア(ソフトウエア仮勘定含む)として無形固定資産計上しております。

 これらのソフトウエアは業務遂行のために基本的なインフラストラクチャーであり、事業継続に必須なものですが、当該ソフトウエアシステムで営む事業が赤字に陥り、キャッシュを回収できない局面が継続すると、事業用の無形固定資産につき、会計上の減損を実施する必要がでてくる可能性があります。また、当社グループの内製ソフトウエアは、アジャイル型開発の手法(仕様や設計の変更があり得る前提で、当初から厳密な仕様は決めることをせずに、小規模な開発に着手し、機能単位での実装と評価を繰り返しつつ、徐々に全体機能の開発を進めていく手法)で開発しておりますが、試作・評価の過程で大幅な仕様変更が必要となった場合等に、開発中のソフトウエアが実用に供されずに廃棄される可能性があります。

 ソフトウエアの開発に際しては、市場性等を慎重に見極めておりますが、市場や競合状況の急激な変化などにより、利用が見込めなくなった場合や、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった場合には、除却あるいは減損の対象となる可能性があり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥法規制の変更に伴う取扱品目減少のリスク

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループはFM事業において大型工事も請け負えるよう、建設事業に関する許可を東京都より取得しております。それ以外にもMRO事業において幅広い商品を扱うために、古物商の許可や医療用機器販売に関する許可等、商品販売に必要となる様々な許認可の下で事業を行っております。これらの許認可の義務に違反した場合や、許認可の更新が遅れた場合には、当該事業を一時停止する必要があり、当社グループの商品やサービスの品ぞろえが不十分となります。当社グループはコンプライアンスの重要性を強く認識し、既存法規則等の規制はもとより、規則の改廃、新たな法規制が生じた場合も適切な対応を取るとともに新規商品を取り扱う際に、抵触する法規制の確認を行う体制の拡充を推進してまいります。しかしながら、何らかの事由によりこれらの法規制に抵触する等問題が発生した場合、またはこれらの法規制の改正により不測の事態が発生した場合は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦サプライヤーおよびパートナー会社との取引継続に関するリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループが商品を仕入れるサプライヤーや、当社グループが業務委託を行うパートナー会社の中には、当社グループとの取引規模が大きい事業者が一定程度存在します。当社グループのビジネスの仕組みは、特定のサプライヤーやパートナー会社への質的な依存が小さく、随時、取引先を変更できる構造にはなっているものの、比較的取引額の大きなサプライヤーやパートナー会社の変更には一定の時間が必要となるため、先方から突然の契約解約の申し入れがあった場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧大手取引先の破綻による代金貸し倒れのリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループのFM事業においては、ビジネスホテルの内装工事等で、1億円以上の大型案件を受注する場合があります。これらの工事案件においては、基本は完工・検収後の支払となるため、売掛金の金額も億円単位となり、万一、顧客企業が破綻した場合には、代金貸し倒れのリスクも億円単位となるため、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような事態を避けるため、常に与信管理には細心の注意を払っており、売掛金の貸し倒れについては、会社全体で過去5会計年度の貸倒総額が10万円未満と、ほぼ無事故での事業運営を行っております。ただし、過去の与信管理が適切であったからといって、将来も大きな貸し倒れが発生しないとは言い切れず、貸し倒れのリスクについては、常に細心の注意を払ってまいります。

 

⑨事故発生のリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループのFM事業のうち、建設および修繕においては商業施設の工事を行うため、場合により役務サプライヤーに委託して高所足場を組む作業を行います。このような大型工事においては、道路の使用や占用を行うため、現場の通行人に事故が発生する可能性があります。また、工事の作業員自身にも転倒事故や落下事故の可能性、更には現場に向かう途上での交通事故などの発生の可能性があります。これらの人身事故は、どれほど安全対策をとっても偶発的に発生する可能性があり、その事故の内容によっては当社グループの信用の失墜につながり、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事態を避けるべく、当社グループでは工事の安全確保に最大限の注意を払い、また、役務サプライヤーへの教育の徹底等安全確保のための体制を常に見直す等、労働災害を未然に防止するよう努めております。

 

⑩アスクルとの関係について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 アスクルは、本書提出日現在、当社の議決権の83.9%を保有しているため、当社の親会社に該当いたします。

 当社グループの知名度が高ければ、顧客グループのシステム切り替え時に、当社グループへの問い合わせ等から当社グループが商談の存在を知る可能性が高まります。また、新卒社員を含め、優秀な人材の当社グループへの採用には、当社の上場企業としての信用が大きく寄与します。更に、今後の成長加速のためには、クラウド環境上に次世代ITシステムを構築する必要があり、そのための資金が必要です。従って、当社グループの更なる成長を実現するためには、上場会社グループの子会社ではなく、当社自体の上場を通じて、知名度・信頼性を向上させるとともに、投資資金も獲得する必要があるとの判断に至り、その手段として株式上場を選択しております。

