第2 【事業の状況】
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) トップメッセージ
<これまでの10年と次の10年をつなぐ>
カゴメグループは、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業になる」という2025年のありたい姿と「トマトの会社から、野菜の会社に」というビジョンを2016年に掲げ、第1次から第3次の3つの中期経営計画(中計)を進めてきました。2025年度は、これまでの10年の活動を締めくくる第3次中計の最終年度であるとともに、次の10年に向けた成長戦略を描く年でもあります。
これまでの10年で、当社を取り巻く環境は劇的に変化しました。約4年間に及んだコロナ禍が生活者の価値観や消費行動を大きく変え、地政学的なリスクの高まりを起点とした未曾有のコスト上昇が世界的に広がり、日本経済は長いデフレからインフレに転換しました。さらに深刻化する気候変動の影響を受けて、当社の生命線である農産原材料の調達は、年々厳しさを増しています。
そのような中で、持続的な成長を追求してきたこれまでの10年の成果と課題をしっかりと振り返り、当社の次の10年につなげていきたいと考えています。
<3つの中計を業績面から振り返る>
業績の低迷から脱却し、利益獲得力をつけた第1次~第2次中計
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第1次中計がスタートする前年度の2015年度、当社は2013年から続く原材料高などの影響により、営業利益率(日本基準)は3.4%にまで低下する大変厳しい経営状況に置かれていました。この危機的な状況から脱却するために、新たな経営改革の断行を宣言し、2016年度から「持続的に成長できる強い企業」を目指す10年間のチャレンジがスタートしました。 この10年間の当初の青写真は、第1次中計期間(2016年~2018年)に、徹底した収益構造改革により利益率を回復し、第2次中計期間(2019年~2021年)に、成長の種を仕込みつつ売上収益・事業利益の両方を成長軌道に乗せる。そして、第3次中計期間(2022年~2025年)に持続的な成長を実現するというものでした。
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第1次中計期間には、全社を挙げた「ムリ・ムラ・ムダ」の撲滅に取り組み、2015年度に3.4%だった営業利益率(日本基準)を、2018年度には5.7%に回復することができました。 第2次中計期間では、売上収益・事業利益の両方の成長を目指しましたが、その結果は明暗が分かれました。グラフ①は、第2次中計前年(2018年)の売上収益額・事業利益額(IFRS)を100とした時の、それぞれの年度における指数を表したものです。第2次中計期間においては、事業利益は着実に回復したものの、売上収益を成長軌道に乗せることはできませんでした。成長の種を仕込み新たな売上収益を獲得していく力が不足していることを痛感した期間でした。
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➤グラフ①第2次中期経営計画期間の業績推移 (2018年を100とした場合)
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成長に軸足を移した第3次中計
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売上収益の成長に課題を残した第2次中計の反省から、第3次中計では目指す成長の方向性をオーガニック成長(既存事業の成長)とインオーガニック成長(提携・M&Aによる成長)の2つに分け、それぞれの推進組織や戦略を明確化しました。 国内加工食品事業のオーガニック成長については、全社を挙げた「野菜摂取量を増やす」取り組みと「ファンベースドマーケティング」によりお客様との関係強化を図るとともに、野菜飲料・トマト調味料の需要拡大に注力し安定成長を図ることを基本戦略としました。加えて、野菜スープ・プラントベースフード・DtoC(消費者直接取引)を事業拡張領域に設定し、新たな売上収益獲得に向けた活動を強化しました。国際事業については、海外グループ個社間の連携強化により既存グローバルフードサービス顧客内の供給シェアの拡大を取り組み課題としました。 インオーガニック成長については、最重点課題として、人口が増加し続け、しっかりとした社会インフラが構築されている北米市場をターゲットとした事業探索を進めました。その推進組織として、米国成長戦略プロジェクト室や幅広い提携案件などを探索するために事業開発室を設置しました。
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第3次中計の進捗 ―――――――― 2022年から2024年の3年間、オーガニック成長の領域では、国内・国際事業とも、これまでに経験したことのない大幅なコスト上昇に直面することとなりました。特に、当社の主要原材料であるトマトペーストの国際的な市況は、コロナ禍からのリスタートに伴う外食需要の急増と気候変動の深刻化に伴うトマト原材料の作況不良が相まって、急騰しました。また、その他の原材料やエネルギー価格なども地政学的なリスクの高まりを起点として上昇が続きました。 この大幅なコスト上昇への対応として、国内加工食品事業においては、2022年度から3年連続で主要商品の価格改定を実施しました。国際事業においても、主要な顧客企業に対して価格交渉をきめ細かく行い、原価上昇に相当する価格改定に注力しました。 また、価格改定と両輪で、国内加工食品事業においては第3次中計の基本戦略とした野菜飲料・トマト調味料の需要喚起策を積極的に展開しました。野菜スープなどについても、粘り強く販売拡大に取り組みました。
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インオーガニック成長の領域では、新たに設置した推進組織により、様々な提携・M&A案件のリスト化を進めました。そのリストの中から、国際事業の成長加速と競争力あるトマト加工事業の構築を目的として、2024年1月に米国カリフォルニア州Ingomar Packing Company, LLC(Ingomar)の連結子会社化を行いました。 これらの活動により、国内加工食品事業は価格改定に伴い減少した販売函数を想定より早いペースで回復することができ、減少が続いていた事業利益は2023年に増益に反転しました。国際事業は、トマトペースト市況高の追い風とIngomarの連結子会社化により売上収益・事業利益ともに大きく拡大しました。 その結果、2024年の業績は第3次中計で目標としていた売上収益3,000億円・事業利益240億円を上回りました。また、カゴメグループの事業構造は、グラフ②に示したように国際事業の売上収益・事業利益の構成比が高まり、特に事業利益においては、国内・国際がほぼ半々となる大きな変化を遂げました。
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➤グラフ②セグメント別構成比推移
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<社会課題解決への取り組みを振り返る>
2016年度からの3つの中計において、当社は「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の3つの社会課題の解決に取り組み、それを持続的な成長につなげる活動を続けてきました。それぞれについて、ここで振り返り、成果と課題について整理したいと思います。
健康寿命の延伸
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「健康な毎日を送るためには、野菜をたくさん摂る方が良い」ということは、世界中で行われた様々な研究により明らかにされています。それらを踏まえ、厚生労働省は1日350g以上の野菜摂取を推奨しています。しかしながら実際の摂取量は260~290g程度にとどまっている状況が長期にわたり続いています。 この課題の解決に向けて、当社は2020年から「野菜をとろうキャンペーン」をスタートしました。中心となる活動は、野菜の推定摂取量を「見える化」し、多くの生活者に野菜不足を自覚していただくために開発した機器「ベジチェック®」を普及させることです。これまでに、小売店頭への設置や健康経営を掲げる企業への案内などを続けてきたことで、2024年末の累計測定回数は1,300万回を超え「ベジチェック®」の認知は着実に広がりました。しかしながら、厚生労働省の調査では日本人の野菜摂取量は減少傾向が続いています。生活者の食生活に対する行動変容を促進し、実際に野菜摂取量を増加するといった社会的にインパクトのある成果を生み出すことを目指して、これからも取り組みを強化していきます。
農業振興・地方創生/持続可能な地球環境
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「農業振興・地方創生」に関しては、その地方の特徴的な果物を野菜生活ブランドに配合し全国に広める「地産全消」という考えに基づく「『野菜生活100』季節限定シリーズ」の展開を2010年から継続しています。また、国産ジュース用トマトの生産者の方々に対しては、高齢化・人手不足の対策として、収穫作業の機械化に取り組んでいます。当社が開発した収穫機の貸与や機械収穫に合わせた栽培方法の指導など、産地の維持・拡大のためにフィールドパーソンといわれるカゴメ社員が直接生産者のもとにお伺いして様々なご要望にお応えしています。
「持続可能な地球環境」に関しては、2017年に制定した品質・環境方針に基づき、温室効果ガス排出量の削減に向けた太陽光発電の導入やバイオマスエネルギー利用の取り組みを、海外を含むカゴメグループの全体で進めています。また、2020年には「カゴメ プラスチック方針」を制定し、2030年までに飲料紙容器に添付されている石油由来素材のストローをゼロに、飲料PETボトル樹脂の50%以上をリサイクルまたは植物性素材に置き換える対応を行っています。
以上のように3つの社会課題解決への取り組みを着実に進展させてきました。今後は、これらの取り組みをさらに強化し、当社の持続的な成長へと確実に結びつける力を一層高めていきます。
<2025年度の重点課題>
2025年度は、トマトペーストの国際的な市況が下降に転じるという事業環境の中でスタートしました。この変化は、2024年度の加工用原材料トマトの増産によりトマトペースト加工量が増加し、これまでの在庫不足が解消したことによるものです。このようなトマトペーストの市況変動は想定していたことですが、この影響を受ける2025年の経営環境は大変厳しいものになります。しかしながら、その環境下においても第3次中計の目標である売上収益3,000億円・事業利益240億円の2年連続での達成を目指し、次の10年に向けた収益基盤を確固たるものにしたいと考えています。 2025年度に取り組む国内加工食品事業の重点課題は「利益の回復と挑戦の継続」です。トマトペーストを除く様々なコストの上昇は継続すると見込まれます。その中で、コストが上昇に転じる前の2021年度の事業利益の水準を超え、利益の回復を確かなものにすることを目標とします。 そのために、2025年は主力商品の需要拡大に引き続き注力します。飲料カテゴリーは、トマトジュースの好調を維持する施策とともに、2025年に発売30周年を迎える「野菜生活100」のプロモーションを強化します。食品カテゴリーは、日本一のナポリタンを選ぶイベント「カゴメ ナポリタンスタジアム2025」を軸に、トマトケチャップ・トマト調味料などの情報発信強化に取り組みます。また、挑戦の継続については、これまでの活動に加えて、アーモンドミルクにフォーカスした事業領域の拡張を進めます。具体策として、2025年の春からアーモンドミルクブランド「アーモンド・ブリーズ®」の本格的なマーケティング展開をスタートします。
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国際事業の重点課題は、「海外成長の加速」です。トマトペースト市況の影響を受けにくいトマト二次加工品の量的な拡大により、トマト一次加工品の収益減少をリカバリーしていきます。具体的には、グローバルフードサービスからローカルフードサービスへの顧客拡大やトマト以外のフレーバー商品の拡充に取り組みます。同時に、トマト一次加工品については、取引価格のモニタリング頻度を上げ、機動的な価格政策を打ち出すことで、収益ボラティリティの抑制を図ります。 また、インオーガニック成長に関しては、当社のバリューチェーンの中長期的な強化に資する様々な可能性についての検討を継続します。
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<次の10年のさらなる成長を目指して>
2035年ビジョンの策定
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現在、カゴメグループの次の10年の指針となる「2035年ビジョン」の策定を進めています。策定に先立ち、気候変動の深刻化やAIの急速な普及など、予測のつかない変化の激しい時代における長期ビジョンの必要性について社内で議論を重ねました。その結果、やはりカゴメグループには長期ビジョンが必要だという考えに至ったのは、当社が「農から価値を形成する」ことを起点として事業を展開しているからです。
農業は1年を基本的なサイクルとしています。当社は創業から126年になりますが、その間にトマトを栽培した回数はわずか126回にしかなりません。1年で膨大な回数の生産が可能な工業製品とは異なり、農業においては、新しい品種や栽培技術を導入するだけでも、相応の時間がかかります。そのため、10年程度のスパンで進むべき方向を定め、そこに向けて一貫した方針のもと一歩一歩進んでいくために長期ビジョンが必要だと考えました。
この考えに基づいて、2023年の11月から「2035年ビジョン」の策定に着手し、これまで約1年間、様々な議論を重ねる中で、当社が目指すべき2つの方向性が見えてきました。ひとつは、農と地球環境が抱える課題に対応するソリューション開発力をさらに高めていくことです。具体的には、気候変動の深刻化に対応する品種や栽培技術の開発などにより、低環境負荷とコスト競争力の両立に取り組み、持続可能な農業の実現に貢献したいと考えています。もう一つは、食と農を起点とした体と心の健康への貢献です。これまでの野菜を通じた身体的な健康増進への取り組みに加え、心の健康にまで活動の領域を広げ、一人ひとりの健康な毎日の実現に貢献したいと考えています。
2024年10月にはこの2つの方向性を社内向けに提示し、現在、それぞれの詳細化を進めています。今後、さらに社内で議論を重ね、できる限り多くの社員の想いを盛り込んだビジョンにしていきたいと思っています。
次の10年においても変わらず継続すること
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「2035年ビジョン」の実現に向けては、新しい可能性に対して絶えずチャレンジすることが重要です。それと同時に、個々のチャレンジに一貫性を持たせる「軸となる考え」が必要になります。それは、これまでの10年の活動の中で培われた次の3つになると考えています。
1つ目は「社会課題を解決することで社会に貢献し、それを通してカゴメも成長していく」という考え方です。これまで当社は3つの社会課題の解決に取り組んできました。しかしながら、「社会課題解決への取り組みを振り返る」で述べたように、様々な活動が進展しているものの、それらを当社の持続的な成長につなげる力はまだ十分ではありません。次の10年においては、この考え方を変えることなく、よりインパクトある成果の創出を目指していく必要があります。
2つ目は、「農から価値を形成し、お客様に届けていく」という考え方です。これは創業者の蟹江一太郎が日本で初めて食用トマトの栽培にチャレンジした時から一貫して変わらない当社のDNAです。そして、世界的にもユニークな当社の「農を起点とするバリューチェーン」をさらに進化させ磨き続けることが、競争力の強化につながっていくと考えています。
3つ目は、「日本を含めたグローバルな市場で成長を追求していく」という考え方です。前述したように、これまでの10年の活動によって、当社の原材料トマト加工量は世界第3位のポジションとなり、北米・ヨーロッパ・オーストラリア・日本に主要な事業拠点を有する体制が強化されました。このグローバルネットワークの連携をさらに密にし、シナジーを生み出していくことで成長を加速していくことができると考えています。
事業基盤の強化
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次の10年において、当社が持続的に成長していくためには、それを支える事業基盤の強化も必須です。特に重要となるのは、「農業研究・健康研究の強化」と「働きがいのある会社の実現」だと考えています。
気候変動の深刻化により、これから農産原材料の安定調達はますます困難になります。自らの力でこの状況を変えていくためには、バリューチェーンの最も川上に位置する農業研究の強化が重要です。そこに向けて、2023年度から農業研究の体制整備を行ってきました。2023年10月には、国内外に分散していた農業研究拠点を一つに集約したグローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターを設立、さらに2024年9月には、米国カリフォルニア州シリコンバレーに、運用総額50百万米ドル・運用期間10年のコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げました。今後、革新的な農業技術を有するスタートアップ企業とのオープンイノベーションを進めるとともに、それらの知見をカゴメグループ内に取り込み、気候変動に対応した品種開発や栽培技術開発を加速していきます。
また、お客様の健康への貢献が、当社の提供する価値の中核であることは、これからも変わりません。その貢献のフィールドを体の健康から心の健康に広げていくことを「2035年ビジョン」策定のプロセスで議論しています。その方向性に合致した、心の健康への研究領域拡大にも取り組んでいきます。
「働きがいのある会社の実現」については、第3次中計期間において、エンゲージメントサーベイの導入や心理的安全性という考え方の浸透に注力してきました。しかしながら、それらによって組織と個人の双方が高いモチベーションを持って成長し続ける企業風土に変われたかと問われれば、いまだ心もとない状況にあります。その原因の一つは、当社の現在の人事処遇制度にあると考えています。入社から長い時間をかけて習熟することを前提とした当社の人事処遇制度は、仕事のみならず自分の生き方を総合的にプランニングする「ワーク・ライフキャリア」という考え方が広がったり、一つの会社にとどまらずスキルを高めながらキャリア形成する人が増えたりしている就労観の大きな変化に対応できていません。この状況を変え、自らイノベーションを生み出し、成長し続けることができる「自律自走型」チームを生み出していくために、2024年度から人事処遇制度の抜本的な改革に着手しました。カゴメの成長の原動力はこれからも人であり、「人を大切にする」という基本的な考え方は堅持しつつ、多様な就労観に対応できるよう、働き方の選択肢を広げていきたいと考えています。
<ステークホルダーの皆様へ>
これまでの10年の取り組みで、事業の構造、私たちの意識、そしてステークホルダーの皆様からの見られ方も含めて、カゴメは大きく変わりました。長年カゴメを支えてくださっているファン株主の皆様、そして国内外の投資家の皆様とのコミュニケーションを深め、新しい視点からのご意見をいただくことが、カゴメグループのさらなる成長につながっていくものと思っています。
農から価値を形成することで社会課題を解決し、その結果カゴメグループも成長していくという考え方は今後も継続し、畑から食卓までをつなぐユニークなバリューチェーンを進化させていきます。それにより、2025年度の業績目標を達成するとともに、次の10年も企業価値向上に尽力してまいりますので、引き続きのご支援をお願いいたします。
代表取締役社長
(2) 会社の経営の基本方針
カゴメグループは、「感謝」「自然」「開かれた企業」を企業理念としております。これは、創業100周年にあたる1999年を機に、カゴメグループの更なる発展を目指して、創業者や歴代経営者の信条を受け継ぎ、カゴメの商品と提供価値の源泉、人や社会に対し公正でオープンな企業を目指す決意を込めて、2000年1月に制定したものです。
また、カゴメグループは今後も「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」をお客様と約束するブランドステートメントとして商品をお届けしてまいります。
当社の企業理念、ブランドステートメントから長期ビジョンまでの関係は以下のとおりです。
(3) カゴメの価値創造プロセス
当社は、「企業理念」をゆるぎないカゴメの価値観、「ブランドステートメント」を社会やお客様への約束として経営の根底に置くことで、組織が一貫した行動をとっています。環境変化を予測し、成長を支える経営資本を活用することで、農から価値を形成するバリューチェーンを、多様なパートナーと協業しながら進化させています。
現在は、国内加工食品事業、国際事業、その他に含まれる国内農事業やGARBiCと、それを支える価値創造活動により、農と健康と暮らしをつなぐ商品とサービスを提供しています。事業を通じて「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の3つの社会課題解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業となることで、社会価値と経済価値を創出します。
(4) 農から価値を形成するグローバルバリューチェーン
1 品種開発・栽培
創業時から「畑は第一の工場」として、新品種や栽培技術開発など農業資源開発に携わってきました。近年、農業を取り巻く環境は、世界的に大きく変化しており、気候変動に伴う異常気象の発生や農家の高齢化に伴う栽培面積の縮小など、多くの課題を抱えています。カゴメは、環境変化に対応した品種や、環境負荷の低い栽培方法などを開発することで持続的な農業を実現します。
① 品種開発、栽培技術開発の基盤強化
持続可能な農業の実現に向けた開発能力を高めることを目的として、国内外に分散していた品種開発や栽培技術の開発部門を一つの組織に結集し、2023年10月にGARBiCを設立しました。この組織の傘下にはこれまで日本の研究所に設置していた農資源開発チームや、ポルトガルのアグリビジネス研究開発センター、種子の開発・生産・販売を行うUGなどを配置しています。2024年には、農業分野の新技術や新サービスが多様かつ迅速に展開されている米国カリフォルニア州に、米国拠点「GARBiC USA」、及びCVCを新たに設立しました。GARBiCとIngomar、契約農家が強固に連携し、加工用トマト生産者が抱える課題の抽出と、対応する品種や栽培技術の開発・実装・事業化までをグループの連携によって実現することで、農を起点とした一貫した価値形成を行っていきます。
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農業研究・開発基盤
組織
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役割
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技術開発
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検証・ 実装
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事業
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品種 開発
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栽培技術 開発
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GARBiC
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GARBiC USA
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技術開発(品種、先端育種、栽培) 農業技術を有するスタートアップへの出資 ・協業(CVC) ※ 2025年1月出資実績:1件
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○
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○
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農業資源 技術開発部
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技術開発(品種、先端育種、栽培)
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○
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UG
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品種開発、種苗販売
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○
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○
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DXAS
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AI営農サービス提供
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Ingomar、契約農家
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課題抽出、技術検証・実装
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○
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○
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② コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の設立
農業分野における中長期でのイノベーションの源泉になる技術探索及び事業開発を加速するため、米国カリフォルニア州シリコンバレーのLos Gatosを拠点とするベンチャーキャピタル、SVG Venturesと共同で、コーポレートベンチャーキャピタル(ファンド名:SVG Ventures Sunrise Agri Fund)を2024年9月20日に設立しました。運用総額は50百万米ドル、運用期間は10年間となります。 2024年11月には米国カリフォルニア州で実施されたアグリテック、フードテック関連のスタートアップ、大企業、政府機関などを対象としたイベント「Global Impact Summit 2024」に参加、
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Global Impact Summit 2024 登壇の様子
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GARBiC責任者である執行役員の上田がスピーカーとしてCVC設立目的などの説明を行い、多数の反響がありました。 このイベントは水資源、エネルギーなど様々な環境視点での情報共有、関係者の協創を目的としており、世界各国から400名以上が参加しました。
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2 生産(一次加工・二次加工)
畑で収穫した農作物を原材料として、製品を生産する工程には主に一次加工と二次加工があります。一次加工は、生の農作物を扱いやすい形に加工する工程であり、野菜のペーストやピューレーなどが主な製品です。二次加工は、一次加工した農作物に調味料や野菜などの他の素材を加えて加工する工程であり、トマトケチャップやピザソース、野菜飲料など様々な製品を製造しています。
① Ingomar(一次加工)における2024年の活動(PMI)
2024年1月にIngomarを連結子会社化し、統合のためのプロセスを計画に沿って進めてきました。主なPMI※の内容については、下表の通りです。2024年夏の加工用トマト製造からカゴメの品質管理を導入し、品質ロスを削減するなどの効果が得られました。
農業研究においては、Ingomar原材料部門、契約農家技術者との協業により、カリフォルニア州におけるトマト栽培の技術的ニーズを把握しました。干ばつによる水価格の高騰や取水制限、土壌病害、耐乾燥・耐塩性品種、労働コスト、熱波影響、環境配慮など農家が抱える問題は多岐にわたります。重要性と実現可能性から優先度を設定し、課題解決への取り組みを開始しています。
※ PMI:Post Merger Integration M&Aが成立した後、統合による効果最大化を目的として行われる一連のプロセス
主なPMIの内容