 一方、アスクルは、当社株式上場後においても当社の総議決権数の過半数を保有する予定です。よって、アスクルは株主総会の普通決議を必要とする事項(例えば、取締役の選解任、剰余金の処分や配当等を含みますが、これらに限りません。)に関する決定権及び拒否権を有することになり、株主総会の承認を必要とする事項に関し、アスクルが当社の意志決定に影響を及ぼす可能性があります。

 このような立場の違いはあるものの、当社とアスクルは業務・資本提携契約を締結し、両社が得意とする領域での強みを生かした提携、協力関係を構築することにより、両社の企業価値向上を目指すことに合意しております。当該提携契約においては、両社それぞれの企業価値の増大を通じて、両社が属する企業グループ全体の価値向上が実現されることに鑑み、提携契約期間中、かかる親子会社としての資本関係を維持するものとしておりますので、アスクルは当面の間当社の議決権の過半数を保有する方針であります。その他の関係は以下のとおりとなります。

a.親会社における当社の位置付け及び親会社からの独立性の確保について

 当社グループは、親会社グループにおいて、eコマース事業に区分されております。

 同社グループにおいて当社グループと同様の事業を展開しているグループ企業は存在しますが、当社グループと親会社グループでは、顧客へのサービス提供にあたり担っている役割等が異なるため類似性が低く、親会社グループ各社によって、当社グループの自由な事業活動や経営判断が阻害されるような状況は生じておらず、自らの意思決定により事業展開しております。

 また、親会社からの独立性の確保に向けて、上場取引所の定めに基づく独立役員として指定する独立社外取締役2名が就任しており、取締役会においてより多様な意見が反映される状況にあります。なお、当社がアスクルに対し事前承認を必要とする事項はなく、またアスクルが法令等(東京証券取引所の定める有価証券上場規程を含む)に基づく開示に必要な情報以外は報告を求められておらず、独立性・自立性を確保しております。

b.当社との人的関係について

 当社の役員(取締役5名、監査役3名)のうち、取締役1名はアスクルの取締役を兼任しております。豊富な経営知識から、当社グループ事業に関する助言を得ることを目的として招聘したものであります。なお、アスクルからの出向者等の受け入れはなく、今後も原則として同社グループからの出向者の受け入れは行わない方針であります。

c.当社との取引関係について

 当社はアスクルとの取引として、アスクルの顧客に対する商品販売及びアスクルを物品サプライヤーとした商品仕入を行っています。これらの取引については、親会社からの独立性確保の観点も踏まえ、第三者取引と同様の一般的な取引条件で行っております。取引条件の適切性を確保するため、当社が定める関連当事者取引管理規程に基づき、取引開始前に取引の相手方が関連当事者等に該当しないかを主管部門である人事総務グループが確認します。その後、取引の合理性、妥当性、適法性等について、出席した独立社外取締役および監査役に意見を求めた上で、取締役会で決議するものとしております。また、継続的に発生する取引は過去の取引実績から予め取引想定額等を定め、新規取引と同様に合理性、妥当性等の審議を行い、取締役会にて実施可否を決議しておりますが、取引の開始後においても定期的なモニタリングを実施のうえ、取引想定額の超過等が見込まれる場合、あらためて取締役会にて決議するものとしております。

 当社グループの売上高のうち17.5%(2021年12月期)は、アスクル向けです。この販売ルートは、アスクルから同社の特約店である販売エージェントへ販売され、そこから多数のエンドユーザーへの再販が行われる再販チャネルです。多数のエージェントやエンドユーザーが関係する取引ルートですので、この購入契約の全てが解約される可能性は低いと考えておりますが、一部の商品につき、アスクルが当社の仕入先から、直接、当社を介さずに仕入れることは可能です。その場合は、アスクルにとって、当社が仕入商品に対して行っている電子カタログの整備等の作業を自ら行う必要が発生しますが、アスクルによる直接の購買を禁止する契約はございませんので、アスクルが当社を介さない商流へと取引ルートを変更する可能性があります。

 また、当社グループは、アスクルの取り扱う商品を仕入れています。この購買ルートは、当社グループの顧客が選択したことに伴うアスクルに対する仕入取引であり、顧客がアスクルの取り扱う商品を選択する限りにおいて当該取引が発生しております。

 従って、当社グループとアスクルは営業取引上重要な関係を有していることから、アスクルと当社グループの関係の変化によって、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)その他

 

①コンプライアンス違反による信用失墜のリスク
(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは会社設立以来、各種コンプライアンス上の法令、慣習、常識を厳守すべく、各種規程の整備やグループの役職員への継続的な教育等、最大限の努力を重ねてまいりました。しかしながら、コンプライアンスのルールは年々、高度化し、深化していることもあり、法令の改正等による事業活動の影響を通じて、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、複数のヘルプラインを常備して最新の法令および各種ルールに対する情報収集に努めるとともに、四半期毎のコンプライアンス委員会において、最新の状況を確認し、更なる改善を目指すべく、意識の高揚を図っております。

 

②システム障害やサイバー攻撃によるリスク
(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、電子商取引プラットフォームを取引先に提供しており、そのITシステム上で取引を成約させています。これらの基幹システムのハード、ソフトの障害や、専用線を含むネットワークの障害、利用中の外部クラウドサービスのインシデント、外部からのサイバー攻撃、コンピューターウィルスの侵入とその活動等により、ITシステムの停止、破壊、情報の誤りや改ざん、あるいは流出といった事態が引き起こされる可能性があります。その場合には当社グループの事業の一時的な停止や当社グループのサービスに対する信用の失墜が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これらの事態を防ぐべく、当社はISMS(情報セキュリティマネジメントシステム、ISO/IEC 27001)の認証を取得して、組織的にシステムと情報の安全性を維持し、改善する活動を行っております。また、顧客に提供する電子商取引システムについては、毎年、第三者機関によるセキュリティ診断を受け、最新技術を反映した安全対策の追加実装を継続しております。しかしながら、標的型メールを経由したランサムウェア等の悪意のある攻撃を完璧に防ぐことは難しく、的確な防御と同時に、システムが被害を受けた場合の対応についても事前に想定し、代替システムの立ち上げ策の検討等を重ねております。

 

③情報漏えいにより信用を失墜するリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、事業展開に必須となる取引先の機密情報や、稀には個人情報をお預かりするとともに、当社グループ自体の機密情報を保有、管理しています。これらの情報の外部への流出、破壊、改ざん等を防止すべく、当社グループ全体で、委託先を含めた管理体制を構築し、各種規程の整備やグループの役職員への継続的な教育を行っております。しかしながら、万一、当社グループの役員ないし従業員の故意や過失により、これらの情報の外部への流失を発生させた場合には、当社グループの信用低下のほか、被害を受けた事業者や関係者による損害賠償の請求を受ける可能性があり、その場合は当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。更に、情報流出の原因調査の過程においては、通常業務の遂行に多大な影響を受ける可能性があります。

 

④事業継続計画(BCP)に関するリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは事業継続に関する不測の事態に対する事業継続計画を立案しておりますが、最大級のリスクの一つとして、事業拠点である事業所やIT機器を置いているデータセンターが、地震、火災等によって稼働が停止する事態を想定しています。このような場合、当社グループのシステムは、災害時に即時にバックアップシステムに切り替わるホットスタンバイにはなっておらず、一定の時間内に代替システムを立ち上げるコールドスタンバイ方式になっています。このコールドスタンバイからのシステム立ち上げの過程において、想定された時間内に代替システムを立ち上げることに失敗した場合、当社グループは顧客からの信頼を失い、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤第三者の知的所有権を侵害するリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループの業界においては、特許や実用新案の取得例は稀であり、これまで知的所有権に関する大きな紛争例はありませんでした。しかしながら、今後のIT技術の進歩によって、当業界においても有力なソフトウエア特許やビジネスモデル特許が申請される可能性があり、その特許の成立や侵害警告をめぐる紛争が発生する可能性があります。当社グループではそのような事態を避けるために、自社による特許サーチや自社特許の申請準備を開始しておりますが、第三者から特許権侵害や商標権侵害を理由とする損害賠償請求や差止請求を受ける可能性が完全には否定できず、その場合には、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥潜在株式の顕在化による1株当たりの指標悪化のリスク

(発生可能性:高、発生可能性のある時期:5年以内、影響度:中)

 当社グループは、当社グループ役職員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、今後も継続的に実施していくことを検討しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値および議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、新株予約権による潜在株式は979,000株であり、発行済株式数8,273,500株の11.8%に相当します。これらの新株予約権には行使条件が未達成のものや、行使期間が未到来のものが含まれていますが、全ての行使があった場合、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。

 

⑦訴訟等に関するリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:中)

 当社グループは、サービスの提供にあたって法令遵守の徹底及び取引先とのトラブル回避に努めており、本書提出日現在において提起されている訴訟等は発生しておりません。しかしながら、今後何らかの事由により、訴訟等が発生した場合、これらの訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、このような事態を避けるため、コンプライアンス委員会における研修等を通じて役職員のコンプライアンス意識を高めるほか、取引先等との間で良好な関係の構築に努めております。

 

⑧調達価格に関するリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:低)

 当社グループが販売している商品は、仕入商品の価格変動や市場・環境変化等の影響を受けた場合、速やかに価格転嫁を行うことで利益の確保を行っております。しかしながら、様々な要因によって販売価格がお客様の購買意欲にそぐわないほど高騰した結果、需要が減退した場合には当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、有事においても商品を適正な価格で安定的に供給できるよう仕入ルートの確保に努めております。

 