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• 重要性と実現可能性から 課題優先度を設定 ① 水資源に対するソリューション開発 ② 土壌健全性に向けた調査研究
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• CEOのカゴメ・フード・ インターナショナルカンパニー 経営会議への参加 • グループ間での技術者交流
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• 品質管理基準(KBMP)導入による 品質改善 • カスタマーサービス品質の向上、 体制整備 • 加工用トマト栽培に関する ビッグデータ解析開始
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• 決算期、会計制度、会計監査人統一 • J-SOX対応 • カゴメグループ与信力を活用した 金利削減
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MESSAGE
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世界のトマト市場で存在感を示す! Ingomarへの初めての出向者として北米に渡り、主に製造・品質におけるPMIに取り組んでいます。2024年トマトシーズンでは、海外グループ共通の品質管理基準(KBMP)の導入による品質改善を進めました。それにより製造期間中の品質事故をゼロにすることができ、品質ロスに伴うコストの抑制を実現しました。また、今後の中長期的なシナジー創出に向けて、原材料となるトマトの栽培状況や品質に関するデータのビジュアライズやビッグデータ解析にも取り組んでいます。私の専門である品質管理とデータ分析スキルを活かして、カゴメグループとIngomarの成長に貢献し、世界で存在感のあるトマトカンパニーとなれるように努めます。
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Profile KFIC グローバルトマト事業部 橋本 和幸
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② 国際事業の構成の変化
2024年1月にトマト一次加工品を製造・販売しているIngomarを連結子会社化しました。2024年度のIngomarの売上収益は577億円であり、国際事業に占めるトマト他一次加工の売上収益構成比は2023年度から29point上昇しました。トマト他一次加工は、トマトペースト市況の変動影響を受けやすいため、国際事業の業績のボラティリティがこれまでより大きい構造へと変化しました。この影響を最小限に抑制するため、一次加工品の生産効率・品質の向上、顧客関係性強化による競争力の向上や、二次加工品の売上拡大に引き続き取り組みます。
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国際事業セグメント別構成比
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TOPICS トマトペースト市況
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トマトペースト市況 トマトペーストの市況は、生産各国の加工用トマト生産量とトマトペーストの消費量のバランス(在庫量)によって変動します。加工用トマトの主な生産地は米国、中国、ヨーロッパなどです。2022年頃から気候変動の影響による干ばつや水不足が発生し加工用トマトが十分に確保できなかったことにより、トマトペーストの生産量は減少していました。一方コロナ禍によって停滞していた世界経済の再開により消費量が膨らみ、 世界的な在
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主要国別の加工用トマト生産量とトマトペースト消費量推移
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庫量の減少により価格が上昇していました。2023年、2024年の加工用トマトの増産により、在庫不足は解消される見通しです。
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米国におけるトマトペーストの在庫状況 加工用トマトの一大産地でありカゴメグループの主要な市場の一つである米国では、2023年、2024年の増産により、トマトペーストの在庫率が回復し、在庫不足は解消されています。
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③ 国内加工食品(二次加工)工場における原価低減の取り組み
国内加工食品事業では、原材料価格高騰やエネルギー費の上昇に対し、生産効率の向上、コスト削減など原価低減活動に取り組んでいます。 工場においては製造工程で発生するロス率について、2025年末までに2022年対比で半減することを目標に「ロス改革活動」を推進しています。ゼロベースで工程や方法の見直しを進め、2024年までにロス率を約4割削減しました。その取り組みの一例が、茨城工場へのエアピグ装置の導入です。これまで生産終了時に配管内に残った製品を回収できないことから廃棄せざるを得ませんでしたが、本装置の導入により圧縮空気で回収するこ
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茨城工場に設置したエアピグ装置
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とが可能になりました。本件は、製造ラインの高効率化や環境に配慮した食品ロス抑制につながる取り組みとして、農林水産省より食品原材料調達安定化対策事業の補助金交付も受けています。 ロスを削減することで、原材料やエネルギー使用量が減少し、GHG排出量も減少します。環境負荷低減のためにも、継続して取り組んでいきます。
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3 商品開発・需要創造
創業以来、野菜や果実が持つ本来の味や栄養素を大切にし、自然素材を活かした商品づくりをしてきました。
これまでの商品開発で蓄積した加工技術、配合などの知見を磨いて新たな商品開発に活かしています。
国際事業や日本国内のBtoBビジネスにおいては、顧客が抱える様々な悩みや要望に対して、商品やメニュー開発などのソリューションの提案に注力しています。BtoCビジネスでは、野菜の提供形態の多様化と、提供市場を多点化することにより、日本やアジアでの野菜の需要を喚起し、野菜不足を解消する商品やサービスを提供しています。
① BtoBビジネスのソリューション力強化
カゴメグループの主な顧客の一つに、グローバルフードサービス企業があります。世界の各エリアに展開しており、今後はインドなどでも店舗数が増加する見込みです。当社はトマトソースやピザソースなどの二次加工品の生産拠点を米国、ポルトガル、オーストラリア、台湾、インドなどに保有していることから、グローバルで安定して高い品質の商品を供給できることが強みです。商品開発の知見やノウハウの共有など、グループ間の連携をさらに強化することで、グローバルフードサービス企業向けの売上収益の拡大を目指しています。
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Kagome Inc.製造ライン
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② 長期にわたり築いてきたブランド力
日本国内においては、野菜飲料やトマトケチャップなど長期にわたり築いてきたブランド力によって、高いシェアを獲得しています。特にトマトジュースは発売から90年以上が経過しますが、2024年は過去最高の売上収益となりました。また野菜生活は2025年で発売から30年となります。お客様の健康習慣として長期にわたり愛用していただくために、これからも自然のおいしさにこだわった商品開発を進めていきます。
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野菜生活30周年ロゴ
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MESSAGE
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ASEANのお客様にとって不可欠な存在を目指して グローバルコンシューマー部のミッションは、グローバルでのカゴメ「野菜生活100」ブランドの認知を広げ、生活者の健康増進に貢献することです。私はシンガポール・タイ・マレーシアの、3ヶ国でブランド認知拡大に向けて活動しています。ASEANは、野菜を摂りたいという意識やカゴメ野菜飲料の認知率がまだまだ低い市場です。そこで「ベジチェック®」を活用した野菜不足の可視化・野菜や野菜飲料の啓発と、試飲によるおいしさ体験の創出により、地道に丁寧にお客様へ価値を伝えています。将来カゴメの野菜飲料が、ASEANのお客様にとってもなくてはならない存在になることを目指して、事業拡大に励んでいきます。
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Profile マーケティング本部 グローバル コンシューマー部 盛本 理紗
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(5)企業価値向上へ向けた取り組み
当社は、企業理念(「感謝」「自然」「開かれた企業」)のもと、事業を通じて社会価値と経済価値を創出することにより企業価値を最大化していきます。また、中長期において「ROEの向上」と「資本コストの低減」に重点的に取り組むことで、持続的な企業価値向上を目指していきます。
ROEの向上
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企業価値向上
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資本コストの低減
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■収益力の向上 ■財務健全性・資本効率性の両立
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■非財務(ガバナンス、リスクマネジメント、 環境、人権、人的資本など)の取り組み ■情報開示の拡充、株主・投資家との対話など
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● ROEの向上
当社は、企業価値向上の最重点指標にROEを掲げています。
収益力の向上、財務健全性と資本効率性の両立を柱として、第3次中期経営計画期間の最終年度である2025年度はROE9%以上の達成を目標としています。今後もROEを高め、安定的な株主還元を行うことで企業価値を向上していきます。
● 効率的な成長投資の実行と株主還元
設備や事業への投資においては、経営企画、法務、財務経理などの専門部署のメンバーから構成される投資委員会により、各部署から起案された投資について採算性やリスク評価を踏まえた審査を経た上で、経営会議及び取締役会で決定します。投資後も、同委員会が継続的にモニタリングを実施し、効果を確認します。 第3次中期経営計画においては、オーガニック成長向けに約400億円の投資計画を予定しています。中長期の成長に向けて、Ingomar含め国際事業へ積極的に設備投資を行っていきます。また、M&Aを含めたインオーガニック成長のための事業投資300~500億円についても計画通り進捗しています。引き続き、オーガニック、インオーガニック両面で、成長に向けた投資を実行していきます。また、株主の皆様への利益還元を、経営上の最重要課題の一つと認識し、2022年から2025年の
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投資判断基準
対象
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指標
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基本要求水準
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事業投資
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IRR(内部収益率)※1
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10%+α※2
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設備投資
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PBP(回収期間)※3
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4年
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※1 Internal Rate of Return:事業計画から得られる フリー・キャッシュ・フローの現在価値から初期投資額を差引いた金額がゼロとなる割引率 ※2 αは国や地域に応じたカントリーリスク ※3 Payback Period:投資金額が回収されるのに要する期間
投資のモニタリング体制 ● 執行後5年間を対象 ● 年1回の取締役会・経営会議にて報告
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4ヵ年で進めている中期経営計画期間中における株主還元方針として、総還元性向40%を掲げています。本方針に基づき、株主還元のさらなる充実と、資本効率の向上を目指し、配当と併せて自己株式の取得も行っています。今後も成長投資と株主還元を両立し、持続的成長を目指していきます。
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第3次中期経営計画期間中の資金調達及び資金需要、 キャッシュ・フロー
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固定投資の推移
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● 売上総利益率の維持・向上の取り組み
当社は、持続的に収益力の向上を実現する上で、売上の拡大に加えて、売上総利益率の維持・向上に取り組んでいます。 具体的には、各事業の特性に応じて、原材料費の削減や労働生産性の向上、製造ラインの自動化など、生産現場における恒常的な原価低減のほか、コスト上昇時の機動的な価格改定により売上総利益率を維持・向上しています。 また、「畑は第一の工場」としてものづくりを営む当社グループにとって、中長期的にも安定し
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※ 企業結合会計適用によりIngomarの在庫の時価評価で原価が上昇することに伴い、一時的に低水準となる
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た売上総利益率を確保する事業構造に変革していくために、高品質の農産原材料の調達ネットワークの拡大や、水不足や気候変動に適応した品種開発、栽培技術の確立など、グローバルバリューチェーン全体のコスト構造を変革する取り組みを進めています。
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● 全社ROIC管理による資本効率の向上
当社は、利益を獲得するだけではなく、投下した資本の適切性や効率性を測定するため、2021年度よりカゴメROIC※による管理を導入しています。カゴメROICは、獲得したEBITDAに対して投下した資本の効率性を測定し、貸借対照表項目を各要素に分解することで、改善すべき課題を明確にすることを目的としています。
※ カゴメROIC :EBITDA(事業利益+減価償却費)÷投下資本
2024年度のカゴメROICは、EBITDAマージンは0.4point改善したものの、投下資本の増加により、前年度から0.8point悪化し、12.4%となりました。2025年度はEBITDAの減少により0.9point悪化し、11.5%を見込んでいます。各事業の状況は以下の通りです。
・国内加工食品事業:原材料の価格高騰や物流費増加によるEBITDAの減少により1.8point悪化
・国際事業:トマトペースト市況の下降影響による減収によるEBITDAの減少により1.7point悪化
(ROICツリー展開)
当社においては、ROICツリーを資本効率向上のためのコントロールドライバーとして活用しています。ROICツリーの展開により、ROICからブレイクダウンしたBS指標を各部門のKPIに落とし込むことで、これに基づくアクションプランを各社・各部門にて設定し、自律的にPDCAを回すことで指標の改善を図っています。その上で、各社・各部門にて効率を意識した改善活動を行い、最適なサプライチェーン体制の構築をはじめとした取り組みを進めています。
国内加工食品事業
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2024年度:17.3%→2025年度:15.5%
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国際事業
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2024年度:11.2%→2025年度:9.5%
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主なKPIと担当部門 ● 売上債権回転日数(営業本部) ● 原材料在庫高(調達部) ● 社内加工材在庫高(生産部) ● 製品在庫日数(SCM本部) ● 海外子会社の各社別ROIC(カゴメ・フード・インターナショナル・カンパニー)
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● 自己資本比率・信用格付の維持
自己資本比率
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当社は財務基盤の安定を前提に、ROEの向上を進めます。 自己資本比率50%以上を維持するとともに信用格付においてシングルA以上を目指します。
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2022年度
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2023年度
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2024年度
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2025年度
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連結
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52.8%
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49.8%
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51.3%
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50%以上
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格付
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A
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A
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A
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-
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(6) 第3次中期経営計画の進捗
SPECIAL FEATURE カゴメの10年と現在地、次なる10年へ
2025年のありたい姿、ビジョンに向けて歩みを進めた10年。
2016年に、2025年のありたい姿を「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業になる」、ビジョンを「トマトの会社から、野菜の会社に」と定め、10年間にわたり3期の中期経営計画を進めてきました。事業活動を通じて、日本や世界が抱える3つの社会課題「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」に取り組み、社会課題解決と持続的成長の実現を目指しています。
第3次中期経営計画最終年度である2025年度の定量計画は、売上収益3,000億円、事業利益240億円、事業利益率8.0%です。トマトペースト市況の上昇影響を受けた2024年度の業績を下回るものの、第3次中期経営計画の目標値である売上収益3,000億円、事業利益240億円を2年連続で達成する計画です。
特集においてはこの10年間で特に大きく変化した5つのポイントと強化された経営資本、今後の課題について説明します。
●財務指標
売上収益拡大と利益獲得力向上
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売上収益はオーガニックの成長に加え、2024年のIngomarの連結子会社化などにより、2025年度も第3次中期経営計画の目標である3,000億円を達成する計画です。利益については、2016年度の営業利益率(日本基準)5.4%から、2025年度の事業利益率8.0%(IFRS基準)まで改善する計画です。この期間においては、コロナ禍や原材料価格の高騰など利益に影響を及ぼす様々な出来事がありましたが、国内事業・国際事業ともに価格改定や収益構造改革の実行により、コストが上昇する局面においても利益を獲得する力をつけることができたと考えています。
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10年間の主な取り組み(売上収益拡大、利益獲得力向上施策)
トップラインの拡大
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コスト低減
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基盤整備
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• 需要創造活動 • 価格改定 • 商品のバリューアップ (機能性表示など) • ファン化の促進
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• 原価低減活動 • 工場における生産効率向上 • 不採算商品の整理 • 調達先の分散 • 国際事業、農事業の収益構造改革
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• 間接業務の業務効率化 (カゴメアクシス株式会社設立)※ • 物流効率化(F-LINE株式会社など) • 農事業の会社分割 (カゴメアグリフレッシュ株式会社設立) • IFRS導入による収益管理強化 • ROIC管理による資本効率向上
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※ カゴメアクシス株式会社は、2025年1月にシェアードサービス機能をカゴメ株式会社に統合
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今後の課題 ●トマトペースト市況の変動影響を受けることを前提とした、 安定的な利益成長 ●カゴメグループ全体での原材料調達最適化・生産性の向上 ●ポートフォリオ改革やROICマネジメントなどを通じた資本効率改善による、 企業価値向上
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●海外での事業展開
海外における事業拡大
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海外における事業は、農業生産、商品開発、加工、販売までを行う国際事業※、アジアにおいてコンシューマー向けに野菜飲料を販売しているグローバルコンシューマー事業、グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター(GARBiC)に含まれる研究・開発、種苗販売、AI営農サービス販売などを各国で展開しています。そのうち、国際事業においては、2024年度売上収益が1,493億円、事業利益が139億円となり、国際事業がグループ全体に占める構成比は売上収益は48.7%、事業利益は51.4%に拡大しました。これは、グループ会社のグローバルフードサービス企業との取り組みの強化や、収益構造改革の成果に加え、2024年1月に連結子会社化したIngomarの増分が寄与しています。 ※ 国際事業(2024年時点)に含まれる子会社:KAGOME Inc.,Ingomar,HIT,Vegitalia,Kagome Australia,Taiwan Kagome,KF india (正式名称は、以下海外拠点地図内に記載)
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10年間の主な取り組み(海外における事業拡大施策)
一次加工の安定供給
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二次加工の拡大
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BtoCへの挑戦
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基盤整備
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• Ingomar連結子会社化 • HITの収益構造改革 • KAUにんじん栽培
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• グローバルフードサービス企業 との取り組み強化 • 供給力向上のための設備投資 • KAU新素材への挑戦 (にんじんパウダー) • 新市場(インド)の開拓
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• アジア事業の整理 • PBI買収・売却 • アジアでの野菜飲料 輸出販売への挑戦
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• 国際事業のカンパニー化 • 海外グループ共通の品質 基準Kagome Best Manufacturing Practice(KBMP)の展開 • 投資委員会などによるリス クマネジメント体制基盤 強化
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海外の主な拠点(国際事業・グローバルコンシューマー事業・GARBiC)
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カゴメグループの海外拠点は、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアなどグローバルに展開しています。これらの各拠点が連携し、事業の拡大を目指します。特に北米には加工用トマトにおける一連のバリューチェーンを保有しており、今後も注力するエリアです。
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国際事業セグメントのグループ会社
企業名
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一次 加工
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二次 加工
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2016年度売上 ※日本基準
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2024年度売上 ※IFRS基準
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① Ingomar
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〇
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-
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577億円
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② Kagome Inc.