⑨自然災害等に関するリスク

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:低)

 当社の本社は東京にあり、当地域内において地震、水害等の大規模災害が発生することにより拠点が被害を受けた場合、また当社施設内において、クラスターが発生する等、当社の想定を超える異常事態が発生した場合には、通常勤務が困難になることによりサービスレベルが低下する可能性等があり、その内容及び結果によっては当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このような事態を避けるため、勤務場所の分散化、リモートワーク時における安否確認方法の確立など異常事態が生じた場合でもできる限り業務への影響を低減することに引き続き努めてまいります。

 

⑩当社株式の流通株式比率について

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定無し、影響度:低)

 当社は、東京証券取引所への上場を予定しており、上場に際しては公募増資及び売出しによって当社株式の流動性の確保に努めることとしておりますが、東京証券取引所の定める流通株式比率は新規上場時において25.2%にとどまる見込みです。当社は、上場後の流通株式数の変動の動向を注視し、必要に応じて主要な株主に保有株式の売出し等にご協力をいただくなど、当社株式の流動性向上に努めてまいる方針です。しかしながら、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社および連結子会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 第12期連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)

 当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染者の全世界での増加や、それに伴う人手不足や物流混乱、地球環境問題への意識の高まりに起因するエネルギー価格の高騰、海外の金融引き締め開始による円安の進行等、マクロ経済面を中心に当初想定外の事態が次々に発生しました。

 

 BtoB(対事業者)向けに、物販およびサービスの提供を行う当社グループの業態では、このような国内顧客の苦境を反映し、本来の潜在力よりも需要が大きく減少しています。特に、サービス業向けでは、顧客の営業の制限や時短の影響およびその結果としての余裕資金の減少を受けて、需要全体の減少に直面しています。このような経済状況、事業環境のもとで、当社グループは、堅調を維持している製造業向けの需要を確実に取り込む一方、サービス業向けでは、人流抑制や行動制限の影響で商業店舗の改装需要が大きく減少する中で、テイクアウトに強い外食業態の新店・改装需要を取り込み、宿泊施設の改装工事減を物流施設の電気工事増でカバーするなど、業績が好調な特定のサービス事業者向けの売上を伸ばしました。

 その結果、当連結会計年度の業績は、売上高379億48百万円(前年同期比17.0%増)、営業利益8億64百万円(同16.6%増)、経常利益8億27百万円(同15.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5億10百万円(同0.9%増)となりました。なお、経常利益の前期比に比べ当期純利益の前期比増分が小さい理由は、DX(デジタルトランスフォーメーション)化推進のために、クラウド上のシステム開発や、第三者が提供するクラウド上のアプリケーションを積極的に活用する方針に転じたため、それ以前に開発を行っていたデータセンター内で稼働するレガシー(従来型)ソフトウエアおよびソフトウエア仮勘定の除却を行う等、資金支出を伴なわない特別損失1億2百万円を計上したためです。

 

 各セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

<MRO事業>

 MRO事業の売上は282億63百万円(前年同期比15.0%増)と成長を継続し、セグメント利益は5億26百万円(同2.7%増)と増収増益の結果となりました。当社グループのMRO事業の主な顧客は国内製造業であり、新型コロナウイルス感染症の影響を脱しつつある欧米の強い需要に牽引された顧客の工場稼働は堅調でした。新型コロナウイルス感染症の影響等で顧客が生産に使う部材が不足し、それに伴って当社グループが扱うMRO商品に対する需要も減少するリスクがありましたが、結果的には増収となりました。また、素材価格の上昇等に伴い、当社の仕入価格が上昇し、当社グループの粗利額が減少するリスクがありましたが、当連結会計年度に関しては、大きな影響がありませんでした。一方、前連結会計年度の第4四半期に稼働を開始したMRO事業向け新ITシステムの減価償却の開始等に伴い、当連結会計年度のIT費用が月額で10百万円程度増加したことにより、増収による限界利益増のかなりの部分を吸収してしまい、セグメント利益は2.7%の増益にとどまりました。

 

<FM事業>

 FM事業の売上は95億86百万円(前年同期比22.8%増)と増収であり、セグメント利益も2億64百万円(同64.6%増)と増収増益の結果となりました。テイクアウト需要に支えられたファストフード店舗の改装需要により売上、粗利増となり、また、新型コロナウイルス感染症対応で売れ筋が変わった物販商業店舗のレイアウト変更等に伴う受託作業の増加により、粗利益率も改善しました。宿泊施設改装等の工事需要の減少は、物流施設の電気工事増で一部をカバーしました。結果として、新型コロナ感染症の影響下でサービス産業全体が厳しい状況の下にありながら、MRO事業以上のセグメント利益率の伸びを実現しました。

 

 第13期第3四半期連結累計期間(自 2022年1月1日 至 2022年9月30日)

 当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、日本国内では新型コロナウイルス感染症の影響による経済活動の制限が緩和されたものの、世界的な半導体不足やウクライナ情勢に伴う資源価格の高騰、中国内のゼロコロナ対策によるロックダウンの発生、急激な円安の進行など、依然として先行き不透明な状況が続いております。

 

 BtoB(対事業者)向けに、物販およびサービスの提供を行う当社グループの業態では、このような国内顧客の苦境を反映し、本来の潜在力よりも需要が減少しています。製造業向けでは、顧客における部材不足による生産活動の停滞を受けた需要減があり、またサービス業向けでは、顧客の営業の制限や時短の影響、およびその結果としての余裕資金の減少を受けて、需要全体の減少に直面しています。一方、その苦境を打開するために、一部商業店舗では、新たな事業環境に適応した売り場への改装などの取り組みが進んでおり、新規のビジネスチャンスも生まれています。

 このような経済状況、事業環境のもとで、当社グループ(当社および連結子会社)は、取り扱い商品の増加等により製造業向けの需要を確実に取り込む一方、サービス業向けでは、大規模施設の改装などの大型案件から、多店舗展開チェーンの小型店舗の改装などに注力分野をシフトし、総需要減のダメージを個別施策で補いました。

 その結果、当第3四半期連結累計期間の業績は、売上高317億22百万円、営業利益7億58百万円、経常利益7億10百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益4億97百万円となりました。

 

 セグメントの業績は、次のとおりであります。

 

<MRO事業>

 MRO事業においては、国内工場の稼働率が維持されていた製造業顧客の需要に支えられ、売上は堅調に推移しました。また、MRO事業向けITシステムの減価償却費の増や運用費の増はありましたが、一部の主要仕入先の商品を当社経由配送から仕入先からの直送に切り替え、配送リードタイムを短縮する物流改善を行ったことが、物流経費削減にも寄与しました。その結果、売上高は237億86百万円、セグメント利益は4億51百万円となりました。

 

<FM事業>

 FM事業においては、テイクアウト需要が好調な飲食チェーン店の改装や、大手コンビニエンスストアの食品売場改装などの案件数が増加しました。特に、大手コンビニエンスストア向けの案件は当社の人件費などの固定費を作業原価として、顧客の業務代行を行う形態であることから、取扱案件数が急増する局面においては利益率が上昇します。その結果、売上高は79億6百万円、セグメント利益は2億68百万円となりました。

 

② 財政状態の状況

第12期連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)

(資産)

 当連結会計年度末における流動資産合計は110億66百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億3百万円増加しました。現金及び預金が4億26百万円、電子記録債権が3億58百万円減少した一方で、売掛金が16億89百万円、商品が1億86百万円増加したことが主な要因です。売掛金および商品の増加要因は、FM事業のファストフード店舗向け売上が急伸したためで、当該事業の好調に伴い、売掛金と回転在庫が増加したことによります。現金及び預金の減少は主に法人税等の支払額の増加と借入金の返済が原因です。固定資産合計は21億77百万円となり、前連結会計年度末に比べ28百万円増加しました。無形固定資産合計が38百万円、繰延税金資産49百万円増加した一方で、有形固定資産合計が54百万円、差入保証金が6百万円減少しました。これらの結果、資産合計は、132億44百万円となり、前連結会計年度末に比べ11億31百万円増加しました。

 

(負債)

 当連結会計年度末における流動負債合計は99億44百万円となり、前連結会計年度末に比べ9億74百万円増加しました。これは主に買掛金が6億41百万円、1年以内返済予定の長期借入金が1億20百万円、未払法人税等が1億5百万円、賞与引当金(前連結会計年度は未払賞与)が60百万円増加したことによるものです。固定負債合計は2億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ3億8百万円減少しました。これは長期借入金の返済により3億17百万円減少したことが主な要因です。これらの結果、負債合計は、101億98百万円となり、前連結会計年度末に比べ6億65百万円増加しました。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は30億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億66百万円増加しました。当期純利益5億10百万円による増加と、剰余金の配当54百万円による減少が主な要因です。これらの結果、自己資本比率は23.0%(前連結会計年度末は21.4%)となりました。

 

第13期第3四半期連結累計期間(自 2022年1月1日 至 2022年9月30日)

(資産)

 当第3四半期連結会計期間末における流動資産合計は96億62百万円となり、前連結会計年度末に比べ14億4百万円減少いたしました。棚卸資産及び未成工事支出金が6億92百万円増加しましたが、電子記録債権、売掛金及び契約資産が6億40百万円減少し、現金及び預金も15億51百万円減少したことが主な要因です。現金及び預金の減少は主に負債項目の買掛金の減少、すなわち支払いの実行に対応するものです。固定資産合計は22億38百万円となり、前連結会計年度末に比べ60百万円増加しました。無形固定資産合計が1億2百万円増加した一方で、有形固定資産合計が18百万円減少し、繰延税金資産が29百万円減少したことが主な要因です。これらの結果、資産合計は、119億1百万円となり、前連結会計年度末に比べ13億43百万円減少しました。