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〇
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200億円
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506億円
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③ HIT
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〇
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〇
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84億円
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226億円
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④ KAU
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〇
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〇
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62億円
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130億円
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⑤Taiwan Kagome
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〇
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23億円
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60億円
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今後の課題 ●トマト加工におけるグローバルバリューチェーンの競争力の強化と、 シナジーの創出 ●二次加工品のフードサービス企業向けのソリューション提案力向上による、 安定的な利益創出 ●インドなど、新たな市場での競争力あるバリューチェーンの構築 ●為替や金利など金融リスクへの備え
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●健康
「健康寿命の延伸」への取り組み
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ビジョンに「トマトの会社から、野菜の会社に」を掲げ、野菜の栄養を手軽に・おいしく摂取できる商品の開発や野菜の機能性研究、健康価値の情報提供などの取り組みを進めました。また、野菜に加え、植物性の食材からなるプラントベースフードにも領域を拡大してきました。
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① 野菜摂取を促進する主な取り組み 2020年から「野菜をとろうキャンペーン」を開始しました。野菜摂取に対する行動変容の促進、ナトカリバランスの普及※などを通じて日本人の野菜不足解消への取り組みを進めてきました。 手のひらで簡単に推定野菜摂取量を測定できる「ベジチェック®」を、自治体や企業のイベント、小売店の店頭などに設置し、累計測定回数は1,300万回を超えました。野菜摂取の行動変容の促進、野菜の栽培や収穫などの体験ができる機会の提供、多様な商品の発売、メニュー提案などを通じ、健康寿命の延伸への取り組みを進めました。 ※ ナトリウム(塩)とカリウム(野菜や果物など)の摂取バランスの良い食生活を送ることの普及
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10年間の主な取り組み(野菜摂取促進施策)
野菜摂取行動変容の促進
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ファンベースドマーケティング
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野菜摂取商品開発・販売
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基盤整備
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• 健康サービス事業の開始 • 野菜摂取推進プロジェクト • 野菜をとろうアプリの提供 • ベジチェック®レンタル 開始
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• ファンコミュニティサイト 「&KAGOME」の拡大 • 野菜生活ファーム設立 • 植育からはじまる食育活動 の開始
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• 機能性表示による バリューアップ • スムージー市場創出 • 野菜スープの売上拡大
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• 食健康研究所の設置 • ナトカリ普及協会設立 • 産官学との連携 • 管理栄養士ラボ設置
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② 植物性食品への挑戦
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2022年からの第3次中期経営計画の成長戦略の一つに、新領域である植物性領域への挑戦を掲げ、取り組みを進めてきました。「プラントベースフード」とは植物性の食材からなる食品全般のことを指し、健康的でサステナブルな食品として注目されています。 2019年にはプラントベース食品の発売、2021年にはプラントベースフードブランドを展開するスタートアップ株式会社TWOとの業務提携契約の締結を行いプラントベースエッグやプラントベースチーズなどを共同開発し発売してきました。 飲料では、2024年9月にBlue Diamond Growersとライセンス契約を締結し、アーモンドミルク市場に参入しました。カゴメの商品開発、マーケティング、営業などのリソースを活かし、日本のアーモンドミルク市場の新しい需要創造に向けて取り組みを進めていきます。
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10年間の主な取り組み(植物性食品の拡大施策)
プラントベースフード(NB)
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プラントベースフード(協業)
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植物性ミルク
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• 野菜由来のうまみ成分を含んだ 「野菜だし」の発売 • 野菜と豆でできたレトルト食品 シリーズの発売 • 外食向けヴィーガン対応 メニューの提案
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• プラントベースフード のスタートアップ 株式会社TWOへの資本参加、及び共同開発商品の発売
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• 「畑うまれのやさしい ミルク」の発売・終売 • Blue Diamond Growersと製造・販売のライセンス契約締結
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今後の課題 ●野菜摂取のさらなる行動変容促進や、多様な商品・サービス展開による、 野菜不足の解消 ●スープや植物性食品など新領域への挑戦
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●環境
「持続可能な地球環境」への取り組み
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カゴメグループは、自然の恵みを享受し、お客様に新しい食やサービスをお届けする企業の責任として、持続可能な地球環境への取り組みを進めてきました。気候変動はさらに深刻化し、農業を取り巻く環境はさらに厳しくなることが予想されます。そのような状況においても農業が続けられることを目指し、温室効果ガス排出量の削減はもちろんのこと、気候変動に対応した品種開発や、少ない水や肥料で農作物の収量を上げることができる栽培技術の開発に取り組んでいます。
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10年間の主な取り組み(環境対応施策)
地球温暖化防止
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資源の有効活用
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水の保全
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持続可能な農業
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• カゴメグループ温室 効果ガス中長期削減 計画の遂行 • TCFDへの取り組み • SBT(Science Based Targets)イニシアチ ブ※の認証取得
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• 食品ロスの削減 • 「プラスチック方針」 の実働 • 廃棄物のリサイクル による資源循環の推進
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• 水の浄化と循環利用の 推進 • 工場を対象とした 水リスク評価の実施 • 高リスク拠点への対応
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• 国内農業の機械収穫化推進 • TNFDへの取り組み • 低環境負荷を目指した 品種・栽培技術の開発基盤の構築
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今後の課題 ●「品質・環境」システムに基づく、環境マネジメントシステムの 適切な運用の継続 ●2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするための継続的な取り組み ●持続可能な農業を目指した品種・栽培技術の開発と事業化 ●環境負荷の低い製品の開発・販売
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●従業員
人的資本への取り組み
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持続的な成長の実現のために、多様な知と知の組み合わせによる新たな価値創造が不可欠です。そのため、働きがいを向上させる3つの施策と風土づくりに注力してきました。「働きがい」をモニタリングする指標として使用しているエンゲージメントサーベイスコアは、調査を開始した2021年が70だったのに対し、2024年では72まで向上しました。
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10年間の主な取り組み(人的資本の拡充施策)
働きがいの向上
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人材開発
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多様な人材集団
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働き方の進化
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• エンゲージメントサーベ イによるモニタリング • 心理的安全性の浸透施策
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• キャリア開発 • 能力開発 • 組織風土開発
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• 「2040年ごろまでに全ての役 職で女性50%」のビジョンを 設定 • 中途採用率向上 • 再雇用制度改定 • ダイバーシティ委員会活動
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• 地域カード制度の導入 • テレワーク制度の導入 • フレックスタイム制度の導入 • 副業制度の導入 • 転居転勤支援の拡充
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今後の課題 ●次期中期経営計画と連動した人材戦略の策定・浸透・発信 ●目指す姿実現に向けた人材の育成・採用と、活躍を促進する仕組みづくり ●多様な従業員の活躍を支える風土や職場の実現
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次の10年に向けて
社会課題解決を競争力につなげ、持続的な成長を実現する
カゴメは創業以来126年にわたり、農の価値を最大限に発揮し、安心・安全で高品質な商品を通じておいしさと楽しさをともにお届けすることで、お客様の健康に貢献してきました。これまでの企業活動で強化してきた経営資本を最大限に活かし、これからも社会課題への取り組みを競争力につなげ、企業価値向上を目指します。
1 軸となる考え方
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変化が激しい経営環境の中で、これからも持続的な成長を成し遂げるために、個々の変化対応に一貫性を持たせる、軸となる考え方が必要となります。それが、以下の3点です。
① 社会課題の解決によって、持続的に成長すること ② 農から価値を形成し、お客様に届けていくこと ③ グローバル(日本を含む)市場で成長していくこと
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この3点を軸に、次の10年の成長戦略の検討を進めています。
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2 成長戦略 検討の方向性
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今後10年の環境変化を予測すると、地球環境の悪化、世界人口の増加に伴う食料不足、農業人口の減少、日本における少子高齢化などが加速し、社会問題はさらに深刻化すると考えられます。一方で、テクノロジーは進化し続けることが想定されます。これまで取り組んできた既存領域の成長に加え、食と農の領域において進化する技術を活用しながら社会課題を解決するソリューションを開発し、新たな価値創造へのチャレンジにより企業価値を向上していきます。
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① 農と地球環境が抱える課題に対応する ソリューションの開発
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② 食と農を起点とした、体と心の健康への貢献
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当社が保有する農から価値を形成するグローバルバリューチェーンにおいて、川上への投資を強化します。それにより、バ
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野菜を通じた健康寿命の延伸への貢献を目指して事業活動を継続してきました。日本の野菜不足解消の目標達成にはまだ至
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リューチェーン全体および各パートの競争力をさらに高め、持続可能な農業を実現する品種や栽培技術の開発を目指します。低環境負荷とコスト競争力を両立させることで、産業の発展に貢献します。
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っていませんが、高齢化などにより「健康であること」の価値はより高まっていくことが予想されます。既存の領域に加え、体だけでなく、精神的・社会的な健康へと領域を拡大しながら、お客様の健康に貢献していきます。
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TOPICS 2035年プロジェクト
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2035年のビジョンと、それを実現する2026年からの中期経営計画については、次世代の経営を担う執行役員を中心メンバーとして策定を進めており、10年後の環境予測からバックキャストによりカゴメが取り組む重要テーマを抽出し、熱い議論を交わしています。上記2テーマのほか、中長期の人材戦略、事業ポートフォリオなどが重要テーマとして挙げられています。2035年ビジョン、及び2026年からの中期経営計画は、取締役会での議論や、従業員との対話などを通じてブラッシュアップした上で、2026年2月に発表予定です。
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2035年プロジェクトメンバーと 従業員の対話
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SPECIAL MESSAGE FROM EXECTIVE OFFICER
DO NOT WASTE A GOOD CRISIS
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当社の研究部門は、不確実性が増す外部環境に適合すべく、自前主義にとらわれることなく、他社との連携・組み合わせにより新しい技術や価値を生み出すオープン化した研究開発を積極的に進めてきました。既存組織の枠を超えた連携や共創による課題推進は研究員の取り組み姿勢やマインド変化にも好影響を与えており、その成果の一例が、「ベジチェック® 」です。また、創業以来、品種開発や栽培技術の研究も継続してきました。昨今の気候変動による世界のトマト圃場への影響は想像以上に深刻です。畑からの価値創造は、他社には真似できない価値づくりプロセスであり、その重要性が増しています。この活動を加速させるため、2023年10月に農業研究を統括するGARBiCを設立、2024年9月には世界の農業技術を保有する新興企業などとの連携を加速するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も設立しました。私自らもGARBiCの米国研究拠点に赴任し、気候変動を事業機会とすべく前線で活動しています。
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PROFILE 執行役員 グローバル・アグリ・リサーチ& ビジネスセンター所長 上田 宏幸
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野菜の可能性は無限に広がっています
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PROFILE 執行役員 商品開発本部長 生形 省次
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商品開発部門の使命は、野菜が好きな方にもそうでない方にも、安心しておいしく食していただける商品を開発すること、またそれを食べ続けていただくことで、お客様の健康増進にも貢献できる商品や情報を開発していくことです。この10年、血圧を下げる、善玉コレステロールを増やすなどの機能性を表示したトマトジュースの開発や、野菜に代表される植物性素材だけで作ったプラントベース食品、植物性ミルクなど、今までになかった様々な商品を開発してきました。 野菜は研究すればするほど奥が深く、加工食品では実現できていない、野菜が本来持つおいしさや栄養・機能的価値がまだまだあり、その可能性は無限に広がっています。 これからも野菜のおいしさや価値をあらゆるシーンで感じていただく機会を提供することで、お客様と野菜の接点を増やすとともに、健康増進に貢献できる商品を開発し続けます。
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インオーガニック成長の機会探索を積極的に進める
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第3次中期経営計画では、既存事業のオーガニックな成長に加え、M&Aを含めたインオーガニック成長の機会探索を積極的に進めることを掲げました。そこで、新規事業の探索・開発・育成を一元的に担う「事業企画本部」を新設し、事業開発のノウハウ蓄積と人材育成を目指した活動を行っています。これまでに、プラントベースフードのスタートアップである株式会社TWOとの業務提携を主導し、Ingomarの連結子会社化やCVC設立の支援を行ってきました。また次の10年を見据え、バリューチェーンの強化ポイントの選定や新たな商品領域の探索、体だけでなく心の健康を目指した新しいサービスの実証検証など、幅広い活動を行っています。企業を取り巻く環境が加速度的に変化する中、自社だけで顧客の課題を解決することは困難です。社会課題の解決と持続的な成長の両立を目指すとともに、社内の挑戦する風土の醸成にも寄与していく考えです。
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PROFILE 執行役員 事業企画本部長 藤関 明宏
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SPECIAL MESSAGE FROM STAKEHOLDER
今後10年に向けた、「カゴメグループへの期待」について、皆様からコメントをいただきました。
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PROFILE 茨城県鉾田市 まちづくり推進課課長補佐 新堀 靖 様
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ゼロからイチを作り出す「カゴメならでは」の社会課題の解決に期待
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2020年に初めて鉾田市にお越しいただき協議をさせていただいて以降、鉾田市の分析に種々の知見を交えて示されるカゴメの皆様による様々な視点での仮説や提案には驚きの連続でした。これまでは鉾田市の人口減少対策として、外から人を呼び込むためにはどうしたら良いかを考えてきましたが、カゴメと連携を深めていく中で、共通のキーワードである「野菜」「健康」だけでなく、若者の「シビックプライドの醸成」という課題にたどり着き、市役所としても新たな変革を起こすことができました。 皆様と関わりを深めていく中で、カゴメが品種開発から生産、加工、販売まで一貫したバリューチェーンを持つ世界的にも珍しい会社であることを知りました。この、取り組む幅の広さは私たち行政の仕事と似ているのではないかと考えています。私たち行政が考える地域課題は何が正解か分からないのが現状です。ゼロからイチを作り出す「カゴメならでは」が、今後の様々な社会課題の解決につながると期待しています。 茨城県鉾田市との「野菜をきっかけにした健康なまちづくり」推進事業の詳細については、こちらをご覧ください https://www.kagome.co.jp/library/company/news/2024/img/2024051301.pdf
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鉾田市・カゴメ包括的連携協定締結式
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鉾田市のイベントでのカゴメのブース出展
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社会に必要なベースづくりという視点で、 企業との合致点を増やしていきたい
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PROFILE 認定NPO法人全国こども食堂 支援センター・むすびえ 理事長 湯浅 誠 様
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こども食堂は、「こども」と「食」という、多くの人の関心ごとゆえに、人を集める吸引力を持っています。食は地域のつながりをつくるという意味でも重要であり、「子どもが嫌いな野菜も、こども食堂では食べてくれる」といった話は、食育にもつながります。 こども食堂は「食」で社会課題の解決を目指しているという点において、カゴメとの共通項を持っています。 支援企業には、短期的な成果を追い求めるのではなく、長期視点での支援をお願いしています。こども食堂の取り組みは、成果が見えづらいという側面もありますが、企業側は、利益にシビアな環境に置かれています。私たちは、成果としてのエビデンスを出し続ける努力も進めていき、社会に必要なベースづくりという視点で、企業との合致点を増やしていきたいと思います。昨今は、共助資本主義という考え方も広がってきています。カゴメには、マルチステークホルダー型の経営をさらに進めていただき、こども食堂への長期的なサポートを期待しています。
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グローバルバリューチェーンを築き上げ、 収益に結びつけられるかに関心
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PROFILE 三井住友DSアセットマネジメント 株式会社 運用部リサーチアクティブグループ シニアファンドマネージャー 古賀 直樹 様
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カゴメは、野菜・トマトを軸に農業や健康の領域まで事業を広げ、日本国内においては、高齢化をはじめとする様々な社会課題の解決に資する立場にある会社です。社会課題を解決しながら業績を伸ばすことができる高いポテンシャルを持っており、ファンベースドマーケティングやファン株主づくりといった点においても独自のポジションを確立しています。今後のカゴメの10年を見据えると、持続的に成長できる強い企業になるという目標をしっかりと掲げ、自らグローバルバリューチェーンを築き上げようとしていますので、それをどこまで完成させ、収益に結びつけられるのかという点に関心を持っています。 投資家とのコミュニケーションという点においては、情報発信の内容含めてまだ不十分に感じるところもありますので、長期目線の投資家ともっと対話をすることで改善していく余地はあると思います。社会に不可欠な会社として、またグローバル企業としてのカゴメの成長を楽しみにしています。
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PROFILE 全国農業協同組合連合会 茨城県本部 園芸部 次長 須賀田 良彦 様
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日本の農業の持続性に貢献できる取り組みに期待
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カゴメは、加工用トマトの生産者にとっては、「顔が見える」メーカーです。日頃から、カゴメの担当者が産地を巡回していることで契約農家とは一体感があり、技術的にも一歩先を行っています。カゴメの歴代社長が、茨城県の加工用トマトの産地を訪問されていることは、他のメーカーにはないカゴメならではの活動であり、契約農家の生産意欲の向上にもつながっていると思います。 今後、地球温暖化による気候変動や農業の担い手不足が予測され、農家にとって深刻な問題になってきます。異常な暑さで加工用トマトの収量が落ちるという現象も既に産地で起きています。カゴメには、夏の暑さに強いトマトの品種開発や栽培技術の開発などを期待するとともに、国産野菜を使った商品をもっと増やしていただき、トマトだけではなく、にんじんなど他の国産野菜も安定的に生産できる仕組みづくりを通じ、日本の農業の持続性に貢献する取り組みの拡充をお願いしたいです。
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「なくてはならない会社」と思ってもらえる存在に
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PROFILE コーポレート企画本部 システム戦略推進部事業 DXグループ 田丸 恵里菜
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これまでの中長期のビジョンは、各部門の組織目標に落とし込まれる中で縦割り感が出てしまうため、全社の足並みを揃えるのが難しいのではないかと感じていました。中長期よりもさらに長い視点でのビジョンがあれば、“大きく変わる世の中で「私たちカゴメは」どう変わっていくのか”を、部門の壁を越え同じ視点で未来に向け連携しやすくなるのではと思い、プロジェクト2050に参加しました。プロジェクトでは、部門ごとに意識している提供価値や時間軸、ステークホルダーが想像以上に大きく異なることを実感しました。メンバー間で色々な言葉出しをしたり、図や絵に描き起こしたり、今のカゴメ・これからのカゴメのイメージを丁寧にすり合わせました。今後は、「農」や「自然の恵み」という“カゴメらしさ”の提供の仕方を広げるチャレンジを続け、従業員含めたくさんのステークホルダーから「なくてはならない会社」と思ってもらえる存在になりたいです。
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2 【サステナビリティに関する考え方及び取り組み】
カゴメのサステナビリティに対する考え方
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サステナビリティ基本方針 カゴメグループは創業以来、 「畑は第一の工場」というものづくりの思想のもと、 自然の恵みを活かした新しい食やサービスを提案してまいりました。 この営みを未来につなぐために、 企業理念である『感謝・自然・開かれた企業』の実践と、 ステークホルダーの皆さまとの協働により社会課題の解決に取り組み、 持続的なグループの成長と持続可能な社会の実現を図ります。
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サステナビリティ推進体制
当社では、関連部門で進めてきたサステナビリティへの取り組みを全社での活動として強力に推進するため、2022年10月にサステナビリティ委員会を設けました。委員会は、各分科会での協議に基づいてサステナビリティ課題に対する長期の備えや打ち手について議論し、経営会議や取締役会に報告・付議を行うことで、経営戦略への反映を図っています。
2024年度のサステナビリティ委員会における議題
2024年度においては、計4回のサステナビリティ委員会を開催しました。長期的視点での「持続可能な社会の実現(社会課題の解決)」及び「企業の持続的な成長」に向けて検討を行っています。
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議題
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第1回 (3/13)
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・ 2050年ビジョン策定プロジェクト ~経営への最終報告に向けた意見交換~
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第2回 (6/7)
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・ 人権デューデリジェンスの実施 ~人権テーマの特定について~
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第3回 (9/11)
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・ 気候関連財務情報開示において求められるトップマネジメント(有識者による講義) ・ TCFD更新プロジェクト 中間報告 ・ 環境マネジメントレビュー(Ingomar連結子会社化によるGHG排出量削減への影響など)
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第4回 (12/11、17)
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・ 企業の自然資本に関する情報開示対応(有識者による講義) ・ TNFD試行の結果報告、及びTCFD更新プロジェクトの着地について ・ プロジェクト2050の完了報告、及びサーキュラーエコノミー課題の共有 ・ 2024年度CSR調達活動報告及び2025年度活動計画 ・ FLAG目標の設定について ・ Scope3削減取り組みの報告
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サステナビリティ委員会(分科会)の活動ハイライト
プロジェクト2050分科会
経営を中心に策定する次期長期ビジョンへのインプットを目的として、「2050年はどのような社会でありたいか」「その社会の実現に向け当社は何に取り組んでいくのか」を若手社員で考える、“2050年ビジョン策定プロジェクト”がサステナビリティ委員会傘下の分科会として発足しました。20~40代の社員を対象にプロジェクトメンバーを募集し、多数の応募の中から熱意あるメンバーを選考しました。2023年10月から2024年3月の間にワークショップを計11回開催し、シナリオプランニングや「カゴメらしさ」の把握などを行いながら、ビジョンを描きました。プロジェクト期間中、サステナビリティ委員会では2回、プロジェクトメンバーからの進捗報告が行われ、活発な議論が交わされました。委員会ボードメンバーからの助言を踏まえ練り上げられた2050年ビジョンは、最終的に2024年4月の経営会議にて答申され、経営からは次期長期ビジョンで若手社員の想いを引き継いでいく旨をフィードバックしています。
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参加メンバーによるワークショップの様子
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環境分科会
2024年の環境分科会における重点テーマとして、TCFD開示の刷新に取り組みました。2024年2月の経営会議にて社内横断プロジェクトとして進めていくことが承認され、全11部門が参加するワークショップが計3回開催されました。そこでは気候変動によるリスク・機会の洗い出しや、対応策の立案についてディスカッションを行いました。9月のサステナビリティ委員会では、有識者による気候関連財務情報開示についてのレクチャーが行われた後、分科会よりTCFDプロジェクトの進捗報告があり、主に当社が初めて開示する財務影響について審議を行いました。またTNFDの試行結果と初回開示内容が報告され、来年度以降の取り組みについても確認が行われました。
社会分科会(サプライチェーンCSR)
2023年の人権方針策定に続いて、調達部門・法務部門・サステナビリティ部門からなる社会分科会では人権デューデリジェンスを推進しています。2024年6月のサステナビリティ委員会では、「カントリーリスク」及び「関連部門によるワークショップで抽出された潜在的な人権リスク」から特定した、当社が優先すべき人権テーマの案が分科会より提示され、対象国の選定理由やその妥当性について活発な議論が交わされました。また2024年度からテーマとして取り扱うことになったCSR調達活動についても、今後の課題が分科会より提示されました。
MESSAGE
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全社でTCFDと向き合う カゴメは2019年よりTCFD提言に基づいたシナリオ分析を実施し、その結果を開示してきました。今回、内容を刷新するべく新たにTCFD更新プロジェクトを立ち上げ、私はその事務局を担当しました。本プロジェクトでは、前回参加メンバーでなかった企画・開発部門や農事業部門などの幅広い部門にもご参加いただき、全社的に認識を共有しながら議論を進めることを重視しました。カゴメは農業に根差した企業であり、地球温暖化による異常気象が農業に与える影響を既に実感しています。そのため、将来の不確実性が高い気候変動に対する対応策を検討する本プロジェクトの意義を社内でスムーズに理解してもらえました。全ての部門が自分事として前向きに取り組んだ結果、バリューチェーン全体でのリスクと機会の評価や対応策の具体化が実現しました。「食を通じて社会課題に取り組み、持続的に成長できる強い企業になる」の実現に向け、今後も引き続き取り組みを進めていきます。
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Profile 経営企画室 サステナビリティグループ 中村 真子
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当社のマテリアリティに対する考え方
当社では、マテリアリティを持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて、ビジネスモデルを持続させる上で対処すべき課題と位置付けています。これらは、中期重点課題やサステナビリティ課題、また、時間軸によらない課題も包含しています。特定した7つのマテリアリティのうち、3つは当社が事業を通して解決を目指す社会課題、残りの4つは当社の価値創造活動を強化していく上での課題です。 これらのマテリアリティを推進していくことで、持続的に成長できる強い企業を目指していきます。
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マテリアリティ特定プロセス
2019年にマテリアリティを特定して、経営に反映してきました。しかしながら、経営を取り巻く環境は日々変化しており、第3次中期経営計画の最終年度である2025年には、マテリアリティの見直しを行う予定です。現マテリアリティの起点となっている、社会課題のロングリストを更新し、次期長期ビジョンや既存事業との関係性が高いものを抽出、経営層をはじめとした社員の意見やステークホルダーの動向を踏まえて優先度付けを行うことで、改めてマテリアリティの特定に取り組みます。特定したマテリアリティについては
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2018年
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社会課題の抽出・整理
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2019年
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社外ステークホルダーからの第三者評価を実施し、マテリアリティを特定
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2021年
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マテリアリティの見直し (マテリアリティを17項目から7項目に整理) • 社外ステークホルダーへのヒアリング • 取締役会での妥当性評価
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2023年~
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サステナビリティ委員会による課題推進
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~2025年
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次期中期経営計画に向けたマテリアリティの 見直し検討
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具体的な施策やKPIなどを設定し、中期経営計画へ反映させていきます。
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TOPICS 知財活動