 

(負債)

 当第3四半期連結会計期間末における流動負債合計は83億29百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億14百万円減少しました。これは買掛金が9億74百万円、1年内返済予定の長期借入金が2億99百万円、未払法人税等が1億37百万円、未払消費税等が1億14百万円、賞与引当金が48百万円減少したことなどによるものです。前連結会計年度末は最終日が休日であったため、一部の支払いが休日後の翌期となり、買掛金が膨らんでいましたが、当第3四半期連結会計期間末は平日であったため、通常通り、最終日に支払が行われました。固定負債合計は1億25百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億29百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が1億29百万円減少したことによるものです。

 これらの結果、負債合計は、84億54百万円となり、前連結会計年度末に比べ17億43百万円減少しました。

 

(純資産)

 当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は34億46百万円となり、前連結会計年度末に比べ4億円増加しました。親会社株主に帰属する四半期純利益4億97百万円による増加、剰余金の配当1億2百万円による減少が主な要因です。これらの結果、自己資本比率は29.0%(前連結会計年度末は23.0%)となりました。自己資本比率の急激な増加は、前連結会計年度末が休日であり、買掛金が膨らんで一時的に資産合計が増えていたためであり、当第3四半期連結会計期間末の比率が通常の水準です。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 第12期連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は28億64百万円となり、前連結会計年度末と比べて4億26百万円減少しました。なお、当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、4億72百万円の収入超過(前連結会計年度は17億93百万円の収入超過)となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純利益7億24百万円、減価償却費5億4百万円、固定資産除却損1億2百万円、仕入債務の増加6億41百万円等の収入要因に対し、売上債権の増加13億31百万円、たな卸資産の増加1億88百万円、法人税等の支払額1億58百万円の支出要因があったことによるものです。売上債権およびたな卸資産の増加要因は、FM事業のファストフード店舗向け売上が急伸したためで、当該事業の好調に伴い、売掛金と回転在庫が増加したことによります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、6億35百万円の支出超過(前連結会計年度は6億80百万円の支出超過)となりました。その主な要因は、無形固定資産の取得による支出5億62百万円、有形固定資産の取得による支出80百万円によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、2億63百万円の支出超過(前連結会計年度は1億1百万円の支出超過)となりました。その主な要因は、長期借入金の借入れによる収入及び返済による支出1億97百万円、配当金の支払額54百万円によるものです。

 

第13期第3四半期連結累計期間(自 2022年1月1日 至 2022年9月30日)

 当第3四半期連結会計期間末における現金及び現金同等物は13億13百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億51百万円減少いたしました。なお、当第3四半期連結累計期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、5億25百万円の支出超過となりました。その主な要因は、税金等調整前四半期純利益7億10百万円、売上債権の減少額6億31百万円、減価償却費3億99百万円の収入要因があった一方、仕入債務の減少額9億74百万円、棚卸資産の増加額6億92百万円、未払消費税の減少額1億14百万円、法人税等の支払額3億49百万円の支出要因があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、4億99百万円の支出超過となりました。その主な要因は、無形固定資産の取得による支出4億87百万円の支出要因があったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、5億27百万円の支出超過となりました。その主な要因は、長期借入金の返済による支出4億28百万円、配当金の支払額1億2百万円の支出要因があったこと等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 a 生産実績

 当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。

 

 b 受注実績

 当社グループの事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載をしておりません。

 

 c 販売実績

 第12期連結会計年度及び第13期第3四半期連結累計期間の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

第12期連結会計年度

(自 2021年1月1日

 至 2021年12月31日)

第13期

第3四半期連結累計期間

(自 2022年1月1日

  至 2022年9月30日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

金額(百万円)

MRO事業

28,263

115.0

23,786

FM事業

9,586

122.8

7,906

報告セグメント計

37,849

117.0

31,693

その他

98

156.5

29

合計

37,948

117.0

31,722

 (注)1.その他セグメントはITシステム開発運用部門であり、MRO事業、FM事業とセグメント間の取引があります

      が、全額内部消去されるため、ITシステムの外販事業のみの金額を表示しております。

2.最近2連結会計年度及び第13期第3四半期連結累計期間の主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

第11期連結会計年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

第12期連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

第13期

第3四半期連結累計期間

(自 2022年1月1日

至 2022年9月30日)

金額

(百万円)

割合(%)

金額

(百万円)

割合(%)

金額

(百万円)

割合(%)

アスクル株式会社

5,684

17.5

6,630

17.5

5,495

17.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりでありま

す。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、資産および負債又は損益の状況に影響を与える会計上の見積りは、過去の実績等連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しておりますが、重要なものは以下のとおりであります。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