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① ブランドを守る知財活動 創業より築いてきたブランドを守り、発展させていくために、経営企画・法務・広告・広報部門からなるブランド審議会において、コーポレートブランドの適正利用についての方針・規程・マニュアルを策定し、それらをもとに適正利用を図っています。 2024年度は、事業計画を踏まえ、国内では主力商品ブランドにおける権利拡充と海外出願の強化により、ブランド保護の拡充を図りました。例えば、国内では、野菜ミックスジュースの主力商品の「野菜一日これ一杯」について図形、ロゴに続き、標準文字での登録を獲得することで、権利範囲を広げました。海外では、輸出先増加に伴う各ブランドロゴ出願のほか、模倣品への水際対策として税関登録や中国模倣出願への係争対応を行い、加速する国際事業の成長を支えています。 今後もカゴメブランドの成長と発展を法律の面からサポートしていきます。
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② 技術を守り、活用する知財活動 食を通じた社会課題の解決に向け、日々研究開発活動を行うとともに、知的財産の保護と活用による成果の最大化を図っています。主に、農業、健康、加工飲食品分野において、各事業部門の戦略とも連動した知財活動を行っています。 2024年度は、トマト栽培に関するアプリ、トマトパルプの機能性、「ベジチェック®」などに関連する特許権を取得しました。 研究者の知見とアイデアをもとにして、初心者の方でも安心してトマトを栽培できるよう開発したトマト栽培サポートアプリには、当社の特許技術が活用されています。また、トマト由来食物繊維の機能性に関する研究成果に基づき、血糖値の上昇を抑える機能に関する食品の用途特許を取得しています。併せて、この研究成果に基づき、当社の基幹商品である野菜飲料において機能性表示を行っています。その他、他社の模倣を防ぐため、推定野菜摂取量の測定機器である「ベジチェック®」も、当社の特許
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技術により保護されています。 当社の技術力の向上を通して、企業価値の向上と持続的成長、さらには食分野の発展に貢献していきます。
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7つのマテリアリティと主な取り組み
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マテリアリティ
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目指す姿(KPIなど)
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主な取り組み
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貢献できるSDGs
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3つの社会課題
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健康寿命の延伸
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様々な商品や情報により野菜摂取を促進し、 人々の健康的な食生活や生活習慣に野菜で貢献 する。
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野菜をとる食生活への行動変容に つながる価値開発・情報発信
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野菜摂取に貢献できる商品の 開発・普及
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貢献できる健康期待領域の拡張
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農業振興・地方創生
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農事業や品種開発・ 技術開発などを通して、持続的な農業の確立を 目指す。
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野菜の産地形成と加工による 地域農業ビジネスの振興
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農業の生産性・持続性が向上する 技術・サービスの開発
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事業活動を通じた国内農産物の 魅力発信
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持続可能な地球環境
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調達から製品に至るまでの事業活動の環境負荷を低減する。2050年までにカーボンゼロを実現する。
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2050年カーボンゼロに 向けた取り組み
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食品ロスの低減の取り組み
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水・生物多様性の保全
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環境負荷が低い原材料・資材調達と 商品展開
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価値創造活動の強化
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安心・安全な商品の提供
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品質第一・利益第二※を実現する。 ※ お客様に安心・安全な 品質を提供することと、利益の創出を、どちらも大事にするというカゴメの考え方
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ブランドへの信頼につながる 品質向上・お客様との対話
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持続可能な サプライチェーンの構築
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環境変化に対応できる 安定的な調達基盤と 物流体制を構築する。
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環境・社会的に持続可能な 責任ある調達
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お客様に商品を届け続けられる 物流体制の構築
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多様性の尊重・ 人的資本の拡充
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多様性をイノベーション創出、持続的な成長につなげる。
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ダイバーシティ&インクルージョン 推進によるイノベーションを 創出しやすい環境づくり
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健康経営の推進
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コーポレート・ ガバナンスの強化
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「自律」のさらなる強化と「他律」による補完で、自らの意志で時代に適応するコーポレート・ガバナンスを構築する。
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コーポレートガバナンス体制の強化
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適切な情報開示と透明性の確保
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知的財産戦略の 策定・リスクマネジメント
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持続可能な地球環境 カゴメグループは、自然の恵みを享受し、お客様に新しい食やサービスをお届けする企業の責任として、「地球温暖化防止」「資源の有効活用」「水の保全」「持続可能な農業」など、持続可能な地球環境への取り組みを進めています。
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気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)提言への取り組み
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自然の恵みを原材料とするカゴメグループにとって、自然環境の保全は事業の継続のために必要不可欠です。
カゴメグループは、気候変動と自然資本の損失が事業の持続的成長に影響を及ぼす重要課題であると認識しています。
気候変動への対応として、2019年に一部の部門でTCFDシナリオ分析を実施し、事業におけるリスク・機会を明確化しました。2022年4月にTCFD提言への賛同を表明し、2023年末に改めて社内横断的なTCFD更新プロジェクトを発足させ、カゴメグループのバリューチェーン全体に対する気候変動が及ぼす影響を分析・特定し直しました。
また、自然資本の対応として、2023年9月に公表されたTNFD提言に従い、2023年末からTNFDの対応を開始しました。TNFD初年度として、事業活動において最も重要な「トマト」に限定し、自然資本へのインパクトと生態系サービスへの依存に対する自然関連のリスク・機会をLEAPアプローチにより評価しています。
当社は、気候変動と自然資本は複雑に関係していると考え、TCFDによる気候関連財務情報と、TNFDによる自然関連財務情報との統合的な開示に取り組んでいます。
今後も、カゴメグループはTCFDやTNFDに基づく情報開示を拡充し、気候変動や自然資本に関する課題に対応することで、持続可能な社会と持続可能な農業の実現に貢献していきます。
カゴメグループは事業の最大のリスクを原材料調達の途絶と考えています。気候変動、自然関連課題による原材料調達の影響などに対し、グループとしてレジリエンスを強化し、右図のガバナンス体制のもとで企業価値向上を目指します。 取締役会は、経営会議及びサステナビリティ委員会を監督しています。経営会議は、サステナビリティ委員会からの報告を受けて、当社グループの経営方針や戦略を審議し執行しています。また、サステナビリティ委員会とISO14001に則った環境マネジメントシステムとの連携によって、当社グループのガバナンス体制を構築しています。
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サステナビリティ委員会
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サステナビリティ管掌役員(取締役執行役員)
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社会課題の解決およびESG課題の対応に関わる本部役員・ 関連部門長 サステナビリティ情報発信部門
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➤長期的視点での「持続可能な社会の実現(社会課題の解決)」 及び「企業の持続的な成長」に向けた“カゴメのあり方” の検討、経営戦略への反映 ➤マテリアリティの達成に向けて特定された “サステナビリティ課題”のモニタリング、推進主管への指示 ・アドバイスの実施
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気候変動に関するシナリオ分析(TCFD)
リスク・機会の特定
カゴメグループでは、2050年までに当社グループの温室効果ガス排出量を実質ゼロにすることを目指して、2030年に向けた温室効果ガス排出量の削減目標を策定し、2022年にSBTイニシアチブから「1.5ºC目標※1」の認定を取得しています。この目標に整合するため、TCFDのシナリオ分析をこれまでの「2ºC」および「4ºC」シナリオから、「1.5ºC」及び「4ºC」シナリオに変更し、気候変動が事業に与えるリスクと機会を特定しました。
※1 産業革命前からの気温上昇を 1.5ºCに抑えるための科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出削減目標
気候変動に関するリスク・機会の一覧
大分類
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№
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気候変動 リスク・機会
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影響度
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発現時期
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移行リスク
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1
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炭素税導入による炭素税の支払いの増加
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小
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短~中期
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2
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炭素税の導入による購入した製品サービスや輸送に関わる調達コストの増加
|
大
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短~中期
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3
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GHG排出量削減のための最新技術・設備投資の増加
|
小
|
短~中期
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4
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容器包装規制の対応費用の増加
|
小
|
短~中期
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5
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電力・エネルギー価格の高騰によるコストの増加
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中
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短~長期
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物理的 リスク
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急性
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6
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極端な気象現象の増加 (工場浸水時の想定損害額や大雨・洪水などの工場不稼働に伴う利益の逸失)
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中
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短~中期
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7
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降水パターンの変化(渇水による水価格の高騰)
|
小
|
短~中期
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慢性
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8
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降水パターンの変化(地下水位低下による生産コストの増加)
|
小
|
短~中期
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9
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気温上昇によるトマト収量減による調達コストの増加
|
大
|
短~長期
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10
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高温による農業従事者の生産性の低下に伴う調達コストの増加
|
大
|
短~長期
|
機会
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1
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輸送効率化によるコストの削減
|
小
|
短~中期
|
2
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容器包装の資源効率化によるコストの削減
|
小
|
短~中期
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3
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肥料・水使用量の削減によるコスト削減、開発利用・外販による売上の増加
|
小
|
短~中期
|
4
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サステナブル製品・低炭素製品の開発・販売による売上の増加
|
小
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短~長期
|
5
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事業活動の多様化による売上機会の増加
|
大
|
短~長期
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※分析の時間軸として、短期は中期経営計画の最大4年間、中期は次の長期ビジョン終了年2035年、長期は2050年としています。
※TCFDにおける物理的リスクでは平均気温上昇幅に応じたIPCCの各SSPシナリオ、移行リスクでは主にIEAのNZEシナリオを
参照しています。
※影響度は「小」を20億円未満程度、「中」を20~50億円程度、「大」を50億円以上を目安としています。
リスク・機会による財務影響とその対応策
特定したリスク・機会のうち、影響度が大きい項目、算定可能な項目の財務影響を算定しました。さらに、TCFDの枠組みを活用して抽出されたリスク・機会に対し、「気候変動(GHG・炭素税)」「持続可能な農業」「水」「サステナブル製品・事業活動の多様化」に分け、プロジェクトにて各バリューチェーンの対応策を検討しました。
① 気候変動(GHG・炭素税)―――――――――――― 気候変動に関するリスク・機会への対応戦略(緩和)
当社は、炭素税導入やエネルギーコスト上昇を気候変動に関する移行リスクとして認識しています。国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー見通し(WEO)」で提示されている気候変動シナリオを参照し、炭素税支払金額、エネルギー需要・価格をもとに影響を予測しました。炭素税導入による支払いコスト増としては、ネットゼロ排出(NZE:1.5ºCシナリオ)では約18億円、公表政策シナリオ(STEPS:4ºCシナリオ)では約16億円のコスト増が見込まれます。
当社は、SBTイニシアチブの認定を取得し、工場のエネルギー効率向上や再生可能エネルギーの活用等の温室効果ガス排出量削減に継続的に取り組みます。また、サプライヤーとの連携を強化し、輸送効率の改善、容器包装をはじめとした原材料調達における温室効果ガスの排出量削減を目指します。
リスク・機会認識 炭素税導入やエネルギー価格変動 (移行リスクNo.1,2,3,4,5、機会No.1) 財務影響
炭素税導入による支払いコストの増加
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炭素税導入による調達コストの増加
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1.5ºC
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4ºC
|
1.5ºC
|
4ºC
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2030年
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2030年
|
2030年
|
2030年
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18億円
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16億円
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222億円
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190億円
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対応策
※ 電力購入契約(Power Purchase Agreement)
② 持続可能な農業 ――――――――――――――――― 気候変動に関するリスク・機会への対応戦略(適応)
気温上昇をはじめとした気候変動がトマトの収量に強く影響する可能性が懸念されています。2017年6月、米国カリフォルニア州で高温が続き、トマトの収量が平年と比べて16.1%(米国農務省)減少する実害も出ています。
当社グループの原材料トマトの主要産地である同州のトマト収量データをもとに「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書」の各シナリオでの収量変化予測を分析しました。同州における6月の最低気温を分析し、2050年においてSSP1-1.9(1.5ºCシナリオ)では71億円、SSP5-8.5(4ºCシナリオ)では147億円、日本カゴメの調達コスト増が見込まれました。トマトの収量が低下した場合は、実際は生トマト単価やトマト加工品(原材料)の売値が上がり、海外子会社は利益増となるため、グループ全体の利益減となるわけではありません。当社は川上のバリューチェーンを持つことで収益の安定性を保っていきます。当社は、安定的な原材料トマトの確保に向け、気候変動への対応戦略として、高温耐性品種への改良(栽培技術・品種開発)、乾燥耐性品種の開発、節水・減肥栽培技術の導入、新たな産地の開発調査を実施していきます。
リスク・機会認識 気温上昇による農産物への影響 (物理的リスクNo.8,9、機会No.3,4,5) 財務影響
気温上昇によるトマトの収量変化
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1.5ºC
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4ºC
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2035年
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2050年
|
2035年
|
2050年
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61億円
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71億円
|
71億円
|
147億円
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算定式: 調達金額の上昇額=「調達額」×「2017年のカリフォルニア州トマト収量USDAデータをもとにした高温による収量減少率」×「IPCCの気温上昇予測」
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対応策
③ 水 ―――――――――――――――――――――― 気候変動に関するリスク・機会への対応戦略(適応)
台風や集中豪雨、水害が発生すると、トマトをはじめとする原材料の調達が困難になります。オーストラリア工場では2017年4月、記録的な大雨によってトマトの裂果や病気などで収量が低下し、工場も稼働が停止しました。他方で、カゴメグループは商品の原材料となる作物の栽培に水を使い、加工段階でも多くの水を使用しています。渇水が発生すると水使用コストが増加し、原材料収量が低下する可能性があります。実際に過去に干ばつが発生した際には水価格が400%上昇するなど、渇水によるリスクにさらされています。
カゴメグループの工場では、活動する地域の水資源を守るため、国内6工場、海外7工場で水管理計画を策定し、取水量・排水量、水リサイクル量、排水の水質などを管理して、それぞれの地域に合ったサステナブルな対応を進めています。また、国内6工場と海外7工場を対象に水リスク評価を行い、水リスクが高い海外の優先拠点においては、カゴメグループの各海外工場と現地関係者などでエンゲージメントを行い、各工場や地域に応じた様々な対策を講じています。
さらに、工場に対する水害や渇水の影響に対しては、既に小坂井工場に防水壁を設置するなど、国内工場においてはリスク軽減措置を講じています。こうした取り組みをグループ全体に波及させていきます。
リスク・機会認識 水害、渇水による影響 (物理的リスクNo.6,7、機会No.4)
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対応策
※2022年:国内全工場ハザード対策完了
④ サステナブル製品・事業活動の多様化 ――――――――――― 気候変動に関する機会への対応戦略
気候変動によるリスクに適切に対応していくことで、カゴメグループにとっての事業機会が生まれます。例えば、異常気象や自然災害の増加により、長期保存可能な災害用保存野菜商品の需要が高まり、また、気候変動への関心が高まれば、「できるだけ環境にやさしい商品を選びたい」というサステナブルな選択肢の需要を増加させます。
その一例として、気候変動により災害が増加した場合の長期保存可能(賞味期間5.5年)な災害用保存野菜商品の売上の影響を試算しました。当社災害用保存野菜商品の平均年間売上金額と国土交通省の「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」のシナリオ別洪水発生頻度をもとに算定したところ、1.5ºC(2ºC)シナリオでは7億円、4ºCシナリオでは10億円の財務影響(売上収益増)が見込まれました。
また、事業活動の多様化において、カゴメは世界各国の革新的な農業技術を有する優れたスタートアップ企業への出資及び協業を行うCVCファンドを設立しました。このファンドの取り組みにより、気候変動に適応する新品種や栽培技術の開発及び実装を目指すとともに、出資先とのオープンイノベーションによる新事業の開発を目指します。
リスク・機会認識 サステナブル製品の開発・販売、事業活動の多様化 (移行リスクNo.4、物理的リスクNo.10、機会№2,3,4,5) 財務影響
災害用などの長期保存可能な野菜商品の売上収益増加
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1.5ºC(2ºC)
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4ºC
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2035年
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2035年
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7億円
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10億円
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算定式: ローリングストック商品平均売上高(2020-2023年)×洪水発生頻度の上昇率
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対応策
自然関連に関するLEAPアプローチ(TNFD)
カゴメグループ売上の多くを占める「トマトに関連する事業」を対象範囲として、自然への依存とインパクト、及び自然関連のリスクと機会をTNFDフレームワークのLEAPアプローチによって評価しました。
LEAPアプローチを使用した分析(全体サマリー)
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● トマトに関連する当社全事業を分析対象として特定 • 生鮮事業:国内菜園(直轄、契約) • 加工事業:国内工場(食品製造、農場)、海外工場(食品製造、農場)、 国内委託加工、海外サプライヤー(二次含む)
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● BRF※1を中心に、一部ENCORE※2も使用して事業の自然との接点を確認。 優先地域を特定 • 生鮮事業14拠点、及び加工事業256拠点の計270拠点を確認 • BRFでの拠点評価、及び該当拠点でのトマト購入金額やトマト関連製品 生産金額などからの拠点重要度を踏まえ、日本の菜園・農場と、ポルトガル、 米国、オーストラリアの農場・工場を優先地域として特定
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● 優先地域として特定した、菜園・農場や工場の自然への依存と インパクトを分析 • 優先地域、かつBRFによりリスクが「Very high」となった指標の依存と インパクトについて詳細分析を実施 • TCFDで調査した水への依存や物理的リスクへの依存のほかに、土壌や水質(富栄養化)、 陸域・河川・海洋の利用変化や森林減少、保護区・保全地域などへのインパクトを分析 • トマトは花粉媒介への依存は低いものの、トマト栽培によるほかへのインパクトを分析
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● Locate・Evaluateの結果などをもとに、リスクと機会を特定 • Locate・Evaluateの結果を中心に、食品・農業セクターガイダンスやTCFDの結果も参考に しながらリスクと機会を特定 • リスクと機会の特定にあたっては「生態系サービスの劣化」と「市場原理と非市場原理の 一貫性」の2軸で作られたシナリオを活用した分析も実施
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● 優先度の高いリスクと機会への対応戦略全体像を作成 • 食品・農業セクターガイダンスやIPBES※3などの情報、TCFDの対応策も参考にしながら 対応戦略の全体像を作成 • 一連の活動を取りまとめ、統合報告書に開示
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※1 BRF(Biodiversity Risk Filter, 生物多様性リスクフィルター): WWFが作成した生物多様性関連リスクのスクリーニングと優先順位付けを行うための、オンラインツール ※2 ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure): 国際金融業界団体「Natural Capital Finance Alliance(NCFA)」が作成した、自然への依存とインパクトを理解するために 役立つオンラインツール ※3 IPBES:生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム
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カゴメグループのトマトに関係する事業の自然との接点を、グローバルなデータに基づく評価ツールであるBRFを中心に、一部ENCOREを用いて評価しました。その結果、自然の状況の観点から43拠点を「優先地域の候補」として挙げました。
分析対象(270拠点)
・生鮮事業(14拠点):国内菜園(直轄、契約)
・加工事業(256拠点):国内工場(食品製造、農場)、海外工場(食品製造、農場)、国内委託加工、
海外サプライヤー(二次含む)
分析ツールで抽出した優先地域の候補
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国内菜園
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国内工場 (食品製造)
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国内農場
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海外工場 (食品製造)
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海外農場
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委託加工
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海外 サプライヤー
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区分
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生鮮事業
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加工事業
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加工事業
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加工事業
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加工事業
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加工事業
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加工事業
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優先地域の 候補数
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12拠点
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なし
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5拠点
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8拠点
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5ヶ国
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なし
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13拠点
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拠点評価における優先地域の候補と、該当拠点でのトマト購入金額やトマト関連製品生産金額などからの拠点重要度を踏まえ、以下の通り、優先地域を特定しました。
• 日本の菜園、農場
• ポルトガル、米国、オーストラリアの3ヶ国の農場、工場
優先地域
国
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区分
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拠点詳細
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日本
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菜園、農場
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国内菜園12拠点、国内農場5拠点
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ポルトガル
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農場
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6都市・町:Beja、Evora、Leiria、Lisboa、Santarem、Setubal
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工場
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2工場:FIT、Italagro
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米国
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農場
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1州:California
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工場
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2工場:Ingomar、KIU
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オーストラリア
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農場
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2州:New South Wales、Victoria
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工場
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1工場(KAU)
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優先地域、かつBRF分析でリスクが「Very high」となった指標の依存とインパクトについて詳細分析を実施しました。
分析の結果、TCFDで調査した水の供給や物理的リスクへの依存のほかに、土壌や水質(富栄養化)、農地拡大・河川の利用による自然の変化や森林破壊、保護区・保全地域へのインパクトなどを特定しました。またトマトは花粉媒介への依存は低いですが、トマト栽培での農薬による周辺の生態系への影響などのほかへのインパクトについても特定しました。
詳細分析使用ツール
FAO GLoSIS、International Herbicide-Resistant Weed Database、Global Land Analysis and Discovery、protected Planet、BirdLife International Data Zone、IBAT、Aqueduct、BRF、ENCORE
優先地域における依存・インパクトの特定
Locate・Evaluateの結果を中心に、食品・農業セクターガイダンスやTCFDの結果も参考にしながら、リスクと機会を整理しました。なお、「生態系サービスの劣化」と「市場原理と非市場原理の一貫性」の2軸で作られたシナリオを活用した分析も実施しました。
自然関連リスク・機会の一覧
大分類
|
中分類
|
No.
|
自然関連 リスク・機会
|
移行 リスク
|
政策と法
|
1
|
農薬規制によるトマト収量の減少、調達コストの増加
|
2
|
森林からトマト畑への土地利用変化により発生したGHG排出量削減コストの増加
|
3
|
先住民族や地域コミュニティとのエンゲージメント失敗による事業機会の喪失
|
4
|
バージン食品包装からリサイクル食品包装への代替など、容器包装規制への 対応に伴う調達コストの増加
|
技術
|
5
|
生物多様性の危機への対応のための最新技術・設備投資の増加
|
市場
|
6
|
農業就業人口の減少に伴う耕作地の荒廃、生物多様性への認知度や対応の低下
|
評判
|
7
|
トマトの栽培に伴う生物多様性への影響によるブランドイメージの低下
|
物理的 リスク
|
急性
|
8
|
病害虫発生などによる生産量の減少
|
慢性
|
9
|
過剰な施肥に伴う土地の健全性低下、及びトマト収量の減少
|
10
|
河川などにおける富栄養化による生物多様性の低下
|
機会
|
製品とサービス
|
1
|
植物残渣(トマトの茎など)のアップサイクル・製品化による売上の増加
|
市場
|
2
|
農薬リスクを減じたサステナブルな農業で生産したトマトによるブランド価値の向上
|
評判
|
3
|
在来種、外来種対応によるブランドイメージの向上 「外来の土壌害虫まん延防止のためのカゴメトマト品種の活用」 「花粉媒介者を増やす在来植物の植栽支援」
|
Assessで特定した「リスクと機会」に紐付けながら、現時点対応を進めている活動などを中心に具体的な内容とともに対応策を整理しました。
なお、Locate・Evaluateの結果は、これまでトマトに関する長年の取り組みによって得た知見と大きな齟齬がありませんでした。この結果を受け、これまでの活動の重要性を改めて認識し、引き続き活動を推進していきます。また、今後、地域別のリスク・機会の特定と対応策などについて、検討をさらに進めていく予定です。
対応戦略:「日本の生物多様性を脅かす4つの危機(生物多様性低下の要因)」を踏まえ、日本のみでなく当社
グループが関係する各国の周辺地域に対して自然を保全し、回復させる活動を拡大する
アクション:トマトの栽培を通じて関わる菜園・農場及びその周辺地域と、トマトを加工し製品化する工場及び
その周辺地域において自然を保全し、回復する
No.
|
リスク・機会 紐づけ
|
自然関連 対応策
|
活動例(現時点対応例)
|
1
|
リスクNo.4 機会No.1
|
原材料・容器包装の調達、プラスチック包材や食品廃棄物の削減におけるサプライチェーン全体での持続可能な運用の実現に向けた取り組みの推進
|
•FSC®認証紙パック飲料の展開 •プラントベースフードへの取り組み •プラスチックストローの貼付廃止や 石油から新たに作られるプラスチック の使用量ゼロへの取り組み •プラスチック使用量の削減や リサイクル素材または植物由来素材 への切替拡大
|
2
|
リスク No.1,2,5,7,8,9,10 機会No.2,3
|
最適なトマト栽培システムの開発・確立と運営(水、肥料、農薬使用量の削減、トマト品種の改良、循環型農業の展開)
|
•環境負荷の低い栽培技術の開発 •グローバルでの品種開発、栽培技術の 開発強化
|
3
|
リスク No.3,6,7 機会No.3
|
自治体や地域コミュニティ、生物多様性の主流化、農業従事者などの支援、在来植物の植栽、保全活動への支援
|
•農業振興・農業支援活動 •生物多様性の教育、主流化活動
|
4
|
基本全てのリスク ・機会に紐づく
|
・生物多様性行動計画の計画的な推進 ・第三者認証の取得拡大
|
•認証取得やイニシアチブ・ 団体への参画
|
カゴメグループでは、当社のリスクマネジメントにおいて、リスクとは「当社の事業に対して不利な影響を与える不確実性」と定義しています。
リスク管理の統括機関として、社長を委員長とし、CROを委員会事務局長とする「リスクマネジメント統括委員会」を設置し、リスクの対応方針や課題について、優先度を選別・評価し迅速な意思決定を図っています。また、顕在化したリスクの予防・対応のためのリスクマネジメント活動に対し、経営戦略を踏まえた統合的視点から統括しています。
気候変動リスク、自然関連リスクについても重要課題と認識し全社的なリスクマネジメント体制に統合して管理し、サステナビリティ委員会、経営会議にてリスク管理の進捗確認や、次のステップへの移行判断を行います。
目標・対応策を、2025年度中に策定予定の次期中期経営計画及びカゴメ環境マネジメント計画(2026年度~2028年度)に活用・反映させることで、レジリエンスの向上を目指していきます。
緩和 ● Scope1,2において温室効果ガスの排出量を 42%以上削減する(2020年対比) ● Scope3において温室効果ガスの排出量を 13%以上削減する(2020年対比) ● 飲料PETボトルのリサイクル/植物由来素材を 50%以上にする ● 紙容器飲料の石油由来ストロー使用をゼロにする
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適応 ● 高温耐性品種への改良(栽培技術・品種開発) を1件以上行う ● 乾燥耐性品種の開発、節水・減肥栽培技術の 導入を1件以上行う ● 国内工場の水使用量原単位を9%以上削減する (2021年対比) ※ Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 (燃料の燃焼、工業プロセス) Scope2:他社から提供された電気、熱・ 蒸気の使用に伴う間接排出 Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出 (事業者の活動に関連する他社の排出)
|
(参考)カゴメグループScope1,2のGHG排出量 ( t-CO2e )
|
2020年
|
2021年
|
2022年
|
2023年
|
カゴメ株式会社及び 国内グループ会社 (日本)
|
Scope1
|
45,295
|
43,773
|
41,419
|
41,739
|
Scope2
|
25,234
|
22,713
|
18,810
|
16,087
|
Scope1+2
|
70,529
|
66,486
|
60,229
|
57,826
|
Holding da Industria Transformadora do Tomate, SGPS S.A. (ポルトガル)
|
Scope1
|
24,647
|
27,080
|
25,639
|
27,563
|
Scope2
|
4,505
|
540
|
0
|
0
|
Scope1+2
|
29,152
|
27,620
|
25,639
|
27,563
|
Kagome Australia Pty Ltd. (オーストラリア)
|
Scope1
|
18,923
|
19,046
|
18,551
|
14,045
|
Scope2
|
11,167
|
9,491
|
10,262
|
7,844
|
Scope1+2
|
30,090
|
28,537
|
28,813
|
21,889
|
Kagome Inc. (米国)
|
Scope1
|
4,701
|
5,390
|
4,925
|
4,875
|
Scope2
|
4,927
|
5,518
|
5,600
|
5,456
|
Scope1+2
|
9,627
|
10,908
|
10,525
|
10,331
|
Vegitalia S.p.A. (イタリア)
|
Scope1
|
607
|
794
|
952
|
1,164
|
Scope2
|
1,069
|
1,187
|
1,140
|
1,551
|
Scope1+2
|
1,676
|
1,981
|
2,092
|
2,715
|
Taiwan Kagome Co., Ltd. (台湾)
|
Scope1
|
777
|
969
|
1,010
|
1,256
|
Scope2
|
1,672
|
1,845
|
1,901
|
1,963
|
Scope1+2
|
2,450
|
2,815
|
2,911
|
3,219
|
合計
|
Scope1
|
94,949
|
97,052
|
92,496
|
90,642
|
Scope2
|
48,574
|
41,294
|
37,713
|
32,901
|
Scope1+2
|
143,524
|
138,346
|
130,208
|
123,543
|
(参考)カゴメグループScope3のGHG排出量
|
2020年
|
2021年
|
2022年
|
2023年
|
排出量(t-CO2e)
|
比率(%)
|
① 購入した製品・サービス
|
1,078,720
|
1,141,154
|
1,101,317
|
854,064
|
78.0
|
② 資本財
|
27,333
|
43,735
|
25,177
|
23,551
|
2.2
|
③ Scope1,2に含まれない燃料及びエネルギー活動
|
27,904
|
26,151
|
26,302
|
29,837
|
2.7
|
④ 輸送、配送(上流)
|
52,974
|
51,038
|
50,293
|
46,646
|
4.3
|
⑤ 事業から出る廃棄物
|
5,031
|
12,848
|
11,328
|
13,495
|
1.2
|
⑥ 出張
|
349
|
367
|
367
|
383
|
0.0
|
⑦ 雇用者の通勤
|
1,196
|
1,257
|
1,253
|
1,307
|
0.1
|
⑧ リース資産(上流)
|
606
|
563
|
533
|
449
|
0.0
|
⑨ 輸送、配送(下流)
|
65,706
|
74,946
|
72,521
|
69,477
|
6.3
|
⑩ 販売した製品の加工
|
37,002
|
42,670
|
41,827
|
40,203
|
3.7
|
⑪ 販売した製品の使用
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
⑫ 販売した製品の廃棄
|
16,381
|
17,640
|
16,109
|
15,782
|
1.4
|
⑬ リース資産(下流)
|
2,038
|
262
|
119
|
54
|
0.0
|
⑭ フランチャイズ
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
⑮ 投資
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
合計
|
1,315,239
|
1,412,630
|
1,347,148
|
1,095,248
|
100
|
※ 減少の主な要因はカテゴリー1の原単位を一部変更したことであり、基準年である2020年のGHG排出量は今後再計算を行う予定
※ カテゴリー11は算定対象外、カテゴリー14・15はフランチャイズ事業・投資事業を行っていないため該当なし
※ 2024年データについては、Webサイトにて更新します。
※ Ingomar含む排出量データ等については、2025年度中にサステナビリティサイトにて開示予定です。
カゴメが情熱を込めて取り組んできたものづくりと同じ想いで環境保全活動にも注力することで、持続可能な社会の実現を目指す、という経営の意思を込め、品質・環境方針を制定しています。
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① 野菜による美味しさと健康価値で、大切な人の健康長寿に貢献します。
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② 国内外のパートナーと種子・畑から一貫した安全な農産原材料づくりに取り組みます。
|
③ 野菜を育む水・土・大気を守り、豊かな自然をつくる農業を未来につなげ、得られた恵みを有効に活用します。
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④ 法令や自主基準を順守し、しくみや行動をレベルアップし続けることで、安全で環境に配慮した商品をお客様にお届けします。
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⑤ お客様へ商品やサービスの確かさをお届けしつつ、お客様の声を企業活動へ反映します。
|
|
カゴメグループは安全な原材料を調達し、自然の恵みを活かしたものづくりに取り組んでいます。このため、事業の最大のリスクを原材料調達の途絶と考えています。地球温暖化による大型台風や暴風雨などの異常気象は、原材料産地に大きな被害を及ぼします。このリスクを回避し、将来にわたり事業活動を継続するために、パリ協定※を率先して遂行し、温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組んでいます。 ※ パリ協定:2015年12月12日、COP21で採択された気候変動抑制に関する国際協定
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※ 2024年度はIngomar含まず。Ingomar 含む排出量データ等については、 2025年度中にサステナビリティサイトにて開示予定
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蓄電池システム活用によるデマンド・レスポンスの実現に向けて
温暖化対策として、世の中で再生可能エネルギーを利用した電気の普及が進んでいます。 再生可能エネルギーの主力として、太陽光発電の導入が拡大し続けている中、カゴメでも2021年から積極的に導入してきました。 一方で太陽光発電の普及が進んだことにより、昼間の電量が供給過剰の傾向にあり、電力を使用する側で需要量を調整することが求められています。
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そこで、環境発信に力を入れている富士見工場に蓄電池を2024年9月に導入し、太陽光発電のさらなる拡大を図るとともに、需要調整に向けた準備を進めてきました(当工場の太陽光発電率は約3割まで拡大)。また、茨城工場と那須工場においてデマンド・レスポンス(DR)の実働に向けた実証も新電力と連携し実施してきました。2025年以降蓄電池を活用したDRやバーチャルパワープラント(VPP※)の実現に取り組み、さらなる温室効果ガス排出量の削減に貢献していきます。 ※ VPP:太陽光発電や蓄電池など小規模なエネルギーリソースをIT技術を用いて制御 し、電力の需給バランスの最適化を行うこと 地球温暖化防止の取り組みの詳細については、Webサイトをご覧ください。 https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/global-environment/02.html
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富士見工場に導入した蓄電池システム
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カゴメはSDGsの目標12に賛同し、目標を定め、食品ロス削減に努めています。また、環境負荷低減の取り組みとして、 2020年に「カゴメ プラスチック方針」を制定し、プラスチックの使用量削減なども進めています。
資源の有効活用の取り組みの詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/global-environment/03.html
カゴメグループは商品の原材料となる作物の栽培に水を使い、加工段階でも多くの水を使用しています。日本は水が比較的豊かと言われていますが、世界では水不足が深刻な地域が存在しています。カゴメグループは活動する地域の水資源を守るため、それぞれの地域に合ったサステナブルな対応を進めていきます。
米国のIngomarの事例
● トマト由来の再利用水の地域への提供
カゴメの連結子会社であるIngomarの周辺地域は、地下水の枯渇、干ばつ時の水の供給制限などが発生しているため、2022年8月から、トマトを濃縮する際、廃棄されていた蒸発凝縮水を回収・精製し、植物由来の純水(Botanical Water)として再利用することが可能となりました。 2022年は、精製した水120万Lを中央カリフォルニア灌漑地区(CCID)に提供し、2023年には、カリフォルニア州公衆衛生局(CDPH)から、この植物由来の水の販売許可を取得しました。
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水の保全の取り組みの詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/global-environment/04.html
当社は創業以来、農業によってもたらされる「自然の恵み」を活かした事業活動を行っています。この事業活動を将来にわたって行っていくために、事業における様々な場面で生物多様性の保全に努めていくことを「カゴメグループ 生物多様性方針」で定め、活動を行っています。
持続可能な農業の取り組みの詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/global-environment/05.html
天敵活用による農薬リスクの低減
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在来植物の再生と生物多様性教育
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世界的な農薬リスク低減の動きに対し、カゴメではIPM※栽培の手法を取り入れ、天敵昆虫を活用しトマトの害虫を減らし、農薬使用量を削減する技術確立に向け取り組みを進めています。 ※ IPM:化学農薬のみに頼らない病害虫管理
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カゴメ野菜生活ファーム富士見では、地域の在来植物約1万本を敷地内に植栽し再生に努めています。また畑の生きものクイズラリーや在来植物の見本園など、来場者が生きものや生物多様性に親しむことができる取り組みを行っています。
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アブラムシ(害虫)の天敵のヒラタアブ
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クイズラリーを行う小学生
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当社は、国際的影響力のある環境非営利団体CDPの2024年の「気候変動」の調査において、初めて最高評価の「Aリスト企業」に選定されました。
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安心・安全な商品の提供 「畑は第一の工場」という考え方のもと、野菜の種子や土づくりから取り組み、安全で高品質な商品の提供に努めています。これを保証する品質保証体制を確立し、海外グループ会社への展開も行っています。
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当社では、「品質第一・利益第二」という考え方があります。これは、お客様に安心・安全な品質を提供することと、利益の創出をどちらも大事にするという考え方であり、品質の向上に全社を挙げて取り組んでいます。品質を保証する体制として、国際規格ISO9001に準拠した独自の品質マネジメントシステム(Kagome Quality Management System:KQMS)を構築し、設計開発から調達・生産・物流・販売にわたる品質活動に取り組んでいます。
フードディフェンスへの取り組み
国内での「意図的な異物や薬品混入」に対する備えとして、フードディフェンスに関するリスク評価を行い、評価結果に基づいて管理しています。自社工場における安心・安全カメラの設置や施錠システムの刷新、工場従業員同士のコミュニケーションの活性化のほか、委託先の工場に対しても当社の管理ガイドラインの準拠を依頼しています。
放射性物質に対する取り組み
当社商品に使用する国産の原材料については、行政による放射性物質のモニタリング状況などを確認し、必要に応じて自主検査を行い、安全性を確認しています。
残留農薬に対する取り組み
使用する原材料は残留農薬を分析し、安全性を確認しています。試験・分析機関としての実力を判定する国際規格ISO17025の認定を取得し、分析精度のさらなる向上に取り組んでいます。
食品安全文化醸成への取り組み
KQMSで定められたルールに対して、一人ひとりが正しい行動を取れるように、食品安全文化の醸成に取り組んでいます。製造工場では、アセスメントを実施、レビューを行うことで課題形成を進めています。
「カゴメ 品質の日」の制定 過去の失敗に学び、「品質第一」に対する決意を新たにする日として、9月1日を「カゴメ 品質の日」に制定しました。お客様のカゴメブランドへの信頼を継続していただくために、カゴメグループ全従業員で品質に対する想い・重要性を再認識する取り組みを進めています。
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2016年に国際事業本部内に設定されたグローバル品質保証部門(東京)は、海外グループ会社で守るべきグループ共通の品質管理基準(KBMP)を定め、海外グループ会社に展開する活動を継続的に行っています。また、品質保証のみならず、各社で取り組んでいる環境課題や原価低減などの技術課題の成果を把握し、横断的に共有・活用することで、グループ全体の品質保証レベルや生産性の向上を推進するとともに、海外事業における温室効果ガス排出量の削減や水資源の保全などへも積極的に取り組んでいます。
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海外グループ会社共通の品質管理基準(KBMP)の展開と監査による検証・改善
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KBMPの展開では、日本の考え方をただ現地に押し付けるのではなく、グローバル品質保証会議などを通して、海外グループ会社の改善事例などを共有し合い、お互いに品質を高める意識を醸成していくことに主眼を置いています。KBMPの導入初期では、異物混入に関する考え方や技術を海外グループ会社に展開し、品質管理レベルの向上に取り組みました。続いて、商品設計由来の品質事故の未然防止活動や、品質事故が起きた場合を想定した対応マニュアルの共通ルール化を行いました。KBMPの定着によって、設計から販売に至るまでの各プロセスにおけるカゴメグループ全体の品質向上につながっています。
KBMPは既存の製造設備のみならず、新工場や新しく導入する製造設備にも設計段階から反映させています。
海外グループ会社共通の品質管理基準(KBMP)のカバーする範囲
当社では各グループ会社の成功事例、失敗経験の横展開により、品質保証基盤のさらなる強化を進めています。グループ全体での品質保証会議を2年に一度開催し、2022年11月より、対面での会議を3年ぶりに再開しました。各グループ会社の経営陣や品質保証や製造の責任者が集まり、品質、生産、5S、安全、サステナビリティなどの取り組みなどについて、事例の共有や意見交換を行っています。このワークショップでは、各グループ
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会社の品質マインドを向上させるだけではなく、製造効率の向上や省エネ・環境保全活動など共通性の高い取り組みについて、会社横断型の課題として進め方を決めています。2024年は、11月にHITのあるポルトガルで開催しました。今回は、24年1月にカゴメグループに加わったIngomarも含め、7ヶ国からの参加となりました。品質保証、製造設備、環境保全、商品開発などに関する活発な意見交換を通じ、各社の今後のアクションプランを設定することができました。
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グローバル品質保証会議の様子(24年11月5~7日、ポルトガル)
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多様性の尊重・人的資本の拡充 持続的な成長を実現するためには、多様な知と知の組み合わせによる新たな価値創造が不可欠です。働きがいを向上させる3つの施策と風土づくりに注力し、イノベーションの創出につなげます。
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多様な知と知の組み合わせによる新たな価値創造にはカゴメで働く一人ひとりの自律的な成長が欠かせません。そして自律的な成長を促すエネルギーとなるのが「働きがい」です。
当社では、働く一人ひとりの「働きがい」向上に向けて3つの人事施策と挑戦する風土づくりに注力し、イノベーションの創出につなげていきます。
「働きがい」のモニタリング
2021年から「働きがい」をモニタリングする指標としてエンゲージメントサーベイ(「Wevox」:株式会社アトラエが提供する従業員エンゲージメント測定・支援ツール)を全従業員対象に実施しています。
エンゲージメントサーベイスコアは、2025年までに、同規模企業の上位20%以内の水準を達成することを目標としています。
毎年の調査結果は項目別・部門別に分析し、「働きがい」向上に向けた課題抽出と対応策を進めており、サーベイの開始以降、総合スコアは漸増傾向にあります。今後のさらなるスコア向上と目標達成に向けて、全社視点での施策にとどまらず、各部門との連携による戦略的な取り組みに発展させていきます。現状では、部門間の総合スコアにばらつきがあり(最大差異:12point/2023年調査時点)、差異縮小に向けて部門特性や実態に沿った対応策を展開しています。
心理的安全性の浸透
当社ではダイバーシティ&インクルージョンによるイノベーション創出とリスクマネジメントへの取り組みの観点から、心理的安全性の浸透に注力しています。その活動の一環として、2024年は、心理的安全性を浸透させる施策として、各職場からの有志が集まったボトムアップ型組織であるダイバーシティ委員会により「挑戦を楽しもう!~楽しく、自分らしく、働くためのヒント~」をテーマとした外部ゲストを招いての講演とトークセッションが行われました。また、日頃のちょっとした感謝の気持ちを伝えるための「サンクスバッジキャンペーン」、対話を通じたチームビルディングをサポートする「よりよいチームづくりのための対話実践プログラム」、また社長が参加者と率直に意見交換を行う「サークルタイム」などを実施しました。さらに、管理職向けの教育・評価施策を拡充し、各組織における心理的安全性の向上に向けた取り組みを加速させています。
心理的安全性向上策
対象
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2024年活動
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内容
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組織向け
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よりよいチームづくりのための対話実践プログラム
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「対話」を通じ職場やチーム内に心理的安全性浸透を図る組織開発プログラム
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管理職向け
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全管理職を対象とした マネジメント研修
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心理的安全性の向上、組織づくり・人づくりの推進をテーマにした研修を実施
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360°フィードバック
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全管理職を対象にマネジメント行動に関するフィードバックを上長・同僚・部下が毎年実施
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組織づくり・人づくり プロセス評価制度
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管理職が担う組織風土づくりに対する取り組みについて、 その評価基準を示す制度を導入
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全従業員向け
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ダイバーシティDAY2024
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心理的安全性浸透のきっかけづくりとなるよう、 外部ゲストを招き講演とトークセッションを開催
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障がい者活躍テーマ サークルイベント
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心理的安全性の向上をベースに障がい者活躍をテーマに、 ゲーム形式で学ぶワークショップを開催
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サークルタイム
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経営トップと従業員とのフラットな対話の場として、社長がホスト役を務める
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サンクスバッジキャンペーン
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社内SNSを通じて組織内外感謝のメッセージを伝え合う 全従業員参画型キャンペーン
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サンクスバッジキャンペーン 感謝の気持ちを伝えることで心理的安全性の向上を図ることを目的に、5月・11月にサンクスバッジキャンペーンを開催しました。「感謝」「WoW」の2種類のサンクスバッジをオンライン上で送付する仕組みで、5月開催時は約900名がサンクスバッジを送付し、7割のサンクスバッジが所属組織を超えて届けられました。
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当社が人材育成を通じて目指す姿は、「個人の多様な強みを伸ばし、チームで活かし合うことで、イノベーションを起こし、社会課題の解決に資する人材集団」となることです。人材育成を通じて「キャリア・能力の面で多様な人材集団」と「チームで成果を出す組織風土」を実現し、変化の激しい環境の中でもスピーディーに価値を生み出し続け、多くの領域でイノベーションを起こす強いカゴメを創っていきたいと考えています。
「社会課題の解決に資する人材集団」となるため、各自に期待する役割・職務行動を、役割等級の等級要件や職務行動の評価項目として明示し、それぞれの上位等級を見据えた成長につながるよう、チャレンジングな業務課題や教育機会を提供しています。
個人がそれぞれの多様な強みを発見して伸ばし、一人ひとりが自律度を高めて仕事に取り組めるように、様々な気づきの場や教育機会を3つの観点(「キャリア開発」「能力開発」「組織風土開発」)から用意しています。最近では特に、個人の多様な強みをチームで活かし合い、働きがいや心理的安全性の向上に役立て、チームとして成果を出せる組織づくりに力を入れています。