  当社グループは繰延税金資産については、将来減算一時差異に対して、将来の収益力に基づく課税所得等に基づき、繰延税金資産の回収可能性を判断しておりますが、回収可能性の判断は、当社グループの事業計画に基づいて決定した将来事業年度の課税所得の見積りを前提としております。課税所得の見積りの基礎となる翌期以降の事業計画における主要な仮定は、事業セグメントごとかつ得意先別に集計した売上高と売上総利益率の予測であります。売上高の予測は、過去の売上実績や新規顧客との商談状況、顧客の出店・改装計画などを基とし算出しております。また、売上総利益率の予測は、売上高の予測と過去の仕入実績などに基づいて売上原価を予測し算出しております。なお、課税所得が生じる時期及び金額は、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に生じた時期及び金額が見積りと異なった場合、翌連結会計年度以降において認識する繰延税金資産の金額に重要な変動を与えるリスクがあります。

 

② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 「経営成績等」及び「財政状態」並びに「セグメントごとの経営成績の状況」に関する分析・検討内容

第12期連結会計年度(自 2021年1月1日 至 2021年12月31日)

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、379億48百万円(前年同期比17.0%増)となりました。

売上高の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況」に記載のとおりであります 。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は、売上の増加に伴い340億41百万円(前年同期比17.3%増)となりました。

この結果、売上総利益は、39億7百万円(前年同期比14.4%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、30億42百万円(前年同期比13.7%増)となりました。

主な要因は、稼働ソフトウエアの増加に伴う無形固定資産の償却費及びシステム保守・運用費用、人件費、売上増加に伴う物流費の増加によります。

この結果、営業利益は、8億64百万円(前年同期比16.6%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当連結会計年度において、営業外収益は4百万円(前年同期比66.9%減)、営業外費用は40百万円(前年同期比10.5%増)発生しました。

主な要因は、団体保険の配当金1百万円、自己新株予約権の消却損21百万円、為替差損15百万円が発生したことによるものです。

この結果、経常利益は、8億27百万円(前年同期比15.5%増)となりました。

 

(特別損益、法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度において、特別損失は1億2百万円(前年同期比1,733.4%増)発生しました。

主な要因は、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を2億13百万円計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、5億10百万円(前年同期比0.9%増)となりました。

 

なお、財政状態の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

第13期第3四半期連結累計期間(自 2022年1月1日 至 2022年9月30日)

(売上高)

当第3四半期連結累計期間の売上高は、317億22百万円となりました。

売上高の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(売上原価、売上総利益)

当第3四半期連結累計期間の売上原価は、売上の増加に伴い285億61百万円となりました。

この結果、売上総利益は、31億61百万円となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当第3四半期連結累計期間の販売費及び一般管理費は、24億3百万円となりました。

主な要因は、稼働ソフトウエアの増加に伴う無形固定資産の償却費及びシステム保守・運用費用、人件費の増加によります。

この結果、営業利益は、7億58百万円となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当第3四半期連結累計期間において、営業外収益は0百万円、営業外費用は48百万円発生しました。

主な要因は、為替差損45百万円が発生したことによるものです。

この結果、経常利益は、7億10百万円となりました。

 

(特別損益、法人税等、親会社株主に帰属する四半期純利益)

当第3四半期連結累計期間においては特別損益が発生しておりません。税金費用(法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額)を2億12百万円計上した結果、親会社株主に帰属する四半期純利益は4億97百万円となりました。

 

なお、財政状態の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析  (1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

b 経営成績に重要な影響を与える要因

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b 資本の財源及び資金の流動性

  当社グループでは、休前日を除く通常月においては、近年、売掛金と買掛・未払金の残高が、ほぼ拮抗していることから、運転資金需要のうち主なものは、人件費や賃借料といった営業固定費と業務委託費からなるITシステムに係る保守運用費用であり、費目としては販売費及び一般管理費となります。一方、投資を目的とした資金需要は、事業基盤を形成するITシステム、ソフトウエアへの投資であり、費目としては無形固定資産の取得となります。運転資金は、主として自己資金で調達することとしておりますが、ソフトウエアへの投資額が足元で増加していることから、投資については、銀行等からの長期借入金により、投資額の一部を賄っております。

 

  前連結会計年度末における有利子負債残高は9億12百万円であり、全額が長期借入金ですが、借入期間は平均3年であるため、常に1/3以上の借入額が1年以内に返済予定の借入金となっています。当連結会計年度でも12月に1億円の長期借入れを行っておりますが、こちらも借入期間3年のため、1/3以上の借入額が1年以内返済予定である状況は変わりません。当連結会計年度末の有利子負債残高は7億15百万円で、1年以内の返済予定額が5億円と過半を占めており、返済間近の借入額が増加しております。当連結会計年度末における現金及び預金の残高は28億64百万円と余裕がありますが、今後も資金残高および各キャッシュ・フローの状況を常時もモニタリングし、資本の財源および資金の流動性の確保に努めてまいります。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載の通り、当社グループのサービスの普及度を測れる連結売上高と連結営業利益額となります。