また、ビジョンである「トマトの会社から、野菜の会社に」の実現に向けて「野菜マエストロ検定」や「野菜の先生」などのユニークな取り組みを実施し、従業員自らが伝道師として野菜の魅力を伝えられるように育成しています。
加えて、デジタル人材の育成にも引き続き取り組んでいます。研修や、公募型のITによる課題解決の体験などを通じ、デジタルスキルを向上させるとともに、そのスキルを業務やビジネスに適用できる人材を、2025年までに全従業員の20%まで増やす計画です。このように、一人ひとりが会社からの要請を踏まえた成長と、自分らしさ(アイデンティティ)に基づく成長の両面を実現する状態を目指しています。
カゴメグループは、国籍・民族・人種・信条・思想・宗教・性別・性自認・性的指向・障がい・年齢・社会的身分などによって差別されることなく、従業員同士が多様な価値観を認め合い、個々の従業員が持てる能力を最大限発揮できることが大切であると考えています。
その上で、持続的に成長できる強い企業になるための経営戦略の一つとして、ダイバーシティ&インクルージョンの推進に取り組んでいます。組織における心理的安全性の確保を重視し、従業員一人ひとりの多様な考えや経験を活かすことで、イノベーションの創出を図ります。
女性活躍の推進においては、2040年頃までに、「社員から役員まで各職位の女性比率を50%に」することを長期ビジョンに掲げて取り組んでいます。
採用においては、多様な採用手法と配置部門の組み合わせにより、多様な人材を確保します。キャリア採用においても広く門戸を開き、当社が目指す「野菜の会社」に向けた人材基盤の強化を図ります。総採用数の2~3割を確保し、中核人材へと育成していきます。
また、多様な経験や知識に応じて、能力を発揮できる機会を創出しています。シニアの活躍の場の創出として、2023年4月に、再雇用制度における契約形態を改定し、最長で70歳まで契約延長を可能としました。65歳以上のシニアの方々も様々な職場で活躍しています。
働きやすい仕組みの整備 多様化する働き方の価値観(育児・介護・共働きなど)に応じた働く場所や時間の制約を緩和し、さらに多様な働き方を実現する仕組みを整備します。 働き方の選択肢の拡大 多様な経験機会を得ることでイノベーションにつなげていくために、副業制度や越境学習※など、所属組織の枠を超えた働く場の提供を進めています。また、自律学習プログラム制度を導入し、能力・キャリア開発を今まで以上に自律的に行っていく体制としました。引き続き現業にとらわれないキャリア開発接点を拡充していきます。
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働き方の進化に関連する環境整備
導入年度
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制度
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2019
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フレックスタイム制度
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テレワーク勤務制度
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副業制度
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2020
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フレックスタイム制度のコアタイム撤廃
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2021
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看護休暇・介護休暇の時間単位取得
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在宅勤務手当
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2023、2024
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転居転勤・単身赴任支援の拡充
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※ 越境学習:普段勤務している会社や職場を離れ、全く異なる環境に身を置き働く体験をすることで新たな視点を得ること
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人的資本に関わる経営陣による審議及び意思決定を伴う専門の会議体として、社内経営陣による人材開発委員会、社外取締役も委員とする報酬・指名諮問委員会を設け、多様な人材が活躍できる人材育成や社内環境、経営人材への適正な処遇を実現できるよう精査・検証しています。 人材開発委員会は、代表取締役社長を委員長とする人事・組織に関わる社内経営陣による審議・意思決定機関で、担当職から役員までの幅広い異動・配置、昇格、キャリア採用、組織改編などに関わる審議を月1回以上という頻度で実施しています。 報酬・指名諮問委員会は、取締役及び執行役員の報酬、及び取締役の指名に関わる取締役会の機能の独立性・客観性と説明責任を強化するための取締役
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会の諮問機関であり、役員人材・処遇に関わる審議を定期的に実施しています。また、当社の持続的な経営と成長をリードする次世代経営幹部の育成と輩出にも、経営主導の重要課題として計画的に取り組んでいます。 人材開発委員会による人材戦略や人事・組織の幅広い領域に関わる審議を起点として、人材開発委員会が意思決定を行うもの、経営会議でさらに審議・意思決定を行うもの、報酬・指名諮問委員会での審議を経て取締役会で意思決定を行うものと、内容の重要性や社内外への影響度合いによって、段階的に審議を重ね、適正なガバナンスを図っています。 人事総務本部長は、人材開発委員会、報酬・指名諮問委員会の委員であり、主管として提言しています。
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戦略
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指標
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2021年実績
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2022年実績
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2023年実績
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2024年実績
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目標
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働きがい
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エンゲージメントサーベイスコア
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70
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70
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72
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72
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76 同規模企業 上位20%スコア
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「心理的安全性」浸透度スコア※1
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67
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71
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72
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73
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-
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人材開発
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キャリア面談人数※2(人)
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610
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645
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561
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316
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-
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成長機会スコア※3
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67
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67
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68
|
68
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-
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多様な 人材集団
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総合職新卒採用における女性割合
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58.0%
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71.0%
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54.5%
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61.5%
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60%以上
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女性管理職比率
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7.4%
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8.4%
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9.6%
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11.1%
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2026年までに12%
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入社10年以内女性の継続就業状況 (男性比)
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1.0
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1.0
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1.0
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1.0 (見込み)
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男性比1.0以上
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総合職キャリア採用構成比
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30.8%
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27.9%
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29.8%
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29.1%
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-
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男性育休取得率 総合職/技能職
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総合職
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62.0%
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75.6%
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65.6%
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94.3%
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42%以上 (2019~2021年の平均)
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技能職
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64.3%
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84.6%
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81.8%
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100.0%
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-
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男女間賃金差※4 (男性の賃金に対する女性の賃金割合)
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全労働者
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66.2%
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65.4%
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68.3%
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69.6%
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-
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正社員
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68.6%
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67.3%
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70.5%
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71.5%
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-
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パート・ 有期社員
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87.8%
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87.6%
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86.6%
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89.3%
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-
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働き方の 進化
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有休取得率※5
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85.0%
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86.4%
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83.4%
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81.7% (見込み)
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-
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総労働時間(時間/年)
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1,867
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1,896
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1,895
|
1,894
|
-
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※1 心理的安全性に関する社内調査スコア
※2 2023年度までの会社から打診する方式から、2024年度より従業員からの申し出による方式をメインとする形に変更
※3 エンゲージメントサーベイ内の「成長機会」に関する設問のスコア
※4 付記事項及び差異に関する補足説明については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/data/
※5 年次有給休暇の取得率は4月~翌年3月の期間で集計。2024年は12月時点の着地見込み
MESSAGE
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今後10年の成長を実現する人材戦略を、スピード感を持って実行します 2016年以降、「働き方の改革」と「価値観の多様化に伴う働く選択肢の拡大」に取り組んできました。働き方の改革では、DXを含む業務効率化を進め、結果として全社総労働時間平均が1800時間台となりました。また、テレワークやフレックスの推進、期間限定で働く地域を選択できる地域カードを導入し、選択肢を拡大することで働き方の柔軟性を高め、ともに大きな改善がみられました。2022年からの第3次中期経営計画では、エンゲージメントサーベイの導入や心理的安全性の浸透など、働きがいへの取り組みをスタートしましたが、まだ取り組みは道半ばです。 今後、従業員の価値観や就労観の多様化は一層進むものと想定しています。2026年からの新中期経営計画や2035ビジョンの実現に向け、新たな価値創造への挑戦を実行していくには人材が欠かせません。そして、その一人ひとりが高いモチベーションを持って、互いを尊重しながらそれぞれのキャリアを築いていることが重要です。そのため、既に検討を開始している人事処遇制度の抜本的な改定をはじめ、カゴメグループにおける全ての人材マネジメント領域をスコープに入れ、今後10年に向けたとるべき人材戦略を策定しスピード感を持って実行していきます。
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Profile 執行役員 人事総務本部長 河原 丈二
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健康経営とは、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実行し、競争優位性を生むことです。 従業員の健康に投資することは、従業員の活力・生産性の向上などの組織の活性化をもたらし、結果的に企業価値の向上につながると考えています。
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カゴメがお客様の健康の増進に貢献する商品・サービスを事業展開する中で、従業員一人ひとりが心身ともに健康であることは、カゴメの事業が説得力を持つことにつながり、カゴメの「ブランド価値」を高めることにもつながります。
加えて野菜飲料をはじめとした商品、健康サービス事業、研究成果、野菜をとろうキャンペーンなどのリソースを活用できることや、かねてより経営の関心事であった「人を大切にする」社風に親和性があることも、他社にはない「カゴメ独自の健康経営の価値」です。
当社では、従業員の心身の健康のため1日350gの野菜摂取を推奨しています。そのための指標として、従業員自身の「ベジチェック®」値の測定を習慣化することで、野菜摂取に対する行動変容を促しています。測定された従業員の「ベジチェック®」値は、専用アプリを使って社内データベースに集約、自動集計され、組織別の測定の割合や「ベジチェック®」値の推移などを確認できるサイトを社内向けに公開しています。その他、従業員の健康に関する課題解決に向け、様々な取り組みを行っています。
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健康経営優良法人2024(大規模法人部門 ホワイト500)に認定
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2017年に「カゴメ健康7ケ条」を制定し、「カゴメ健康経営宣言」を行いました。2024年3月には、 経済産業省及び日本健康会議主催の「健康経営優良法人2024(大規模法人部門 ホワイト500)」に認定されました。2023年12月には、株式会社日本政策投資銀行が行う「DBJ健康経営(ヘルスマネジメント)格付」において、最高ランクを取得しました。これからも「健康経営優良法人認定制度」の主旨に則り、健康経営施策を推進することで、従業員の健康と働きがいのさらなる向上を実現し、お客様の健康に貢献します。
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人権の尊重 カゴメグループは、人権に関する国際規範に基づいた、 「カゴメグループ人権方針」を策定し、その考え方や活動の社内浸透に努めるとともに、事業における人権リスクへの対応を進めています。
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事業活動に関わる人々や、事業を展開する国や地域の人々の基本的人権を尊重することは、企業理念を実践するカゴメグループの責務と考えます。当社では、人権尊重の責任を果たしていくための指針として「カゴメグループ人権方針」を制定し、本方針に基づき活動を推進していきます。本方針は、経営会議で承認され、取締役会でも報告されています。
「カゴメグループ人権方針」の詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/humancapital/06/
人権デューデリジェンスの実施
2024年度は、人権への負の影響を把握するため、事業展開国や原材料調達先のエリア別の人権リスク評価を行いました。また、外部専門家の支援のもと、ワークショップを開催し、ビジネスと人権のグローバル動向について理解を深め、事業活動に関わる潜在的な人権リスクを抽出しました。これらの結果を総合的に判断し、優先すべき人権テーマとして、「日本国内の外国人労働者問題」「海外の調達先、事業拠点の労働者問題」の2つを特定しました。今後、特定したテーマに基
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づき、事業活動への影響の大きさやライツホルダーとの直接対話の実現性を考慮の上、人権リスクの最小化に向けた継続的な取り組みを進める予定です。
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サプライチェーンにおける社会的責任を果たしていくため、「カゴメ CSR調達方針」「カゴメ サプライヤーCSR行動指針」を制定しています。これらの方針は、環境や人権への配慮のために遵守すべき事項を定めており、全ての調達先に対して説明を行い、周知を図っています。また、セルフチェックシートを活用し、調達先の自己チェックや現地訪問を行うことで、その理解・浸透に努め、リスク拠点の特定や改善に向けた対応を進めています。
2023年度は、製品委託先、菜園、海外原材料調達先に対し、サプライヤーCSR行動指針の遵守状況についてセルフチェックを実施しました。得られた結果に基づき、各調達先へのフィードバックや改善に向けた対応を進めています。また、2024年度は、セルフチェックの対象範囲をサプライチェーン上流の調達先である、日本国内のトマト加工品の原材料調達先に広げ、人権デューデリジェンスの実施と併せて、責任ある調達の実現に向けた取り組みを進めています。
「カゴメCSR調達方針」「カゴメ サプライヤーCSR行動指針」の詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/sustainable-supply-chain/01/
https://www.kagome.co.jp/library/company/csr/supplier/pdf/supplier_csr_guidelines.pdf
「カゴメグループ人権方針」や人権尊重に対する理解を深めるため、従業員を対象とした「ビジネスと人権」をテーマとする公開講座、役員やサステナビリティ委員会メンバーを対象とした社外の人権有識者による勉強会の開催などをその施策としています。これらの施策を継続的に実施することで、「カゴメグループ人権方針」の浸透や人権リスク低減のための取り組みを進めています。
「社内の啓発活動」の詳細については、Webサイトをご覧ください。
https://www.kagome.co.jp/company/sustainability/humancapital/06/
持続可能なサプライチェーンの構築 持続的にお客様に商品を届けるために、気候変動、水不足、労働力不足、原材料高騰などのリスクに対し、サプライチェーン全体の最適化に取り組んでいます。
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サプライチェーンを途切れさせない、カゴメ特有の物流環境
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自然の恵みを原材料とした商品をお届けするカゴメにとって、世界中の畑からの原材料輸送に始まり、お客様の食卓に至るまで、モノの流れを止めないことは、事業継続に必要不可欠です。カゴメのサプライチェーンの特徴を図解します。
調達拠点
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工場
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物流センター
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得意先
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世界中から 農作物を集める
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生産地に近く、 消費地から遠い
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1,000を超える商品 複数の温度帯
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多様な販売チャネル
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カゴメグループは世界中に調達拠点を持っています。海外の調達拠点から輸出された原材料は、長い道のりを経て日本に到着し、国内工場へ運ばれます。そして、工場で生産された商品は、工場から出荷された後、物流倉庫、卸店、小売店と、たくさんの人の手を経て、お客様に届けられます。このサプライチェーンの長さが大きな特徴となっており、サプライチェーンにおけるコントロールの複雑さが構造的な課題です。
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国内の工場は、加工用トマトの産地の近くに建設されてきました。この立地は「畑は第一の工場」というものづくりの思想を持つ、カゴメの考え方が背景にあります。物流においては高速道路のICや主要幹線道路まで距離があることで、工場から消費地までの輸送距離が、他の食品メーカーに比べて長くなっています。
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カゴメには1,000を超える商品があり、温度帯は調味料やPETボトル飲料などの常温、ホームパック飲料や乳酸菌飲料などの冷蔵、業務用商品などの冷凍と、3つにわたります。温度帯ごとに保管場所や輸送方法、そこに携わる人員が必要になり、マネジメントも複雑です。幅広いアイテムを展開することは、カゴメの強みであると同時に、物流においては管理が広範囲となっています。