 連結売上高に関しては、基盤事業であるMRO事業において、中核分野である製造業の大企業向けが順調に伸長している一方、もう一つの基盤事業であるファシリティ・マネジメント事業でも、テイクアウトに強い外食業態の新店・改装需要の取り込みが進み、順調に伸長しています。その結果、前連結会計年度の連結売上高を100%とすると、当第3四半期連結累計期間においては、1月から9月までの9ケ月間で83.6%の対前年進捗率に達しております。

 また、連結営業利益額に関しては、前連結会計年度の連結営業利益を100%とすると、当第3四半期連結累計期間においては、1月から9月までの9ケ月間で87.8%の対前年進捗率に達しており、連結売上高以上に順調な対前年進捗率となっています。当社グループでは、人件費やIT関係費等の営業固定費の増加率以上の伸長率で、連結売上高を伸長させることにより、連結営業利益額を増加させることができると考えており、その達成状況を判断するために連結営業利益額を経営指標としています。なお、当社グループでは、連結営業利益率は経営上の管理指標とはしていませんが、当第3四半期連結累計期間においては、連結売上高より連結営業利益額の対前年進捗の方が大きいことから、連結営業利益率に関しても上昇方向との結果になりました。

 

連結売上高と連結営業利益の推移及び前年比伸長率、および対前年実績進捗率

 

 

2020年12月期

通期

 

2021年12月期

通期

(a)

2022年12月期第3四半期

(b)

2022年の対前年実績進捗率

(b)/(a)

連結売上高(百万円)

32,447

37,948

31,722

 

前年比(%)

※91.8

117.0

-

83.6

連結営業利益(百万円)

741

864

758

 

前年比(%)

102.3

116.6

-

87.8

※2020年12月期より収益認識に関する会計基準の早期適用を行ったことにより前年比で減少となっておりますが、

    2019年12月期に同基準を適用した場合における前年比は101.7%となります。

 

 

4【経営上の重要な契約等】

   該当事項はありません。

 

 

5【研究開発活動】

 当社グループの勘定科目には研究開発費の項目はありませんが、当社グループの顧客向け販売、サービス提供、および社内業務に用いる内製ソフトウエアの多くは、アジャイル型開発と呼ばれる手法で開発しております。アジャイル型開発とは、仕様や設計の変更があり得る前提で、当初から厳密な仕様は決めることをせずに、小規模な開発に着手し、機能単位での実装と評価を繰り返しつつ、徐々に全体機能の開発を進めていく手法であり、開発のスピードアップに有効な手法として近年、産業界で広く採用されつつあります。特に、これまでに世の中にない新たなサービスを開発する場合に有効な手法で、当社グループでは、社内で十分な評価が行え、その評価結果を仕様変更にフィードバックができる分野のソフトウエアはこの方法で開発しております。

 

 このアジャイル型でのソフトウエア開発における成果物としてのソフトウエアは、会計上も税務上も全体を投資として無形固定資産に計上しております。新機能ソフトウエアの開発に関しては、当社グループのCTOが主催するテクノロジー戦略会議において、その方針や戦略を議論し、そこでの結論としての提言を執行役員会や取締役会で議論し、確定していきます。

 

 当社グループが現在、力を入れているソフトウエア開発のテーマは、技術面では、クラウド化、マイクロサービス化(クラウド上で動作する多数の自律型小規模システムの協働により、より大きな機能を実現するソフトウエア構造への移行)による当社グループのシステム、ソフトウエア群の全面的な更新です。特に、①大企業向け受発注の中核システムであるAPMROの次世代クラウド版の開発と、②商品データベース等の中核システムのクラウド環境への移行に注力しています。それらに加えて、③技術開発の応用面では「オープンカタログ」対応と称して、商品の仕様・価格・納期・付帯サービス等の取引上必要な諸条件のいくつかが不明、未定でも、電子商取引を行えるようにする新取引プラットフォームの構築を進めます。具体的には、サプライヤーの皆様を「オープンカタログ」型ビジネスに積極的に呼び込むためのクラウド型サプライヤポータルの構築を進めます。

 

 クラウド化、マイクロサービス化は、現在のIT業界の基本トレンドに乗ったものですが、オープンカタログ対応は、当社グループ独自の取り組みです。取引に必須な全ての情報が揃っていない段階でも、当社グループの新取引プラットフォーム上に、商品情報や引き合い情報を入力していただき、不足した情報をお客様やサプライヤーが追加で補完入力する方法で、取引を成立させる仕組みを導入する計画です。また、サプライヤーがその取引成立のための補完情報の入力が円滑にできるよう、使いやすいサプライヤポータルを構築する計画です。この新たな取引プラットフォームの構築は、当社グループのサービスの利用企業拡大に大きく貢献すると見込み、この分野に株式上場で獲得できる新たな経営資源を投入していく計画です。