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多様化した販売チャネルも、大きな特徴の一つです。DtoCと呼ばれる通販においては、卸店や小売店を経由せずに流通。お届け先に合わせた最適な物流ルートをSCM本部が企画し、常にアップデートしてF‐LINE株式会社※を通じて配送しています。 ※ F-LINE株式会社:2019年4月 に食品メーカー5社共同によ る効率的で安定的な物流体制 の実現を目的に設立した共同 物流会社です。食品物流の諸 課題の解決に向けて、食品メ ーカー協働での取り組みを進 めています。
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CASE
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サプライチェーンの川上から川下に至る全域の情報同期化・最適化に向けて
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世界的なコスト上昇が見込まれる物流の効率化は、大きな経営課題となっています。カゴメではサプライチェーン全域におけるデータ同期化・最適化を通じて、安定供給に向けた最適な「調達~生産~販売サプライチェーン網」を選択するためのサプライネットワーク構想の具体化に取り組んでいます。
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1 海外サプライチェーンへの取り組み ~調達SCM改革プロジェクトの推進~
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当社の国内加工食品事業において原材料調達の多くが、海外農産地からの輸入となっています。世界各国の産地から様々な種類の原材料調達を行うことで、国内市場・消費者の多様なニーズに応えてきたという背景があります。 しかし、昨今の情勢変化に伴い、グローバルで人件費をはじめとするあらゆるコストが上昇基調にあり、当社の強みだった「世界中からの原材料調達ネットワーク」「多様な原材料配合」を維持することが困難な状況になってきています。 この環境変化に対して、2024年春から「調達SCM改革プロジェクト」を稼働し、その一環として2024年10月から輸入原材料のSCMコントロール業務を当社の物流企画部にて運用・推進しています。 最終的には左頁記載のサプライネットワーク構想を通じて、輸入原材料のSCMコントロール業務について高度化された情報システムでの運用を段階的に目指していきます。
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2 国内サプライチェーンへの取り組み ~ドライバー感謝企画の開催~
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物流業界では、「2024年問題※」が多くの企業の関心事になっており、その影響度の大きさ・深さが多くのメディアに取り上げられる事態になっています。当社にとっても物流各社の支援なしには商品の安定供給が完遂できません。 当社は製造業ではありますが、関与する物流各社の環境整備へ能動的に取り組んでいます。その事例の一つが、2024年春に開催した「ドライバー感謝企画」です。物流パートナーであるF-LINE株式会社と連携の上、各工場において、日頃の感謝をトラックドライバーの皆様へ直接伝えるイベントを開催しました。具体的には、メッセージカードや当社商品を直接お渡しすると同時に、ドライバーの皆様からの“生の声アンケート”を実施しました。この貴重な“生の声”を活かして、我々にとって第一の国内物流拠点でもある製造工場の物流環境を整備していきます。 ※ 働き方改革関連法施行により2024年4月から自動車運転業務における時間外労働の上限規制などが適用されました。これにより、これまでと同じように製品を運ぶことが難しくなっています。
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MESSAGE
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原材料のサプライチェーンの構築に向けて 物流企画部は、安定的な製品供給(製造)をするために、輸入原材料の“適正在庫化”及び“安定供給”を目標とした在庫コントロールを2024年10月から開始しました。 在庫コントロールは、物流企画部のみで実現することはできません。そのため、調達SCM改革プロジェクトの一環として、社内外(サプライヤー・委託先物流会社・調達部・工場)との連携を密にし、今まで共有されていなかった情報をオープンにすることを始めました。情報を共有することでリアルタイムでの情報の可視化ができ、供給リスクに対して早期のリスク回避ができています。引き続きプロジェクトを推進し業務基盤を整えるとともに、外的要因(販売トレンドの変化や海上物流の状況)に対しても常にアップデートしながら、最適な原材料供給に取り組んでいきたいと思います。
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Profile 物流企画部 松本 和巳
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3 【事業等のリスク】
(1) カゴメグループリスクマネジメント方針
私たちは「トマトの会社から、野菜の会社に」のビジョンのもと、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業」になることで、社会的責任を果たしていきたいと考えています。そのために、常に変化する外的環境及び事業上発生しうる様々なリスクを的確に把握・評価し、適切な対応をとってまいります。
また、重大事案が発生した場合に備え、被害の拡大防止と損害・損失の極小化を可能とする体制を確立するなどリスクに対する対応力を高めてまいります。
(2) リスクマネジメント体制
カゴメグループは、中期経営計画の実現に向けて国内外で事業を拡大しているため、内部統制についてもグローバルスタンダードである「3ラインモデル」に沿った取り組みをグループ全体で進めています。この取り組みは、「同一部署が同時に担うべきでない機能を適切に分離・配分し、組織内の相互牽制を利かせる」「各機能の責任の所在を明確にし、全社最適の対応を可能にする」狙いがあります。
① リスクマネジメント統括委員会
リスクマネジメント統括委員会は社長を委員長とし、CROを委員会事務局長とするグループ全体でのリスクマネジメント活動の統括組織です。経営戦略を踏まえた統合的視点から、第1のラインと第2のラインを統括し、全社でのリスクマネジメント活動のPDCAサイクルの実現に向けて、各ラインの取り組みをモニタリングします。
② 第1ラインと第2ライン
第1ラインは、カゴメのバリューチェーンにおける需要創造、生産、調達、一次加工、栽培、研究開発、品種開発などを担う、いわゆる「現場の第一線」の組織です。各事業所で業務遂行上の様々なリスクを把握し、それを適切にコントロールする仕組み(業務分掌、ルール、文書など)を導入することで、日々の業務においてリスクマネジメントを実践します。品質のFSSC22000、環境のISO 14001など、必要なマネジメントシステムも導入し、第1線の各現場で日々実践しています。
第2ライン(第2線)は、コンプライアンス、財務経理、IT、人事、品質、労働安全衛生などを主管する専門組織で、担当するリスク領域におけるリスクマネジメント活動の基本方針・手続きを定め、第1線の組織に対し日々支援やモニタリングをしています。また、リスクマネジメント統括委員会が全社の体系的なリスクマネジメントを実施しています。
③ 第3ライン
第3ラインの内部監査室については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレートガバナンスの状況等 (3)監査の状況」をご覧ください。
詳細については、Webサイトをご覧ください。https://www.kagome.co.jp/company/csr/management/
(3) リスクマネジメント活動
当社におけるリスクマネジメント活動は、リスクの顕在化の予防及び顕在化したリスクへの対応のための活動を主な内容とします。リスクの顕在化の予防と、顕在化したリスクへの対応のための取り組みいずれについても、具体的な活動は、経営計画や事業目標を踏まえたリスクマネジメント活動のPDCAサイクルに基づき実施されます。
① リスクの顕在化の予防
ア. 基本枠組み
当社は、リスクの性質・内容を踏まえた適切な管理を実現するため、企業活動に関するリスクを次の3つに分類しています。
●戦略リスク
中長期的な経営戦略を踏まえ、重大な影響が認められるものとして当社が指定するリスク
●社会・環境リスク
社会・経済環境や自然災害などの外部要因によるリスクのうち、特に顕在化した場合には不可抗力であると一般的に認識されるもの
●オペレーショナルリスク
戦略リスク、社会・環境リスクを除く全てのリスク
以上3つのリスクの分類を基礎として、リスクの企業経営への影響度に鑑み、個別に認識されたリスクを次の2つのリスクに区別します。
●会社の重点リスク課題
戦略リスク、社会・環境リスク、オペレーショナルリスクのうち、企業経営への影響が大きいと評価されるものです。経営会議やリスクマネジメント統括委員会が戦略リスクの指定、重点リスク課題の決定並びに改善事項の指摘などを行い、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを管理します。さらに、取締役会へも報告がなされます。
●各組織のリスク課題
「会社の重点リスク課題」以外のリスクです。各組織がリスクオーナーとなり、リスクマネジメント活動のPDCAサイクルを実施します。
イ. 2025年度の「会社の重点リスク課題」
当社は、次のリスクを「会社の重点リスク課題」と認識し、重点的な管理活動の対象としています。リスクの性質・内容を踏まえた適切な管理を実現するため、戦略リスク、社会・環境リスク、オペレーショナルリスクの3つに分類し開示しています。
リスク 分類
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重点リスク課題
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主管組織、報告会議体 等
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主管組織
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報告会議体(頻度)
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備考(報告内容等)
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戦 略
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①経営戦略 ・予実乖離の発生による利益の悪化 ・新規事業、M&Aの失敗や遅れによる業績悪化や収益機会の喪失 ・保有資産の価値下落による収益性の悪化や財政状態への影響
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■予実:経営企画室、財務経理部 ■新規事業:投資委員会 ■保有資産:財務経理部
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取締役会(毎月) 経営会議(年1回) 取締役会、経営会議(年1回、適宜)
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・事業戦略の成長に当たっての進捗管理等 ・投資委員会での定期的モニタリング内容等 ・政策保有株式の状況、減損検討対象となる固定資産の報告等
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②人材戦略 ・成長分野、新規事業、海外事業領域拡大に対する人材不足 ・特定の専門領域(DX、財務経理等)の人材不足 ・人材育成プログラムの不足 ・ダイバシティ&インクルージョンに関する目標未達
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■人材開発委員会 ■人事部
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人材開発委員会(適宜) 経営会議(適宜)
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・中期経営計画実現に向けて必要な人材の質(スキル)と量(人数) ・人材不足の業務領域を改善するための採用、育成、キャリア形成などの人事施策 ・次世代幹部育成プログラムの設定と試行 ・人材育成とダイバシティに関するKPIについて現状と今後の課題
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③適正なガバナンス体制の構築 ・取締役会および監査等委員会の実効性の不備 ・経営者による内部統制の無効化
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■取締役会 ■監査等委員会
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取締役会(年1回) 監査等委員会(適宜)
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・第3者によるアセスメント等
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社 会 ・ 環 境
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④消費者・広報 ・不適切な広告や顧客対応の失敗による訴訟や不買運動、ブランドイメージの棄損
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■客相、経営企画室(広報グループ)
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リスクマネジメント委員会(隔月)
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・不満、苦情件数、ネガティブ報道のモニタリング内容等
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⑤社会情勢・顧客ニーズ ・日本国内における景気の後退や需要の減少または消費者ニーズの対応の遅れによる売上の減少
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■マーケティング本部、営業本部
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商品企画会議(適宜)
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・競合環境や消費者動向の分析。支店別、カテゴリー別の売上動向等
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⑥金融市場 ・為替変動や金利変動による資金調達コストの増加や資金繰りの悪化
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■財務経理部
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取締役会(四半期毎)
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・リスクヘッジ取引とモニタリング内容等
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⑦天災・不可抗力 ・地震等の災害、感染症や紛争等による、工場操業やその他事業の停止(BCP) ・異常気象による原材料調達の滞り
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■BCP:リスクマネジメント委員会事務局 ■異常気象:調達部
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経営会議(年1回) 執行役員会(適宜)
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・BCP活動の進捗等 ・主要原材料のシーズン毎の調達進捗 ・その他原材料の調達戦略課題等
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リスク 分類
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重点リスク課題
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主管組織、報告会議体 等
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主管組織
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報告会議体(頻度)
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備考(報告内容等)
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オ ペ レ ❘ シ ョ ン
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⑧情報管理・サイバーセキュリティ ・サイバー攻撃や不適切な情報管理による操業停止や情報改竄・個人情報の漏洩
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■情報セキュリティ委員会
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リスクマネジメント統括委員会(隔月)
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・PCウイルス感染、IT機器紛失、外部攻撃件数のモニタリング内容等 ・第3者によるアセスメント等
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⑨安全・衛生 ・職場における労働災害、長時間労働、感染症等の発生による従業員の健康被害
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■労働安全衛生委員会
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リスクマネジメント統括委員会(隔月)
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・労災、感染症等発生状況のモニタリング内容等
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⑩製品・サービスの安全性 ・異物混入、表示の誤り、品質検査の不備、種子の異品種コンタミ、非食品に関する品質検査の不備等による、品質不良品の出荷や健康被害および賠償責任に係る費用の発生の可能性
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■品質保証部、生産調達本部
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品質保証委員会、リスクマネジメント統括委員会(毎月、隔月)
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・不適合/重大品質事故の発生件数、内容等
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⑪サプライチェーン (調達、生産、物流) ・突発的な需要増や、種子・原材料の不足 ・自動倉庫、物流システムの障害等による生産や出荷の滞り ・物流業界の労務管理の厳格化等に起因する輸送能力低下による製品供給の不安定化 ・国内外での天災、紛争等による原材料の急騰・供給不足
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■生産調達本部、SCM本部
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執行役員会(隔月) 経営会議(隔月)
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・課題進捗等 ・突発的な事象の発生について
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⑫法令・規則違反、規制 ・重大な法令、規則違反(会社法、税法、金商法、東証ルール等) ・食品安全関連規制違反、個人の不正行為や関係会社の不祥事 ・環境問題(GHGガス排出量削減、水資源問題、プラスチック問題等)への対応の遅れによる、株主や投資家からの否定的な評価 ・当社および取引先における人権問題(強制労働、ハラスメント等)の発生による、社会的信頼の低下 ・事業展開国における重大な法令、規則、慣習違反
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■会社法、金商法等:財務経理部 ■食品安全法関連:品質保証部 ■不正行為:コンプライアンス委員会 ■環境:経営企画室(サステナビリティG) ■人権:経営企画室(サステナビリティG)、法務部 ■海外子会社:KFIC、GARBiC
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取締役会(四半期毎) 品質保証委員会、リスクマネジメント統括委員会(毎月、隔月) コンプライアンス委員会、リスクマネジメント統括委員会(隔月) 経営会議(年2回) サステナビリティ委員会(適宜) コンプライアンス委員会、リスクマネジメント統括委員会(隔月)
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・法令・規則違反のモニタリング内容等 ・法改正情報、対応等 ・不正行為のモニタリング内容等 ・環境マネジメントレビュー等 ・人権方針の策定、人権デュー・ディリジェンスの進捗等 ・ホットライン通報内容等
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② 顕在化したリスクへの対応
ア. 基本骨子
当社では、リスク顕在化事象に対して実効的かつ効率的に対応するため、その影響度の評価に基づきリスク顕在化事象を分類し、事業継続計画やその他のリスク顕在化に応じた対応計画の整備を進めています。
イ. 事業継続計画(BCP: Business Continuity Plan)
当社では、今後想定されるいくつかの個別的な緊急事態におけるシナリオを想定し、事業継続計画を作成しています。
事業継続計画は、事業を単位として作成されることが一般的です。しかし、当社においては、複数の事業間でバリューチェーンが重複または近似していることから、重要な商品及び機能を単位として事業継続計画を作成しています。
重要な商品とともにカゴメの事業継続計画において単位となっている重要な機能は、調達、サプライチェーンマネジメント(SCM:Supply Chain Management)、財務経理及び広報の4機能です。調達及びサプライチェーンマネジメントは、食品メーカーとして生産活動を行うための不可欠な機能です。また、財務経理は、自社の企業としての存続、サプライチェーンの維持、従業員の生活の確保、その他の企業における事業としての生産活動を行うための基盤となる機能です。そして、広報は、当社の企業理念の一つである「開かれた企業」に照らして重要と考えている機能です。社内外のステークホルダーに対する説明責任を果たすことは、とりわけ緊急時において強く求められるところであり、広報はそのための不可欠な機能と考えられるためです。
こうした事業継続計画により、緊急時においてもカゴメの事業活動を継続し、または停止からの速やかな復旧を行い、企業価値の保全を図ります。
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(重要な会計方針及び見積り)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。
採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況」における「3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。
(1) CFO/CROメッセージ
CFO/CRO MESSAGE 財務基盤の 安定を維持し、 資本効率を重視した 成長を支えていきます。
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1. 2024年度の業績について
2024年度の業績は、売上収益及び事業利益において過去最高を記録しました。また、国内加工食品事業と国際事業の売上収益、事業利益の比率が大きく変化し、将来の成長に向け転機の年となりました。
売上収益は3,068億円(前年度比821億円の増収、36.5%増)となりました。国内加工食品事業は、1,557億円(前年度比135億円の増収、9.5%増)となりました。トマトペーストの原材料価格の高騰、円安による影響などを受けましたが、昨年に引き続き行った価格改定や需要喚起策が奏功しました。国際事業は、1,493億円(前年度比711億円の増収、91.0%増)です。新規連結子会社となったIngomarの増分が大きく寄与しています。また、トマト他一次加工事業においては、トマトペーストの販売価格が上昇したこと、トマト他二次加工事業においては、フードサービス企業向けの販売が好調に推移したことが増収の主要因です。
事業利益は、270億円(前年度比76億円の増益、39.1%増)となりました。国内加工食品事業は、155億円(前年度比41億円の増益、35.7%増)です。主要原材料の大幅なコスト上昇に対して価格改定を行ったこと、また、価格改定後の販売数量を早期に回復できたこと、原価低減に積極的に取り組んだことが増益の主因です。国際事業は、139億円(前年度比30億円の増益、28.6%増)です。売上収益の拡大、原材料の価格転嫁が進んだことが増益の主因です。親会社の所有者に帰属する当期利益は、250億円(前年度比145億円の増益、139.8%増)となりました。事業利益からの増加要因は、Ingomar出資持分の段階取得に係る差益(93億円)を計上したことによります。この結果、2024年度は株主配当も当初の予想を上回る形で実施することができました。また、こうした業績を背景に、ROIC※は12.4%と0.8point減少しました。これは、Ingomarの連結子会社化などにより利益は増加したものの、投下資本も大幅に増加したことによるものですが、投下資本と利益のバランスは健全に保たれていると考えています。
※ROIC:カゴメROICのこと。EBITDA÷投下資本で算出。
2. キャッシュ・フローと財務戦略の考え方について
当社グループは、成長に向けた積極的な投資と充実した株主還元の両立を目指しています。併せて、持続的な成長を支え、大きな変化に対応するためには、強固な財務基盤を維持することが重要だと考えています。キャッシュ・フローの推移は下記の通りです。
区分
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2022年度
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2023年度
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2024年度
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営業キャッシュ・フロー
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46億円
|
46億円
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316億円
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投資キャッシュ・フロー
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△94億円
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△60億円
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△463億円
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財務キャッシュ・フロー
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△55億円
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156億円
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△5億円
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● 営業キャッシュ・フロー
営業キャッシュ・フローは316億円の純収入(前年度は46億円の純収入)となりました。利益が順調に推移したことに加えて、棚卸資産が71億円減少したことなどにより増加しました。
● 投資キャッシュ・フロー
投資キャッシュ・フローは、463億円の純支出(前年度は60億円の純支出)となりました。Ingomarの持分追加取得に伴い360億円を支出したことが主な要因となります。
● 財務キャッシュ・フロー
財務キャッシュ・フローは、5億円の純支出(前年度は156億円の純収入)となりました。自己株式の処分等により231億円収入があったものの、短期借入の減少156億円と配当の支払いなどがあったことなどによります。
2024年度の財務指標にて、自己資本比率※は51.3%、信用格付はシングルAとなっています。自己資本比率は、Ingomarの買収による借入により一時的に50%を下回りましたが、自己株式の売却による資金調達により50%に回復しました。これらにより引き続き財務基盤は安定していると考えています。資本効率はROEが15.7%となり、目標の9%の水準を達成しています。また株主還元は、記念配当の10円に加え普通配当6円の増配を行うことができました。第3次中期経営計画期間中の株主還元方針である「総還元性向40%」を確実に果たしていきます。
※ 自己資本比率:親会社所有者帰属持分比率
目的
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指標
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2023年度実績
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2024年度実績
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第3次中期経営計画方針
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財務基盤の安定
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自己資本比率
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49.8%
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51.3
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50%以上
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信用格付
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シングルA
|
シングルA
|
シングルA
|
資本効率を重視した成長
|
ROE
|
8.3%
|
15.7%
|
9%以上
|
安定的な利益還元
|
総還元性向※
|
-
|
40%以上
|
※ 1株当たり配当額実績:2023年度41円、2024年度57円
3. 自己株式の処分について
当社は、2024年7月に自己株式を処分し232億円を調達しました。本調達資金はIngomarを連結子会社化した際に借り入れた短期借入金360億円の返済に充当しました。
第3次中期経営計画においては、M&Aを含めたインオーガニック成長のための事業投資に300~500億円の投資を計画しました。これは、自己資本比率50%の維持を基本とし、営業キャッシュ・フローと財務キャッシュ・フローを鑑みて目論んだものです。2024年度に実施した自己株式の処分により、これらは概ね達成できていると判断しています。また、将来に向けたさらなる事業投資を可能にするためにも、財務基盤の安定を維持しつつ、資本効
率を重視した成長を図ります。
また、今回の自己株式の処分にあたっては、3割を機関投資家に配分し、そのうち8割は海外に配分しました。ロードショーにおいては、機関投資家の皆様からさまざまなご意見もいただきましたので、今後の経営に活かしていきます。
4. ROICについて
当社は資本効率を高める取り組みとして、全社におけるROIC管理を行っており、ROEの向上を目指しています。
社内管理においては、一般的なROICの計算方式は用いず、事業利益に減価償却費を加えたEBITDAをROIC計算の基礎としています。また、ROICツリーを作成し、各部門が自らのKPIを設定することによって、その貢献度を可視化しています。一方、マネジメントレベルにおいては、資源配分を最適化し、持続的な成長を実現する観点から、事業別のROICの分析、向上に努めています。今後もこれらの二つのアプローチにより、資本効率の向上、企業価値の最大化を図ってまいります。
5. リスクマネジメントの取り組みと課題
当社は第3次中期経営計画期間における基本戦略の一つとして、「グループ経営基盤の強化と挑戦する風土の醸成」を掲げています。リスクマネジメントは、この経営基盤を支える柱になると考えています。
直近では、国際事業比率が高まり、グローバルなリスクマネジメント体制の確立が重要になってきている中で、特に海外子会社に対するガバナンスの強化に取り組んでいます。当社は、会社の重点リスク課題から各組織のリスク課題までを、経営層から従業員一人ひとりに至るまで、それぞれが我がこととして取り組めるよう仕組み化し、経営基盤の強化を図っています。
(2) 経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次の通りであります。
① 売上収益
売上収益は、3,068億69百万円となり、前連結会計年度の2,247億30百万円に比べ、821億38百万円の増加(36.5%増)となりました。
国内加工食品事業は、主要原材料をはじめとする売上原価の大幅な上昇を受け、主要商品の価格改定を実施しました。また、価格改定後の需要喚起策が奏功し増収となりました。国際事業においても、Ingomarの連結子会社化に加え、トマト他一次加工において、トマトペースト市況が上昇したこと、トマト他二次加工において、フードサービス企業向けの販売が好調に推移したことなどにより増収となりました。
② 事業利益
事業利益は、270億94百万円となり、前連結会計年度の194億76百万円に比べ、76億18百万円の増加(39.1%増)となりました。
国内加工食品事業は、価格改定や、その後の需要喚起策などにより増益となりました。国際事業においても、Ingomarの連結子会社化に加え、トマト他一次加工、トマト他二次加工が共に増収となったことにより、増益となりました。
③ 営業利益
営業利益は、362億21百万円となり、前連結会計年度の174億72百万円に比べ、187億49百万円の増加(107.3%増)となりました。
事業利益の増益に加え、Ingomarの連結子会社化に伴い、従前から保有していた20%出資持分を50%の追加取得日における公正価値で再測定した結果、段階取得に係る差益93億23百万円をその他の収益として認識し、増益となりました。
④ 親会社の所有者に帰属する当期利益
親会社の所有者に帰属する当期利益は、250億15百万円となり、前連結会計年度の104億32百万円に比べ145億83百万円の増加(139.8%増)となりました。
支払利息などの金融費用や法人所得税費用により、営業利益と比べて増益幅は縮小しました。
以上により、当連結会計年度の売上収益は、前期比36.5%増の3,068億69百万円、事業利益は前期比39.1%増の270億94百万円、営業利益は前期比107.3%増の362億21百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比139.8%増の250億15百万円となりました。
セグメント別の業績の概況は次の通りであります。
当連結会計年度にIngomarを連結子会社化したことを契機に、セグメントの管理区分の見直しを行いました。この結果、国際事業の内訳として「トマト他一次加工」、「トマト他二次加工」を新たに開示しております。また、「国内農事業」及び、国際事業に含まれていた「種苗の生産・販売事業」を「その他」へ集約いたしました。
なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分により作成したものを記載しております。
(単位:百万円)
セグメントの名称
|
売上収益
|
事業利益(△は損失)
|
前連結会計年度
|
当連結会計年度
|
増減
|
前連結会計年度
|
当連結会計年度
|
増減
|
|
飲料
|
75,446
|
82,721
|
7,275
|
7,508
|
9,102
|
1,593
|
通販
|
13,130
|
13,361
|
230
|
751
|
239
|
△511
|
食品他
|
53,596
|
59,628
|
6,032
|
3,215
|
6,233
|
3,018
|
国内加工食品事業 計
|
142,173
|
155,711
|
13,538
|
11,475
|
15,575
|
4,100
|
|
トマト他一次加工※1
|
20,460
|
82,267
|
61,806
|
5,007
|
8,399
|
3,391
|
トマト他二次加工※2
|
57,833
|
70,543
|
12,710
|
6,518
|
7,000
|
482
|
調整額
|
△118
|
△3,507
|
△3,388
|
△690
|
△1,467
|
△776
|
国際事業 計
|
78,175
|
149,303
|
71,128
|
10,835
|
13,932
|
3,097
|
その他
|
19,564
|
21,861
|
2,296
|
△133
|
605
|
739
|
調整額
|
△15,182
|
△20,007
|
△4,824
|
△2,701
|
△3,019
|
△318
|
合計
|
224,730
|
306,869
|
82,138
|
19,476
|
27,094
|
7,618
|
※1トマト他一次加工:農作物を加工した、ペーストなどの製造・販売
※2トマト他二次加工:主に、農作物の一次加工品に調味料などを加えて加工した、ピザソースなどの製造・販売
各セグメントの概要及び成果については以下の通りです。
<国内加工食品事業>
国内加工食品事業では、飲料や調味料等の製造・販売を手掛けております。
当事業における売上収益は、前期比9.5%増の1,557億11百万円、事業利益は、前期比35.7%増の155億75百万円となりました。
① 概要
トマト、にんじん、その他の多様な野菜を使用した野菜飲料や食品などの商品を展開しています。お子様からご高齢の方まで、幅広い世代の方々に、日常生活の様々な場面においてご利用いただくことで、野菜の摂取量を増やし、健康寿命の延伸に貢献します。
SWOT分析
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STRENGTH 強み
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WEAKNESS 弱み
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● 原材料調達における、海外ネットワーク力と 品質保証力 ● 125年にわたる歴史で培われたブランド力 ● 素材の力を活かした機能性研究、商品開発力 ● 多様な販路と、顧客に応じた商品提案力
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● 環境変化へ対応できるバリューチェーンの 柔軟性 ● 幅広いカテゴリー対応維持のための資源分散 ● コモディティ市場における価格競争力 ● 若年層への浸透
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OPPORTUNITY 機会
|
THREAT 脅威
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● 生活者の健康、自然素材、環境意識のさらなる 高まり ● 生活者の購買行動・ブランド選択基準の多様化 ● 生活者との新たな情報、購買接点の拡大 ● 体験を含めた新たなサービス領域の顕在化
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● 継続的な原材料価格上昇 ● 健康関連商品・サービス多様化による既存領域 の相対的地位低下 ● 各分野でのイノベーションによる異業種からの 競合参入 ● 日本国内における人口減少、高齢化による市場 の縮小
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② 2024年度の概要(成果・課題)
成果
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課題
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前年度に引き続き、原材料価格の上昇を背景に商品出荷価格の改定を実施、新価格が生活者に受容されるよう、野菜飲料、調味料ともに需要喚起策を展開しました。 野菜飲料では、好調が続くトマトジュースの機能情報発信強化を、野菜生活ブランドでは、「朝を味方に」をテーマとしたキャンペーンを実施したことが奏功し、売上の拡大を図ることができました。 調味料では、特にトマトケチャップの食卓出現を拡大すべく「焼きケチャップ」「町中華オムライス」などのプロモーションを強化したことで、業務用と併せて大きく売上の拡大を図る事ができました。
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カテゴリーリーダーとしての重要な責務は、マーケット全体の活性化にあります。いかに価格を超えた価値をお客様に感じていただけるか、新しい需要を創造できるかについて、取り組みを強化していきます。特に、お客様が日頃抱えている、あるいはお客様が気付いていない潜在的なお困りごとを捉えていくことが組織の課題です。 加えて、現在展開している領域の価値を磨くとともに、新規領域への探索を並行して進めていきます。
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③ 2025年度に向けた戦略
国内加工食品事業が力強く成長できる基盤強化に取り組みます。 野菜飲料においては、特に好調が続くトマトジュースの拡大に向け、情報戦略をさらに高度化していきます。一方、野菜生活ブランドは、2025年に発売30周年を迎えます。当時、商品をご利用いただいていた方々に対して、30年の年月を経て、“もう一度野菜生活を始めて”いただけるような施策を、ここまでブランドを育ててもらった感謝の気持ちとともに、展開していきます。 さらに、植物性ミルクの定着に向けて本格的な取り組みを開始します。提携先であるBlue Diamond Growersは農家との栽培指導を含め、原材料調達から最終商品に至る過程全てに関与しており、当社とモノづくりに対する想いを同じくする会社です。生産者の想いに加え、米国の日常的な健康的食スタイルを日本のお客様に共感していただけるよう、様々な提案を多面的に仕掛けていきます。 食品では、2025年に昭和100年を迎えるにあたり、「ナポリタンスタジアム」を通じて業務用と一体となりトマトケチャップの需要開拓に徹底的に取り組み、売上最大化を目指します。 飲料、食品、業務用、それぞれが、カゴメブランドのもとで売上拡大、カテゴリー全体の活性化に寄与できるよう尽力します。
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MESSAGE
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進化した「Farm to Life」への取り組み強化 私は、お客様に価値をお届けする領域を、「Farm to Table」から「Farm to Life」へと広げていきたいと考えています。お客様の生涯の健康的な暮らしに、商品だけではないお役立ちのあり方を追求していきたいと思います。 例えば、野菜の苗を多くの方にお配りする。その野菜の苗の生育過程や収穫、さらには調理などをお客様と一緒になって体験、共有する。また、お客様の集まる場所に出向いて、野菜の魅力をもっと知っていただく。これら一連の活動などを通して、カゴメをもっと知っていただき、もっと好きになっていただきたいと考えています。 これらのファンベースドマーケティングの強化を、個々の商品の魅力を高めていく活動、さらには野菜の価値発信活動と併せて進めていきます。 2025年度は、第3次中期経営計画の最終年度となります。「野菜生活ブランド30周年」「アーモンドミルクの市場定着に向けた取り組み」「ナポリタンスタジアム」など、様々な活動を中心に国内加工食品事業の成長を図っていきます。
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Profile 執行役員 マーケティング本部長 稲垣 慶一
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<国際事業>
国際事業では、農業生産、商品開発、加工、販売を展開しております。
当事業における売上収益は、前期比91.0%増の1,493億3百万円、事業利益は、前期比28.6%増の139億32百万円となりました。
① 概要
国際事業は、農業生産、加工、販売事業などを展開しています。加工はトマトペーストなどを製造する一次加工と、トマトペーストを原材料としてトマトソース、ピザソースなどを製造する二次加工に大別されます。国際事業の主な顧客は調味料メーカーや外食企業などで、米国、ヨーロッパ、オーストラリアなどでBtoBビジネスを展開しています。
SWOT分析
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STRENGTH 強み
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WEAKNESS 弱み
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● フードサービス企業に向けたソリューション 提案力 ● グローバルに展開するグループ会社による トマト原材料の安定した供給力 ● グループ会社共通の品質管理基準の展開による品質力とESG課題の推進
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● トマトペースト市況の変動に伴う収益 ボラティリティ ● 購入額の大きい特定顧客への依存度の高さ ● BtoCにおけるブランド認知の不足
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OPPORTUNITY 機会
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THREAT 脅威
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● 米国やインドなどを中心とした、 フードサービス市場の成長ポテンシャル ● 原材料となる加工用トマトの生産性向上技術に対するニーズの高まり ● 原価・運営コスト高騰に伴うフードサービス企業からのソリューションニーズの高まり
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● トマトペースト市況下落による収益の悪化 ● 異常気象などの天候リスクによる事業活動への影響 ● サプライチェーンの分断による原材料・製品 供給不足 ● 各国拠点の従業員の確保難、労務費の高騰
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② 2024年度の概要(成果・課題)
成果
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課題
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2024年1月に世界第4位のトマト一次加工会社であるIngomarの出資持分50%を追加取得し、連結子会社化しました。これによりカゴメグループ全体の生トマトの一次加工能力は従来の世界第14位から第3位へと大きく上昇しました。トマト他一次加工においては、Ingomar連結子会社化による影響のほか、世界のトマトペーストが需給逼迫を背景に市況が高騰していた影響もあり、増収増益でした。トマト他二次加工においても、各社で価格改定を実施したほか、米国を中心とした堅調な外食需要を背景に増収増益となりました。
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Ingomarを連結子会社化したことに伴い、トマト他一次加工の連結売上収益の構成比率は2023年度の9%から2024年度の27%と大きく上昇しました。トマトペーストの需給により、市況は大きく変動するため、業績ボラティリティが拡大したと言えますが、米国内のバリューチェーンが種子開発・販売から二次加工まで揃ったことを活かして、事業の安定性を高め、米国トマト加工事業のさらなる成長を図ります。
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③ 2025年度に向けた戦略
世界的なインフレが続く中で、トマトペーストは2023年、2024年の世界的な増産により、市況は下降に転じました。そのため2025年度は、グループ間連携により市況影響の極小化と次の成長に向けて、持続的かつ安定的な利益獲得力の強化に取り組みます。一次加工においては 、品質改善や生産性の向上、原価低減、顧客との関係性強化により、競争力を高めていきます。また、二次加工においては、フードサービス企業向けへのソリューション提案力の強化を推進し、販売数量の拡大を図ります。グローバルにフードサービス事業を展開する既存顧客に対しては、フレーバーや容器バリエーションによる商品の拡充をし、また、各エリアで展開するローカルフードサービス企業の新規顧客の獲得も進めます。 2024年度に契約農家の加工用トマト栽培や、一次加工の生産活動の情報を収集し、ビッグデータ解析を開始しました。これにより生産効率や良品率向上への活用を目指します。また、組織・人員体制を含め生産性を高めるサプライチェーンを構築していきます。さらに、Ingomarのトマト加工技術の形式知化を進め、HITやKAUの他のトマト一次加工拠点を含め、カゴメグループ全体のトマト加工技術の向上を図ります。
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Kagome Inc.におけるメニュー開発の様子
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Ingomarの工場で収集したビッグデータを 処理している様子
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MESSAGE
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Profile 常務執行役員 カゴメ・フード・ インターナショナル カンパニープレジデント 兼 グローバルトマト 事業部長 江端 徳人
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グローバル最適視点で成長を加速 2023年10月より、国際事業本部はカゴメ・フード・インターナショナルカンパニーとしてカンパニー化し、海外現地法人のCEOが毎月参加する「カンパニー経営会議」により、機動的な意思決定を迅速に行うとともに、連携強化・ガバナンスの向上・グローバルな組織・人材マネジメントに取り組んできました。成長ドライバーであるフードサービスの量的成長に向けたビジョンを共同で策定するとともに、ポータルサイトを活用した情報の見える化や、不正防止のためのリスク調査などを通じ、カゴメグループとしてのエンゲージメントが向上しました。また最重要課題の一つでもあった人材マネジメントについては、今まで行っていなかった海外現地法人間の人事交流を行いました。日本からの出向人事を含め、国際事業における持続的な成長戦略を確実に遂行できるように組織・人員体制の強化を引き続き目指します。また、温室効果ガスや二酸化炭素の削減などのサステナビリティ活動についても推進していきます。
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なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。
また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。
(3)財政状態の分析
当連結会計年度末は、資産合計につきましては、前期末に比べ967億66百万円増加いたしました。
流動資産につきましては、前期末に比べ445億6百万円増加いたしました。
これは、主にIngomarの連結子会社化などにより「棚卸資産」が438億49百万円、「営業債権及びその他の債権」が110億6百万円、それぞれ増加したことなどによります。なお「現金及び現金同等物」はIngomarの持分の追加取得による支出などにより、147億36百万円減少いたしました。
非流動資産につきましては、前期末に比べ522億59百万円増加いたしました。
これは、主にIngomarの連結子会社化に伴い、「無形資産」が347億93百万円、「有形固定資産」が218億32百万円増加したことなどによります。なお、同社は子会社化に伴い持分法適用会社の対象外となったことから、「持分法で会計処理されている投資」が56億65百万円減少しております。
負債につきましては、前期末に比べ215億61百万円増加いたしました。
これは、主にIngomarの連結子会社化などにより「営業債務及びその他の債務」が76億61百万円、「長期借入金」が76億32百万円、「繰延税金負債」が49億82百万円、それぞれ増加したことなどによります。
資本につきましては、前期末に比べ752億5百万円増加いたしました。これは、「親会社の所有者に帰属する当期利益」により250億15百万円、「自己株式」の処分等により217億45百万円、「非支配株主持分」が217億30百万円、それぞれ増加したことなどによります。一方で、剰余金の配当により35億36百万円減少しております。
この結果、親会社所有者帰属持分比率は51.3%、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,983円20銭となりました。
(4)連結キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、212億73百万円となり、前期末に比べ147億36百万円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次の通りであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、316億92百万円の純収入(前期は46億17百万円の純収入)となりました。この主要因は、税引前利益が336億65百万円となったこと、減価償却費及び償却費が120億円となったこと、棚卸資産が71億98百万円減少したこと(以上、キャッシュの純収入)、Ingomarの持分段階取得に係る既存出資持分の時価評価益が93億23百万円となったこと、法人所得税等の支払いにより86億86百万円支出したこと、利息の支払いにより30億80百万円支出したこと(以上、キャッシュの純支出)などによります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、463億25百万円の純支出(前期は60億56百万円の純支出)となりました。これは、主にIngomarの持分追加取得に伴い360億46百万円支出したこと、有形固定資産及び無形資産の取得により109億43百万円支出したことなどによります。
財務活動によるキャッシュ・フローは、5億71百万円の純支出(前期は156億26百万円の純収入)となりました。これは、自己株式の処分等により231億29百万円収入があったものの、短期借入の減少により156億32百万円、長期借入金の返済により55億74百万円、配当金の支払いにより35億33百万円、非支配持分への配当金の支払いにより49億16百万円支出があったことなどによります。
(生産、受注及び販売の状況)
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
|
金額(百万円)
|
前期比(%)
|
|
飲料
|
41,593
|
7.5
|
|
通販
|
692
|
0.2
|
|
食品他
|
21,897
|
12.6
|
|
国内加工食品事業 計
|
64,184
|
9.1
|
|
|
トマト他一次加工
|
104,213
|
490.5
|
|
トマト他二次加工
|
57,490
|
24.8
|
|
国際事業 計
|
161,704
|
153.8
|
|
その他
|
4,915
|
11.2
|
|
合計
|
230,803
|
81.8
|
|
(注) 1 金額は製造原価によっております。
2 金額は消費税等を含めておりません。
b. 受注状況
主要製品の受注生産は行っておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。
セグメントの名称
|
金額(百万円)
|
構成比(%)
|
前期比(%)
|
|
飲料
|
外部顧客に対するもの
|
82,721
|
|
9.6
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
82,721
|
27.0
|
9.6
|
通販
|
外部顧客に対するもの
|
13,361
|
|
1.8
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
13,361
|
4.4
|
1.8
|
食品他
|
外部顧客に対するもの
|
59,628
|
|
11.3
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
59,628
|
19.4
|
11.3
|
国内加工食品事業 計
|
外部顧客に対するもの
|
155,711
|
|
9.5
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
155,711
|
50.7
|
9.5
|
|
トマト他一次加工
|
外部顧客に対するもの
|
71,555
|
|
559.0
|
セグメント間取引
|
10,712
|
|
11.5
|
計
|
82,267
|
26.8
|
302.1
|
トマト他二次加工
|
外部顧客に対するもの
|
61,486
|
|
17.4
|
セグメント間取引
|
9,056
|
|
65.8
|
計
|
70,543
|
23.0
|
22.0
|
調整額
|
外部顧客に対するもの
|
△3,507
|
|
-
|
セグメント間取引
|
-
|
|
-
|
計
|
△3,507
|
△1.1
|
-
|
国際事業 計
|
外部顧客に対するもの
|
129,534
|
|
105.2
|
セグメント間取引
|
19,768
|
|
31.2
|
計
|
149,303
|
48.7
|
91.0
|
その他
|
外部顧客に対するもの
|
21,622
|
|
11.2
|
セグメント間取引
|
238
|
|
102.6
|
計
|
21,861
|
7.1
|
11.7
|
調整額
|
△20,007
|
△6.5
|
△31.8
|
連結売上収益
|
306,869
|
100.0
|
36.5
|
(注) 1 各セグメント間のセグメント売上収益を消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。
相手先
|
前連結会計年度
|
当連結会計年度
|
金額(百万円)
|
割合(%)
|
金額(百万円)
|
割合(%)
|
株式会社日本アクセス
|
32,020
|
14.2
|
35,216
|
11.5
|
5 【経営上の重要な契約等】
当連結会計年度において、新たに締結した重要な契約は次のとおりであります。
(Ingomarの持分追加取得(連結子会社化)等)
当社は、2024年1月26日開催の取締役会において、全額出資子会社のKUHへの出資を通じて、当社グループの持分法適用関連会社であるIngomarの持分を追加取得することを決議し、同日付でIngomarを連結子会社化しました。
あわせて同日付で自己株式処分に係る発行登録をしております。
6 【研究開発活動】
当連結会計年度の研究開発費の総額は、5,094百万円であります。
持続可能な農業の実現に向けた開発能力を高めることを目的として、国内外に分散していた品種開発や栽培技術の開発部門を一つの組織に結集し、2023年10月に「グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター(GARBiC)」を設立しました。この組織の傘下にはこれまで日本の研究所で行ってきた農資源開発や、ポルトガルのKagome Agri-business Research and Development Center, Unipessoal Lda、種子の開発・生産・販売を行うUnited Geneticsグループなどを配置しています。
2024年には、農業分野の新技術や新サービスが多様に迅速に展開されている米国カリフォルニア州に、米国拠点「Global Agricultural Research & Business Center USA LLC」、およびコーポレート・ベンチャーキャピタルを新たに設立しました。
GARBiCとIngomar、契約農家が強固に連携し、加工用トマト生産者が抱える課題の抽出と、対応する品種や栽培技術の開発・実装・事業化までをグループの連携によって実現することで、農を起点とした一貫した価値形成を行っていきます。